【文献】
金貞姫, 外,新型コロナウイルス感染症に対するSARS-CoV-2抗体検査試薬の検討―抗原種の違いによる特性と抗体アイソタイプの関連―,医学検査,2020年,Vol.69, No.4,p.554-561
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のイムノクロマトグラフィー法による検査器具(以下、「イムノクロマト検査器具」という。)では、より細分化した判定が困難である。
【0011】
具体的には、従来のイムノクロマト検査器具では、所定のウィルス(例えば、新型コロナウィルス)の感染力を失わせる中和作用のある抗体(中和抗体、例えばIgG抗体)について、自然感染により産生されたものであるか、ワクチン接種により産生されたものであるか、を判別することができない問題があった。
【0012】
新型コロナウィルスに対する中和抗体は、ヒト細胞への侵入に必要なスパイクタンパク質(S抗原)を標的として当該ウィルスの感染を防ぐことが知られており、このことから、S抗原を標的とする(結合可能な)抗体(IgG抗体など)を産生可能なワクチンの研究・開発が進んでいる。
【0013】
そしてこのワクチンの接種が普及した場合には、その有効性を迅速かつ簡易に判定できるようにすることも望まれる。ここで、従来のイムノクロマト検査器具においてもS抗原を標識抗原に用いた検査片によれば、S抗原に結合可能なIgG抗体(中和抗体として機能するIgG抗体)の存在は検知可能である。
【0014】
しかしこのような中和作用を有するIgG抗体は、ワクチンの接種だけでなく、ウィルスに感染(自然感染)した場合でも産生される。つまり、イムノクロマト検査器具の場合、S抗原を標識抗原に用いた検査片では、検体中の中和抗体(例えば、IgG抗体)を検出することはできるが、それがワクチン接種と自然感染のいずれによって産生されたものであるか、を判別することができない問題があった。
【0015】
なお、従来のイムノクロマト試験器具において、S抗原とN抗原とを標識抗原に用いた検査片の場合も同様の問題がある。すなわち、上述のごとく、捕捉抗体ラインで捕捉されるのは、S抗原とN抗原のいずれかと結合した免疫複合体(1種類の抗体)である。つまりこの場合も、捕捉抗体ラインが呈色した場合には、検体中にS抗原を捕捉する抗体(中和抗体として機能するIgG抗体)あるいは、N抗原を捕捉する抗体(例えば、IgG抗体)の少なくともいずれかが含まれているか否かの判別ができるのみであり、これによってもワクチン接種により中和抗体が産生されたと判定することはできない問題があった。
【0016】
このように現状では、所定のウィルス、例えば新型コロナウィルスに対するワクチン接種の有効性、あるいは接種の判断(自然感染による中和抗体の有無)を迅速かつ簡易に判定する検査器具および検査方法が実用的なレベル提供されているとは言えず、その実用化が切望されている。
【0017】
本発明は、斯かる実情に鑑み、所定のウィルス、例えば新型コロナウィルスに対するワクチン接種の有効性あるいは接種の判断などを迅速かつ簡易に判定することが可能な、イムノクロマトグラフィー法による検査器具および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、イムノクロマトグラフィー法による検査器具であって、第一検査片と、前記第一検査片とは別体の第二検査片と、前記第一検査片と前記第二検査片とを一体的に収容するケースとを備え、前記ケースは、検体の滴下窓と、前記第一検査片の一部を外部から視認可能な第一検出窓と、前記第二検査片の一部を外部から視認可能な第二検出窓と、を有し、前記第一検査片は、検体中の第一抗体の存在を検出可能であり、前記第二検査片は、前記検体中の前記第一抗体とは異なる第二抗体の存在を検出可能であり、前記第一検出窓から視認される前記第一検査片の結果と、前記第二検出窓から視認される前記第二検査片の結果とを同時並行的に判定可能に構成し、
前記第一検査片は、前記第一抗体を捕捉可能な第一標識体を含有する第一標識体含有部と、該第一抗体と該第一標識体との複合体を捕捉可能な第一検出部を少なくとも有し、前記第二検査片は、前記第二抗体を捕捉可能な第二標識体を含有する第二標識体含有部と、該第二抗体と該第二標識体との複合体を捕捉可能な第二検出部を少なくとも有し、前記第一標識体は、所定のウィルスのスパイクタンパク質の一部を抗原として含むものであり、前記第二標識体は、前記ウィルスのヌクレオカプシドタンパク質を抗原として含むものであり、前記第一抗体は、ワクチンの接種または前記ウィルスの感染により産生される抗体であり、前記第二抗体は、前記ウィルスの感染により産生される抗体である、ことを特徴とする検査器具に係るものである。
【0019】
また、本発明は、上記の検査器具と、前記第一検査片による検査結果と前記第二検査片による検査結果に基づきワクチンの接種による抗体の産生の可能性を含む検体の状態を判定可能な判定ガイドと、を備えた検査キットに係るものである。
