特許第6976657号(P6976657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成ワッカーシリコーン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976657
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】シリコーンゴムスポンジの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   C08J9/12CFH
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-230730(P2017-230730)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-99660(P2019-99660A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】500004955
【氏名又は名称】旭化成ワッカーシリコーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐介
(72)【発明者】
【氏名】下山 比路
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−129171(JP,A)
【文献】 特開2006−077099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムスポンジの製造方法であって、下記成分(A)〜(C)を常圧で加熱することにより、発泡および硬化を起し、
(A)シリコーンゴムコンパウンド:下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して比表面積(BET)が50m/g以上の補強性シリカを5〜100質量部含有するシリコーンゴムコンパウンド
SiO(4−a)/2 (1)
式(1)中、Rは互いに同一または異種の炭素数1〜10の非置換のまたは置換された一価炭化水素基または水素である。aは1.5〜2.8である。
(B)吸熱反応である分解反応により発泡ガスを発生させる無機塩水和物発泡剤
(C)有機過酸化物または白金族金属単体及びその化合物からなる付加反応触媒
発泡剤からの発熱による周囲の発泡剤の起泡を連鎖的に促進することなしに、セルを成長させることにより、連泡率を向上させることを特徴とする、シリコーンゴムスポンジの製造方法。
【請求項2】
シリコーンゴムスポンジの製造方法であって、下記成分(A)〜(C)を常圧で加熱することにより、発泡および硬化を起し、
(A)シリコーンゴムコンパウンド:下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して比表面積(BET)が50m/g以上の補強性シリカを5〜100質量部含有するシリコーンゴムコンパウンド
SiO(4−a)/2 (1)
式(1)中、Rは互いに同一または異種の炭素数1〜10の非置換のまたは置換された一価炭化水素基または水素である。aは1.5〜2.8である。
(B)吸熱反応である分解反応により発泡ガスを発生させる無機塩水和物発泡剤
(C)有機過酸化物または白金族金属単体及びその化合物からなる付加反応触媒
有機過酸化物の1分間半減期温度または付加反応触媒の硬化開始温度を、発泡剤の分解温度よりも高く設定することにより、硬化前に連泡化を起こさせ、セルを成長させることにより、連泡率を向上させることを特徴とする、シリコーンゴムスポンジの製造方法。
【請求項3】
シリコーンゴムスポンジの製造方法であって、下記成分(A)〜(C)を常圧で加熱することにより、発泡および硬化を起し、
(A)シリコーンゴムコンパウンド:下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して比表面積(BET)が50m/g以上の補強性シリカを5〜100質量部含有するシリコーンゴムコンパウンド
SiO(4−a)/2 (1)
式(1)中、Rは互いに同一または異種の炭素数1〜10の非置換のまたは置換された一価炭化水素基または水素である。aは1.5〜2.8である。
(B)吸熱反応である分解反応により発泡ガスを発生させる無機塩水和物発泡剤
(C)有機過酸化物または白金族金属単体及びその化合物からなる付加反応触媒
