(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造力学によって前記構造物をモデル化した構造物モデルから算出される情報であって前記ボルトの緩みによって生じる前記ボルトの軸方向に垂直な方向への前記固定部の変位量と前記対象領域の変位分布との関係を示す情報である学習情報を取得する学習情報取得部を備え、
前記推定部は、
前記学習情報取得部によって取得された前記学習情報と前記変位情報取得部によって取得された前記変位情報とに基づいて、前記固定部の変位量を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる検査システム、検査方法、および検査プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる検査システムの構成の一例を示す図である。
図1に示す検査システム1は、固定部が支持体にボルトによる締結で固定された構造物における固定部以外の領域の変位分布から固定部の変位量を推定し、推定した固定部の変位量からボルトの緩みを判定する。
【0012】
検査システム1は、
図1に示すように、計測部10と、処理部11とを備える。計測部10は、固定部が支持体にボルトで固定された構造物における固定部以外の領域を対象領域とし、かかる対象領域の形状を計測する。構造物は、例えば、防音壁、看板、またはポールなどであるが、固定部が支持体にボルトで固定された構造物であればよく、防音壁、看板、またはポールに限定されない。以下においては、検査対象が道路に沿って設置された防音壁であるものとして説明する。
【0013】
図2は、実施の形態1にかかる道路を走行する移動体に搭載された検査システムによって構造物の形状が計測される様子を示す図である。
図2に示すように、検査システム1の計測部10は、自動車などの移動体2に搭載されており、道路3を走行する。道路3は、例えば、高速道路であり、道路3には、構造物4がボルト6で固定されている。道路3は、支持体の一例である。
【0014】
図3は、実施の形態1にかかる構造物の一例を示す図である。
図3に示す構造物4は、防音壁であり、複数の支柱41と、複数の遮音板42と、複数の固定部43とを備える。複数の支柱41は、
図3における左右方向に一定の間隔を空けて配置される。各支柱41には、上下方向に配列された複数の遮音板42が取り付けられる。
【0015】
各支柱41の基端部には2つの固定部43が取り付けられており、これら2つの固定部43が複数のボルト6によって道路3に締結されて固定される。なお、各支柱41の基端部に取り付けられる固定部43の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、構造物4は、固定部43が1つのボルト6で支持体に固定される構造物であってもよい。
【0016】
複数のボルト6によって道路3に固定される固定部43は、道路3の車線から見えない位置にあり、
図2に示す計測部10は、構造物4のうち固定部43以外の領域を対象領域として、対象領域の形状を計測し、計測した対象領域の形状を示す形状情報と計測位置を示す計測位置情報とを含む構造物情報を
図1に示す処理部11へ出力する。
【0017】
構造物情報に含まれる形状情報は、例えば、鉛直方向をZ軸方向とし、遮音板42の延伸方向をX軸方向とし、固定部43と道路3とを締結しているボルト6の軸方向をY軸方向するXYZ座標系で対象領域の形状を示す情報である。
【0018】
計測部10は、例えば、レーザースキャナまたは光切断センサなどのように非接触で対象領域の形状を計測する装置であるが、接触して対象領域の形状を計測できる装置であってもよい。計測部10として、非接触で対象領域の形状を計測する装置を採用することで、対象領域の形状を高速に計測できるため、接触して対象領域の形状を計測する装置を採用する場合に比べて、計測時間を短縮することができる。
【0019】
計測部10は、移動体2が道路3に停止している状態で対象領域の形状を計測して形状情報を生成したり、移動体2が移動中に対象領域を変えながら異なる位置の対象領域の形状を計測して形状情報を含む構造物情報を繰り返し生成したりすることができる。移動体2が道路3に停止している状態で対象領域を計測部10で計測する場合、車線規制を行う必要があるが、移動体2が移動中に計測部10で対象領域を計測することで、車線規制を行う必要がない。
【0020】
処理部11は、計測部10から出力される構造物情報に基づいて、ボルト6の緩みまたはボルト6の固定部43からの脱落などといったボルト6の締結異常を判定する。処理部11は、移動中の移動体2に搭載された計測部10から構造物情報が繰り返し出力される場合、対象領域を変えながら多数のボルト6の締結異常を判定することができる。
【0021】
図1に戻って、検査システム1の構成の説明を続ける。検査システム1の処理部11は構造物情報取得部12と、学習情報作成部13と、変位情報作成部14と、変位情報記憶部15と、変位推定部16と、判定部17と、結果出力部18とを備える。
【0022】
構造物情報取得部12は、計測部10から出力される構造物情報を取得する。構造物情報取得部12は、例えば、不図示のネットワークまたは専用線を介して計測部10から出力される構造物情報を取得したり、計測部10から出力される構造物情報を記録した不図示の記録媒体から構造物情報を取得したりすることができる。
【0023】
学習情報作成部13は、構造力学によって構造物4をモデル化した構造物モデルから、複数のボルト6のうち締結異常があるボルト6および締結異常の種別の組み合わせ毎の学習情報を作成する。学習情報は、対象領域の変位分布と固定部43の変位量との関係を示す情報である。
【0024】
