(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体基板の前記第2主面側の表層部に、前記第4半導体領域と共に前記第3半導体領域が部分的に形成され、前記第3半導体領域と前記第4半導体領域とが隣接する、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
前記第1半導体ピラー領域および前記第2半導体ピラー領域と前記第2主面との間に、前記第1半導体ピラー領域および前記第2半導体ピラー領域よりも不純物のピーク濃度が高い第1導電型の半導体領域を有する、
請求項5または請求項6に記載の半導体装置。
前記第1半導体ピラー領域および前記第2半導体ピラー領域と前記第2主面との間に、前記第1半導体ピラー領域および前記第2半導体ピラー領域よりも不純物のピーク濃度が高い第2導電型の半導体領域を有する、
請求項5または請求項6に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置であるPiNダイオード100の構成を示す断面図である。簡単のため、
図1には、ダイオードとして動作する活性領域の構造のみを図示し、活性領域の外側の周辺領域に設けられる終端構造の図示は省略している。
【0014】
実施の形態1のPiNダイオード100は、MCZ法で形成されたシリコン基板(MCZ基板)である半導体基板10を用いて形成されている。ただし、半導体基板10の種類はこれに限られず、例えば、FZ(Floating Zone)法で形成されたシリコン基板(FZ基板)でもよいし、CZ(Czochralski)法で形成されたシリコン基板上にエピタキシャル成長層を設けて成るCZエピ基板でもよい。半導体基板10の種類は、製造する半導体装置に適した特性を持つものが適宜選択されればよい。
【0015】
ここで、半導体基板10の表側(
図1において上側)の主面を第1主面10a、裏側(
図1において下側)の主面を第2主面10bと定義する。また、以下においては、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明する。
【0016】
図1に示すように、半導体基板10の第1主面10aと第2主面10bとの間には、第1導電型のn型ドリフト層101(第1半導体領域)が形成されている。半導体基板10の第1主面10a側の表層部、すなわち、n型ドリフト層101と第1主面10aとの間には、第2導電型のp型アノード層102(第2半導体領域)が形成されている。半導体基板10の第2主面10b側の表層部、すなわち、n型ドリフト層101と第2主面10bとの間には、n型ドリフト層101よりも不純物のピーク濃度が高い第1導電型のn型カソード層103(第3半導体領域)が形成されている。n型ドリフト層101とn型カソード層103との間には、n型ドリフト層101よりも不純物のピーク濃度が高く、且つ、n型カソード層103よりも不純物のピーク濃度が低い第1導電型のn型バッファ層104が形成されている。
【0017】
また、半導体基板10の第1主面10a上には、p型アノード層102と接続するアノード電極105が形成されている。半導体基板10の第2主面10b上には、n型カソード層103に接続するカソード電極106が形成されている。
【0018】
図2は、PiNダイオード100の深さ方向のドーパント濃度プロファイルを示す図であり、p型アノード層102、n型ドリフト層101、n型バッファ層104、n型カソード層103の深さ方向のドーパント濃度プロファイルを示している。
図2に示すように、n型ドリフト層101は、その第1主面10a側(基板表面側)の端部から第2主面10b側(基板底面側)の端部までの全域にわたって水素関連ドナーを含んでいる。また、n型ドリフト層101では、その第1主面10a側の端部から第2主面10b側の端部までの全域にわたって、水素関連ドナー濃度は常にn型ドリフト層101の不純物濃度(リンまたはヒ素の濃度)以上であり、第2主面10bから第1主面10aに向かって連続的に増加している。つまり、n型ドリフト層101の水素関連ドナー濃度は、n型ドリフト層101の第1主面10a側の端部で最も高く、n型ドリフト層101の第2主面10b側の端部で最も低い。
【0019】
