特許第6976464号(P6976464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976464窒化アルミニウムガリウム単結晶の育成方法および融液組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976464
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】窒化アルミニウムガリウム単結晶の育成方法および融液組成物
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20211125BHJP
   C30B 19/02 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   C30B29/38 D
   C30B19/02
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-570291(P2020-570291)
(86)(22)【出願日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】JP2019004431
(87)【国際公開番号】WO2020161860
(87)【国際公開日】20200813
【審査請求日】2021年6月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 孝介
(72)【発明者】
【氏名】岩井 真
(72)【発明者】
【氏名】菱木 達也
(72)【発明者】
【氏名】小川 博久
【審査官】 印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−187317(JP,A)
【文献】 特開2005−060216(JP,A)
【文献】 特開2014−111541(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/030718(WO,A1)
【文献】 YASUI, K. et al.,Growth of AlxGa1-xN and InyGa1-yN Single Crystals Using the Na Flux Method,phys. stat. sol.,2001, Vol. 188, No. 1,pp. 415 - 419
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 19/02
C30B 29/38
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融液組成物中で種結晶上にナトリウムフラックス法によって窒化アルミニウムガリウム結晶を育成する方法であって、
前記融液組成物が、ナトリウム金属、ガリウム金属およびアルミニウム金属を含有しており、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属の組成をmol%単位で表示する三成分系図において、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属のモル比率(Na:Ga:Al)が、(80:15:5)、(60:30:10)、(47:13:40)および(67:8:25)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域中に存在することを特徴とする、窒化アルミニウムガリウム結晶の育成方法。
【請求項2】
前記三成分系図において、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属のモル比率(Na:Ga:Al)が、(72:12:16)、(55:12:33)、(55:23:22)および(72:2:7)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域中に存在することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記窒化アルミニウムガリウム結晶が、AlGa1−xN(x=0.1〜0.9)の組成を有することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記融液組成物が亜鉛を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項5】
融液組成物中でナトリウムフラックス法によって窒化アルミニウムガリウム結晶を育成するための融液組成物であって、
前記融液組成物が、ナトリウム金属、ガリウム金属およびアルミニウム金属を含有しており、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属の組成をmol%単位で表示する三成分系図において、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属のモル比率(Na:Ga:Al)が、(80:15:5)、(60:30:10)、(47:13:40)および(67:8:25)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域中に存在することを特徴とする、融液組成物。
【請求項6】