【0020】
また、本発明は、上記の検査器具を用いた検査方法であって、
前記検体を
前記第一検査片に滴下し、該検体中の
前記第一抗体の有無を検出する第一検査工程と、前記検体を前記第一検査片とは異なる
前記第二検査片に滴下し、該検体中の
前記第二抗体の有無を検出する第二検査工程と、前記第一検査工程と前記第二検査工程の結果を組み合わせて前記検体の状態を判定する判定工程と、
を有し、前記判定工程において、前記ワクチンの接種による抗体の産生の可能性の判定を含む複数の判定候補から一の判定を導出する、ことを特徴とする検査方法に係るものである。
【0021】
また、本発明は、イムノクロマトグラフィー法により検体中の第一抗体および第二抗体の有無を判定する検査方法であって、前記第一抗体は、ワクチンの接種または所定のウィルスの感染により産生される抗体であり、前記第二抗体は、前記ウィルスの感染により産生される抗体であり、前記検体を第一検査片に滴下して該検体中の前記第一抗体の有無を判定し、前記検体を前記第一検査片とは異なる第二検査片に滴下して該検体中の前記第二抗体の有無を判定し、前記第一検査片による検査結果と第二検査片による検査結果を組み合わせて、前記検体中の前記ワクチンの接種による該第一抗体の産生の可能性を判定する、ことを特徴とする検査方法に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、所定のウィルス、例えば新型コロナウィルスに対するワクチンの有効性を迅速かつ簡易に判定することが可能な、イムノクロマトグラフィー法による検査器具、検査キットおよび検査方法を提供することを目的とする。
提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1〜
図4は本発明の実施形態の一例を示す図であり、図中、同一の符号を付した部分は同一構成要素を表わす。なお、各図において一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。
【0025】
<検査器具>
図1は、本実施形態の検査器具10の概略を示す図であり、同図(A)が平面図、同図(B)が検査器具10の内部を抜き出して示す平面図、同図(C)が同図(B)の側面図である。
【0026】
検査器具10は、イムノクロマトグラフィー法による抗体検査を行うための器具である。この検査器具10は、検体中の抗体と、抗原を含む標識体とを反応させ、生成した免疫複合体を毛細管現象により移動させ、あらかじめ固定化した抗体で捕捉し、目的とする抗体の有無を判定するものである。
【0027】
具体的に、
図1(A)に示すように、本実施形態の検査器具10は、第一検査片11と、第二検査片12と、ケース13とを備える。
【0028】
ケース13は、例えば平面視において細長い矩形状の箱体であり、検体の滴下窓130と、第一検出窓131と第二検出窓132を有する。第一検査片11と第二検査片12は、いずれも帯状の多孔質部材(例えば、セルロース膜)であり、別体であるがケース13内に一体的に収容される。第一検査片11と第二検査片12はいずれも帯長手方向がケース13の長手方向(図示左右方向)に沿い、またこの例ではケース13の短手方向(図示上下方向)に沿って並ぶように(並列配置して)ケース13内に収容される。
【0029】
第一検出窓131は、第一検査片11の一部を外部から視認可能に設けられ、第二検出窓132は、第二検査片12の一部を外部から視認可能に設けられる。
【0030】
第一検査片11は、滴下窓130を介して滴下される検体中の第一抗体の存在を検出可能であり、第二検査片12は、第一検査片11に滴下された検体と同じ検体中の、あるいはその検体と同じサンプルであって第一検査片11とほぼ同時に滴下された検体中の第二抗体の存在を検出可能である。
【0031】
そして、検査器具10は第一検出窓131から視認される第一検査片11における検出結果と、第二検出窓132から視認される第二検査片12の結果とを同時並行的に判定可能に構成している。より詳細には、第一検査片11と第二検査片12の結果を略同じタイミングで並列的に視認することで、各種の判定をすることが可能に構成されている。なお、ここでの「同時並行的」や「並列的」との記載は、両検査片11、12およびそれらの検出結果を、纏めて(大きく視線移動をすることなく一覧で)認識可能という趣旨であり、両検査片11,12の検出結果が完全に一致したタイミングで同時に出ることや、両検査片11,12の結果が並行(並列)配置されることを限定するものではない。
【0032】
