特許第6976684号(P6976684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976684
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】セラミック複合シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20211125BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20211125BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20211125BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20211125BHJP
   H01F 1/34 20060101ALN20211125BHJP
   H01F 27/36 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
   H05K9/00 M
   B32B3/12 Z
   B32B9/00 A
   B32B27/06
   !H01F1/34 140
   !H01F27/36
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-563396(P2016-563396)
(86)(22)【出願日】2015年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2015005434
(87)【国際公開番号】WO2016092735
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年9月13日
【審判番号】不服2020-16479(P2020-16479/J1)
【審判請求日】2020年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-250969(P2014-250969)
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】定井 真
(72)【発明者】
【氏名】中井 克実
【合議体】
【審判長】 山田 正文
【審判官】 須原 宏光
【審判官】 畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−225565(JP,A)
【文献】 特開2008−296431(JP,A)
【文献】 実公昭47−31405(JP,Y1)
【文献】 特開2008−124197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 3/12
B32B 9/00
B32B 27/06
H01F 1/34
H01F 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状のセラミックグリーンシートを焼成して、焼成セラミック層を形成する焼成工程と、
前記焼成セラミック層の少なくとも片面に、粘着材層を介して、樹脂層を粘着してセラミック複合シートを形成するラミネート工程と、
ラミネートされた前記セラミック複合シートを、分割装置に通して、前記焼成セラミック層を第1方向群を備え、連続した誘引溝に沿って焼成セラミック層を分割して連続した分割ラインを形成し、かつ前記樹脂層は分割しない分割工程とを有し、
前記分割工程では、前記第1方向群に対して、該第1方向群と直交する第2方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数を多くし、
前記焼成工程の前に、前記セラミックグリーンシートに前記第1方向群のみに相当する平行な誘引溝を予め設け、
前記分割工程において、前記セラミック複合シートを前記分割装置に通して前記誘引溝に沿って前記第1方向群に分割した後、前記第1方向群に分割されたセラミック複合シートを前記分割装置に通して前記第2方向群に分割することを特徴とするセラミック複合シートの製造方法。
【請求項2】
前記ラミネート工程で前記焼成セラミック層の端面を含む部分を前記樹脂層で覆うことを特徴とする請求項に記載のセラミック複合シートの製造方法。
【請求項3】
前記分割工程で前記セラミック複合シートを分割する分割装置は、互いに対向して接触する2つのローラからなるローラ対を備え、
前記セラミック複合シートを、前記ローラ対の間に通して分割することを特徴とする請求項1または請求項に記載のセラミック複合シートの製造方法。
【請求項4】
前記分割工程では、前記セラミック複合シートを前記ローラ対に通して前記第1方向群に沿うように分割し、
前記ローラ対を通る前記セラミック複合シートの向きを前記第1方向群と異なる前記第2方向群に変えて前記ローラ対に通して前記第2方向群に沿うように分割することを特徴とする請求項に記載のセラミック複合シートの製造方法。
【請求項5】
所定形状のセラミックグリーンシートを焼成して、焼成セラミック層を形成する焼成工程と、
前記焼成セラミック層の少なくとも片面に、粘着材層を介して、樹脂層を粘着してセラミック複合シートを形成するラミネート工程と、
ラミネートされた前記セラミック複合シートを、分割装置に通して、前記焼成セラミック層を、第1方向群を備え、連続した誘引溝に沿って焼成セラミック層を分割して連続した分割ラインを形成し、かつ前記樹脂層は分割しない分割工程とを有し、
前記分割工程では、前記第1方向群に対して、該第1方向群と直交する第2方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数を多くし、
前記焼成工程の前に、前記セラミックグリーンシートに前記第1方向群のみに相当する平行な誘引溝を予め設け、
前記分割工程において、前記セラミック複合シートを前記分割装置に通して前記誘引溝に沿って前記第1方向群に分割した後、前記第1方向群に分割されたセラミック複合シートを前記分割装置に通して前記第2方向群に分割し、
前記分割工程で前記セラミック複合シートを分割する分割装置は、互いに対向して接触する2つのローラからなるローラ対を2つ備え、
前記セラミック複合シートを、前記ローラ対の間に通して分割するものであり、
前記2つのローラ対において、
前方側にある前記ローラ対を通して前記第1方向群に沿うように分割し、
前記セラミック複合シートの方向を前記第1方向群と異なる前記第2方向群にして、後方側にある前記ローラ対を通して前記第2方向群に沿うように分割することを特徴とするセラミック複合シートの製造方法。
【請求項6】
前記ローラ対は、一方のローラが他方のローラに圧接されて、前記一方のローラの表面に、前記他方のローラの表面に沿って円弧状の凹みが形成されており、
前記ローラ対の間に前記セラミック複合シートを通して分割することを特徴とする請求項または請求項に記載のセラミック複合シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成セラミック層の少なくとも片面に樹脂材層が接着され、セラミック層が細片に分割されたセラミック複合シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器などには、その電子機器から放射される電磁波を吸収し、電子機器などに侵入する電磁波を吸収するため、アモルファス磁性体、焼結フェライト磁性体、フェライト等の磁性粉体とバインダー樹脂とから成る複合磁性体や、焼結フェライト等の磁性体にフィルム(樹脂材層)を貼り合わせたセラミック複合シートが装着されている。特に、アンテナコイルを使用して電磁波で通信を行うRFID(Radio FrequencyIDentification)タグにおいては、アンテナコイルの近傍、例えば、後側に金属のような導電性部材が存在した場合、送受信が困難になることがあるため、交信感度を上げるためRFIDタグのアンテナコイルと導電性部材との間に高透磁率のセラミック複合シートを配置する。
【0003】
また、上述のごとく、アンテナをFPCなどの可撓性のある電子材料で平面形状にして作製し、このアンテナ基板に、電子機器内での金属の影響を低減し、良好な通信特性が得られるように、セラミック複合シートが取り付けられる。この場合に、貼り付け部分の凹凸に合わせて貼り付けられるようにするために、焼成セラミック層を細片に分割しておき、フレキシブルなシートとして用いることが一般的に行われている。そして、分割した細片の分離を防止するとともに、細片に分割した部分からの粉落ち(ここで、「粉落ち」とは、セラミック破片等の微粉が外れて落ちることを言う。)を防止するために、焼成セラミック層の両表面に、粘着材層を備える樹脂フィルム(樹脂材層)を貼り合わせてから、細片に分割することが行われている。これにより、細片の分割面からの粉落ちが防止されるようになる。
