(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976461
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】放電ランプ用の電極、放電ランプ、および電極を製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01J 61/073 20060101AFI20211125BHJP
H01J 61/86 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
H01J61/073 F
H01J61/86
【請求項の数】22
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-562618(P2020-562618)
(86)(22)【出願日】2019年3月27日
(65)【公表番号】特表2021-521608(P2021-521608A)
(43)【公表日】2021年8月26日
(86)【国際出願番号】EP2019057669
(87)【国際公開番号】WO2019214875
(87)【国際公開日】20191114
【審査請求日】2020年11月6日
(31)【優先権主張番号】102018207038.5
(32)【優先日】2018年5月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512288684
【氏名又は名称】オスラム ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OSRAM GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ヴィンツェク
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−56806(JP,A)
【文献】
特表2002−522881(JP,A)
【文献】
特開平9−180677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/073
H01J 61/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプ(12)用の電極(10,10a,10b)であって、
前記電極(10,10a,10b)の端面を形成する電極平坦部(16)を有しかつ前記電極(10,10a,10b)の長手延長方向(L)で前記電極平坦部(16)によって画定されている基体(14)と、
前記電極平坦部(16)とは異なる、前記基体(14)の少なくとも1つの第1の領域(18)に配置された、熱放出を増大するコーティング(20)とを備え、
前記電極(10,10a,10b)が、少なくとも一部の領域で連続し、少なくとも部分的に前記長手延長方向(L)で前記電極平坦部(16)まで延在する、前記基体(14)の少なくとも1つのフリー領域(22)を有し、前記少なくとも1つのフリー領域(22)には、前記熱放出を増大するコーティング(20)が配置されておらず、
前記第1の領域(18)は、前記電極(10,10a,10b)の周方向で、前記フリー領域(22)の少なくとも1つの部分に接している、
電極(10,10a,10b)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフリー領域(22)は、少なくとも1mmの幅(B)を有する条片状に構成されている、
請求項1記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフリー領域(22)は、前記電極(10,10a,10b)の、前記長手延長方向(L)に対して垂直な最大直径(D)の1/2と少なくとも同等である長さ(LF)を有する条片状に構成されている、
請求項1または2記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフリー領域(22)は、前記長手延長方向(L)に沿って直線状に延在している、
請求項1から3までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフリー領域(22)は、少なくとも部分的に、前記長手延長方向(L)を中心とした螺旋状に延在している、
請求項1から4までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項6】
前記熱放出を増大するコーティング(20)は、前記基体(14)の全面積の少なくとも1/2にわたって配置されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項7】
前記熱放出を増大するコーティング(20)は、セラミック物質を含み、特に少なくとも50体積%まで前記セラミック物質から成る、
請求項1から6までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項8】
前記熱放出を増大するコーティング(20)は、埋め込まれたタングステン粒子を含むZrO2から成る母材層を有し、特に、前記タングステン粒子は、前記コーティング(20)の2体積%〜40体積%を形成している、
請求項1から7までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項9】
前記電極(10,10a,10b)は、タングステンコーティング(24)を有し、前記タングステンコーティング(24)は、前記熱放出を増大するコーティング(20)の、前記電極平坦部(16)に近い側の縁部(20a)に接する、前記基体(14)の少なくとも1つの第2の領域(26)に配置されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項10】
