(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0030】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0031】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0032】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネル領域を有しており、チャネル領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0033】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0034】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0035】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0036】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0037】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0038】
トランジスタのオフ電流は、Vgsに依存する場合がある。従って、トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを言う場合がある。トランジスタのオフ電流は、所定のVgsにおけるオフ状態、所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、または、十分に低減されたオフ電流が得られるVgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0039】
一例として、しきい値電圧Vthが0.5Vであり、Vgsが0.5Vにおけるドレイン電流が1×10
−9Aであり、Vgsが0.1Vにおけるドレイン電流が1×10
−13Aであり、Vgsが−0.5Vにおけるドレイン電流が1×10
−19Aであり、Vgsが−0.8Vにおけるドレイン電流が1×10
−22Aであるようなnチャネル型トランジスタを想定する。当該トランジスタのドレイン電流は、Vgsが−0.5Vにおいて、または、Vgsが−0.5V乃至−0.8Vの範囲において、1×10
−19A以下であるから、当該トランジスタのオフ電流は1×10
−19A以下である、と言う場合がある。当該トランジスタのドレイン電流が1×10
−22A以下となるVgsが存在するため、当該トランジスタのオフ電流は1×10
−22A以下である、と言う場合がある。
【0040】
また、本明細書等では、チャネル幅Wを有するトランジスタのオフ電流を、チャネル幅Wあたりを流れる電流値で表す場合がある。また、所定のチャネル幅(例えば1μm)あたりを流れる電流値で表す場合がある。後者の場合、オフ電流の単位は、電流/長さの次元を持つ単位(例えば、A/μm)で表される場合がある。
【0041】
トランジスタのオフ電流は、温度に依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、室温、60℃、85℃、95℃、または125℃におけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)におけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、室温、60℃、85℃、95℃、125℃、当該トランジスタが含まれる半導体装置の信頼性が保証される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0042】
トランジスタのオフ電流は、ドレインとソースの間の電圧Vdsに依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V,3V、3.3V、10V、12V、16V、または20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVdsにおけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V,3V、3.3V、10V、12V、16V、20V、当該トランジスタが含まれる半導体装置の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVds、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0043】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0044】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0045】
また、本明細書等において、トランジスタのしきい値電圧とは、トランジスタにチャネルが形成されたときのゲート電圧(Vg)を指す。具体的には、トランジスタのしきい値電圧とは、ゲート電圧(Vg)を横軸に、ドレイン電流(Id)の平方根を縦軸にプロットした曲線(Vg−√Id特性)において、最大傾きである接線を外挿したときの直線と、ドレイン電流(Id)の平方根が0(Idが0A)との交点におけるゲート電圧(Vg)を指す場合がある。あるいは、トランジスタのしきい値電圧とは、チャネル長をL、チャネル幅をWとし、Id[A]×L[μm]/W[μm]の値が1×10
−9[A]となるゲート電圧(Vg)を指す場合がある。
【0046】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が十分に低い場合は、「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書等に記載の「半導体」は、「絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本明細書等に記載の「絶縁体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。または、本明細書等に記載の「絶縁体」を「半絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある。
【0047】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が十分に高い場合は、「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書等に記載の「半導体」は、「導電体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本明細書等に記載の「導電体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。
【0048】
また、本明細書等において、半導体の不純物とは、半導体膜を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより、半導体にDOS(Density of States)が形成されることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体を有する場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンを有する場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
【0049】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置及び半導体装置の作製方法について、
図1乃至
図11を参照して説明する。
【0050】
<1−1.半導体装置の構成例1>
図1(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の上面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、
図1(C)は、
図1(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。なお、
図1(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ100の構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また、一点鎖線X1−X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても
図1(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
【0051】
トランジスタ100は、基板102上の導電膜104と、基板102及び導電膜104上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108上の導電膜112aと、酸化物半導体膜108上の導電膜112bと、を有する。また、トランジスタ100上、具体的には、酸化物半導体膜108、導電膜112a、及び導電膜112b上には、絶縁膜114と、絶縁膜114上の絶縁膜116と、絶縁膜116上の絶縁膜118とが形成されている。
【0052】
なお、トランジスタ100は、所謂チャネルエッチ型のトランジスタである。
【0053】
また、酸化物半導体膜108は、絶縁膜106上の酸化物半導体膜108_1と、酸化物半導体膜108_1上の酸化物半導体膜108_2と、を有する。なお、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2は、それぞれ同じ元素を有する。例えば、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2は、それぞれ独立に、Inと、M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、Znと、を有すると好ましい。
【0054】
また、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2は、それぞれ独立に、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有すると好ましい。一例としては、酸化物半導体膜108_1のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=4:2:3近傍とすると好ましい。また、酸化物半導体膜108_2のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=4:2:3近傍とすると好ましい。ここで、近傍とは、Inが4の場合、Mが1.5以上2.5以下であり、且つZnが2以上4以下を含む。このように、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2を概略同じ組成とすることで、同じスパッタリングターゲットを用いて形成できるため、製造コストを抑制することが可能である。また、同じスパッタリングターゲットを用いる場合、同一チャンバーにて真空中で連続して酸化物半導体膜108_1及び酸化物半導体膜108_2を成膜することができるため、酸化物半導体膜108_1と、酸化物半導体膜108_2との界面に不純物が取り込まれるのを抑制することができる。
【0055】
酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2が、それぞれ独立に、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有することで、トランジスタ100の電界効果移動度を高くすることができる。具体的には、トランジスタ100の電界効果移動度が50cm
2/Vsを超える、さらに好ましくはトランジスタ100の電界効果移動度が100cm
2/Vsを超えることが可能となる。
【0056】
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートドライバに用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)表示装置を提供することができる。また、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、表示装置が有する信号線からの信号の供給を行うソースドライバ(とくに、ソースドライバが有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、表示装置に接続される配線数が少ない表示装置を提供することができる。
【0057】
一方で、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2が、それぞれ独立に、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有していても、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2それぞれの結晶性が高い場合、電界効果移動度が低くなる場合がある。
【0058】
しかしながら、本発明の一態様の半導体装置においては、酸化物半導体膜108_1は、酸化物半導体膜108_2よりも結晶性が低い領域を有する。なお、酸化物半導体膜108の結晶性としては、例えば、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)を用いて分析する、あるいは、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて分析することで解析できる。
【0059】
酸化物半導体膜108_1が結晶性の低い領域を有する場合、以下の優れた効果を有する。
【0060】
まず、酸化物半導体膜108中に形成されうる酸素欠損について説明を行う。
【0061】
酸化物半導体膜108に形成される酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。例えば、酸化物半導体膜108中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合し、キャリア供給源となる。酸化物半導体膜108中にキャリア供給源が生成されると、酸化物半導体膜108を有するトランジスタ100の電気特性の変動、代表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。したがって、酸化物半導体膜108においては、酸素欠損が少ないほど好ましい。
【0062】
そこで、本発明の一態様においては、酸化物半導体膜108近傍の絶縁膜、具体的には、酸化物半導体膜108の上方に形成される絶縁膜114、116が過剰酸素を含有する構成である。絶縁膜114、116から酸化物半導体膜108へ酸素または過剰酸素を移動させることで、酸化物半導体膜中の酸素欠損を低減することが可能となる。
【0063】
ここで、
図11(A)(B)を用いて、酸化物半導体膜108中に拡散する酸素または過剰酸素の経路について説明する。
図11(A)(B)は、酸化物半導体膜108中に拡散する酸素または過剰酸素の拡散経路を表す概念図であり、
図11(A)はチャネル長方向の概念図であり、
図11(B)はチャネル幅方向の概念図である。
【0064】
絶縁膜114、116が有する酸素または過剰酸素は、上方側から、すなわち酸化物半導体膜108_2を通過して、酸化物半導体膜108_1に拡散する(
図11(A)(B)に示すRoute 1)。
【0065】
あるいは、絶縁膜114、116が有する酸素または過剰酸素は、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2それぞれの側面から酸化物半導体膜108中に拡散する(
図11(B)に示すRoute 2)。
【0066】
例えば、
図11(A)(B)に示すRoute 1の場合、酸化物半導体膜108_2の結晶性が高い場合、酸素または過剰酸素の拡散を阻害する場合がある。一方で、
図11(B)に示すRoute 2の場合、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2それぞれの側面から、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2に酸素または過剰酸素を拡散させることが可能となる。
【0067】
また、
図11(B)に示すRoute 2の場合、酸化物半導体膜108_1の結晶性が、酸化物半導体膜108_2の結晶性よりも低い領域を有するため、当該領域が過剰酸素の拡散経路となり、酸化物半導体膜108_1よりも結晶性の高い酸化物半導体膜108_2にも過剰酸素を拡散させることができる。なお、
図11(A)(B)中には、図示しないが、絶縁膜106が酸素または過剰酸素を有する場合、絶縁膜106からも酸化物半導体膜108中に酸素または過剰酸素が拡散しうる。
【0068】
このように、本発明の一態様の半導体装置においては、結晶構造が異なる酸化物半導体膜の積層構造とし、結晶性の低い領域を過剰酸素の拡散経路とすることで、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0069】
なお、酸化物半導体膜108を結晶性が低い酸化物半導体膜のみで構成する場合、バックチャネル側、すなわち酸化物半導体膜108_2に相当する領域に不純物(例えば、水素または水分など)の付着、または不純物が混入することにより、信頼性が悪くなる場合がある。
【0070】
酸化物半導体膜108に混入する水素または水分などの不純物は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。したがって、酸化物半導体膜108においては、水素または水分などの不純物が少ないほど好ましい。
【0071】
そこで、本発明の一態様において、酸化物半導体膜の上層の酸化物半導体膜の結晶性を高めることで、酸化物半導体膜108に混入しうる不純物を抑制することができる。特に、酸化物半導体膜108_2の結晶性を高めることで、導電膜112a、112bを加工する際のダメージを抑制することができる。酸化物半導体膜108の表面、すなわち酸化物半導体膜108_2の表面は、導電膜112a、112bの加工の際のエッチャントまたはエッチングガスに曝される。しかしながら、酸化物半導体膜108_2は、結晶性が高い領域を有するため、結晶性が低い酸化物半導体膜108_1と比較してエッチング耐性に優れる。したがって、酸化物半導体膜108_2は、エッチングストッパとして機能する。
【0072】
なお、酸化物半導体膜108としては、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を用いることで、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。なお、酸化物半導体膜中の不純物としては、代表的には水、水素などが挙げられる。本明細書等において、酸化物半導体膜中から水及び水素を低減または除去することを、脱水化、脱水素化と表す場合がある。また、酸化物半導体膜、または酸化物絶縁膜中に酸素を添加することを、加酸素化と表す場合があり、加酸素化され且つ化学量論的組成よりも過剰の酸素を有する状態を過酸素化状態と表す場合がある。
【0073】
高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×10
6μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10
−13A以下という特性を得ることができる。
【0074】
また、酸化物半導体膜108_1は、酸化物半導体膜108_2よりも結晶性が低い領域を有することで、キャリア密度が高くなる場合がある。
【0075】
また、酸化物半導体膜108_1のキャリア密度が高くなると、酸化物半導体膜108_1の伝導帯に対してフェルミ準位が相対的に高くなる場合がある。これにより、酸化物半導体膜108_1の伝導帯の下端が低くなり、酸化物半導体膜108_1の伝導帯下端と、ゲート絶縁膜(ここでは、絶縁膜106)中に形成されうるトラップ準位とのエネルギー差が大きくなる場合がある。該エネルギー差が大きくなることにより、ゲート絶縁膜中にトラップされる電荷が少なくなり、トランジスタのしきい値電圧の変動を小さくできる場合がある。また、酸化物半導体膜108_1のキャリア密度が高くなると、酸化物半導体膜108の電界効果移動度を高めることができる。
【0076】
また、酸化物半導体膜108_1は、複合酸化物半導体であると好適である。当該複合酸化物半導体については、実施の形態2にて詳細に説明する。
【0077】
なお、
図1(A)(B)(C)に示すトランジスタ100において、絶縁膜106は、トランジスタ100のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜114、116、118は、トランジスタ100の保護絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ100において、導電膜104は、ゲート電極としての機能を有し、導電膜112aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜112bは、ドレイン電極としての機能を有する。なお、本明細書等において、絶縁膜106を第1の絶縁膜と、絶縁膜114、116を第2の絶縁膜と、絶縁膜118を第3の絶縁膜と、それぞれ呼称する場合がある。
【0078】
<1−2.半導体装置の構成要素>
次に、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0079】
[基板]
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板102として用いてもよい。なお、基板102として、ガラス基板を用いる場合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置を作製することができる。
【0080】
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ100を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100は耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0081】
[導電膜]
ゲート電極として機能する導電膜104、ソース電極として機能する導電膜112a、ドレイン電極として機能する導電膜112bとしては、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)から選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成することができる。
【0082】
また、導電膜104、112a、112bには、インジウムと錫とを有する酸化物(In−Sn酸化物)、インジウムとタングステンとを有する酸化物(In−W酸化物)、インジウムとタングステンと亜鉛とを有する酸化物(In−W−Zn酸化物)、インジウムとチタンとを有する酸化物(In−Ti酸化物)、インジウムとチタンと錫とを有する酸化物(In−Ti−Sn酸化物)、インジウムと亜鉛とを有する酸化物(In−Zn酸化物)、インジウムと錫とシリコンとを有する酸化物(In−Sn−Si酸化物)、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物(In−Ga−Zn酸化物)等の酸化物導電体または酸化物半導体を適用することもできる。
【0083】
ここで、酸化物導電体について説明を行う。本明細書等において、酸化物導電体をOC(Oxide Conductor)と呼称してもよい。酸化物導電体としては、例えば、酸化物半導体に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、酸化物半導体は、導電性が高くなり導電体化する。導電体化された酸化物半導体を、酸化物導電体ということができる。一般に、酸化物半導体は、エネルギーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電体は、伝導帯近傍にドナー準位を有する酸化物半導体である。したがって、酸化物導電体は、ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して酸化物半導体と同程度の透光性を有する。