【0004】
この場合に、焼成セラミック層を細片に分割する方法として、セラミック複合シートをローラに通す方法が行われている。例えば、特許文献1に示すように、電子機器に装着される高透磁率のセラミック複合シートとして、焼成セラミック層の一方の表面に樹脂材層及び粘着材層からなる積層材層が設けられたセラミック複合シートを使用し、支持プレートがローラの周囲をほぼ直角に曲がるように沿って設けられ、この支持プレート上のセラミック複合シートが同様に曲げられてローラの周りを回ることで分割する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2において台紙上に所定間隔で載せたセラミック複合シートをローラの周りを約半周させることで方向を変換させてセラミック層を分割する方法や、径の異なるニップローラ間を通して分割する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−045121号公報
【特許文献2】特許4369519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1や特許文献2では、ローラの周りに沿って90°又は略逆向きに方向を大きく変更して、セラミック複合シートを通すことで、セラミック層が分割される。この場合、複数の平行な分割ラインからなる分割ライン群は、縦ライン群及び横ライン群同士が直角になっており、縦ライン群と横ライン群とで個々に分割される細片は縦横の長さが同じである。
【0008】
そのため、セラミック複合シートを対象部品の貼り付け部分の凸凹に合わせて貼り付ける作業において、シートが縦方向及び横方向に対して、撓み易さが同じであるため、作業者がシートを手に持った際に取扱いが難しく、例えば、シートに柔軟性がありすぎるとシートが上下に動くため、所定の貼付位置へ貼り付けることが困難になり、作業に時間がかかる等の課題があった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、シートにおける対象部品の貼り付け部分の凸凹への追従性と貼り付け作業の容易性を両立することができるセラミック複合シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明では、セラミック複合シートのセラミック層を分割する際に、異なる分割方向で、単位幅当たりの平均分割ライン数を変えて、取り扱い易くなるようにした。
【0011】
具体的には、本発明の第1のセラミック複合シートは、焼成セラミック層と、焼成セラミック層の少なくとも片面に接着された樹脂材層とを備えたセラミック複合シートであって、焼成セラミック層が複数の分割ラインに沿って細片に分割され、焼成セラミック層の複数の分割ラインは、第1方向に延びる第1方向群と、第1方向群とは異なる方向に延びる第2方向群とを備え、第1方向群に対して、第2方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数が多いことを特徴とする。
【0012】
同構成によれば、セラミック複合シートが、第1方向群と平行な方向で撓み難く、第2方向群と平行な方向で撓み易くなるため、作業者が手に持った際に取り扱い易く、作業の安定感に優れる。また、対象部品の所定の位置に合わせることが容易となり、対象部品の凸凹に応じた貼り付け作業が安定し、作業者によるばらつきを防止できる。例えば、製品の凸凹の多い方や凸凹の差が大きい方に撓み易い方を合わせて貼り合わせて、位置合わせをする場合に、撓みにくい方を位置合わせ側に合わせる、あるいは、貼る前に両面粘着テープの粘着層を露出させるために剥離シートを掴む場合に、撓み易い方を掴むようにして、剥離シートを剥がし易くすることができる等、作業性が大幅に向上する。
【0013】
本発明の第1のセラミック複合シートにおいては、第1方向群と第2方向群とが直交し、第1方向群に対する2方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数の比率が1.3以上5.0以下であってもよい。
【0014】
同構成によれば、セラミック複合シートの第1方向群と第2方向群との撓み易さを、特定範囲に設定できるため、取り扱い易さが一層向上する。
【0015】
本発明の第1のセラミック複合シートにおいては、第1方向群に対する第2方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数の比率が1.3以上5.0以下であり、かつ第1方向群の平均分割ライン数が1cm幅当たり1本〜20本であり、第2方向群の平均分割ライン数が1cm幅当たり1.3本〜26本であってもよい。
【0016】
同構成によれば、セラミック複合シートの第1方向群と第2方向群との撓み易さを、より一層特定範囲に設定しやすくなるため、取り扱い易さがより一層向上する。
【0017】
本発明の第2のセラミック複合シートは、焼成セラミック層と、焼成セラミック層の少なくとも片面に接着された樹脂材層とを備え、焼成セラミック層が複数の分割ラインに沿って細片に分割され、焼成セラミック層の複数の分割ラインは、第1方向に延びる第1方向群と、第1方向群とは異なる方向に延びる第2方向群とを備え、第1方向群の端面に比し、第2方向群の端面を平面状態に維持し易くする構成としてもよい。
【0018】
同構成によれば、上述の第1のセラミック複合シートによる効果と同様の効果が得られるとともに、対象部品の貼り付け表面の基準位置に合わせ易くなり、ズレを生じにくくなる。
【0019】
本発明の第3のセラミック複合シートは、焼成セラミック層と、焼成セラミック層の少なくとも片面に接着された樹脂材層とを備え、セラミック複合シートは、長方形状からなり、焼成セラミック層が複数の分割ラインに沿って細片に分割され、焼成セラミック層の複数の分割ラインは、長方形状の短辺と平行な方向に形成された第1方向群と、長方形状の長辺と平行な方向に形成された第2方向群とを備え、第1方向群に対して、第2方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数を多くなるように設定してもよい。
【0020】
同構成によれば、上述の第1のセラミック複合シートによる効果と同様の効果が得られるとともに、対象部品の凸凹に応じて貼り付けできるとともに、作業者によるバラツキを防止できる。
【0021】
本発明の第4のセラミック複合シートは、焼成セラミック層と、焼成セラミック層の少なくとも片面に接着された樹脂材層とを備え、セラミック複合シートは、短い横辺と相対的に長い縦辺を備えるL字状、コ字状或いはI字状からなり、焼成セラミック層が複数の分割ラインに沿って細片に分割され、焼成セラミック層の複数の分割ラインは、横辺と平行な方向に形成された第1方向群と、縦辺と平行な方向に形成された第2方向群とを備え、第1方向群に対して、第2方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数が多くなるように設定してもよい。
【0022】
同構成によれば、上述の第1のセラミック複合シートによる効果と同様の効果が得られるとともに、L字状、コ字状或いはI字状からなるセラミック複合シートに対しても、貼り付けなどの取り扱い作業性が大幅に改善される。
【0023】
本発明のセラミック複合シートの製造方法は、所定形状のセラミックグリーンシートを焼成して、焼成セラミック層を形成する焼成工程と、焼成セラミック層の少なくとも片面に、粘着材層を介して、樹脂材層を粘着してセラミック複合シートを形成するラミネート工程と、ラミネートされたセラミック複合シートを、分割装置に通して、焼成セラミック層を第1方向群と第1方向群とは異なる第2方向群とを備えた分割ラインで細片に分割し、かつ樹脂層は分割しない分割工程とを有し、分割工程では、第1方向群に対して、第2方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数を多くすることを特徴とする。
【0024】
同構成によれば、第1方向群と平行な方向で撓み難く、第2方向群と平行な方向で撓み易くなるセラミック複合シートを得ることができるため、作業者が手に持った際に取り扱い易く、作業の安定感に優れるセラミック複合シートを提供することができる。また、対象部品の所定の位置に合わせることが容易になるとともに、対象部品の凸凹に応じた貼り付け作業が安定し、作業者によるばらつきを防止できるセラミック複合シートを提供することができる。例えば、製品の凸凹の多い方や凸凹の差が大きい方に撓み易い方を合わせて貼り合わせて、位置合わせをする場合に、撓みにくい方を位置合わせ側に合わせる、あるいは、貼る前に両面粘着テープの粘着層を露出させるために剥離シートを掴む場合に、撓み易い方を掴むようにして、剥離シートを剥がし易くすることができる等、作業性を大幅に向上することができるセラミック複合シートを提供することができる。
