(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X線管から照射されたX線を光に変換するシンチレータと、前記シンチレータを共有し、前記シンチレータによって変換された光を検出して電気信号を出力する第1の光検出器及び電気信号の残存成分が前記第1の光検出器よりも少ない第2の光検出器とを有するX線検出器と、
前記第1の光検出器により出力された電気信号から生成された第1の画像を、前記第2の光検出器により出力された電気信号から生成された第2の画像を用いて補正する制御部と、
を備え、
前記制御部は、表示部に表示させる画像を前記第2の画像から前記第1の画像に変更した際に、前記第1の画像に前記電気信号の残存成分に由来するアーチファクトが生じた場合に、前記第2の画像から得られた画素値を用いて前記第1の画像を補正する、X線診断装置。
前記制御部は、前記第1の光検出器と前記第2の光検出器との感度比に応じた係数を前記第2の画像の画素値に乗じた画素値と、前記第1の画像の画素値との差が閾値以上である場合に、前記アーチファクトが生じたと判定する、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
前記制御部は、前記第2の画像から得られた画素値から前記第1の画像から得られた画素値を減算して補正値を算出し、前記第1の画像から得られた画素値から前記補正値を減算して、前記第1の画像を補正する、請求項1〜4のいずれか一つに記載のX線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態に係るX線診断装置を説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置100の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、カテーテル寝台101と、保持装置102と、X線高電圧発生装置107と、保持装置制御装置108と、モニタ109と、X線画像収集装置110と、X線検出器(Flat Panel Detector)制御装置120と、入力インターフェース130とを備える。
【0010】
カテーテル寝台101は、垂直方向及び水平方向に移動可能であり、被検体Pが載置される。保持装置102は、Z軸を中心に矢印R方向に回転可能であり、X線源103及びX線検出器106を対向して保持する。
【0011】
X線源103は、X線を照射するX線管球103aと、被検体Pに対する被曝線量の低減と画像データの画質向上を目的として用いられる絞り及び線質調整フィルター103b(コリメータとも言う)とを有する。
【0012】
X線検出器(FPD:Flat Panel Detectorとも言う)106は、X線源103から照射され、被検体Pを透過したX線を検出する。
図2を用いて、第1の実施形態に係るX線検出器106について説明する。
図2は、第1の実施形態に係るX線検出器106の構成例を示すブロック図である。
【0013】
例えば、X線検出器106は、
図2に示すように、第1の光検出器106aと、第2の光検出器106bと、シンチレータ106cとを有する。第1の光検出器106aとシンチレータ106cとにより第1の検出器106d(第1のFPDとも言う)が構成され、第2の光検出器106bとシンチレータ106cとにより第2の検出器106e(第2のFPDとも言う)が構成される。
【0014】
シンチレータ106cは、X線源103から照射されたX線を光に変換する。第1の光検出器106aは、例えば、アモルファスシリコンにより形成されたTFT(Thin Film Transistor)アレイを採用した2次元のイメージセンサを備え、シンチレータ106cによって変換された光を検出して電気信号を出力する。第2の光検出器106bは、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを採用した2次元のイメージセンサを備え、シンチレータ106cによって変換された光を検出して電気信号を出力する。なお、第1の光検出器106aや第2の光検出器106bによって出力される電気信号のことをX線信号とも言う。
【0015】
このように、シンチレータ106cは、第1の光検出器106aと第2の光検出器106bとで共有される。言い換えると、X線検出器106は、X線源103から照射されたX線を光に変換するシンチレータ106cと、シンチレータ106cを共有し、シンチレータ106cによって変換された光を検出して電気信号を出力する第1の光検出器106a及び第2の光検出器106bとを有する。そして、第1の光検出器106a及び第2の光検出器106bは、シンチレータ106cで変換された光を同時に検出した電気信号をそれぞれ出力する。
【0016】
また、