図3は、実施の形態1に係るPiNダイオード100の製造方法を示すフローチャートである。以下、
図3を参照しつつ、PiNダイオード100の製造方法を説明する。
【0020】
表面素子形成工程(ステップS101)では、まず、リンがドープされたn型のシリコンから成る半導体基板10のウエハを用意する。このとき半導体基板10中のリン濃度は、完成した半導体装置で所望の耐圧を得るためのリン濃度よりも低くし、半導体基板10は高比抵抗な状態とする。半導体基板10にドープされるn型の不純物はヒ素でもよい。そして、半導体基板10の第1主面10a側に、PiNダイオード100の素子構造を形成する。つまり、半導体基板10の第1主面10a側の表層部にp型アノード層102を形成し、さらに、第1主面10a上に、p型アノード層102に接続するアノード電極105を形成する。
【0021】
裏面研削工程(ステップS102)では、半導体基板10を耐圧保持に必要な所望の厚さにするように、半導体基板10の第2主面10bを研削する。このとき、化学エッチング研削により破砕層を取り除く処理を行ってもよい。
【0022】
裏面拡散層形成工程(ステップS103)では、まず、半導体基板10の第2主面10bにリンを注入することで、半導体基板10の第2主面10b側の表層部にn型バッファ層104を形成する。また、半導体基板10の第2主面10b側の表層部におけるn型バッファ層104よりも浅い位置に、n型バッファ層104よりも不純物のピーク濃度の高いn型カソード層103を形成する。このとき、n型カソード層103の表層部の一部に、第2導電型のp型カソード層を選択的に形成してもよい。
【0023】
なお、ステップS101およびステップS103においてp型アノード層102、n型カソード層103およびn型バッファ層104が形成されずに残った半導体基板10のn型の領域がn型ドリフト層101となる。
【0024】
軽イオン照射工程(ステップS104)では、
図4に示すように、半導体基板10の第2主面10b側から、ヘリウム(He)等の軽イオン20を1MeV以上の加速エネルギーで、半導体基板10を貫通するように照射することで、半導体基板10のシリコンの全域に損傷を生じさせる。これにより、半導体基板10は、シリコンの損傷領域に、格子位置から外れた格子間(Interstitial)シリコン(Si
i)、格子位置に空いた空孔(V;Vacancy)などが生じた状態となる。なお、軽イオンは、ヘリウム(He)または水素(H)、あるいはそれらの同位体であればよく、軽イオン照射のドーズ量は、1×10
14cm
−2以上1×10
16cm
−2以下であればよい。
【0025】
水素プラズマ照射・アニール工程(ステップS105)では、まず、半導体基板10の第2主面10b側から水素プラズマ照射を行うことで、シリコンの損傷領域に水素(H)を導入する。そして、損傷領域に水素が導入された状態で、300℃以上450℃以下のアニールを行う。これにより、空孔はウエハ含有の酸素(O)と反応してVO欠陥を形成し、さらに、VO欠陥は水素プラズマ照射で導入された水素と反応してVOH欠陥を形成する。VOH欠陥は、伝導帯から0.35eVあたりの位置に電子トラップ準位を作り、また、水素関連のドナー化に寄与する。その結果、半導体基板10中の全域に水素関連ドナーが形成され、
図2に示したドーパント濃度プロファイルが得られる。
【0026】
裏面電極形成工程(ステップS106)では、半導体基板10の第2主面10b上に、パッケージ封止の際に必要な裏面電極として、カソード電極106を形成する。
【0027】
以上の工程により、
図1に示した構成のPiNダイオード100が形成されたデバイスウエハが完成する。
【0028】
このように、実施の形態1によれば、パワーデバイスの製造段階において、高比抵抗な半導体基板10のウエハに軽イオンを貫通させて、水素プラズマ処理とアニールを施すという簡易なプロセスによって、半導体基板10の不足分のドナーを水素関連ドナーで補償することでn型ドリフト層の均一な比抵抗を得ることができる。つまり、デバイス製造段階でウエハの比抵抗を均一化させることができる。
【0029】
<実施の形態2>
実施の形態2では、半導体基板10を用いて形成する半導体装置をMOS(Metal Oxide Semiconductor)型デバイスとした例を示す。