有機過酸化物の1分間半減期温度または付加反応触媒の硬化開始温度を、発泡剤の分解温度よりも高く設定することにより、発熱による周囲の発泡剤の起泡を連鎖的に促進することなしに、セルを成長させることにより、連泡率を向上させること、かつ、硬化前に連泡化を起こさせ、セルを成長させることにより、連泡率を向上させることを特徴とする、シリコーンゴムスポンジの製造方法。
【請求項4】
発泡倍率が1.5倍から4倍、連泡率が20%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコーンゴムスポンジの製造方法。
【請求項5】
スポンジ1cmに占めるシリコーンゴム部分の体積に対する、スポンジ1cmに含まれる該発泡剤から生じる発泡ガスの体積の比が5〜100倍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーンゴムスポンジの製造方法。
ただし、発泡ガスの体積は、成分(C)として有機過酸化物を用いる場合は、その1分間半減期温度、付加反応触媒を用いる場合は、組成物の1気圧下での硬化開始温度において算出する。
【請求項6】
有機過酸化物の1分間半減期温度または付加反応触媒の硬化開始温度を、発泡剤の分解温度よりも10〜50℃高く設定することを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載のシリコーンゴムスポンジの製造方法。
【請求項7】
成分(B)がピロリン酸ナトリウム10水和物、もしくは、リン酸水素二ナトリウム12水和物である請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコーンゴムスポンジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連泡率に優れることを特徴とするシリコーンゴムスポンジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムスポンジは、シリコーンエラストマーの特性に加えて、スポンジ構造による性能が付与されるため、固形のシリコーンゴムに比して、より柔軟で、軽量、高断熱の材料となる。そのため、建築用のガスケット、パッキン、プリンターのローラーなど様々な工業製品、家庭製品等に広く用いられている。
発泡剤としては、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等のアゾ化合物に代表される有機系の発泡剤が利用されてきた。均一で高発泡倍率を得やすいという利点はあるものの、分解残が人体にとって有毒であった。スポンジの成形後に加熱処理を行うなどの無害化処理が必要であった。このため、人体にとって無害の発泡剤の開発が望まれていた。
【0003】
アゾ化合物に代表される有機系発泡剤を用いた場合は、セルが微細で、均一であるが、生成されるスポンジは独立泡で構成されていた。独立泡のスポンジは温度の上昇と共に膨張し、硬さも変化する。また、独立泡のスポンジを長時間変形させておくと、シリコーンエラストマーの気体透過性のため、徐々にセル内部の空気が抜けて、スポンジが変形する。変形を解除したときには、独立泡であるため、逆に復旧が遅い。また、独立泡の場合は、均一なセルと高い発泡倍率を得るためには、組成物の粘度が高い方が望ましいため、シリコーンの架橋をさせながら、発泡させることが一般的であった。しかし、その場合、発泡倍率、発泡の状態を再現よく制御させることが難しかった。
このため、連泡率が高いシリコーンゴムスポンジの製造方法の開発が望まれていた。
【0004】
これに対し、特許文献1では、有機系発泡剤の毒性を回避するため、無機塩類が有する結晶水を利用して発泡させるシリコーンゴムスポンジ組成物が開示されているが、連泡化に関する記載はない。
特許文献2では、シリコーンコンパウンドの水分量の調整により、連泡化する方法が開示されているが、アゾ化合物系の発泡剤を用いているため、毒性の問題は残っている。また、炭酸水素ナトリウム系発泡剤を用いた場合も、硬化剤としての有機過酸化物の分解温度の調整とコンパウンドの水分量の調整という手法のみ記載され、連泡化とセルの微細化についての開示はされていない。
特許文献3では、発泡剤の他に、非イオン性界面活性剤を添加することで、セルの連泡化が起こることが開示されている。しかし、有機化合物の添加は、シリコーンゴムの着色、臭気、耐熱老化性の低下を引き起こすという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−156061号公報
