(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明のセルロース系原料含有樹脂製シートの実施形態の一例として、セルロース系原料に微細紙粉(微細な紙パウダー)を用いた微細紙粉含有樹脂シート1について、
図1及び
図2を参照して説明する。本実施形態の微細紙粉含有樹脂シート1は、真空成型される食品用の容器等に用いられるシートであって、以下の原料から構成されている。
【0026】
本実施形態の微細紙粉含有樹脂シート(以下「シート」と省略する。)1は、
図1に示すように、微細紙粉含有樹脂からなるコア層2と、そのコア層2の表裏を覆うポリプロピレン層(以下「PP層」と省略する。)3,4とから形成された樹脂製のシート状の部材である。実施形態の一例としては、コア層2の厚さを0.2〜1.3mm、PP層3,4の厚さを8μm〜50μmとすることができる。このPP層3,4は、本発明におけるポリオレフィン系樹脂被覆層に該当する。
【0027】
コア層2は、平均粒径が20〜100μmの微細紙粉を50〜60質量部と、メルトフローレートが1〜3の第1ポリオレフィン系樹脂として第1ポリプロピレンを18〜30質量部と、メルトフローレートが6〜11の第2ポリオレフィン系樹脂として第2ポリプロピレンを5〜26質量部と、メルトフローレートが6〜10のエラストマーを1〜16質量部とを含み、前記微細紙粉と、前記第1ポリプロピレンと、前記第2ポリプロピレンと、前記エラストマーの合計が100質量部となるような割合で混合される。
【0028】
本明細書において、ポリプロピレンとは、プロピレンを単量体として含む重合体からなり、曲げ弾性率が700MPa以上である樹脂を意味する。したがって、上記の第1ポリプロピレンおよび第2ポリプロピレンは、曲げ弾性率が700MPa以上である。
【0029】
本実施形態では、上記微細紙粉、第1ポリプロピレン、第2ポリプロピレン及びエラストマーを主原料としている。また、本実施形態では、この主原料100質量部に対して、添加材として、分散剤を1.8〜4.0質量部と、外部滑材を0.2〜0.5質量部と、着色料含有樹脂を0〜6.0質量部を追加することができる。なお、上記質量部は、各原料の混合割合を調節するために用いられているため、実際には上記質量部の割合と同じ割合の配合で、大量の原料を配合して大量のシート1を製造することが可能である。
【0030】
本実施形態では、セルロース系原料として、紙を細かく粉砕した微細紙粉を用いている。原料となる紙は、例えば製紙工場において発生する破紙や損紙を用いることができる。紙の種類としては、バージンパルプを含むバージン紙の他、古紙、排紙等、様々な種類の紙を用いることができる。また、セルロース系原料としては、木材を原料とするパルプ、コウゾ又はミツマタ等の非木材を原料とするパルプの他、広くセルロースを含む原料を選択することができる。
【0031】
本実施形態では、微細紙粉の粒径を20〜100μmとしているが、20μm未満のものは、原料となるパルプや古紙を20μm未満の粒径に加工するために複数の工程を必要とするので、紙粉の生産コストが高くなる。その結果、組成物や組成物を使用した成形品の生産コストが上昇することになるため好ましくない。また、粒径が100μmを超えるものは、紙粉が合成樹脂の中で分散不良を起こし、紙粉が合成樹脂中に嵩高な継粉を形成する場合があり、嵩高な継粉によって組成物の流動性が著しく低下してしまうことがある。
【0032】
また、本実施形態では、主原料の質量部を100としたときの微細紙粉の質量部を50〜60質量部としている。このような質量の割合とすることにより、コア層2とPP層3,4とを合わせたシート1において、微細紙粉の質量の割合を50%以上とすることができる。これにより、シート1は、成分全体の質量の過半数がセルロース系原料となるので、容器包装リサイクル法の定めによるリサイクルの対象から外れることとなり、使用後の処理が容易なものとなる。
【0033】
なお、技術的には、微細紙粉の質量部を50質量部未満とすることは容易である。一方、微細紙粉が60質量部を超えると、材料を溶融した際の流動性が低下するため、シート1を形成することが困難となる。なお、本願発明者等が種々実験を行った結果、微細紙粉の質量の割合を50%以上とするために、微細紙粉の質量部を51以上とすることが好ましい。また、材料を溶融した際の流動性に鑑みると、微細紙粉を56質量部以下とすることが好ましい。
【0034】
本実施形態では、合成樹脂として、メルトフローレートが異なる第1ポリプロピレンと第2ポリプロピレンを用いている。第1ポリプロピレンは、メルトフローレートが1〜3である。第2ポリプロピレンは、メルトフローレートが6〜11である。このように、本実施形態では、流動性の低い第1ポリプロピレンと、比較的流動性の高い第2ポリプロピレンを混合させて用いている。