図5は、実施の形態2に係る半導体装置であるIGBT200の構成を示す断面図である。簡単のため、
図5には、IGBTのユニットセル分の構造のみを図示し、周辺領域に設けられる終端構造の図示は省略している。
【0030】
実施の形態2において、IGBT200が形成される半導体基板10は、MCZ基板であるものとする。ただし、半導体基板10の種類はこれに限られず、例えば、FZ基板、CZエピ基板などでもよい。
【0031】
図5のように、半導体基板10の第1主面10aと第2主面10bとの間には、第1導電型のn型ドリフト層201(第1半導体領域)が形成されている。半導体基板10の第1主面10a側の表層部、すなわち、n型ドリフト層201と第1主面10aとの間の一部の領域には、第2導電型のp型ベース層202(第2半導体領域)が選択的に形成されている。また、p型ベース層202の表層部の一部の領域には、第1導電型のn型エミッタ層203が形成されている。
【0032】
半導体基板10の第2主面10b側の表層部、すなわち、n型ドリフト層201と第2主面10bとの間には、n型ドリフト層201よりも不純物のピーク濃度が高い第2導電型のp型コレクタ層204(第4半導体領域)が形成されている。n型ドリフト層201とp型コレクタ層204との間には、n型ドリフト層201よりも不純物のピーク濃度が高く、且つ、p型コレクタ層204よりも不純物のピーク濃度が低い第1導電型のn型バッファ層205が形成されている。
【0033】
また、半導体基板10の第1主面10a上には、n型ドリフト層201、p型ベース層202およびn型エミッタ層203に跨がるようにゲート絶縁膜206が形成されており、その上にゲート電極207が形成されている。ゲート電極207は、ゲート絶縁膜206を介してn型ドリフト層201、p型ベース層202およびn型エミッタ層203に対向するように配置される。ゲート電極207の上には層間絶縁膜208が形成されており、層間絶縁膜208の上にエミッタ電極209が形成されている。層間絶縁膜208には、n型エミッタ層203に達するコンタクトホールが形成されており、エミッタ電極209は、当該コンタクトホールを通してn型エミッタ層203に接続している。
【0034】
半導体基板10の第2主面10b上には、p型コレクタ層204に接続するコレクタ電極210が形成されている。
【0035】
n型ドリフト層201は、その全域にわたって水素関連ドナーを含んでいる。また、n型ドリフト層201では、半導体基板10の第1主面10a側から第2主面10b側にわたって、水素関連ドナー濃度は常にn型ドリフト層201の不純物濃度(リンまたはヒ素の濃度)以上であり、第2主面10bから第1主面10aに向かって連続的に増加している。
【0036】
実施の形態2のIGBT200の製造方法は、基本的に
図3と同じフローチャートで表される。以下、
図3を参照しつつ、IGBT200の製造方法を説明する。
【0037】
表面素子形成工程(ステップS101)では、まず、リンがドープされたn型のシリコンから成る半導体基板10のウエハを用意する。このとき半導体基板10中のリン濃度は、完成した半導体装置で所望の耐圧を得るためのリン濃度よりも低くし、半導体基板10は高比抵抗な状態とする。半導体基板10にドープされるn型の不純物はヒ素でもよい。そして、半導体基板10の第1主面10a側に、IGBT200の素子構造を形成する。つまり、半導体基板10の第1主面10a側の表層部に、p型ベース層202およびn型エミッタ層203を形成する。続いて、第1主面10a上に、ゲート絶縁膜206、ゲート電極207、層間絶縁膜208およびエミッタ電極209を形成する。このとき、エミッタ電極209は、層間絶縁膜208に形成されたコンタクトホールを通してn型エミッタ層203に接続される。
【0038】
裏面研削工程(ステップS102)では、半導体基板10を耐圧保持に必要な所望の厚さにするように、半導体基板10の第2主面10bを研削する。このとき、化学エッチング研削により破砕層を取り除く処理を行ってもよい。
【0039】