前記第2の領域(26)は、前記電極(10,10a,10b)の周方向で環状の、特には前記周方向で閉じたまたは閉じていない、領域(26)である、
請求項9記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項11】
前記基体(14)が、それぞれ前記熱放出を増大するコーティング(20)の前記縁部(20a)に接しかつ前記電極(10,10a,10b)の周方向で相互に離間して配置された複数の第2の領域(26)を有し、前記タングステンコーティング(24)が、前記第2の領域(26)のそれぞれに配置されている、
請求項9記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項12】
少なくとも1つの前記第2の領域(26)は、前記熱放出を増大するコーティング(20)の前記縁部(20a)から前記電極平坦部(16)への方向に延在しかつ少なくとも0.5mmである、幅(BW)を有する、
請求項9から11までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項13】
少なくとも1つの前記第2の領域(26)の少なくとも一部が、前記フリー領域(22)の、前記電極平坦部(16)に近い側の端部に交差しており、これにより、前記タングステンコーティング(24)は、少なくとも部分的に、前記フリー領域(22)の前記端部の少なくとも一部に配置されている、
請求項9から12までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項14】
前記フリー領域(22)は、コーティングを有さない、
請求項1から13までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項15】
前記フリー領域(22)は、0.7より小さい熱放出係数を有するコーティングを有する、
請求項1から13までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項16】
前記コーティングは、タングステン粒子を含み、前記タングステン粒子の体積割合は50%より大きい、
請求項15記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項17】
前記コーティングは、アクチノイドおよび/またはランタノイドおよび/またはセラミックの群からの添加物もしくは添加物の組み合わせを含み、好適には、前記添加物もしくは前記添加物の組み合わせは、2000℃より高い融点を有する、
請求項16記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項18】
前記セラミックの群は、ZrO2,Y2O3,ThO2,La2O3の成分を含む、
請求項17記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項19】
前記セラミックは、30体積%未満の割合である、
請求項17または18記載の電極(10,10a,10b)。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項記載の電極(10,10a,10b)を少なくとも1つ備えた、放電ランプ(12)。
【請求項21】
放電ランプ(12)用の電極(10,10a,10b)を製造する方法であって、
前記電極(10,10a,10b)の端面を形成する電極平坦部(16)を有し、かつ前記電極(10,10a,10b)の長手延長方向(L)で前記電極平坦部(16)によって画定された、基体(14)を用意するステップと、
前記電極平坦部(16)とは異なる、前記基体(14)の少なくとも1つの第1の領域(18)において、前記基体(14)を、熱放出を増大するコーティング(20)で被覆するステップと、を含み、
少なくとも部分的に前記長手延長方向(L)で前記電極平坦部(16)まで延在する少なくとも1つのフリー領域(22)が形成され、前記少なくとも1つのフリー領域(22)には前記熱放出を増大するコーティング(20)が配置されず、前記第1の領域(18)が前記電極(10,10a,10b)の周方向で前記フリー領域(22)の少なくとも1つの部分に接するように、前記基体(14)を、前記熱放出を増大するコーティング(20)で被覆する、
方法。
【請求項22】
熱放出を増大するように機能しないコーティング、特に0.7より小さい熱放出係数を有するコーティングで、前記フリー領域を被覆するステップを含む、
請求項21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプ用の電極であって、電極は、電極の端面を形成する電極平坦部を有しかつ電極の長手延長方向で電極平坦部によって画定された基体を有する、電極に関する。さらに、電極は、電極平坦部とは異なる、基体の少なくとも1つの第1の領域に配置された、熱放出を増大するコーティングを有する。本発明には、こうした電極を備えた放電ランプ、ならびに放電ランプ用の電極を製造する方法も含まれる。
【0002】
放電ランプの動作時には、電極間にプラズマ放電アークが形成され、当該プラズマ放電アークが電磁放射を放射する。電極は大抵の場合タングステンから成るが、これは、タングステンが抵抗性であって、きわめて高い温度ではじめて溶融する材料だからである。特に、ショートアークランプでは、電極が強く負荷され、高い電極温度が生じる。その結果、電極頂部で電極材料の気化が生じ、電極材料がランプ外管の内側に付着して、これにより外管の曇りが発生する。こうした曇りは、必然的に、燃焼期間の経過中にビーム強度の望ましくない低下を生じさせ、このため放電ランプの寿命も制限されてしまう。
【0003】