図2に示すように、第1の光検出器106a及び第2の光検出器106bは、画素の構成単位となる素子部を複数有する。この素子部のそれぞれは、X線入射によって得られた蛍光像を電気信号に変換してフォトダイオード(PD:Photo Diode)に蓄積する。
図2の例では、第1の光検出器106aが8つの素子部を有し、第2の光検出器106bが8つの素子部を有する場合を図示している。
【0017】
ここで、第2の光検出器106bの各素子部の画素ピッチは、第1の光検出器106aの各素子部の画素ピッチよりも細かい。
図2に示す例では、第1の光検出器106aの各素子部の画素ピッチは、第2の光検出器106bの素子部2つ分の画素ピッチに相当する。すなわち、第2の光検出器106bは、解像度が第1の光検出器106aよりも高い。また、
図2に示すように、第1の光検出器106aは、第2の光検出器106bよりも視野サイズが広い。
【0018】
更に、CMOSを採用した第2の光検出器106bでは、アモルファスシリコンを採用した第1の光検出器106aと比較して、最大入射X線量が少ない傾向にある。このため、第2の光検出器106bでは、高線量のX線を照射してS/N(Signal to Noise)比の高いX線画像データを収集しようとした場合に、それが叶えられない場合がある。
【0019】
また、第2の光検出器106bは、電気信号の残存成分が第1の光検出器106aよりも少ない。第1の光検出器106aは、フォトダイオード内において、発生した電荷が内部のトラップ準位に捕捉される。一方、第2の光検出器106bは、CMOSは特性上、フォトダイオード内において生成された電荷のトラップが少ない。
【0020】
図1に戻る。X線検出器制御装置120は、X線検出器106による電気信号の読み出しのタイミングを制御する。また、X線検出器制御装置120は、X線検出器106から電気信号を収集し、収集した電気信号から画像データを生成してX線画像収集装置110に出力する。ここで、X線検出器制御装置120は、第1のFPDによって出力された電気信号を収集し、収集した電気信号から第1の画像データ(第1のFPD画像或いは第1の画像とも言う)を生成してX線画像収集装置110に出力する。また、X線検出器制御装置120は、第2のFPDによって出力された電気信号を収集し、収集した電気信号から第2の画像データ(第2のFPD画像或いは第2の画像とも言う)を生成してX線画像収集装置110に出力する。
【0021】
X線画像収集装置110は、保持装置制御装置108やX線高電圧発生装置107を制御し、X線検出器制御装置120によって出力された画像データを収集して画像処理を施す。ここで、X線画像収集装置110は、第1のFPD及び第2のFPDから略同じタイミングで画像データを収集する。なお、X線画像収集装置110の詳細については後述する。
【0022】
X線高電圧発生装置107は、X線管球103aに対して高電圧を供給する。保持装置制御装置108は、X線画像収集装置110による制御の下、保持装置102の回転などを制御する。モニタ109は、X線画像収集装置110によって生成されたX線画像などを表示する。モニタ109は、複数のサブモニタから構成されてもよいし、操作者の指示に応じて表示領域を任意に分割可能な大画面のモニタでもよい。また、モニタ109が複数のサブモニタを有する場合、各サブモニタの表示領域が操作者の指示に応じて任意に分割されてもよい。入力インターフェース130は、キーボード、コントロールパネル、フットスイッチなどであり、X線診断装置100に対する各種操作の入力を操作者から受け付ける。
【0023】
以上、第1の実施形態に係るX線診断装置100の全体構成について説明した。かかる構成において、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、X線検出器106により出力されたX線信号を収集する。そして、X線診断装置100は、収集したX線信号から生成された画像をモニタ109に表示させる。例えば、X線診断装置100は、臨床部位に応じて操作者から設定された画像をモニタ109に表示させる。例えば、X線診断装置100は、操作者の指示に応じて第1の画像と第2の画像とを切り替えてモニタ109に表示させる。
【0024】
このようなX線診断装置では、比較的長時間、治療手技等において高解像度で視野が狭い第2の光検出器106b側の第2のFPDを使用される場合がある。
図3は、従来技術に係るX線診断装置100によるX線画像の収集処理動作を説明するための図である。
【0025】
図3の左図では、X線を照射する領域が第2のFPDの視野サイズに設定される場合を示す。かかる場合、X線診断装置100は、第2のFPDにより出力されたX線信号を収集し、第2の画像をユーザの収集意図側画像としてモニタ109に表示させる。なお、かかる場合もX線診断装置100は、第1のFPDにより出力されたX線信号を収集し、第1の画像を生成する。第1の画像では、第2のFPDの視野サイズと一致する視野と、この視野の周辺にX線コリメータ羽根とが描出される。