裏面拡散層形成工程(ステップS103)では、まず、半導体基板10の第2主面10bにリンを注入することで、半導体基板10の第2主面10b側の表層部にn型バッファ層205を形成する。また、半導体基板10の第2主面10b側の表層部におけるn型バッファ層205よりも浅い位置に、n型バッファ層205よりも不純物のピーク濃度の高いp型コレクタ層204を形成する。
【0040】
なお、ステップS101およびステップS103においてp型ベース層202、n型エミッタ層203、p型コレクタ層204およびn型バッファ層205が形成されずに残った半導体基板10のn型の領域がn型ドリフト層201となる。
【0041】
軽イオン照射工程(ステップS104)では、
図4に示すように、半導体基板10の第2主面10b側から、ヘリウム(He)等の軽イオン20を1MeV以上の加速エネルギーで、半導体基板10を貫通するように照射することで、半導体基板10のシリコンの全域に損傷を生じさせる。
【0042】
水素プラズマ照射・アニール工程(ステップS105)では、まず、半導体基板10の第2主面10b側から水素プラズマ照射を行うことで、シリコンの損傷領域に水素(H)を導入する。そして、損傷領域に水素が導入された状態で、300℃以上450℃以下のアニールを行う。その結果、半導体基板10中の全域に水素関連ドナーが形成され、上述したn型ドリフト層201のドーパント濃度プロファイルが得られる。すなわち、n型ドリフト層201の全域において、水素関連ドナー濃度がリン濃度よりも常に高く、半導体基板10の第2主面10bから第1主面10aに向かって水素関連ドナー濃度が連続的に増加したドーパント濃度プロファイルが得られる。
【0043】
裏面電極形成工程(ステップS106)では、半導体基板10の第2主面10b上に、パッケージ封止の際に必要な裏面電極として、コレクタ電極210を形成する。
【0044】
以上の工程により、
図5に示した構成のIGBT200が形成されたデバイスウエハが完成する。
【0045】
なお、
図5のIGBT200は、プレーナーゲート構造であるが、トレンチゲート構造であってもよい。トレンチゲート構造をとる場合、ゲート絶縁膜206およびゲート電極207は、半導体基板10の第1主面10aに形成されたトレンチ内に形成される。また、トレンチ内のゲート電極207がゲート絶縁膜206を介してn型ドリフト層201、p型ベース層202およびn型エミッタ層203に対向するように、p型ベース層202およびn型エミッタ層203はトレンチの側壁に形成され、トレンチは底部がp型ベース層202の下のn型ドリフト層201にまで達する深さで形成される。
【0046】
また、p型コレクタ層204に代えて、n型ドリフト層201よりも不純物のピーク濃度が高い第1導電型のn型ドレイン層を形成することで、実施の形態2の半導体装置をMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)としてもよい。このMOSFETもトレンチゲート構造であってもよい。
【0047】
また、半導体基板10の第2主面10b側の表層部に、p型コレクタ層204と共にn型コレクタ層を部分的に形成しても
よい。つまり、n型ドリフト層201と第2主面10bとの間に、p型コレクタ層204とそれに隣接するn型コレクタ層とを形成してもよい。
【0048】
また、半導体基板10の第1主面10aに、IGBT領域とダイオード領域とを設け、IGBT領域における半導体基板10の第2主面10b側の表層部にp型コレクタ層204を形成し、ダイオード領域における半導体基板10の第2主面10b側の表層部にn型カソード層を形成することで、実施の形態2の半導体装置をRC(Reverse-Conducting)型のIGBTとしてもよい。つまり、n型ドリフト層201と第2主面10bとの間に、p型コレクタ層204とそれに隣接するn型カソード層とを形成してもよい。
【0049】
<実施の形態3>
実施の形態3では、半導体基板10を用いて形成する半導体装置をSJ(Super-Junction)タイプのMOS型デバイスとした例を示す。
図6は、実施の形態3に係る半導体装置であるSJ−MOFSFET300の構成を示す断面図である。簡単のため、
図6には、MOSFETのユニットセル分の構造のみを図示し、周辺領域に設けられる終端構造の図示は省略している。
【0050】