【特許文献2】特開2008−129171号公報
【特許文献3】特開2006−307008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記いずれの文献(特許文献1〜3)においても、毒性の問題は回避されてはいるものの、セルの連泡化を十分に達成したシリコーンスポンジおよびその製造方法は開示されていなかった。また、連泡化の機構、および、発泡剤の添加量と連泡率の関係についての開示もされていなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、毒性のない無機発泡剤の使用において、セルの連泡化を十分に達成したシリコーンスポンジを簡便に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、無機塩水和物発泡剤から水が脱離する反応が吸熱反応であることに着目し、周囲の起泡を誘発せず、独立泡の発生を抑え、連泡率を上げることにより課題が解決されることを見出した。
また、本発明者らは、発泡剤の分解温度と有機過酸化物の1分間半減温度または付加硬化触媒の硬化開始温度に温度差を設け、硬化前に連泡化を起させることにより課題が解決されることを見出した。
また、本発明者らは、発泡剤の量を増やすことにより連泡率を上げることで課題が解決されることを見出した。
本発明はこれらの知見によりなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明のシリコーンゴムスポンジの製造方法は、下記成分(A)〜(C)を常圧で加熱することにより、発泡および硬化を起し、
(A)シリコーンゴムコンパウンド:下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して比表面積(BET)が50m/g以上の補強性シリカを5〜100質量部含有するシリコーンゴムコンパウンド
SiO(4−a)/2 (1)
式(1)中、Rは互いに同一または異種の炭素数1〜10の非置換のまたは置換された一価炭化水素基または水素である。aは1.5〜2.8である。
(B)吸熱反応である分解反応により発泡ガスを発生させる無機塩水和物発泡剤
(C)有機過酸化物または白金族金属単体及びその化合物からなる付加反応触媒
発泡剤からの発熱による周囲の発泡剤の起泡を連鎖的に促進することなしに、セルを成長させることにより、連泡率を向上させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のシリコーンゴムスポンジの製造方法は、下記成分(A)〜(C)を常圧で加熱することにより、発泡および硬化を起し、
(A)シリコーンゴムコンパウンド:下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して比表面積(BET)が50m/g以上の補強性シリカを5〜100質量部含有するシリコーンゴムコンパウンド
SiO(4−a)/2 (1)
式(1)中、Rは互いに同一または異種の炭素数1〜10の非置換のまたは置換された一価炭化水素基または水素である。aは1.5〜2.8である。
(B)吸熱反応である分解反応により発泡ガスを発生させる無機塩水和物発泡剤
(C)有機過酸化物または白金族金属単体及びその化合物からなる付加反応触媒
有機過酸化物の1分間半減期温度または付加反応触媒の硬化開始温度を、発泡剤の分解温度よりも高く設定することにより、硬化前に連泡化を起こさせ、セルを成長させることにより、連泡率を向上させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のシリコーンゴムスポンジの製造方法は、下記成分(A)〜(C)を常圧で加熱することにより、発泡および硬化を起し、
(A)シリコーンゴムコンパウンド:下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して比表面積(BET)が50m/g以上の補強性シリカを5〜100質量部含有するシリコーンゴムコンパウンド
SiO(4−a)/2 (1)
式(1)中、Rは互いに同一または異種の炭素数1〜10の非置換のまたは置換された一価炭化水素基または水素である。aは1.5〜2.8である。
(B)吸熱反応である分解反応により発泡ガスを発生させる無機塩水和物発泡剤
(C)有機過酸化物または白金族金属単体及びその化合物からなる付加反応触媒