【0026】
続いて、モニタ109に表示させる画像を第2の画像から第1の画像に変更される。
図3の右図は、X線を照射する領域が第1のFPDの視野サイズに変更された場合を示す。かかる場合、X線診断装置100は、第1のFPDにより出力されたX線信号を収集し、第1の画像をユーザの収集意図側画像としてモニタ109に表示させる。なお、かかる場合もX線診断装置100は、第2のFPDにより出力されたX線信号を収集し、第2の画像を生成する。第2の画像では、第2のFPDの視野サイズと一致する視野が描出される。
【0027】
ここで、例えば長時間第2のFPDを使用した透視・撮影手技により、第2のFPDの視野サイズに対応する第1のFPDの領域では、トラップ準位に捕捉されていた発生電荷が本来とは異なったタイミングで読み出されることにより、画像のオフセット成分が変化してしまう。この変化は、強いX線が或る一定期間第1のFPDに照射された際、光検出を行なうフォトダイオード内において、発生した電荷が内部のトラップ準位に捕捉され、熱等のエネルギーにより開放され、その後のX線信号に混ざって読み出されることに由来する。言い換えると、第1のFPDにおいて、意図しないタイミングで電荷がX線信号に混ざって読み出される。このため、長時間の第2のFPDを使用した後の第1のFPDによる広視野の透視画像上には、第1の光検出器106aの電気信号の残存成分に由来する、焼きつきの様なパターンを示すアーチファクトが生じる。このようなアーチファクトは、例えば、10秒前後の間現れることがある。なお、一方、X線コリメータの絞り羽根によりX線の入射が遮られている第2のFPDの視野サイズ外にはこのようなアーチファクトは現れない。
【0028】
このため、次の手技にて視野の広い第1の光検出器106a側の第1のFPDが選択された際に、X線コリメータによる第1のFPD上の照射履歴の違いに応じたパターンが焼き付いた様な画像が得られる。例えば、第1のFPDの透視画像上には、X線コリメータの羽根形状の焼きつきの様なパターンが発生する場合がある。
図3の右図上側に示す第1の画像には、第2のFPDで画像を収集後、第1のFPDに切替えて、画像を収集した時に、X線コリメータの羽根の形状のアーチファクトが現れている様子を示す。なお、第1の画像の電気信号の残存成分に由来する、この焼きつきの様なパターンをゴーストアーチファクトと呼ぶこととする。言い換えると、ゴーストアーチファクトは、第1の光検出器106aの電気信号の残存成分に由来する。
【0029】
ところで、CMOSは特性上、フォトダイオードにおいて生成された電荷のトラップが少なく、ゴーストアーチファクトが、第1のFPDに使用されているアモルファスシリコンTFTよりかなり発生しにくい。このため、第1のFPD画像の第2のFPDの視野に相当する領域を補正する際は、X線線量履歴による変化の発生が無い、第2のFPD画像を参照してもよいものである。
【0030】
そこで、第1の実施形態に係るX線診断装置100は、第1の光検出器106aにより出力された電気信号から生成された第1の画像をモニタ109に表示する際に、第2の光検出器106bにより出力された電気信号から生成された第2の画像の情報を用いて第1の画像を補正する。このような補正処理は、X線画像収集装置110によって実行される。以下では、
図4を用いて、X線画像収集装置110による補正処理の詳細について説明する。なお、X線画像収集装置110は、制御部の一例である。
【0031】
図4は、第1の実施形態に係るX線画像収集装置110の構成例を示すブロック図である。なお、
図4では説明の便宜上、X線源103、X線検出器106、X線検出器制御装置120、モニタ109、入力インターフェース130についても図示している。なお、
図2に示す例では、X線検出器106は、第1の光検出器106aと、第2の光検出器106bと、シンチレータ106cとを有する場合について説明したが、実際には
図4に示すように、映像信号増幅回路やA/D(Analog to Digital)変換回路を有する。また、第2の光検出器106bでは、各素子部に、A/D変換回路や映像信号増幅回路を有するように構成されてもよい。かかる場合、第2の光検出器106bは、蓄積した電気信号をデジタル信号に変換してから増幅し、増幅したデジタル信号を出力する。これにより、第2の光検出器106bは、ノイズを低減した電気信号を出力することが可能となる。なお、
図4に示すように、X線検出器106において、第1のFPDが第2のFPDよりX線源103側に設けられる。
【0032】
