特許第6976468号(P6976468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6976468
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】充放電試験装置及び充放電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20211125BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20211125BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20211125BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20211125BHJP
【FI】
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
   H02J7/00 Q
   H02J7/02 H
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2021-67195(P2021-67195)
(22)【出願日】2021年4月12日
【審査請求日】2021年10月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521156103
【氏名又は名称】佐藤 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕之
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−29485(JP,A)
【文献】 特開2010−98788(JP,A)
【文献】 特開平8−19188(JP,A)
【文献】 特開2014−224817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
G01R 31/36−31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電試験を行うための充放電回路を備えた充放電試験装置であって、
充放電試験中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備えたことを特徴とする充放電試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の充放電試験装置において、前記電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有し、充放電試験中に、予め設定された測定時間間隔で、前記電圧測定回路により前記各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が基準電圧値より高いリチウムイオン電池に並列接続された前記バイパス回路を一定時間オンにして該リチウムイオン電池の充放電電流の一部を該バイパス回路に分流させることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項3】
請求項2記載の充放電試験装置において、前記各リチウムイオン電池の容量は、定電流充放電の設定電流値と、実際に定電流充放電中に前記各バイパス回路に流れた電流値から算出されることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項4】
請求項2記載の充放電試験装置において、定電流充放電中に、前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定することを特徴とする充放電試験装置。
【請求項5】
請求項4記載の充放電試験装置において、前記各バイパスオン時測定電圧又は前記各バイパスオフ時測定電圧と、前記各接触抵抗値を用いて、前記各リチウムイオン電池の真の電圧を算出することを特徴とする充放電試験装置。
【請求項6】
請求項1記載の充放電試験装置において、前記電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に接続されたオンオフスイッチ付きの充放電電流調整回路と、該各充放電電流調整回路に共通して接続された共通電源とを有し、充放電試験中に予め設定された測定時間間隔で、前記電圧測定回路により前記各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が上限電圧値より高いリチウムイオン電池に接続された前記充放電電流調整回路を一定時間オンにして該リチウムイオン電池からの放電で前記共通電源を充電して該リチウムイオン電池の充放電電流を減少させ、測定された充放電電圧が下限電圧値より低いリチウムイオン電池に接続された前記充放電電流調整回路を一定時間オンにして前記共通電源からの放電で該リチウムイオン電池を充電して該リチウムイオン電池の充放電電流を増加させることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項7】
請求項6記載の充放電試験装置において、前記共通電源は、コンデンサ又は二次電池であることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の充放電試験装置において、前記共通電源に接続され、該共通電源から前記充放電回路に一定電圧の電力を供給するDC−DCコンバータを備えたことを特徴とする充放電試験装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1記載の充放電試験装置において、前記各リチウムイオン電池の容量は、定電流充放電の設定電流値と、実際に定電流充放電中に前記各充放電電流調整回路に流れた電流値から算出されることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1記載の充放電試験装置において、定電流充放電の設定電流値を増減させた時に、前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池の充放電電圧の変化量と、前記各リチウムイオン電池に流れる電流の変化量から、前記各リチウムイオン電池の電池内部抵抗値を算出することを特徴とする充放電試験装置。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか1記載の充放電試験装置において、定電圧充放電中に、前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池の充放電電圧から総電圧を算出し、該総電圧の変動傾向に基づいて、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が定電圧充放電の設定電圧値に近付くように、前記充放電回路の出力電圧を増減させることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項12】
請求項2〜10のいずれか1記載の充放電試験装置において、定電流充放電中に前記電圧測定回路によって測定される前記各リチウムイオン電池の充放電電圧のいずれか1つが、予め設定された1又は異なる複数の規定電圧に到達する度に、定電流充放電の設定電流値を段階的に減少させることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1記載の充放電試験装置において、複数の前記リチウムイオン電池は、該各リチウムイオン電池が予め直列接続されてモジュール化された電池モジュール又は該電池モジュールが複数直列接続された組電池であることを特徴とする充放電試験装置。