締結異常があるボルト6は、緩みがあるボルト6または脱落したボルト6であり、締結異常の種別は、緩みまたは脱落である。以下において、締結異常があるボルト6および締結異常の種別の組み合わせを締結異常組み合わせと記載する場合がある。また、ボルト6の固定部43からの脱落を単にボルト6の脱落と記載する場合がある。
【0025】
学習情報作成部13は、構成情報記憶部20と、構造物モデル作成部21と、計算部22と、学習情報記憶部23とを備える。構成情報記憶部20は、構造物4の構造に関する情報である構成情報を記憶する。
【0026】
構成情報記憶部20に記憶される構成情報は、例えば、支柱41、遮音板42、および固定部43の各々の寸法、材料、および位置、支柱41と遮音板42との連結位置、支柱41と固定部43との連結位置、および道路3と固定部43との連結位置などの情報を含む。
【0027】
構造物モデル作成部21は、構造物情報取得部12によって取得された構造物情報に含まれる計測位置情報に基づいて、構成情報記憶部20に記憶されている構成情報のうち計測部10の計測位置に対応する構造物4の構成情報を取得する。
【0028】
構造物モデル作成部21は、構成情報記憶部20から取得した計測部10の計測位置に対応する構造物4の構成情報に基づいて、構造力学を用いて構造物4をモデル化することで、構造物モデルを作成する。なお、構成情報は、上述した構造力学に基づく構造物4のモデルを作成することができればよく、上述した例に限定されない。
【0029】
図4は、実施の形態1にかかる構造物モデルの一例を示す背面図であり、
図5は、実施の形態1にかかる構造物モデルの一例を示す側面図である。
図4および
図5に示す構造物モデル50は、構造力学によって、支柱41、遮音板42、固定部43、および固定部43に対するボルト6による固定点を構造力学でモデル化した支柱51、遮音板52、固定部53、および固定点54を含む。構造物モデル50において、遮音板52は支柱51で支持され、支柱51は固定点54によって固定部53で支持される。
【0030】
計算部22は、構造物モデル50を用いて、固定部43を固定するボルト6が緩んだ場合の対象領域の変位分布と固定部53の変位量とを算出する。計算部22は、固定点54による固定部53の拘束条件のうち重力方向の拘束条件を削除することで、ボルト6が緩んだ状態を模擬する。重力方向は、Z軸方向である。
【0031】
また、計算部22は、固定点54による固定部53の拘束条件のうち重力方向の拘束条件とボルト6の軸方向の拘束条件を削除することで、ボルト6が脱落した状態を模擬する。ボルト6の軸方向は、Y軸方向である。
【0032】
計算部22は、構造物モデル50を用いて、締結異常組み合わせを変更しながら、支柱51および遮音板52の変位分布と固定部53の変位量とを算出する。計算部22によって算出される変位分布は、Z軸方向の変位分布であり、変位箇所の変位後のZ軸方向の位置の分布または変位箇所のZ軸方向の変位量の分布である。計算部22によって算出される固定部53の変位量は、変位箇所のZ軸方向の変位量とY軸方向の変位量とを含む。
【0033】
締結異常のボルト6は、例えば、支柱単位でのボルト6の締結異常のまたは固定部単位でのボルト6の締結異常である。例えば、支柱単位でのボルト6の締結異常は、構造物4が
図3に示す防音壁である場合、支柱41を固定する2つの固定部43を道路3に固定する8つのボルト6のすべてが締結異常であることを示す。また、固定部単位でのボルト6の締結異常は、構造物4が
図3に示す防音壁である場合、固定部43を道路3に固定する4つのボルト6のすべてが締結異常であることを示す。締結異常組み合わせには、1つの固定部43を道路3に固定する3つ以下のボルト6の締結異常が含まれていてもよい。
【0034】
計算部22は、算出した支柱51および遮音板52の変位分布のうち対象領域の変位分布の情報と算出した固定部53の変位の情報とを含む締結異常組み合わせ毎の学習情報を学習情報記憶部23に記憶させる。
【0035】
図6は、実施の形態1にかかる固定部を固定するボルトが緩んだ状態の構造物モデルの一例を示す図である。
図6に示す例では、構造物モデル50において
図6における左右方向の中央の支柱51を固定する2つの固定部53を道路3に固定する8つの固定点54の拘束条件のうち重力方向の拘束条件が削除されている。
【0036】
計算部22は、
図6に示す構造物モデル50の支柱51および遮音板52の変位分布と固定部53の変位を算出する。計算部22によって算出される固定部53の変位は、
図3に示すZ軸方向の変位量およびY軸方向の変位量を含む。
図6に示す例では、締結異常組み合わせは、中央の支柱51を固定する2つの固定部53を固定する8つの固定点54に緩みがありその他の固定点54に締結異常がないという組み合わせである。
【0037】
なお、構造物モデル作成部21は、構造力学に基づいて、例えば、数値解析手法で、支柱51、遮音板52、固定部53、および固定点54をモデル化した構造物モデルを作成することもできる。数値解析手法は、例えば、有限要素法である。この場合、計算部22は、固定部43に対するボルト6による固定点を模擬した固定点54の境界条件を変更してボルト6の緩みを模擬することで、支柱51および遮音板52の形状変化と固定部53の変位量を算出する。
【0038】
変位情報作成部14は、構造物情報取得部12によって取得された構造物情報に含まれる形状情報に基づいて、対象領域のZ軸方向の形状分布の情報を作成する。
図7は、実施の形態1にかかる変位情報作成部によって作成される形状分布の情報を説明するための図である。
【0039】
図7に示す形状分布60は、
図3に示す左右方向の中央の支柱41を固定する2つの固定部43を固定する8つのボルト6が緩んだ場合の対象領域のZ軸方向の形状分布であり、対象領域のZ軸方向の形状分布60が等高線で示されている。なお、変位情報作成部14によって作成される形状分布60は、Z軸方向の位置が等高線で表されているが、かかる例に限定されず、例えば、3次元点群でZ軸方向の位置が表されてもよい。