【0084】
また、導電膜104、112a、112bには、Cu−X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu−X合金膜を用いることで、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可能となる。
【0085】
また、導電膜112a、112bには、上述の金属元素の中でも、特に銅、チタン、タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。特に、導電膜112a、112bとしては、窒化タンタル膜を用いると好適である。当該窒化タンタル膜は、導電性を有し、且つ、銅または水素に対して、高いバリア性を有する。また、窒化タンタル膜は、さらに自身からの水素の放出が少ないため、酸化物半導体膜108と接する導電膜、または酸化物半導体膜108の近傍の導電膜として、最も好適に用いることができる。また、導電膜112a、112bとして、銅膜を用いると、導電膜112a、112bの抵抗を低くすることができるため好適である。
【0086】
また、導電膜112a、112bを、無電解めっき法により形成することができる。当該無電解めっき法により形成できる材料としては、例えば、Cu、Ni、Al、Au、Sn、Co、Ag、及びPdの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を用いることが可能である。特に、CuまたはAgを用いると、導電膜の抵抗を低くすることができるため、好適である。
【0087】
[ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜]
トランジスタ100のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition))法、スパッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁層を用いることができる。なお、絶縁膜106を、積層構造、または3層以上の積層構造としてもよい。
【0088】
また、トランジスタ100のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜108と接する絶縁膜106は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域(過剰酸素領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜106は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁膜106に過剰酸素領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜106を形成する、もしくは成膜後の絶縁膜106を酸素雰囲気下で熱処理すればよい。
【0089】
また、絶縁膜106として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏する。酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜106の膜厚を大きくできるため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用いることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。
【0090】
なお、本実施の形態では、絶縁膜106として、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜との積層膜を形成する。窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、酸化シリコン膜と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、トランジスタ100のゲート絶縁膜として、窒化シリコン膜を含むことで絶縁膜を厚膜化することができる。よって、トランジスタ100の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、トランジスタ100の静電破壊を抑制することができる。
【0091】
[酸化物半導体膜]
酸化物半導体膜108としては、先に示す材料を用いることができる。
【0092】
酸化物半導体膜108がIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In>Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0093】
また、上記に示す<1−1−2.半導体装置の構成例2>において、酸化物半導体膜108_2がIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≦MまたはZn≦Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6等が挙げられる。
【0094】
また、酸化物半導体膜108が、In−M−Zn酸化物の場合、スパッタリングターゲットとしては、多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いると好ましい。多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いることで、結晶性を有する酸化物半導体膜108を形成しやすくなる。なお、成膜される酸化物半導体膜108の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、酸化物半導体膜108に用いるスパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される酸化物半導体膜108の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0095】
また、酸化物半導体膜108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。
【0096】
また、酸化物半導体膜108は、非単結晶構造であると好ましい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC−OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0097】
[保護絶縁膜として機能する絶縁膜 1]
絶縁膜114、116は、トランジスタ100の保護絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜114、116は、酸化物半導体膜108に酸素を供給する機能を有する。すなわち、絶縁膜114、116は、酸素を有する。また、絶縁膜114は、酸素を透過することのできる絶縁膜である。なお、絶縁膜114は、後に形成する絶縁膜116を形成する際の、酸化物半導体膜108へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0098】
絶縁膜114としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下の酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0099】
また、絶縁膜114は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が3×10
17spins/cm
3以下であることが好ましい。これは、絶縁膜114に含まれる欠陥密度が多いと、該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜114における酸素の透過性が減少してしまう。
【0100】
なお、絶縁膜114においては、外部から絶縁膜114に入った酸素が全て絶縁膜114の外部に移動せず、絶縁膜114にとどまる酸素もある。また、絶縁膜114に酸素が入ると共に、絶縁膜114に含まれる酸素が絶縁膜114の外部へ移動することで、絶縁膜114において酸素の移動が生じる場合もある。絶縁膜114として酸素を透過することができる酸化物絶縁膜を形成すると、絶縁膜114上に設けられる、絶縁膜116から脱離する酸素を、絶縁膜114を介して酸化物半導体膜108に移動させることができる。
【0101】
また、絶縁膜114は、窒素酸化物に起因する準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形成することができる。なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、酸化物半導体膜の価電子帯の上端のエネルギー(Ev_os)と酸化物半導体膜の伝導帯の下端のエネルギー(Ec_os)の間に形成され得る場合がある。上記酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミニウム膜等を用いることができる。
【0102】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)において、窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下である。なお、アンモニアの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550℃以下の加熱処理による放出量とする。
【0103】
窒素酸化物(NO
x、xは0よりも大きく2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的にはNO
2またはNOは、絶縁膜114などに準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体膜108のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁膜114及び酸化物半導体膜108の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜114側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁膜114及び酸化物半導体膜108界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。
【0104】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜114に含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜116に含まれるアンモニアと反応するため、絶縁膜114に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁膜114及び酸化物半導体膜108の界面において、電子がトラップされにくい。
【0105】
絶縁膜114として、上記酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0106】
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上350℃未満の加熱処理により、絶縁膜114は、100K以下のESRで測定して得られたスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルが観測される。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定において約5mTである。また、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計が1×10
18spins/cm
3未満であり、代表的には1×10
17spins/cm
3以上1×10
18spins/cm
3未満である。
【0107】
なお、100K以下のESRスペクトルにおいて、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計は、窒素酸化物(NO
x、xは0より大きく2以下、好ましくは1以上2以下)起因のシグナルのスピン密度の合計に相当する。窒素酸化物の代表例としては、一酸化窒素、二酸化窒素等がある。即ち、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物の含有量が少ないといえる。
【0108】
また、上記酸化物絶縁膜は、SIMSで測定される窒素濃度が6×10
20atoms/cm
3以下である。
【0109】
基板温度が220℃以上350℃以下であり、シラン及び一酸化二窒素を用いたPECVD法を用いて、上記酸化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を形成することができる。
【0110】
絶縁膜116は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜である。上記の酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が脱離する。なお、TDSにおいて、上記の酸化物絶縁膜は、酸素の放出量が1.0×10
19atoms/cm
3以上、好ましくは3.0×10
20atoms/cm
3以上の領域を有する。また、上記の酸素の放出量は、TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上550℃以下の範囲での総量である。また、上記の酸素の放出量は、TDSにおける酸素原子に換算しての総量である。
【0111】
絶縁膜116としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上400nm以下の、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0112】
また、絶縁膜116は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が1.5×10
18spins/cm
3未満、さらには1×10
18spins/cm
3以下であることが好ましい。なお、絶縁膜116は、絶縁膜114と比較して酸化物半導体膜108から離れているため、絶縁膜114より、欠陥密度が多くともよい。
【0113】
また、絶縁膜114、116は、同種の材料の絶縁膜を用いることができるため、絶縁膜114と絶縁膜116の界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の界面は、破線で図示している。なお、本実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の2層構造について説明したが、これに限定されず、例えば、絶縁膜114の単層構造、あるいは3層以上の積層構造としてもよい。
【0114】
[保護絶縁膜として機能する絶縁膜 2]
絶縁膜118は、トランジスタ100の保護絶縁膜として機能する。
【0115】
絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。または、絶縁膜118は、窒素及びシリコンを有する。また、絶縁膜118は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜118を設けることで、酸化物半導体膜108からの酸素の外部への拡散と、絶縁膜114、116に含まれる酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜108への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。
【0116】
絶縁膜118としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。
【0117】
なお、上記記載の、導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜、金属膜などの様々な膜としては、スパッタリング法やPECVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成してもよい。熱CVD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、またはALD(Atomic Layer Deposition)法などが挙げられる。
【0118】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。また、熱CVD法としては、原料ガスをチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、基板上に膜を堆積させればよい。
【0119】
また、ALD法としては、原料ガスをチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、基板上に膜を堆積させればよい。
【0120】
<1−3.半導体装置の構成例2>
次に、
図1(A)(B)(C)に示すトランジスタ100の変形例について、
図2乃至
図6を用いて説明する。
【0121】
図2(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Aの上面図であり、
図2(B)は、
図2(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、
図2(C)は、
図2(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0122】
図2(A)(B)に示すトランジスタ100Aは、所謂チャネル保護型のトランジスタ構造である。このように、本発明の一態様の半導体装置は、チャネルエッチ型、及びチャネル保護型の双方のトランジスタ構造とすることができる。
【0123】
なお、トランジスタ100Aにおいては、絶縁膜114、116は、開口部141a、141bを有する。また、開口部141a、141bを介して酸化物半導体膜108と導電膜112a、112bとが接続されている。また、導電膜112a、112b上に絶縁膜118が形成されている。また、絶縁膜114、116は、所謂チャネル保護膜としての機能を有する。なお、トランジスタ100Aのその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様であり、同様の効果を奏する。
【0124】
また、
図3(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Bの上面図であり、
図3(B)は、
図3(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、
図3(C)は、
図3(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0125】
トランジスタ100Bは、基板102上の導電膜104と、基板102及び導電膜104上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108上の導電膜112aと、酸化物半導体膜108上の導電膜112bと、酸化物半導体膜108、導電膜112a、及び導電膜112b上の絶縁膜114と、絶縁膜114上の絶縁膜116と、絶縁膜116上の導電膜120aと、絶縁膜116上の導電膜120bと、絶縁膜116、導電膜120a、及び導電膜120b上の絶縁膜118と、を有する。
【0126】
また、絶縁膜114、116は、開口部142aを有する。また、絶縁膜106、114、116は、開口部142bを有する。導電膜120aは、開口部142bを介して、導電膜104と電気的に接続される。また、導電膜120bは、開口部142aを介して、導電膜112bと電気的に接続される。
【0127】
なお、トランジスタ100Bにおいて、絶縁膜106は、トランジスタ100Bの第1のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜114、116は、トランジスタ100Bの第2のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜118は、トランジスタ100Bの保護絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ100Bにおいて、導電膜104は、第1のゲート電極としての機能を有し、導電膜112aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜112bは、ドレイン電極としての機能を有する。また、トランジスタ100Bにおいて、導電膜120aは、第2のゲート電極としての機能を有し、導電膜120bは、表示装置の画素電極としての機能を有する。
【0128】
なお、
図3(C)に示すように、導電膜120aは、開口部142bを介して導電膜104と電気的に接続される。よって、導電膜104と、導電膜120aとは、同じ電位が与えられる。
【0129】
また、
図3(C)に示すように、酸化物半導体膜108は、導電膜104、及び導電膜120aと対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。導電膜120aのチャネル長方向の長さ、及び導電膜120aのチャネル幅方向の長さは、酸化物半導体膜108のチャネル長方向の長さ、及び酸化物半導体膜108のチャネル幅方向の長さよりもそれぞれ長く、酸化物半導体膜108の全体は、絶縁膜114、116を介して導電膜120aに覆われている。
【0130】
別言すると、導電膜104及び導電膜120aは、絶縁膜106、114、116に設けられる開口部において接続され、且つ酸化物半導体膜108の側端部よりも外側に位置する領域を有する。
【0131】
このような構成を有することで、トランジスタ100Bに含まれる酸化物半導体膜108を、導電膜104及び導電膜120aの電界によって電気的に囲むことができる。トランジスタ100Bのように、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜を、電気的に囲むトランジスタのデバイス構造をSurrounded Channel(S−Channel)構造と呼ぶことができる。
【0132】
トランジスタ100Bは、S−channel構造を有するため、第1のゲート電極として機能する導電膜104によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半導体膜108に印加することができるため、トランジスタ100Bの電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタ100Bを微細化することが可能となる。また、トランジスタ100Bは、酸化物半導体膜108が、第1のゲート電極として機能する導電膜104及び第2のゲート電極として機能する導電膜120aによって囲まれた構造を有するため、トランジスタ100Bの機械的強度を高めることができる。
【0133】
なお、導電膜120a、120bとしては、先に示す導電膜104、112a、112bに列挙した材料と同様の材料を用いることができる。特に導電膜120a、120bとしては、酸化物導電膜(OC)が好ましい。導電膜120a、120bに酸化物導電膜を用いることで、絶縁膜114、116中に酸素を添加することができる。
【0134】
なお、トランジスタ100Bのその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様であり、同様の効果を奏する。
【0135】
また、
図4(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Cの上面図であり、
図4(B)は、
図4(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、
図4(C)は、
図4(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0136】