各物質の蒸気圧は温度が上昇するにつれて指数的に増大するので、電極頂部温度を低下させることで、蒸気圧ひいては電極頂部での材料剥離を効率的に低減し、これにより最終的に外管の黒化も低減することができる。こうした温度低下は、電極の、放出を増大するコーティングによって、特に上述した熱放出を増大するコーティングによって、達成することができる。こうしたコーティングは、例えば独国特許出願公開第102009021235号明細書に記載されている。つまり、例えば、こうした電極の外套面またはそのタングステン基体に、熱放出を増大するこうしたコーティングを設けることができる。
【0004】
ショートアーク放電ランプでは、水銀フリーのもの、例えばフィルムプロジェクタ用途に適する、例えばOSRAM XBO(登録商標)ランプとも称されるキセノン放電ランプであっても、水銀を含むもの、例えばUV領域での光放出に基づいて例えば半導体のリソグラフィパターニングに適する、OSRAM HBO(登録商標)ランプとも称される水銀ショートアークランプであっても、点弧時にまたは点弧の直後(数秒後)に、安定した放電アークを電極の頂部間に形成するためのプラズマ中の電荷担体密度が充分でない状態がしばしば発生する。この場合、アークは、好適には、電極上の、電極平坦部から遠く離れた位置で開始する。多くのケースで、その後、アークは、一方の電極の平坦部で開始し、反対側の電極では電極の円錐部または外套部で開始する。ただし、双方の電極でアークが電極平坦部から離れて開始する状態も発生しうる。
【0005】
上述したように、熱によって強く負荷される電極を備えた放電ランプでは、電極に、熱放射を増幅するコーティングが少なくとも部分的に設けられる。しかし、当該コーティングは、或る程度の頻度で発生する、コーティング上で開始するアークに対しては、耐性を有さない。この場合、コーティングの部分的な破壊が生じる。
【0006】
数秒後から約30秒までとなってはじめて、プラズマ中に充分な電荷担体が生じ、これにより、約1秒以内で、アークが電極頂部の近傍に収斂可能となる。平坦部までの経路にコーティング領域があれば、プラズマアークはしばしばなおも維持され、そこで局所的にコーティングを破壊する。
【0007】
また、ランプ点弧後の最初の数分で、多数のランプタイプにおいて、放電アークが、電極平坦部のほか円錐状のカソードの円錐部でも発生し、その後、最終的に電極間を移動し、次いでカソード平坦部からアノード平坦部へと延在するようになる。当該段階では、アークはしばしば円錐部で、特にコーティングの縁部から離れずにとどまり、そこでコーティングの縁部を破壊してしまう。
【0008】
コーティングの破壊は、これにより熱放出の促進効率が大幅に低下し、このためこの場合にもランプの寿命が低下するという効果を有する。なお、さらに大きな欠点として、とりわけ、蒸着したコーティング材料がタングステンと反応し、これによりタングステン酸化物の蒸着が生じて、外管への付着およびさらなる外管の曇りもしくは黒化を生じさせることが挙げられる。これにより、ランプの寿命はさらに大幅に低下する。コーティングの破壊を防止するために、こうしたシナリオに対してよりロバストなコーティングも使用できる。しかし、少なくともこれまで公知のこのようなコーティングは、一方では高価であり、他方では放出を増大する特性に関して著しく効率が低いという、大きな欠点を有する。放出を増大する特性に関するこうしたより低い効率も、ランプの寿命に対して負の効果をもたらす。
【0009】
したがって、本発明の課題は、放電ランプの寿命を延長可能な、放電ランプ用の電極、放電ランプ、および電極を製造する方法を提供することである。
【0010】
この課題は、各独立請求項に記載の特徴を有する、放電ランプ用の電極、こうした電極を備えた放電ランプ、および電極を製造する方法によって解決される。本発明の有利な構成は、各従属請求項、明細書および図面の対象となっている。
【0011】
ここで、本発明による放電ランプ用の電極は、電極の端面を形成する電極平坦部を有しかつ電極の長手延長方向で電極平坦部によって画定された基体を有する。さらに、電極は、電極平坦部とは異なる、基体の少なくとも1つの第1の領域に配置された、熱放出を増大するコーティングを有する。熱放出を増大するとは、特に、放出係数を0.7超の値まで高めることを意味する。また、電極は、少なくとも一部の領域で、好適には完全に、連続し、長手延長方向で少なくとも部分的に電極平坦部まで延在する、基体の少なくとも1つのフリー領域を有し、当該少なくとも1つのフリー領域には、熱放出を増大するコーティングが配置されておらず、第1の領域は、電極の周方向で、フリー領域の少なくとも1つの部分に接している。
【0012】
フリー領域が熱放出を増大するコーティングを有さないとは、必ずしも、フリー領域がそもそもコーティングをまったく有さないこと、すなわち基体の一領域であることを意味しない。むしろ、フリー領域において代替的に、基体上に、0.7より小さい熱放出係数を有するコーティングを設けることができる。例えば、当該コーティングは、体積割合が50%超であるタングステン粒子を含むことができる。特に、当該コーティングはまた、純粋なタングステンペーストの形態で被着させることもできる。代替的に、当該コーティングは、アクチノイドおよび/またはランタノイド(例えばLa,Ce,Nd)および/またはセラミックの群からの添加物もしくは添加物の組み合わせを含むことができる。好適には、添加物もしくは添加物の組み合わせは、2000℃より高い融点を有する。さらに、添加物もしくは添加物の組み合わせは、好適には、タングステンの電子仕事関数よりも低い電子仕事関数、特に3.6eVよりも低い電子仕事関数を有する。セラミック成分として、特には、ZrO
2,Y
2O
3,ThO
2,La
2O
3が考慮される。使用されるセラミックの割合は、フリー領域でのプラズマアークの開始時にコーティングに大きな障害が認められなくなるようにするために、好適には30体積%未満である。