【0040】
変位情報作成部14は、対象領域の健全な形状分布と形状分布60とを比較し、対象領域の健全な形状分布と形状分布60とが異なるか否かを判定する。対象領域の健全な形状分布とは、ボルト6が緩んでおらず固定部43が変位していない状態の対象領域の形状分布である。対象領域の健全な形状分布は、形状分布60と同様に、Z軸方向の位置が等高線で表されているが、かかる例に限定されず、例えば、3次元点群でZ軸方向の位置が表されてもよい。
【0041】
変位情報作成部14は、対象領域の健全な形状分布と形状分布60とが異なる場合、対象領域のZ軸方向の変位分布の情報である変位情報を作成し、作成した変位情報を変位情報記憶部15に記憶させる。変位情報で示される変位分布は、ボルト6の締結異常によって対象領域の健全な状態から変位した対象領域のZ軸方向の位置の分布またはZ軸方向の変位量の分布である。対象領域のZ軸方向の変位分布は、対象領域のZ軸方向の位置の分布または対象領域のZ軸方向の変位量の分布である。
【0042】
変位推定部16は、変位情報取得部24と、学習情報取得部25と、推定部26とを備える。変位情報取得部24は、変位情報記憶部15から変位情報を取得し、学習情報取得部25は、学習情報記憶部23から学習情報を取得する。
【0043】
推定部26は、変位情報取得部24によって取得された変位情報と学習情報取得部25によって取得された学習情報とに基づいて、固定部43の変位を推定する。推定部26によって推定される固定部43の変位は、Z軸方向の変位量とY軸方向の変位量とを含む。
【0044】
推定部26は、変位情報取得部24によって取得された変位情報で示される変位分布と学習情報で示される変位分布との類似度を学習情報毎に算出する。変位情報で示される変位分布と学習情報で示される変位分布との類似度は、例えば、ユーグリッド距離またはコサイン類似度などである。
【0045】
推定部26は、動作モードが第1推定モードに設定されている場合、算出した類似度を正規化し、正規化した類似度によって学習情報で示される固定部53の変位に重みづけして足し合わせることで得られる変位を、固定部43の変位として推定する。
【0046】
また、推定部26は、動作モードが第2推定モードに設定されている場合、算出した類似度が最も高い変位分布の学習情報で示される固定部53の変位を固定部43の変位として推定する。推定部26によって推定される固定部43の変位には、固定部43のZ軸方向の変位量と固定部43のY軸方向の変位量とが含まれる。
【0047】
図1に示す判定部17は、変位推定部16によって推定された固定部43の変位に基づいて、ボルト6の状態異常を判定する。判定部17は、変位情報取得部27と、締結異常判定部28とを備える。
【0048】
変位情報取得部27は、変位推定部16から出力される変位情報を取得する。締結異常判定部28は、変位情報取得部27によって取得された変位情報で示される固定部43のZ軸方向の変位量と固定部43のY軸方向の変位量とに基づいて、ボルト6の締結異常を判定する処理を行う。
【0049】
ここで、固定部43の変位とボルト6の締結異常との関係について説明する。
図8は、実施の形態1にかかる固定部の変位と支柱単位でのボルトの緩みとの関係の一例を示す図である。
図9は、実施の形態1にかかる固定部の変位と支柱単位でのボルトの脱落との関係の一例を示す図である。
【0050】
図8に示すように、支柱単位でのボルト6の緩みが生じた場合、力によってZ軸方向の変位が固定部43に発生する。また、
図9に示すように、支柱単位でのボルト6の脱落が生じた場合、重力によってZ軸方向の変位に加えてY軸方向の変位が固定部43に発生する。このように、支柱単位でのボルト6の締結異常が緩みか脱落かで、支柱41および遮音板42の変位および固定部43の変位が異なる。
【0051】
そこで、締結異常判定部28は、変位情報取得部27によって取得された変位情報で示される固定部43の変位量および変位方向に基づいて、ボルト6の締結異常を判定する。例えば、締結異常判定部28は、固定部43のZ軸方向の変位量が予め設定されたZ軸閾値以上であり且つ固定部43のY軸方向の変位量が予め設定されたY軸閾値未満である場合に、支柱単位でのボルト6の緩みがあると判定する。
【0052】
また、締結異常判定部28は、固定部43のZ軸方向の変位量がZ軸方向に予め設定されたZ軸閾値以上であり且つ固定部43のY軸方向の変位量が予め設定されたY軸閾値以上である場合に、支柱単位でのボルト6の脱落があると判定する。
【0053】
なお、上述した例では、支柱単位でのボルト6の締結異常の判定例について説明したが、締結異常判定部28は、固定部単位のボルト6の締結異常を判定することができ、ボルト6毎または2以上のボルト6毎の締結異常を判定することもできる。
【0054】
結果出力部18は、判定部17によるボルト6の状態異常の判定結果に基づいて、点検推奨情報を不図示のネットワークを介して不図示の端末装置へ送信したり、検査システム1における不図示の表示部に表示させたりすることができる。端末装置は、例えば、道路3の管理会社の端末装置である。
【0055】
点検推奨情報は、構造物4の固定部43に対する点検の推奨を行うための情報であり、例えば、状態異常があるボルト6の情報および変位がある固定部43の情報などを含む。結果出力部18は、例えば、ボルト6の状態異常が予め設定された点検推奨レベルを満たす場合、点検推奨情報を不図示の端末装置へ送信したり、検査システム1における不図示の表示部に表示させたりする。
【0056】