また、X線検出器106は、駆動制御回路106f及び映像信号処理回路106gを有する。駆動制御回路106fは、X線検出器制御装置120の制御下で第1の光検出器106a及び第2の光検出器106bの駆動タイミングを制御する。映像信号処理回路106gは、第1の光検出器106aから出力された電気信号を収集して、X線検出器制御装置120に出力し、第2の光検出器106bから出力された電気信号を収集して、X線検出器制御装置120に出力する。
【0033】
また、
図4に示す例では、X線検出器制御装置120からX線画像収集装置110への画像の伝達は、第1の画像用と、第2の画像用とにそれぞれデータ線を設けたパラレル方式であるものとして説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線検出器制御装置120からX線画像収集装置110への画像の伝達は、第1の画像用と、第2の画像用とでデータ線が共用されるシリアル方式でもよい。
【0034】
第1の実施形態に係るX線画像収集装置110は、
図4に示すように、FPD制御回路201と、画像処理回路202と、ディスク203と、ディスク204と、ゴーストアーチファクト補正回路210とを有する。
【0035】
FPD制御回路201は、X線検出器制御装置120を介して、X線検出器106による電気信号の読み出しのタイミングを制御する。画像処理回路202は、X線検出器制御装置120により出力された画像データに対して画像処理を施す。ディスク203は、X線画像を記憶する。例えば、ディスク203は、HDD(Hard Disk Drive)であり、第2の画像を記憶する。ディスク204は、X線画像を記憶する。例えば、ディスク204は、HDDであり、第1の画像を記憶する。入力インターフェース130は、操作者から指示を受け付けて、切替Cを制御する。ここで、入力インターフェース130が、切替Cをa側に倒した場合、画像処理回路202は、第1の画像を表示する。また、入力インターフェース130が、切替Cをb側に倒した場合、画像処理回路202は、第2の画像を表示する。なお、
図4に示す例では、X線画像収集装置110内には、第2の画像用のディスク203と、第1の画像用のディスク204とを有する場合について説明するが、第1の画像と第2の画像とで1つのディスクを共有するようにしてもよい。
【0036】
ゴーストアーチファクト補正回路210は、ゴーストアーチファクトが生じたか否かを判定する。例えば、ゴーストアーチファクト補正回路210は、第1の光検出器106aと第2の光検出器106bとの感度比に応じた係数を第2の画像の画素値に乗じた画素値と、第1の画像の画素値との差分値を算出し、算出した差分値が設定された閾値以上である場合に、ゴーストアーチファクトが生じたと判定する。ここで、ゴーストアーチファクト補正回路210は、第2のFPDの視野サイズに相当する第1のFPDの視野領域の画素に対して、後述する判定処理を実行する。かかる場合、X線画像収集装置110では、
図4中に示す切替Aがa側に倒れて、第2のFPDの視野サイズに相当する第1のFPDの視野領域の画素が、ゴーストアーチファクト補正回路210に入力される。そして、ゴーストアーチファクト補正回路210は、判定処理を実行する。また、X線画像収集装置110では、第1のFPD画像の処理領域が第2のFPDの視野サイズ外となった時、切替Aがb側に倒れて、オリジナルの第1のFPD画像が、判定処理されること無く画像処理回路202に入力される。このゴーストアーチファクト補正回路210は、例えば、FPDゲイン換算係数記憶回路211と、閾値記憶回路212と、リサイズ回路213と、判定回路214と、乗算回路215とを有する。
【0037】
FPDゲイン換算係数記憶回路211は、第1の光検出器106aと第2の光検出器106bとの感度比に応じた係数を記憶する。閾値記憶回路212は、判定回路214によって用いられる閾値を記憶する。
【0038】
乗算回路215は、FPDゲイン換算係数記憶回路211に記憶されている係数を読み出して、第2の画像に読み出した係数を乗算する。このように、乗算回路215は、X線線量履歴による変化の発生が無い第2のFPD画像に第1の光検出器106aと第2の光検出器106bとの感度比に応じた係数を乗じることで、X線線量履歴に変化の無い状態での第1のFPD画像の画素値を算出する。乗算回路215は、乗算後の第2の画像をリサイズ回路213に受け渡す。
【0039】
リサイズ回路213は、第1の画像の画素値と第2の画像の画素値とを比較する場合、第2の画像の画素ピッチを補正する。第2のFPDは第1のFPDより画素ピッチが細かく高解像度である。このため、リサイズ回路213は、第1の画像と第2の画像とにおける同位置の画素値を比較するために、第2のFPD画像の画素ピッチが第1のFPD画像の画素ピッチと一致するように補正する。リサイズ回路213は、リサイズ後の第2の画像を判定回路214に受け渡す。
【0040】
