(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アニール対象物と保持テーブルとの間に配置されて使用され、前記アニール対象物から放射されて前記保持テーブルに向かう熱放射光を減衰させる機能を持つチャックプレートであって、
前記アニール対象物が保持される上面は、前記アニール対象物が保持された状態で前記アニール対象物に接触する一様な領域と、前記アニール対象物と重なるが前記アニール対象物に接触しない非接触領域とを含み、
前記アニール対象物が保持される上面の前記非接触領域、及び前記保持テーブルの方を向く下面の少なくとも一方に、前記アニール対象物から放射されて前記保持テーブルに向かう熱放射光を吸収する色素を含む吸収膜が設けられているチャックプレート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、
図2A、及び
図2Bを参照して、実施例によるレーザアニール装置について説明する。
【0011】
図1は、実施例によるレーザアニール装置の概略図である。チャンバ10内に移動機構12によって保持テーブル13が支持されている。移動機構12は、保持テーブル13を水平面内で移動させることができる。保持テーブル13の上に、チャックプレート14を介してアニール対象物30が保持される。保持テーブル13は、真空チャック機構を含み、チャックプレート14は、保持テーブル13の真空チャック機構の作用をアニール対象物30まで及ぼすための複数の貫通孔を有する。アニール対象物30は、例えば、ドーパントが注入されたシリコンウエハ等の半導体ウエハである。実施例によるレーザアニール装置は、例えばドーパントの活性化アニールを行う。
【0012】
保持テーブル13は、例えばアルミニウム等の金属で形成される。チャックプレート14には、保持テーブル13の材料よりも硬い材料、例えばセラミック等が用いられる。チャックプレート14は、例えば高い面精度を得る目的で、保持テーブル13とアニール対象物30との間に配置されて使用される。
【0013】
レーザ光源20が、アニール用のレーザビームを出力する。レーザ光源20として、例えば発振波長約800nmのレーザダイオードが用いられる。レーザ光源20から出力されたレーザビームが伝送光学系21、ダイクロイックミラー22、及びレンズ23を経由し、チャンバ10の天板に設けられたレーザ透過窓11を透過して、アニール対象物30に入射する。ダイクロイックミラー22は、アニール用のレーザビームを透過させる。伝送光学系21は、例えばビームホモジナイザ、レンズ、ミラー等を含む。ビームホモジナイザとレンズ23とにより、アニール対象物30の表面におけるビームスポットが整形され、ビームプロファイルが均一化される。
【0014】
アニール対象物30から放射された熱放射光が、レーザ透過窓11を透過し、レンズ23を経由し、ダイクロイックミラー22で反射され、さらにレンズ24を経由して熱放射光検出器25に入射する。ダイクロイックミラー22は、波長1μm以上の波長域の熱放射光を反射する。熱放射光検出器25は、特定の波長域の熱放射光の強度を測定する。熱放射光検出器25による熱放射光の測定結果が電圧値として制御装置40に入力される。
【0015】
レンズ23及びレンズ24は、アニール対象物30の表面を、熱放射光検出器25の受光面に結像させる。これにより、熱放射光検出器25の受光面に対して共役な関係を持つアニール対象物30の表面の領域から放射される熱放射光の強度が測定される。測定対象となる表面領域は、例えばレーザビームのビームスポットの内部に含まれるように設定される。
【0016】
制御装置40は、移動機構12を制御して、保持テーブル13に保持されているアニール対象物30を水平面内の二次元方向に移動させるとともに、レーザ光源20を制御してレーザ光源20からパルスレーザビームを出力させる。さらに、制御装置40は、レーザ光源20から出力されるパルスレーザビームの各ショットに同期して、熱放射光検出器25の検出結果を取得する。取得された検出結果は、アニール対象物30の面内の位置と関連付けて、記憶装置41に記憶される。
【0017】
一例として、パルスレーザビームの1ショットごとに、熱放射光の強度の時間変化が得られる。記憶装置41に記憶される検出結果は、例えば、パルスレーザビームの1ショットごとの熱放射光の強度のピーク値、または積分値である。制御装置40は、アニール対象物30の表面内における熱放射光の強度分布の情報を、画像、グラフ、または数値として出力装置42に出力する
【0018】
図2Aは、保持テーブル13の一部分の平面図である。保持テーブル13の上面に穴15及び溝16が設けられている。穴15及び溝16は、例えばアニール対象物30を保持するための保持機構の一部を構成する。
【0019】