【請求項14】
直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電を制御する充放電制御装置であって、
充放電中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備え、該電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有し、前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定することを特徴とする充放電制御装置。
【請求項15】
請求項14記載の充放電制御装置において、前記各バイパスオン時測定電圧又は前記各バイパスオフ時測定電圧と、前記各接触抵抗値を用いて前記各リチウムイオン電池の真の電圧を算出し、過充電を防止することを特徴とする充放電制御装置。
【請求項16】
請求項15記載の充放電制御装置において、前記各リチウムイオン電池の真の電圧に基づいて該各リチウムイオン電池の容量及び電池内部抵抗値を求め、該各リチウムイオン電池の劣化状況を診断することを特徴とする充放電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続された複数の二次電池(リチウムイオン電池)の充放電試験を安全かつ効率的に行うための充放電試験装置及び直列接続された複数の二次電池の充放電を高精度で制御することができる充放電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等のIT機器や電気自動車等に使用される二次電池(リチウムイオン電池)の需要が急速に増加している。この二次電池の量産過程の最終工程では、生産された二次電池の活性化及び品質検査が行われており、充放電試験により、所定の性能や特性を満たしているか否かを検査してから出荷している。製造されたリチウムイオン電池の特性は個々に異なっており、容量や内部抵抗にばらつきがあるため、複数のリチウムイオン電池を単純に直列接続して充電すると、容量の小さなものが、容量の大きなものに比べて早期に(短時間で)満充電となって上限電圧に達することになる。そして、容量の大きなものが満充電になるまで充電を続け、容量の小さなものが過充電となった場合、ニッケル水素電池、カドニウム電池と比較して、セパレータ耐圧が低いリチウムイオン電池では、セパレータが耐え切れずに破壊され、これにより電極間の短絡が生じ、リチウムイオン電池内部の溶剤の爆発的燃焼を招く危険性がある。これに対し、過充電を防止するために、容量の小さなものを基準にして充電時間を制御するだけでは、容量の大きなものが満充電に達していないにもかかわらず、全体の充電が停止し、十分な評価や試験を行うことができないという問題がある。また、定電圧充放電過程においては、各リチウムイオン電池の特性ばらつきに伴う電圧値の誤差が看過し難いものとなり、容量確認等の試験で精密な測定値を得ることが困難になるという問題もある。これに対し、リチウムイオン電池向けの定電流定電圧(CC−CV)方式充放電試験装置において主に用いられてきた並列接続方式は、充放電試験中の試験体の安全の確保という点で優れる一方で、定電流充放電のためには、高電圧、高電流を出力、制御しうる高性能かつ高価で大型な充放電電源を必要とし、充放電試験装置の複雑化、大型化、高コスト化を招きやすいという問題がある。また、本来であれば低電圧、低電流で実行可能な定電圧充放電時にも、高出力の充放電電源を用いるため、試験効率の悪化を招くという問題もある。
【0003】
以上のような直列接続方式及び並列接続方式の充放電試験装置のそれぞれの問題点を改善するために、例えば、特許文献1には、直列接続された複数の二次電池に接続され充放電回路を形成する充放電用電源と、二次電池毎に直列に接続された第1のスイッチング素子を有する直列制御回路と、二次電池毎に逆バイアスがかかる方向に並列に接続されたダイオード及びダイオードに並列に接続された第2のスイッチング素子を有する並列制御回路と、各二次電池の電圧を検知して二次電池の放電が未完了の間はダイオードに電流を流すことなく放電を維持し、放電が完了したら第1のスイッチング素子をオフにし、第2のスイッチング素子をオンにして放電電流をバイパス回路に流す動作を行う個別制御手段とを備えた二次電池の充放電試験システムが開示されている。また、特許文献2には、複数の充放電回路と、複数の充放電回路を直列又は並列に接続する複数のスイッチと、二次電池の端子間電圧を検出する検出部と、端子間電圧に基づいて二次電池に出力する充放電電圧を決定し、充放電電圧となるように、複数のスイッチを開閉して複数の充放電回路の組み合わせを制御する制御部とを有する充放電装置が提案されている。さらに、特許文献3には、複数のセル(二次電池)から成る組電池(電池モジュール)に対して定電流−定電圧充放電制御を行って組電池の評価を行う組電池評価試験システムにおいて、各セルの出力電圧を検出する電圧検出線を各セル毎に収容し、かつ各セルの除外/接続をセル毎に行う除外装置を備えた組電池評価試験装置と、各セル電圧検出線から各セルの出力電圧を検出し、検出された出力電圧を合計して得られる組電池総電圧を検出する充放電部と、充放電部に対して組電池総電圧の検出を指令する制御部とから構成される組電池評価試験システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019−102267号公報
【特許文献2】特開2016−211994号公報
【特許文献3】特許第3981530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、直列に接続された複数の二次電池の定電流放電試験において、電圧が規定電圧(放電終止電圧)に達して放電が完了した二次電池を順次、充放電回路から切り離しても、充放電回路に流れる放電電流を一定に保つことができ、各二次電池の放電容量を精密に計測することができるが、各二次電池の特性のばらつきにより放電時間が異なるため、全ての二次電池の試験を同時に終了させることはできない。また、定電圧で充放電試験を行おうとしても、各二次電池の充放電電圧を調整する手段を備えていないため、従来の直列接続方式の試験装置と同様に、各二次電池の特性ばらつきに伴う電圧値の誤差が発生し、適正な試験を行うことができないという問題がある。また、特許文献2及び特許文献3の充放電試験装置やその制御方法は、構成や制御が複雑で、高価であり、実用性に欠けるため、ほとんど採用されていない。
従って、直列接続された複数の二次電池(リチウムイオン電池)の充放電試験を低コストで安全かつ効率的に行うことができる実用的な充放電試験装置の実現が望まれている。