判定回路214は、第1の光検出器106aと第2の光検出器106bとの感度比に応じた係数を第2の画像の画素値に乗じた画素値と、第1の画像の画素値との差分値を算出し、算出した差分値が設定された閾値より大きいか否かを判定する。言い換えると、判定回路214は、X線線量履歴に変化の無い状態での第1のFPD画像の画素値と、実際の第1のFPD画像の画素値との差分値を算出し、算出した差分値が設定された閾値より大きいか否かを判定する。そして、判定回路214は、第1の光検出器106aと第2の光検出器106bとの感度比に応じた係数を第2の画像の画素値に乗じた画素値と、第1の画像の画素値との差が閾値以上である場合に、アーチファクトが生じたと判定する。かかる場合、切替Bがa側に倒れて、第2のFPD画像から得られた画素値が、第1のFPD画像から得られた画素値に置き換えて画像処理回路202に入力される。
【0041】
画像処理回路202は、第1のFPD画像に必要となる画像処理を別途適用し、ディスク204に記憶させる傍ら、モニタ109に第1のFPD画像を表示させる。ここで、現在表示させたい画像として第1のFPD画像が入力インターフェース130よりユーザから指定されているので、切替Cがa側に倒される。一方、入力インターフェース130から、第2のFPDによる手技がユーザにより選択されている際は、画像処理回路202は、第2のFPD画像をモニタ109に表示させる。かかる場合、切替Cがb側に倒される。なお、上述した実施形態では、ゴーストアーチファクトが、X線コリメータの羽根である場合を示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。またX線コリメータの羽根の位置は、第2のFPDの視野サイズ以下であれば、羽根のゴーストアーチファクトは同様にして補正可能である。
【0042】
図5は、第1の実施形態に係るX線画像収集装置110による処理手順を示すフローチャートである。
図5では、X線画像収集装置110全体の動作を説明するフローチャートを示し、各構成要素がフローチャートのどのステップに対応するかを説明する。なお、
図5に示す処理は、第2の画像を収集時に第1の画像への変更を受け付けた場合にリアルタイムで実行されるものとして説明する。
【0043】
ステップS101は、X線画像収集装置110により実現されるステップである。ステップS101では、X線画像収集装置110は、第1の画像の処理領域が第2のFPDの視野サイズ内であるか否かを判定する。ここで、X線画像収集装置110は、第1の画像の処理領域が第2のFPDの視野サイズ内であると判定しなかった場合(ステップS101、No)、処理を終了する。一方、X線画像収集装置110は、第1の画像の処理領域が第2のFPDの視野サイズ内であると判定した場合(ステップS101、Yes)ステップS102に移行する。
【0044】
ステップS102は、ゴーストアーチファクト補正回路210の乗算回路215により実現されるステップである。ステップS102では、乗算回路215は、第2の画像に係数を乗算する。
【0045】
ステップS103は、ゴーストアーチファクト補正回路210のリサイズ回路213により実現されるステップである。ステップS103では、リサイズ回路213は、第2の画像をリサイズする。すなわち、リサイズ回路213は、第2の画像を拡大して、第2の画像の画素ピッチを第1の画像の画素ピッチに一致させる。
【0046】
ステップS104は、ゴーストアーチファクト補正回路210の判定回路214により実現されるステップである。ステップS104では、判定回路214は、第2の画像の画素値と、第1の画像の画素値との差分値を算出する。
【0047】
ステップS105は、ゴーストアーチファクト補正回路210の判定回路214により実現されるステップである。ステップS105では、判定回路214は、差分値が閾値を超えたか否かを判定する。ここで、判定回路214は、差分値が閾値を超えたと判定しなかった場合(ステップS105、No)、処理を終了する。一方、判定回路214は、差分値が閾値を超えたと判定した場合(ステップS105、Yes)、ステップS106に移行する。
【0048】
ステップS106は、X線画像収集装置110の画像処理回路202により実現されるステップである。ステップS106では、画像処理回路202は、第2の画像から得られた画素値を使用して、第1の画像を補正する。
【0049】
上述したように、第1の実施形態では、第2の光検出器106bは、電気信号の残存成分が第1の光検出器106aよりも少ない。すなわち、第2の光検出器106bは、電気信号の残存成分に由来するアーチファクトが生じない。そして、第1の実施形態では、X線画像収集装置110は、モニタ109に表示させる画像を第2の画像から第1の画像に変更した際に、電気信号の残存成分に由来するアーチファクトが第1の画像に生じた場合に、第2の画像から得られた画素値を用いて第1の画像を補正する。この結果、第1の実施形態によれば、例えば、ゴーストアーチファクトの発生の無い画像を提供することが可能になる。