有機過酸化物の1分間半減期温度または付加反応触媒の硬化開始温度を、発泡剤の分解温度よりも高く設定することにより、発熱による周囲の発泡剤の起泡を連鎖的に促進することなしに、セルを成長させることにより、連泡率を向上させること、かつ、硬化前に連泡化を起こさせ、セルを成長させることにより、連泡率を向上させることを特徴とする。
【0012】
前記シリコーンゴムスポンジの製造方法は、前記有機過酸化物の1分間半減期温度または前記付加反応触媒の硬化開始温度を、前記発泡剤の分解温度よりも10〜50℃高く設定することを特徴とすることが好ましい。
【0013】
前記シリコーンゴムスポンジの製造方法は、前記成分(B)がピロリン酸ナトリウム10水和物、もしくは、リン酸水素二ナトリウム12水和物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシリコーンゴムスポンジの製造方法によれば、吸熱反応である分解反応により発泡ガスを発生させる無機塩水和物発泡剤を用いることにより、発泡剤の分解時の反応熱による周囲の発泡剤の起泡を連鎖的に促進することなしに、セルを成長させること、および/または、有機過酸化物の1分間半減期温度または付加反応触媒の硬化開始温度を、発泡剤の分解温度よりも高く設定することにより、硬化前に連泡化を起させることにより、高い連泡率を有するシリコーンゴムスポンジを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係るシリコーンゴムスポンジの製造方法の詳細を説明する。
【0016】
(成分(A))
成分(A)のシリコーンゴムコンパウンドは、シリコーンゴムスポンジの主剤であり、オルガノポリシロキサン成分および補強材成分からなる。下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して比表面積(BET)が50m/g以上の補強性シリカを5〜100質量部含有する。
SiO(4−a)/2 (1)
式(1)中、Rは互いに同一または異種の炭素数1〜10の非置換のまたは置換された一価炭化水素基または水素である。aは1.5〜2.8である。
の炭素数は、合成コストの観点から、好ましくは、1〜8である。また、aは好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05である。
【0017】
ここで、上記Rで示される一価炭化水素基のうち、非置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリ−ル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基が挙げられる。
また、置換された一価炭化水素基としては、上記非置換の一価炭化水素基の水素原子の一部または全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基が挙げられる。上記Rで示される一価炭化水素基は、合成コストの観点から、全R数の90%以上がメチル基であることが好ましい。
【0018】
成分(A)は、硬化して三次元網目状のシリコーンゴム構造へと変換する必要がある。そのために好適な硬化システムとしては、過酸化物等の存在下におけるビニル基等のラジカル反応による硬化、または、付加反応触媒存在下におけるSiH基とビニル基等の不飽和アルキル基との反応による硬化が好ましい。そのため、成分(A)には、このような硬化システムを可能にするためのオルガノポリシロキサンの官能基等の設定をしておくことが好ましい。
【0019】
成分(A)に用いる補強性シリカは、シリコーンゴムに十分な強度を与えるものである。シリカとしては、例えば、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)や湿式シリカが用いられる。このうち、ヒュームドシリカは、硬化物の機械物性付与の特性に優れるため好ましい。
シリカは、BET法による比表面積が、50m/g以上が好ましい。より好ましくは100〜500m/gである。比表面積が50m/gより小さいと十分な強度が得られなくなるおそれがある。
シリカは、そのまま用いてもかまわないが、表面疎水化処理剤で予め処理したものを用いたり、オルガノポリシロキサンとの混練時に表面処理剤を添加することによりシリカの表面を処理することもできる。これら表面処理剤としては、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステル等の公知のものが用いられる。これらの表面処理剤は、1種で用いてもよく、また2種以上を同時にまたは異なるタイミングで用いても構わない。