【0025】
本発明のセラミック複合シートの製造方法においては、ラミネート工程で焼成セラミック層の端面を含む部分を樹脂層で覆ってもよい。
【0026】
同構成によれば、上述の効果が得られるとともに、焼成セラミック層の端面の露出がなく、端面からの粉落ちが防止されたセラミック複合シートを提供することができる。
【0027】
本発明のセラミック複合シートの製造方法においては、第1方向群と第2方向群とは直交しており、第1方向群に対する第2方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数の比率が1.3以上5.0以下であってもよい。
【0028】
同構成によれば、セラミック複合シートの第1方向群と第2方向群との撓み易さを、特定範囲に設定できるため、取り扱い易さが一層向上したセラミック複合シートを提供することができる。
【0029】
本発明のセラミック複合シートの製造方法においては、第2方向群に対する第1方向群の単位幅当たりの平均分割ライン数の比率が1.3以上5.0以下であり、かつ第1方向群の平均分割ライン数が1cm幅当たり1本〜20本であり、第2方向群の平均分割ライン数が1cm幅当たり1.3本〜26本であってもよい。
【0030】
同構成によれば、セラミック複合シートの第1方向群と第2方向群との撓み易さを、より一層特定範囲に設定しやすくなるため、取り扱い易さがより一層向上したセラミック複合シートを提供することができる。
【0031】
本発明のセラミック複合シートの製造方法においては、焼成工程の前に、セラミックグリーンシートに第1方向群と第2方向群とに相当する平行な誘引溝を予め設け、分割工程において、セラミック複合シートを誘引溝にて第1方向群と第2方向群とに分割する構成としてもよい。
【0032】
同構成によれば、確実に誘引溝で分割できるとともに、セラミック複合シートの第1方向群と第2方向群との撓み易さを、誘引溝により決定することができ、撓み易さの差異を明確に設定することができる。
【0033】
本発明のセラミック複合シートの製造方法においては、焼成工程の前に、セラミックグリーンシートに第1方向群のみに相当する平行な誘引溝を予め設けておき、分割工程において、セラミック複合シートを分割装置に通して誘引溝に沿って第1方向群に分割した後、第1方向群に分割されたセラミック複合シートを分割装置に通して第2方向群に分割する構成としてもよい。
【0034】
同構成によれば、確実に誘引溝で分割できるとともに、セラミック複合シートの第1方向群と第2方向群との撓み易さを、誘引溝により決定することができ、撓み易さの差異を明確に設定することができる。
【0035】
本発明のセラミック複合シートの製造方法においては、分割工程でセラミック複合シートを分割する分割装置は、互いに対向して接触する2つのローラからなるローラ対を備え、セラミック複合シートを、ローラ対の間に通して分割する構成としてもよい。
【0036】
同構成によれば、ローラ対で分割するため、セラミック複合シートを容易かつ確実に分割できる。
【0037】
本発明のセラミック複合シートの製造方法においては、分割工程では、セラミック複合シートをローラ対に通して第1方向群に沿うように分割し、ローラ対を通るセラミック複合シートの向きを第1方向群と異なる第2方向群に変えてローラ対に通して第2方向群に沿うように分割する構成としてもよい。
【0038】
同構成によれば、同一のローラ対を使用するため、設備をコンパクトにできる。
【0039】
本発明のセラミック複合シートの製造方法においては、分割装置は、ローラ対の後方側に別のローラ対を備え、前方側にあるローラ対を通して第1方向群に沿うように分割し、セラミック複合シートの方向を第1方向群と異なる第2方向群にして、後方側にあるローラ対を通して第2方向群に沿うように分割する構成としてもよい。
【0040】
同構成によれば、異なる方向のローラ対を設けるため、異なる方向、例えば、直角な方向に細片を分割できる。従って、貼り付ける対象部品の表面の凸凹に沿わせて、貼り合わせることができるセラミック複合シートを提供することができる。
【0041】
本発明のセラミック複合シートの製造方法においては、ローラ対は、一方のローラが他方のローラに圧接されて、一方のローラの表面に、他方のローラの表面に沿って円弧状の凹みが形成されており、ローラ対の間にセラミック複合シートを通して分割する構成としてもよい。
【0042】
同構成によれば、一方のローラの表面に、他方のローラの表面に沿って円弧状の凹みが形成されているため、確実に同じ大きさの細片に分割できる。
【発明の効果】
【0043】
セラミック複合シートを貼り付ける際の貼り付け作業が容易になり、作業性が向上するとともに、貼り付け対象となる部品の凸凹に対応して、容易に貼り付け作業を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施形態1におけるセラミック複合シートの一部を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態1のセラミック複合シートの焼成セラミック層の分割状態を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態1のセラミック複合シートの製造方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態1のセラミック複合シートの焼成セラミック層を細片に分割する分割装置を示す概念図である。
図5図4の分割装置の一部を模式的に示す斜視図である。
図6図4の分割装置において、剛性の高い第一ローラに、剛性が低く弾性復元力のある第2ローラが接触して、第2ローラが第一ローラの表面の形状に沿って弾性変形している状態を示す説明図である。
図7図4の分割装置において、セラミック複合シートが移動して、両ローラに接触した状態を示す説明図である。
図8図4の分割装置において、セラミック複合シートが両ローラ間の一番狭い部分まで移動した状態を示す説明図である。
図9図4の分割装置において、セラミック複合シートが移動して、両ローラ間の一番狭い部分から更に先まで進んだ状態を示す説明図である。
図10】本発明の実施形態1のセラミック複合シートの製造方法を示す図である。
図11】本発明の実施形態1のセラミック複合シートの製造方法を示す図である。
図12】本発明の実施形態1のセラミック複合シートの製造方法を示す図である。
図13】本発明の実施形態1のセラミック複合シートの製造方法を示す図である。
図14】本発明の実施形態1のセラミック複合シートを、ICと通信用ループアンテナとが一体化した識別タグの裏面に手作業で貼り付けている状態を示す図である。
図15】本発明の実施形態2のセラミック複合シートの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0046】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に関わるセラミック複合シートの一部を示す断面図である。図1に基づいて、実施形態1のセラミック複合シートを説明する。
【0047】
セラミック複合シート10は、所定の形状(例えば、矩形状)の焼成セラミック層3の一方(図1では下側)の表面に粘着材層5が、また粘着材層5の表面側に樹脂材層4が、さらに樹脂材層4の表面側に別の粘着材層5がそれぞれ積層されて積層材層6が形成されている。また、この積層材層6の表面側に剥離シート8が積層され、他方(図1では上側)の表面に粘着材層5を介して樹脂材層4が積層されて保護材層7が形成された積層構造となっている。なお、図1の断面図では、説明の便宜上、各層の厚さは実際の厚さよりも誇張して示している。
【0048】
焼成セラミック層3のセラミック材としては、フェライト等公知のものが使用される。フェライトとしては、ソフトフェライトであれば特に制限されるものではなく、公知のソフトフェライトを使用し得る。例えば、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Ni−Zn−Cuフェライト、Mn−Mgフェライト、Liフェライト等が挙げられる。また、使用する電磁波の周波数に応じて組成が変更されたソフトフェライトを使用することもできる。
【0049】
焼成セラミック層3の厚さは、0.01mm〜5mmであり、好ましくは0.02〜3mm、より好ましくは0.03〜1mmである。厚さが0.01mm未満の場合は、シートとしての取り扱いが難しくなり、セラミック複合シート10の製造作業での歩留まりが悪くなる。5mmを超える場合は、焼成セラミック層3の重量が大きくなり好ましくない。
【0050】
焼成セラミック層3の表面に設けられる樹脂材層4や粘着材層5で構成される積層材層6や保護材層7等の樹脂素材を含む層を総称して樹脂層という。