一方、電気自動車やハイブリッドカーには、車載電池(複数の二次電池(リチウムイオン電池)が直列接続された組電池(電池モジュール)又は組電池が複数直列接続されたもの)の各セル(各単電池、各二次電池)の電圧やモジュール温度などを測定し、車載電池を監視、制御(保護)するためのBMS(バッテリーマネジメントシステム)が搭載されている。このBMSは、過充電及び過放電の検出のほか、各セル間の電圧バランスを維持する機能、セルの充電状態や劣化状態を推定する機能も有している。しかし、各セルの電圧を測定するためにセルとコンタクトするコンタクトユニット内に、腐食、絶縁物の付着、ボルトの緩み、配線の劣化又は断線等が生じて接触抵抗異常(高抵抗接触)が発生した場合、セルの電圧が低く検出され、過充電による発煙、発火、爆発等の事故が発生する危険性がある。従って、過充電を防止するためには、電圧測定時のコンタクトユニットにおける接触抵抗異常を正しく検出して電圧測定の精度を向上させる必要がある。また、コンタクトユニットにおける接触抵抗値を正しく検出して、セル電圧の真の値を求めることができれば、それに基づいてセルの容量及び内部インピーダンスを精度良く測定して、セルの劣化状況を正確に診断しながら制御することが可能となる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電試験を低コストで効率性に行うことができる充放電試験装置及び直列接続された複数のリチウムイオン電池のそれぞれの劣化状態を正確に診断して充放電を高精度で制御することができる充放電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る充放電試験装置は、直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電試験を行うための充放電回路を備えた充放電試験装置であって、
充放電試験中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を有する。
ここで、直列接続される複数のリチウムイオン電池(セル)には、特性(電池内部抵抗値)のばらつきが存在するが、電圧バランス調整手段で、各リチウムイオン電池の充放電電圧を予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整して充放電電圧の均等化を図ることにより、充放電試験の終了時点で、過充電、未充電又は未放電等の発生を防止することができ、充放電試験を確実かつ効率的に行うことができる。例えば、定電流充放電時は、いずれか1つのリチウムイオン電池の充放電電圧が、予め設定した充電終止電圧又は放電終止電圧に到達した時点で充放電を停止させることにより、全てのリチウムイオン電池の充放電電圧が、充電終止電圧又は放電終止電圧とほぼ同等(許容できるばらつきの範囲内)の電圧に到達した状態で充放電を完了させることができる。また、定電圧充放電時は、いずれか1つのリチウムイオン電池の充放電電流が、予め設定した充電終止電流又は放電終止電流に到達した時点、又は充放電開始から所定時間が経過した時点で充放電を停止させることにより、全てのリチウムイオン電池の充放電電流が、充電終止電流又は放電終止電流とほぼ同等(許容できるばらつきの範囲内)の電流に到達した状態で充放電を完了させることができる。なお、充放電電圧の許容ばらつき範囲が、例えば0.1%以下に設定されれば、全てのリチウムイオン電池の充放電電圧をほぼ同一(均一)として扱うことができるが、充放電電圧の許容ばらつき範囲は、これに限定されない。また、直列接続されるリチウムイオン電池の数は特に限定されない。
【0008】
第1の発明に係る充放電試験装置において、前記電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有し、充放電試験中に、予め設定された測定時間間隔で、前記電圧測定回路により前記各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が基準電圧値より高いリチウムイオン電池に並列接続された前記バイパス回路を一定時間オンにして該リチウムイオン電池の充放電電流の一部を該バイパス回路に分流させることが好ましい。
ここで、電圧測定回路(各電圧センサ)による各リチウムイオン電池の充放電電圧(端子電圧)の測定時間間隔は、適宜、選択される。また、バイパス回路をオンにする一定時間は、測定時間間隔と同等以下の範囲で、適宜、選択される。なお、バイパス回路に流す電流は、充放電電流の0.1〜10%(好ましくは1〜5%)の範囲であることが好ましいが、これらの範囲に限定されるものではない。また、基準電圧値は、適宜、選択されるが、電圧測定回路により同時に測定された各リチウムイオン電池の充放電電圧の最低値を基準電圧値に設定することにより、全てのリチウムイオン電池の充放電電圧を基準電圧値に揃える(均一化する)ことができ、充放電電圧のばらつきをほぼ解消することができる。
【0009】
第1の発明に係る充放電試験装置において、前記各リチウムイオン電池の容量は、定電流充放電の設定電流値と、実際に定電流充放電中に前記各バイパス回路に流れた電流値から算出することができる。
【0010】
第1の発明に係る充放電試験装置において、定電流充放電中に、前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定することが好ましい。
【0011】
第1の発明に係る充放電試験装置において、前記各バイパスオン時測定電圧又は前記各バイパスオフ時測定電圧と、前記各接触抵抗値を用いて、前記各リチウムイオン電池の真の電圧を算出することができる。
【0012】
第1の発明に係る充放電試験装置において、前記電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に接続されたオンオフスイッチ付きの充放電電流調整回路と、該各充放電電流調整回路に共通して接続された共通電源とを有し、充放電試験中に予め設定された測定時間間隔で、前記電圧測定回路により前記各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が上限電圧値より高いリチウムイオン電池に接続された前記充放電電流調整回路を一定時間オンにして該リチウムイオン電池からの放電で前記共通電源を充電して該リチウムイオン電池の充放電電流を減少させ、測定された充放電電圧が下限電圧値より低いリチウムイオン電池に接続された前記充放電電流調整回路を一定時間オンにして前記共通電源からの放電で該リチウムイオン電池を充電して該リチウムイオン電池の充放電電流を増加させてもよい。
ここで、充放電電流調整回路によって増加させる電流は、充放電電流の0.1〜10%(好ましくは1〜5%)の範囲であることが好ましい。また、上限電圧値及び下限電圧値は、適宜、選択され、上限電圧値と下限電圧値との差によって、充放電電圧の許容ばらつき範囲が決定されるので、上限電圧値と下限電圧値を同一値に設定すれば、全てのリチウムイオン電池の充放電電圧を同一値に揃える(均一化する)ことができ、充放電電圧のばらつきをほぼ解消することができる。
【0013】
第1の発明に係る充放電試験装置において、前記共通電源は、コンデンサ又は二次電池であることが好ましい。
【0014】
第1の発明に係る充放電試験装置において、前記共通電源に接続され、該共通電源から前記充放電回路に一定電圧の電力を供給するDC−DCコンバータを備えてもよい。
【0015】
第1の発明に係る充放電試験装置において、前記各リチウムイオン電池の容量は、定電流充放電の設定電流値と、実際に定電流充放電中に前記各充放電電流調整回路に流れた電流値から算出することができる。
【0016】
第1の発明に係る充放電試験装置において、定電流充放電の設定電流値を増減させた時に、前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池の充放電電圧の変化量と、前記各リチウムイオン電池に流れる電流の変化量から、前記各リチウムイオン電池の電池内部抵抗値を算出することもできる。