【0050】
なお、上述した第1の実施形態では、第2の光検出器106bがCMOSトランジスタを採用した2次元のイメージセンサを備えるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第2の光検出器106bのイメージセンサには、フォトダイオード内において生成された電荷のトラップが少ない特性を有するアモルファスシリコンが適用されてもよい。
【0051】
(第1の実施形態の変形例)
なお、上述した第1の実施形態では、第1のFPD画像から得られた画素値を第2のFPD画像から得られた画素値に置き換えて補正する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第2のFPD画像から得られた画素値に基づく補正値を使用して、第1のFPD画像から得られた画素値を補正してもよい。かかる場合、画像処理回路202には、第1のFPD画像と第2のFPD画像とが入力される。ここで、第1のFPD画像にアーチファクトが生じた場合、画像処理回路202に入力される第2のFPD画像の画素値は、アーチファクトが生じなかった場合の第1のFPD画像の画素値に相当する。そこで、画像処理回路202は、第2のFPD画像の画素値から第1のFPD画像の画素値を減算した値を補正値として算出する。そして、画像処理回路202は、第1のFPD画像の画素値から、算出した補正値を減算して、第1のFPD画像を補正する。
【0052】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、モニタ109に表示させる画像を第2の画像から第1の画像に変更した際に、第1の画像に電気信号の残存成分に由来するアーチファクトが生じた場合に、第2の画像から得られた画素値を用いて第1の画像を補正する場合について説明した。ところで、X線診断装置100において、第2のFPDより若干広い視野でのDSA(Digital Subtraction Angiography)撮影が第1のFPDを使用して実施される場合がある。
【0053】
かかる場合、DSA手技時のマスク画像収集時とコントラスト画像収集時との間で被検者の動きによるモーションアーチファクトが発生した場合、マスク画像とコントラスト画像との間で対応する画素がシフトする。
図6は、第2の実施形態を説明するための図である。
【0054】
図6では、入力インターフェース130よりユーザから第1のFPD画像が指定されて、操作者が第1の画像を見ながらDSAの手技が行われた場合を示す。
図6の左図は、X線源103及びX線検出器106を示す。かかる場合、第1のFPD及び第2のFPDは、電気信号をそれぞれ出力する。
【0055】
図6の右図上側では、第1のFPDにより出力された電気信号から生成されたマスク画像とコントラスト画像とを示す。ここで、マスク画像とコントラスト画像との間のピクセルシフト量を算出する際に、使用する1画素のサイズが大きいため、十分な補正精度が得られない場合がある。
【0056】
ところで、
図6の右図下側に示すように、マスク画像とコントラスト画像との間のピクセルシフト量を算出する際に、細かいピクセルサイズを持つ第2の画像を使用することでマスク像とコントラスト像とのズレをより正確に測定できるので、ピクセルシフト量をより正確に算出することが可能である。そこで、第2の実施形態では、第1のFPD画像が指定されてDSA手技が行われた際に、マスク画像とコントラスト画像との間のモーションアーチファクトを第2のFPD画像を用いて補正する場合について説明する。
【0057】
なお、第2の実施形態に係るX線診断装置100の全体構成は、X線画像収集装置110aが第1の実施形態に係るX線画像収集装置110と異なる機能を有する点を除いて、
図1に示した構成例と同様であるので、ここでは説明を省略する。なお、X線画像収集装置110aは、制御部の一例である。
図7は、第2の実施形態に係るX線画像収集装置110aの構成例を示すブロック図である。なお、
図7では説明の便宜上、X線源103、X線検出器106、X線検出器制御装置120、モニタ109、入力インターフェース130についても図示している。なお、
図7に示すように、X線検出器106において、第1のFPDが第2のFPDよりX線源103側に設けられる。
【0058】
また、
図7に示す例では、X線検出器制御装置120からX線画像収集装置110aへの画像の伝達は、第1の画像用と、第2の画像用とにそれぞれデータ線を設けたパラレル方式であるものとして説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線検出器制御装置120からX線画像収集装置110への画像の伝達は、第1の画像用と、第2の画像用とでデータ線が共用されるシリアル方式でもよい。