【0013】
つまり、熱放出を増大するコーティングが配置されない当該フリー領域により、放電アークが電極平坦部から遠く離れて開始する場合、熱放出を増大するコーティングを破壊せずに電極平坦部に達するよう、放電アークに対して、有利には、放電アークが取りうる電極平坦部への経路が用意される。ここで、本発明は、電極上で開始する放電アークが少なくとも電極平坦部で直接に開始しない場合、熱放出を増大するコーティングが設けられた領域でなく、コーティングなしのフリー領域で開始する傾向を有するという知識を基礎としている。これは、通常、基体の、金属、特にタングステンから成る領域の電荷担体密度が、コーティング領域での電荷担体密度よりも大きいからである。したがって、コーティングにおけるこうした構造、すなわち少なくとも1つのフリー領域により、有利には、放電ランプのプラズマアークが、熱放出を増大するコーティングに衝突することなく、電極平坦部から所定の距離を置いて電極上で開始することができ、また、電極頂部すなわち電極平坦部への経路のプラズマアークがコーティングを横断する必要がなくなり、これにより、有利には、熱放出を増大するコーティングの損傷が防止される。コーティングの損傷が防止されれば、同時にタングステン酸化物の蒸着に起因する外管の曇りもしくは黒化も防止され、このことによっても放電ランプの寿命が増大する。またここで、とりわけ、開始する放電アークに対して特別にはロバストでないコーティングを使用することができ、このため、本発明によれば当該コーティングは存在しなくてもよいが、熱放出の増大に関する特に高い効率を有するので、同様に、冒頭に既述したような寿命に対する正の効果が得られる。このように、熱放出を増大するコーティングが配置されないフリー領域を、連続して電極平坦部まで延在するように基体上に設けることにより、特に簡単かつ低コストかつ効率的に、本発明による電極が使用される放電ランプの寿命を増大することができる。
【0014】
また、電極は、こうした電極平坦部まで延在する連続したフリー領域を複数有することもできる。電極が複数のこうしたフリー領域を有する場合、有利には、アークに対して代替的な開始位置が提供され、このことによっても、熱放出を増大するコーティングの損傷もしくは部分的破壊の確率が最小化される。この場合、複数のフリー領域は、好ましくは相互に等間隔に配置可能である。
【0015】
ここで、電極は、一般にアノードまたはカソードとしても構成可能である。さらに、電極は、好適には、長手延長方向に延在する回転軸線を中心とした回転対称に構成される。電極がカソードとして構成される場合、好ましくは、基体が、円筒状部分と、長手延長方向で電極平坦部まで続き、その頂部が電極平坦部によって形成された、先細の円錐状部分とを有する。電極がアノードとして構成される場合、基体は円筒状部分のみを有してよく、その端部すなわち円筒の底面は電極平坦部によって形成される。代替的に、円筒状部分が電極平坦部の方向で幾分か先細となっていてもよい。
【0016】
さらに、基体は、好適には、大部分がタングステンから成り、特には実質的に完全にタングステンから成る。特に、基体は、任意手段としてのタングステン材料へのドープ物質、例えばトリウムおよび/またはカリウムを除いて完全に、または任意手段としてのタングステン母材に含まれる炭化物相および/または酸化物相、例えば希土類金属を除いて完全に、タングステンから成っていてよい。ドープ物質は、例えば4質量%より少なくてよい。ドープ物質により、例えば電極の電子放出度を高めることができる。
【0017】
さらに有利には、第1の領域は、電極の周方向で、フリー領域の少なくとも一部分に接する。つまり、熱放出を増大するコーティングを有する第1の領域は、好適には、長手延長方向に対して垂直な方向で、フリー領域に接するように、基体の表面に配置される。言い換えれば、フリー領域は、周方向で完全には電極を取り囲んでおらず、長手延長方向で、熱放出を増大するコーティングを有する第1の領域の少なくとも一部を通過する。これにより、有利には、熱放出を増大するコーティングを有する第1の領域の面積、ひいては熱放出そのものを最大化することができる。
【0018】
本発明の有利な構成では、少なくとも1つのフリー領域は、少なくとも1mmの幅で、条片状に構成される。条片状のフリー領域が少なくとも1mmの幅を有することにより、有利には、開始した放電アークがフリー領域に沿って走行する場合に、フリー領域に沿って延在する、放出を増大するコーティングの縁部の損傷を防止することができる。なぜなら、放電アーク開始部は1mmを越えない所定の幅または所定の直径を有するからである。好適には、条片状のフリー領域の幅は1mm〜5mmであり、特に好ましくは2mm〜3mmである。まさに当該2mm〜3mmの幅で、これに沿って走行する放電アークによる、熱放出を増大するコーティングの縁領域の破壊を特に効率的に防止することができ、同時に、このことにより、フリー領域の面積を可能な限り小さく保つことができるので、熱放出を増大するコーティングに対してより大きな面積が提供され、このため、特に効率的な熱放出の増大が可能となる。
【0019】
さらに、フリー領域は始点から電極平坦部まで延在し、特には必ずしも直線状でなく、ここで、フリー領域は、延在方向において、当該延在方向に対して局所的に垂直であるように定められた幅よりも大きい長さを有する。よって、始点は、電極平坦部から遠い側のフリー領域の端部である。さらに、始点は、一般に、電極平坦部とは異なる任意の基体の位置に配置可能である。
【0020】