【0051】
樹脂材層4及び粘着材層5が一体に設けられた積層材層6としては、両面粘着テープが挙げられる。両面粘着テープとしては、特に制限されるものではなく、公知の両面粘着テープを使用し得る。また、積層材層6として、焼成セラミック層3の片面に、粘着材層5、屈曲性且つ伸縮性を有する樹脂材層4、粘着材層5および剥離シート8を順次積層したものであってもよい。
【0052】
焼成セラミック層3の積層材層6を形成した面と反対側の面に設ける保護材層7としては、焼成セラミック層3が分割線2a,2bで細片2c(いずれも図2参照)に分割された場合に、破断することなく伸びる樹脂であれば、特に制限されるものではなく、公知の片面粘着テープを使用できる。例えば、ポリエステルフィルム粘着テープ等が挙げられる。保護材層7の厚さは、0.001〜0.2mmであり、好ましくは0.005〜0.15mmであり、より好ましくは0.01〜0.1mmである。保護材層7の厚さが0.001mm未満の場合は、破断しやすく粉落ちを防ぐことが困難である。0.2mmを超える場合は、粉落ちを防ぐ効果が飽和するため、0.2mmを超えて厚くする必要がない。
【0053】
焼成セラミック層3の両側の面に設けられる積層材層6と保護材層7の組み合わせは特に制限されるものではない。また、焼成セラミック層3の両側に積層材層6を設けても良く、焼成セラミック層3の両側に保護材層7を設けてもよい。
【0054】
図2に示すように、セラミックグリーンシート2の一方の面に、焼成前に誘引溝2a,2bを予め形成することがある(なお、誘引溝によって分割ラインが形成されるため、両者は同じ符号を付して説明する)。この場合は、この誘引溝2a,2bが、分割ライン2a,2bになるため、誘引溝2a,2bは分割線2a,2bに沿って割れ目を誘引する溝であればよく、その形状や大きさ(深さ)は、特に限定されるものではない。また、誘引溝2a,2bは、連続溝でも断続溝でもよく、その分布形状は碁盤目形状でも、他の形状でもよい。例えば、特開2005−15293号公報等に開示されている誘引溝2a,2bを利用できる。従って、ここでは詳細な説明は省略する。誘引溝2a,2bの断面形状は、焼成セラミック層3が誘引溝2a,2bで分割可能であれば、特に限定されるものではない。
【0055】
保護材層7は、焼成セラミック層3が誘引溝(分割ライン)2a,2bで分割可能で、焼成セラミック層3に屈曲性を付与することができ、かつ、焼成セラミック層3が割れた際の透磁率の低下が少ないものが好ましい。特に、保護材層7は、焼成セラミック層3が誘引溝2a,2bで山折されて分割ライン2a,2bで分割されても、破断することなく伸びる樹脂であればよく、特に制限はない。誘引溝2a,2bを設けた焼成セラミック層3の表面に保護材層7を形成することによって、焼成セラミック層3が誘引溝(分割線)2a,2bで分割された場合の粉落ちに対し、より信頼性および耐久性を高めることができるようになる。
【0056】
次に、本発明のセラミック複合シ−ト10の製造方法について、図3、及び図10図13に基づいて説明する。
【0057】
本発明のセラミック複合シ−ト10の製造方法は、図10図12に示すように、まず、PET等の樹脂フィルム1上に得られたセラミックグリーンシート2を所定の形状に切断した後、樹脂フィルム1を剥がして、セラミックグリーンシート2を得る。次に、図13に示すように、セラミックグリーンシート2を焼成して焼成セラミック層3とし、その両面に上述した積層材層6と保護材層7とをラミネートして、セラミック複合シート10を得る。その後、積層材層6と保護材層7とがラミネートされたセラミック複合シート10の焼成セラミック層3を細片に分割し、更に、使用目的や使用製品に応じて、所望形状にプレス等の機械的手段或いはレーザー等で切断する。
【0058】
より具体的には、まず、図10に示すように、樹脂フィルム1上にセラミックグリーンシート2を形成する(ステップS1)。
【0059】
なお、セラミックグリーンシート2は、公知の方法で製造することができる。例えば、セラミック粉末とバインダー樹脂と溶媒とを混合した後、樹脂フィルム(又は樹脂シート)1上にドクターブレード等で塗布してセラミックグリーンシート2を得る。
【0060】
また、セラミックグリーンシート2は、あらかじめ所定の大きさ、形状に成形するようにしてもよく、連続したシートとして成形した後に所定の大きさ、形状に切断してもよい。この場合に、セラミックグリーンシート2を所定の大きさ、形状にする為の切断は、焼成処理までに行えばよい。
【0061】
セラミックグリーンシート2は、セラミック粉末とバインダー樹脂と溶媒とを混合した後、粉末圧縮成形法、射出成形法、カレンダー法、押し出し法等を使用することによって得ることができる。なお、必要に応じてセラミックグリーンシート2を脱脂処理してもよい。
【0062】
次に、図11に示すように、セラミックグリーンシート2の片面に、割れ目(分割線)となる誘引溝2a,2bを形成する(ステップS2)。誘引溝2a,2bは、図2に示すように、縦横にマトリックス状に形成される。誘引溝2a,2bは、誘引溝2a,2bに対応する成形刃を押しつける等で形成される。なお、図2に示すように、複数の分割ライン2aが第1方向Dに延びる第1方向群を構成するとともに、分割ライン2aと直交する複数の分割ライン2bが第2方向Dに延びる第2方向群を構成している。即ち、第1方向群Dと第2方向群Dは直交する構成となっている。
【0063】
そして、後述のごとく、セラミックグリーンシート2を焼成して焼成セラミック層3を形成した後、この誘引溝2a,2bに沿って焼成セラミック層3が分割され、誘引溝2aが分割ライン(第1方向群)2aとなるとともに、誘引溝2bが分割ライン(第2方向群)2bとなり、焼成セラミック層3が細片2cに細かく分割される
誘引溝2a,2bは、セラミックグリーンシート2の成形中、成形後または焼成処理後に形成することができる。例えば、粉末圧縮成形法または射出成形法で誘引溝2a,2bを形成する場合は、セラミックグリーンシート2の成形中に溝を形成することが好ましい。また、カレンダー法、押し出し法、または樹脂フィルム1上にドクターブレード等で塗布して成形したセラミックグリーンシート2に誘引溝2a,2bを形成する場合は、セラミックグリーンシート2の成形後、かつ焼成前に溝を形成することが好ましい。
【0064】
次に、図12に示すように、ステップS2で得られたセラミックグリーンシート2から樹脂フィルム1を剥がして、セラミックグリーンシート2のみのシートにする(ステップS3)。後述する焼成工程において、樹脂フィルム1は不要であるので、この工程で除去する。
【0065】
なお、セラミックグリーンシート2が樹脂フィルム1上に形成されてない場合や、既に樹脂フィルム1が剥離されている場合には、このステップS3を省略できる。
【0066】
次に、ステップS3で得られたセラミックグリーンシート2を加熱炉に入れ、焼成処理を行うことにより、焼成セラミック層3を製造する(ステップS4)。
【0067】
次に、図13に示すように、ステップS4で得られた焼成セラミック層3の誘引溝2a,2bが形成されている面と反対側の面に樹脂材層4と粘着材層5とが一体になった積層材層6(例えば両面粘着テープ)を設けるとともに、積層材層6が形成されている面と反対側の表面に、粉落ち防止のための保護材層7を設ける(ステップS5)。
【0068】
保護材層7は、保護材層7を構成するPET樹脂等のフィルムまたはシートを、粘着材を介して焼成セラミック層3の表面に粘着することにより、または、保護材層7を構成する樹脂を含有する塗料を焼成セラミック層3の表面に塗布することにより形成される。
【0069】
具体的には、焼成セラミック層3の片面に樹脂フィルム(樹脂材層4に粘着材層5が設けられた積層材層6)を貼り付けるラミネート処理を行う。なお、図1に示すように、積層材層6の表面側には、粘着材層5を介在して剥離シート8が分割可能な状態で貼り合わされている。また、焼成セラミック層3を挟んだ他方の面には、保護材層7が貼り合わされている。
【0070】
また、本ステップS5においては、焼成セラミック層3の端面3a(図13を参照)の露出を防止するとの観点から、積層材層6と保護材層7とを、焼成セラミック層3よりも大き目のフィルムシートにより構成し、図13に示すように、積層材層6の内面と保護材層7の内面とを接触させて重ね合わせることにより、接合し、焼成セラミック層3が積層材層6と保護材層7とにより包まれる構成としてもよい。
【0071】
このように、焼成セラミック層3の少なくとも片面に樹脂材層4が粘着材層5で貼着されたセラミック複合シート10を形成する。
【0072】
なお、焼成セラミック層3の表面に積層材層6と保護材層7とを設ける構成としたが、焼成セラミック層3の片面のみに積層材層6又は保護材層7を設ける構成としても良く、焼成セラミック層3の両面に積層材層6(または、保護材層7)を設ける構成としてもよい。
