特許第6976693号(P6976693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976693
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】冷凍菓子用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20211125BHJP
   A23G 9/00 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   A23D9/00 512
   A23G9/00 101
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-32186(P2017-32186)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-134053(P2018-134053A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】山里 実央
(72)【発明者】
【氏名】石川 隼人
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−195221(JP,A)
【文献】 特開2016−002015(JP,A)
【文献】 第四版 油化学便覧−脂質・界面活性剤−,丸善株式会社,2001年11月20日,p.604
【文献】 改訂三版 油脂化学便覧,丸善株式会社,1992年01月15日,p.104
【文献】 CLARITY OF SINGLE AND DOUBLE FRACTIONATED PALM OLEINS,Elaeis,1996年,Vol.8 No.2,pp.104-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D、A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸としてラウリン酸を3〜50質量%含み、
20℃のSFCが20以下であり、且つ
30℃のSFCが1.0以下である、冷凍菓子の製造に使用されるアイスミックス用の油脂組成物であって、
前記油脂組成物は、ラウリン系油脂並びにパーム系油脂及び/又は液状油脂を含む混合物であり、
ここで、ラウリン系油脂は、構成脂肪酸としてラウリン酸を35質量%以上含み、かつ不飽和脂肪酸量が40%以下である油脂であり、
パーム系油脂は、パーム油、パーム油を分別した油脂、並びにこれらの1種又は2種類以上のエステル交換油から選択される油脂であり、
液状油脂は、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を60質量%以上含む油脂であり、
但し前記油脂組成物は、前記混合物をエステル交換してなるエステル交換油脂ではないことを条件とする、
前記油脂組成物
【請求項2】
構成脂肪酸としてオレイン酸を5〜50質量%含む、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
ラウリン系油脂を5〜100質量%含、請求項1又は2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
前記ラウリン系油脂が、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ヤシ極度硬化油及びパーム核極度硬化油並びにこれらの1種又は複数の油脂のエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項5】
パーム系油脂を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項6】
パーム系油脂が、パームオレイン、パームダブルオレイン及びパームスーパーオレイン並びにこれらの1種又は複数の油脂のエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の油脂組成物。
【請求項7】
液状油脂を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項8】
液状油脂が、大豆油、ハイオレイック菜種油、菜種油、ハイオレイックヒマワリ油、ヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、紅花油及びオリーブ油並びにこれらの1種又は複数の油脂のエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の油脂組成物。
【請求項9】
上昇融点が15℃超過である、請求項1〜のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、アイスミックス。
【請求項11】
請求項10のアイスミックスの固形化物を含む、冷凍菓子。
【請求項12】
前記冷凍菓子がアイスクリーム類又は氷菓である、請求項11に記載の冷凍菓子。
【請求項13】
前記冷凍菓子がアイスクリーム類であり、且つ前記アイスクリーム類がラクトアイス又はアイスミルクである、請求項12に記載の冷凍菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍菓子用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アイスクリーム類や氷菓などの冷凍菓子(冷菓)製品の製造において、油相部成分として植物性油脂を用いることが知られている。植物性油脂から製造される冷凍菓子は、生乳から製造される冷凍菓子に比べて、比較的安価に製造されるという利点を有するためにその消費量は多い。植物性油脂を用いた冷凍菓子の製造では、通常、安定な乳化物を得るため、乳化剤や安定剤などが使用される。
【0003】