本発明の別の有利な一構成では、少なくとも1つのフリー領域は、電極の長手延長方向に対して垂直な電極の最大直径の1/2と少なくとも同等である長さで、条片状に構成される。ここで、電極の最大直径の1/2とは、放電アークが、電極平坦部で直接に開始せず、そこから離れて開始する場合、主として電極平坦部から電極の最大直径の1/2よりも大きい距離を置いて開始するため、特徴的な寸法となっている。したがって、特に有利には、少なくとも1つのフリー領域は、電極の最大直径の1/2と少なくとも同等である長さ、好適にはより長い長さを有する。なぜなら、電極平坦部で開始しない放電アークがきわめて高い確率でフリー領域において開始可能となるからである。なお、フリー領域はこれより格段に長くてもよく、例えば電極の基体全体にわたって、電極平坦部の反対側の端部まで延在してもよい。このことは、電極平坦部で開始しない電極アークがフリー領域で開始する確率をいっそう高めるので、特に有利である。
【0021】
本発明の別の有利な一構成では、少なくとも1つのフリー領域は、長手延長方向に沿って直線状に延在する。言い換えれば、フリー領域は、始点と電極平坦部とを結ぶ最短の接続線上に延在するように、当該始点から電極平坦部まで延在する。こうした直線状の構成により、後に本発明の方法に関連して詳述するように、電極の製造が著しく簡単化されるという大きな利点が得られる。
【0022】
また、それ以外にも、少なくとも1つのフリー領域が、少なくとも部分的に、電極平坦部までの長手延長方向を中心とした螺旋状に延在するようにも構成可能である。よって、言い換えれば、フリー領域は、直線状に電極平坦部まで延在しなくてよく、基本的に任意の延在可能性を考えることができる。ただし、好ましくは、少なくとも1つのフリー領域は、少なくとも部分的に、長手延長方向を中心とした螺旋状に、当該螺旋が最大1回電極の長手軸線を周回するように延在する。これにより、放電アークがその電極平坦部までの経路においてコーティング領域に当たるまたは通過する危険を低く抑えることができる。また、フリー領域が可能な限り直線状に延在すれば、フリー領域に必要な全面積が最小化され、これにより、この場合にも、熱放出を増大するコーティングに多くの面積が利用可能となる。
【0023】
したがって、本発明の別の有利な一構成では、熱放出を増大するコーティングは、基体の全面積の少なくとも1/2にわたって配置される。これにより、電極が適用されている放電ランプの動作中、特に効率的な熱放出を達成することができる。なお、熱放出を増大するコーティングは、基体の全面積の1/2を相当に超えて、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%にわたって配置することもできる。また、電極の基体は、少なくとも1つのフリー領域ならびに電極平坦部を除き、熱放出を増大するコーティングで完全に被覆することもできる。これにより、熱放出の効率を最大化することができる。
【0024】
好適には、熱放出を増大するコーティングは、母材層と母材層に埋め込まれた粒子とから成る粒子化合物コーティングとして構成される。さらに有利には、熱放出を増大するコーティングは、セラミック物質を含み、特に少なくとも50体積%まで、セラミック物質から成る。これにより、特に熱に強い、熱放出を増大するコーティングを形成することができる。
【0025】
ここで、特に有利には、熱放出を増大するコーティングは、埋め込まれたタングステン粒子を含むZrO
2から成る母材層を有し、特に、タングステン粒子は、コーティングの2体積%〜40体積%を形成する。こうしたコーティングは、熱放出の増大に関して特に効率的であると判明している。特に、当該効率は、まさに1000℃以上の範囲の電極温度で発揮される。母材材料として、ZrO
2のほか、他の材料も考慮される。こうした材料の融点は、可能な限り高いことが望ましく、好ましくは2000℃超、特に好ましくは2500℃超であるとよい。好適な材料クラスは、とりわけ、酸化物、フッ化物、炭化物、および窒化物であり、例えばMgF
2、SiCまたはAlNである。なお、酸化物母材層として特に好適なのはZrO
2であると判明している。これは、高い機械的安定性と高い透明性とが結びついているためである。母材は、その安定性を、埋め込まれたタングステン粒子の金属構造に負っている。こうした安定性は、Y
2O
3および/またはMgOの添加によっていっそう高めることができる。代替的に、母材層が、ZrO
2に代えて、Y
2O
3またはMgOのみから形成されてもよい。
【0026】
母材層の厚さ、ひいては熱放出を増大するコーティングそのものの厚さは、例えば1μm〜1mmの範囲にあってよく、特に好ましくは10μm〜300μmの範囲にあってよい。金属粒子すなわちタングステン粒子の体積割合は、特に好ましくは、5%〜30%であり、特には5%〜15%である。
【0027】
本発明の特に有利な別の一構成では、電極は、タングステンコーティングを有し、タングステンコーティングは、熱放出を増大するコーティングの、電極平坦部に近い側の縁部に接する、基体の少なくとも1つの第2の領域に配置される。
【0028】
タングステンコーティングは、例えば焼結されたタングステン粉末から形成することができる。熱放出を増大するコーティングと電極平坦部との間にタングステンコーティングを配置することにより、電極平坦部の縁部で開始するアークが、近傍にある、熱放出を増大するコーティングを損なわないという利点が得られる。当該タングステンコーティングは、アークが好適には当該タングステンコーティングで開始し、熱的耐性がより低い、熱放射を改善するコーティングを損傷から保護できるようにするものである。付加的に、タングステンコーティングは、熱放出を増大する機能を有するが、ここで達成可能な熱放出係数は0.7未満にとどまる。
【0029】
例えば、少なくとも1つの第2の領域、すなわち当該タングステンコーティングが配置された領域は、電極の周方向で環状の、すなわち電極軸線を中心として環状の領域、特に周方向で閉じた領域または周方向で分断されたもしくは閉じていない領域であってよい。つまり、当該環状の領域は、電極平坦部へ向かう方向で、熱放出を増大するコーティングの縁部に直接に続いていてよい。これにより、コーティング縁部の破壊を効果的に防止することができる。