【0073】
次に、ステップS5で得られたセラミック複合シート10の焼成セラミック層3を、分割線2a,2bを基準として細片2cに分割する(ステップS6)。なお、この際、焼成セラミック層3の一方の面と他方の面に形成された積層材層6と保護材層7は、分割されないでそのまま残り、焼成セラミック層3のみが細片2cに分割される。このような構成により、セラミック複合シート10を、貼り合わせる対象部品の表面の凸凹状態に追従して折り曲げて、形状を変更できると共に、焼成セラミック層3の細片2cがバラバラに分離することを防止している。
【0074】
ここで、上述のごとく、実施形態1では、複数の分割ライン2aが第1方向Dに延びる第1方向群を構成し、分割ライン2aと直角方向に設けられた複数の分割ライン2bがDに延びる第2方向群を構成している。そして、図2に示すように、分割ライン2a(第1方向群)に対して、分割ライン2b(第2方向群)の単位幅(例えば、図2に示す幅W)当たりの分割ライン数が多く設けられている。従って、セラミック複合シート10は、分割ライン2aと平行な方向(分割ライン2bと直角な方向である第1方向D)で撓み難く、分割ライン2bと平行な方向(分割ライン2aと直角な方向である第2方向D)で撓み易いようになっている。換言すれば、図2の焼成セラミック層3を備えたセラミック複合シート10を、図2で上下方向の軸線回りに折り曲げたときに撓み難く、図2の左右方向の軸線回りに折り曲げたときに撓み易くなっている。
【0075】
このように、撓み易さを変えることにより、貼り付ける被付着物(対象部品)の凸凹が比較的多い、または凸凹差が大きい方向に分割ライン2bを設定し、比較的緩やかな方向に分割ライン2aを設定することにより、手作業で貼り付ける際に持ち易く、かつ取り扱い易くなるとともに、貼り合わせ易くなる。また、分割ライン2a,2bの一方の端部を基準部として、対象部品に位置合わせする必要がある場合、分割ライン2aの方向に撓み難く、相対的に分割ライン2aの端部を平面状態に維持し易いので、この端部を基準端部として設定することが容易になる。従って、安定した基準が設定できるため、手作業で貼り付ける際の、作業者によるバラツキを防止できるメリットを有する。
【0076】
なお、第1方向群に対する第2方向群の平均分割ライン数の比率は、1.3以上5.0以下であることが好ましい。比率が1.3未満の場合は、両者の差が無く、セラミック複合シート10を扱い難くなる。逆に比率が5.0よりも大きい場合は、間隔の大きい方での撓み量が不足して、対象物の表面の凸凹に追従できない可能性が高くなる。従って、上記範囲とすることが好ましい。また、第1方向群の平均分割ライン数が、1cm幅当たり1本〜20本であり、第2方向群の平均分割ライン数が、1cm幅当たり1.3本〜26本であることが好ましい。平均分割ライン数が少ないと、細片2cの大きさが大きくなって、対象物の表面の凸凹に追従して折り曲げて貼り付けることが難しくなる。逆に、平均分割ライン数が多いと、セラミック複合シート10が細片に細分化しすぎて取り扱い難くなる。従って、単位幅当たりの平均分割ライン数は上記範囲とすることが好ましい。
【0077】
次に、図4図9に基づいて、焼成セラミック層3を細片2cに分割するための分割装置60及び分割方法を説明する。図4図5に示すように、分割装置60は、小径の第一ローラ61(金属製)と大径の第二ローラ62(樹脂製)とを備えている。この第一ローラ61と第二ローラ62は、各ローラの外周面で互いに圧接しており、圧接しているローラ61,62の間にセラミック複合シート10を通過させることにより、セラミック複合シート10の焼成セラミック層3を細片2cに分割する。
【0078】
また、第一ローラ61をモータ(図示省略)などの回転駆動源に接続し、第二ローラ62をフリー回転可能にしている。従って、第一ローラ61を回転させると、この回転に伴って、第二ローラ62が回転するようになっている。なお、第二ローラ62を駆動させて、第一ローラ61をフリーに回転させてもよく、両方を駆動させる構成としてもよい。また、両ローラ61,62をフリーにして、強制的にセラミック複合シート10を送り込むことも可能である。例えば、ゴムベルトなどにセラミック複合シート10を載置して、ゴムベルトを駆動させて両ローラ61,62間に送り込むようにし、セラミック複合シート10を搬送するようにしてもよい。
【0079】
第一ローラ61としては、第二ローラ62やセラミック複合シート10に接触した場合に、殆ど変形せず、かつ、セラミック複合シート10が、第二ローラ62と第一ローラ61とに挟まれた場合に、セラミック複合シート10が第一ローラ61に押し付けられて、第一ローラ61の表面に沿って移動することが可能であれば、材質は限定されない。例えば、金属、非金属、硬質樹脂等、或いはこれらの組み合わせが適用できる。実際には、剛体が好ましく、鉄やアルミ等の金属材が実用的には使いやすい。
【0080】
第二ローラ62としては、第一ローラ61よりも低硬度であって、第一ローラ61に接触(圧接)して第一ローラ61の表面に沿って変形するが、離れると元の形状に復元する弾性復元力を有するものであれば、材質は特定されない。例えば、軟質樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、発泡樹脂、エラストマー等、或いはこれらの組み合わせが適用できる。なお、樹脂やゴムなどのクッション材が実用上は好ましい。また、図5に示すように、第二ローラ62を、金属等の剛体からなる芯材62aと、芯材62aの表面に設けられ、所定の厚さを有する樹脂製のクッション材62bにより構成することにより、第二ローラ62を本体部64に回転可能に支持しやすくなるため好ましい。
【0081】
次に、セラミック複合シート10(即ち、焼成セラミック層3)の分割装置60の1例を、図5に基づいて説明する。第二ローラ62は、その両端が本体部64にフリーに回転可能に取り付けられている。金属製の第一ローラ61は、その両端が軸受部63に支持され、この軸受部63は長筒状の挿入ガイド部(図示省略)に上下動可能に挿入される。従って、第一ローラ61は上下方向に移動可能となるように支持されている。また、この状態で、スプリング66により軸受部63を押圧する構成となっており、軸受部63、挿入ガイド部、スプリング66により、両ローラ61,62を圧接させる圧接機構65が構成されている。また、スプリング66の張力を調整する加圧力調整機構67が設けられており、このスプリング66の張力の調整により、第一ローラ61の押し付け力(加圧力)を調整できるようになっている。
【0082】
なお、本実施形態においては、第一ローラ61の上下方向の位置を移動させて加圧力を調整するようにしたが、加圧力を調整できる構成であれば、この構成に限定されるものではない。例えば、位置を移動させずにスプリング力の強さで加圧力を調整する、或いはスプリング66ではなく液圧シリンダーを用いて液圧で制御して調整する構成でもよい。また、位置と押圧力との両方で加圧力を調整することも可能である。また、第一ローラ61は直径の異なるものや材質の異なるものに交換できるように着脱可能に構成されていることが好ましい。同様に、第二ローラ62も交換可能となるように着脱できるものが好ましい。なお、上下の第一ローラ61と第二ローラ62とは、上下方向を逆にして配置してもよく、又両ローラ61,62を上下方向ではなく前後方向や水平方向に配置して、上下方向にセラミック複合シート10を通すようにしてもよい。また、セラミック複合シート10を斜めに通すように両ローラ61,62を配置してもよい。
【0083】
また、第二ローラ62の直径が、第一ローラ61の直径よりも大きくなるように設定することが好ましい。このような構成により、セラミック複合シート10が、第二ローラ62によって、相対的に直径の小さいローラの外周に沿って押し付けられることになる。そして、この状態で、両ローラ61,62の回転に連れてセラミック複合シート10が移動し、短い移動距離により、折り曲げられるようになるため、セラミック複合シート10の移動方向を大きく変更することなく、焼成セラミック層3を効果的に分割できる。即ち、従来技術では、セラミック複合シート10が両ローラ61,62から離れる際の方向を、意図的に両ローラに入る方向と変更して、セラミック複合シート10がローラの外周に沿うように構成されていたが、本発明では、セラミック複合シート10が両ローラ61,62から離れるときの方向を変更する必要がなく、当該方向を自由に設定することができるため、生産性に優れる。
【0084】
次に、セラミック複合シート10(即ち、焼成セラミック層3)の分割メカニズムについて、図6図9に基づいて説明する。
【0085】