現在流通している冷凍菓子、特にアイスクリーム類や氷菓は、通常5℃程度で冷凍菓子用の乳化物を撹拌・冷却し、−5℃程度で取り出して成型・包装を行った後、−20℃で硬化される。また、ソフトクリームは、−5℃で成形し、その場で食されることが多い。
植物性油脂から製造されるアイスクリーム類や氷菓などの冷凍菓子には、保形性、オーバーラン(空気の抱き込み)、口溶け性などの点で優れた特性を有することが求められる。これらの特性に着目した冷凍菓子用油脂組成物としては、ヤシ油系油脂60〜80質量%とパーム系油脂40〜20質量%とからなる油脂組成物が知られている(特許文献1)。
また、食したときに水々しく、冷感が強調される冷凍菓子用の油脂として、ナタネ硬化油又はパーム低融点画分からなる油脂が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−36943号公報
【特許文献2】特開平11−169074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の油脂組成物を用いて製造した冷凍菓子は、口溶けが未だ十分とはいえない。また、特許文献2の油脂組成物を用いて製造した冷凍菓子は、−5℃程度で取り出した後、常温(約20℃)に曝すとすぐに溶けてしまうという問題がある。そのため、成形作業中に形が崩れたり、ソフトクリームとして食べるときに溶けてしまい食べにくいという問題がある。従って、−5℃で取り出した後に常温に放置しても溶けにくく且つ口溶けに優れた冷凍菓子用油脂組成物に対する高い需要が存在する。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みたものであり、常温で溶けにくく且つ口溶けに優れた冷凍菓子を得るのに好適な冷凍菓子用油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意努力により、構成脂肪酸としてラウリン酸を3〜50質量%含み、20℃のSFCが20以下であり、且つ30℃のSFCが1.0以下である冷凍菓子用油脂組成物から得られた冷凍菓子が、常温で溶けにくく且つ口溶けに優れることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
〔1〕 構成脂肪酸としてラウリン酸を3〜50質量%含み、
20℃のSFCが20以下であり、且つ
30℃のSFCが1.0以下である、冷凍菓子用油脂組成物。
〔2〕 構成脂肪酸としてオレイン酸を5〜50質量%含む、〔1〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔3〕 ラウリン系油脂を5〜100質量%含む、〔1〕又は〔2〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔4〕 前記ラウリン系油脂が、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ヤシ極度硬化油及びパーム核極度硬化油並びにこれらの1種又は複数の油脂のエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種である、〔3〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔5〕 パーム系油脂及び/又は液状油脂を更に含む、〔3〕又は〔4〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔6〕 パームオレイン、パームダブルオレイン及びパームスーパーオレイン並びにこれらの1種又は複数の油脂のエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種のパーム系油脂を含む、〔5〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔7〕 大豆油、ハイオレイック菜種油、菜種油、ハイオレイックヒマワリ油、ヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、紅花油及びオリーブ油並びにこれらの1種又は複数の油脂のエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種の液状油脂を含む、〔5〕又は〔6〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔8〕 上昇融点が15℃超過である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔9〕 〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の油脂組成物を含む、冷凍菓子。
〔10〕 前記冷凍菓子がアイスクリーム類又は氷菓である、〔9〕に記載の冷凍菓子。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷凍菓子用油脂組成物を用いることにより、常温で溶けにくく(溶出率が低く)且つ口溶けに優れた冷凍菓子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
<<冷凍菓子用油脂組成物>>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、構成脂肪酸としてラウリン酸を3〜50質量%含み、20℃のSFCが20以下であり、且つ30℃のSFCが1.0以下であることを特徴とする。
冷凍菓子は、アイスクリーム類及び氷菓(アイスキャンディなど)に代表される、凍結状態又はチルド状態で食用に供される菓子である。
本明細書及び特許請求の範囲において、アイスクリーム類とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く)をいい、アイスクリーム、アイスミルク及びラクトアイスを包含する概念である。