トランジスタ100Cは、先に示すトランジスタ100Bが有する導電膜112a、112bを3層の積層構造とした構成である。
【0137】
トランジスタ100Cが有する導電膜112aは、導電膜112a_1と、導電膜112a_1上の導電膜112a_2と、導電膜112a_2上の導電膜112a_3と、を有する。また、トランジスタ100Cが有する導電膜112bは、導電膜112b_1と、導電膜112b_1上の導電膜112b_2と、導電膜112b_2上の導電膜112b_3と、を有する。
【0138】
例えば、導電膜112a_1、導電膜112b_1、導電膜112a_3、及び導電膜112b_3としては、チタン、タングステン、タンタル、モリブデン、インジウム、ガリウム、錫、及び亜鉛の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。また、導電膜112a_2及び導電膜112b_2としては、銅、アルミニウム、及び銀の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。
【0139】
より具体的には、導電膜112a_1、導電膜112b_1、導電膜112a_3、及び導電膜112b_3にIn−Sn酸化物またはIn−Zn酸化物を用い、導電膜112a_2及び導電膜112b_2に銅を用いることができる。
【0140】
上記構成とすることで、導電膜112a、112bの配線抵抗を低くし、且つ酸化物半導体膜108への銅の拡散を抑制できるため好適である。また、上記構成とすることで、導電膜112bと、導電膜120bとの接続抵抗を低くすることができるため好適である。なお、トランジスタ100Cのその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様であり、同様の効果を奏する。
【0141】
また、
図5(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Dの上面図であり、
図5(B)は、
図5(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、
図5(C)は、
図5(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0142】
トランジスタ100Dは、先に示すトランジスタ100Bが有する導電膜112a、112bを3層の積層構造とした構成である。また、トランジスタ100Dは、先に示すトランジスタ100Cが有する導電膜112a、112bと導電膜112a、112bの形状が異なる。
【0143】
トランジスタ100Dが有する導電膜112aは、導電膜112a_1と、導電膜112a_1上の導電膜112a_2と、導電膜112a_2上の導電膜112a_3と、を有する。また、トランジスタ100Cが有する導電膜112bは、導電膜112b_1と、導電膜112b_1上の導電膜112b_2と、導電膜112b_2上の導電膜112b_3と、を有する。なお、導電膜112a_1、導電膜112a_2、導電膜112a_3、導電膜112b_1、導電膜112b_2、及び導電膜112b_3としては、先に示す材料を用いることができる。
【0144】
また、導電膜112a_1の端部は、導電膜112a_2の端部よりも外側に位置する領域を有し、導電膜112a_3は、導電膜112a_2の上面及び側面を覆い、且つ導電膜112a_1と接する領域を有する。また、導電膜112b_1の端部は、導電膜112b_2の端部よりも外側に位置する領域を有し、導電膜112b_3は、導電膜112b_2の上面及び側面を覆い、且つ導電膜112b_1と接する領域を有する。
【0145】
上記構成とすることで、導電膜112a、112bの配線抵抗を低くし、且つ酸化物半導体膜108への銅の拡散を抑制できるため好適である。なお、先に示すトランジスタ100Cよりもトランジスタ100Dに示す構造とした方が、銅の拡散を好適に抑制することができる。また、上記構成とすることで、導電膜112bと、導電膜120bとの接続抵抗を低くすることができるため好適である。なお、トランジスタ100Dのその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様であり、同様の効果を奏する。
【0146】
また、
図6(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Eの上面図であり、
図6(B)は、
図6(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、
図6(C)は、
図6(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0147】
トランジスタ100Eは、先に示すトランジスタ100Dと、導電膜120a、120bの位置が異なる。具体的には、トランジスタ100Eの導電膜120a、120bは、絶縁膜118上に位置する。なお、トランジスタ100Eのその他の構成は、先に示すトランジスタ100Dと同様であり、同様の効果を奏する。
【0148】
また、本実施の形態に係るトランジスタは、上記の構造のトランジスタを、それぞれ自由に組み合わせることが可能である。
【0149】
<1−4.半導体装置の構成例3>
図1乃至
図6に示すトランジスタ100、100A、100B、100C、100D、及び100Eの別の形態を説明する。
【0150】
上述したトランジスタ100、100A、100B、100C、100D、及び100Eにおいて、酸化物半導体膜108_1のZnの原子数に対するInの原子数比は、酸化物半導体膜108_2のZnの原子数に対するInの原子数比より大きくてもよい。このような条件を満たす酸化物半導体膜108_1及び酸化物半導体膜108_2の金属元素の原子数比を以下に説明する。
【0151】
一例としては、酸化物半導体膜108_1のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=4:2:3近傍とすると好ましい。酸化物半導体膜108_2のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=1:1:1近傍とすると好ましい。ここで、近傍とは、Inが1の場合、Mが0.5以上1.5以下であり、且つZnが0.1以上2以下を含む。または、酸化物半導体膜108_2のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=5:1:6近傍とすると好ましい。ここで、近傍とは、Inが5の場合、Mが0.5以上1.5以下であり、且つZnが5以上7以下を含む。
【0152】
また、酸化物半導体膜108_1は、酸化物半導体膜108_2より電子親和力が大きく、酸化物半導体膜108_1の電子親和力と、酸化物半導体膜108_2の電子親和力との差が0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であることが好ましい。すなわち、酸化物半導体膜108_2は、酸化物半導体膜108_1よりも伝導帯下端のエネルギー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体膜108_1の伝導帯下端のエネルギー準位と、酸化物半導体膜108_2の伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であることが好ましい。
【0153】
このような構成を有することで、トランジスタ100において酸化物半導体膜108_1が主な電流経路となる。すなわち、酸化物半導体膜108_1は、チャネル領域としての機能を有する。また、酸化物半導体膜108_2は、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜108_1を構成する金属元素と同じ金属元素から構成される酸化物半導体膜で形成される。このような構成とすることで、酸化物半導体膜108_1と酸化物半導体膜108_2との界面において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてキャリアの動きが阻害されないため、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0154】
また、このような構成を有することで、トランジスタ100においてドレイン電圧の大きさに依存したしきい値電圧の変動を抑制することが可能であり、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0155】
酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2が、それぞれ独立に、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有することで、トランジスタ100の電界効果移動度を高くすることができる。具体的には、トランジスタ100の電界効果移動度が50cm
2/Vsを超える、さらに好ましくはトランジスタ100の電界効果移動度が100cm
2/Vsを超えることが可能となる。また、酸化物半導体膜108_2と比較して、Znの原子数に対するInの原子数比が大きい酸化物半導体を酸化物半導体膜108_1に用いることで、酸化物半導体膜108_1がチャネルとして機能し、主な電流経路となる。バックチャネルから電流経路を離すことが可能であるため、チャネル領域における電子トラップを低減することが可能である。この結果、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0156】
In、M、及びZnの総和に対しZnの原子数比を高めることで、酸化物半導体膜の結晶性を高めることができる。結晶性が高い酸化物半導体膜は、不純物、例えば水素もしくは水、または導電膜112a、112bに用いる構成元素が、膜中に拡散しにくい。後述するCAAC−OSはこのような機能に優れている。酸化物半導体膜108_2に含まれる金属元素の原子数比を上記範囲とすることで、酸化物半導体膜108_1及び酸化物半導体膜108_2の不純物量を低減することができる。また、酸化物半導体膜108_2を、エッチングストッパとして機能させることが可能であるため、異なるトランジスタにおいて、導電膜122a、112bのエッチングによる酸化物半導体膜108の膜厚ばらつきを低減することができる。このように、酸化物半導体膜108_1及び酸化物半導体膜108_2それぞれに含まれる金属元素、少なくともInとZnの原子数比を変えることで、トランジスタ100の電界効果移動度を向上させると共に、トランジスタ100の信頼性を高めることができる。
【0157】
<1−5−1.半導体装置の作製方法1>
次に、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Bの作製方法について、
図7乃至
図10を用いて説明する。
【0158】
なお、
図7(A)乃至
図7(C)、
図8(A)乃至
図8(C)、
図9(A)乃至
図9(C)、及び
図10(A)乃至
図10(C)は、半導体装置の作製方法を説明する断面図である。また、
図7(A)乃至
図7(C)、
図8(A)乃至
図8(C)、
図9(A)乃至
図9(C)、及び
図10(A)乃至
図10(C)において、左側がチャネル長方向の断面図であり、右側がチャネル幅方向の断面図である。
【0159】
まず、基板102上に導電膜を形成し、該導電膜をリソグラフィ工程及びエッチング工程を行い加工して、第1のゲート電極として機能する導電膜104を形成する。次に、導電膜104上に第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106を形成する(
図7(A)参照)。
【0160】
本実施の形態では、基板102としてガラス基板を用い、第1のゲート電極として機能する導電膜104として、厚さ50nmのチタン膜と、厚さ200nmの銅膜とを、それぞれスパッタリング法により形成する。また、絶縁膜106として厚さ400nmの窒化シリコン膜と、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜とをPECVD法により形成する。
【0161】
なお、上記窒化シリコン膜は、第1の窒化シリコン膜と、第2の窒化シリコン膜と、第3の窒化シリコン膜とを有する、3層積層構造である。該3層積層構造の一例としては、以下のように形成することができる。
【0162】
第1の窒化シリコン膜としては、例えば、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPE−CVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよい。
【0163】
第2の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素、及び流量2000sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが300nmとなるように形成すればよい。
【0164】
第3の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、及び流量5000sccmの窒素を原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよい。
【0165】
なお、上記第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び第3の窒化シリコン膜形成時の基板温度は350℃以下とすることができる。
【0166】
窒化シリコン膜を上述の3層の積層構造とすることで、例えば、導電膜104に銅を含む導電膜を用いる場合において、以下の効果を奏する。
【0167】
第1の窒化シリコン膜は、導電膜104からの銅元素の拡散を抑制することができる。第2の窒化シリコン膜は、水素を放出する機能を有し、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜の耐圧を向上させることができる。第3の窒化シリコン膜は、第3の窒化シリコン膜からの水素放出が少なく、且つ第2の窒化シリコン膜からの放出される水素の拡散を抑制することができる。
【0168】
次に、絶縁膜106上に酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_2_0を形成する(
図7(B)(C)参照)。
【0169】
なお、
図7(B)は、絶縁膜106上に酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_2_0を形成する際の成膜装置内部の断面模式図である。
図7(B)では、成膜装置としてスパッタリング装置を用い、当該スパッタリング装置内部に設置されたターゲット191と、ターゲット191の下方に形成されるプラズマ192とが、模式的に表されている。
【0170】
なお、
図7(B)において、絶縁膜106に添加される酸素または過剰酸素を模式的に破線の矢印で表している。例えば、酸化物半導体膜108_1_0を成膜時に酸素ガスを用いる場合、絶縁膜106中に好適に酸素を添加することができる。
【0171】
まず、絶縁膜106上に酸化物半導体膜108_1_0を形成する。酸化物半導体膜108_1_0の厚さとしては、1nm以上25nm以下、好ましくは5nm以上20nm以下とすればよい。また、酸化物半導体膜108_1_0は、不活性ガス(代表的にはArガス)及び酸素ガスのいずれか一方または双方を用いて形成される。なお、酸化物半導体膜108_1_0を形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合(以下、酸素流量比ともいう)としては、0%以上30%未満、好ましくは5%以上15%以下である。
【0172】
上記範囲の酸素流量比で酸化物半導体膜108_1_0を形成することで、酸化物半導体膜108_1_0の結晶性を酸化物半導体膜108_2_0よりも低くすることができる。
【0173】
続いて、酸化物半導体膜108_1_0上に酸化物半導体膜108_2_0を形成する。なお、酸化物半導体膜108_2_0を形成する際に、酸素ガスを含む雰囲気にてプラズマを放電させる。その際に、酸化物半導体膜108_2_0の被形成面となる酸化物半導体膜108_1_0中に酸素が添加される。なお、酸化物半導体膜108_2_0を形成する際の酸素流量比としては、30%以上100%以下、好ましくは50%以上100%以下、さらに好ましくは70%以上100%以下である。
【0174】
また、酸化物半導体膜108_2_0の厚さとしては、20nm以上100nm以下、好ましくは20nm以上50nm以下とすればよい。
【0175】
なお、上述したように酸化物半導体膜108_2_0の形成条件としては、酸化物半導体膜108_1_0よりも酸素流量比を高めると好ましい。別言すると、酸化物半導体膜108_1_0は、酸化物半導体膜108_2_0のよりも低い酸素分圧で形成されると好ましい。
【0176】
また、酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_2_0の形成時の基板温度としては、室温(25℃)以上200℃以下、好ましくは室温以上130℃以下とすればよい。基板温度を上記範囲とすることで、大面積のガラス基板(例えば、先に記載の第8世代乃至第10世代のガラス基板)を用いる場合に好適である。特に、酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_2_0の成膜時における基板温度を室温とすることで、基板の撓みまたは歪みを抑制することができる。また、酸化物半導体膜108_2_0の結晶性を高めたい場合においては、酸化物半導体膜108_2_0の形成時の基板温度を高めると好ましい。
【0177】
なお、酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_2_0を真空中で連続して形成することで、各界面に不純物が取り込まれないため、より好適である。
【0178】
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0179】
また、スパッタリング法で酸化物半導体膜を成膜する場合、スパッタリング装置におけるチャンバーは、酸化物半導体膜にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、高真空(5×10
−7Paから1×10
−4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時における、チャンバー内のH
2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧を1×10
−4Pa以下、好ましく5×10
−5Pa以下とすることが好ましい。
【0180】
本実施の形態では、酸化物半導体膜108_1_0の形成条件としては、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により形成する。また、酸化物半導体膜108_1_0の形成時の基板温度を室温とし、成膜ガスとして流量180sccmのアルゴンガスと、流量20sccmの酸素ガスを用いる(酸素流量比10%)。
【0181】
また、酸化物半導体膜108_2_0の形成条件としては、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により形成する。また、酸化物半導体膜108_2_0の形成時の基板温度を室温とし、成膜ガスとして流量200sccmの酸素ガスを用いる(酸素流量比100%)。
【0182】
酸化物半導体膜108_1_0と、酸化物半導体膜108_2_0との成膜時の酸素流量比を変えることで、結晶性の異なる積層膜を形成することができる。
【0183】
次に、酸化物半導体膜108_1_0、及び酸化物半導体膜108_2_0を所望の形状に加工することで、島状の酸化物半導体膜108_1、及び島状の酸化物半導体膜108_2を形成する。なお、本実施の形態においては、酸化物半導体膜108_1、及び酸化物半導体膜108_2により、島状の酸化物半導体膜108が構成される(
図8(A)参照)。
【0184】
また、酸化物半導体膜108を形成した後に、加熱処理(以下、第1の加熱処理とする)を行うと好適である。第1の加熱処理により、酸化物半導体膜108に含まれる水素、水等を低減することができる。なお、水素、水等の低減を目的とした加熱処理は、酸化物半導体膜108を島状に加工する前に行ってもよい。なお、第1の加熱処理は、酸化物半導体膜の高純度化処理の一つである。
【0185】
第1の加熱処理としては、例えば、150℃以上基板の歪み点未満、好ましくは200℃以上450℃以下、さらに好ましくは250℃以上350℃以下とする。
【0186】
また、第1の加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、加熱時間を短縮することが可能となる。また、第1の加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい。また、窒素または希ガス雰囲気で加熱処理した後、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱してもよい。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる水素、水等を脱離させると共に、酸化物半導体膜中に酸素を供給することができる。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる酸素欠損を低減することができる。
【0187】
次に、絶縁膜106、及び酸化物半導体膜108上に導電膜112を形成する(
図8(B)参照)。
【0188】
本実施の形態では、導電膜112として、厚さ30nmのチタン膜と、厚さ200nmの銅膜と、厚さ10nmのチタン膜とを、それぞれ順に、スパッタリング法により成膜する。
【0189】
次に、導電膜112を所望の形状に加工することで、島状の導電膜112aと、島状の導電膜112bと、を形成する(
図8(C)参照)。
【0190】
なお、本実施の形態においては、ウエットエッチング装置を用い、導電膜112を加工する。ただし、導電膜112の加工方法としては、これに限定されず、例えば、ドライエッチング装置を用いてもよい。
【0191】
また、導電膜112a、112bの形成後に、酸化物半導体膜108(より具体的には酸化物半導体膜108_2)の表面(バックチャネル側)を洗浄してもよい。当該洗浄方法としては、例えば、リン酸等の薬液を用いた洗浄が挙げられる。リン酸等の薬液を用いて洗浄を行うことで、酸化物半導体膜108_2の表面に付着した不純物(例えば、導電膜112a、112bに含まれる元素等)を除去することができる。なお、当該洗浄を必ずしも行う必要はなく、場合によっては、洗浄を行わなくてもよい。
【0192】
また、導電膜112a、112bを形成する工程、及び上記洗浄工程のいずれか一方または双方において、酸化物半導体膜108の導電膜112a、112bから露出した領域が、薄くなる場合がある。
【0193】
なお、本発明の一態様の半導体装置においては、導電膜112a、112bから露出した領域、すなわち、酸化物半導体膜108_2は結晶性が高められた酸化物半導体膜である。結晶性が高い酸化物半導体膜は、不純物、特に導電膜112a、112bに用いる構成元素が膜中に拡散しにくい構成である。したがって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0194】
また、
図8(C)において、導電膜112a、112bから露出した酸化物半導体膜108の表面、すなわち酸化物半導体膜108_2の表面に凹部が形成される場合について例示したが、これに限定されず、導電膜112a、112bから露出した酸化物半導体膜108の表面は、凹部を有していなくてもよい。
【0195】
次に、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁膜114、及び絶縁膜116を形成する(
図9(A)参照)。
【0196】
なお、絶縁膜114を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に絶縁膜116を形成することが好ましい。絶縁膜114を形成後、大気開放せず、原料ガスの流量、圧力、高周波電力及び基板温度の一以上を調整して、絶縁膜116を連続的に形成することで、絶縁膜114と絶縁膜116との界面において大気成分由来の不純物濃度を低減することができる。