ここで、定電流充放電の設定電流値は、充放電回路によって全てのリチウムイオン電池に対して同時に増減させることもできるし、各バイパス回路のオンオフを切替えることによって各リチウムイオン電池に対して個別(選択的)に増減させることもできる。
【0017】
第1の発明に係る充放電試験装置において、定電圧充放電中に、前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池の充放電電圧から総電圧を算出し、該総電圧の変動傾向に基づいて、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が定電圧充放電の設定電圧値に近付くように、前記充放電回路の出力電圧を増減させることが好ましい。
【0018】
第1の発明に係る充放電試験装置において、定電流充放電中に前記電圧測定回路によって測定される前記各リチウムイオン電池の充放電電圧のいずれか1つが、予め設定された1又は異なる複数の規定電圧に到達する度に、定電流充放電の設定電流値を段階的に減少させることもできる。
【0019】
第1の発明に係る充放電試験装置において、複数の前記リチウムイオン電池は、該各リチウムイオン電池が予め直列接続されてモジュール化された電池モジュール又は該電池モジュールが複数直列接続された組電池であってもよい。
【0020】
前記目的に沿う第2の発明に係る充放電制御装置は、直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電を制御する充放電制御装置であって、
充放電中に、前記各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備え、該電圧バランス調整手段は、前記各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで該各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、前記各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有し、前記各バイパス回路をオンにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、前記各バイパス回路をオフにして前記電圧測定回路で測定される前記各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、前記各電圧センサの内部抵抗値と、前記各バイパス回路のバイパス抵抗値から、前記各リチウムイオン電池と前記各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定する。
ここで、直列接続されるリチウムイオン電池の数は特に限定されない。なお、制御の対象となる全てのリチウムイオン電池が直列接続されていればよく、複数のリチウムイオン電池が予め直列接続されてモジュール化された電池モジュール及び電池モジュールが複数、直列接続された組電池も対象とすることができる。このとき、1つの電池モジュールを構成するリチウムイオン電池の数及び直列接続される電池モジュールの数は特に限定されない。
【0021】
第2の発明に係る充放電制御装置において、前記各バイパスオン時測定電圧又は前記各バイパスオフ時測定電圧と、前記各接触抵抗値を用いて前記各リチウムイオン電池の真の電圧を算出し、過充電を防止することができる。
【0022】
第2の発明に係る充放電制御装置において、前記各リチウムイオン電池の真の電圧に基づいて該各リチウムイオン電池の容量及び電池内部抵抗値を求め、該各リチウムイオン電池の劣化状況を診断することもできる。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明に係る充放電試験装置は、充放電試験中に、各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を有するので、直列接続された複数のリチウムイオン電池の特性(電池内部抵抗値)ばらつきの影響を低減して、全てのリチウムイオン電池の充放電試験を同じタイミングで終了させることが可能となり、過充電、未充電又は未放電等の発生を防止して、安全かつ効率的で精密な試験を実現することができる。
【0024】
第1の発明に係る充放電試験装置において、電圧バランス調整手段が、各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有し、充放電試験中に、予め設定された測定時間間隔で、電圧測定回路により各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が基準電圧値より高いリチウムイオン電池に並列接続されたバイパス回路を一定時間オンにしてリチウムイオン電池の充放電電流の一部をバイパス回路に分流させた場合、充放電電圧が基準電圧値より高いリチウムイオン電池のバイパス回路を繰り返し(断続的に)オンにして、その充放電電圧を基準電圧値に近付けることができるので、装置の構成を簡素化することができ、複雑な制御を行う必要がなく、低コストで実用性に優れる。
【0025】
第1の発明に係る充放電試験装置において、各リチウムイオン電池の容量が、定電流充放電の設定電流値と、実際に定電流充放電中に各バイパス回路に流れた電流値から算出された場合、容量算出の精密性に優れる。
【0026】
第1の発明に係る充放電試験装置において、定電流充放電中に、各バイパス回路をオンにして電圧測定回路で測定される各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、各バイパス回路をオフにして電圧測定回路で測定される各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、各電圧センサの内部抵抗値と、各バイパス回路のバイパス抵抗値から、各リチウムイオン電池と各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定した場合、充放電試験中に、電圧測定回路の抵抗異常(接触不良)を報知して充放電を停止することができる。そして、電圧測定回路の抵抗異常(接触不良)が解消された後は、充電時に過充電が発生することを防止し、放電時に未放電状態が放電完了状態と誤認識されることを防止して、適正な充放電試験を行うことができる。
【0027】
第1の発明に係る充放電試験装置において、各バイパスオン時測定電圧又は各バイパスオフ時測定電圧と、各接触抵抗値を用いて各リチウムイオン電池の真の電圧を算出した場合、正確な電池容量を検出することができ、過充電、未充電又は未放電の発生を防止することができる。
【0028】