実施の形態3において、SJ−MOFSFET300が形成される半導体基板10は、CZエピ基板であるものとする。ただし、半導体基板10の種類はこれに限られず、例えば、MCZ法、FZ基板などでもよい。
【0051】
図6のように、半導体基板10の第1主面10aと第2主面10bとの間には、第1導電型のn型ピラー層301(第1半導体ピラー領域)および第2導電型のp型ピラー層302(第2半導体ピラー領域)が形成されている。n型ピラー層301とp型ピラー層302とは、互いに隣接し、横方向(第1主面10aに水平な方向)に向かって交互に設けられている。
【0052】
半導体基板10の第1主面10a側の表層部、すなわち、n型ピラー層301およびp型ピラー層302と第1主面10aとの間の一部の領域には、第2導電型のp型ベース層303が選択的に形成されている。また、p型ベース層303の表層部の一部の領域には、第1導電型のn型ソース層304が形成されている。
【0053】
半導体基板10の第2主面10b側の表層部、すなわち、n型ピラー層301およびp型ピラー層302と第2主面10bとの間には、n型ピラー層301およびp型ピラー層302よりも不純物のピーク濃度が高い第1導電型のn型ドレイン層305が形成されている。
【0054】
また、半導体基板10の第1主面10a上には、n型ピラー層301、p型ベース層303およびn型ソース層304に跨がるようにゲート絶縁膜306が形成されており、その上にゲート電極307が形成されている。ゲート電極307は、ゲート絶縁膜306を介してn型ピラー層301、p型ベース層303およびn型ソース層304に対向するように配置される。ゲート電極307の上には層間絶縁膜308が形成されており、層間絶縁膜308の上にソース電極309が形成されている。層間絶縁膜308には、n型ソース層304に達するコンタクトホールが形成されており、ソース電極309は、当該コンタクトホールを通してn型ソース層304に接続している。
【0055】
半導体基板10の第2主面10b上には、n型ソース層304に接続するドレイン電極310が形成されている。
【0056】
なお、実施の形態3における半導体基板10のドーパント濃度プロファイルについては後述する。
【0057】
図7は、実施の形態3に係るSJ−MOFSFET300の製造方法を示すフローチャートである。以下、
図7を参照しつつ、SJ−MOFSFET300の製造方法を説明する。
【0058】
SJ基板製造工程(ステップS301)では、まず、
図8のように、高濃度にリンまたはヒ素がドープされた高濃度n型基板30上にリンがドープされたn型エピタキシャル層31を成長させて成るCZエピ基板である半導体基板10を用意する。そして、半導体基板10のn型エピタキシャル層31内に、n型ピラー層301およびp型ピラー層302を形成する。このとき、n型ピラー層301とp型ピラー層302とが、互いに隣接し、横方向に向かって交互に配置されるようにする。以下、n型ピラー層301およびp型ピラー層302が形成された半導体基板10を「SJ基板10」という。
【0059】
SJ基板10の製造方法は、任意の方法でよく、例えば、エピタキシャル成長とイオン注入とを複数回繰り返し行うことでn型ピラー層およびp型ピラー層を形成するマルチエピ製造方式や、シリコン層にトレンチを形成し、当該トレンチを埋めるようにシリコンをエピタキシャル成長させることでn型ピラー層およびp型ピラー層を形成するトレンチフィル方式などを用いることができる。
【0060】
表面素子形成工程(ステップS302)では、半導体基板10の第1主面10a側に、SJ−MOFSFET300の素子構造を形成する。まず、SJ基板10の第1主面10a側の表層部に、p型ベース層303およびn型ソース層304を形成する。続いて、第1主面10a上に、ゲート絶縁膜306、ゲート電極307、層間絶縁膜308およびソース電極309を形成する。このとき、ソース電極309は、層間絶縁膜308に形成されたコンタクトホールを通してn型ソース層304に接続される。
【0061】