ここで、本実施形態における検出対象である第一抗体と第二抗体は、種類が同一であり捕捉する抗原が異なる抗体である。具体的に、本実施形態の「第一抗体」とは、ヒトの血液のみに存在する免疫グロブリンであり、一例を挙げると、所定のウィルス(具体的には、SARS−CoV−2ウィルス)のスパイクタンパク質の一部と結合する抗体である。より詳細には、当該スパイクタンパク質はS1ユニットとS2ユニットを含むが、本実施形態の第一抗体は、S1ユニットが有する受容体結合ドメイン(RBD:receptor-binding domain)と結合する(捕捉する)抗体(例えば、IgG抗体)である。以下、以下、スパイクタンパク質を「S抗原」、S1ユニットが有する受容体結合ドメイン(S1ユニットのうちRBD部分を抜き出したもの)を、「S1/RBD抗原」と称し、S1/RBD抗原と結合するIgG抗体(第一抗体)を「S1/RBD−IgG抗体」と称する。
【0033】
また、本実施形態の「第二抗体」とは、ヒトの血液のみに存在する免疫グロブリンであり、一例を挙げると、所定のウィルス(具体的には、SARS−CoV−2ウィルス)のヌクレオカプシドタンパク質と結合する(捕捉する)抗体(例えば、IgG抗体)である。以下、ヌクレオカプシドタンパク質を、「NP抗原」と称し、これと結合するIgG抗体(第二抗体)を「NP−IgG抗体」と称する。
【0034】
このように、本実施形態における第一抗体(S1/RBD−IgG抗体)と第二抗体(NP−IgG抗体)は、いずれもヒトの血液に存在する同種の抗体(例えばIgG抗体)であるが、捕捉する抗原が異なるものであり、この点において異なる種類のIgG抗体である。
【0035】
同図(B)、(C)を参照して、第一検査片11は、検体の滴下部となるサンプルパッド111、第一標識体を含有する第一標識体含有部112、第一検出部113、滴下した検体を吸い上げる吸収パッド114を、例えばその帯長手方向にそれぞれの端部が互いに重畳するように連結させた部材である。滴下窓130を介してサンプルパッド111に滴下された検体は吸収パッド114に向かって矢印の方向に(図示左側の上流から図示右側の下流に)移動する。なお、本実施形態の「検体」は採取したヒト(被検者)の全血液、血清あるいは血漿であるが、これに展開液を加えた検体液であってもよい。
【0036】
より詳細には、第一標識体含有部112は、金コロイド等の着色粒子でそれぞれ標識された抗原(標識抗原)および抗体(標識抗体)を含有するコンジュゲートパッドである。この例では、第一標識体含有部112の標識抗原は、S1/RBD−IgG抗体と結合可能な(S1/RBD−IgG抗体を捕捉可能な)S1/RBD抗原である。つまり、本実施形態における「第一標識体」とは、S1/RBD−IgG抗体と結合可能な標識抗原、すなわちS1/RBD標識抗原である。第一標識体はS1/RBD−IgG抗体と結合して免疫複合体(以下、「第一免疫複合体IC1」という。)を形成し、上流側(図示左側)から下流側(図示右側)に向かって移動する。また、第一標識体含有部112の標識抗体は、標識された、ヒトではない動物の抗体(標識抗体LB1)である。
【0037】
第一検出部113は、第一標識体含有部112の下流に設けられ、捕捉抗体T1を例えば帯の幅方向に線状に塗布・固定した捕捉抗体ラインTL1と、コントロール用抗体C1例えば帯の幅方向に線状に塗布・固定したコントロール用抗体ラインCL1を設けたメンブレンフィルターである。捕捉抗体T1は、第一免疫複合体IC1を捕捉可能な動物由来の抗体である。また、コントロール用抗体C1は、標識抗体LB1(第一免疫複合体IC1に関連しない抗体)を捕捉可能な抗体である。吸収パッド114は、第一検出部113のさらに下流に設けられる。
【0038】
第二検査片12は、検体の滴下部となるサンプルパッド111、第二標識体を含有する第二標識体含有部122、第二検出部123、滴下した検体を吸い上げる吸収パッド114を、その帯長手方向にそれぞれの端部が互いに重畳するように連結させた部材である。なお、第二検査片12は第一検査片11とは別体で、また第一検査片11と離間してこれと並列に配置されるが、この例では、サンプルパッド111と吸収パッド114については、第一検査片11と兼用としている。つまり、サンプルパッド111は、第一検査片11と第二検査片12の帯長手方向の一端部(この例では左端部)に重畳して設けられ、吸収パッド114は、第一検査片11と第二検査片12の帯長手方向の他端部(この例では右端部)に重畳して設けられる。サンプルパッド111に滴下された検体は吸収パッド114に向かって矢印の方向に(図示左側の上流から図示右側の下流に)移動する。
【0039】
より詳細には、第二標識体含有部122は、金コロイド等の着色粒子でそれぞれ標識された抗原(標識抗原)および抗体(標識抗体)を含有するコンジュゲートパッドである。この例では、第二標識体含有部122の標識抗原は、NP−IgG抗体と結合可能な(NP−IgG抗体を捕捉可能な)NP抗原である。つまり、本実施形態における「第二標識体」とは、NP−IgG抗体と結合可能な標識抗原、すなわちNP標識抗原である。第二標識体はNP−IgG抗体と結合して免疫複合体(以下、「第二免疫複合体IC2」という。)を形成し、上流側(図示左側)から下流側(図示右側)に向かって移動する。また、第二標識体含有部122の標識抗体は、標識された、ヒトではない動物の抗体(標識抗体LB2)である。