また、結果出力部18は、ボルト6の状態異常があると判定されたがボルト6の状態異常が点検推奨レベルを満たさない場合、注意喚起情報を不図示のネットワークを介して不図示の端末装置へ送信したり、不図示の表示部に表示させたりすることができる。注意喚起情報は、注意喚起を行うための情報であり、例えば、状態異常があるボルト6の情報および変位がある固定部43の情報などを含む。
【0057】
また、結果出力部18は、変位推定部16による推定結果を示す情報と判定部17による判定結果を示す情報とを含む結果情報を不図示のネットワークを介して不図示の端末装置へ送信したり、検査システム1における不図示の表示部に表示させたりすることもできる。
【0058】
つづいて、フローチャートを用いて検査システム1の処理部11による処理を説明する。
図10は、実施の形態1にかかる検査システムの処理部による処理の一例を示すフローチャートである。
【0059】
図10に示すように、検査システム1の処理部11は、計測部10の構造物情報を取得したか否かを判定する(ステップS10)。処理部11は、構造物情報を取得したと判定した場合(ステップS10:Yes)、対象領域の形状分布60を作成する(ステップS11)。ステップS11で作成される対象領域の形状分布60は、対象領域のZ軸方向の形状分布である。
【0060】
次に、処理部11は、ステップS11で作成した対象領域の形状分布60と健全な形状分布とを比較する(ステップS12)。処理部11は、ステップS12の処理が終了した場合またはステップS12における比較結果に基づいて、対象領域の変位があるか否かを判定する(ステップS13)。処理部11は、対象領域の変位があると判定した場合(ステップS13:Yes)、形状分布60のうち対象領域の健全な形状分布と異なる形状分布60をZ軸方向の変位分布として、Z軸方向の変位分布の情報である変位情報を作成する(ステップS14)。
【0061】
次に、処理部11は、学習情報作成処理を実行する(ステップS15)。ステップS15の学習情報作成処理は、
図11に示すステップS30〜S35の処理であり、後で詳述する。なお、学習情報作成処理は、構造物情報が取得される前に実行されてもよい。
【0062】
次に、処理部11は、固定部変位推定処理を実行する(ステップS16)。処理部11は、動作モードが第1推定モードに設定されている場合、ステップS16の固定部変位推定処理として、後述する
図12に示すステップS40〜S43の処理を実行する。また、処理部11は、動作モードが第2推定モードに設定されている場合、ステップS16の固定部変位推定処理として、後述する
図13に示すステップS50〜S53の処理を実行する。
【0063】
次に、処理部11は、ステップS16の固定部変位推定処理の結果に基づいて、ボルト6の締結異常の判定処理を実行する(ステップS17)。そして、処理部11は、ステップS17の処理の結果に基づいて、ボルト6の締結異常があるか否かを判定する(ステップS18)。
【0064】
処理部11は、ボルト6の締結異常があると判定した場合(ステップS18:Yes)、ボルト6の締結異常が点検推奨レベルか否かを判定する(ステップS19)。処理部11は、ボルト6の締結異常が点検推奨レベルであると判定した場合(ステップS19:Yes)、道路3の管理会社の端末装置へ点検推奨情報を出力して固定部43の点検を推奨する(ステップS20)。
【0065】
処理部11は、ボルト6の締結異常が点検推奨レベルではないと判定した場合(ステップS19:No)、道路3の管理会社の端末装置へ注意喚起情報を出力して注意喚起を行う(ステップS21)。
【0066】
処理部11は、ステップS20の処理が終了した場合、ステップS21の処理が終了した場合、ボルト6の締結異常がないと判定した場合(ステップS18:No)、対象領域の変位がないと判定した場合(ステップS13:No)、または構造物情報を取得していないと判定した場合(ステップS10:No)、動作終了のタイミングであるか否かを判定する(ステップS22)。処理部11は、例えば、処理部11を含む装置の不図示の電源がオフされた場合または不図示の操作部への動作終了の操作が行われた場合に、動作終了のタイミングであると判定する。
【0067】
処理部11は、動作終了のタイミングではないと判定した場合(ステップS22:No)、処理をステップS10へ移行し、動作終了のタイミングであると判定した場合(ステップS22:Yes)、
図10に示す処理を終了する。
【0068】
図11は、実施の形態1にかかる検査システムの処理部による学習情報作成処理の一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、処理部11は、構造物情報が計測部10で得られた計測位置に対応する構成情報を取得する(ステップS30)。そして、処理部11は、ステップS30で取得した構成情報に基づいて、構造物情報が計測部10で得られた計測位置に対応する構造物モデル50を作成する(ステップS31)。
【0069】
処理部11は、締結異常組み合わせを決定する(ステップS32)。そして、処理部11は、ステップS32で決定された締結異常組み合わせでの対象領域の変位分布と固定部53の変位とを算出し(ステップS33)、算出結果に基づいて学習情報を作成する(ステップS34)。
【0070】
次に、処理部11は、未決定の締結異常組み合わせがあるか否かを判定する(ステップS35)。処理部11は、未決定の締結異常組み合わせがあると判定した場合(ステップS35:Yes)、処理をステップS32に移行する。また、処理部11は、未決定の締結異常組み合わせがないと判定した場合(ステップS35:No)、
図11に示す処理を終了する。
【0071】
図12は、実施の形態1にかかる検査システムの処理部による固定部変位推定処理の一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、処理部11は、上述した学習情報作成処理によって作成された複数の学習情報のうちの1つの学習情報を選択する(ステップS40)。