【0059】
第2の実施形態に係るX線画像収集装置110aは、
図7に示すように、FPD制御回路201と、ディスク203と、ディスク204と、UI制御回路205と、モーションアーチファクト補正回路220とを有する。
【0060】
FPD制御回路201は、X線検出器制御装置120を介して、X線検出器106による電気信号の読み出しのタイミングを制御する。ディスク203は、X線画像を記憶する。例えば、ディスク203は、HDDであり、第2の画像を記憶する。ディスク204は、X線画像を記憶する。例えば、ディスク204は、HDDであり、第1の画像を記憶する。なお、
図7に示す例では、X線画像収集装置110a内には、第2の画像用のディスク203と、第1の画像用のディスク204とを有する場合について説明するが、第1の画像と第2の画像とで1つのディスクを共有するようにしてもよい。
【0061】
入力インターフェース130は、操作者から指示を受け付けて、受け付けた指示をUI制御回路205に受け渡す。UI制御回路205は、入力インターフェース130からモーションアーチファクト補正処理を実行する指示を受け付けて、モーションアーチファクト補正回路220にモーションアーチファクト補正処理を実行させる。
【0062】
モーションアーチファクト補正回路220は、第1の画像をモニタ109に表示する場合、第2の画像を用いてシフト量を算出し、算出したシフト量を用いて第1の画像を補正する。かかる場合、X線画像収集装置110aでは、
図7中に示すピクセルシフトON/OFFスイッチは、入力インターフェース130からユーザコマンドを受け付けたUI制御回路205により、b側に倒される。このモーションアーチファクト補正回路220は、リサイズ係数記憶回路221と、ピクセルシフト量演算回路222と、ピクセルシフト量適用回路223と、画像処理回路224と、リサイズ回路225とを有する。
【0063】
リサイズ係数記憶回路221は、視野サイズに応じた係数を記憶する。ピクセルシフト量演算回路222は、第2の画像を用いてシフト量を算出する。例えば、第2のFPDの画像もX線画像収集装置110aに同時に入力されているため、ピクセルシフト量演算回路222は、第2のFPDの画像を使用して、ピクセルピッチが細かくより精度の高い被検者の動きを算出する。より具体的には、ピクセルシフト量演算回路222は、マスク画像収集時に収集された第2の画像と、コントラスト画像収集時に取得された第2の画像とを用いて、シフト量を算出する。
【0064】
リサイズ回路225は、第2の画像の画素ピッチを視野サイズに応じた係数を乗じて補正し、シフト量を算出する。例えば、第1の画像と第2の画像とではピクセルピッチが異なる。このため、ピクセルシフト量演算回路222によって算出されたシフト量を第1のFPD画像に適用する際には、第1の画像と第2の画像とのピクセルピッチの違いによる画像サイズの違いを補正する必要がある。そこで、リサイズ回路225は、選択した視野サイズに応じた係数を乗じる処理により、ピクセルピッチの違いを補正したシフト量を求める。
【0065】
ピクセルシフト量適用回路223は、求められたシフト量を第1の画像に適用する。例えば、ピクセルシフト量適用回路223は、求められたシフト量を用いて、第1の画像のマスク画像又はコントラスト画像を補正する。ここで、第1のFPDの画像における視野サイズは第2のFPDの視野サイズより広いが、中心部で算出した値をシフト量とし、ピクセルシフト量適用回路223は、算出したシフト量をそのまま周辺部位にも適用可能である。或いは、ピクセルシフト量適用回路223は、第2のFPDの視野内の画像中心部から得られたシフト量変移特性から、第2のFPDの視野外でのシフト量を近似し、この近似した第2のFPDの視野外でのシフト量を第1の画像に適用するようにしてもよい。
【0066】
画像処理回路224は、モニタ109に画像を表示させる。例えば、画像処理回路224は、操作者が第1の画像を見ながらDSAの手技が行われた場合に、第1の画像を表示する場合には、第2の画像を用いてモーションアーチファクトが補正された第1の画像をモニタ109に表示させる。なお、画像処理回路224は、第2の画像を表示する場合には、ディスク203から第2の画像を読み出して、モニタ109に表示させる。
【0067】
図8は、第2の実施形態に係るX線画像収集装置110aによる処理手順を示すフローチャートである。
図8では、X線画像収集装置110a全体の動作を説明するフローチャートを示し、各構成要素がフローチャートのどのステップに対応するかを説明する。なお、
図8に示す処理は、DSA手技によりマスク画像とコントラスト画像とが収集された後に実行されるものとして説明する。
【0068】