チャージバランス評価工程(ステップS303)では、SJ基板10のチャージバランスを評価する。チャージバランスの評価は、ウエハテストで素子耐圧を評価するか、チャージバランスモニター用のTEG(Test Element Group)を評価することで行われる。チャージバランスモニター用のTEGは、製品ウエハとは別のモニター基板上に形成されたTEGでもよいし、製品ウエハ上の無効領域や予め規定されたTEGエリアに設けられたTEGでもよい。チャージバランスの評価によって、n型ピラー層301およびp型ピラー層302について、チャージバランスに対して不足するドナー濃度およびアクセプター濃度を算出する。
【0062】
軽イオン照射工程(ステップS304)では、ステップS303によるドナー濃度の不足分の算出結果に基づき、
図4に示すように、SJ基板10の第2主面10b側から、ヘリウム(He)等の軽イオン20を1MeV以上の加速エネルギーで、半導体基板10を貫通するように照射することで、SJ基板10のシリコンの全域に損傷を生じさせる。
【0063】
水素プラズマ照射・アニール工程(ステップS305)では、まず、SJ基板10の第2主面10b側から水素プラズマ照射を行うことで、シリコンの損傷領域に水素(H)を導入する。そして、損傷領域に水素が導入された状態で、300℃以上450℃以下のアニールを行う。その結果、SJ基板10中の全域に水素関連ドナーが形成される。この工程で、水素関連ドナー濃度を調整することで、SJ基板10のチャージバランスを評価した後に、チャージバランスを所望の値に補正することが可能となる。
【0064】
裏面研削工程(ステップS306)では、SJ−MOFSFET300のオン抵抗を下げるために、SJ基板10の第2主面10b側にある高濃度n型基板30を研削する。このとき、化学エッチング研削により破砕層を取り除く処理を行ってもよい。なお、この工程で除去されずに残った高濃度n型基板30の部分がn型ドレイン層305となる。
【0065】
裏面電極形成工程(ステップS307)では、SJ基板10の第2主面10b上に、パッケージ封止の際に必要な裏面電極として、ドレイン電極310を形成する。
【0066】
以上の工程により、
図6に示した構成のIGBT200が形成されたデバイスウエハが完成する。
【0067】
図9に、ステップS304およびS305の処理を行った後のSJ基板10(
図8)におけるp型ピラー層302の部分の深さ方向のドーパント濃度プロファイル、すなわち
図8のA1−A2線に沿ったドーパント濃度プロファイルを示す。また、
図10に、ステップS304およびS305の処理を行った後のSJ基板10におけるn型ピラー層301の部分の深さ方向のドーパント濃度プロファイル、すなわち
図8のB1−B2線に沿ったドーパント濃度プロファイルを示す。
【0068】
図9のように、p型ピラー層302に導入された水素関連ドナーの濃度は、第1主面10a側の端部から第2主面10b側の端部までの全域にわたって、p型ピラー層302の不純物濃度(ボロンの濃度)よりも常に低く、第2主面10bから第1主面10aに向かって連続的に増加している。すなわち、p型ピラー層302の水素関連ドナーの濃度は、p型ピラー層302の第1主面10a側の端部で最も高く、p型ピラー層302の第2主面10b側の端部で最も低くなっており、第1主面10a側から第2主面10b側へ向かって水素関連ドナーが減少するような勾配を持つ。水素関連ドナーはボロンのアクセプターを電荷的に補償するため、p型ピラー層302の深さ方向における実効ドーパント濃度は、SJ基板10の第1主面10a側から第2主面10b側へ向かって増加するような勾配となる。
【0069】
また、
図10のように、n型ピラー層301に導入された水素関連ドナーの濃度は、第1主面10a側の端部から第2主面10b側の端部までの全域にわたって、n型ピラー層301の不純物濃度(リンまたはヒ素の濃度)よりも常に低く、第2主面10bから第1主面10aに向かって連続的に増加している。すなわち、n型ピラー層301の水素関連ドナーの濃度も、n型ピラー層301の第1主面10a側の端部で最も高く、n型ピラー層301の第2主面10b側の端部で最も低くなっており、第1主面10a側から第2主面10b側へ向かって水素関連ドナーが減少するような勾配を持つ。そのため、n型ピラー層301の深さ方向における実効ドーパント濃度は、SJ基板10の第1主面10a側から第2主面10b側へ向かって減少するような勾配となる。
【0070】