【0072】
次に、処理部11は、ステップS14で作成された変位情報で示される変位分布とステップS40で選択した学習情報で示される変位分布との類似度を算出する(ステップS41)。そして、処理部11は、すべての学習情報に対して類似度を算出済みであるか否かを判定する(ステップS42)。
【0073】
処理部11は、すべての学習情報に対して類似度を算出済みではないと判定した場合(ステップS42:No)、処理をステップS40に移行する。また、処理部11は、すべての学習情報に対して類似度を算出済みであると判定した場合(ステップS42:Yes)、学習情報で示される固定部53の変位を正規化した類似度で重みづけして足し合わせることで得られる変位を固定部43の変位として推定し(ステップS43)、
図12に示す処理を終了する。
【0074】
図13は、実施の形態1にかかる検査システムの処理部による固定部変位推定処理の他の例を示すフローチャートである。
図13に示すステップS50〜S52の処理は、
図12に示すステップS40〜S42の処理と同じであるため説明を省略する。
【0075】
処理部11は、すべての学習情報に対して類似度を算出済みであると判定した場合(ステップS52:Yes)、最も類似度が高い学習情報で示される固定部53の変位を固定部43の変位として推定し(ステップS53)、
図13に示す処理を終了する。
【0076】
以上のように、実施の形態1にかかる検査システム1は、変位情報取得部24と、推定部26と、判定部17とを備える。変位情報取得部24は、固定部43が道路3にボルト6で固定された構造物4における固定部43以外の領域である対象領域の変位分布の情報である変位情報を取得する。道路3は、支持体の一例である。推定部26は、変位情報取得部24によって取得された変位情報に基づいて、ボルト6の軸方向に垂直な方向への固定部43の変位量を推定する。判定部17は、推定部26によって推定された固定部43の変位量に基づいて、ボルト6の緩みを判定する。これにより、検査システム1は、構造物4においてボルト6で固定される固定部43を計測することなくボルト6の緩みを判定することができる。
【0077】
また、検査システム1は、学習情報取得部25を備える。学習情報取得部25は、構造物4をモデル化した構造物モデル50から算出される情報であってボルト6の緩みによって生じるボルト6の軸方向に垂直な方向への固定部53の変位量と対象領域の変位分布との関係を示す情報である学習情報を取得する。推定部26は、学習情報取得部25によって取得された学習情報と変位情報取得部24によって取得された変位情報とに基づいて、固定部43の変位量を推定する。これにより、検査システム1は、固定部43の変位量を精度よく推定することができることから、ボルト6の緩みを精度よく判定することができる。
【0078】
また、検査システム1は、複数のボルト6によって固定部43が道路3に固定される。判定部17は、推定部26によって推定された固定部43の変位量に基づいて、複数のボルト6の各々の緩みを判定する。これにより、検査システム1は、複数のボルト6の緩みを一度に点検できるため、ボルト6を1本ずつ検査する必要がなく、点検時間を大幅に削減することができる。
【0079】
また、推定部26は、ボルト6の軸方向に垂直な方向への固定部43の変位量に加え、ボルト6の軸方向への固定部43の変位量を推定する。判定部17は、ボルト6の軸方向に垂直な方向への固定部43の変位量とボルト6の軸方向への固定部43の変位量とに基づき、ボルト6の緩みに加え、ボルト6の固定部43からの脱落を判定する。
【0080】
また、検査システム1は、対象領域の変位を非接触で計測する計測部10を備える。変位情報取得部24は、計測部10によって計測された対象領域の変位の情報を変位情報として取得する。これにより、検査システム1は、構造物4を非接触で高速に計測できるため、点検時間を大幅に削減することができる。
【0081】
また、計測部10は、移動体2に搭載され、移動体2が移動している状態で対象領域の変位を計測する。これにより、検査システム1は、例えば、道路3で作業を行うための車線規制を行うことなく、ボルト6の緩みを判定することができる。
【0082】
また、構造物4は、道路3に沿って設置されている防音壁である。これにより、検査システム1は、ボルト6で固定される固定部43が道路側から見えないような防音壁であっても、かかる防音壁を固定するボルト6の緩みを判定することができる。
【0083】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる検査システムでは、対象領域の複数の方向の変位分布から固定部の変位を推定する点で、対象領域の1方向の変位分布から固定部の変位を推定する実施の形態1にかかる検査システム1と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の検査システム1と異なる点を中心に説明する。
【0084】
図14は、実施の形態2にかかる検査システムの構成の一例を示す図である。
図14に示すように、実施の形態2にかかる検査システム1Aは、処理部11に代えて、処理部11Aを備える点で、実施の形態1の検査システム1と異なる。
【0085】
処理部11Aは、学習情報作成部13、変位情報作成部14、変位情報記憶部15、および変位推定部16に代えて、学習情報作成部13A、変位情報作成部14A、変位情報記憶部15A、および変位推定部16Aを備える点で、処理部11と異なる。
【0086】
学習情報作成部13Aは、計算部22および学習情報記憶部23に代えて、計算部22Aおよび学習情報記憶部23Aを備える点で、学習情報作成部13と異なる。計算部22Aは、構造物モデル50を用いて、複数のボルト6のうち締結異常組み合わせを変更しながら、支柱51および遮音板52の変位分布と固定部53の変位量とを算出する。