【0035】
流動性の低い第1ポリプロピレンは、シート1となった際に真空成型等の加工時の延びをよくするために用いられる。一方で、第1ポリプロピレンの比率が高くなりすぎると、シート1を製造する際の溶融原料の流動性が低くなり、幅の広いシート1の製造が困難となる。
【0036】
流動性の低い第2ポリプロピレンは、第1ポリプロピレンと混合させることにより、シート1を製造する際の溶融原料の流動性を良好なものにするために用いられる。一方で、この第2ポリプロピレンの比率が高くなりすぎると、シート1となった際の真空成型等の加工時の延びが低下して加工性が悪くなる傾向にある。
【0037】
本実施形態においては、第1ポリプロピレンと第2ポリプロピレンとの混合割合を調節することで、製造効率がよく、加工性の高いシート1の製造を可能としている。第1ポリプロピレンと第2ポリプロピレンとの混合割合は、上記質量部の範囲において、セルロース系原料の混合割合との関係で調整を行う。
【0038】
本実施形態では、第1ポリプロピレンのメルトフローレートを1〜3としており、質量部を18〜30質量部としている。第1ポリプロピレンのメルトフローレートを1未満とすると、原料を溶融した際の流動性が確保できないおそれがある。逆に、第1ポリプロピレンのメルトフローレートが3を超えると、第2ポリプロピレンとの差が小さくなり、シート1とした際の加工時の延びが不十分となるおそれがある。
【0039】
本実施形態では、主原料の質量部を100としたときの第1ポリプロピレンの質量部を18〜30としているが、18質量部未満の場合はシート1とした際の加工時の延びが不十分となるおそれがあり、30質量部を超えるものは原料を溶融した際の流動性が確保できないおそれがある。
【0040】
また、本実施形態では、第2ポリプロピレンのメルトフローレートを6〜11としており、質量部を5〜26としている。第2ポリプロピレンのメルトフローレートが6未満では、原料の溶融時の流動性が不良となるおそれがある。一方で、第2ポリプロピレンのメルトフローレートが11を超えると、シート1とした際の加工時の延びが不十分となるおそれがある。
【0041】
本実施形態では、主原料の質量部を100としたときの第2ポリプロピレンの質量部を5〜26としているが、5質量部未満の場合は原料を溶融した際の流動性が確保できないおそれがあり、26質量部を超える場合はシート1とした際の加工時の延びが不十分となるおそれがある。
【0042】
本実施形態においては、上記材料にメルトフローレートが6〜10のエラストマーを1〜16質量部加えている。エラストマーは、ゴム状の弾性を示す高分子の総称であり、一般にエラストマーと呼ばれている物質から、可塑性エラストマーであるいわゆる「ゴム」も含まれる。このエラストマーとしては、スチレン系、塩化ビニル系、オレフィン系、ウレタン系、又はスチレン系エラストマー等の可塑性エラストマーを用いることができる。
【0043】
本実施形態に係るエラストマーは、曲げ弾性率が200MPa以下であることが好ましい。本実施形態に係るシートは、曲げ弾性率が700MPa以上であるポリプロピレン樹脂と、曲げ弾性率が200MPa以下であるエラストマーとを含むことにより、相当量のセルロース系原料が含まれていながら、真空成型されたときにシート1の厚さにばらつきが生じにくくなる。ここで、本実施形態に係るエラストマーは、プロピレンを単量体として含んでなる共重合体である。
【0044】
このため、本実施形態によれば、真空成型性に優れるシート1が得られる。このシート1の優れた真空成型性をより安定的に確保する観点から、第1ポリプロピレンおよび第2ポリプロピレンの曲げ弾性率は1000MPa以上であることが好ましい場合があり、エラストマーの曲げ弾性率は100MPa以下であることが好ましい場合がある。エラストマーの曲げ弾性率は70MPa未満であることがより好ましい場合がある。
【0045】
本実施形態において、エラストマーのメルトフローレートを6〜10にしているのは、エラストマーのメルトフローレートが6未満の場合、原料の溶融時の流動性が不良となるおそれがあり、メルトフローレートが10を超えると、シート1とした際の加工時の延びが不十分となるおそれがあるためである。
【0046】
また、主原料の質量部を100としたときのエラストマーの質量部が1を下回ると、シート1とした際の加工時の延びが不十分となるおそれがある。エラストマーの質量部が16質量部を超えると、シート1とした際の強度が不足するおそれがある。
【0047】