図6は、剛性が高く、小径の金属製の第一ローラ61と、弾性復元力のある発泡ウレタン樹脂からなるクッション層62bを被覆層として金属製芯材62aに被覆した第2ローラ62とが圧接され、第2ローラ62にセラミック複合シート10が接触した状態を示す。この圧接状態では、第2ローラ62のクッション層62bの一部が第一ローラ61の表面の形状に沿って弾性変形している。また、ガイド部70上に載置されたセラミック複合シート10が移動して両ローラ61,62に接近し、セラミック複合シート10の先端部分が先に第二ローラ62に接触している。一方、セラミック複合シート10の先端が金属製の第一ローラ61に先に接触した場合は、セラミック複合シート10の先端部分が損傷を受ける可能性があるが、本実施形態では、セラミック複合シート10が第二ローラ62のクッション層62bに先に接触するので、上記損傷の危険性を防止できる。
【0086】
次に、図7に示すように、第二ローラ62の回転に従い、セラミック複合シート10は、両ローラ61,62に接触した状態になる。そして、セラミック複合シート10が、圧接状態の両ローラ61,62に挟まれて、両ローラ61,62の回転に伴い、更に搬送される。なお、図7図9においては、ガイド部70や第二ローラ62の芯材62aとクッション層62bの境界の図示を省略する。
【0087】
図8は、セラミック複合シート10の先端部が圧接状態の両ローラ61,62間の一番狭い部分まで移動した状態を示す。この位置まで移動すると、クッション層62bがセラミック複合シート10を第一ローラ61の外周に強く押し付ける弾力性を有する場合に、セラミック複合シート10の先端部が第一ローラ61の外周に沿った形状に僅かに湾曲するとともに弾性的に挟圧され、焼成セラミック層3が細片2cに分割される。
【0088】
なお、セラミック複合シート10が薄く、僅かな衝撃で細片2cに分割可能な場合は、セラミック複合シート10を第一ローラ61の外周に強く押し付けて、当該外周に沿うようにしなくても、第一ローラ61と第二ローラ62とが一番近い位置(両ローラ61,62の軸間を通る平面上の位置)において、所定の加圧力により、セラミック複合シート10が確実に両ローラ61,62に挟持されることになるため、焼成セラミック層3が細片2cに分割される場合がある。この場合、セラミック複合シート10を第一ローラ61の外周に強く押し付ける必要が無いため、クッション層62bを柔軟な層として設けてもよい。その結果、セラミック複合シート10が第一ローラ61の外周に沿って変形しなくても、第一ローラ61と第二ローラ62とが一番近い位置で強く挟まれることで、細片2cに分割される可能性がある。即ち、本発明では、セラミック複合シート10が両ローラ61,62に挟まれて、第一ローラ61の外周に沿って運ばれるように構成されているため、外周に沿って曲がるとともに、挟圧することにより、細片2cに分割されるが、上述のごとく、ローラ61,62に、薄くて僅かな衝撃で細片2cに分割可能なセラミック複合シート10を通すようにして、挟圧することで分割する場合にも適用できる。
【0089】
図9は、セラミック複合シート10が両ローラ61,62の回転に伴って、両ローラ61,62間の一番狭い部分から更に先に移動した状態を示す。この場合も、クッション層62bがセラミック複合シート10を第一ローラ61の外周に強く押し付ける弾力性を有する場合は、セラミック複合シート10は先端部分に引き続いて第一ローラ61の外周に沿って進み、セラミック複合シート10の先端部分は両ローラ61,62から離れていく。
【0090】
このように、焼成セラミック層3を分割ライン2aで分割する。分割ライン2aで分割されたセラミック複合シート10を、90°向きを変えて、両ローラ61,62間に通すことで、分割ライン2bでも分割されて、セラミック複合シート10が矩形状の細片2cになる。
【0091】
以上に説明したように、本実施形態においては、被付着物への貼り付けを行う前の段階で、確実にセラミック複合シート10を細片2cに分割でき、かつ細片2c間の隙間が殆ど存在しない状態のシートになっている。従って、本発明のセラミック複合シート10を、被付着物、例えば、電子機器、電子部品などの表面の曲面部または凸凹面部に沿って貼付けた場合、分割線2a,2bを起点として、焼成セラミック層3が屈曲する又は折れることにより、分割線2a,2b以外の場所で不定形に割れることなく、かつ、粉落ち現象が発生することがない。更に、平面は勿論、円柱状の側曲面および多少凹凸のある面においても密着、または実質的に密着させることができる。
【0092】
図14は、長方形の被対象物の形状に合わせて切断したセラミック複合シート10を、ICと通信用ループアンテナとが一体化した識別タグの裏面に、積層材層6の表面にある両面粘着テープの剥離シート8を剥がして、手作業で貼り付けている状態である。ここで、上述のごとく、複数の分割ライン2a間の間隔と,複数の分割ライン2b間の間隔とが異なるため、分割ライン2aと平行な方向には撓み難く、分割ライン群2bと平行な方向には撓み易くなる。従って、貼り付ける前に作業員がセラミック複合シート10を手に持って保持する際にも、四方に同じように撓まないため、方向性を確保して保持でき、持ち方も安定する。更に、焼成セラミック層3の四方の端部3bのうち、分割ライン群2aの端になる方向の端部3bを貼り付け部分の位置合わせにして、貼り付けることが容易にできる。特に、セラミック複合シート10において、第1方向群と第2方向群との撓み易さが異なるため、被付着物の凸凹に沿わせて貼り合わせる際に、セラミック複合シート10が極度に変形したり、意図しない方向に変形したりすることを防止できる。
【0093】
なお、実施形態1では、第一ローラ61と第二ローラ62とからなるローラ対を1組のみ設け、このローラ対に2回通過させることにより、分割ライン2aと分割ライン2bとにより分割するようにしたが、本発明は、これに限られるものではない。例えば、第一ローラ61と第二ローラ62とからなるローラ対を2組設けて、セラミック複合シート10が一方のローラ対61,62によって分割ライン2aで分割され、他方のローラ対61,62によって分割ライン2bで分割されるようにしてもよい。このように配置すると、連続して別々の方向で分割されるため、細かい細片2cに分割され易い。また、この場合に、一方のローラ対61,62と他方のローラ対61,62との両方に加圧力調整機構67を設けることで、圧接機構65のスプリング66の張力を加圧力調整機構67で調整して、第一ローラ61の押し付け力(加圧力)を調整することができる。なお、加圧力調整機構67により、両ローラ対61,62における各々の加圧力の値を同じにしてもよく、異なる値にしてもよい。即ち、加圧力を自由に調整できるため、分割装置の利用価値が大幅に拡大する。
【0094】
また、分割ラインは、第1及び第2方向群の2つに限られるものではなく、それら以外の方向に延びる方向群を有する(即ち、3つ以上の方向群を有する)構成としてもよい。更に、両ローラ対61,62は2組だけではなく、3組以上設けてもよい。
【0095】
また、分割装置としては、上記ローラ対に限られるものではなく、他の分割手段でもよい。例えば、弾性のある台上で一本のローラにより分割するようにしてもよい。また、ローラ以外の機構、例えば、刃先を潰した分割刃又は凸凹のある平面型で型押しして割る方法や、この方法と普通のローラ割りの2つの方法を組み合わせてもよい。
【0096】
なお、上記ローラ対61,62を使用する場合、セラミック複合シート10の搬入方向及び搬出方向を規制する必要がない。即ち、ローラ61の周りに巻き付くように方向を変更することなく、分割できるため、設計の自由度が大幅に向上する。更に、分割した細片2cの隙間に樹脂層を形成する樹脂やセラミック粉が入り込むという不都合が防止できるため、透磁率が安定し、変形のない、フラットなフレキシブルシートを得ることができる。
【0097】
[実施形態2]
次に、図15に基づいて、本発明の実施形態2を説明する。なお、実施形態2では、実施形態1と異なる部分のみ説明する。
【0098】
実施形態2は、実施形態1のステップS2を省略した製造方法である。即ち、セラミックグリーンシート2の樹脂フィルム1と反対側の面に、割れ目(分割ライン)となる誘引溝2a,2bを形成するステップを省略する。特に、このステップを省略するのは、セラミック複合シート10が薄くて割れ易い場合や、セラミック複合シート10の素材が誘引溝2a,2bを設けなくても割れ易い場合には、有効な製造方法である。
【0099】
実施形態2では、焼成セラミック層3の組成、厚さ、樹脂層の積層材や厚さに起因して、割れ目の形成状態に多少の差異が生じるが、基本的には、図2に示す分割ライン2a,2bで分割される。即ち、セラミック複合シート10を図5のローラ対(ローラ61,62)に通すことで、ローラ62により、ローラ61の外周に押し付けられた状態、あるいはローラ61,62の一番狭い部分で略短冊状に分割されることにより、分割ライン2aが得られる。この分割ライン2aが形成されたセラミック複合シート10の向きを90°変更し、図5のローラ対(ローラ61,62)に通すと、単位幅当たりの平均分割ライン数が、分割ライン2aよりも多い分割ライン2bで分割されることとなる。なお、この場合、分割ライン2bの分割幅を制御するためには、ローラ対を別に設けて、ローラへの加圧力を変える、ローラ径を変える、ローラの材質を変える等の対策をするようにすればよいものであり、簡単に対応できる。