第1の発明に係る充放電試験装置において、電圧バランス調整手段が、各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、各リチウムイオン電池に接続されたオンオフスイッチ付きの充放電電流調整回路と、各充放電電流調整回路に共通して接続された共通電源とを有し、充放電試験中に予め設定された測定時間間隔で、電圧測定回路により各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が上限電圧値より高いリチウムイオン電池に接続された充放電電流調整回路を一定時間オンにしてリチウムイオン電池からの放電で共通電源を充電してリチウムイオン電池の充放電電流を減少させ、測定された充放電電圧が下限電圧値より低いリチウムイオン電池に接続された充放電電流調整回路を一定時間オンにして共通電源からの放電でリチウムイオン電池を充電してリチウムイオン電池の充放電電流を増加させた場合、複数のリチウムイオン電池の中の特性(内部抵抗)ばらつきの影響を低減して、全てのリチウムイオン電池の充放電をほぼ均等な(所定の範囲内の)充放電電圧で行うことが可能となり、過充電、未充電又は未放電等の発生を防止して、安全かつ効率的に精密な試験を実現することができる。また、電圧測定回路で各リチウムイオン電池の充放電電圧を予め設定された測定時間間隔で(繰り返して)測定し、充放電電圧が上限電圧値より高いリチウムイオン電池及び下限電圧値より低いリチウムイオン電池に接続された充放電電流調整回路を一定時間オンにすることにより、全てのリチウムイオン電池の充放電電圧を所定の範囲内に収めることができるので、装置の構成を簡素化することができ、複雑な制御を行う必要がなく、低コストで実用性に優れる。さらに、充放電電圧が上限電圧値より高いリチウムイオン電池で共通電源を充電し、その共通電源によって、充放電電圧が下限電圧値より低いリチウムイオン電池を充電するので、充放電電流調整回路に流れる電流を抵抗等で無駄に消費することなく有効利用することができ、省エネルギー性に優れる。
【0029】
第1の発明に係る充放電試験装置において、共通電源が、コンデンサ又は二次電池である場合、電圧バランス調整手段からの指令に基づいて各充放電電流調整回路から各リチウムイオン電池に対して簡単に必要な電流を流すことができる。
【0030】
第1の発明に係る充放電試験装置において、共通電源に接続され、共通電源から充放電回路に一定電圧の電力を供給するDC−DCコンバータを備えた場合、共通電源に貯えられた電力を有効に利用して充放電試験を行うことができ、商用電源の使用量を削減することができる。
【0031】
第1の発明に係る充放電試験装置において、各リチウムイオン電池の容量が、定電流充放電の設定電流値と、実際に定電流充放電中に各充放電電流調整回路に流れた電流値から算出された場合、容量算出の精密性に優れる。
【0032】
第1の発明に係る充放電試験装置において、定電流充放電の設定電流値を増減させた時に、電圧測定回路で測定される各リチウムイオン電池の充放電電圧の変化量と、各リチウムイオン電池に流れる電流の変化量から、各リチウムイオン電池の電池内部抵抗値を算出した場合、充放電試験中に、各リチウムイオン電池の正確な電池内部抵抗値を検出して監視することができる。
【0033】
第1の発明に係る充放電試験装置において、定電圧充放電中に、電圧測定回路で測定される各リチウムイオン電池の充放電電圧から総電圧を算出し、総電圧の変動傾向に基づいて、各リチウムイオン電池の充放電電圧が定電圧充放電の設定電圧値に近付くように、充放電回路の出力電圧を増減させた場合、電圧バランス調整手段による充放電電圧の調整量を低減して効率的に充放電試験を行うことができ、省エネルギー性に優れる。
【0034】
第1の発明に係る充放電試験装置において、定電流充放電中に電圧測定回路によって測定される各リチウムイオン電池の充放電電圧のいずれか1つが、予め設定された1又は異なる複数の規定電圧に到達する度に、定電流充放電の設定電流値を段階的に減少させた場合、回路全体に流れる電流を段階的に減少させて、各リチウムイオン電池の電池内部抵抗値のばらつきに伴う充放電電圧のばらつきを低減した上で、電圧バランス調整手段により、各リチウムイオン電池の充放電電圧を調整することができ、従来の定電流定電圧方式と同等の充放電試験を簡単に行うことができる。
【0035】
第1の発明に係る充放電試験装置において、複数のリチウムイオン電池が、各リチウムイオン電池が予め直列接続されてモジュール化された電池モジュール又は電池モジュールが複数直列接続された組電池である場合、各リチウムイオン電池の充放電試験を兼ねて1又は複数の電池モジュール(組電池)の充放電試験を行うことができ、各リチウムイオン電池の充放電試験と、電池モジュール(組電池)の充放電試験を別々に行う必要がなく、従来に比べて充放電試験の手間と時間を省くことができ、省力性に優れる。また、電池モジュール(組電池)では、複数のリチウムイオン電池が容器に収容され、各リチウムイオン電池の膨張が拘束されるため、別途、各リチウムイオン電池の膨張を拘束するための拘束機構や、各リチウムイオン電池の膨張(端子の移動)に追従させてプローブピンを移動させるための倣い機構等が不要となり、充放電試験装置の構造を簡素化してコストダウンを図ることができる。
【0036】
第2の発明に係る充放電制御装置は、充放電中に、各リチウムイオン電池の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段を備え、電圧バランス調整手段が、各リチウムイオン電池に接続される電圧センサで各リチウムイオン電池の充放電電圧を測定する電圧測定回路と、各リチウムイオン電池に並列接続されるオンオフスイッチ付きのバイパス回路とを有し、各バイパス回路をオンにして電圧測定回路で測定される各リチウムイオン電池のバイパスオン時測定電圧と、各バイパス回路をオフにして電圧測定回路で測定される各リチウムイオン電池のバイパスオフ時測定電圧と、各電圧センサの内部抵抗値と、各バイパス回路のバイパス抵抗値から、各リチウムイオン電池と各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定するので、充放電中に、電圧測定回路の抵抗異常(接触不良)を報知することができる。そして、電圧測定回路の抵抗異常(接触不良)が解消されることにより、充電時の過充電による発煙、発火又は爆発等の事故を未然に防ぎ、放電時の未放電による容量(電力供給)不足を防ぐことができる。
【0037】
第2の発明に係る充放電制御装置において、各バイパスオン時測定電圧又は各バイパスオフ時測定電圧と、各接触抵抗値を用いて各リチウムイオン電池の真の電圧を算出し、過充電を防止した場合、安全性に優れる。
【0038】
第2の発明に係る充放電制御装置において、各リチウムイオン電池の真の電圧に基づいて各リチウムイオン電池の容量及び電池内部抵抗値を求め、各リチウムイオン電池の劣化状況を診断した場合、充放電を適正に制御し、必要に応じて交換を行うことができ、メンテナンスの信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る充放電試験装置の説明図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る充放電試験装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示す本発明の第1の実施の形態に係る充放電試験装置10は、直列接続された複数のリチウムイオン電池11を試験体として充放電試験を行うための充放電回路13を備えており、生産されたリチウムイオン電池11の活性化及び品質検査に用いられる。
以下、充放電試験装置10の詳細について説明する。
図1に示すように、充放電試験装置10では、充放電回路13に直列接続された複数のリチウムイオン電池11が同時に試験される。
充放電回路13は、例えば充電試験時に交流の商用電源を所望の充電電圧に変圧し、直流に変換して出力する回路を有している。そして、充放電試験装置10は、充放電試験中に、各リチウムイオン電池11の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段15を有している。
【0041】