【0040】
第二検出部123は、第二標識体含有部122の下流に設けられ、捕捉抗体T2を例えば帯の幅方向に線状に塗布・固定した捕捉抗体ラインTL2と、コントロール用抗体C2を帯の幅方向に線状に塗布・固定したコントロール用抗体ラインCL2を設けたメンブレンフィルターである。捕捉抗体T2は、第二免疫複合体IC2を捕捉可能な動物由来の抗体である。捕捉抗体T2は、第一検出部113の捕捉抗体T1と同じ抗体であってもよい。
【0041】
また、コントロール用抗体C2は、標識抗体LB2(第二免疫複合体IC2に関連しない抗体)を捕捉可能な抗体である。
【0042】
なお、第一検査片11は、同図(C)に示すようにサンプルパッド111、コンジュゲートパッド(第一標識体含有部)112、メンブレンフィルター(第一検出部)113、吸収パッド114のそれぞれの一部を重畳させた積層構造に限らず、例えば、単一の帯状の多孔質部材の帯長手方向に沿って、サンプルパッド111、コンジュゲートパッド112、メンブレンフィルター113、吸収パッド114のそれぞれに対応する領域が隣り合うように連続して配置される構成、あるいはこれらの構成のうち一部のみが積層される構成などであってもよい。以下の説明では、同図(C)に示す様な積層構造の第一検査片11の場合を例にするが、単一の(又は一部の構成が重畳する)帯状の検査片11の場合、サンプルパッド111、コンジュゲートパッド112、メンブレンフィルター113、吸収パッド114のそれぞれとして説明した構成は、それぞれの構成に対応する領域、と読み替えるものとする。例えば、「サンプルパッド111」と説明した場合には、「サンプルパッド111に対応する領域」と読み替えるものとする。これらは、第二検査片12においても同様である。
【0043】
<検査器具の検出原理>
図2を参照して検査器具10の検出原理を説明する。検出原理については、第一検査片11と第二検査片12は同様であるので、
図2においては第一検査片11と第二検査片12の抗原および抗体を総称して示す。すなわち
図2においては標識抗原(S1/RBD標識抗原およびNP標識抗原)を総称して符号LGで示し、標識抗体(標識抗体LB1,LB2)を総称して符号LBで示し、検体中の検出対象の抗体(S1/SBD−IgG抗体およびNP−IgG抗体)を総称して符号ABで示し、第一免疫複合体IC1および第二免疫複合体IC2)を総称して符号ICで示し、捕捉抗体T1,T2を総称して符号Tで示し、コントロール用抗体C1,C2を総称して符号Cで示す。
【0044】
まず、滴下窓130(
図2では不図示)を介して検体Sを滴下すると、検体Sはサンプルパッド111から第一検査片11の第一標識体含有部112、および第二検査片12の第二標識体含有部122にそれぞれ(ほぼ同時に)浸透し、第一検査片11および第二検査片12の2つの経路をそれぞれ下流側に移動する。
【0045】
第一検査片11において、検体は、第一標識体含有部112の標識抗原(S1/RBD標識抗原、同図において標識抗原LG)を溶解しながら第一検出部113へ移動する。ここで、検体S内に検査対象となるS1/RBD−IgG抗体(同図において抗体AB)が含まれていた場合、S1/RBD−IgG抗体(抗体AB)はS1/RBD標識抗原(標識抗原LG)と結合して第一免疫複合体IC1(同図において免疫複合体IC)を形成して下流に移動する。そして第一免疫複合体IC1(免疫複合体IC)は、捕捉抗体ラインTL1の捕捉抗体T1(同図において補足抗体T)と結合してここに捕捉される。この捕捉により、捕捉抗体ラインTL1上では標識抗原由来の着色粒子が濃縮されたような状態となり、呈色する。第一検出窓131はこの呈色が視認可能に開口されており、呈色の状態を目視で確認することで、検体中のS1/RBD−IgG抗体の有無が判定可能となる。すなわち、捕捉抗体ラインTL1が呈色された場合、検体中にはS1/RBD−IgG抗体が含まれる(陽性)と判定される。
【0046】
また、検体の移動により、第一標識体含有部112の標識抗体LB1(同図において標識抗体LB)も下流に移動する。標識抗体LB1(標識抗体LB)は、S1/RBD標識抗原(標識抗原LG)と結合せず(第一免疫複合体IC1に関与せず)、捕捉抗体ラインTL1で捕捉されることはないが、その下流に固定されたコントロール用抗体C1(同図においてコントロール用抗体C)で捕捉される。この捕捉により、コントロール用抗体ラインCL1上では標識抗体LB1由来の着色粒子が濃縮されたような状態となり、呈色する。第一検出窓131はこの呈色も視認可能に開口されており、呈色の状態を目視で確認することで、検体が捕捉抗体ラインTL1を通過し、コントロール用抗体ラインCL1に到達したことが確認される。つまり、捕捉抗体ラインTL1が呈色せず、コントロール用抗体ラインCL1のみが呈色した場合、当該検体には、S1/RBD−IgG抗体が存在していない(陰性)と判定される。
【0047】