【0020】
成分(A)に用いる補強性シリカの配合量は、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン100質量部に対し、5〜100質量部、好ましくは、10〜80質量部、より好ましくは20〜60質量部である。配合量が5質量部未満だと十分なゴム強度が得られないおそれがあり、また100質量部を超えると、圧縮永久ひずみが高くなるおそれがあるからである。
【0021】
成分(A)に用いる補強性シリカは、硬化物の機械物性付与の特性に優れる乾式シリカがより好ましい。
【0022】
成分(A)のシリコーンゴムコンパウンドは、本発明の目的と硬化を損ねない限り、任意の成分を添加することができる。例えば、個別の目的に応じて、接着性、生体適合性、耐水性、保存安定性等を向上させるための化合物やポリマーの添加、付加反応の開始温度を制御するための反応抑制剤の添加、顔料、香料等の添加剤等が挙げられる。
【0023】
(成分(B))
成分(B)は、吸熱反応により分解し、発泡ガスを発生させる無機塩水和物発泡剤である。無機塩類の水和物は分子内に結合水を結合する無機酸の塩であって、所定の温度において分解し、水和水を放出する発泡剤である。無機塩類の水和物のうち、多段階の分解反応を起こす発泡剤も好適に使用することができる。特に、残渣が弱アルカリ性であることから、ピロリン酸ナトリウム10水和物やリン酸水素二ナトリウム12水和物が好適である。
【0024】
成分(B)は、加熱によりその水和水が気化し、その水蒸気が発泡ガスとして利用される。シリコーンゴムコンパウンドに均一に分散させるため、できる限り粉末状に粉砕して配合使用される。粉末のモード径が100μm以下のものを用いると、分散が効果的に行えるので、特に望ましい。
【0025】
無機塩水和物発泡剤から生じる発泡ガスは水蒸気であるため、人体に対して無毒である。また、分解後に残留する無機物質も、AIBNに代表される有機発泡剤の分解残のような有害性の問題を持たないため、発泡後に無毒化処理を必要としない。これらの無機塩水和物発泡剤は、通常、単独で使用されるが、2種以上を組み合わせてもよい。
【0026】
本発明で使用される無機塩水和物発泡剤は、発泡の際の化学反応が吸熱反応である発泡剤である。発泡時の反応が吸熱反応であると、以下に述べる過程により、独立泡ではなく、連泡のスポンジを形成することを本発明は見出した。
一般に、結晶水を気化させる反応は、吸熱反応である。無機塩水和物は結晶水を有するので、水が気化する反応は吸熱反応である。本発明では、無機塩水和物を発泡剤として好適に用いることができる
【0027】
(成分(C))
本発明において成分(C)として用いる有機過酸化物または白金族金属単体及びその化合物からなる付加反応触媒は、成分(A)を硬化させるためのものである。
本発明では常圧下で熱気硬化を行うため、有機過酸化物を用いる場合は、常圧熱気加硫(HAV)時に、酸素阻害によりゴム表面が硬化阻害されにくいアシル系の有機過酸化物を用いることが好ましい。具体的には、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、または、パーオキシエステル系で特異的に酸素阻害に強い有機過酸化物である1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサンが特に好適である。また、酸素硬化阻害のない付加硬化系も好適である。
一般的に、常圧熱気加硫では、酸素阻害によりゴム表面が硬化しない非アシル系の有機過酸化物が単独で使用されることはないが、アシル系の過酸化物と組み合わせて使用することは差支えない。
【0028】
成分(C)として白金族金属単体及びその化合物からなる付加反応触媒を用いる場合は、一般的なヒドロシリル化付加反応触媒を用いることができる。すなわち、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。これらヒドロシリル化付加反応触媒の中で、好ましいものは、白金または白金系化合物である。
なお、この付加反応触媒の配合量はいわゆる触媒量とすることができ、通常、白金族金属
の質量換算で、成分(A)および成分(B)の合計量に対し、0.1〜1000ppm、
特に1〜500ppm程度である。0.1ppm以下であると硬化が十分に進行しない恐
れがあり、1000ppm以上ではコストが高くなってしまう。
【0029】