前記三成分系図において、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属のモル比率(Na:Ga:Al)が、(72:12:16)、(55:12:33)、(55:23:22)および(72:2:7)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域中に存在することを特徴とする、請求項5記載の融液組成物。
【請求項7】
前記融液組成物が亜鉛を含有することを特徴とする、請求項5または6記載の融液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウムガリウム単結晶の育成方法および融液組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム単結晶は、青色半導体レーザーなどに適した材料として実用化が進んでいる。特に、ナトリウムフラックス法によって、比較的低温かつ低圧で窒化ガリウム単結晶を育成する方法が開示されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
一方、窒化アルミニウム単結晶のアルカリ土類フラックス法による育成に適した融液組成物が特許文献3に開示されている。また、特許文献4には、ガリウムとアルミニウムとナトリウムとを含む融液を窒素含有雰囲気中で加圧することによって、AlN単結晶を育成することを開示している。
【0004】
一方、最近、深紫外線レーザー光を発振できる窒化アルミニウムガリウム単結晶(AlGaN)を高生産性で育成することが望まれており、特に窒化アルミニウムガリウム単結晶を含む基板やテンプレートの提供が望まれる。この点では、非特許文献1、非特許文献2には、気相法によって窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成することが記載されている。
【0005】
更に、非特許文献3には、アルミニウム金属、ガリウム金属およびナトリウムアジド(NaN)の融液からフラックス法によって窒化アルミニウムガリウム結晶を育成することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2012年1月 SEIテクニカルレビュー第180号 p83-88 「AlNを用いた高Al組成AlGaN HEMTの開発」
【非特許文献2】Journal of Crystal Growth Vol. 281, Issue 1, 2005, Pages 47-54
【非特許文献3】Phys. Stat. sol.(a) 188, No.1, 415-419 (2001)Growth of AlxGa1-xN and InyGa1-yN Single Crystals Using the Na Flux Method
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5289982号
【特許文献2】特許第5735420号
【特許文献3】特開2008-266067
【特許文献4】特許第4780720号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし,品質の良い窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成することは困難であった。例えば、非特許文献1、2では、MOVPE法やHVPE法のような気相法によって窒化アルミニウムガリウム単結晶の薄膜をエピタキシャル成長させているが、高品質の単結晶を得ることが難しく、かつ育成速度も低い。
【0009】
非特許文献3記載の方法では、結晶育成時の圧力を100気圧と超高圧にする必要があった。また、窒化アルミニウムガリウム結晶は確かに得られているが、しかし粒径300〜500ミクロンの粉末状の結晶しか得られておらず、まとまった膜状、あるいは板状の窒化アルミニウムガリウム単結晶は得られていない。粉末状の窒化アルミニウムガリウム単結晶は、それ自体で各種デバイスの下地や素材となるものではなく、膜状や板状の窒化アルミニウムガリウム結晶を得る製法が要望される。
【0010】
本発明の課題は、膜状や板状の窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、融液組成物中で種結晶上にナトリウムフラックス法によって窒化アルミニウムガリウム結晶を育成する方法であって、
前記融液組成物が、ナトリウム金属、ガリウム金属およびアルミニウム金属を含有しており、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属の組成をmol%単位で表示する三成分系図において、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属のモル比率(Na:Ga:Al)が、(80:15:5)、(60:30:10)、(47:13:40)および(67:8:25)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域中に存在することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、融液組成物中でナトリウムフラックス法によって窒化アルミニウムガリウム結晶を育成するための融液組成物であって、