第二検査片12は、第一検査片11で判定した検体Sと同じ検体中のNP−IgG抗体の有無を判定する。この原理は第一検査片11と同様であるので、一部説明は省略するが、検体は、第二標識体含有部122の標識抗原(NP標識抗原、標識抗原LG)を溶解しながら第二検出部123へ移動する。検体内に検査対象のNP−IgG抗体(抗体AB)が含まれていた場合、これがNP標識抗原(標識抗原LG)と結合し、これにより形成された第二免疫複合体IC2(免疫複合体IC)は、捕捉抗体ラインTL2上に捕捉される。この捕捉により、捕捉抗体ラインTL2が呈色する。第二検出窓132からは呈色の状態を目視で確認可能であり、捕捉抗体ラインTL2が呈色された場合、検体中にはNP−IgG抗体が含まれる(陽性)と判定される。一方、捕捉抗体ラインTL2が呈色せず、コントロール用抗体ラインCL2のみが呈色した場合、当該検体には、NP−IgG抗体が存在していない(陰性)と判定される。
【0048】
本実施形態では、検査器具10の一つの滴下窓130から滴下された検体が、ほぼ同時に第一検査片11と第二検査片12のサンプルパッド111に吸収され、以降、それぞれの検査片11,12の2つの経路で下流に移動する。そして、第一検査片11では検体中のS1/RBD−IgG抗体の有無が判定可能となり、第二検査片12では検体中のNP−IgG抗体の有無が判定可能となる。
【0049】
このように、本実施形態の検査器具10は、1回の検査で、同一検体中に存在する同種の抗体(例えば、IgG抗体)であって、捕捉する抗原が異なる二種類の抗体(S1/RBD−IgG抗体と検体中のNP−IgG抗体)の有無を同時並行的に検出可能なものである。このような構成により、同一の抗体中に含まれる、捕捉する抗原が異なる二種類の抗体についての検知結果を組み合わせて検体の状態を判定することができる。またこれにより、本実施形態の検査器具10を、所定のワクチン接種の有効性の判定を含む各種判定に適用することができる。
【0050】
<検査方法>
以下、本実施形態の抗体の検査方法について説明する。まず、上述の検査器具10を用いた本実施形態の検査方法について説明する。この検査方法は、検体を検査器具10の第一検査片11に滴下し、該検体中の第一抗体の有無を検出する第一検査工程と、同一の検体を検査器具10の第二検査片12に滴下し、該検体中の第二抗体の有無を検出する第二検査工程と、第一検査工程と第二検査工程の結果、すなわち、第一検出窓131から視認可能な第一検出部113の検出状態と、第二検出窓132から視認可能な第二検出部123の検出状態とを組み合わせて検体の状態を判定する判定工程を有する。この判定工程では、S1/RBD−IgG抗体の有無と検体中のNP−IgG抗体の有無の結果を組み合わせて判断することで、ワクチンの接種による抗体産生の可能性の判定を含む複数の判定候補から一の判定を導出する。
【0051】
上記の検査器具の検出原理でも述べたように、検査器具10の滴下窓130を介して検体を滴下すると、第一検査片11の第一検出部において検体中のS1/RBD−IgG抗体の有無が検出される。S1/RBD−IgG抗体は、新型コロナウィルスのスパイクタンパク質(S抗原)を標的とする抗体(中和抗体)である。また、第二検査片12の第二検出部においては同一検体中のNP−IgG抗体の有無が検出される。そして本実施形態ではこれらの結果に基づき、検体の状態、具体的には、新型コロナウィルスの自然感染の有無、中和抗体産生の有無を判定する。
【0052】
ここで、検査器具10により、検体中の中和抗体の有無が検出できたとしても、それがウィルス感染によるものか、ワクチン接種によるものかを判定することができない。そこで本実施形態の検査方法では、第一検査片11の結果(検体中のS1/RBD−IgG抗体の有無)と、第二検査片12の結果(同一検体中のNP−IgG抗体の有無)とを組み合わせることで、検出されたS1/RBD−IgG抗体(中和抗体)について、ワクチン接種により産生された可能性がある、などの判定もさらに可能にする。
【0053】
図3および
図4を参照して、本実施形態の検査方法、およびそれに基づく中和抗体獲得の有無、あるいはワクチン接種の有効性についての判定(例えば、ワクチン接種により中和抗体が産生された可能性(検出されたS1/RBD−IgG抗体がワクチン接種により産生されたものである可能性)の判定)について説明する。
図3は、本実施形態の検査方法の一例を示すフローチャートであり、
図4は、第一検査片11および第二検査片12の検査結果の概略を示す平面図である。
【0054】
<<第一のケース>>
本実施形態の検査方法を用いた、第一のケースの判定について説明する。まず、検査器具10に検体を滴下し(ステップS01)、第一検査片11の第一検出窓131を目視により確認する。そして捕捉抗体ラインTL1が呈色している、すなわち陽性の場合(ステップS03でYes)、検体中にS1/RBD−IgG抗体(中和抗体)が存在していると判定する(ステップS05)。
【0055】