本実施形態に係るセルロース系原料含有樹脂シートにおいて、第1ポリプロピレンの質量部と第2プロピレンの質量部の総和は、エラストマーの質量部に対して2倍以上5倍以下であることが好ましい。第1ポリプロピレンの質量部と第2プロピレンの質量部の総和のエラストマーの質量部に対しする比率(比率1)が5以下であることにより、シート1の真空成型性をより安定的に高めることができる。比率1が2以上であることにより、セルロース系原料含有樹脂シートの強度をより安定的に高めることができる。
【0048】
その他、本実施形態では、主原料に対する添加剤として、微細紙粉を樹脂中に分散させる分散剤と、後述するTダイ17の導出口におけるいわゆる目ヤニを防止するための外部滑材と、シート1の色合いを調節する着色料含有樹脂を加えている。この着色料含有樹脂は、例えば白色であれば酸化チタン(TiO
2)、黒色であればカーボンブラック等を含有するポリエチレン樹脂等が用いられる。色彩はこれらの白や黒には限定されず、種々の色を用いることができる。
【0049】
分散剤として高級脂肪酸を原料とする材料が例示され、その具体例として、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸などの高級脂肪酸、その有機塩(アミドなど)や金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)が挙げられる。本実施形態では、ポリプロピレンに加えてエラストマーを含有させることにより、相当量のセルロース系原料が含まれていながら、真空成型されたときにシート1の厚さにばらつきが生じにくくなる。このため、シート1は、分散剤の種類やその含有量に強く依存することなく、真空成型性に優れる。
【0050】
PP層3,4は、原料に食品容器用のグレードを有するバージンポリプロピレンを用いている。このPP層3,4に用いられる材料は、一般的に広く用いられているポリプロピレンを含む樹脂材料(ポリプロピレン樹脂)を使用することができ、シート成形用に用いられるものであれば、特にメルトフローレート等は限定されない。
【0051】
本実施形態では、上記の各原料を、図示しないペレット製造装置に投入して加熱混練し、原料ペレット5としている。製造された原料ペレット5は、
図2に示すシート製造装置10に投入され、最終的にシート1となる。
図2は、本実施形態のシート1を製造するシート製造装置10を示す概略図であり、(A)はその平面図、(B)はその側面図を示す。
【0052】
シート製造装置10は、
図2に示すように、原料ペレット5が投入されるメインホッパ11と、メインホッパ11から原料ペレット5を導入して押出機14に送り出すための導入部13と、原料ペレット5を加熱しながら搬送する押出機14と、押出機14内に設けられたスクリュー(図示省略)を駆動するための駆動部12を備えている。
【0053】
また、押出機14の前方には、原料ペレット5が溶融された溶融原料を下流側に送り出すギヤポンプ15と、後述するポリプロピレン樹脂と溶融原料とを合流させるフィードブロック16と、フィードブロック16から導出される溶融樹脂を幅方向に広げて押し出すTダイ17が設けられている。
【0054】
押出機14には、原料ペレット5を加熱搬送する際に生じるガスを押出機14の内部から排出するための排気口14aが設けられている。この排気口14aの位置と数は、押出機14の処理能力に応じて適宜変更することができる。
【0055】
Tダイ17の前方には、Tダイ17から押し出されたシート1の厚さ調節等を行うポリッシングロール機18が設けられている。ポリッシングロール機18の前方には、シート1の厚さを測定する厚さ測定器、或いはシート1の切断を行うカッター、及びシート1を巻き取る巻き取り機等が設けられている(いずれも図示省略)。
【0056】
図2(A)に示すように、押出機14の両側には、原料となるポリプロピレン樹脂21を溶融してフィードブロック16内に押し出すPPフィーダ22,23が設けられている。このPPフィーダ22,23によってフィードブロック16内に供給されたポリプロピレン樹脂は、Tダイ17から押し出された際にPP層3,4としてコア層2の表裏両面を覆うようになっている。
【0057】
なお、
図2(B)においては、PPフィーダ22,23を見やすく図示するために、押出機14の上下に配置した図となっているが、実際にはPPフィーダ22,23は押出機14とほぼ同じ高さに設置されている。このようなシート製造装置10を用いることにより、本実施形態によれば、幅が1000mm以上のコア層2を備えるシート1を製造することが可能である。上記の製造方法によれば、シート1の厚さは、0.3mmから1.3mmの範囲で製造することが可能であり、0.3mmから0.8mmの範囲で安定的に製造することが可能である。