【0197】
例えば、絶縁膜114として、PECVD法を用いて、酸化窒化シリコン膜を形成することができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。また、上記の堆積性気体の流量に対して酸化性気体の流量を20倍以上500倍以下、好ましくは40倍以上100倍以下とする。
【0198】
本実施の形態においては、絶縁膜114として、基板102を保持する温度を220℃とし、流量50sccmのシラン及び流量2000sccmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室内の圧力を20Paとし、平行平板電極に供給する高周波電力を13.56MHz、100W(電力密度としては1.6×10
−2W/cm
2)とするPECVD法を用いて、酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0199】
絶縁膜116としては、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上350℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm
2以上0.5W/cm
2以下、さらに好ましくは0.25W/cm
2以上0.35W/cm
2以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0200】
絶縁膜116の成膜条件として、上記圧力の反応室において上記パワー密度の高周波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜116中における酸素含有量が化学量論的組成よりも多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素の結合力が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化物絶縁膜を形成することができる。
【0201】
なお、絶縁膜116の形成工程において、絶縁膜114が酸化物半導体膜108の保護膜となる。したがって、酸化物半導体膜108へのダメージを低減しつつ、パワー密度の高い高周波電力を用いて絶縁膜116を形成することができる。
【0202】
なお、絶縁膜116の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積性気体の流量を増加することで、絶縁膜116の欠陥量を低減することが可能である。代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が6×10
17spins/cm
3未満、好ましくは3×10
17spins/cm
3以下、好ましくは1.5×10
17spins/cm
3以下である欠陥量の少ない酸化物絶縁膜を形成することができる。この結果、トランジスタ100の信頼性を高めることができる。
【0203】
また、絶縁膜114、116を成膜した後に、加熱処理(以下、第2の加熱処理とする)を行うと好適である。第2の加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる窒素酸化物を低減することができる。または、第2の加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜108に移動させ、酸化物半導体膜108に含まれる酸素欠損を低減することができる。
【0204】
第2の加熱処理の温度は、代表的には、400℃未満、好ましくは375℃未満、さらに好ましくは、150℃以上350℃以下とする。第2の加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい該加熱処理には、電気炉、RTA等を用いることができる。
【0205】
次に、絶縁膜114、116の所望の領域に開口部142a、142bを形成する(
図9(B)参照)。
【0206】
本実施の形態においては、開口部142a、142bを、ドライエッチング装置を用いて形成する。なお、開口部142aは、導電膜112bに達し、開口部142bは、導電膜104に達する。
【0207】
次に、絶縁膜116上に導電膜120を形成する(
図9(C)及び
図10(A)参照)。
【0208】
なお、
図9(C)は、絶縁膜116上に導電膜120を形成する際の成膜装置内部の断面模式図である。
図9(C)では、成膜装置としてスパッタリング装置を用い、当該スパッタリング装置内部に設置されたターゲット193と、ターゲット193の下方に形成されるプラズマ194とが、模式的に表されている。
【0209】
まず、導電膜120を形成する際に、酸素ガスを含む雰囲気にてプラズマを放電させる。その際に、導電膜120の被形成面となる絶縁膜116中に、酸素が添加される。また、導電膜120を形成する際に、酸素ガスの他に、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合させてもよい。
【0210】
酸素ガスとしては、少なくとも導電膜120を形成する際に含まれていればよく、導電膜120を形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合としては、0%より大きく100%以下、好ましくは10%以上100%以下、さらに好ましくは30%以上100%以下である。
【0211】
なお、
図9(C)において、絶縁膜116に添加される酸素または過剰酸素を模式的に破線の矢印で表している。
【0212】
本実施の形態では、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により導電膜120を形成する。
【0213】
なお、本実施の形態では、導電膜120を成膜する際に、絶縁膜116に酸素を添加する方法について例示したがこれに限定されない。例えば、導電膜120を形成後に、さらに絶縁膜116に酸素を添加してもよい。
【0214】
絶縁膜116に酸素を添加する方法としては、例えば、インジウムと、錫と、シリコンとを有する酸化物(In−Sn−Si酸化物、ITSOともいう)ターゲット(In
2O
3:SnO
2:SiO
2=85:10:5[重量%])を用いて、膜厚5nmのITSO膜を形成すればよい。この場合、ITSO膜の膜厚としては、1nm以上20nm以下、または2nm以上10nm以下とすると好適に酸素を透過し、且つ酸素の放出を抑制できるため好ましい。その後、ITSO膜を通過させて、絶縁膜116に酸素を添加する。酸素の添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等が挙げられる。また、酸素を添加する際に、基板側にバイアス電圧を印加することで効果的に酸素を絶縁膜116に添加することができる。上記バイアス電圧としては、例えば、アッシング装置を用い、該アッシング装置の基板側に印加するバイアス電圧の電力密度を1W/cm
2以上5W/cm
2以下とすればよい。また、酸素を添加する際の基板温度としては、室温以上300℃以下、好ましくは、100℃以上250℃以下とすることで、絶縁膜116に効率よく酸素を添加することができる。
【0215】
次に、導電膜120を所望の形状に加工することで、島状の導電膜120aと、島状の導電膜120bと、を形成する(
図10(B)参照)。
【0216】
本実施の形態においては、ウエットエッチング装置を用い、導電膜120を加工する。
【0217】
次に、絶縁膜116、及び導電膜120a、120b上に絶縁膜118を形成する(
図10(C)参照)。
【0218】
絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。絶縁膜118としては、例えば、窒化シリコン膜を用いると好適である。また、絶縁膜118としては、例えば、スパッタリング法またはPECVD法を用いて形成することができる。例えば、絶縁膜118をPECVD法で成膜する場合、基板温度は400℃未満、好ましくは375℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下である。絶縁膜118を成膜する場合の基板温度を、上述の範囲にすることで、緻密な膜を形成できるため好ましい。また、絶縁膜118を成膜する場合の基板温度を、上述の範囲にすることで、絶縁膜114、116中の酸素または過剰酸素を、酸化物半導体膜108に移動させることが可能となる。
【0219】
また、絶縁膜118としてPECVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリコンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いることが好ましい。窒素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモニアが解離し、活性種が発生する。該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれるシリコン及び水素の結合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素の結合が促進され、シリコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコン膜を形成することができる。一方、窒素に対するアンモニアの量が多いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒素の分解が進まず、シリコン及び水素結合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な窒化シリコン膜が形成されてしまう。これらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対する窒素の流量比を5倍以上50倍以下、10倍以上50倍以下とすることが好ましい。
【0220】
本実施の形態においては、絶縁膜118として、PECVD装置を用いて、シラン、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いて、厚さ50nmの窒化シリコン膜を形成する。流量は、シランが50sccm、窒素が5000sccmであり、アンモニアが100sccmである。処理室の圧力を100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給する。PECVD装置は電極面積が6000cm
2である平行平板型のPECVD装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると1.7×10
−1W/cm
2である。
【0221】
なお、導電膜120a、120bとして、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて導電膜を形成した場合、絶縁膜118が形成されることで、絶縁膜118が有する水素及び窒素のいずれか一方または双方が、導電膜120a、120b中に入り込む場合がある。この場合、導電膜120a、120b中の酸素欠損と、水素及び窒素のいずれか一方または双方が結合することで、導電膜120a、120bの抵抗が低くなる場合がある。
【0222】
また、絶縁膜118形成後に、先に記載の第1の加熱処理及び第2の加熱処理と同等の加熱処理(以下、第3の加熱処理とする)を行ってもよい。
【0223】
第3の加熱処理を行うことで、絶縁膜116が有する酸素は、酸化物半導体膜108中に移動し、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填する。
【0224】
以上の工程で
図3(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Bを作製することができる。
【0225】
なお、
図1(A)(B)(C)に示すトランジスタ100としては、
図9(A)に示す工程を行った後に、絶縁膜118を形成することで、作製することができる。また、
図2(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Aとしては、導電膜112a、112bと、絶縁膜114、116の形成順を変えて、且つ絶縁膜114、116に開口部141a、141bを形成する工程を追加することで、作製することができる。
【0226】
<1−5−2.半導体装置の作製方法2>
本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Bの別の作製方法について説明する。ここでは、酸化物半導体膜の構成及び作製方法が異なる。ここでは、上述した<1−4.半導体装置の構成例3>に示すような、酸化物半導体膜108_1のZnの原子数に対するInの原子数比が、酸化物半導体膜108_2のZnの原子数に対するInの原子数比より大きいトランジスタ100Bの作製工程について説明する。
【0227】
酸化物半導体膜108_1_0の形成条件としては、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により形成する。また、酸化物半導体膜108_1_0の形成時の基板温度を室温とし、成膜ガスとして流量180sccmのアルゴンガスと、流量20sccmの酸素ガスを用いる(酸素流量比10%)。
【0228】
また、酸化物半導体膜108_2_0の形成条件としては、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により形成する。また、酸化物半導体膜108_2_0の形成時の基板温度を170℃とし、成膜ガスとして流量100sccmのアルゴンガスと、流量100sccmの酸素ガスを用いる(酸素流量比50%)。
【0229】
酸化物半導体膜108_1_0と、酸化物半導体膜108_2_0との成膜時の酸素流量比を変えることで、結晶性の異なる積層膜を形成することができる。また、酸化物半導体膜108_1_0と、酸化物半導体膜108_2_0との成膜時の温度を変えることで、結晶性の異なる積層膜を形成することができる。
【0230】
また、酸化物半導体膜108_1_0より酸化物半導体膜108_2_0の結晶性を高めたい場合においては、酸化物半導体膜108_1_0より酸化物半導体膜108_2_0の形成時の基板温度を高めると好ましい。
【0231】
他の工程は、上記した<1−5−1.半導体装置の作製方法1>を適宜用いればよい。
【0232】
以上の工程により、<1−4.半導体装置の構成例3>に示すトランジスタを作製することができる。
【0233】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0234】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、本発明の一態様の酸化物半導体膜について、
図12乃至
図18を用いて説明を行う。
【0235】
<2−1.酸化物半導体膜>
酸化物半導体膜は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0236】
ここで、酸化物半導体膜が、インジウム、元素M及び亜鉛を有する場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない。なお、以下の説明において、酸化物半導体膜が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、および[Zn]とする場合がある。
【0237】
<2−2.酸化物半導体膜の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC−OS(c−axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0238】
CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、CAAC−OSは格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0239】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの多角形のナノ結晶を有する場合がある。なお、CAAC−OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界を確認することはできない。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制していることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0240】
また、CAAC−OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換し、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換し、(In,M)層と表すこともできる。
【0241】
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0242】
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a−like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、不安定な構造である。
【0243】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0244】
また、本発明の一態様における酸化物半導体膜は、複合酸化物半導体を有する。したがって、以下の説明では、酸化物半導体膜を複合酸化物半導体として表す場合がある。複合酸化物半導体を用いることで、電界効果移動度の高いトランジスタを得ることができる。複合酸化物半導体を有する酸化物半導体膜の概念図を
図12乃至
図14に示す。
【0245】
図12(A)は、酸化物半導体膜の上面(ここでは、a−b面方向と呼ぶ)の概念図であり、
図12(B)は、基板Sub.上に酸化物半導体膜が形成された断面(ここでは、c軸方向と呼ぶ)の概念図である。
【0246】
なお、
図12においては、基板上に酸化物半導体膜が形成される場合について例示したが、これに限定されず、基板と酸化物半導体膜との間に下地膜または層間膜などの絶縁膜、あるいは酸化物半導体膜などの他の半導体膜が形成されていてもよい。
【0247】
本発明の一態様の酸化物半導体膜は、
図12(A)、及び
図12(B)に示すように、領域A1と、領域B1とが、混合している構造を有する複合酸化物半導体である。
【0248】
図12(A)(B)に示す領域A1は、[In]:[M]:[Zn]=x:y:z(x>0、y≧0、z≧0)となるInが多い領域である。一方、領域B1は、[In]:[M]:[Zn]=a:b:c(a>0、b>0、c>0)となるInが少ない領域である。
【0249】
なお、本明細書において、領域A1の元素Mに対するInの原子数比が、領域B1の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、領域A1は、領域B1と比較して、Inの濃度が高いとする。従って、本明細書において、領域A1をIn−richな領域、また、領域B1をIn−poorな領域、ともいう。
【0250】
例えば、領域A1は、領域B1よりも、Inの濃度が1.1倍以上、好ましくは2倍以上10倍以下であるとよい。また、領域A1は、少なくともInを有する酸化物であればよく、元素M、およびZnは、必ずしも含まれなくともよい。
【0251】
本発明の一態様の酸化物半導体膜において、領域A1と、領域B1とが、複合体を形成している。つまり、領域A1では、キャリア移動が生じやすく、領域B1では、キャリア移動が生じにくい。そのため、本発明の一態様の酸化物半導体は、キャリア移動度が高く、かつ、スイッチング特性が高い、半導体特性が良好な材料として用いることができる。
【0252】
言い換えると、領域A1は、領域B1よりも半導体性が低く、且つ導電性が高い領域であると言うこともできる。一方、領域B1は、領域A1よりも半導体性が高く、且つ導電性が低い領域であるということもできる。ここで、半導体性が高いとは、バンドギャップが広い、スイッチング特性が良好、i型半導体に近い、などと言い換えることができる。
【0253】
一例として、
図12(A)、
図12(B)に示すように、領域A1は、a−b面方向、およびc軸方向において、粒状(クラスタともいう)に、複数存在する。なお、クラスタは、不規則に偏在していてもよい。また、複数のクラスタは、重畳した、または連なった状態となる場合がある。例えば、一つのクラスタが、他のクラスタと、重畳した形状が連なり、領域A1がクラウド状に広がって観察される場合がある。
【0254】
別言すると、領域A1に含まれるクラスタ(第1のクラスタともいう)は、領域B1に含まれるクラスタ(第2のクラスタともいう)よりも半導体性が低く、且つ導電性が高い、と言うこともできる。一方、領域B1に含まれるクラスタは、領域A1に含まれるクラスタよりも半導体性が高く、且つ導電性が低い領域であるということもできる。この構成の場合、領域B1は、第2のクラスタを複数有し、複数の第2のクラスタが、それぞれ互いに繋がる部分を有する。別言すると、領域A1が有する複数の第1のクラスタは、クラウド状にそれぞれ互いに繋がる部分を有し、領域B1が有する複数の第2のクラスタは、それぞれ互いに繋がる部分を有する。
【0255】
このように、本発明の一態様の複合酸化物半導体は、Inが高濃度の第1の領域(領域A1)と、Inが低濃度の第2の領域(領域B1)と、有し、第1の領域と、第2の領域とがクラウド状に繋がっている。あるいは、本発明の一態様の複合酸化物半導体は、Inが高濃度に広がっている第1の領域と、Inが高濃度に広がっていない第2の領域と、を有し、第1の領域と、第2の領域とがクラウド状に繋がっている。
【0256】
図12(A)(B)に示すように、領域A1がa−b面方向に互いに連結することで、領域A1が電流の経路となりうる。これにより、酸化物半導体膜の導電性を高めることができ、これを用いたトランジスタの電界効果移動度を高めることができる。
【0257】
また、
図12(A)(B)に示す領域B1は、領域A1内に、点在しているとも言える。従って、領域B1は、領域A1に立体的にはさまれている状態で存在しうる。換言すると、領域B1は、領域A1に取り囲まれた状態で存在しうる。つまり、領域B1は、領域A1に内包されている構造である。
【0258】
なお、領域A1が点在する割合は、複合酸化物半導体の作製条件、または組成により、調節することができる。例えば、領域A1の割合が少ない複合酸化物半導体、または、領域A1の割合が多い複合酸化物半導体を形成することができる。また、本発明の一態様の複合酸化物半導体は、領域B1に対し、領域A1の割合が小さいとは限らない。領域A1の割合が非常に大きい複合酸化物半導体では、観察する範囲により、領域A1内に領域B1が形成されている場合もある。また、例えば、領域A1が形成する粒状の領域のサイズは、複合酸化物半導体の作製条件、または組成により、適宜調節することができる。
【0259】
図13(A)(B)には、
図12(A)(B)と比較して領域A1の割合が少なく、領域B1の割合が多い複合酸化物半導体を示している。
【0260】
なお、複合酸化物半導体の作製条件または組成により、
図12(A)(B)よりも領域A1の割合が多く、領域B1の割合が少ない複合酸化物半導体を形成することもできる。
【0261】
ここで、全ての領域A1が、a−b面方向に連結した場合、トランジスタのスイッチング特性が悪化する、例えばトランジスタのオフ電流が上昇してしまう恐れがある。そのため、
図13(A)(B)に示すように、領域A1は、領域B1内に、点在していた方が好ましい。従って、領域A1は、領域B1に立体的にはさまれている状態で存在しうる。換言すると、領域A1は、領域B1に取り囲まれた状態で存在しうる。つまり、領域A1は、領域B1に内包されている構造である。これにより、トランジスタのスイッチング特性、特にオフ電流を低減できる。
【0262】
また、領域A1と、領域B1とは、明確な領界が観察できない場合がある。なお、領域A1及び領域B1のサイズは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を用いた、EDXマッピングにて評価することができる。例えば、領域A1のクラスタは、断面写真、または平面写真のEDXマッピングにおいて、クラスタの径が、0.1nm以上2.5nm以下で観察される場合がある。なお、好ましくはクラスタの径が、0.5nm以上1.5nm以下とする。