【0030】
ただし、こうした保護は、タングステンコーティングが部分的に形成され、したがって電極の周方向で一貫しないようにコーティングの縁部に配置される場合にも得られる。言い換えれば、基体は、それぞれ熱放出を増大するコーティングの縁部に接しかつ電極の周方向で相互に離間して配置された複数の第2の領域を有し、第2の領域のそれぞれにタングステンコーティングが配置されるようにも構成可能である。タングステンコーティングは金属であるが、熱放出を増大するコーティングの大部分が非金属の母材材料を含むので、放電アークは、開始位置として、金属製のタングステンコーティングを有する第2の領域に優先的に発生し、よって、熱放出を増大するコーティングが自動的に回避される。なお、連続した唯一の個別の第2の領域にタングステンコーティングを形成することは特に有利である。なぜなら、こうした形成は、より簡単な製造に基づいて、特に低コストであるからである。
【0031】
さらに有利には、少なくとも1つの第2の領域が、熱放出を増大するコーティングの縁部から電極平坦部への方向に延在しかつ少なくとも0.5mmである、幅を有する。こうした最小限の幅により、熱放出を増大するコーティングの縁部の特に効果的な保護を保証することができる。
【0032】
ここで、少なくとも1つの第2の領域がフリー領域に部分的に交差するか否か、すなわち、基体に焼結された付加的なタングステンコーティングが部分的にフリー領域内にも位置するか否かは、開始位置から電極平坦部への放電アークの漂遊にとって重要ではない。
【0033】
よって、このようにして、本発明の別の一構成により、少なくとも1つの第2の領域の一部が、フリー領域の、電極平坦部に近い側の端部に交差し、これにより、タングステンコーティングが少なくとも部分的にフリー領域の端部の少なくとも一部に配置されるようにすることも考えられる。つまり、フリー領域は、例えば電極平坦部の方向に延在して、熱放出を増大するコーティングの縁部を保護するためのタングステンコーティングに通じていてよい。したがって、電極平坦部の方向でフリー領域へと漂遊する放電アークは、熱放出を増大するコーティングの縁部を保護するためのタングステンコーティングへと自動的に導かれ、そこから直接に電極平坦部に達するので、収斂時の放電アークは、有利には、電極平坦部への経路において、プラズマアークに対して不安定な層によっては維持されず、これによりまた、熱放出を増大するコーティングが、損傷のない完全な状態に保たれる。
【0034】
代替的に、タングステンコーティングおよびフリー領域を、タングステンコーティングが配置された少なくとも1つの第2の領域とフリー領域とが交差しないように配置し、これにより、基体のフリー領域には付加的なタングステンコーティングが配置されないようにすることもできる。このことによっても、電極平坦部から離れて開始する放電アークが、熱放出を増大するコーティングを破壊せず、妨げられることなく容易に電極平坦部へ到達可能となる。また、当該変形形態では、電極の製造も特に簡単に行うことができる。
【0035】
本発明はまた、本発明による電極を備えた放電ランプ、またはその構成にも関する。特に、放電ランプは、2つの本発明による電極または2つの電極構成を有することもでき、この場合、好適には、一方の電極がアノードとして、もう一方の電極がカソードとして構成される。
【0036】
ここで、電極は、放電ランプのランプ外管内に配置可能であり、当該ランプ外管にはガス混合物が充填されている。また、放電ランプは、冒頭に説明したランプと同様に構成可能である。例えば、放電ランプは、XBOランプ、例えばキセノンショートアークランプとして構成可能である。XBOランプは、可視波長領域の光を放出し、例えば、従来のデジタルフィルム投影において使用される。また、放電ランプは、水銀を含むガス混合物が外管に充填されたHBOランプ、特に水銀ショートアークランプとしても構成可能である。こうしたランプは、少なくとも部分的にUV領域の光を放出し、例えば半導体のリソグラフィパターニングにおいて使用可能である。
【0037】
本発明による電極およびその実施形態につき説明した利点は、本発明による放電ランプおよびその実施形態にも当てはまる。
【0038】
さらに、本発明は、放電ランプ用の電極を製造する方法にも関しており、ここでは、電極の端面を形成する電極平坦部を有しかつ電極の長手延長方向で電極平坦部によって画定された、基体が用意される。さらに、基体は、電極平坦部とは異なる、基体の少なくとも1つの第1の領域において、少なくとも部分的に長手延長方向で電極平坦部まで延在する少なくとも1つのフリー領域が形成され、当該少なくとも1つのフリー領域には熱放出を増大するコーティングが配置されず、第1の領域が電極の周方向でフリー領域の少なくとも1つの部分に接するように、熱放出を増大するコーティングで被覆される。
【0039】
このようにして、熱放出を増大するコーティングが配置されていないフリー領域を、特に簡単かつ低コストに形成することができる。この場合にも、本発明による電極およびその構成につき言及した利点は、本発明による電極を製造する方法についても同様に当てはまる。また、本発明による電極およびその実施形態に関連して言及した対象となる特徴から、本発明による製造方法の発展形態が対応するさらなる方法ステップによって得られる。
【0040】
ここで、フリー領域が電極平坦部までの長手延長方向で条片状および直線状に延在する電極の実施形態が特に有利であると判明している。これにより、コーティングプロセスを特に簡単に行うことができる。それ以外にも、当該製造する方法により、少なくとも部分的に非直線状に、例えば螺旋状に延在するフリー領域を形成することができる。