【0058】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1について説明する。実施例1のシート1のコア層2は、表1に示すように、微細紙粉(商品名GSP:環境経営総合研究所)が53質量部と、メルトフローレート(表では「MFR」)が1.1(230℃,2.16Kg,g/10min:以下同じ)であり、曲げ弾性率が16000kgf/cm
2(1569MPa)である第1ポリプロピレン(商品名HJ340:Hyusung)が28質量部と、メルトフローレートが7.4であり、曲げ弾性率が12000kgf/cm
2(1176MPa)である第2ポリプロピレン(商品名M1400:LG Chemical)が5質量部と、メルトフローレートが8であり、曲げ弾性率が20MPaであるエラストマー(商品名VS3401:ダウケミカル)が14質量部の割合で混合された主原料によって形成される。
【0059】
さらに、実施例1のシート1のコア層2には、分散剤であるステアリン酸カルシウム(商品名Ca−St:日東化成工業)を3質量部、外部滑材である樹脂改質剤(商品名L−1000:三菱ケミカル)を0.2質量部、着色料含有樹脂である酸化チタン含有ポリエチレン樹脂(商品名GW2070:大日精化工業)を3質量部、これらを追加で混合している。なお、実施例1のシート1はコア層2の厚さが0.3mmから1.3mmであって、コア層2の両側に厚さ10μmから50μmのPP層3,4が設けられている。
【0060】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2のシート(図示省略)は、表1に示すように、実施例1と異なるところは、第2ポリプロピレン(商品名J640:Hyusung)が実施例1と異なる製品で、そのメルトフローレートが10.6であり、曲げ弾性率が13000kgf/cm
2(1274MPa)となっている点である。また、着色料含有樹脂は、カーボンブラック含有ポリエチレン樹脂(商品名PE−M SSC 90086(KE)−F BLACK:大日精化工業)を2質量部としている。その他の成分は、実施例1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0061】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例3のシート(図示省略)は、表1に示すように、実施例1と異なるところは、第1ポリプロピレン(商品名HJ340:Hyusung)の質量部が20となっており、第2ポリプロピレン(商品名J640:Hyusung)が実施例1と異なる製品で、質量部が25となっている点である。
【0062】
また、実施例1とは異なり、メルトフローレートが8であり曲げ弾性率が62.4MPaであるエラストマー(商品名VM3000:ExxonMobile)が2質量部用いられている。その他、着色料含有樹脂である酸化チタン含有ポリエチレン樹脂(商品名GW2070:大日精化工業)の質量部が6となっている点が実施例1と異なっている。その他の成分は、実施例1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0063】
(比較例1)
次に、比較例1について説明する。比較例1では、微細紙粉(商品名GSP:環境経営総合研究所)が51質量部と、メルトフローレートが10.6である第2ポリプロピレン(商品名J640:Hyusung)が39量部と、メルトフローレートが8であり、曲げ弾性率が62.4MPaであるエラストマー(商品名VM3000:ExxonMobile)が10質量部の割合で混合された主原料によって形成される。
【0064】
さらに、比較例1のシート1のコア層2には、分散剤であるステアリン酸カルシウム(商品名Ca−St:日東化成工業)を2質量部、外部滑材である樹脂改質剤(商品名L−1000:三菱ケミカル)を0.5質量部、着色料含有樹脂である酸化チタン含有ポリエチレン樹脂(商品名GW2070:大日精化工業)を7質量部、酸化防止剤(商品名アデカスタブAO−60:ADEKA)を0.2質量部、これらを追加で混合している。なお、比較例1のシート1は、実施例1のようなPP層3,4を有しない。
【0065】
(比較例2)
次に、本発明の比較例2について説明する。比較例2では、微細紙粉(商品名GSP:環境経営総合研究所)が55質量部と、メルトフローレートが0.6であり、曲げ弾性率が16000kgf/cm
2(1569MPa)である第1ポリプロピレン(商品名HB240T:Hyusung)が30質量部と、メルトフローレートが10.4であり、曲げ弾性率が13000kgf/cm