【0263】
このように、本発明の一態様の酸化物半導体は、領域A1と領域B1とが混合している複合酸化物半導体であり、且つ領域A1の機能と、領域B1の機能とがそれぞれ異なり、領域A1と領域B1とが相補的に機能している。例えば、元素MをGaとしたIn−Ga−Zn酸化物(以下、IGZOとする)の場合、本発明の一態様の酸化物半導体を、Complementary IGZO(略称:C/IGZO)と呼称することができる。
【0264】
一方で、例えば、領域A1と領域B1とが層状で積層された構成の場合、領域A1と領域B1との間には相互作用がない、または相互作用が起きにくいため、領域A1の機能と領域B1の機能とが、それぞれ独立に機能する場合がある。この場合、層状の領域A1によって、キャリア移動度を高くすることが出来たとしても、トランジスタのオフ電流が高くなる場合がある。したがって、上述した複合酸化物半導体、またはC/IGZOとすることで、キャリア移動度が高い機能と、スイッチング特性が良好である機能と、を同時に兼ね備えることが出来る。これは、本発明の一態様の複合体酸化物半導体で得られる優れた効果である。
【0265】
なお、領域B1は、結晶性を有する領域であってもよい。例えば、領域B1は、CAAC−OS、または複数のナノ結晶を有する。
【0266】
図14(A)には、領域B1に含まれる複数のナノ結晶を、破線で模式的に示している。ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、六角形の結晶に歪みが生じ、五角形、および七角形などの多角形のナノ結晶を有する場合がある。
【0267】
また、
図14(B)は、ナノ結晶がc軸配向性を有し、c軸がCAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)、または上面に略垂直な方向を向いていることを模式的に示している。CAAC−OSは、c軸に配向性を有する層状の結晶構造(層状構造ともいう)をとり、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した構造を有する。
【0268】
なお、インジウムと元素Mは、互いに置換する場合がある。そのため、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換し、(In,M,Zn)層と表すこともできる。その場合、In層と、(In,M,Zn)層と、が積層した層状構造となる。
【0269】
<2−3.複合酸化物半導体の原子数比>
次に、本発明の一態様の複合酸化物半導体が有する元素の原子数比について説明する。
【0270】
複合酸化物半導体において、例えば、領域A1が、In、元素M、およびZnを有する場合に、各元素の原子数比は
図15に示す相図を用いて示すことができる。In、元素M、およびZnの原子数比を、x、y、およびzを用いて、x:y:zと表す。ここで原子数比は座標(x:y:z)として図中に表すことができる。なお、
図15には、酸素の原子数比については記載しない。
【0271】
図15において、破線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):1の原子数比(−1≦α≦1)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):2の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):3の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):4の原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):5の原子数比となるラインを表す。
【0272】
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比(β≧0)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:4:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:7:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン、及び[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比となるラインを表す。
【0273】
また、
図15に示す、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比またはその近傍値の酸化物半導体は、スピネル型の結晶構造となる傾向がある。
【0274】
図15で示す領域A2は、領域A1が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。なお、領域A2は、[In]:[M]:[Zn]=(1+γ):0:(1−γ)の原子数比(−1≦γ≦1)となるライン上も含むものとする。
【0275】
図15で示す領域B2は、領域B1が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。なお、領域B2は、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4.1、およびその近傍値を含む。近傍値には、例えば、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。また、領域B2は、[In]:[M]:[Zn]=5:1:6、およびその近傍値を含む。
【0276】
領域A2は、Inの濃度が高いため、領域B2よりも、導電性が高くなり、キャリア移動度(電界効果移動度)を高める機能を有する。したがって、領域A1を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタのオン電流及びキャリア移動度を高めることができる。
【0277】
一方、領域B2は、Inの濃度が低いため、領域A2よりも、導電性が低く、リーク電流を低減する機能を有する。したがって、領域B1を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタのオフ電流を低くすることができる。
【0278】
例えば、領域A1は、非単結晶であることが好ましい。なお、領域A1が結晶性を有する場合、領域A1が、インジウムでは、正方晶系となる傾向がある。また、領域A1が、酸化インジウム([In]:[M]:[Zn]=x:0:0(x>0))では、ビックスバイト型の結晶構造となる傾向がある。また、領域A1が、In−Zn酸化物([In]:[M]:[Zn]=x:0:z(x>0、z>0))では、層状の結晶構造となる傾向がある。
【0279】
また例えば、領域B1は、非単結晶であることが好ましい。また領域B1はCAAC−OSを有することが好ましい。ただし、領域B1はCAAC−OSのみからなる必要はなく、多結晶酸化物半導体、およびnc−OS等の領域を有していてもよい。
【0280】
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC−OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC−OSを有することで、複合酸化物半導体としての物理的性質が安定するため、熱に強く、信頼性が高い複合酸化物半導体を提供することができる。
【0281】
なお、酸化物半導体をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の膜が形成される。特に、成膜時の基板温度によっては、[Zn]において、ターゲットの原子数比よりも膜の原子数比が小さくなる場合がある。
【0282】
また、本発明の一態様である複合酸化物半導体の特性は、原子数比によって一義的に定まらない。従って、図示する領域は、複合酸化物半導体が有する領域A1、および領域B1が有する好ましい原子数比を示す領域であり、境界は厳密ではない。
【0283】
<2−4.複合酸化物半導体の作製方法>
ここで、
図12(A)(B)等に示す複合酸化物半導体の作製方法の一例について説明する。本発明の一態様の複合酸化物半導体は、スパッタリング装置を用いて形成することができる。
【0284】
[スパッタリング装置]
図16(A)は、スパッタリング装置が有する成膜室2501を説明する断面図であり、
図16(B)は、スパッタリング装置が有するマグネットユニット2530a、及びマグネットユニット2530bの平面図である。
【0285】
図16(A)に示す成膜室2501は、ターゲットホルダ2520aと、ターゲットホルダ2520bと、バッキングプレート2510aと、バッキングプレート2510bと、ターゲット2502aと、ターゲット2502bと、部材2542と、基板ホルダ2570と、を有する。なお、ターゲット2502aは、バッキングプレート2510a上に配置される。また、バッキングプレート2510aは、ターゲットホルダ2520a上に配置される。また、マグネットユニット2530aは、バッキングプレート2510aを介してターゲット2502a下に配置される。また、ターゲット2502bは、バッキングプレート2510b上に配置される。また、バッキングプレート2510bは、ターゲットホルダ2520b上に配置される。また、マグネットユニット2530bは、バッキングプレート2510bを介してターゲット2502b下に配置される。
【0286】
図16(A)、および
図16(B)に示すように、マグネットユニット2530aは、マグネット2530N1と、マグネット2530N2と、マグネット2530Sと、マグネットホルダ2532と、を有する。なお、マグネットユニット2530aにおいて、マグネット2530N1、マグネット2530N2及びマグネット2530Sは、マグネットホルダ2532上に配置される。また、マグネット2530N1及びマグネット2530N2は、マグネット2530Sと間隔を空けて配置される。なお、マグネットユニット2530bは、マグネットユニット2530aと同様の構造を有する。なお、成膜室2501に基板2560を搬入する場合、基板2560は基板ホルダ2570に接して配置される。
【0287】
ターゲット2502a、バッキングプレート2510a及びターゲットホルダ2520aと、ターゲット2502b、バッキングプレート2510b及びターゲットホルダ2520bと、は部材2542によって隔離されている。なお、部材2542は絶縁体であることが好ましい。ただし、部材2542が導電体または半導体であっても構わない。また、部材2542が、導電体または半導体の表面を絶縁体で覆ったものであっても構わない。
【0288】
ターゲットホルダ2520aとバッキングプレート2510aとは、ネジ(ボルトなど)を用いて固定されており、等電位となる。また、ターゲットホルダ2520aは、バッキングプレート2510aを介してターゲット2502aを支持する機能を有する。また、ターゲットホルダ2520bとバッキングプレート2510bとは、ネジ(ボルトなど)を用いて固定されており、等電位となる。また、ターゲットホルダ2520bは、バッキングプレート2510bを介してターゲット2502bを支持する機能を有する。
【0289】
バッキングプレート2510aは、ターゲット2502aを固定する機能を有する。また、バッキングプレート2510bは、ターゲット2502bを固定する機能を有する。
【0290】
なお、
図16(A)には、マグネットユニット2530aによって形成される磁力線2580a、2580bが明示されている。
【0291】
また、
図16(B)に示すように、マグネットユニット2530aは、長方形または略長方形のマグネット2530N1と、長方形または略長方形のマグネット2530N2と、長方形または略長方形のマグネット2530Sと、がマグネットホルダ2532に固定されている構成を有する。そして、マグネットユニット2530aを、
図16(B)に示す矢印のように左右に揺動させることができる。例えば、マグネットユニット2530aを、0.1Hz以上1kHz以下のビートで揺動させればよい。
【0292】
ターゲット2502a上の磁場は、マグネットユニット2530aの揺動とともに変化する。磁場の強い領域は高密度プラズマ領域となるため、その近傍においてターゲット2502aのスパッタリング現象が起こりやすい。これは、マグネットユニット2530bについても同様である。
【0293】
<2−5.複合酸化物半導体の作製フロー>
次に、複合酸化物半導体の作製方法について説明する。
図17は、複合酸化物半導体の作製方法を説明する工程フロー図である。
【0294】
図12(A)(B)等に示す複合酸化物半導体は、少なくとも
図17に示す第1乃至第4の工程を経て作製される。
【0295】
[第1の工程:成膜室に基板を配置する工程]
第1の工程は、成膜室に基板を配置する工程を有する(
図17ステップS101参照)。
【0296】
第1の工程としては、例えば、
図16(A)に示す成膜室2501が有する基板ホルダ2570に基板2560を配置する。
【0297】
成膜時の基板2560の温度は、複合酸化物半導体の電気的な性質に影響する。基板温度が高いほど、複合酸化物半導体の結晶性を高め、信頼性を高めることができる。一方、基板温度が低いほど、複合酸化物半導体の結晶性を低くし、キャリア移動度を高めることができる。特に、成膜時の基板温度が低いほど、複合酸化物半導体を有するトランジスタにおいて、低いゲート電圧(例えば0Vより大きく2V以下)における電界効果移動度の向上が顕著となる。
【0298】
基板2560の温度としては、室温(25℃)以上200℃以下、好ましくは室温以上170℃以下、より好ましくは室温以上130℃以下とすればよい。基板温度を上記範囲とすることで、大面積のガラス基板(例えば、先に記載の第8世代乃至第10世代のガラス基板)を用いる場合に好適である。特に、複合酸化物半導体の成膜時における基板温度を室温、別言すると意図的に加熱されない状態とすることで、基板の撓みまたは歪みを抑制することができるため好適である。
【0299】
また、基板ホルダ2570に冷却機構等を設け、基板2560を冷却する構成としてもよい。
【0300】
また、基板2560の温度を100℃以上130℃以下とすることにより、複合酸化物半導体中の水を除去することができる。このように不純物である水を除去することで、電界効果移動度の向上を図りながら、信頼性の向上を図ることができる。
【0301】
また、基板2560の温度を100℃以上130℃以下として水を除去することにより、スパッタリング装置に、過剰な熱による歪みが生じることを防ぐことができる。これにより、半導体装置の生産性向上を図ることができる。よって、生産性が安定するため、大規模な生産装置を導入しやすいので、大面積の基板を用いた大型の表示装置を容易に製造することができる。
【0302】
また、基板2560の温度を高くすることで、複合酸化物半導体中の水をより効果的に除去することができるだけでなく、複合酸化物半導体の結晶性を高めることができる。例えば基板2560の温度を80℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上170℃以下の温度とすることで、結晶性の高い複合酸化物半導体を成膜できる。
【0303】
[第2の工程:成膜室にガスを導入する工程]
第2の工程は、成膜室にガスを導入する工程を有する(
図17ステップS201参照)。
【0304】
第2の工程としては、例えば、
図16(A)に示す成膜室2501にガスを導入する。当該ガスとしては、アルゴンガス及び酸素ガスのいずれか一方または双方を導入すればよい。なお、アルゴンガスに代えてヘリウム、キセノン、クリプトン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0305】
酸素ガスを用いて複合酸化物半導体を成膜する際の酸素流量比としては、以下の傾向を示す。酸素流量比が大きいほど、複合酸化物半導体の結晶性を高め、信頼性を高めることができる。一方、酸素流量比が小さいほど、複合酸化物半導体の結晶性を低くし、キャリア移動度を高めることができる。特に、酸素流量比が小さいほど、複合酸化物半導体を有するトランジスタにおいて、低いゲート電圧(例えば0Vより大きく2V以下の範囲)における電界効果移動度の向上が顕著となる。
【0306】
酸素流量比は、複合酸化物半導体の用途に応じた好ましい特性を得るために、0%以上100%以下の範囲で適宜設定することができる。
【0307】
例えば、電界効果移動度の高いトランジスタの半導体層に用いる場合には、複合酸化物半導体の成膜時における酸素流量比として、0%以上30%以下、好ましくは5%以上30%以下、さらに好ましくは7%以上15%以下とする。
【0308】
また、高い電界効果移動度と、高い信頼性が両立したトランジスタを得るためには、複合酸化物半導体の成膜時における酸素流量比を30%より大きく70%未満、好ましくは30%より大きく50%以下とする。または、複合酸化物半導体の成膜時における酸素流量比を10%以上50%以下、好ましくは30%以上50%以下とする。
【0309】
また、高い信頼性を有するトランジスタを得るためには、複合酸化物半導体の成膜時における酸素流量比を70%以上100%以下とする。
【0310】
このように、成膜時の基板温度と酸素流量比を制御することにより、所望の電気特性を実現する複合酸化物半導体を成膜することができる。例えば、基板温度を下げる(上げる)ことと、酸素流量比を下げる(上げる)ことは、それぞれ電界効果移動度に対する寄与が同等である場合がある。したがって、例えば装置上の制約から、基板温度を十分に上げることができない場合であっても、酸素流量比を高めることで、同等の電界効果移動度を有するトランジスタを実現することもできる。
【0311】
また、実施の形態1に示す方法により酸化物半導体膜中の酸素欠損、または酸化物半導体膜中の不純物の低減を図ることにより、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0312】
また、成膜時のガスの高純度化も必要である。例えば、ガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで複合酸化物半導体に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0313】
また、成膜室2501は、複合酸化物半導体にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、高真空(5×10
−7Paから1×10
−4Pa程度まで)に排気されることが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時における、成膜室2501内のH
2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧を1×10
−4Pa以下、好ましく5×10
−5Pa以下とすることが好ましい。
【0314】
[第3の工程:ターゲットに電圧を印加する工程]
第3の工程は、ターゲットに電圧を印加する工程を有する(
図17ステップS301参照)。
【0315】
第3の工程としては、例えば、
図16(A)に示すターゲットホルダ2520a及びターゲットホルダ2520bに電圧を印加する。一例としては、ターゲットホルダ2520aに接続する端子V1に印加される電位を、基板ホルダ2570に接続する端子V2に印加される電位よりも低い電位とする。また、ターゲットホルダ2520bに接続する端子V4に印加される電位を、基板ホルダ2570に接続する端子V2よりも低い電位とする。また、基板ホルダ2570に接続する端子V2に印加される電位を、接地電位とする。また、マグネットホルダ2532に接続する端子V3に印加される電位を、接地電位とする。
【0316】
なお、端子V1、端子V2、端子V3、及び端子V4に印加される電位は上記の電位に限定されない。また、ターゲットホルダ2520、基板ホルダ2570、マグネットホルダ2532の全てに電位が印加されなくても構わない。例えば、基板ホルダ2570が電気的にフローティング状態であってもよい。なお、端子V1には、印加する電位の制御が可能な電源が電気的に接続されているものとする。電源には、DC電源、AC電源、またはRF電源を用いればよい。
【0317】
また、ターゲット2502a、及びターゲット2502bとしては、インジウム、元素M(MはAl、Ga、Y、またはSn)、亜鉛、及び酸素を有するターゲットを用いると好ましい。ターゲット2502a、及びターゲット2502bの一例としては、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=5:1:7[原子数比])などを用いることができる。以下では、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いる場合について説明する。
【0318】
[第4の工程:基板上に複合酸化物半導体を堆積する工程]
第4の工程は、ターゲットから基板上に複合酸化物半導体を堆積する工程を有する(
図17ステップS401参照)。
【0319】
第4の工程としては、例えば、
図16(A)に示す成膜室2501中で、アルゴンガスまたは酸素ガスが電離し、陽イオンと電子とに分かれてプラズマを形成する。その後、プラズマ中の陽イオンは、ターゲットホルダ2520a、2520bに印加された電位によって、ターゲット2502a、2502bに向けて加速される。陽イオンがIn−Ga−Zn金属酸化物ターゲットに衝突することで、スパッタ粒子が生成され、基板2560にスパッタ粒子が堆積する。
【0320】
なお、ターゲット2502a、2502bとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1または原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:7のIn−Ga−Zn金属酸化物ターゲットを用いると、ターゲット中に組成の異なる複数の結晶粒を有している場合がある。例えば、当該複数の結晶粒は、径が10μm以下である場合が多い。また、例えば、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲット中に、Inの割合が多い結晶粒を含む場合に、先に説明の領域A1が形成される割合が増える場合がある。
【0321】
<2−6.成膜モデル>
次に、第4の工程において、
図18(A)(B)(C)に示す成膜モデルを考えことができる。
【0322】
図18(A)(B)(C)は、
図16(A)に示すターゲット2502a近傍の断面模式図である。なお、
図18(A)は使用前のターゲットの状態を表し、
図18(B)は成膜前のターゲットの状態を表し、
図18(C)は、成膜中のターゲットの状態を表す。また、
図18(A)(B)(C)には、ターゲット2502a、プラズマ2190、陽イオン2192、スパッタ粒子2504a、2506a等が明示されている。
【0323】
図18(A)においては、ターゲット2502aの表面が比較的平坦であり、且つ組成(例えば、In、Ga及びZnの組成)が一様である。一方、
図18(B)においては、事前に行うスパッタリング処理等によって、ターゲット2502aの表面に凹凸が形成され、且つ組成に偏析が生じている。当該凹凸及び当該偏析としては、事前に行うスパッタリング処理でのプラズマ(例えばArプラズマなど)によって生じうる。なお、
図18(B)には、偏析領域2504、及び偏析領域2506を示している。ここでは、偏析領域2504がGa及びZnを多く含む領域(Ga,Zn−Rich領域)とし、偏析領域2506がInを多く含む領域(In−Rich領域)とする。なお、Gaが多く含まれる偏析領域2504が形成される理由としては、GaはInよりも融点の低い材料であるため、プラズマ処理中にターゲット2502aが受ける熱により、その一部が溶解し、凝集することで偏析領域2504が形成されるためと考えられる。
【0324】
[第1のステップ]