【0100】
そして、この実施形態2においても、実施形態1と同様に、分割ライン2aがほぼ等しい間隔で分割され、かつ分割ライン2bのライン数が、分割2aのライン数に比し多く、ほぼ等しい間隔で分割されているため、ほぼ均等な大きさの細片2cが得られ、かつ対象部品の表面の凸凹に応じて折り曲げて貼り付けることができる。また、貼り付け作業時において、位置合わせに狂いが生じ難く、取り扱いが容易であるため、作業者による貼り付け状態のばらつきが出にくい。
【0101】
[実施形態3]
次に、本発明の実施形態3を説明する。なお、実施形態3では、実施形態1と異なる部分のみ説明する。
【0102】
図示を省略するが、実施形態3においては、実施形態1のステップS2(フィルム1と反対側の面に、割れ目(分割ライン)となる誘引溝2a,2bを形成するステップ)において、誘引溝2aのみを形成し、誘引溝2bを省略する点に特徴がある。本実施形態は、セラミック複合シート10が薄くて割れ易い場合や、セラミック複合シート10が、誘引溝2bを設けなくても割れ易い場合に有効な製造方法である。
【0103】
また、実施形態3では、1方向のみ明確な分割ライン2aとしておき、1方向にほぼ同じ間隔で短冊状に細分化されたセラミック複合シート10を製造する。また、セラミック複合シート10を別の方向、例えば、分割ライン2aと直角な方向に向け、ローラ61,62を通して、分割ライン2bで細分化する。このような構成により、焼成セラミック層3が分割ライン2aと分割ライン2bとで細かく細分化されるとともに、分割ライン2aの間隔に対して分割ライン2bの間隔を狭くするように分割することにより、実施形態1と同様な効果が得られる。また、焼成する前のセラミックグリーンシート2に、誘引溝2aが設けられていても、他方の誘引溝2bが設けられてないため、セラミックグリーンシート2を取り扱っている作業中に、変形し難く、破損しにくい。
【0104】
実施形態3では、セラミック複合シート10を図5のローラ対(ローラ61,62)に通すことにより、ローラ62により、ローラ61に押し付けられること、或いはローラ61,62間の一番狭い部分で短冊状に分割され、分割ライン2aが得られる。この分割ライン2aが形成されたセラミック複合シート10の向きを90°変更し、図5のローラ対(ローラ61,62)に通すことにより、ローラ62により、ローラ61に押し付けられることで分割される。
【0105】
この場合に、2番目の分割ラインの分割幅を制御するためには、ローラ対を別に設けて、ローラへの加圧力を変える、ローラ径を変える等の方法により、簡単に対応できる。
【0106】
[実施形態4]
次に、本発明の実施形態4を説明する。なお、実施形態3では、実施形態1と異なる部分のみ説明する。
【0107】
実施形態4の製造方法は、実施形態1と同じ製造方法であり、図示を省略するが、実施形態1の場合とは異なり、誘引溝2a,2bが直交方向以外の異なる方向に設けられている。このような構成により、対象部品の形状が矩形でない場合、対象部品の凸凹に対応する折れ曲がり方向が直角でない場合等に好都合である。
【0108】
また、実施形態4の場合も、実施形態1と同様に、セラミック複合シート10を図4のローラ対(ローラ61,62)に通すことで、短冊状に分割され、分割ライン2aが得られる。このセラミック複合シート10を、所定角度に向きを変えて、図4のローラ対(ローラ61,62)に通すことで、分割ライン2bが得られる。
【0109】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、セラミック複合シート10を、そのまま両ローラ61,62間に通したが、ゴム製のコンベアにセラミック複合シート10を連続して貼り付けて、コンベア側を第二ローラ62側に設定するとともに、セラミック複合シート10側を第一ローラ61側に設定して、両ローラ間を通すようにしてもよい。この場合、連続してセラミック複合シート10を通すことができる。
【実施例】
【0110】
次に、実施例について説明する。
【0111】
(実施例1)
磁性粉末(戸田工業社製、商品名:Ni−Zn−CuフェライトFRX−952)100重量部、ブチルフタリルブチルグリコレート2ml、ブチラール樹脂12重量部および溶媒としてトルエン100mlをボールミルで混合・溶解・分散した。油ロータリー真空ポンプで減圧脱泡した後、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、得られた混合物をドクターブレードで一定の厚さに塗布し、100℃熱風で30分間乾燥して、厚さ100μmのセラミックグリーンシート2を得た。得られたセラミックグリーンシート2を5枚重ね、耐水耐熱の袋に入れて脱気した後、当該袋の開口部をシールして、80℃に加熱しながら20分間静水圧プレスし、厚さ500μmの積層グリーンシート2を得た。
【0112】
刃の断面形状が三角形(V字形)で、かつ、刃の先から200μmの部分の厚さが200μmである先端部を有する刃を使用して、得られた厚さ500μmのグリーンシート2の表面に幅1.5mm間隔で、深さ200μmの誘引溝(分割ライン)2aを第1方向群として形成し、これと直角な方向に、幅1.0mm間隔で、深さ200μmの誘引溝(分割ライン)2bを第2方向群として形成し、長方形の誘引溝2a,2bを形成した。このグリーンシート2を熱処理炉に入れた。熱処理炉で、昇温速度0.5℃/分で室温から500℃まで昇温し、500℃で6時間保持して脱脂した後、900℃に加熱して2時間焼成した。得られた焼成セラミック層3の一枚の厚さは約400μmであった。誘引溝2a,2bは、それぞれ幅1.5mm,1.0mm間隔の格子状のV字形溝であり、誘引溝2a,2bの溝開口部の幅は約110μm、溝の深さは約100μmであった。
【0113】
次に、焼成セラミック層3の誘引溝2a,2bが形成されている面に保護材層7として厚さ1.0mmのポリエステルフィルム粘着テープを貼着した。次に、保護材層7の反対側の焼成セラミック層3の表面に、積層材層6として両面粘着テープを貼って、セラミック複合シート10を得た。焼成セラミック層3の周囲では、保護材層7と積層材層6が接着されて、焼成セラミック層3の端部3bが露出していなかった。また、セラミック複合シート10の透磁率μは162であった。
【0114】
このセラミック複合シート10を、誘引溝2aの第1方向群をローラ61,62の軸方向にして、ローラ61,62間に通し、焼成セラミック層3を誘引溝2aで分割して、1.5mm間隔の分割ライン2aを形成した。次いで、この分割されたセラミック複合シート10を誘引溝2bの第2方向群をローラ61,62の軸方向にして、ローラ61,62間に通し、焼成セラミック層3を誘引溝2bで分割して、1.0mm間隔の分割ライン2bを形成した。このように、焼成セラミック層3を2回で分割し、分割ライン2a及び分割ライン2bで1.5mm×1.0mmの長方形に分割された細片2cを得た。
【0115】
このようにして、焼成セラミック層3が分割ライン61,62で細片2cに分割され、焼成セラミック層3の両表面及び焼成セラミック層3の端部3bに保護材層7及び積層材層6が付着されたセラミック複合シート10を得た。
【0116】
次に、セラミック複合シート10を被対象物(識別タグ)の貼り合せ部分に応じた形状に、切断刃やプレス型等の機械機構を使って切断した。図7は、長方形の被対象物の形状に合わせた形状に切断したセラミック複合シート10を、ICと通信用ループアンテナとが一体化した識別タグの裏面に、積層材層6の剥離シート8を剥がして手作業で、貼り付ける状態である。この貼り付け作業において、分割ライン群2a,2b間で間隔が異なるので、分割ライン群2aと平行な方向には撓み難く、分割ライン群2bと平行な方向には撓み易くなっていた。そのため、貼り付ける作業時に、作業員がセラミック複合シート10を手に持って保持する際にも、四方に同じように撓まず、方向性を確保して保持でき、持ち方も安定した。更に、焼成セラミック層3の四方の端部3bのうち、分割ライン群2aの端になる方向の端部3bを貼り付け部分の位置合わせにして、貼り付けることが容易にできた。
【0117】