2(1274MPa)である第2ポリプロピレン(J640:Hyusung)が12質量部と、メルトフローレートが8であり、曲げ弾性率が62.4MPaであるエラストマー(商品名VM3000:ExxonMobile)が3質量部の割合で混合された主原料によって形成される。
【0066】
さらに、比較例2のシートのコア層2には、分散剤であるステアリン酸カルシウム(商品名Ca−St:日東化成工業)を3質量部、外部滑材である樹脂改質剤(商品名L−1000:三菱ケミカル)を0.5質量部、着色料含有樹脂である酸化チタン含有ポリエチレン樹脂(商品名GW2070:大日精化工業)を3質量部、酸化防止剤(商品名アデカスタブAO−60:ADEKA)を0.2質量部、これらを追加で混合している。
【0067】
(比較例3)
次に、本発明の比較例3について説明する。比較例3では、微細紙粉(商品名GSP:環境経営総合研究所)が53質量部と、メルトフローレートが0.5である第1ポリプロピレン(商品名HB240TC:Hyusung)が22質量部と、メルトフローレートが7.4である第2ポリプロピレン(M1400:LG Chemical)が5質量部と、メルトフローレートが8であるエラストマー(商品名VM3000:ExxonMobile)が10質量部と、メルトフローレートが1.2(190℃)であるエラストマー(商品名EP9182:ExxonMobile)が10質量部の割合で混合された主原料によって形成される。
【0068】
さらに、比較例3のシートのコア層2には、分散剤であるステアリン酸カルシウム(商品名Ca−St:日東化成工業)を3質量部、外部滑材である樹脂改質剤(商品名L−1000:三菱ケミカル)を0.2質量部、これらを追加で混合している。なお、比較例3においては、着色料含有樹脂は混合していない。
【0069】
【表1】
【0070】
以上の実施例1〜3、及び比較例1〜3について、シートの状態、所定の形状で真空成型を行った状態、及び強度を評価した(表2)。実施例1のシート1は、シートの状態としても割れやムラ等がなく、幅も1,050mmの幅まで安定してシートとすることができた。また、成型品とした際にも、割れ等が発生せず、非常に良好な結果を得ることができた。実施例3においては、真空成型時にシート側面にブリッジが発生し、量産における歩留まりが多少悪くなる傾向があるが、容器としての品質は良好であった。
【0071】
一方で、比較例1のシートは、コア層2に部分的にピンホール(破れ)が生成する不良が発生した。
【0072】
比較例2のシートは、シート化した状態は概ね良好であったが、成型品とした際に、一部に板厚の薄い部分が発生する等、強度が不足する不良品が発生し、製品として不適格となった。これは、シートの弾性不足が原因と思われる。
【0073】
比較例3のシートは、シート化した状態は良好であったが、成型品とした際に、気温マイナス20℃での落下衝撃テストで不合格品が発生し、製品として不適格となった。これは、シートの低温時における弾性不足が原因と思われる。
【0074】
【表2】
【0075】
このように、本実施形態の実施例1〜3では、良好なシート部材を得ることができると共に、成型加工を行った場合でも良好な加工結果を得ることができ、強度も十分であった。一方で、比較例1〜3では、一部シートについて品質が安定しないものがあり、成型品として不適合となり、強度が不足する成型品が発生した。
【0076】
このように、本実施形態の実施例1〜3では、従来の材料では困難であった良好なシート部材及び成型品を量産レベルで実現することができた。これにより、シート状の成型品の原料としてセルロース系原料含有樹脂シートを用いることができるようになったので、石油製品等の石化資源のさらなる削減を促進することができる。さらに、本発明によれば、成型品の焼却時の環境負荷の低減、マイクロプラスチックの削減等、環境に配慮した製品を供給することができる。
【0077】
(実施例4)
本発明の条件を満たす樹脂製のシート1を製造するためのセルロース系原料含有樹脂ペレットを用意した。試験番号2−1から試験番号2−6に係るペレットは、微細な紙パウダー(環境経営総合研究所)が55質量部と、メルトフローレートが1.1(230℃,2.16Kg,g/10min:以下同じ)であり、曲げ弾性率が16000kgf/cm
2(1569MPa)である第1ポリプロピレン(商品名HJ340:Hyusung)が26質量部と、メルトフローレートが10.6であり、曲げ弾性率が13000kgf/cm
2(1274MPa)である第2ポリプロピレン(商品名J640:Hyusung)が8質量部と、メルトフローレートが8であり、曲げ弾性率が62.4MPaであるエラストマー(商品名VM3000:ExxonMobile)が11質量部との割合で混合された主原料によって形成される。