図18(C)では、アルゴンガスまたは酸素ガスが電離し、陽イオン2192と電子(図示しない)とに分かれてプラズマ2190を形成する。その後、プラズマ2190中の陽イオン2192は、ターゲット2502a(ここではIn−Ga−Zn酸化物ターゲット)に向けて加速する。陽イオン2192がIn−Ga−Zn酸化物ターゲットに衝突することで、スパッタ粒子2504a、2506aが生成され、In−Ga−Zn酸化物ターゲットから、スパッタ粒子2504a、2506aが弾き出される。なお、スパッタ粒子2504aは、偏析領域2504から弾き出されるため、Ga,Zn−Richなクラスタを形成している場合がある。また、スパッタ粒子2506aは、偏析領域2506から弾き出されるため、In−Richなクラスタを形成している場合がある。
【0325】
また、In−Ga−Zn酸化物ターゲットにおいては、最初に偏析領域2504からスパッタ粒子2504aが優先的にスパッタリングされると考えられる。これは、陽イオン2192がIn−Ga−Zn酸化物ターゲットに衝突することで、相対原子質量が、InよりもGa及びZnの方が軽いため、In−Ga−Zn酸化物ターゲットから優先的に弾き出されるためである。弾き出されたスパッタ粒子2504aが基板上に堆積することで、
図12(A)(B)等に示す領域B1が形成される。
【0326】
[第2のステップ]
続いて、
図18(C)に示すように、偏析領域2506からスパッタ粒子2506aがスパッタリングされる。基板上に先に成膜された領域B1上にスパッタ粒子2506aが衝突し、
図12(A)(B)等に示す領域A1が形成される。
【0327】
また、
図18(C)に示すように、ターゲット2502aは、成膜中にはスパッタされ続けるため、偏析領域2504の生成と、偏析領域2504の消滅とが、断続的に発生する。
【0328】
上記第1のステップと、第2のステップとの成膜モデルを繰り返すことで、
図12(A)(B)等に示す本発明の一態様の複合酸化物半導体を得ることができる。
【0329】
すなわち、In−Richな偏析領域2506と、Ga,Zn−Richな偏析領域2504から、個別にスパッタ粒子(2504a及び2506a)が、それぞれ飛び出して基板上に堆積する。基板上では、In−Richな領域同士がクラウド状に繋がることで
図12(A)(B)に示すような、本発明の一態様の複合酸化物半導体が形成されうる。複合酸化物半導体の膜中で、In−Richな領域同士がクラウド状に繋がることで、当該複合酸化物半導体を用いたトランジスタは、高いオン電流(Ion)、及び高い電界効果移動度(μFE)を有する。
【0330】
このように、高いオン電流(Ion)及び高い電界効果移動度(μFE)を満たすトランジスタにおいては、Inが重要であり、その他の金属(例えば、Gaなど)は必ずしも必要ない。
【0331】
なお、上記においては、アルゴンガスを用いて、本発明の一態様の複合酸化物半導体を成膜するモデルについて例示している。この場合、複合酸化物半導体中に酸素欠損が多く含まれうる。複合酸化物半導体中に酸素欠損が多く含まれると、当該複合酸化物半導体中に浅い欠陥準位(sDOSともいう)が形成される場合がある。複合酸化物半導体中にsDOSが形成されると、当該sDOSがキャリアトラップとなり、オン電流及び電界効果移動度が低下してしまう。
【0332】
したがって、アルゴンガスを用いて複合酸化物半導体を形成した場合においては、複合酸化物半導体の形成後に、複合酸化物半導体中に酸素を供給することによって、複合酸化物半導体中の酸素欠損を補填しsDOSを低減すると好ましい。
【0333】
上記酸素の供給方法としては、例えば、複合酸化物半導体後に、酸素を含む雰囲気下で熱処理を行う方法、または酸素を含む雰囲気下でプラズマ処理を行う方法などが挙げられる。あるいは、本発明の一態様の複合酸化物半導体に接する絶縁膜、または複合酸化物半導体の近傍の絶縁膜に過剰酸素を有する構成とすればよい。絶縁膜が過剰酸素を有する構成については、実施の形態1を参照すればよい。
【0334】
なお、ここではスパッタリング法による作製方法について説明したが、これに限定されず、パルスレーザー堆積(PLD)法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、真空蒸着法などを用いてもよい。熱CVD法の例としては、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。
【0335】
<2−7.酸化物半導体膜を有するトランジスタ>
次に、酸化物半導体膜をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0336】
なお、上記複合酸化物半導体をトランジスタに用いることで、キャリア移動度が高く、かつ、スイッチング特性が高いトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0337】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用いることが好ましい。例えば、酸化物半導体膜は、キャリア密度が8×10
11/cm
3未満、好ましくは1×10
11/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
10/cm
3未満であり、1×10
−9/cm
3以上とすればよい。
【0338】
酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0339】
また、酸化物半導体膜のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0340】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0341】
ここで、酸化物半導体膜中における各不純物の影響について説明する。
【0342】
酸化物半導体膜において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
17atoms/cm
3以下とする。
【0343】
また、酸化物半導体膜にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体膜中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体膜中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
16atoms/cm
3以下とする。
【0344】
また、酸化物半導体膜において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
17atoms/cm
3以下とする。
【0345】
また、酸化物半導体膜に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損(V
o)を形成する場合がある。該酸素欠損(V
o)に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×10
20atoms/cm
3未満、好ましくは1×10
19atoms/cm
3未満、より好ましくは5×10
18atoms/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
18atoms/cm
3未満とする。
【0346】
なお、酸化物半導体膜中の酸素欠損(V
o)は、酸素を酸化物半導体膜に導入することで、低減することができる。つまり、酸化物半導体膜中の酸素欠損(V
o)に、酸素が補填されることで、酸素欠損(V
o)は消失する。従って、酸化物半導体膜中に、酸素を拡散させることで、トランジスタの酸素欠損(V
o)を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0347】
なお、酸素を酸化物半導体膜に導入する方法として、例えば、酸化物半導体に接して、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を設けることができる。つまり、酸化物には、化学量論的組成よりも酸素が過剰に存在する領域(以下、過剰酸素領域ともいう)が形成されていることが好ましい。特に、トランジスタに酸化物半導体膜を用いる場合、トランジスタ近傍の下地膜や、層間膜などに、過剰酸素領域を有する酸化物を設けることで、トランジスタの酸素欠損を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0348】
不純物が十分に低減された酸化物半導体膜をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0349】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0350】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の一例について、
図19乃至
図25を用いて以下説明を行う。
【0351】
図19は、表示装置の一例を示す上面図である。
図19に示す表示装置700は、第1の基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と、第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、第1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すなわち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は、第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお、
図19には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設けられる。
【0352】
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている領域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びゲートドライバ回路部706と、それぞれ電気的に接続されるFPC端子部708(FPC:Flexible printed circuit)が設けられる。また、FPC端子部708には、FPC716が接続され、FPC716によって画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706に各種信号等が供給される。また、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708には、信号線710が各々接続されている。FPC716により供給される各種信号等は、信号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708に与えられる。
【0353】
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良い、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に形成する構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法などを用いることができる。
【0354】
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタを適用することができる。
【0355】
また、表示装置700は、様々な素子を有することが出来る。該素子の一例としては、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子、LEDなど)、発光トランジスタ素子(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク素子、電気泳動素子、エレクトロウェッティング素子、プラズマディスプレイパネル(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)ディスプレイ(例えば、グレーティングライトバルブ(GLV)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタル・マイクロ・シャッター(DMS)素子、インターフェロメトリック・モジュレーション(IMOD)素子など)、圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
【0356】
また、EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク素子又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0357】
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素によって、異なる2色を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0358】
また、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色発光(W)を用いて表示装置をフルカラー表示させるために、着色層(カラーフィルタともいう。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで、着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層を有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない領域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配置することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2割から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発光素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、Wを、それぞれの発光色を有する素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合よりも、さらに消費電力を低減できる場合がある。
【0359】
また、カラー化方式としては、上述の白色発光からの発光の一部をカラーフィルタを通すことで赤色、緑色、青色に変換する方式(カラーフィルタ方式)の他、赤色、緑色、青色の発光をそれぞれ用いる方式(3色方式)、または青色発光からの発光の一部を赤色や緑色に変換する方式(色変換方式、量子ドット方式)を適用してもよい。
【0360】
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について、
図20及び
図22を用いて説明する。なお、
図20は、
図19に示す一点鎖線Q−Rにおける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、
図22は、
図19に示す一点鎖線Q−Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成である。
【0361】
まず、
図20及び
図22に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分について以下説明する。
【0362】
<3−1.表示装置の共通部分に関する説明>
図20及び
図22に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、引き回し配線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ750及び容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を有する。
【0363】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、先に示すトランジスタ100Dと同様の構成である。なお、トランジスタ750及びトランジスタ752の構成については、先の実施の形態に示す、その他のトランジスタを用いてもよい。
【0364】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0365】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0366】
容量素子790は、トランジスタ750が有する第1のゲート電極と機能する導電膜と同一の導電膜を加工する工程を経て形成される下部電極と、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜、または第2のゲート電極として機能する導電膜と同一の導電膜を加工する工程を経て形成される上部電極と、を有する。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ750が有する第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜と同一の絶縁膜を形成する工程を経て形成される絶縁膜、及びトランジスタ750上の保護絶縁膜として機能する絶縁膜と同一の絶縁膜を形成する工程を経て形成される絶縁膜が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘電体膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。
【0367】
また、
図20及び
図22において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容量素子790上に平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0368】
平坦化絶縁膜770としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜770を形成してもよい。また、平坦化絶縁膜770を設けない構成としてもよい。
【0369】
また、
図20及び
図22においては、画素部702が有するトランジスタ750と、ソースドライバ回路部704が有するトランジスタ752と、を同じ構造のトランジスタを用いる構成について例示したが、これに限定されない。例えば、画素部702と、ソースドライバ回路部704とは、異なるトランジスタを用いてもよい。具体的には、画素部702にスタガ型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704に実施の形態1に示す逆スタガ型のトランジスタを用いる構成、あるいは画素部702に実施の形態1に示す逆スタガ型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704にスタガ型のトランジスタを用いる構成などが挙げられる。なお、上記のソースドライバ回路部704を、ゲートドライバ回路部と読み替えてもよい。
【0370】
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。信号線710として、例えば、銅元素を含む材料を用いた場合、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能となる。
【0371】
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC716を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。また、接続電極760は、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
【0372】
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いることができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられる。
【0373】
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構造体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設けられる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。
【0374】
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、カラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する絶縁膜734が設けられる。
【0375】
<3−2.液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図20に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜772、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の基板705側に設けられ、対向電極としての機能を有する。
図20に示す表示装置700は、導電膜772と導電膜774に印加される電圧によって、液晶層776の配向状態が変わることによって光の透過、非透過が制御され画像を表示することができる。
【0376】
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と電気的に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。また、導電膜772は、反射電極としての機能を有する。
図20に示す表示装置700は、外光を利用し導電膜772で光を反射して着色膜736を介して表示する、所謂反射型のカラー液晶表示装置である。
【0377】
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、または銀を含む材料を用いるとよい。本実施の形態においては、導電膜772として、可視光において、反射性のある導電膜を用いる。
【0378】
なお、
図20においては、導電膜772をトランジスタ750のドレイン電極として機能する導電膜に接続する構成について例示したが、これに限定されない。例えば、
図21に示すように、導電膜772を接続電極として機能する導電膜777を間に挟んでトランジスタ750のドレイン電極として機能する導電膜と電気的に接続させる構成としてもよい。なお、導電膜777としては、トランジスタ750の第2のゲート電極として機能する導電膜と同じ導電膜を加工する工程を経て形成されるため、製造工程を増やすことなく形成することができる。
【0379】
また、
図20に示す表示装置700は、反射型のカラー液晶表示装置について例示したが、これに限定されない、例えば、導電膜772を可視光において、透光性のある導電膜を用いることで透過型のカラー液晶表示装置としてもよい。あるいは、反射型のカラー液晶表示装置と、透過型のカラー液晶表示装置と、を組み合わせた所謂半透過型のカラー液晶表示装置としてもよい。
【0380】
ここで、透過型のカラー液晶表示装置の一例を
図23に示す。
図23は、
図19に示す一点鎖線Q−Rにおける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、
図23に示す表示装置700は、液晶素子の駆動方式として横電界方式(例えば、FFSモード)を用いる構成の一例である。
図23に示す構成の場合、画素電極として機能する導電膜772上に絶縁膜773が設けられ、絶縁膜773上に導電膜774が設けられる。この場合、導電膜774は、共通電極(コモン電極ともいう)としての機能を有し、絶縁膜773を介して、導電膜772と導電膜774との間に生じる電界によって、液晶層776の配向状態を制御することができる。
【0381】
また、
図20及び
図23において図示しないが、導電膜772または導電膜774のいずれか一方または双方に、液晶層776と接する側に、それぞれ配向膜を設ける構成としてもよい。また、
図20及び
図23において図示しないが、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0382】
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0383】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要である。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。また、ブルー相を示す液晶材料は、視野角依存性が小さい。