ステップS201は、UI制御回路205により実現されるステップである。ステップS201では、UI制御回路205は、モーションアーチファクトの補正処理を受け付けたか否かを判定する。ここで、UI制御回路205は、モーションアーチファクトの補正処理を受け付けたと判定しなかった場合(ステップS201、No)、ステップS201の処理を繰り返し実行する。一方、UI制御回路205は、モーションアーチファクトの補正処理を受け付けたと判定した場合(ステップS201、Yes)ステップS202に移行する。
【0069】
ステップS202は、モーションアーチファクト補正回路220のピクセルシフト量演算回路222により実現されるステップである。ステップS202では、ピクセルシフト量演算回路222は、第2の画像を用いてシフト量を算出する。
【0070】
ステップS203は、モーションアーチファクト補正回路220のリサイズ回路225により実現されるステップである。ステップS203では、リサイズ回路225は、シフト量にリサイズ係数を乗算して補正値を算出する。
【0071】
ステップS204は、モーションアーチファクト補正回路220のピクセルシフト量適用回路223により実現されるステップである。ステップS204では、ピクセルシフト量適用回路223は、第2の画像から得られた補正値を使用して、第1の画像を補正する。
【0072】
上述したように、第2の実施形態では、第2の光検出器106bは、解像度が第1の光検出器106aよりも高い。すなわち、第2の光検出器106bは、マスク画像とコントラスト画像との間のピクセルシフト量をより正確に算出することが可能である。そして、第2の実施形態では、X線画像収集装置110aは、第1の画像をモニタ109に表示する場合、第2の画像を用いてシフト量を算出し、算出したシフト量を用いて第1の画像を補正する。この結果、第2の実施形態によれば、例えば、より精度良くモーションアーチファクトが補正されたDSA画像を提供することが可能になる。
【0073】
なお、上述した第2の実施形態では、X線画像収集装置110aは、DSA手技によりマスク画像とコントラスト画像とが収集された後にモーションアーチファクトを補正する処理を実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線画像収集装置110aは、コントラスト画像を収集するごとにリアルタイムでモーションアーチファクトを補正する処理を実行してもよい。
【0074】
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
【0075】
なお、上述した実施形態では、
図4や
図7等に示すように、X線検出器106において、第1のFPDが第2のFPDよりX線源103側に設けられるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線検出器106において、第2のFPDが第1のFPDよりX線源103側に設けられてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態では、X線画像収集装置110(110a)は、各回路を有するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線画像収集装置110(110a)は、プロセッサであり、記憶回路に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、
図4に示すX線画像収集装置110や
図7に示すX線画像収集装置110aと同様の機能を実行するようにしてもよい。かかる場合、プロセッサが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路に記録されている。プロセッサは、各プログラムを記憶回路から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態のプロセッサは、
図4に示すX線画像収集装置110内や
図7に示すX線画像収集装置110a内に示された各回路と同様の各機能を有することとなる。
【0077】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図4や
図7における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0078】
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0079】
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0080】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、アーチファクトを低減することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。