本明細書及び特許請求の範囲において、冷凍菓子のうち、アイスクリームは、乳固形分が15.0%以上であり且つ乳脂肪分が8.0%以上のものをいう。アイスミルクは、乳固形分が10.0%以上であり且つ乳脂肪分が3.0%以上のものをいう。ラクトアイスは、乳固形分が3.0%以上のものをいう。氷菓は、乳固形分が3.0%未満のものをいう。
なお、本発明の冷凍菓子用油脂組成物から冷凍菓子を作製する際には、後述するように油相部に乳脂肪を添加することができるが、本明細書及び特許請求の範囲において「油脂組成物」という場合には、特に断らない限り、植物性油脂(すなわち、乳脂肪を除く油脂)からなる油脂組成物を意味する。
【0011】
<固体脂含量(SFC)>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、20℃におけるSFCが20以下(単位:%)である。20℃におけるSFCは0.1〜18であることが好ましく、0.2〜16であることがより好ましく、0.3〜14であることがさらにより好ましく、0.5〜12であることがさらにより好ましく、1〜10であることがさらにより好ましい。
20℃におけるSFCが上記範囲内であると、口溶けに優れた冷凍菓子を得ることができる。
また、本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、30℃におけるSFCが1.0以下である。30℃におけるSFCは、0.0〜0.8であることが好ましく、0.0〜0.5であることがより好ましく、0.0〜0.2であることがさらにより好ましい。
30℃におけるSFCが上記範囲内であると、口溶けに優れた冷凍菓子を得ることができる。
SFC(単位:%)は、基準油脂分析法(2.2.9−2013、固体脂含量(NMR法))を基にして、次のようにして測定することができる。即ち、油脂組成物を60℃で30分保持し、油脂組成物を完全に融解した後、0℃で30分保持して固化させる。その後、25℃で30分保持し、テンパリングを行った後、0℃に30分保持する。その後、各SFCの測定温度で30分保持した後、SFCを測定する。
【0012】
<上昇融点>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、上昇融点が15℃超過であることが好ましく、16〜30℃であることがより好ましく、18〜25℃であることがさらにより好ましい。上昇融点が上記範囲内であると、常温で溶けにくい冷凍菓子が得られやすい。
上昇融点は、基準油脂分析法(2.2.4.2−1996、融点(上昇融点))により測定することができる。
【0013】
<ラウリン酸含量>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるラウリン酸の割合が3〜50質量%である。ラウリン酸の割合は、3〜45質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
ラウリン酸の割合が上記範囲内であると、常温で溶けにくい冷凍菓子を得ることができる。
【0014】
<オレイン酸含量>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるオレイン酸の割合が5〜50質量%であることが好ましく、8〜45質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることがさらにより好ましい。
オレイン酸の割合が上記範囲内であると、常温で溶けにくい冷凍菓子が得られやすい。また、オーバーランが向上しやすい。
【0015】
<ラウリン系油脂>
本明細書及び特許請求の範囲において、ラウリン系油脂とは、構成脂肪酸としてラウリン酸を35質量%以上含み、かつ不飽和脂肪酸量が40%以下である油脂の総称である。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、ラウリン系油脂を含むことが好ましい。ラウリン系油脂を含むことにより、常温で溶けにくい冷凍菓子が得られやすい。
ラウリン系油脂を含む場合、ラウリン系油脂は、冷凍菓子用油脂組成物中に5〜100質量%含まれることが好ましく、15〜90質量%含まれることがより好ましく、20〜80質量%含まれることがさらにより好ましい。
ラウリン系油脂としては、パーム核油、ヤシ油が挙げられる。また、パーム核油、ヤシ油を分別した油脂や、これらの油脂の1種又は2種類以上の間でエステル交換した油脂を挙げることもできる。これらの中でも、ラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ヤシ極度硬化油及びパーム核極度硬化油並びにこれらのエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種であるであることが好ましく、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレイン、これらのエステル交換油であることがより好ましく、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレインであることがさらにより好ましく、パーム核オレインであることが特に好ましい。なお、エステル交換油は、上記の油脂の1種の間でエステル交換したものであってもよく、2種以上の間でエステル交換したものであってもよい。
ラウリン系油脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のラウリン系油脂を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
<パーム系油脂>
本明細書及び特許請求の範囲において、パーム系油脂とは、パームの果実由来の油脂の総称であり、パーム油、パーム油を分別した油脂、これらの油脂の1種又は2種類以上をエステル交換した油脂を意味する。なお、パームの核由来の油脂であるパーム核油、その分別油及びそのエステル交換油は、パーム系油脂には含まれない。