【0041】
さらに、熱放出を増大するコーティングでの被覆を、基体への焼結によって行うことができる。上述した、少なくとも1つの第2の領域において熱放出を増大するコーティングの縁部に接するように配置されたタングステンコーティングも、対応する製造ステップで、対応する第2の領域にタングステン粉末を焼結することにより形成することができる。
【0042】
こうして、特に簡単かつ低コストにかつ時間効率よく、放電ランプの寿命を著しく増大可能な電極を形成することができる。
【0043】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施例についての、図に即した以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の一実施例による、コーティングフリーであって、電極平坦部に対して直線状に延在するフリー領域を有する、放電ランプ用の電極を示す概略図である。
【
図2】本発明の別の一実施例による、電極平坦部に対して螺旋状に延在するフリー領域を有する電極を示す概略図である。
【
図3】熱放出を増大するコーティングの縁部に部分的に形成されたタングステンコーティングを有する電極を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施例による放電ランプを示す概略図である。
【0045】
図1には、本発明の一実施例による、放電ランプ12(
図4を参照)用の電極10の概略図が示されている。電極10は、この実施例では、カソード10aとして構成されている。ただし、当該電極10は、同様にアノード10b(
図4を参照)としても構成可能である。よって、ここでの例では、電極10は基体14を有する。当該基体14は、この場合にも、電極10の端面を形成する電極平坦部16を有する。ここで、基体14は、電極軸線Aに対して平行に延在する長手延長方向Lにおいて、電極平坦部16によって画定されている。
【0046】
基体14は、この例では、円筒状部分14aとテーパ状部分または円錐状部分14bとから成っている。ただし、電極10は、例えば
図4に示されているようにアノード10bとして構成される場合、任意の他の形状を有してもよい。ここでの例では、実質的に円錐状部分14bが省略されており、電極平坦部16が実質的に直接に円筒状部分14aに続いている。
【0047】
熱放射エネルギを改善するために、基体14の電極平坦部16とは異なる第1の領域18の表面に、熱放出を増大するコーティング20が被覆されている。好適には、当該コーティング20は、ZrO
2母材層と埋め込まれたタングステン粒子とから成る粒子化合物コーティングである。このために、例えば、10体積%のタングステンと90体積%のZrO
2とから成る粉末混合物を焼結することができる。
【0048】
放電ランプ、例えば
図4に示されている放電ランプ12の動作中、最終的に、カソード10aおよびアノード10bの各電極平坦部16間に相応の放電アークが生じる。
【0049】
ショートアーク放電ランプの点弧時には、電極10の頂部間に最初に安定した放電アークを生じさせるためのプラズマ中の電荷担体密度が充分でない状態であることが多い。この場合、アークはまず、電極10において電極平坦部16から遠く離れた位置で開始する。ここで、従来の電極では、当該アークが放出を増大するコーティング上で開始する状態がきわめて頻繁に発生し、これにより、こうしたコーティングはふつう部分的に破壊され、また外管の曇りもしくは黒化も増幅されて、全体として放電ランプの寿命の低下にいたる。
【0050】
このことを回避するために、有利には、基体14に、熱放出を増大するコーティング20が配置されないフリー領域22が設けられる。当該フリー領域22は、条片状に構成されており、電極平坦部16までの連続した面として、少なくとも部分的に長手延長方向Lで延在する。一般に、当該フリー領域22は、
図1に示しているように、長さLFと局所的にこれに対して垂直な幅Bとを有する。ここで、長さLFは、幅Bよりも大きい。好適には、フリー領域22の長さLFは、特に電極10の幅広の領域に関してまたは円筒状部分14aに関して、電極10の直径Dの1/2と少なくとも同等である。
【0051】
ここで
図1に示した当該例では、フリー領域22は、条片状であって、電極平坦部16までの電極10の全長さにわたって直線状に延在する。ただし、フリー領域22は、より短く形成することもできる。また、好ましくは、フリー領域22の幅Bは少なくとも1mm、好適には少なくとも2mm、特には2mm〜5mmである。
【0052】
したがって、放電アークは、有利には、実質的にタングステンから成る電極10の基体14のフリー領域22において、ひいては熱的耐性を有する表面で、直接に開始可能となる。電極平坦部まで延在する当該条片22により、有利には、放電アークが、電極頂部間での収斂時にコーティング20に当たらず、これにより、電極平坦部16までの経路では維持されないようにすることができる。アークに代替の開始位置を用意するために、こうした複数の条片、特にこうしたフリー領域22を設けることもできる。
【0053】
したがって、有利には、放電アークは、熱放射性のコーティング20を破壊することなく、アーク開始位置から電極平坦部16までの経路で掃除可能である。面積の小さいフリー領域22により、コーティング20によって促進される熱放出の効率はまったく損なわれないかまたは僅かしか損なわれない。
【0054】
第2の始動フェーズ中のアークが、点弧後の最初の数分間で、カソードコーティングすなわち熱放出を増大するコーティング20の、平坦部16近傍の縁部20aを破壊しないようにするために、コーティング縁部20aの、特にカソード平坦部の近傍の領域に、または電極平坦部16に全体として、焼結されたタングステン粉末から成るコーティング、すなわちタングステンコーティング24がさらに設けられる。当該タングステンコーティング24は、アークが好適には当該タングステンコーティングで開始し、熱的耐性の低い、熱放射を改善するコーティング20が損なわれないようにするものである。