【0087】
計算部22Aは、Z軸方向の変位分布とY軸方向の変位分布とを対象領域の変位分布として算出する点で、Y軸方向の変位分布を算出しない計算部22と異なる。計算部22Aは、支柱51および遮音板52の変位分布のうち対象領域の変位分布の情報と固定部53の変位の情報とを含む締結異常組み合わせ毎の学習情報を学習情報記憶部23Aに記憶させる。
【0088】
変位情報作成部14Aは、構造物情報取得部12によって取得した構造物情報に含まれる形状情報に基づいて、対象領域のZ軸方向の変位分布の情報とY軸方向の変位分布の情報を対象領域の変位分布の情報として作成する。
図15は、実施の形態2にかかる変位情報作成部によって作成されるY軸方向の変位分布の一例を示す図である。
【0089】
図15に示す形状分布61は、
図3に示す左右方向の中央の支柱41を固定する2つの固定部43を固定する8つのボルト6が緩んだ場合の対象領域のY軸方向の変位分布であり、対象領域のY軸方向の形状分布61が等高線で示されている。
図15に示す形状分布61は、道路3を覆うような形状分布をしている。
【0090】
このように、変位情報作成部14Aは、対象領域のZ軸方向の形状分布60の情報に加え、対象領域のY軸方向の形状分布61の情報を作成する。なお、変位情報作成部14Aによって作成される形状分布61は、Y軸方向の位置が等高線で表されているが、かかる例に限定されず、例えば、3次元点群でY軸方向の位置が表されてもよい。
【0091】
変位情報作成部14Aは、変位情報作成部14の処理と同様に、対象領域の健全な形状分布と形状分布60とを比較し、かかる比較結果に基づいて、形状分布60のうち対象領域の健全な形状分布と異なる形状分布60を対象領域のZ軸方向の変位分布の情報を第1変位情報として変位情報記憶部15Aに記憶させる。
【0092】
また、変位情報作成部14Aは、対象領域の健全な形状分布と形状分布61とを比較し、対象領域の健全な形状分布と形状分布61とが異なるか否かを判定する。変位情報作成部14Aは、対象領域の健全な形状分布と形状分布61とが異なる場合に、形状分布61のうち対象領域の健全な形状分布と異なる形状分布61を対象領域のY軸方向の変位分布の情報を第2変位情報として変位情報記憶部15Aに記憶させる。対象領域のY軸方向の変位分布は、対象領域のY軸方向の位置の分布または対象領域のY軸方向の変位量の分布である。
【0093】
変位推定部16Aは、変位情報取得部24、学習情報取得部25、および推定部26に代えて、変位情報取得部24A、学習情報取得部25A、および推定部26Aを備える点で、変位推定部16と異なる。
【0094】
変位情報取得部24Aは、変位情報記憶部15Aから第1変位情報および第2変位情報を取得する。学習情報取得部25Aは、学習情報記憶部23Aから学習情報を取得する。推定部26Aは、変位情報取得部24Aによって取得された第1変位情報および第2変位情報と学習情報取得部25Aによって取得された学習情報とに基づいて、固定部43の変位を推定する。
【0095】
推定部26Aは、変位情報取得部24Aによって取得された変位情報で示される変位分布と学習情報で示される変位分布との類似度を学習情報毎に算出する。変位情報で示される変位分布と学習情報で示される変位分布との類似度は、例えば、ユーグリッド距離またはコサイン類似度などである。
【0096】
推定部26Aは、例えば、第1変位情報で示される変位分布と学習情報で示されるZ軸方向の変位分布との類似度を第1類似度として学習情報毎に算出する。また、推定部26Aは、例えば、第2変位情報で示される変位分布と学習情報で示されるY軸方向の変位分布との類似度を第2類似度として学習情報毎に算出する。第1類似度および第2類似度は、例えば、ユーグリッド距離またはコサイン類似度などである。
【0097】
推定部26Aは、例えば、第1類似度と第2類似度との平均値または2乗平均値を総合類似度として学習情報毎に算出する。推定部26Aは、動作モードが第1推定モードに設定されている場合、算出した総合類似度を正規化し、正規化した総合類似度によって学習情報で示される固定部53の変位に重み付けして足し合わせて得られる変位を固定部43の変位として推定する。
【0098】
また、推定部26Aは、動作モードが第2推定モードに設定されている場合、算出した総合類似度が最も高い変位分布の学習情報で示される固定部53の変位を固定部43の変位として推定する。
【0099】
推定部26Aは、総合類似度に代えて、第1類似度および第2類似度を用いて、固定部43の変位を推定することもできる。例えば、推定部26Aは、動作モードが第1推定モードに設定されている場合、第1推定変位と第2推定変位とを算出する。第1推定変位は、第1類似度を正規化し、正規化した第1類似度を学習情報で示される固定部53の変位に重み付けして足し合わせることで得られる。第2推定変位は、第2類似度を正規化し、正規化した第2類似度を学習情報で示される固定部53の変位に重み付けして足し合わせることで得られる。
【0100】
推定部26Aは、第1推定変位と第2推定変位とに基づいて、固定部43の変位を推定する。例えば、推定部26Aは、第1推定変位と第2推定変位との平均変位を固定部43の変位として推定する。
【0101】
また、推定部26Aは、動作モードが第1推定モードに設定されている場合、第1類似度が最も高い学習情報と第2類似度が最も高い学習情報とが同じであるか否かを判定する。推定部26Aは、第1類似度が最も高い学習情報と第2類似度が最も高い学習情報とが同じである場合、第1類似度および第2類似度が最も高い学習情報で示される固定部53の変位を固定部43の変位として推定する。
【0102】