成分(C)の含有量は、成分(A)のシリコーンゴムコンパウンドを硬化しうる有効量であればよく、特に規定はされない。設定する硬化開始温度や反応抑制剤との関係から最適化される。通常は、成分(A)100質量部に対し0.01〜10質量部の範囲内である。
【0030】
本発明は、成分(B)の無機塩水和物発泡剤の分解による発泡ガス発生が吸熱反応であることに着目し、発泡剤からの発熱による周囲の発泡剤の起泡を連鎖的に促進することなしに、セルを成長させることにより、連泡率を向上できることを見出した。
常圧下で本発明の組成物を加熱し、発泡および硬化を起す過程において、成分(B)の分解が吸熱反応であるために、分解反応を起こしている発泡剤粒子の周辺の温度は低下する。従って、1つの粒子が発泡ガスを発生させているときには、周辺の粒子の反応は抑制される。1つの粒子の分解が完了すると、周囲への熱の供給により、再度温度上昇が起こる。こうして、次の粒子の分解が開始する。したがって、有機系の発泡剤の場合とは逆に、粒子の反応は逐次的に起こる。この際、シリコーンゴムは気体透過性に優れた素材であるため、気泡核の形成後に、既にある気泡核の周囲にある粒子から発生した水蒸気は、新たに気泡核を形成するのではなく、当該気泡核へ送られて、気泡を拡大する。このことが、後述の機構と相まってシリコーンゴムスポンジの連泡率の向上をもたらす。
【0031】
また、本発明は、有機過酸化物の1分間半減期温度または付加反応触媒の硬化開始温度を、発泡剤の分解温度よりも高く設定することにより、硬化前に連泡化を起こさせ、セルを成長させることにより、連泡率を向上できることを見出した。
常圧下での加熱硬化時には、熱風による熱の供給で、組成物の温度は上昇していく。このとき、成分(B)の分解温度は、組成物の硬化温度よりも低いため、成分(B)の分解反応が組成物の硬化よりも先に起こる。当該分解反応により、未硬化の組成物中に成分(B)の粒子から発泡ガスが発生し、気泡核(微小な空洞)を形成する。このことが、後述の機構と相まってシリコーンゴムスポンジの連泡率の向上をもたらす。
【0032】
さらに、本発明は、有機過酸化物の1分間半減期温度または付加反応触媒の硬化開始温度を、発泡剤の分解温度よりも高く設定することにより、発熱による周囲の発泡剤の起泡を連鎖的に促進することなしに、セルを成長させることにより、連泡率を向上させること、かつ、硬化前に連泡化を起こさせ、セルを成長させることにより、連泡率を向上できること見出した。上記の2つの機構が両立するためである。さらに、後述の機構と相まってシリコーンゴムスポンジの連泡率の向上をもたらす。
【0033】
未硬化の組成物には、硬化によるシリコーンポリマーの架橋ネットワークが存在していないため、本発明の方法によれば、発泡ガスの供給が継続し、スポンジの発泡倍率が1.5〜4倍に到達すると、セル間の壁が破れ、セルが連泡化する。それでも、シリコーンゴムコンパウンドの粘度の高さのため、連泡化後もセルが完全に合一することなく、元々のセル構造は保たれる。
このような機構により、本発明のシリコーンゴムスポンジの製造方法によれば、連泡率が20%以上という高い連泡度を達成できる。
【0034】
このようにして、連泡スポンジ構造を形成している段階においては、発泡ガス(水蒸気)の発生(および、気化)と発泡ガスの膨張に従ったセルの拡大に熱エネルギーが消費されるため、組成物の温度の上昇は抑制されるか、緩やかになる。従って、その間は、有機過酸化物の1分間半減期温度または付加反応触媒の硬化開始温度が発泡剤の分解温度より高い場合は、分解は起こらず、硬化反応も起こらない。従って、この場合、スポンジの連泡化が完了した後、硬化反応が開始される。
【0035】
成分(B)から生じる発泡ガスにより、気泡核の形成、気泡の成長、スポンジの連泡化という過程を経て、連泡のスポンジ構造が形成される。
本発明においては、この一連の過程を完了するため、一定量以上の発泡ガスを発生するように成分(B)の添加量を調整して、好適な発泡の程度を得、かつ添加量を増やすほど連泡率を上げられることを見出した。すなわち、スポンジ1cmに占めるシリコーンゴム部分の体積に対する、該発泡剤から生じる発泡ガスの体積の比が5〜100倍である量、より好ましくは、8倍〜30倍である量が好適である。ただし、発泡ガスの体積は、過酸化物硬化の場合は成分(C)(有機過酸化物)の1分間半減期温度、付加硬化の場合は組成物の1気圧下での硬化開始温度において算出する。添加量が少なすぎると、気泡の連泡化が起こらず、連泡率が低下する。一方で、過剰に添加しても、連泡率や発泡倍率が変わらない上に、経済的に不利である。