図2Bは、チャックプレート14の一部分の平面図である。チャックプレート14を保持テーブル13に位置合わせして載せた状態で、保持テーブル13の穴15に対応する位置に貫通孔18が設けられている。さらに、保持テーブル13の溝16に沿って、複数の貫通孔19が分布している。貫通孔18、19が配置されていない領域は一様な平坦な表面とされている。チャックプレート14の上面にアニール対象物30を保持させると、一様な平坦な表面にアニール対象物30が接触し、貫通孔18、19が配置された領域においては、アニール対象物30がチャックプレート14に接触しない。このように、チャックプレート14の上面は、アニール対象物30が保持された状態でアニール対象物30に接触する一様な領域と、アニール対象物30と重なるがアニール対象物30に接触しない非接触領域とを含む。
【0020】
次に、
図3、
図4A、
図4Bを参照して比較例によるレーザアニール装置を用いて評価実験を行った結果について説明する。比較例によるレーザアニール装置では、
図1に示したチャックプレート14(
図1、
図2B)としてセラミック製のものが用いられる。アニール対象物30としてシリコンウエハを用いた。
【0021】
図3は、アニール対象物30のアニール時に取得された熱放射光の強度の検出結果の分布の一部分を示す図である。濃いグレーの領域が淡いグレーの領域より温度が低いことを表している。
図3において縦方向の縞模様が現れているのは、レーザビームでシリコンウエハを縦方向に走査したためである。
【0022】
貫通孔18(
図2B)の直上の箇所では、シリコンウエハで発生した熱がチャックプレート14(
図2B)を介して外部に伝達されないため、チャックプレート14に接している箇所より高温になり易いと考えられる。ところが、
図3に示した測定結果では、貫通孔18(
図2B)に対応する位置32の温度の測定値が周囲の温度の測定値より低くなる結果が得られている。また、溝16(
図2A)が設けられている領域に対応して、温度の測定値が低くなっていることがわかる。
【0023】
図4A及び
図4Bを参照して、貫通孔18(
図2B)に対応する位置の温度の測定値が周囲の温度の測定値より低くなった理由について説明する。
【0024】
図4Aは、貫通孔18が設けられていない箇所のアニール対象物30、チャックプレート14、及び保持テーブル13の断面図である。アニール対象物30にレーザビームが入射して加熱されると、高温になった箇所31から熱放射光が放出される。上方に向かう熱放射光は、そのまま熱放射光検出器25(
図1)に入射する。本明細書において、高温になった箇所31から上方に向かい熱放射光検出器25に入射する熱放射光を「直接光」ということとする。
【0025】
高温になった箇所31から下方に向かう熱放射光は、チャックプレート14を厚さ方向に伝搬し、保持テーブル13の表面で反射した後、チャックプレート14及びアニール対象物30を透過して、熱放射光検出器25に入射する。本明細書において、高温になった箇所31から下方に向かい、保持テーブル13の上面で反射した後、熱放射光検出器25に入射する熱放射光を「間接光」ということとする。このように、貫通孔18が設けられていない領域では、直接光と間接光との合計の強度が測定される。
【0026】
図4Bは、貫通孔18が設けられている箇所のアニール対象物30、チャックプレート14、及び保持テーブル13の断面図である。高温になった箇所31から放射されて下方に向かう熱放射光は、チャックプレート14の裏面から貫通孔18及び穴15の内部の空洞に放射される。このため、下方に向かう熱放射光は保持テーブル13の上面で反射されることがなく、熱放射光検出器25に入射しない。
【0027】
貫通孔18が配置されている領域においては、直接光のみの強度が測定され、間接光の強度は測定値に加算されない。その結果、貫通孔18が設けられている箇所の温度の測定値が、その周囲の温度の測定値より低くなる。
【0028】
溝16(
図2A)が設けられている領域においても、同様の理由により温度の測定結果が低くなっている。
【0029】
このように貫通孔18が設けられている箇所と、設けられていない箇所とで、測定環境が異なるため、正確な温度測定を行うことができない。以下に説明する実施例では、正確な温度測定を行うことが可能になる。
【0030】
図5A及び
図5Bは、実施例によるレーザアニール装置のチャックプレート14、保持テーブル13、及びチャックプレート14の上に保持したアニール対象物30の断面図である。
図5Aは、貫通孔18が設けられていない箇所の断面図であり、
図5Bは、貫通孔18が設けられている箇所の断面図である。
【0031】
実施例によるレーザアニール装置で用いられるチャックプレート14は、本体14Aと、その上面に塗布された吸収膜14Bとを含む。本体14Aとして、例えばセラミックからなるプレートが用いられる。吸収膜14Bは、熱放射光の波長域(例えば、波長1μm〜3μm)の光を吸収または減衰させる。吸収膜14Bとして、例えば黒色の色素を含む膜が用いられる。
【0032】
図5Aに示すように、貫通孔18が設けられていない箇所31から放射されて下方に向かう熱放射光は、吸収膜14Bで吸収または減衰される。さらに、保持テーブル13で反射して
上方に向かう熱放射光も、吸収膜14Bで吸収または減衰される。このため、熱放射光検出器25(