従って、実施の形態3のSJ−MOFSFET300では、SJ基板10の第1主面10a側がpリッチで、SJ基板10の第2主面10bへ向かって徐々にnリッチ化する構造となる。これにより、チャージインバランス量に対する耐圧の感度が増加してピーク耐圧を増加させることができるため、より高い耐圧を確保できるという効果が得られる。
【0071】
なお、
図6のSJ−MOFSFET300は、プレーナーゲート構造であるが、トレンチゲート構造であってもよい。トレンチゲート構造をとる場合、ゲート絶縁膜306およびゲート電極307は、SJ基板10の第1主面10aに形成されたトレンチ内に形成される。また、トレンチ内のゲート電極307がゲート絶縁膜306を介してn型ピラー層301、p型ベース層303およびn型ソース層304に対向するように、p型ベース層303およびn型ソース層304はトレンチの側壁に形成され、トレンチは底部がp型ベース層303の下のn型ピラー層301にまで達する深さで形成される。
【0072】
また、n型ソース層304に代えて、n型ピラー層301およびp型ピラー層302よりも不純物のピーク濃度が高い第2導電型のp型コレクタ層を形成することで、実施の形態3の半導体装置をSJ−IGBTとしてもよい。このSJ−IGBTもトレンチゲート構造であってもよい。
【0073】
<実施の形態4>
実施の形態4では、ウエハ全域に水素関連ドナーを導入するために半導体基板10のシリコン中に損傷を生じさせる工程を、軽イオン照射ではなく、電子線照射によって行う。電子線は、Heやプロトン等の軽イオンに比べて透過性が高いという特徴がある。そのため、
図4と同様に半導体基板10のウエハの第2主面10bから電子線を照射しても、
図4とは逆にウエハの第1主面10aから電子線を照射しても、均一な損傷を生じさせることができる。そのため、半導体基板10に導入される水素関連ドナーは、半導体基板10の深さ方向に均一に導入される。
【0074】
例えば、
図11は、実施の形態1のPiNダイオード100の製造方法において、軽イオン照射の代わりに電子線照射を行う場合のフローチャートである。
図11は、
図3の軽イオン照射工程(ステップS104)を、電子線照射工程(ステップS104a)に置き換えたものである。ステップS104aにおいて、軽イオン照射ではなく、電子線照射が行われることを除けば、
図11のフローは基本的に
図3のフローと同じである。ただし、電子線の照射エネルギーは、400keV以上3MeV以下の範囲を好適とする。また、ステップS104aでは、電子線を半導体基板10の第1主面10a側から照射しても、第2主面10b側から照射してもよい。
【0075】
また、
図11のフローで製造されたPiNダイオード100の深さ方向のドーパント濃度プロファイルを
図12に示す。
図2と同様に、n型ドリフト層101は、その全域にわたって水素関連ドナーを含んでおり、n型ドリフト層101の全域にわたって、水素関連ドナー濃度は常にn型ドリフト層101の不純物濃度(リンまたはヒ素の濃度)以上である。ただし、
図2とは異なり、半導体基板10の深さ方向の水素関連ドナーの濃度は、n型ドリフト層101の全域にわたって均一となる。
【0076】
ここでは、実施の形態1の半導体装置の製造方法に対して、軽イオン照射の代わりに電子線照射を行う例を示したが、本実施の形態は実施の形態2および3にも適用可能である。
【0077】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0078】
上記した説明は、すべての態様において、例示であって、例示されていない無数の変形例が想定され得るものと解される。
半導体装置(100)は、第1主面(10a)および第2主面(10b)を有する半導体基板(10)を用いて形成されている。半導体基板(10)の第1主面(10a)と第2主面(10b)との間には、第1導電型の第1半導体領域(101;201)が形成されている。第1半導体領域(101;201)と第1主面(10a)との間には、第2導電型の第2半導体領域(102,202)が形成されている。第1半導体領域(101;201)は水素関連ドナーを含み、第1半導体領域(101;201)の水素関連ドナーの濃度は、第1半導体領域(101;201)の不純物濃度以上である。