【0036】
また、本発明は、シリコーンゴムコンパウンドに、吸熱反応である分解反応により発泡ガスを発生させる発泡剤を、一定範囲の添加量で添加し、1分間半減期温度が発泡剤の分解温度より10から50℃高い有機過酸化物、もしくは、白金族金属単体及びその化合物からなる付加反応触媒、1分子中に2個以上のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加反応用架橋剤、および、白金触媒抑制剤を組成物の硬化開始温度が発泡剤の分解温度より10から50℃高い温度に調整されるように添加し、常圧下で加熱硬化することにより、連泡率の高いシリコーンのスポンジを得る方法を見出した。
上記温度範囲の下限が10℃よりも小さいと、発泡の途中に硬化が起こり始めてしまうので好ましくなく、また50℃よりも大きいと、発泡時のシリコーンゴムコンパウンドの粘度がほとんど上がっていない状態のため、セルが連泡化後に合一してしまうなどの問題が起き好ましくない。
【0037】
常圧下での加熱硬化時の雰囲気の温度は、工程により、最適な温度は異なる。しかし、熱媒たる空気の温度を高くし、熱の供給を過剰にし、組成物の温度を急激に上げた場合には、スポンジ構造の形成と硬化の分離が不完全となるため、発泡倍率が低下する。セルの拡張の段階で、組成物の硬化が開始し、粘度が上昇すると、発泡に要する仕事量が大きくなり、セルの拡張が抑制されるためである。このため、常圧下での硬化温度は、過酸化物硬化の場合は、硬化剤の1分間半減期温度+100℃以下、好ましくは+50℃以下、さらに好ましくは+25℃以下が好適である。付加硬化の場合は硬化開始温度+100℃以下、好ましくは+50℃以下、さらに好ましくは+25℃以下が好適である。しかし、空気の温度を低くし過ぎると硬化に時間を要したり、硬化が不完全になるため、過酸化物硬化の場合は、硬化剤の1分間半減期温度よりも高い温度、付加硬化の場合には硬化開始温度よりも高い温度が必要である。
【0038】
連泡スポンジにおいては、各セルが連泡化し、スポンジ外部との空気のやり取りができる。連泡スポンジの利点を得るには、連泡率は20%以上、さらに好ましくは40%以上が好ましい。連泡率が低すぎると連泡スポンジの利点が得られないためである。
【0039】
スポンジの発泡倍率は以下の計算式(2)から算出することができる。
発泡倍率 = 未発泡のゴム材料比重/スポンジ比重 (2)
発泡倍率が高いほど、軽量性、柔軟性や断熱性の面では有利であるため、発泡倍率は1.5倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上が好適である。発泡倍率が低すぎるとスポンジとしての利点が得られない。一方、本発明においては、未硬化シリコーンゴムコンパウンドを発泡させるため、4倍を超える発泡倍率の達成は困難である。
【0040】
付加硬化型の場合には、硬化開始温度は、組成物のトルク検出型の計測器での硬化時間T(10)が1分となる温度を指す。
【0041】
本発明のシリコーンゴムスポンジの製造方法によれば、有機系発泡剤を使用しないため、製造時の作業者への負担が少ない。また、有害な残を含まないため、スポンジの無害化のプロセスを必要としない。連泡率が20%以上と高いのでガスケット材のように閉じられた空間で使用され加熱されても、スポンジ硬度が高くなるということがない。また、定着ロール等のロール材料として使用した場合には、熱膨張によってスポンジ径が大きくなるということがないので定着圧力が変化することがない上、ロールが冷えた状態でも電子写真式画像形成装置の異音の発生源となることがない。
以上のことから産業上、有用な用途展開が期待できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、各例における部は、いずれも質量部を示す。
また、実施例および比較例で得られたシリコーンゴムスポンジの評価方法は下記の方法によった。
各実施例、比較例における各成分の部数を表1に、シリコーンゴムスポンジの評価結果を表2にそれぞれ示す。
【0043】
<硬さの測定方法>
短冊状のスポンジを長手方向に垂直な面で切断した。断面にアスカーC硬度計を押し付けて測定した。
【0044】
<平均セル径の測定方法>
断面の拡大写真を撮影し、セル径を測定した。20個のセルを無作為に選択し、平均値を算出した。
【0045】
<連泡率の測定方法>
下記の手順で行った。