電圧バランス調整手段15は、各リチウムイオン電池11と並列に電気接続される電圧センサ16で各リチウムイオン電池11の充放電電圧を測定する電圧測定回路17と、各リチウムイオン電池11に並列接続されるオンオフスイッチ18付きのバイパス回路19とを有している(図1は、全てのオンオフスイッチ18がオンになった状態を示している)。また、電圧バランス調整手段15は、電圧測定回路17(各電圧センサ16)及び各バイパス回路19(オンオフスイッチ18)を制御する制御部20を有しており、充放電試験中に、予め設定された測定時間間隔で、電圧測定回路17により各リチウムイオン電池11の充放電電圧を測定し、測定された充放電電圧が基準電圧値より高いリチウムイオン電池11に並列接続されたバイパス回路19を一定時間オンにしてリチウムイオン電池11の充放電電流の一部をバイパス回路19に分流させる。各バイパス回路19にはオンオフスイッチ18と直列に抵抗22が接続されている。なお、本実施の形態では、機械式のリレー接点でオンオフスイッチ18を構成した場合を示したが、オンオフスイッチ18は、バイパス回路19の開閉を切り替えることができるものであればよく、電子式のスイッチング素子を用いてもよい。特に、半導体スイッチは信頼性が高く、メンテナンス性にも優れる。また、オンオフスイッチ18としてトランジスタを用いる場合は、抵抗22の代わりにトランジスタの内部抵抗を利用することができるので、別途、抵抗22を接続する必要はない。
【0042】
本実施の形態では、充放電回路13と制御部20の間に設けられた充放電信号スイッチ23をオンにすると、充放電回路13が作動すると共に、制御部20によってコンタクタ24がオンにされ、充放電回路13と各リチウムイオン電池11の間に電流が流れて充放電試験が行われる構成としたが、充放電試験装置10の構成はこれに限定されるものではない。
定電流充放電が開始されると、電圧バランス調整手段15は、予め設定された測定時間間隔で、電圧測定回路17の各電圧センサ16により各リチウムイオン電池11の充放電電圧を測定する。そして、測定したリチウムイオン電池11の充放電電圧が基準電圧値(例えば、測定した全てのリチウムイオン電池11の充放電電圧の最低値)より高い時に、そのリチウムイオン電池11のバイパス回路19をオンオフスイッチ18によって一定時間オンにしてリチウムイオン電池11の充放電電流を分流させる。これにより、充放電電圧が基準電圧値より高かったリチウムイオン電池11に流れる充放電電流が減少して充放電が抑制されることになり、全体としての充放電電圧のばらつきが減少する。このとき、バイパス回路19に分流した電流は抵抗22で放電され、熱エネルギーとなって消費される。なお、バイパス回路19(抵抗22)に流れる電流が、充放電電流の0.1〜10%(好ましくは1〜5%)の範囲となるように抵抗22を設定することにより、リチウムイオン電池11の特性(電池内部抵抗値)ばらつきを効果的に吸収することができるが、この範囲に限定されるものではない。
【0043】
電圧バランス調整手段15が、以上の動作を繰返し行うことにより、随時、各リチウムイオン電池11の充放電電圧を確認し、そのばらつきを低減しながら、全てのリチウムイオン電池11の充放電を均等に行うことができる。これにより、充電試験の場合は、全てのリチウムイオン電池11がほぼ同時に充電終止電圧(例えば4.2V)に達するので、いずれか1つのリチウムイオン電池11の充電電圧が充電終止電圧に達した時点で充電を終了すればよい。
なお、バイパス回路19をオンオフスイッチ18によってオンにする時間は、適宜、選択することができる。例えば、一定の測定時間間隔で繰り返される各リチウムイオン電池11の充放電電圧の測定に合わせて、オンオフスイッチ18がオンになってから、次の測定が行われるまでの時間、オンしたままでもよいし、それよりも短時間で、他のリチウムイオン電池11の充放電電圧の測定を行っている途中で一定時間経過後にオフしてもよい。
各バイパス回路19の抵抗22を利用して各バイパス回路19に流れた電流値を測定することができるので、定電流充放電中に、予め設定した設定電流値(一定の充放電電流値)と総通電時間(充放電試験時間)を積算した値(理想電池容量に相当)から、実際に定電流充放電試験中に各バイパス回路19に流れた電流値と各バイパス回路19のオン時間(各抵抗22への通電時間)を積算して累積した値を差し引くことにより、各リチウムイオン電池11の容量を精密に求めることができる。この演算は、充放電試験装置10の動作を制御する制御プログラムによって実行することができる。
【0044】
また、充放電試験装置10は、定電流充放電中に、各バイパス回路19をオンにして電圧測定回路17(各電圧センサ16)で測定される各リチウムイオン電池11のバイパスオン時測定電圧と、各バイパス回路19をオフにして電圧測定回路17で測定される各リチウムイオン電池11のバイパスオフ時測定電圧と、各電圧センサ16の内部抵抗値と、各バイパス回路19のバイパス抵抗値から、各リチウムイオン電池11と各電圧センサ16との接触抵抗値をそれぞれ算出し、各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定することができる。
以下、詳細を説明する。
電圧センサ16の内部抵抗値をr、抵抗22を含むバイパス回路19の抵抗値をr、リチウムイオン電池11の真の電圧をVとすると、バイパスオン時測定電圧V2on及びバイパスオフ時測定電圧V2offは、それぞれ次式(1)、(2)で表される。
2on=V×r/(R+r+r) (1)
2off=V×r/(R+r) (2)
【0045】
ここで、式(1)、(2)において、内部抵抗値rが抵抗値rと比較して十分に大きく(内部抵抗値rに対し抵抗値rが無視できるほど小さく)設定され、接触抵抗値Rが限りなくゼロに近ければ、次式(3)が成り立つ。
2on=V2off=V (3)
つまり、バイパス回路19のオンオフを切替えても、V2onとV2offに変化が見られない(V2onとV2offが同値とみなせるほど変化が微小である)場合、電圧センサ16でリチウムイオン電池11の正確な充放電電圧(真の電圧V)を測定することができ、過充電や未放電を発生させることなく、適正な試験を行うことができる。
これに対し、式(1)、(2)において、接触抵抗値Rが大きくなるにつれ、V2on、V2offはVよりも小さく測定され、接触抵抗値Rが内部抵抗値rと同程度まで大きくなると、V2on、V2offはVの1/2まで小さく測定される。充電時の目標電圧(充電終止電圧=満充電電圧)はVであるため、V2on又はV2offがVに近付くまで充電を続けると過充電状態となって発煙や発火が発生し、最悪の場合は爆発に至るおそれがある。また、放電時も、V2on、V2offが実際のVよりも小さく測定されている場合、真の放電終止電圧に達する前に放電が終了し(放電が不十分な未放電状態となり)、適正な試験を行うことができない。
【0046】
そこで、前述のように、各リチウムイオン電池11と各電圧センサ16との接触抵抗値Rをそれぞれ算出し、各接触抵抗値Rのいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定する必要がある。
式(1)、式(2)のVが等しい(共通する)ことから、次式(4)が得られる。
=V2on(R+r+r)/r=V2off(R+r)/r (4)
この式(4)から、接触抵抗値Rは次式(5)で求められる。
=(V2on×r−(V2off−V2on)r)/(V2off−V2on) (5)