【0078】
また、分散剤であるステアリン酸カルシウム(商品名Ca−St:日東化成工業)を3.1質量部、外部滑材である樹脂改質剤(商品名L−1000:三菱ケミカル)を0.1質量部、着色料含有樹脂である酸化チタン含有ポリエチレン樹脂(商品名PEF1004WHT:P&P)を3質量部、これらを追加で混合している。試験番号2−7および試験番号2−8に係るペレットは、実施例3において用いたペレットと同じである。
【0079】
これらのペレットを用いてなるコア層2と、コア層2の両面に設けられるPP層3,4とからなる樹脂製シート1(試験番号2−1から試験番号2−8)を押出成形にて製造した。ペレットの密度等の物性を表3に示し、シート1の物性を表4に示す。ペレットの物性は、ASTM 638−1に準拠するダンベル状の試験片を作成して測定した。シート1は、コア層2の両側に厚さ20μmから80μmの範囲のPP層3,4を備えていた。シート1における微細紙粉の質量の割合は51%であった。
【0080】
なお、表3において、MFR(メルトフローレート)は、前述のとおり、JIS K7210−1:2014(ISO 1133−1:2011)に準拠して、シリンダ内温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定されたメルトフローレートである。また、ペレットに関する、引張強度(単位:MPa)、引張弾性率(単位:MPa)および伸び率(単位:%)は、いずれもJIS K7161(ISO 527−1:2012)に準拠して測定された値を意味する。
【0081】
表4において、シート1に関する、引張降伏点強度(単位:MPa)、引張破断強度(単位:MPa)および引張破断伸び率(単位:%)は、いずれもJIS K6251(ISO 37:2011)に準拠して測定された値である。表4には、各物性について、樹脂流れ方向(MD、押出成形の方向)の測定結果、MDに垂直であってシート1の幅方向(TD、垂直方向)およびMDとTDとの平均値を示した。
【0082】
【表3】
【0083】
比較のため、表3には、特許文献2に開示される技術により製造されたペレットの物性を示した。特許文献2に係るペレットは、MFR(メルトフローレート)が0.6以下であるため、シートの加工性および真空成型性のいずれにおいても本発明に係るペレット(試験番号2−1から試験番号2−8のペレット)よりも劣り、特に0.8mm以下の薄肉シートを製造することは不可能である。また、特許文献2に係るペレットは引張弾性率が高いため、真空成型における絞り加工の自由度が低い。本発明に係るペレットは、メルトフローレートが0.7〜1.5であり、引張弾性率が2600MPa以下であるため、薄肉シートを製造しやすく、しかも、真空成型性に優れ、絞り加工が容易である。また、本発明に係るペレットは、伸び率が3%以上であるため、真空成型の際に破断が生じにくい。
【0084】
【表4】
【0085】
試験番号2−7および試験番号2−8のシート1を製造するために用いたペレットは、実施例3のシート1を製造するために用いたペレットと同じ材料であった。また、シート1におけるセルロース系原料(微細紙粉)の質量の割合が45%以上55%以下であった。
【0086】
試験番号2−1から試験番号2−6に係るシート1は、厚さ0.3mm以上0.8mm以下であって、引張破断伸び率の樹脂流れ方向と垂直方向との平均値が100%以上である。また、引張降伏点強度の樹脂流れ方向と垂直方向との平均値が4MPa以上である。かかるシート1は真空成型性に優れる。
【0087】
試験番号2−6から試験番号2−8に係るシート1は、厚さ0.8mm以上1.5mm以下であって、引張破断伸び率の樹脂流れ方向と垂直方向との平均値が10%以上である。また、引張降伏点強度の樹脂流れ方向と垂直方向との平均値が4MPa以上である。かかるシート1は真空成型性に優れる。
【0088】
なお、上記実施形態においては、比較例1以外ではコア層2の両面にPP層3,4を設けているが、これに限らず、必要に応じて一方のPP層3又はPP層4のみとしてもよく、食品等に使用しないのであれば、コア層2のみで包装用容器等を形成してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、第1ポリオレフィン系樹脂及び第2ポリオレフィン系樹脂を共にポリプロピレンとしたが、ポリエチレン等の他のポリオレフィン系樹脂を用いてもよい。同様に、ポリオレフィン系樹脂被覆層として、ポリプロピレン樹脂を用いているが、これに限らず、ポリエチレン樹脂等の他のポリオレフィン系樹脂を用いてもよい。