推定部26Aは、第1類似度が最も高い学習情報と第2類似度が最も高い学習情報とが同じではない場合、第1類似度が最も高い学習情報で示される固定部53の変位と第2類似度が最も高い学習情報で示される固定部53の変位とを第1類似度および第2類似度で重み付けして足し合わせることで得られる固定部53の変位を固定部43の変位として推定する。
【0103】
以上のように、実施の形態1にかかる検査システム1Aにおいて、変位情報は、ボルト6の軸方向に垂直な方向の対象領域の変位分布とボルト6の軸方向の対象領域の変位分布の情報を対象領域の変位の情報として含む。これにより、検査システム1Aは、固定部43の変位量を精度よく推定することができることから、ボルト6の緩みを精度よく判定することができる。
【0104】
実施の形態3.
実施の形態3にかかる検査システムは、ランダムパターンが塗布された対象領域を撮像し撮像画像から対象領域の変位分布を計測する計測部を備え、計測部で計測された対象領域の変位分布に基づいて固定部の変位を推定する点で、実施の形態1にかかる検査システム1と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の検査システム1と異なる点を中心に説明する。
【0105】
図16は、実施の形態3にかかる検査システムの構成の一例を示す図である。
図16に示すように、実施の形態3にかかる検査システム1Bは、計測部10および処理部11に代えて、計測部10Bおよび処理部11Bを備える点で、実施の形態1にかかる検査システム1と異なる。
【0106】
処理部11Bは、構造物情報取得部12に代えて、構造物情報取得部12Bを備える点で、処理部11と異なる。構造物情報取得部12Bは、計測部10Bから出力される構造物情報に含まれる変位情報を変位情報記憶部15に記憶させる。
【0107】
図17は、実施の形態3にかかる計測部の構成の一例を示す図である。
図17に示すように、計測部10Bは、撮像部80と、処理部81と、出力部82とを備える。撮像部80は、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサといった撮像素子およびレンズを備える。
【0108】
処理部81は、撮像部80によって撮像された対象領域の画像である撮像画像に基づいて、対象領域の形状の変位を計測し、対象領域の変位分布を示す変位情報と計測位置情報とを含む構造物情報を作成する。
【0109】
ここで、処理部81の処理について説明する。
図18は、実施の形態3にかかる構造物の一例を示す図である。
図18に示す構造物4は、防音壁であり、各支柱41の一部を対象領域としてランダムパターン70が付されている。ランダムパターン70は、例えば、白と黒のランダムパターンであり、点または線などによって形成される。
【0110】
処理部81は、構造物4が変位する前に撮像部80によって撮像された対象領域の画像である健全時撮像画像の情報を内部に記憶しており、撮像部80で新たに撮像された対象領域の画像と健全時撮像画像とを比較してデジタル画像相関法を用いて対象領域の変位分布を作成する。
【0111】
処理部81によって作成される構造物情報に含まれる変位情報で示される対象領域の変位分布は、変位箇所のZ軸方向への変位量の分布である。出力部82は、処理部81によって作成された構造物情報を出力する。ランダムパターン70を用いることで、対象領域の変位分布の計測精度を向上させることができる。
【0112】
処理部81は、撮像部80によって同一箇所を繰り返し撮影し、道路3を通る自動車の振動および構造物4にあたる風などに起因して生じるランダムパターン70の変形を健全時ランダムパターンとして内部に記憶することができる。この場合、処理部81は、撮像部80で新たに撮像された対象領域の画像に含まれるランダムパターン70と健全時ランダムパターンとを比較してデジタル画像相関法を用いて対象領域の変位分布を取得する。
【0113】
変位推定部16の推定部26は、計測部10Bから出力される構造物情報に含まれる変位情報と計算部22で作成される学習情報とに基づいて、固定部43の変位を推定する。そして、判定部17は、変位推定部16によって推定された固定部43の変位に基づいて、ボルト6の締結異常を判定する。
【0114】
計測部10Bは、計測部10と同様に、移動体2として自動車に搭載されているが、移動体2は、自動車に限定されず、例えば、ドローンであってもよい。
図19は、実施の形態3にかかる高速道路上の空間を移動する移動体に搭載された検査システムによって構造物の形状が計測される様子を示す図である。
図19に示す例では、計測部10Bが搭載される移動体2は、ドローンであり、道路3上の空間を飛行して移動する。なお、検査システム1Bは、処理部11Bを含む装置が移動体2以外の場所に配置されてもよく、検査システム1B全体が移動体2に搭載されてもよい。
【0115】
計測部10Bが実施の形態2にかかる検査システム1Aに適用される場合、処理部81によって作成される構造物情報で示される対象領域の変位分布は、変形箇所のZ軸方向への変位量の分布と変形箇所のY軸方向への変位量の分布とを含む。この場合、処理部11Aには変位情報作成部14Aは設けられず、計測部10Bから出力される構造物情報に含まれる変位情報が変位情報記憶部15Aに記憶される。
【0116】
以上のように、実施の形態3にかかる検査システム1Bは、計測部10Bを備える。対象領域には、ランダムパターン70が付されている。計測部10Bは、撮像部80と、処理部81とを備える。撮像部80は、対象領域に付されたランダムパターン70を撮影する。処理部81は、撮像部80によって撮像されたランダムパターン70に基づいて、構造物4の変位を算出する。これにより、検査システム1Bは、対象領域の変位分布を精度よく検出することができることから、ボルト6の緩みを精度よく判定することができる。
【0117】
実施の形態4.