前記融液組成物が、ナトリウム金属、ガリウム金属およびアルミニウム金属を含有しており、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属の組成をmol%単位で表示する三成分系図において、前記ナトリウム金属、前記ガリウム金属および前記アルミニウム金属のモル比率(Na:Ga:Al)が、(80:15:5)、(60:30:10)、(47:13:40)および(67:8:25)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域中に存在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明者は、ルツボ中でアルミニウム金属、ガリウム金属、ナトリウム金属を混合および溶融させて融液とし、ナトリウムフラックス法によって窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成することを検討した。その際、当初、Naに対する原料金属(Ga+Al)の比(mol%)を一定にして育成することを検討してきたが、種結晶膜上には窒化アルミニウムガリウム結晶は形成されなかった。
【0014】
このため、本発明者は、Na:Gaのモル比率を4:1近傍にすると高品質のGaN単結晶を育成し易いことに着目した。その上で、Alを追加する(Al/(Al+Ga)比を高める)ことによって、膜状や板状などの窒化アルミニウムガリウム単結晶が析出することを発見した。その上で各金属の組成を変化させて検討を続けた結果として、上述したような組成範囲で、窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成可能なことを見いだし、本発明に到達した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】融液組成物の三成分系図を示す。
図2】本発明の組成範囲を示す融液組成物の三成分系図である。
図3】本発明および好適実施形態の組成範囲を示す融液組成物の三成分系図である。
図4】実施例1で得られた窒化アルミニウムガリウム単結晶の表面を示す顕微鏡写真である。
図5】実施例1の結晶のX線回折測定結果を示す。
図6】実施例1の結晶の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を示す写真である。
図7図6の写真のうち枠で包囲した部分の拡大写真である。
図8】実施例1の結晶のSIMS分析結果を示す。
図9】実施例2の結晶の顕微鏡写真を示す。
図10】実施例6の結晶の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明においては、融液組成物中で種結晶上にナトリウムフラックス法によって窒化アルミニウムガリウム結晶を育成する方法を提供する。
【0017】
本発明の融液組成物は、ナトリウム金属(Na)、ガリウム金属(Ga)およびアルミニウム金属(Al)を含有している。ここで、図1図3は、それぞれ、ナトリウム金属、ガリウム金属およびアルミニウム金属の組成をmol%単位で表示する三成分系図を示すものである。ただし、図1は、Na、Ga、Alのそれぞれについて0〜100モル%の範囲の組成を示しており、図2図3は、図1の組成図の一部を拡大して示す。また、A〜Mの符号は,それぞれ各組成を示す点である。
【0018】
ここで、本発明により、ナトリウム金属、ガリウム金属およびアルミニウム金属のモル比率(Na:Ga:Al)が、A(80:15:5)、B(60:30:10)、C(47:13:40)およびD(67:8:25)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域T中に存在するようにする。(80:15:5)、(60:30:10)、(47:13:40)および(67:8:25)は、図1図3において、点A、点B、点C、点Dに対応している。また、四辺形は、点A、点B、点Cおよび点Dの四点を頂角としている。斜線で示される領域Tは、この四辺形によって包囲された領域である。このような組成範囲の融液組成物を用いることによって、ナトリウムフラックス法で、品質の良い窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成可能である。
【0019】
好適な実施形態においては、前記三成分系図において、ナトリウム金属、ガリウム金属およびアルミニウム金属のモル比率(Na:Ga:Al)が、点J(72:12:16)、点K(55:12:33)、点L(55:23:22)および点M(72:2:7)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域W中に存在する(図3参照)。これによって、窒化アルミニウムガリウム単結晶の品質が更に向上し、膜状や板状のまとまった形態を有する単結晶が一層形成され易くなる。
【0020】
融液組成物中には、アルミニウム金属、ガリウム金属、ナトリウム金属以外に添加物を添加することができる。
特に亜鉛を添加することによって、得られる窒化アルミニウムガリウム単結晶におけるアルミニウムの組成比率を向上させることができる。特に、アルミニウム金属100mol%に対し、亜鉛を1〜40mol%添加することが好ましい。
【0021】
好適な実施形態においては、本発明により、窒化アルミニウムガリウム単結晶が、AlGa1−xN(x=0.1〜0.9)の組成を有する。更に好ましくは、xを0.25以上、0.75以下とすることができる。
【0022】
単結晶の定義について述べておく。結晶の全体にわたって規則正しく原子が配列した教科書的な単結晶を含むが、それのみに限定する意味ではなく、一般工業的に流通している単結晶という意味である。すなわち、結晶がある程度の欠陥を含んでいたり、歪みを内在していたり、不純物がとりこまれていたりしていてもよく、多結晶(セラミックス)と区別して、これらを単結晶と呼んで用いているのと同義である。