次に、同時並列的に検出されている第二検査片12の第二検出窓132を目視により確認する。そして捕捉抗体ラインTL2が呈色している、すなわち陽性の場合(ステップS07でYes)、NP−IgG抗体が存在していることになる(
図4(A)参照)。
【0056】
第一検査片11と第二検査片12の検出結果を組み合わせると、第一のケースの判定は、「ウィルスの自然感染歴があり、中和抗体も産生されている(獲得済み)。:判定a」となる(ステップS09)。
【0057】
第一のケースでは、中和抗体は獲得しているもののそれがワクチン接種によるものであるか否かの特定はできないが、例えば被検者に検査前にワクチンの接種を受けた事実があれば、中和抗体はワクチン接種により獲得した可能性もあると考えられる。
【0058】
<<第二のケース>>
次に、第二のケースの判定について説明する。第一検査片11の捕捉抗体ラインTL1が呈色している、すなわち陽性の場合(ステップS03でYes)、S1/RBD−IgG抗体(中和抗体)が存在(獲得)していると判定する。ただしこの段階では、当該中和抗体がワクチン接種により産生された(獲得した)ものかウィルス感染(自然感染)によるものかは不明である。
【0059】
また、第二検査片12について、捕捉抗体ラインTL2が呈色していない、すなわち陰性である場合(ステップS07でNo)にはNP−IgG抗体が存在していないと判定する(
図4(B)参照)。
【0060】
ここで、NP−IgG抗体が存在していないということのみからするとウィルスの自然感染は低いと判定できる。つまりこの場合、第一検査片11における陽性の結果は、被検者にワクチン接種の事実がない場合には、自然感染により中和抗体が産生されたと判断し、ワクチン接種の事実があれば、ワクチン接種により中和抗体が産生されたと判断する。
【0061】
このように第一検査片11と第二検査片12の検出結果を組み合わせると、第二のケースの判定は、「中和抗体が産生されている(獲得済みである)。当該中和抗体は、ワクチン接種により獲得した可能性もある。:判定b」となる(ステップS11)。繰り返しになるが、この場合、特に、検査前において被検者にワクチン接種の事実があれば、検体内の中和抗体は、ワクチン接種により獲得したものである可能性がより高いといえる。
【0062】
<<第三のケース>>
次に、第三のケースの判定について説明する。第一検査片11の捕捉抗体ラインTL1が呈色していない、すなわち陰性の場合(ステップS03でNo)、S1/RBD−IgG抗体(中和抗体)が存在(獲得)していないと判定する(ステップS13)。また、第二検査片12の捕捉抗体ラインTL2が呈色している、すなわち陽性である場合(ステップS15でYes)、NP−IgG抗体が存在していると判定する(
図4(C)参照)。
【0063】
この場合、第一検査片11と第二検査片12の検出結果を組み合わせると、第三のケースの判定は、「ウィルスの自然感染歴があるが、中和抗体は産生されていない。:判定c」となる(ステップS17)。第三のケースにおいて、例えば検査前において被検者にワクチン接種の事実があれば、ワクチン接種の効果がなかった(未だ効果が出ていない)と判断することができる。
【0064】
<<第四のケース>>
次に、第四のケースの判定について説明する。第一検査片11の捕捉抗体ラインTL1が呈色していない、すなわち陰性の場合(ステップS03でNo)、S1/RBD−IgG抗体(中和抗体)は存在(獲得)していないと判定する。また、第二検査片12の捕捉抗体ラインTL2も呈色していない、すなわち陰性である場合(ステップS15でNo)、NP−IgG抗体も存在していないと判定する(
図4(D)参照)。
【0065】
この場合、第一検査片11と第二検査片12の検出結果を組み合わせると、第四のケースの判定は「ウィルスの自然感染歴はなく、中和抗体も産生されていない。:判定d」となる(ステップS19)。第四のケースにおいて、例えば検査前において被検者にワクチン接種の事実があれば、ワクチン接種の効果がなかった(未だ効果が出ていない)と判断することができる。
【0066】
このように本発明の検査器具10および検査方法によれば、所定のワクチンの有効性を含む複数の判定候補(
図3のステップS09、
図4(E)に示す判定a、
図3のステップS11、
図4(F)に示す判定b,
図3のステップS17、
図4(G)に示す判定c,
図3のステップS19、
図4(G)判定d)のうちから一の判定を導き出すことができる。これにより、所定のウィルス(例えば、新型コロナウィルス)に対するワクチンの有効性、例えば、ワクチンを接種した事実はあるが中和抗体を獲得していないこと(第三のケース、第四のケース)、あるいは検体中に中和抗体が存在していた場合には、それがウィルスの自然感染により産生されたものか、ワクチン接種により産生されたものか(第二のケース)、などを簡便・迅速な方法で検査・判定することができる。
【0067】
なお、本実施形態の検査方法は、以下の方法によって抗体の各種判断を行うものである。この場合、上述の検査器具10を用いるものに限らない。