(1)短冊状のスポンジからスキン層を除去して、約2cmのスポンジを切り出した。
(2)スポンジ試料の比重と重量を測定した。
(3)スポンジ試料を減圧容器内に置いた容器中の水に沈め、真空ポンプにより、水が沸騰するまで減圧した。
(4)沸騰したら容器内を常圧に戻し、再度、水が沸騰するまで減圧した。
(5)減圧容器内を常圧に戻した。
(6)水中からスポンジ資料を取り出し、重量を測定した。
(7)以下の計算式(3)より、連泡率を算出した。
連泡率/% = [(減圧下吸水後のスポンジ試料の重量 − 当初スポンジ試料の重量)/水の比重(1.00)]/[(1−(スポンジ比重/未発泡のゴム材料比重)) × (スポンジ試料重量/スポンジ比重)]×100 (3)
【0046】
<実施例1>
成分(A)シリコーンゴムコンパウンドとしてWacker Chemie AG製ELASTOSIL R 865/50(硬度50)を100部に対し、成分(B)無機発泡剤としてピロリン酸ナトリウム10水和物(試薬グレードの純度99%以上、粒子モード径50μm ) 0.75部、及び、成分(C)有機過酸化物としてp−メチルベンゾイルパーオキサイド0.5部を2本ロールミルにて添加混合し7mm厚のゴムコンパウンドシートを作製した。このシートから約2cm×約10cmの短冊を切り出した。
次にこの短冊を200℃に設定した強制換気オーブンで15分間常圧熱気硬化させてシリコーンスポンジを得た。
【0047】
<実施例2>
成分(B)無機発泡剤の添加量を1.0部とした以外は、実施例1と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0048】
<実施例3>
成分(B)無機発泡剤の添加量を1.5部とした以外は、実施例1と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0049】
<実施例4>
成分(B)無機発泡剤の添加量を4.0部とした以外は、実施例1と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0050】
<実施例5>
成分(A)シリコーンコンパウンドをWacker Chemie AG製ELASTOSIL R 865/40(硬度40)とした以外は、実施例2と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0051】
<実施例6>
成分(B)無機発泡剤をリン酸水素二ナトリウム12水和物とした以外は、実施例2と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0052】
<実施例7>
成分(C)を付加硬化触媒(白金化合物含有量0.08%)1.5部および硬化遅延剤(有効成分5%)1.0部とした以外は、実施例2と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0053】
<実施例8>
成分(B)無機発泡剤の添加量を0.25部とした以外は、実施例1と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0054】
<実施例9>
成分(B)無機発泡剤の添加量を0.5部とした以外は、実施例1と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0055】
<比較例1>
成分(B)無機発泡剤を炭酸水素ナトリウム1.5部とした以外は、実施例1と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0056】
<比較例2>
成分(B)無機発泡剤を炭酸水素ナトリウム1.5部とした以外は、実施例7と同様の手順に従い、シリコーンスポンジを得た。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のシリコーンゴムスポンジの製造方法は、有機系発泡剤を使用しないため、製造時の作業者への負担が少なく、有害な残を含まないため、スポンジの無害化のプロセスを必要としない。スポンジの連泡率が20%以上と高いのでガスケット材のように閉じられた空間で使用され加熱されても、スポンジ硬度が高くなるということがなく、定着ロール等のロール材料として使用した場合には、熱膨張によってスポンジ径が大きくなるということがないので定着圧力が変化することがない上、ロールが冷えた状態でも電子写真式画像形成装置の異音の発生源となることがない、などの産業上、有用な用途展開が期待できる。