【0023】
好適な実施形態においては、種結晶が、AlGa1−zN(z=0.05〜0.80)の組成を有する単結晶である。これによって、種結晶上に窒化アルミニウムガリウム結晶が特に成長し易くなる。本発明の観点からは、は、zは0.3以上であることが更に好ましく、また,0.7以下であることが更に好ましい。
【0024】
種結晶は、バルク状の基板であってよく、あるいは、別体の支持基板上に形成された種結晶膜であってもよい。
【0025】
支持基板の材質は、特には限定されないが、サファイア、AlNテンプレート、GaNテンプレート、GaN自立基板、シリコン単結晶、SiC単結晶、MgO単結晶、スピネル(MgAl)、LiAlO、LiGaO、LaAlO,LaGaO,NdGaO等のペロブスカイト型複合酸化物、SCAM(ScAlMgO)を例示できる。また組成式〔A1−y(Sr1−xBa〕〔(Al1−zGa1−u・D〕O(Aは、希土類元素である;Dは、ニオブおよびタンタルからなる群より選ばれた一種以上の元素である;y=0.3〜0.98;x=0〜1;z=0〜1;u=0.15〜0.49;x+z=0.1〜2)の立方晶系のペロブスカイト構造複合酸化物も使用できる。支持基板の材質は、特に好ましくは酸化アルミニウムとする。ここで、支持基板を構成する酸化アルミニウムは、単結晶(サファイア)であってよく、多結晶アルミナであってよく、結晶配向性アルミナであってよく、またアモルファスアルミナであってもよい。
【0026】
好適な実施形態においては、支持基板上に、窒化アルミニウムガリウム結晶からなる種結晶膜を設ける。種結晶膜を形成する際には、まず支持基板上にバッファ層を設け、続けて種結晶膜を育成することが好ましい。
【0027】
こうしたバッファ層の形成方法は気相成長法が好ましく、有機金属化学気相成長(MOCVD: Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、ハイドライド気相成長(HVPE)法、MBE法、昇華法を例示できる。
【0028】
種結晶膜は、一層であってよく、あるいは支持基板側のバッファ層を含んでいて良い。種結晶膜の形成方法は気相成長法を好ましい一例として挙げることができ、有機金属化学気相成長(MOCVD: Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、ハイドライド気相成長(HVPE)法、パルス励起堆積(PXD)法、MBE法、昇華法を例示できる。有機金属化学気相成長法が特に好ましい。
【0029】
種結晶層の厚さは、結晶育成時のメルトバックや消失を防止するという観点からは、0.5μm以上が好ましく、2μm以上が更に好ましい。また、種結晶層の厚さは、生産性の観点からは15μm以下が好ましく、4μm以下が更に好ましい。
【0030】
次いで、種結晶上に窒化アルミニウムガリウム単結晶をナトリウムフラックス法によって育成する。この際、結晶育成温度を780〜950℃とすることが好ましく、800〜900℃とすることが更に好ましい。
【0031】
フラックス法では、窒素原子を含む気体を含む雰囲気下で窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成する。このガスは窒素ガスが好ましいが、アンモニアでもよい。雰囲気の圧力は特に限定されないが、フラックスの蒸発を防止する観点からは、10気圧以上が好ましく、30気圧以上が更に好ましい。ただし、圧力が高いと装置が大がかりとなるので、雰囲気の全圧は、2000気圧以下が好ましく、500気圧以下が更に好ましい。雰囲気中の窒素原子を含む気体以外のガスは限定されないが、不活性ガスが好ましく、アルゴン、ヘリウム、ネオンが特に好ましい。
【0032】
窒化アルミニウムガリウム単結晶を支持基板からの剥離後に自立させるという観点からは、窒化アルミニウムガリウム単結晶の厚さは、300μm以上であることが好ましく、500μm以上であることが更に好ましい。
【0033】
支持基板上に窒化アルミニウムガリウム単結晶を形成した状態で、その上に更に機能素子構造を設けるテンプレート基板として用いることができる。あるいは、窒化アルミニウムガリウム単結晶を支持基板から分離し、自立基板として用いることができる。13族元素窒化物結晶を支持基板から加工によって分離するには、レーザリフトオフ法(LLO)や研削加工が好ましい。
【0034】
こうして得られた13族元素窒化物結晶上に機能素子構造を形成する。この機能素子構造は、高輝度・高演色性の白色LEDや高速高密度光メモリ用青紫レーザディスク、ハイブリッド自動車用のインバータ用のパワーデバイスなどに用いることができる。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
ナトリウム金属15.1g、ガリウム金属11.8g、およびアルミニウム金属3.1gをグローブボックス内で秤量した。この原料を、内径φ84mmのアルミナ製坩堝(育成容器)に充填した。充填に際して、坩堝の底部に種結晶基板を設置した。種結晶基板としては、φ2インチのテンプレート基板を用いた。ここでテンプレートとは、サファイア基板上に種結晶膜がエピタキシャル成長されたものを言う。種結晶膜は、AlGa1−zN薄膜(z=0.5:厚さ2ミクロン)とした。育成容器の底に、テンプレートの種結晶膜が上向きとなるように基板を水平に配置した。
【0036】