【0068】
すなわち、イムノクロマトグラフィー法により検体中の第一抗体および第二抗体の有無を判定する検査方法であって、第一抗体は、ワクチンの接種または所定のウィルスの感染により産生される抗体であり、第二抗体は、ウィルスの感染により産生される抗体であり、検体を第一検査片11に滴下して該検体中の第一抗体の有無を判定し、同一の検体を第一検査片11とは異なる第二検査片12に滴下して該検体中の第二抗体の有無を判定し、第一検査片11による検査結果と第二検査片12による検査結果を組み合わせて、検体中のワクチンの接種による第一抗体の産生の可能性を含む判定候補から一の判定を導出する、するものである。
【0069】
またこの場合特に、第一検査片11による検査結果が陽性であり、且つ第二検査片12による検査結果が陰性である場合に、検体中に前記ワクチンの接種により第一抗体が産生されている可能性があると判定するものである。
【0070】
<検査キット>
次に
図5を参照して本実施形態の検査キット30について説明する。本実施形態の検査キット30は、検査器具10と判定ガイド20を備えている。判定ガイド20とは、第一検査片11による検査結果と第二検査片12による検査結果に基づき、所定のワクチンの接種による抗体の産生の可能性を含む検体の状態を判定可能なガイドである。
【0071】
判定ガイド20は、例えば、同図(A)に示すように、紙面など検査器具10とは別体の印刷物でもよいし、同図(B)に示すように検査器具10に直接表示(印字)等されるものであってもよい。例えば、紙面の判定ガイド20の場合には、
図3に示すようなフローチャートが印刷等されたものであってもよい。また、
図4に示すような、第一検査片11及び第二検査片12の検査結果、すなわち呈色状態(の模式図)(同図(A)〜同図(D))とそれに基づく判定(同図(E)〜同図(E)、判定a〜判定d)をセットにして印刷等したものであってもよい。
【0072】
また、図示は省略するが、判定ガイド20は例えばスマートフォンまたはパソコンなどのアプリケーションとして提供されてもよい。この場合、アプリケーションを起動すると、例えば、
図3に示すフローチャートのような質問が順次表示され、これに従って回答を入力することで判定a〜判定dのいずれかが表示されるようなものであってもよい。またアプリケーションを起動すると、
図4に示す第一検査片11及び第二検査片12の呈色状態(の模式図)とそれに基づく判定(判定a〜判定dのいずれか)がセットで表示されるものであってもよい。さらには、アプリケーションを起動すると撮影モードなどに移行するように構成され、実際の第一検査片11及び第二検査片12の検査結果を撮影して送信することで
図4(E)〜同図(H)に示すような判定a〜判定dのいずれかが表示されるようなものであってもよい。
【0073】
なお、判定ガイド20は、検査者が、第一検査片11及び第二検査片12の検査結果に基づき、容易に、所定のワクチンの接種による抗体の産生の可能性を含む検体の状態(具体的には、
図4(E)〜同図(H)に示すような判定a〜判定dのいずれか)を一義的に取得できるようなものであればどのような形態であってもよく、上記の例に限らない。
【0074】
図6は、判定ガイド20の他の例を示す図である。上述の判定a〜判定dは、被検者におけるワクチン接種の有無について特定しない(できない)段階での判定であるが、
図6に示すこの例の判定ガイド20は、上述の判定a〜判定dと、更に被検者のワクチン接種の有無(ワクチン接種を受けたか否かの事実)に基づき、より詳細な判定を可能にするものである。
【0075】
すなわち、上記判定aにおいて、被検者にワクチン接種の事実があれば、「ワクチン接種または自然感染により中和抗体が産生されている」という判定になる。当該検査キット30のユーザには例えば「ワクチン接種または自然感染により中和抗体ができています。(判定a−1)」などと表示する。
【0076】
また、上記判定aにおいて、被検者にワクチン接種の事実がなければ、「自然感染により中和抗体が産生されている」という判定できる。ユーザには例えば「自然感染により中和抗体ができている可能性があります。(判定a−2)」などと表示する。
【0077】
また、上記判定bにおいて、被検者にワクチン接種の事実があれば、「(第二検査片12の結果が陰性であるため)ワクチン接種により中和抗体が産生された可能性が高い」という判定になる。ユーザには例えば「ワクチンにより中和抗体ができている可能性が高いです。(判定b−1)」などと表示する。
【0078】
また、上記判定bにおいて、被検者にワクチン接種の事実がなければ、「(第一検査片11が陽性であることから)中和抗体は自然感染によりが産生されている可能性がある」という判定になる。ユーザには例えば「自然感染により中和抗体ができている可能性があります。(判定b−2)」などと表示する。
【0079】