パーム系油脂は、構成脂肪酸としてパルミチン酸を30質量%以上含むことが好ましく、30〜80質量%含むことがより好ましく、30〜60質量%含むことがさらにより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、パーム系油脂を含んでいてもよい。パーム系油脂を含むことにより、口溶けを向上させやすくなる。
パーム系油脂は、冷凍菓子用油脂組成物中に0〜95質量%含まれることが好ましく、0.1〜95質量%含まれることがより好ましく、1〜95質量%含まれることがさらにより好ましく、10〜85質量%含まれることがさらにより好ましく、20〜80質量%含まれることがさらにより好ましい。
パーム系油脂としては、パーム油、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクション、及びこれらのエステル交換油等が挙げられる。これらの中でも、パーム系油脂としては、パームオレイン、パームダブルオレイン及びパームスーパーオレイン並びにこれらのエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、パームオレイン、パームダブルオレインがより好ましい。なお、エステル交換油は、上記油脂の1種の間でエステル交換したものであってもよく、2種以上の間でエステル交換したものであってもよい。
パームオレインは、パーム油を分別して得られる低融点画分の油脂である。パームステアリンとは、パーム油を分別して得られる高融点画分の油脂である。パームダブルオレインやパームスーパーオレインはパームオレインを分別して得られる低融点画分の油脂である。パームミッドフラクションは、パームオレインを更に分別して得られる高融点画分の油脂である。
パーム系油脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のパーム系油脂を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
<液状油脂>
本明細書及び特許請求の範囲において、液状油脂は、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を60質量%以上含む油脂を意味する。液状油脂としては、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を65質量%以上含む油脂であることが好ましく、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を70質量%以上含む油脂であることがより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、液状油脂を含んでいてもよい。液状油脂を含むことにより、口溶けを向上させることができる。
液状油脂を含む場合、液状油脂は、冷凍菓子用油脂組成物中に0〜95質量%含まれることが好ましく、0.1〜95質量%含まれることがより好ましく、1〜95質量%含まれることがさらにより好ましく、10〜85質量%含まれることがさらにより好ましく、20〜80質量%含まれることがさらにより好ましい。また、液状油脂は、冷凍菓子用油脂組成物中に5〜40質量%含まれることも好ましく、10〜30質量%含まれることも好ましく、15〜25質量%含まれることも好ましい。
【0018】
液状油脂の具体例としては、大豆油、ハイオレイック菜種油、菜種油、ハイオレイックヒマワリ油、ヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、紅花油、オリーブ油、亜麻仁油、ごま油、えごま油、グレープシードオイル、チアシードオイル、米油、パンプキンシードオイル、アボカドオイル、マカダミアナッツ油、ヘンプ油、アルガンオイル、アーモンド油、くるみ油が挙げられる。また、上記の油脂を分別した油脂や、上記の油脂の1種又は2種類以上をエステル交換等した油脂を挙げることもできる。これらの中でも、液状油脂としては、大豆油、ハイオレイック菜種油、菜種油、ハイオレイックヒマワリ油、ヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、紅花油及びオリーブ油並びにこれらのエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、大豆油、ハイオレイック菜種油がより好ましく、大豆油がさらにより好ましい。なお、エステル交換油は、上記油脂の1種の間でエステル交換したものであってもよく、2種以上の間でエステル交換したものであってもよい。
液状油脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上の液状油脂を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、構成油脂としてラウリン系油脂を含むことが好ましく、ラウリン系油脂とパーム系油脂及び/又は液状油脂とを含むことがより好ましい。ラウリン系油脂とともにパーム系油脂及び/又は液状油脂を含むことにより、口溶けを向上させることができる。
油脂組成物中に含まれるラウリン系油脂とパーム系油脂及び液状油脂の合計との質量比は、5:95〜100:0(ラウリン系油脂:パーム系油脂及び液状油脂の合計)が好ましく、5:95〜90:10であることがより好ましく、15:85〜85:15であることがより好ましい。
【0020】