【0384】
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0385】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASVモードなどを用いることができる。
【0386】
<3−3.発光素子を用いる表示装置>
図22に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜772、EL層786、及び導電膜788を有する。
図22に示す表示装置700は、発光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができる。なお、EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。
【0387】
有機化合物に用いることのできる材料としては、蛍光性材料または燐光性材料などが挙げられる。また、量子ドットに用いることのできる材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、などが挙げられる。また、12族と16族、13族と15族、または14族と16族の元素グループを含む材料を用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子ドット材料を用いてもよい。
【0388】
また、
図22に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜772上に絶縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜772の一部を覆う。なお、発光素子782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、EL層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜772側に光を射出するボトムエミッション構造や、導電膜772及び導電膜788の双方に光を射出するデュアルエミッション構造にも適用することができる。
【0389】
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重なる位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設けられている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。また、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、
図22に示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これに限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合においては、着色膜736を設けない構成としてもよい。
【0390】
<3−4.表示装置に入出力装置を設ける構成例>
また、
図22及び
図23に示す表示装置700に入出力装置を設けてもよい。当該入出力装置としては、例えば、タッチパネル等が挙げられる。
【0391】
図22に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成を
図24に示す。
図23に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成を
図25に示す。
【0392】
図24は
図22に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成の断面図であり、
図25は
図23に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成の断面図である。
【0393】
まず、
図24及び
図25に示すタッチパネル791について、以下説明を行う。
【0394】
図24及び
図25に示すタッチパネル791は、第2の基板705と着色膜736との間に設けられる、所謂インセル型のタッチパネルである。タッチパネル791は、着色膜736を形成する前に、第2の基板705側に形成すればよい。
【0395】
なお、タッチパネル791は、遮光膜738と、絶縁膜792と、電極793と、電極794と、絶縁膜795と、電極796と、絶縁膜797と、を有する。例えば、指やスタイラスなどの被検知体が近接することで、電極793と、電極794との間の容量の変化を検知することができる。
【0396】
また、
図24及び
図25に示すトランジスタ750の上方においては、電極793と、電極794との交差部を明示している。電極796は、絶縁膜795に設けられた開口部を介して、電極794を挟む2つの電極793と電気的に接続されている。なお、
図24及び
図25においては、電極796が設けられる領域を画素部702に設ける構成を例示したが、これに限定されず、例えば、ソースドライバ回路部704に形成してもよい。
【0397】
電極793及び電極794は、遮光膜738と重なる領域に設けられる。また、
図24に示すように、電極793は、発光素子782と重ならないように設けられると好ましい。また、
図25に示すように、電極793は、液晶素子775と重ならないように設けられると好ましい。別言すると、電極793は、発光素子782及び液晶素子775と重なる領域に開口部を有する。すなわち、電極793はメッシュ形状を有する。このような構成とすることで、電極793は、発光素子782が射出する光を遮らない構成とすることができる。または、電極793は、液晶素子775を透過する光を遮らない構成とすることができる。したがって、タッチパネル791を配置することによる輝度の低下が極めて少ないため、視認性が高く、且つ消費電力が低減された表示装置を実現できる。なお、電極794も同様の構成とすればよい。
【0398】
また、電極793及び電極794が発光素子782と重ならないため、電極793及び電極794には、可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。または、電極793及び電極794が液晶素子775と重ならないため、電極793及び電極794には、可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。
【0399】
そのため、可視光の透過率が高い酸化物材料を用いた電極と比較して、電極793及び電極794の抵抗を低くすることが可能となり、タッチパネルのセンサ感度を向上させることができる。
【0400】
例えば、電極793、794、796には、導電性のナノワイヤを用いてもよい。当該ナノワイヤは、直径の平均値が1nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは5nm以上25nm以下の大きさとすればよい。また、上記ナノワイヤとしては、Agナノワイヤ、Cuナノワイヤ、またはAlナノワイヤ等の金属ナノワイヤ、あるいは、カーボンナノチューブなどを用いればよい。例えば、電極793、794、796のいずれか一つあるいは全部にAgナノワイヤを用いる場合、可視光における光透過率を89%以上、シート抵抗値を40Ω/□以上100Ω/□以下とすることができる。
【0401】
また、
図24及び
図25においては、インセル型のタッチパネルの構成について例示したが、これに限定されない。例えば、表示装置700上に形成する、所謂オンセル型のタッチパネルや、表示装置700に貼り合わせて用いる、所謂アウトセル型のタッチパネルとしてもよい。
【0402】
このように、本発明の一態様の表示装置は、様々な形態のタッチパネルと組み合わせて用いることができる。
【0403】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0404】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置について、
図26及び
図27を参照して説明する。
【0405】
<4−1.半導体装置の構成例>
図26(A)は、本発明の一態様の半導体装置190の上面図であり、
図26(B)は、
図26(A)に示す一点鎖線A1−A2間における切断面の断面図に相当する。なお、
図26(B)は、トランジスタTr1のチャネル長(L)方向の断面、及びトランジスタTr2のチャネル長(L)方向の断面を含む。また、
図27は、
図26(A)に示す一点鎖線B1−B2間における切断面の断面図に相当する。また、
図27は、トランジスタTr1のチャネル幅(W)方向の断面を含む。
【0406】
また、
図26(A)において、煩雑になることを避けるため、半導体装置190の構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)、及び構成要素の符号の一部を省略して図示している。なお、半導体装置の上面図においては、以降の図面においても
図26(A)と同様に、構成要素の一部及び構成要素の符号の一部を省略して図示する場合がある。
【0407】
図26(A)(B)に示す半導体装置190は、トランジスタTr1と、トランジスタTr1と少なくとも一部が互いに重なるトランジスタTr2と、を有する。なお、トランジスタTr1及びトランジスタTr2は、双方ともボトムゲート構造のトランジスタである。
【0408】
トランジスタTr1と、トランジスタTr2とを少なくとも一部が互いに重なる領域を設けることで、トランジスタの配置面積を縮小させることができる。
【0409】
トランジスタTr1は、基板102上の導電膜104と、基板102及び導電膜104上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108上の導電膜112aと、酸化物半導体膜108上の導電膜112bと、酸化物半導体膜108、導電膜112a、及び導電膜112b上の絶縁膜114と、絶縁膜114上の絶縁膜116と、絶縁膜116上の導電膜122cと、を有する。
【0410】
また、トランジスタTr2は、導電膜112bと、導電膜112b上の絶縁膜114と、絶縁膜114上の絶縁膜116と、絶縁膜116上の酸化物半導体膜128と、酸化物半導体膜128上の導電膜122aと、酸化物半導体膜128上の導電膜122bと、酸化物半導体膜128、導電膜122a、及び導電膜122b上の絶縁膜124と、絶縁膜124上の絶縁膜126と、絶縁膜126上の導電膜130と、を有する。なお、導電膜130は、絶縁膜124、126に設けられた開口部182を介して導電膜122aと接続される。
【0411】
なお、
図26(A)(B)に示すように、酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜128とは、互いに重なる領域を有する。なお、
図26(A)(B)に示すようにトランジスタTr1の酸化物半導体膜108に形成されるチャネル領域と、トランジスタTr2の酸化物半導体膜128に形成されるチャネル領域とは、互いに重ならない方が好適である。
【0412】
トランジスタTr1のチャネル領域と、トランジスタTr2のチャネル領域とが互いに重なる場合、いずれか一方のトランジスタが動作しているときに他方に影響を与える場合がある。この影響を回避するために、トランジスタTr1とトランジスタTr2との間の間隔を大きくする構成、またはトランジスタTr1とトランジスタTr2との間に導電膜を設ける構成などが挙げられる。しかしながら、前者の構成の場合、半導体装置が厚くなるため、例えば、半導体装置190をフレキシブル基板等に形成する場合、曲げ性等が問題になる場合がある。また、後者の構成の場合、導電膜を形成する工程の増加、及び前者の構成の場合と同様に半導体装置が厚くなるため問題になる場合がある。
【0413】
一方で本発明の一態様の半導体装置190においては、トランジスタTr1と、トランジスタTr2とを重ねて配置し、且つ各トランジスタのチャネル領域を重ねずに設ける。また、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜の一部を重ねて配置することで、トランジスタの配置面積を好適に縮小させることができる。
【0414】
また、酸化物半導体膜108及び酸化物半導体膜128は、それぞれ、Inと、M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、Znと、を有する。例えば、酸化物半導体膜108及び酸化物半導体膜128としては、それぞれ、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有すると好ましい。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、これに限定されず、Inの原子数比がMの原子数比よりも少ない領域を有する構成、あるいはInの原子数比がMの原子数比と同じ領域を有する構成としてもよい。
【0415】
また、酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜128とは、組成が同じ、または組成が概略同じであると好ましい。酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜128との組成を同じにすることで、製造コストを低減することが可能となる。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、これに限定されず、酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜128との組成を異ならせてもよい。
【0416】
酸化物半導体膜108及び酸化物半導体膜128が、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有することで、トランジスタTr1及びトランジスタTr2の電界効果移動度を高くすることができる。
【0417】
また、
図26(A)(B)に示す半導体装置190は、表示装置の画素回路に好適に用いることができ、
図26(A)(B)に示すような配置とすることで、表示装置の画素密度を高めることが可能となる。例えば、表示装置の画素密度が1000ppi(pixel per inch)を超える、または表示装置の画素密度が2000ppiを超える場合においても、
図26(A)(B)に示すような配置とすることで、画素の開口率を高めることができる。なお、ppiは、1インチあたりの画素数を表す単位である。
【0418】
また、
図26(A)(B)に示す半導体装置190を表示装置の画素に適用する場合、例えば、トランジスタのチャネル長(L)及びチャネル幅(W)、あるいはトランジスタに接続する配線及び電極の線幅などを比較的大きくすることができる。例えば、トランジスタTr1とトランジスタTr2とを同じ平面上に配置する場合と比較して、
図26(A)(B)に示すように、トランジスタTr1とトランジスタTr2との少なくとも一部を重ねて配置することで、線幅などを大きくすることができるため、加工寸法のばらつきを低減することが可能となる。
【0419】
また、トランジスタTr1と、トランジスタTr2とで、導電膜及び絶縁膜のいずれか一方または双方を共通して用いることができるため、マスク枚数または工程数を削減することが可能である。
【0420】
例えば、トランジスタTr1において、導電膜104が第1のゲート電極として機能し、導電膜112aがソース電極として機能し、導電膜112bがドレイン電極として機能し、導電膜122cが第2のゲート電極として機能する。また、トランジスタTr1において、絶縁膜106が第1のゲート絶縁膜として機能し、絶縁膜114、116が第2のゲート絶縁膜として機能する。また、トランジスタTr2において、導電膜112bが第1のゲート電極として機能し、導電膜122aがソース電極として機能し、導電膜122bがドレイン電極として機能し、導電膜130が第2のゲート電極として機能する。また、トランジスタTr2において、絶縁膜114、116が第1のゲート絶縁膜として機能し、絶縁膜124、126が第2のゲート絶縁膜として機能する。
【0421】
なお、本明細書等において、絶縁膜106を第1の絶縁膜と、絶縁膜114、116を第2の絶縁膜と、絶縁膜124、126を第3の絶縁膜と、それぞれ呼称する場合がある。
【0422】
また、導電膜130上には、絶縁膜134と、絶縁膜134上の絶縁膜136とが設けられる。また、絶縁膜134、136には、導電膜130に達する開口部184が設けられる。また、絶縁膜136上には、導電膜138が設けられる。なお、導電膜138は、開口部184を介して、導電膜130と接続される。
【0423】
また、導電膜138上には、絶縁膜140と、EL層150と、導電膜144とが設けられる。絶縁膜140は、導電膜138の側端部の一部を覆い、隣接する画素間での導電膜138の短絡を防止する機能を有する。また、EL層150は、発光する機能を有する。また、導電膜138と、EL層150と、導電膜144と、により発光素子160が構成される。導電膜138は、発光素子160の一方の電極として機能し、導電膜144は、発光素子160の他方の電極として機能する。
【0424】
以上のように、本発明の一態様の半導体装置は、複数のトランジスタを積層構造とし、トランジスタの設置面積を縮小させる。また、複数のトランジスタにおいて、絶縁膜及び導電膜のいずれか一方または双方を共通して用いることで、マスク枚数または工程数を削減することができる。
【0425】
また、
図26(A)(B)に示すように、トランジスタTr1及びトランジスタTr2は、それぞれ、ゲート電極を2つ有する構成である。
【0426】
ここで、ゲート電極を2つ有する構成の効果について、
図26(A)(B)及び、
図27を用いて説明を行う。
【0427】
図27に示すように、第2のゲート電極として機能する導電膜122cは、開口部181を介して第1のゲート電極として機能する導電膜104と電気的に接続される。よって、導電膜104と導電膜122cには、同じ電位が与えられる。また、
図27に示すように、酸化物半導体膜108は、導電膜104、及び導電膜122cと対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。導電膜104及び導電膜122cのチャネル幅方向の長さは、それぞれ酸化物半導体膜108のチャネル幅方向の長さよりも長く、酸化物半導体膜108の全体は、絶縁膜106、114、116を介して導電膜104と導電膜122cによって覆われている。
【0428】
別言すると、導電膜104及び導電膜122cは、絶縁膜106、114、116に設けられる開口部181において接続され、且つ酸化物半導体膜108の側端部よりも外側に位置する領域を有する。このような構成とすることで、トランジスタTr1に含まれる酸化物半導体膜108を、導電膜104及び導電膜122cの電界によって電気的に囲むことができる。すなわち、トランジスタTr1は、S−Channel構造を有する。
【0429】
なお、上記の説明においては、第1のゲート電極と、第2のゲート電極とを接続させる構成について例示したがこれに限定されない。例えば、
図26(B)に示すトランジスタTr2のように第2のゲート電極として機能する導電膜130をトランジスタTr2のソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜122aと電気的に接続させる構成としてもよい。
【0430】
<4−2.半導体装置の構成要素>
次に、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。なお、実施の形態1に示す構成と同様の構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0431】
[導電膜]
導電膜122a、導電膜122b、導電膜122c、導電膜130、導電膜138、及び導電膜144としては、導電膜104、導電膜112a、112b、及び導電膜120a、120bと同様の材料を用いる事ができる。
【0432】
また、導電膜122a、導電膜122b、導電膜122c、導電膜130、導電膜138、及び導電膜144には、インジウムと錫とを有する酸化物、タングステンとインジウムとを有する酸化物、タングステンとインジウムと亜鉛とを有する酸化物、チタンとインジウムとを有する酸化物、チタンとインジウムと錫とを有する酸化物、インジウムと亜鉛とを有する酸化物、シリコンとインジウムと錫とを有する酸化物、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物等の酸化物導電体(OC)を適用することもできる。
【0433】
特に、導電膜130には、上述の酸化物導電体(OC)を好適に用いることができる。
【0434】
[絶縁膜]
絶縁膜124、絶縁膜126、及び絶縁膜134としては、絶縁膜106、絶縁膜114、及び絶縁膜116と同様の材料を用いることができる。
【0435】
なお、酸化物半導体膜108及び酸化物半導体膜128のいずれか一方または双方と接する絶縁膜としては、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域(過剰酸素領域)を有することがより好ましい。別言すると、過剰酸素領域を有する酸化物絶縁膜は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。
【0436】
なお、上述の過剰酸素領域を有する酸化物絶縁膜としては、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜を形成する、成膜後の絶縁膜を酸素雰囲気下で熱処理を行う、または成膜後の絶縁膜中に酸素を添加することで形成すればよい。成膜後の絶縁膜中に酸素を添加する方法としては、プラズマ処理が好ましい。
【0437】
また、トランジスタTr1及びトランジスタTr2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜には、窒化シリコンを用いてもよい。ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜に窒化シリコンを用いる場合、以下の効果を奏する。窒化シリコンは、酸化シリコンと比較して比誘電率が高く、酸化シリコンと同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、絶縁膜を厚膜化することができる。よって、トランジスタTr1及びトランジスタTr2の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、トランジスタTr1及びトランジスタTr2の静電破壊を抑制することができる。
【0438】
また、絶縁膜114、116、124、126は、酸化物半導体膜108または酸化物半導体膜128のいずれか一方または双方に酸素を供給する機能を有する。すなわち、絶縁膜114、116、124、126は、酸素を有する。また、絶縁膜114、124は、酸素を透過することのできる絶縁膜である。なお、絶縁膜114は、後に形成する絶縁膜116を形成する際の、酸化物半導体膜108へのダメージ緩和膜としても機能し、絶縁膜124は、後に形成する絶縁膜126を形成する際の、酸化物半導体膜128へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0439】
絶縁膜114、124としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下の酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0440】
また、絶縁膜114、124は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が3×10
17spins/cm
3以下であることが好ましい。これは、絶縁膜114、124に含まれる欠陥密度が多いと、欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜114における酸素の透過量が減少してしまう。
【0441】