次に、特許第3262948号に記載のデータキャリア装置において、応答器に代えて、得られた識別タグ部材を金属箱の表面に装着したところ、質問器との応答は良好で、セラミック複合シート10は、金属の影響を排除できていることを確認した。また、セラミック複合シート10は、分割ライン2a,2bを起点として折れて、不定形への破損および粉落ち現象が生じることなく、識別タグから容易に引き剥すことができた。そして、このセラミック複合シート10は繰り返し使用することができた。引き剥されたセラミック複合シート10は、分割ライン2a,2bで折れた状態であり、その透磁率μは100であった。
【0118】
(実施例2)
セラミックグリーンシート2の誘引溝2a,2bの間隔を2.0mm,1.0mmとし、焼成後は2.0mm,1.0mmの誘引溝が形成された焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例1と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0119】
(実施例3)
セラミックグリーンシート2の誘引溝2a,2bの間隔を3.0mm,1.0mmとし、焼成後は3.0mm,1.0mmの誘引溝が形成された焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例1と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0120】
(実施例4)
セラミックグリーンシート2の誘引溝2a,2bの間隔を3.0mm,2.0mmとし、焼成後は3.0mm,2.0mmの誘引溝が形成された焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例1と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0121】
(実施例5)
セラミックグリーンシート2の誘引溝2a,2bの間隔を4.0mm,2.0mmとし、焼成後は4.0mm,2.0mmの誘引溝が形成された焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例1と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0122】
(実施例6)
セラミックグリーンシート2の誘引溝2a,2bの間隔を6.0mm,2.0mmとし、焼成後は6.0mm,2.0mmの誘引溝が形成された焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例1と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0123】
(実施例7)
実施例7で、実施例1と異なる点は以下の点である。セラミックグリーンシート2を200μmの厚さで、誘引溝を形成しないで焼成した。焼成時には、150μmの厚さのセラミック層3となった。この焼成セラミック層3で、両表面に保護材層7と積層材層6とを貼り合わせて、セラミック複合シート10を形成した。このセラミック複合シート10を1方向からローラ61,62間に通し、さらにセラミック複合シート10を90°向きを変えて、同じローラ61,62間に通した。その時の焼成セラミック層3の分割ライン群2aの平均分割ライン数が1cm幅当たり6.7本、分割ライン群2bの平均分割ライン数が1cm幅当たり10本であり、両ライン群の比率は、1.5であった。
【0124】
(実施例8)
セラミック複合シート10をローラに通す際のローラの加圧力を調整して、分割ライン群2a,2bの平均分割ライン数が5本,10本の焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例7と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0125】
(実施例9)
セラミック複合シート10をローラに通す際のローラの加圧力を調整して、分割ライン群2a,2bの平均分割ライン数が3.3本,10本の焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例7と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0126】
(実施例10)
セラミック複合シート10をローラに通す際のローラの加圧力を調整して、分割ライン群2a,2bの平均分割ライン数が3.3本,5本の焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例7と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0127】
(実施例11)
セラミック複合シート10をローラに通す際のローラの加圧力を調整して、分割ライン群2a,2bの平均分割ライン数が2.5本,5本の焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例7と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0128】
(実施例12)
セラミック複合シート10をローラに通す際のローラの加圧力を調整して、分割ライン群2a,2bの平均分割ライン数が1.7本,5本の焼成セラミック層3を得たこと以外は、実施例7と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0129】
(実施例13)
実施例13で、実施例1と異なる点は、以下の点である。セラミックグリーンシート2に5mm間隔の誘引溝2aのみを形成し、誘引溝2bを形成しないで焼成した。焼成時には、400μmの厚さのセラミック層3で、誘引溝2aの間隔は1.5mmとなった。この焼成セラミック層3で、両表面に保護材層7と積層材層6とを貼り合わせて、セラミック複合シート10を形成した。このセラミック複合シート10を誘引溝2aの方向(第1方向群)をローラ61の軸と平行な方向にして、ローラ61,62間に通し、さらにセラミック複合シート10を90°向きを変えて、同じローラ61,62間に通した。分割ライン群2aの平均分割ライン数が1cm幅当たり6.7本、分割ライン群2bの平均分割ライン数が1cm幅当たり10本であり、両ライン群の比率は、1.5であった。
【0130】
(実施例14)
誘引溝が、120°で交差する2本の分割ラインで形成されていること以外は、実施例1と同様にして、セラミック複合シート10を作製した。
【0131】
(比較例1)
セラミックグリーンシートの第1方向群と第2方向群の誘引溝として、両方向群に同じ間隔で1.0mm間隔の誘引溝を形成した以外は実施例1と同様にしてセラミック複合シートを作製した。更に、実施例1と同様にセラミック複合シートを識別タグに装着した。その作業中において、第1方向群と第2方向群の誘引溝の間隔が同じであるため、どちらの方向にも同じように撓みが生じ、結果として、作業者が手に持って作業する場合に扱い難いとともに、位置合わせが難しく、作業者により貼り付け位置にバラツキが生じた。また、意図しない方向に撓み過ぎて、正規の位置に貼り付けることが困難になるケースも生じた。
【0132】
なお、上記実施例1〜14と比較例1について、分割ライン間の幅である分割幅と単位幅当たりの平均分割ライン数を以下の表にまとめた。なお、「ライン比率」とは、(第2方向群のライン数)÷(第1方向群のライン数)のことである。また、誘引溝を形成した実施例である実施例1〜6と比較例1とを表1に、誘引溝を形成しない実施例である実施例7〜14と比較例1とを表2にそれぞれ示す。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、電子機器の平面、曲面又は凸凹の表面に貼着、剥離の可能なセラミック複合シート及びその製造方法に極めて有用である。
【符号の説明】
【0136】
1 樹脂フィルム
2 セラミックグリーンシート
2a 分割ライン(第1方向群)、誘引溝
2b 分割ライン(第2方向群)、誘引溝
3 焼成セラミック層
3a 切断面
4 樹脂材層
5 粘着材層
6 積層材層
7 保護材層
8 剥離シート
10 セラミック複合シート
60 分割装置
61 第一ローラ
62 第二ローラ
62a 芯材
62b クッション層(クッション材)
63 軸受部
65 圧接機構
66 スプリング
67 加圧力調整機構
70 ガイド部

[補正の理由等]
段落[0050],[0051],[0085],[0098],[0136]において誤記の訂正を行いました。これらは、いずれも出願当初の明細書の記載及び図面の記載から誤記であることが明白です。従って、本補正は出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてするものです。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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