また、上記判定cにおいて、被検者にワクチン接種の事実があれば、「ワクチンを接種したものの、中和抗体が産生されていない可能性が高い。一方、自然感染歴はあるがこれによっても中和抗体は産生されていない。」という判定になる。ユーザには例えば「(ワクチンによる)中和抗体ができていない様です。自然感染歴があります。(判定c−1)」などと表示する。
【0080】
また、上記判定cにおいて、被検者にワクチン接種の事実がなければ、「自然感染歴はあるが、(自然感染による)中和抗体は産生されていない」という判定になる。ユーザには例えば「自然感染歴はありますが、中和抗体ができていません。(判定c−2)」などと表示する。
【0081】
また、上記判定dにおいて、被検者にワクチン接種の事実があれば、「ワクチンを接種したものの、中和抗体が産生されていない可能性が高い。自然感染歴はない。」という判定になる。ユーザには例えば「ワクチンによる中和抗体ができてない様です。自然感染歴はありません。(判定d−1)」などと表示する。
【0082】
また、上記判定dにおいて、被検者にワクチン接種の事実がなければ、「自然感染歴はなく、中和抗体は産生されていない」という判定になる。ユーザには例えば「自然感染歴はなく、中和抗体もできていません。(判定d−2)」などと表示する。また中和抗体の未獲得者については、例えば、「ワクチンを接種しましょう。」などの案内を表示してもよい。
【0083】
なお
図6に示した判定の流れは、判定ガイド20としての例えば、
図3に示すフローチャート(ステップS09、S11,S17,S19)に続くフローとして表示してもよいし、例えば判定ガイド20としての
図4に示した判定結果からワクチン接種の有無をユーザに選択させ、
図6に示す最終判定a−1〜d−2を導出するようにしてもよいし、アプリケーションなどにより
図6に示す最終判定a−1〜d−2を導出するようにしてもよい。
【0084】
図6に示すような判定ガイド20を用いれば、ユーザは最終判定a−1〜d−2の結果を得ることになるので、より簡易且つ一義的に、被検者の状態を把握することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、上記の例に限らない。
例えば、1つの検査器具10において、滴下窓130を複数設けてもよい。すなわち、第一検査片11用と、第二検査片12用にそれぞれ滴下窓130を設け、同一の検体をそれぞれの滴下窓130から滴下するようにしてもよい。
【0086】
また、第一検査片11と第二検査片12はケース13の短手方向に沿って並列に配置した例を示したが、これに限らず、ケース13の長手方向に沿って両者が直列的に並ぶ(互いに分離はしている)ように配置してもよい。しかしながら、検査片11,12を直列的に配置すると、それぞれの呈色状態の視認がしにくくなる可能性がある。また、検体の滴下も2回行う必要がある。一方、並列に配置する場合には、例えば
図4に示すように、各検査片11,12の呈色状態を纏まったパターンとして認識しやすくなり、判定ガイド20などとの比較も容易となる。また、
図1に示すようにサンプルパッド111を共用でき、1回の検体の滴下で第一検査片11と第二検査片12に検体を供給できる。
【0087】
また、上記の実施形態では、検出する抗体がIgG抗体である場合を例示したが、IgM抗体であってもよいし、その他の免疫グロブリンでもよい。
【0088】
また、サンプルパッド111と吸収パッド114は、第一検査片11と第二検査片12で兼用する構成に限らず、それぞれの検査片11,12毎に設けられてもよい。
【0089】
また、第一標識体含有部112の標識抗体LB1、第二標識体含有部122の標識抗体LB2、コントロール用抗体C1,C2は、それぞれ異なる抗体であってもよいし、これらのうち少なくとも一組が同じ抗体であってもよい。
【0090】
尚、本発明の検査器具10は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【課題】所定のウィルス、例えば新型コロナウィルスに対するワクチン接種の有効性を迅速かつ簡易に判定することが可能な、イムノクロマトグラフィー法による検査器具および検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】イムノクロマトグラフィー法による検査器具10は、第一検査片11と、第一検査片11とは別体の第二検査片12と、第一検査片11と第二検査片12とを一体的に収容するケース13とを備え、ケース13は、検体の滴下窓103と、第一検査片11の一部を外部から視認可能な第一検出窓131と、第二検査片12の一部を外部から視認可能な第二検出窓132と、を有し、第一検査片11は、検体中の第一抗体の存在を検出可能であり、第二検査片12は、検体中の第一抗体とは異なる第二抗体の存在を検出可能であり、第一検出窓131から視認される第一検査片11の結果と、第二検出窓132から視認される第二検査片12の結果とを同時並行的に判定可能に構成した。