<その他の油脂>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、その他の油脂を含んでいてもよい。具体例としては、MCT(中鎖脂肪酸油)、液状油脂の極度硬化油脂があげられる。極度硬化油脂とは、水素添加によって原料油脂の不飽和脂肪酸をほぼ完全(好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.8質量%以下)に又は完全に飽和させた油脂を意味する。水素添加は、慣用の方法、例えば「食用油製造の実際」(宮川高明著、幸書房、昭和63年7月5日、初版第1刷発行)に記載の方法に従って行うことができる。
その他の油脂を含む場合、その他の油脂は冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して10質量%以下の割合であることが好ましく、5質量%の割合であることがより好ましく、2質量%の割合であることがさらにより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0021】
<その他の任意成分>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤などを含んでいてもよい。酸化防止剤としては、ビタミンE、ビタミンC、ローズマリー抽出物、茶抽出物、コケモモ抽出物等が挙げられる。
【0022】
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、上記の油脂を単に混合しただけのものであってもよく、または、上記油脂を混合後にエステル交換したものであってもよい。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に断らない限り、「冷凍菓子用油脂組成物」は、上記の油脂を単に混合しただけの組成物も、上記油脂を混合後にエステル交換して得られる組成物も包含する概念とする。
エステル交換は、当該技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。例えば、非選択的エステル交換反応方法、選択型(指向型)エステル交換反応方法が挙げられる。
<用途>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、冷凍菓子の製造に用いることができる。冷凍菓子の中でも、本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、アイスクリーム類及び/又は氷菓の製造に好ましく用いることができ、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓の製造により好ましく用いることができ、アイスミルク、ラクトアイスの製造にさらにより好ましく用いることができ、ラクトアイスの製造に特に好ましく用いることができる。
【0023】
<<アイスミックス/冷凍菓子(冷菓)>>
上述した油脂組成物から下記のように水中油型乳化油脂組成物であるアイスミックスを製造することができる。アイスミックスとは、冷却・撹拌によって冷凍菓子に固形化する前の水中油型乳化油脂組成物をいう。このアイスミックスを冷却しながら撹拌することにより、冷凍菓子を製造することができる。
〔油相部〕
本発明のアイスミックスは水相部と油相部からなり、油相部に上記本発明の冷凍菓子用油脂組成物を含有することを特徴とする。
本発明において、油相部は、本発明の冷凍菓子用油脂組成物に加えて、油脂として乳脂肪を更に含んでいてもよい。乳脂肪としてバターオイル、バター、生クリーム、牛乳等を由来とする乳脂肪が挙げられる。
【0024】
本発明のアイスミックスの油相部には、上記油脂に加えて、親油性の乳化剤、着香料、着色料等を添加してもよい。乳化剤としては、例えばレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド等従来公知の乳化剤が例示でき、本発明においてはこれらのいずれを適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明において、アイスミックス全質量に対する油相部の質量割合は、1〜35質量%であることが好ましく、3〜30質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることがさらにより好ましい。また、本発明において、アイスミックス全質量に対する本発明の油脂組成物の質量割合は、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることがさらにより好ましい。
【0025】
〔水相部〕
本発明のアイスミックスの水相部には、水に加えて、安定剤、乳化剤(蔗糖脂肪酸エステルなど)、カゼインナトリウム、脱脂粉乳、糖類などを添加してもよい。また、必要に応じて、クエン酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、第二りん酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム、カラギナン等の増粘多糖類、香料などを添加してもよい。糖類としては、例えば、水飴、粉飴、ショ糖、麦芽糖、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、トレハロース等が挙げられ、これは必要に応じ適宜組み合わせて配合される。
また、水相部に脱脂粉乳が含まれる場合、脱脂粉乳(固形分)の量は、アイスミックスの全質量に対して、1〜20質量%であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましく、3〜12質量%であることがさらにより好ましい。
その後、油相部と水相部を60℃〜90℃に加温し、混合して予備乳化を行う。予備乳化後、バッチ式殺菌法、または間接加熱方式あるいは直接加熱方式によるUHT滅菌処理法にて滅菌し、ホモゲナイザーにて均質化し、0〜10℃程度、好ましくは5℃程度に冷却してエージングすることで、本発明のアイスミックス(水中油型乳化油脂組成物)を製造することができる。