実施の形態1にかかる検査システムは、対象領域の変位分布を計測するレーザ変位計を計測部として備え、レーザ変位計で計測された対象領域の変位分布に基づいて固定部の変位を推定する点で、実施の形態1にかかる検査システム1と異なる。以下においては、実施の形態3と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態3の検査システム1Bと異なる点を中心に説明する。
【0118】
図20は、実施の形態4にかかる検査システムの構成の一例を示す図である。
図20に示すように、実施の形態4にかかる検査システム1Cは、計測部10に代えて、計測部10Cを備える点で、実施の形態3にかかる検査システム1Bと異なる。
【0119】
計測部10Cは、レーザ変位計であり、移動体2が移動中に構造物4の変位を計測する。かかる計測部10Cは、移動体2の速度情報および位置情報をもとに、レーザ変位計で移動体2を計測した点ごとの位置を示す点群の情報を記憶し、記憶した点群の情報に基づいて、対象領域の変位分布を示す変位情報を生成する。
【0120】
計測部10Cは、移動体2の速度情報および位置情報は、移動体2から取得するが、移動体2の速度情報および位置情報を検出する機能を有していてもよい。移動体2の速度情報および位置情報は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機で受信される測位信号、加速度センサによって検出される加速度、および地磁気センサによって検出される地磁気などによって算出される。
【0121】
計測部10Cは、例えば、対象領域の健全な形状分布の情報を記憶しており、かかる健全な形状分布と記憶した点群とを比較することで、対象領域の変位分布を示す変位情報を生成する。健全な形状分布の情報は、例えば、対象領域が変形する前の点群によって生成される情報または設計図から生成された情報である。
【0122】
以上のように、実施の形態4にかかる検査システム1Cの計測部10Cは、レーザ変位計である。これにより、検査システム1Cでは、例えば、移動しながら構造物4の変位を計測できる装置を計測部10Cとして使用することで、移動しながら構造物4の変位を計測することができるため、車線規制を行うことなく、ボルト6の締結異常を判定することができる。
【0123】
実施の形態1から実施の形態4で説明した処理部11,11A,11Bのハードウェア構成について説明する。処理部11,11A,11Bは、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。処理回路は制御回路とも呼ばれる。
【0124】
図21は、実施の形態1から実施の形態4にかかる処理部の各々が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図である。
図21に示す処理回路90は制御回路であり、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路90がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、処理回路90の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路90では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路90は、処理部11,11A,11Bのいずれかの処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。このプログラムは、処理回路90により実現される各機能を処理部11,11A,11Bのいずれかに実行させるためのプログラムであるともいえる。このプログラムは、プログラムが記録された記録媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。
【0125】
ここで、プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などである。また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0126】
図22は、実施の形態1から実施の形態4に係る処理部が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図である。
図22に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路93については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路93は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0127】
なお、検査システム1,1A,1B,1Cの各々は、離れた位置に配置された2つ以上の装置で構成されてもよく、1つの装置として一体的に構成されてもよい。例えば、検査システム1,1A,1B,1Cの各々は、計測部10,10B,10Cのいずれかを含む計測装置と、かかる計測装置から送信される構造物情報に基づいて、ボルト6の締結異常を判定するサーバ装置とを備える構成であってもよい。
【0128】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
検査システム(1)は、変位情報取得部(24)と、推定部(26)と、判定部(17)とを備える。変位情報取得部(24)は、固定部が支持体にボルトで固定された構造物における固定部以外の領域である対象領域の変位分布の情報である変位情報を取得する。推定部(26)は、変位情報取得部(24)によって取得された変位情報に基づいて、ボルトの軸方向に垂直な方向への固定部の変位量を推定する。判定部(17)は、推定部(26)によって推定された固定部の変位量に基づいて、ボルトの緩みを判定する。