次いで、坩堝を育成装置内にセットし、真空引きした後に窒素ガスを導入し、加熱を開始すると共にすこしずつ圧力を上げ、800℃到達時に4.0MPaとなるように加圧スピードを調整した。ついで、800℃一定に保持したまま48時間育成容器を回転することで原料を攪拌し、窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成した。室温まで自然放冷した後、育成装置から育成容器を取り出し、エタノール中で処理することにより、Na、Ga、Alおよびその合金を溶解させた。その後、蒸留水をエタノールに少しずつ加え、溶解速度が遅くなったら温水に漬け、溶け残ったGa、Alを除去して、窒化アルミニウムガリウム単結晶を分離、回収した。窒化アルミニウムガリウム単結晶がテンプレートの略全面に成長しており、厚さは約40ミクロンであった。
【0037】
窒化アルミニウムガリウム単結晶の表面を顕微鏡で観察したところ、50ミクロン程度の六角形を敷き詰めたような表面モフォロジーが観察された。この写真を図4に示す。
【0038】
また、この結晶のX線回折測定(BRUKER D8 DISCOVER)を行った。図5にX線ロッキングカーブを示す。回折角34.6度付近に、AlxGa1-xN由来のピーク(図5中のピーク4)が観測されており、回折角から求めたxの値はx=0.06であり、すなわちAl組成は6mol%となった。
【0039】
また、結晶の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、サファイア層およびHVPE-AlGaN薄膜上に、厚さ約40μmのAlGaNが成長していた(図6図7参照)。ただし、図7は、図6の表面付近の領域(枠内の領域)を拡大した写真である。下から見て、サファイア層(sapphire)、HVPE-AlGaN薄膜、AlGaNが確認される。更に二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)分析により、AlとGaの比を測定したところ、Alの比率は10モル%であった(図8参照)。SIMS分析の方が精度が高いため、回折角から求められるAl組成は、少し低くなることがわかった。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同様にして窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成した。ただし、各原料の質量比率を、表1に示すように変更し、また育成温度を860℃にした。これ以外は実施例1と同様にして窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成した。得られた窒化アルミニウムガリウム単結晶は略六角形であり、厚さは約0.03mmであった。この顕微鏡写真を図9に示す。
【0041】
この結晶のX線回折測定(BRUKER D8 DISCOVER)を行った。X線ロッキングカーブからは、回折角34.817度付近に、AlxGa1-xN由来のピークが観測されており、このピークのxはx=0.17であることから、Alが17%となるAlGaN結晶が得られたことを確認した。
【0042】
(実施例3)
育成温度を900℃にした以外は実施例2と同様に育成したところ、得られた単結晶の組成はAlGaNであることを確認した。
【0043】
(実施例4)
育成温度を800℃にした以外は実施例2と同様に育成したところ、得られた単結晶の組成はAlGaNであることを確認した。
【0044】
(実施例5)
育成温度を895℃にした以外は実施例2と同様に育成したところ、得られた単結晶の組成はAlGaNであることを確認した。
【0045】
(実施例6)
原料に亜鉛0.15g(Al 100mol%に対して2mol%)、2.7g(同36mol%)を添加した以外は実施例2と同様に育成したところ、得られた単結晶は略六角形であり、厚さは約0.03mmであった。この写真を図10に示す。
【0046】
また、この結晶のX線回折測定(BRUKER D8 DISCOVER)を行った。X線ロッキングカーブからは、回折角34.915度付近に、AlxGa1-xN由来のピークが観測されており、このピークのxはx=0.246であることから、Alが25%程度となるAlGaN結晶が得られたことを確認した。
【0047】
(実施例7〜14、比較例1〜3)
窒化アルミニウムガリウム単結晶を育成可能な融液組成範囲を確認するため、各原料の質量を表1、表2記載の数値とし、それ以外の条件は実施例2と同様に育成した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
この結果、実施例7〜14では、いずれも略六角形の単結晶が得られ、このX線回折測定により、いずれの結晶もAlGaNであることが確認できた。
一方、比較例1〜3ではテンプレート表面のAlGaN単結晶の育成を確認することができなかった。
【0051】
なお、三成分系図における各組成に対応する点A〜Mは図2図3に示す。これらの実施例、比較例からわかるように、モル比率(Na:Ga:Al)が、A(80:15:5)、B(60:30:10)、C(47:13:40)およびD(67:8:25)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域中に存在する場合、特に好ましくはJ(72:12:16)、K(55:12:33)、L(54:22:24)およびM(72:2:7)の四点を頂角とする四辺形によって包囲された領域中に存在する場合には、良好なAlGaN膜が生成することがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10