得られたアイスミックスを撹拌しながら−10〜0℃程度、好ましくは−5℃程度に冷却することにより、本発明の冷凍菓子を製造することができる。
【実施例】
【0026】
<<油脂組成物の調製>>
表1〜3に示す油脂及び配合割合(質量%)で混合した後、結晶を完全に溶解させた。その後、脱色、脱臭し、実施例1〜9及び比較例1〜12の各油脂組成物を得た。実施例1〜9及び比較例1〜12において使用した各油脂の構成脂肪酸のうち主要な構成脂肪酸の割合を、表4〜5に示す。なお、表4〜表5中、%は質量%を意味する。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
<<物性>>
実施例1〜9及び比較例1〜12で用いた油脂及び油脂組成物の脂肪酸組成、SFC及び上昇融点を、下記の方法により測定した。
<脂肪酸組成>
基準油脂分析法(2.42.3−2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法))に準じて測定した。
ガスクロマトグラフィー装置は、島津製作所(株)製、GC−2010型。カラムは、SUPELCO社製、SP−2560。
【0033】
<SFC>
実施例1〜9及び比較例1〜12の各油脂組成物の固体脂含量(SFC、単位は%)は、基準油脂分析法(2.2.9−2013、固体脂含量(NMR法))を基にして、次のようにして測定した。即ち、油脂組成物を60℃で30分保持し、油脂組成物を完全に融解した後、0℃に30分保持して固化させた。その後、25℃で30分保持し、テンパリングを行った後、0℃で30分保持した。その後、各SFCの測定温度で30分保持した後、SFCを測定した。その結果を表1〜3に示す。
【0034】
<上昇融点(℃)>
基準油脂分析法(2.2.4.2−1996、融点(上昇融点))に準じて測定した。
【0035】
<<アイスミックスの製造>>
表6に記載の油相部、水相部a、水相部bをそれぞれ混合した後、水相部bに水相部aを加え、十分に撹拌して混合した。混合後の水相部を加熱し、80℃で油相部を加え、85℃で15分間予備乳化と殺菌を行った。その後、ホモゲナイザーにて均質化を行い(80kg/cm2)、アイスミックスを得た。
なお、表6中、%は質量%を意味する。
【0036】
【表6】
乳化剤::サンソフトNo.561V(太陽化学)
安定剤:ネオソフトIL-220(太陽化学)
【0037】
<冷凍菓子(ラクトアイス)の製造方法>
上記で得られたアイスミックスをフリーザーに入れ、220rpmで撹拌しながら−5℃になるまで冷却し、ラクトアイスを得た。得られたラクトアイスを用いて下記の評価を行った。
<<評価試験>>
<溶出率(%)>
300mLビーカーに茶こしをセットし、50gほどのラクトアイスを茶こしの上にのせ、30分後に溶けだしたラクトアイスの質量を測定し、下記の式にて溶出率を算出した。
溶出率(%)=溶出量(g)/のせたアイス量(g)×100
なお、試験時の周囲温度は20℃で行った。
溶出率が15%以下のラクトアイスをA+評価、15%超過〜30%以下のラクトアイスをA評価、30%超過のラクトアイスをB評価とした。その結果を表1〜3に示す。
【0038】
<口溶け>
上記製造方法で得られたラクトアイスを−20℃で一晩以上硬化させ、官能評価を行った。官能評価は、5名のパネリストにより、20℃の部屋で各ラクトアイスを試食し、以下の評価基準に従って口溶けを評価し。5名のパネリストの口溶け評価の平均値を評価値とした。
5:非常に良い
4:良い
3:ふつう
2:やや悪い
1:とても悪い
口溶けが4.5以上のラクトアイスをA+評価、口溶けが4.0以上〜4.5未満のラクトアイスをA評価、口溶けが4.0未満のラクトアイスをB評価とした。その結果を表1〜3に示す。
【0039】
<オーバーラン(OR)(%)>
オーバーランとは、フリージング前のアイスミックスの体積に対するフリージング後のラクトアイスの体積増加率(%)をいう。アイスミックスを撹拌しながら冷却(フリージング)すると、空気が取り込まれながら固形化しラクトアイスとなる。このときの空気の抱き込みによる体積の増加率がオーバーランである。下記式に従って、オーバーランを求めた。
オーバーラン(%)=(一定体積のフリージング前のアイスミックスの質量−同体積のフリージング後のラクトアイスの質量)/(同体積のフリージング後のラクトアイスの質量)×100
オーバーランが60%以上のラクトアイスをA評価、60%未満のラクトアイスをB評価とした。その結果を表1〜3に示す。
【0040】
<<結果>>
表1〜3に示す結果から明らかなように、比較例1、5〜10及び12のラクトアイス用油脂組成物から製造されたラクトアイスは、20℃或いは30℃のSFCが非常に高く、食した際の口溶けが悪かった(B評価)。このうち、比較例9及び10のラクトアイス用油脂組成物から製造されたラクトアイスは、全構成脂肪酸に占めるオレイン酸の割合が5%未満であり、口溶けだけではなく溶出率も高すぎるという結果となった(B評価)。
また、比較例2〜4、11及び12のラクトアイス用油脂組成物から製造されたラクトアイスは、全構成脂肪酸に占めるラウリン酸の割合が5%未満であり、20℃で30分放置したときの溶出率が高すぎる結果となった(B評価)。
一方、実施例1〜9のラクトアイス用油脂組成物から製造されたラクトアイスは、全構成脂肪酸に占めるラウリン酸の割合が3〜50質量%であり、且つ20℃及び30℃のSFCも十分低かった。その結果、20℃で30分放置しても溶出率が小さく、口溶けにも優れていた(A+又はA評価)。
以上の結果から、本発明の冷凍菓子用油脂組成物から製造される冷凍菓子は、常温での溶出率が小さく、口溶けにも優れることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、常温で溶けにくく(溶出率が小さく)且つ口溶けに優れた冷凍菓子を得ることができる。したがって、本発明は、産業上、極めて有用である。