【0055】
当該タングステンコーティング24は、好適には、コーティング20の縁部20aから電極平坦部16の方向で延在する、少なくとも0.5mmの最小幅BWを有する。さらに、
図1に示した例では、フリー領域22は上述したように直線状に延在するように配置されており、またタングステンコーティング24は軸線Aを中心とした環状に延在するように基体14の第2の領域26に配置されており、ここで、フリー領域22はタングステンコーティング24をも通過しており、よってタングステンコーティング24の環状構造を分断している。フリー領域22およびタングステンコーティング24の双方とも、その機能を失うことなく、それぞれ他の形状を取ることもできる。このことは
図2および
図3に即して詳細に説明する。
【0056】
ここで、
図2には、本発明の別の一実施例による電極10の概略図が示されている。特に、電極10は、後述する相違点を除き、
図1に即して説明したように構成可能である。この例では、フリー領域22は、電極10の長手延長方向Lの方向で、少なくとも部分的に、特に基体14の円錐状部分14bの領域で、螺旋状に構成されている。なお、フリー領域22がこのように螺旋状に構成される場合、好ましくは、フリー領域22は電極軸線Aを最大で1回完全に周回し、これにより、放電アークに対して電極平坦部16までの可能な限り単純な経路が提供される。電極平坦部16の近傍でのフリー領域22の巻線状構造は、この場合にも、コーティング20の縁部20aを保護するためのタングステンコーティング24へと直接に通じており、当該タングステンコーティング24は、この場合もまた、電極軸線Aを中心とした開放環状に延在する、連続した第2の領域26に配置されている。
【0057】
ただし、当該タングステンコーティング24の機能は、当該タングステンコーティング24が
図3に示されているように部分的に形成される場合にも得られる。
図3には、この場合にも、本発明の別の一実施例による電極10が示されており、当該電極10は、後述する相違点を除き、特にこの場合にも
図1に即して説明したように構成可能である。この場合、当該相違点は、特に、タングステンコーティング24の形成または配置のみに限定されている。この例では、当該タングステンコーティング24は、相互に分離された複数の第2の領域26に配置され、電極10の軸線Aを中心として延在し、熱放出を増大するコーティング20の縁部20aに接するように配置される。
【0058】
図4には、この例ではショートアーク技術における高圧放電ランプとして構成された、放電ランプ12の概略図が示されている。放電ランプ12は、さらに、本発明の実施例による電極10を2つ有しており、そのうち一方の電極がアノード10bとして構成されており、もう一方の電極がカソード10aとして構成されている。この場合、カソード10aおよび/またはアノード10bは、
図1〜
図3に即して説明したように構成可能である。アノード10bは、付加的に、
図4に示されているその形状設定によって、カソード10aと異なっている。特に、アノード10bは、格段に大きな、好適には2cm〜4cmの範囲の直径Dを有するのに対し、カソード10aは、格段に小さな、好適には3.0cm未満の範囲のまたは最大3.0cmまでの範囲の直径D、特に好ましくは最大2.5cmまでの範囲の直径Dを有する。
【0059】
さらに、放電ランプ12は、こうしたランプに通常の要素、例えば放電管28と、ガス混合物が充填されかつ電極10が内部に配置された放電室30と、他の要素とを有する。アノード10bおよびカソード10aの各電極平坦部16は、ここでは相互に向かい合っており、電極軸線Aは、ほぼ一直線であって、すなわちカソード10aとアノード10bとが相互に同軸となるように配置されている。2つの電極10は、上述したように、フリー領域22を有することができる。当該各フリー領域22は、好適には、軸線Aに関して同じ側に配置されており、つまり、例えばアノード10bおよびカソード10aの双方とも上側に、または2つの電極10双方に関して下側に、またはアノード10bおよびカソード10aの各軸線Aおよび/または長手延長方向Lに関して任意のいずれかの側であって、ただしつねに同じ側に、延在する。点弧時に放電アークが2つの電極10のうちの一方では電極平坦部16で頻繁に開始し、2つの電極のうちの他方、多くの場合カソードでは電極10の円錐部または外套部でのみ開始する場合にも、2つの電極10でのアークが平坦部16から離れて開始する状態が僅かな頻度でしか発生しえない。この場合、フリー領域22を同じ側に配置することにより、アークの収斂が容易となり、アークがコーティング20に接触または交差する確率が付加的に低減される。
【0060】
全体として、特に低コストの措置によって、すなわち電極平坦部まで延在するフリー領域によって、有利には、放電ランプの寿命をいっそう増大することができる、電極、放電ランプ、および製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0061】
10 電極
10a カソード
10b アノード
12 放電ランプ
14 基体
14a 円筒状部分
14b 円錐状部分
16 電極平坦部
18 第1の領域
20 熱放出を増大するコーティング
20a 熱放出を増大するコーティングの縁部
22 フリー領域
24 タングステンコーティング
26 第2の領域
28 放電管
30 放電室
A 電極軸線
B フリー領域の幅
D 電極の直径
BW タングステンコーティングの幅
L 電極の長手延長方向
LF フリー領域の長さ