式(5)を用いて各接触抵抗値Rを算出し、規定抵抗値を超えるものがあれば、どの電圧センサ16で規定抵抗値を超える接触抵抗異常(高抵抗接触)が発生しているかを知らせ、充放電を停止することができる。異常が発生した電圧センサ16につき、測定端子の腐食、測定端子への絶縁物の付着、配線中のボルトの緩み、配線の劣化又は断線等が発生していないか確認し、清掃、修理又は部品の交換等の必要なメンテナンスを行うことにより、充放電試験装置10を安全に維持し、適正な充放電試験を行うことができる。
また、接触抵抗値Rが規定抵抗値以下のリチウムイオン電池11については、式(4)から、バイパスオン時測定電圧V2on又はバイパスオフ時測定電圧V2offと、接触抵抗値Rを用いて真の電圧Vを算出し、正確な電池容量を検出することができるので、過充電、未充電又は未放電の発生を防止しながら充放電試験を行うことができる。
【0047】
なお、充放電試験装置10による充放電試験の対象となる複数のリチウムイオン電池は、各リチウムイオン電池が予め直列接続されてモジュール化された電池モジュールでもよいし、電池モジュールが複数直列接続された組電池であってもよく、いずれの場合も、リチウムイオン電池の総数は適宜、選択される。
また、本実施の形態では、充放電試験装置について説明したが、この充放電試験装置10で用いられた電圧バランス調整手段15は、例えば、電気自動車やハイブリッドカー等の車両における充放電制御装置に用いることができる。つまり、複数のリチウムイオン電池11が直列接続された車載電池(電池モジュール又は組電池の一例)が搭載される車両において、上述の電圧バランス調整手段15を備えた充放電制御装置を使用すれば、車載電池の充放電中に、各バイパス回路19をオンにして電圧測定回路17(各電圧センサ16)で測定される各リチウムイオン電池11のバイパスオン時測定電圧と、各バイパス回路19をオフにして電圧測定回路17(各電圧センサ16)で測定される各リチウムイオン電池11のバイパスオフ時測定電圧と、各電圧センサ16の内部抵抗値と、各バイパス回路19のバイパス抵抗値から、各リチウムイオン電池11と各電圧センサ16との接触抵抗値をそれぞれ算出し、各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定することができる。そして、充放電制御装置は、電圧測定回路17の抵抗異常(接触不良)を報知すると共に、充放電を停止する。その後、点検や修理等が行われて電圧測定回路17の抵抗異常(接触不良)が解消されることにより、車載電池の充放電が適正に制御され、充電時の過充電による発煙、発火又は爆発等の事故を未然に防ぎ、放電時の未放電による容量(電力供給)不足を防ぐことができる。
また、各リチウムイオン電池11のバイパスオン時測定電圧又はバイパスオフ時測定電圧と、接触抵抗値を用いて真の電圧を算出し、過充電を防止することにより、車載電池を搭載した車両を安全に使用することができる。
さらに、各リチウムイオン電池11の真の電圧に基づいて各リチウムイオン電池の容量及び電池内部抵抗値を求め、各リチウムイオン電池11の劣化状況を診断することにより、車載電池の充放電を適正に制御しながら必要なメンテナンスを行うことができる。
【0048】
続いて、図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る充放電試験装置25について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図2に示す充放電試験装置25が第1の実施の形態と異なる点は、電圧バランス調整手段26が、各バイパス回路19の代わりに、各リチウムイオン電池11に接続される一対のオンオフスイッチ27a、27b付きの充放電電流調整回路28を有している点(図2は、全てのオンオフスイッチ27a、27bがオンになった状態を示している)と、各充放電電流調整回路28に対して、共通電源としてコンデンサ30が接続されている点である。そして、電圧測定回路17(各電圧センサ16)及び各充放電電流調整回路28(オンオフスイッチ27a、27b)は制御部31で制御される。
各充放電電流調整回路28において、オンオフスイッチ27aはリチウムイオン電池11の正極側に接続され、オンオフスイッチ27bはリチウムイオン電池11の負極側に接続されており、この一対のオンオフスイッチ27a、27bが、各充放電電流調整回路28において同時にオンすることにより、選択されたリチウムイオン電池11とコンデンサ30が接続される。なお、本実施の形態では、機械式のリレー接点でオンオフスイッチ27a、27bを構成した場合を示したが、オンオフスイッチ27a、27bは、リチウムイオン電池11とコンデンサ30との接続の有無を切り替えることができるものであればよく、電子式のスイッチング素子を用いてもよい。特に、半導体スイッチは信頼性が高く、メンテナンス性にも優れる。
【0049】
本実施の形態では、充放電信号スイッチ23をオンにすると、充放電回路13が作動すると共に、制御部31によってコンタクタ24がオンにされ、各リチウムイオン電池11が充放電される構成としたが、充放電試験装置25の構成はこれに限定されるものではない。
定電流充放電が開始されると、電圧バランス調整手段26は、予め設定された測定時間間隔で、電圧測定回路17の各電圧センサ16により各リチウムイオン電池11の充放電電圧を測定する。そして、測定したリチウムイオン電池11の充放電電圧が下限電圧値(例えば、測定した全てのリチウムイオン電池11の充放電電圧の平均値)より低い時に、そのリチウムイオン電池11の充放電電流調整回路28をオンオフスイッチ27a、27bによって一定時間オンにしてリチウムイオン電池11とコンデンサ30を接続する。コンデンサ30はリチウムイオン電池11よりも電位が高くなるように予め充電されており、電荷がコンデンサ30からリチウムイオン電池11に移動する(コンデンサ30からの放電でリチウムイオン電池11を充電する)。これにより、充放電電圧が下限電圧値より低かったリチウムイオン電池11に流れる充放電電流が増加して充放電が促進されることになり、全体としての充放電電圧のばらつきが減少する。なお、充放電電流調整回路28によって増加させる電流を、充放電電流の0.1〜10%(好ましくは1〜5%)の範囲とすることにより、リチウムイオン電池11の特性(内部抵抗)ばらつきを効果的に吸収することができるが、この範囲に限定されるものではない。
【0050】
また、電圧バランス調整手段26は、測定したリチウムイオン電池11の充放電電圧が上限電圧値(下限電圧値よりも高く、例えば、充放電電圧のばらつきとして許容できる最大値)より高い時に、そのリチウムイオン電池11の充放電電流調整回路28をオンオフスイッチ27a、27bによって一定時間オンにしてリチウムイオン電池11とコンデンサ30を接続し、リチウムイオン電池11から電位の低くなったコンデンサ30に電荷を移動させてコンデンサ30を充電してもよい。これにより、充放電電圧が上限電圧値より高かったリチウムイオン電池11に流れる充放電電流が減少して充放電が抑制されることになり、短時間で充放電電圧のばらつきが減少する。また、充放電電圧が上限電圧値より高かったリチウムイオン電池11から放電させた電力をコンデンサ30に貯え、充放電電圧が下限電圧値より低かったリチウムイオン電池11に供給して有効利用することができ、省エネルギー性にも優れる。
【0051】