図1)に入射する間接光の強度は、直接光の強度に比べて十分低い。
【0033】
図5Bに示すように、貫通孔18が設けられている箇所においても、
図4Bに示した例と同様に、間接光が熱放射光検出器25(
図1)に入射することは無い。
【0034】
上述のように、実施例においては、貫通孔18が設けられている箇所と、設けられていない箇所との両方で、高温になった箇所31から上方に向かう直接光のみの強度を測定することができる。このため、貫通孔18が設けられている箇所と、貫通孔18が設けられていない箇所とで、温度の測定条件は実質的に同等であるといえる。このため、温度分布の測定精度を高めることができる。
【0035】
図6は、実施例によるレーザアニール装置でアニールを行う際に取得された熱放射光の強度の検出結果の分布の一部分を示す図である。濃いグレーの領域が淡いグレーの領域より温度が低いことを表している。貫通孔18が設けられている位置32の温度の測定値が、周囲の温度の測定値より高くなっている。この測定結果は、貫通孔18が設けられている位置の温度が周囲の温度より高くなるという予測と一致する。
【0036】
図7は、比較例によるレーザアニール装置を用いてアニールを行ったときの温度の測定結果と、実施例によるレーザアニール装置を用いてアニールを行ったときの温度の測定結果とを比較して示すグラフである。
図7では、アニール対象物30の走査方向(
図3、
図6において縦方向)に平行な直線に沿う測定結果を示している。横軸はアニール対象物30の表面内の位置を表し、縦軸は、熱放射光検出器25(
図1)で検出された電圧を単位「mV」で表す。検出された電圧は、熱放射光の強度に対応する。熱放射光の強度は、アニール対象物30の温度に対応する。
図7のグラフ中の太い実線は、実施例によるチャックプレート14を用いた場合(
図6)、細い実線は、吸収膜が設けられていない比較例によるチャックプレート14を用いた場合(
図3)における測定結果を示す。
【0037】
貫通孔18が設けられている領域Aでは、2つの測定結果がほぼ一致している。これは、
図4B及び
図5Bに示したように、両者で測定環境が実質的に同一であるためである。貫通孔18が設けられていない領域では、実施例によるレーザアニール装置を用いた場合の測定結果(
図5A、
図6)の方が、比較例によるレーザアニール装置を用いた場合の測定結果(
図3、
図4A)より低い。このような測定結果が得られたのは、比較例では、間接光も熱放射光検出器25(
図1)に入射するのに対し、実施例では、間接光が熱放射光検出器25(
図1)に実質的に入射しないためである。
【0038】
貫通孔18が設けられていない領域における太い実線と細い実線との差が、間接光の強度に相当する。
図7に示したグラフの比較結果から、間接光の強度は直接光の強度の約10%であることがわかる。
【0039】
十分な精度で温度分布を測定するためには、間接光の強度を直接光の強度の1/100以下にすることが好ましい。この条件を満たすために、アニール対象物30の高温になった箇所31から下方に向かい、保持テーブル13の上面で反射した後、アニール対象物30を透過して上方に向かうまでの経路を伝搬する間に、熱放射光の強度を90%以上減衰させるようにすることが好ましい。
【0040】
上記実施例では、チャックプレート14に貫通孔18が設けられている場合でも、正確な温度分布の測定を行うことができることを示した。チャックプレート14に貫通孔18が設けられていない場合であっても、上記実施例によるレーザアニール装置を用いることにより、保持テーブル13の上面の反射特性の面内のばらつきの影響を受けることなく、正確な温度分布を測定することができるという効果が得られる。
【0041】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、吸収膜14B(
図5A、
図5B)として、黒色の色素を含む膜を用いたが、熱放射光検出器25(
図1)で検出する対象となっている波長域の光を吸収または減衰させる材料を含む膜を用いてもよい。また、吸収膜14Bは、チャックプレート14の本体14Aの上面に設ける代わりに、下面に設けてもよいし、上面と下面との両方に設けてもよい。その他に、チャックプレート14を、熱放射光を減衰させる機能を持つ材料で形成してもよい。
【0042】
吸収膜14Bは、チャックプレート14に設ける代わりに、保持テーブル13の上面に設けてもよい。
【0043】
上記実施例では、レーザビームによってアニール対象物30を加熱したが、その他の加熱機構で加熱してもよい。例えば、フラッシュランプ等によって加熱してもよい。
【0044】
上記実施例は例示であり、実施例及び変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施例及び変形例の同様の構成による同様の作用効果については実施例及び変形例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例及び変形例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。