電圧バランス調整手段26が、以上の動作を繰返し行うことにより、随時、各リチウムイオン電池11の充放電電圧を確認し、そのばらつきを低減しながら、全てのリチウムイオン電池11を均等に充放電することができる。これにより、充電試験の場合は、全てのリチウムイオン電池11がほぼ同時に充電終止電圧(例えば4.2V)に達するので、いずれか1つのリチウムイオン電池11の充電電圧が充電終止電圧に達した時点で充電を終了すればよい。
なお、充放電電流調整回路28をオンオフスイッチ27a、27bによってオンにする時間は、適宜、選択することができる。
充放電電流調整回路は、充放電電圧が下限電圧値より低いリチウムイオン電池11をオンオフスイッチによって選択的にコンデンサ30と接続し、一定時間、コンデンサ30から、選択した充放電電圧の低いリチウムイオン電池11に電荷を移動させ(コンデンサ30からの放電でリチウムイオン電池11を充電し)、また、充放電電圧が上限電圧値より高いリチウムイオン電池11をオンオフスイッチによって選択的にコンデンサ30と接続し、一定時間、選択した充放電電圧の高いリチウムイオン電池11からコンデンサ30に電荷を移動させる(リチウムイオン電池11からの放電でコンデンサ30を充電する)ことができるものであればよく、その回路構成(オンオフスイッチの配置や切り替えの方法等)は適宜、選択することができる。本実施の形態では、充放電電流調整回路28の共通電源としてコンデンサ30を使用したが、この共通電源は選択的に接続されたリチウムイオン電池11との間で電荷を授受してリチウムイオン電池11の充放電電流を増減させることができればよく、コンデンサの代わりに二次電池(例えばリチウムイオン電池)を用いることもできる。
【0052】
なお、各充放電電流調整回路28のオンオフスイッチ27aと直列に抵抗32が接続され、コンデンサ30と直列に抵抗33が接続されている。抵抗32を利用することにより、各充放電電流調整回路28に流れる電流値を測定することができる。そして、定電流充放電時に予め設定した設定電流値(一定の充放電電流値)と、充放電試験中に各充放電電流調整回路28に流れた電流値から、実際に各リチウムイオン電池11に流れる電流値を求めることができる。この実際に各リチウムイオン電池11に流れる電流値とその通電時間を積算して累積することにより、各リチウムイオン電池11の容量を精密に求めることができる。この演算は、充放電試験装置25の動作を制御する制御プログラムによって実行することができる。なお、抵抗33により、コンデンサ30から各リチウムイオン電池11を充電する際の電流を制限することができる。
また、コンデンサ30にDC−DCコンバータ34を接続し、コンデンサ30から充放電回路13に一定電圧の電力が供給されるようにすれば、コンデンサ30に貯えられた電力を有効に利用して充放電試験を行うことができ、商用電源の使用量を削減することができる。
【0053】
充放電試験装置10及び充放電試験装置25のいずれも、定電流充放電の設定電流値を増減させた時に、電圧測定回路17で測定される各リチウムイオン電池11の充放電電圧の変化量と、各リチウムイオン電池11に流れる電流の変化量から、各リチウムイオン電池11の電池内部抵抗値を算出することができる。
以下、算出方法を説明する。
1つのリチウムイオン電池11の電池内部抵抗値をrとし、定電流充放電の設定電流値を増減させた時に、対象のリチウムイオン電池11に流れる電流がIからIに変化し、そのリチウムイオン電池11の充放電電圧がEからEに変化したとすると、次式(6)、(7)が成り立つ。
=I×r (6)
=I×r (7)
式(6)、(7)の左辺同士及び右辺同士を引き算すると、次式(8)が得られる。
|E−E|=|I−I|×r (8)
式(8)から、対象のリチウムイオン電池11の電池内部抵抗値rは次式(9)で求められる。
r=|E−E|/|I−I| (9)
こうして、充放電試験中に、各リチウムイオン電池11の正確な電池内部抵抗値を検出して監視することができる。
【0054】
また、充放電試験装置10及び充放電試験装置25では、定電圧充放電中に、電圧測定回路17で測定される各リチウムイオン電池11の充放電電圧から総電圧を算出し、総電圧の変動傾向に基づいて、各リチウムイオン電池11の充放電電圧が定電圧充放電の設定電圧値に近付くように、充放電回路13の出力電圧を増減させることができる。つまり、電圧バランス調整手段15、26で各リチウムイオン電池11の充放電電圧が調整された際に、総電圧が増加傾向であれば充放電回路13の出力電圧を増加させ、総電圧が減少傾向であれば充放電回路13の出力電圧を減少させることにより、電圧バランス調整手段15、26による充放電電圧の調整量を低減して、効率的に充放電試験を行うことができる。
さらに、充放電試験装置10及び充放電試験装置25では、従来の定電流定電圧方式の充放電試験の代わりに、定電流充放電中に電圧測定回路17によって測定される各リチウムイオン電池11の充放電電圧のいずれか1つが、予め設定された1又は異なる複数の規定電圧に到達する度に、定電流充放電の設定電流値を段階的に減少させることにより、回路全体に流れる電流を段階的に減少させて、各リチウムイオン電池11の電池内部抵抗値のばらつきに伴う充放電電圧のばらつきを低減させながら、電圧バランス調整手段15、26で各リチウムイオン電池11の充放電電圧を調整し、予め設定した充電終止電圧又は放電終止電圧まで確実に充放電試験を行うことができる。従って、比較的制御が容易な定電流充放電の設定電流値を段階的に減少させる方式で、従来の定電流定電圧方式と同等の充放電試験を効率的に実現することができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、バイパス回路の抵抗には、固定抵抗の代わりに可変抵抗を用いることもでき、バイパス回路のオンオフによって充放電電圧を調整する際に、抵抗値を増減させて充放電電圧の調整量を増減させることが可能である。
また、本発明の充放電試験装置及び充放電制御装置は、リチウムイオン電池の充放電試験及び充放電制御に広く用いることができるが、複数のリチウムイオン電池が直列接続された車載電池の充放電試験及び充放電制御に特に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0056】
10:充放電試験装置、11:リチウムイオン電池、13:充放電回路、15:電圧バランス調整手段、16:電圧センサ、17:電圧測定回路、18:オンオフスイッチ、19:バイパス回路、20:制御部、22:抵抗、23:充放電信号スイッチ、24:コンタクタ、25:充放電試験装置、26:電圧バランス調整手段、27a、27b:オンオフスイッチ、28:充放電電流調整回路、30:コンデンサ、31:制御部、32、33:抵抗、34:DC−DCコンバータ
【要約】
【課題】直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電試験を低コストで効率性に行うことができる充放電試験装置及び直列接続された複数のリチウムイオン電池のそれぞれの劣化状態を正確に診断して充放電を高精度で制御することができる充放電制御装置を提供する。
【解決手段】直列接続された複数のリチウムイオン電池11の充放電試験を行うための充放電回路13を備えた充放電試験装置10であって、充放電試験中に、各リチウムイオン電池11の充放電電圧が予め設定した許容ばらつき範囲内に収まるように調整する電圧バランス調整手段15を備える。直列接続された複数のリチウムイオン電池の充放電を制御する充放電制御装置であって、各リチウムイオン電池と各電圧センサとの接触抵抗値をそれぞれ算出し、該各接触抵抗値のいずれか1以上が規定抵抗値を超えた時に装置異常が発生していると判定する。
【選択図】図1
図1
図2