また、絶縁膜114、124は、窒素酸化物に起因する準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形成することができる。なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、酸化物半導体膜の価電子帯の上端のエネルギー(Ev_os)と酸化物半導体膜の伝導帯の下端のエネルギー(Ec_os)の間に形成され得る場合がある。上記酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミニウム膜等を用いることができる。
【0442】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法(TDS)において、窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下である。なお、上記のアンモニアの放出量は、TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上550℃以下の範囲での総量である。また、上記のアンモニアの放出量は、TDSにおけるアンモニア分子に換算しての総量である。
【0443】
絶縁膜134は、トランジスタTr1及びトランジスタTr2の保護絶縁膜としての機能を有する。
【0444】
絶縁膜134は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。または、絶縁膜134は、窒素及びシリコンを有する。また、絶縁膜134は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜134を設けることで、酸化物半導体膜108及び酸化物半導体膜128からの酸素の外部への拡散と、絶縁膜114、116、124、126に含まれる酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜108、128への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。
【0445】
絶縁膜134としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。
【0446】
絶縁膜136及び絶縁膜140は、トランジスタ等に起因する凹凸等を平坦化させる機能を有する。絶縁膜136及び絶縁膜140としては、絶縁性であればよく、無機材料または有機材料を用いて形成される。該無機材料としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜等が挙げられる。該有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、またはポリイミド樹脂等の感光性の樹脂材料が挙げられる。
【0447】
[酸化物半導体膜]
酸化物半導体膜128としては、酸化物半導体膜108と同様の材料を用いることができる。
【0448】
[EL層]
EL層150は、発光する機能を有し、少なくとも発光層を有する。また、EL層150は、当該発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層等の機能層を有する。EL層150には、低分子化合物および高分子化合物を用いることができる。
【0449】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0450】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いた表示装置の表示部等に用いることのできる表示パネルの一例について、
図28及び
図29を用いて説明する。以下で例示する表示パネルは、反射型の液晶素子と、発光素子との双方を有し、透過モードと反射モードの両方の表示を行うことのできる、表示パネルである。
【0451】
<5−1.表示パネルの構成例>
図28は、本発明の一態様の表示パネル600の斜視概略図である。表示パネル600は、基板651と基板661とが貼り合わされた構成を有する。
図28では、基板661を破線で明示している。
【0452】
表示パネル600は、表示部662、回路659、配線666等を有する。基板651には、例えば回路659、配線666、及び画素電極として機能する導電膜663等が設けられる。また
図28では基板651上にIC673とFPC672が実装されている例を示している。そのため、
図28に示す構成は、表示パネル600とFPC672及びIC673を有する表示モジュールと言うこともできる。
【0453】
回路659は、例えば走査線駆動回路として機能する回路を用いることができる。
【0454】
配線666は、表示部や回路659に信号や電力を供給する機能を有する。当該信号や電力は、FPC672を介して外部、またはIC673から配線666に入力される。
【0455】
また、
図28では、COG(Chip On Glass)方式等により、基板6651にIC673が設けられている例を示している。IC673は、例えば走査線駆動回路、または信号線駆動回路などとしての機能を有するICを適用できる。なお表示パネル600が走査線駆動回路及び信号線駆動回路として機能する回路を備える場合や、走査線駆動回路や信号線駆動回路として機能する回路を外部に設け、FPC672を介して表示パネル600を駆動するための信号を入力する場合などでは、IC673を設けない構成としてもよい。また、IC673を、COF(Chip On Film)方式等により、FPC672に実装してもよい。
【0456】
図28には、表示部662の一部の拡大図を示している。表示部662には、複数の表示素子が有する導電膜663がマトリクス状に配置されている。導電膜663は、可視光を反射する機能を有し、後述する液晶素子640の反射電極として機能する。
【0457】
また、
図28に示すように、導電膜663は開口を有する。さらに導電膜663よりも基板651側に、発光素子660を有する。発光素子660からの光は、導電膜663の開口を介して基板661側に射出される。
【0458】
<5−2.断面構成例>
図29に、
図28で例示した表示パネルの、FPC672を含む領域の一部、回路659を含む領域の一部、及び表示部662を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。
【0459】
表示パネルは、基板651と基板661の間に、絶縁膜620を有する。また基板651と絶縁膜620の間に、発光素子660、トランジスタ601、トランジスタ605、トランジスタ606、着色層634等を有する。また絶縁膜620と基板661の間に、液晶素子640、着色層631等を有する。また基板661と絶縁膜620は接着層641を介して接着され、基板651と絶縁膜620は接着層642を介して接着されている。
【0460】
トランジスタ606は、液晶素子640と電気的に接続し、トランジスタ605は、発光素子660と電気的に接続する。トランジスタ605とトランジスタ606は、いずれも絶縁膜620の基板651側の面上に形成されているため、これらを同一の工程を用いて作製することができる。
【0461】
基板661には、着色層631、遮光膜632、絶縁膜621、及び液晶素子640の共通電極として機能する導電膜613、配向膜633b、絶縁膜617等が設けられている。絶縁膜617は、液晶素子640のセルギャップを保持するためのスペーサとして機能する。
【0462】
絶縁膜620の基板651側には、絶縁膜681、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁膜684、絶縁膜685等の絶縁層が設けられている。絶縁膜681は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁膜682、絶縁膜683、及び絶縁膜684は、各トランジスタを覆って設けられている。また絶縁膜684を覆って絶縁膜685が設けられている。絶縁膜684及び絶縁膜685は、平坦化層としての機能を有する。なお、ここではトランジスタ等を覆う絶縁層として、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁膜684の3層を有する場合について示しているが、これに限られず4層以上であってもよいし、単層、または2層であってもよい。また平坦化層として機能する絶縁膜684は、不要であれば設けなくてもよい。
【0463】
また、トランジスタ601、トランジスタ605、及びトランジスタ606は、一部がゲートとして機能する導電膜654、一部がソース又はドレインとして機能する導電膜652、半導体膜653を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に、同じハッチングパターンを付している。
【0464】
液晶素子640は反射型の液晶素子である。液晶素子640は、導電膜635、液晶層612、導電膜613が積層された積層構造を有する。また導電膜635の基板651側に接して、可視光を反射する導電膜663が設けられている。導電膜663は開口655を有する。また導電膜635及び導電膜613は可視光を透過する材料を含む。また液晶層612と導電膜635の間に配向膜633aが設けられ、液晶層612と導電膜613の間に配向膜633bが設けられている。また、基板661の外側の面には、偏光板656を有する。
【0465】
液晶素子640において、導電膜663は可視光を反射する機能を有し、導電膜613は可視光を透過する機能を有する。基板661側から入射した光は、偏光板656により偏光され、導電膜613、液晶層612を透過し、導電膜663で反射する。そして液晶層612及び導電膜613を再度透過して、偏光板656に達する。このとき、導電膜663と導電膜613の間に与える電圧によって液晶の配向を制御し、光の光学変調を制御することができる。すなわち、偏光板656を介して射出される光の強度を制御することができる。また光は着色層631によって特定の波長領域以外の光が吸収されることにより、取り出される光は、例えば赤色を呈する光となる。
【0466】
発光素子660は、ボトムエミッション型の発光素子である。発光素子660は、絶縁膜620側から導電膜643、EL層644、及び導電膜645bの順に積層された積層構造を有する。また導電膜645bを覆って導電膜645aが設けられている。導電膜645bは可視光を反射する材料を含み、導電膜643及び導電膜645aは可視光を透過する材料を含む。発光素子660が発する光は、着色層634、絶縁膜620、開口655、導電膜613等を介して、基板661側に射出される。
【0467】
ここで、
図29に示すように、開口655には可視光を透過する導電膜635が設けられていることが好ましい。これにより、開口655と重なる領域においてもそれ以外の領域と同様に液晶が配向するため、これらの領域の境界部で液晶の配向不良が生じ、意図しない光が漏れてしまうことを抑制できる。
【0468】
ここで、基板661の外側の面に配置する偏光板656として直線偏光板を用いてもよいが、円偏光板を用いることもできる。円偏光板としては、例えば直線偏光板と1/4波長位相差板を積層したものを用いることができる。これにより、外光反射を抑制することができる。また、偏光板の種類に応じて、液晶素子640に用いる液晶素子のセルギャップ、配向、駆動電圧等を調整することで、所望のコントラストが実現されるようにすればよい。
【0469】
また導電膜643の端部を覆う絶縁膜646上には、絶縁膜647が設けられている。絶縁膜647は、絶縁膜620と基板651が必要以上に接近することを抑制するスペーサとしての機能を有する。またEL層644や導電膜645aを遮蔽マスク(メタルマスク)を用いて形成する場合には、当該遮蔽マスクが被形成面に接触することを抑制する機能を有していてもよい。なお、絶縁膜647は不要であれば設けなくてもよい。
【0470】
トランジスタ605のソース又はドレインの一方は、導電膜648を介して発光素子660の導電膜643と電気的に接続されている。
【0471】
トランジスタ606のソース又はドレインの一方は、接続部607を介して導電膜663と電気的に接続されている。導電膜663と導電膜635は接して設けられ、これらは電気的に接続されている。ここで、接続部607は、絶縁膜620に設けられた開口を介して、絶縁膜620の両面に設けられる導電膜同士を接続する部分である。
【0472】
基板651と基板661が重ならない領域には、接続部604が設けられている。接続部604は、接続層649を介してFPC672と電気的に接続されている。接続部604は接続部607と同様の構成を有している。接続部604の上面は、導電膜635と同一の導電膜を加工して得られた導電膜が露出している。これにより、接続部604とFPC672とを接続層649を介して電気的に接続することができる。
【0473】
接着層641が設けられる一部の領域には、接続部687が設けられている。接続部687において、導電膜635と同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電膜613の一部が、接続体686により電気的に接続されている。したがって、基板661側に形成された導電膜613に、基板651側に接続されたFPC672から入力される信号または電位を、接続部687を介して供給することができる。
【0474】
接続体686としては、例えば導電性の粒子を用いることができる。導電性の粒子としては、有機樹脂またはシリカなどの粒子の表面を金属材料で被覆したものを用いることができる。金属材料としてニッケルや金を用いると接触抵抗を低減できるため好ましい。またニッケルをさらに金で被覆するなど、2種類以上の金属材料を層状に被覆させた粒子を用いることが好ましい。また接続体686として、弾性変形、または塑性変形する材料を用いることが好ましい。このとき導電性の粒子である接続体686は、
図29に示すように上下方向に潰れた形状となる場合がある。こうすることで、接続体686と、これと電気的に接続する導電膜との接触面積が増大し、接触抵抗を低減できるほか、接続不良などの不具合の発生を抑制することができる。
【0475】
接続体686は、接着層641に覆われるように配置することが好ましい。例えば、硬化前の接着層641に、接続体686を分散させておけばよい。
【0476】
図29では、回路659の例としてトランジスタ601が設けられている例を示している。
【0477】
図29では、トランジスタ601及びトランジスタ605の例として、チャネルが形成される半導体膜653を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。一方のゲートは導電膜654により、他方のゲートは絶縁膜682を介して半導体膜653と重なる導電膜623により構成されている。このような構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。このとき、2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。このようなトランジスタは他のトランジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させることができる。その結果、高速駆動が可能な回路を作製することができる。さらには、回路部の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトランジスタを適用することで、表示パネルを大型化、または高精細化したときに配線数が増大したとしても、各配線における信号遅延を低減することが可能であり、表示ムラを抑制することができる。
【0478】
なお、回路659が有するトランジスタと、表示部662が有するトランジスタは、同じ構造であってもよい。また回路659が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。また、表示部662が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。
【0479】
各トランジスタを覆う絶縁膜682、絶縁膜683のうち少なくとも一方は、水や水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。すなわち、絶縁膜682または絶縁膜683はバリア膜として機能させることができる。このような構成とすることで、トランジスタに対して外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することが可能となり、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0480】
基板661側において、着色層631、遮光膜632を覆って絶縁膜621が設けられている。絶縁膜621は、平坦化層としての機能を有していてもよい。絶縁膜621により、導電膜613の表面を概略平坦にできるため、液晶層612の配向状態を均一にできる。
【0481】
表示パネル600を作製する方法の一例について説明する。例えば剥離層を有する支持基板上に、導電膜635、導電膜663、絶縁膜620を順に形成し、その後、トランジスタ605、トランジスタ606、発光素子660等を形成した後、接着層642を用いて基板651と支持基板を貼り合せる。その後、剥離層と絶縁膜620、及び剥離層と導電膜635のそれぞれの界面で剥離することにより、支持基板及び剥離層を除去する。またこれとは別に、着色層631、遮光膜632、導電膜613等をあらかじめ形成した基板661を準備する。そして基板651または基板661に液晶を滴下し、接着層641により基板651と基板661を貼り合せることで、表示パネル600を作製することができる。
【0482】
剥離層としては、絶縁膜620及び導電膜635との界面で剥離が生じる材料を適宜選択することができる。特に、剥離層としてタングステンなどの高融点金属材料を含む層と当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁膜620として、窒化シリコンや酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン等を複数積層した層を用いることが好ましい。剥離層に高融点金属材料を用いると、これよりも後に形成する層の形成温度を高めることが可能で、不純物の濃度が低減され、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0483】
導電膜635としては、金属酸化物、金属窒化物等の酸化物または窒化物を用いることが好ましい。金属酸化物を用いる場合には、水素、ボロン、リン、窒素、及びその他の不純物の濃度、並びに酸素欠損量の少なくとも一が、トランジスタに用いる半導体層に比べて高められた材料を、導電膜635に用いればよい。
【0484】
<5−3.各構成要素について>
以下では、上記に示す各構成要素について説明する。なお、先の実施の形態に示す機能と同様の機能を有する構成についての説明は省略する。
【0485】
〔接着層〕
接着層としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
【0486】
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用いることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、水分などの不純物が素子に侵入することを抑制でき、表示パネルの信頼性が向上するため好ましい。
【0487】
また、上記樹脂に屈折率の高いフィラーや光散乱部材を混合することにより、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、酸化チタン、酸化バリウム、ゼオライト、ジルコニウム等を用いることができる。
【0488】
〔接続層〕
接続層としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いることができる。
【0489】
〔着色層〕
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含まれた樹脂材料などが挙げられる。
【0490】
〔遮光層〕
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、金属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層は、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。また、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0491】
以上が各構成要素についての説明である。
【0492】
<5−4.作製方法例>
ここでは、可撓性を有する基板を用いた表示パネルの作製方法の例について説明する。
【0493】
ここでは、表示素子、回路、配線、電極、着色層や遮光層などの光学部材、及び絶縁層等が含まれる層をまとめて素子層と呼ぶこととする。例えば、素子層は表示素子を含み、表示素子の他に表示素子と電気的に接続する配線、画素や回路に用いるトランジスタなどの素子を備えていてもよい。
【0494】
また、ここでは、表示素子が完成した(作製工程が終了した)段階において、素子層を支持し、可撓性を有する部材のことを、基板と呼ぶこととする。例えば、基板には、厚さが10nm以上300μm以下の、極めて薄いフィルム等も含まれる。
【0495】
可撓性を有し、絶縁表面を備える基板上に素子層を形成する方法としては、代表的には以下に挙げる2つの方法がある。一つは、基板上に直接、素子層を形成する方法である。もう一つは、基板とは異なる支持基板上に素子層を形成した後、素子層と支持基材を剥離し、素子層を基板に転置する方法である。なお、ここでは詳細に説明しないが、上記2つの方法に加え、可撓性を有さない基板上に素子層を形成し、当該基板を研磨等により薄くすることで可撓性を持たせる方法もある。
【0496】
基板を構成する材料が、素子層の形成工程にかかる熱に対して耐熱性を有する場合には、基板上に直接、素子層を形成すると、工程が簡略化されるため好ましい。このとき、基板を支持基材に固定した状態で素子層を形成すると、装置内、及び装置間における搬送が容易になるため好ましい。
【0497】
また、素子層を支持基材上に形成した後に、基板に転置する方法を用いる場合、まず支持基材上に剥離層と絶縁層を積層し、当該絶縁層上に素子層を形成する。続いて、支持基材と素子層の間で剥離し、素子層を基板に転置する。このとき、支持基材と剥離層の界面、剥離層と絶縁層の界面、または剥離層中で剥離が生じるような材料を選択すればよい。この方法では、支持基材や剥離層に耐熱性の高い材料を用いることで、素子層を形成する際にかかる温度の上限を高めることができ、より信頼性の高い素子を有する素子層を形成できるため、好ましい。
【0498】
例えば剥離層として、タングステンなどの高融点金属材料を含む層と、当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁層として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを複数積層した層を用いることが好ましい。
【0499】
素子層と支持基材とを剥離する方法としては、機械的な力を加えることや、剥離層をエッチングすること、または剥離界面に液体を浸透させることなどが、一例として挙げられる。または、剥離界面を形成する2層の熱膨張の違いを利用し、加熱または冷却することにより剥離を行ってもよい。
【0500】
また、支持基材と絶縁層の界面で剥離が可能な場合には、剥離層を設けなくてもよい。
【0501】
例えば、支持基材としてガラスを用い、絶縁層としてポリイミドなどの有機樹脂を用いることができる。このとき、レーザ光等を用いて有機樹脂の一部を局所的に加熱する、または鋭利な部材により物理的に有機樹脂の一部を切断、または貫通すること等により剥離の起点を形成し、ガラスと有機樹脂の界面で剥離を行ってもよい。また、上記の有機樹脂としては、感光性の材料を用いると、開口部などの形状を容易に作製しやすいため好適である。また、上記のレーザ光としては、例えば、可視光線から紫外線の波長領域の光であることが好ましい。例えば波長が200nm以上400nm以下の光、好ましくは波長が250nm以上350nm以下の光を用いることができる。特に、波長308nmのエキシマレーザを用いると、生産性に優れるため好ましい。また、Nd:YAGレーザの第三高調波である波長355nmのUVレーザなどの固体UVレーザ(半導体UVレーザともいう)を用いてもよい。
【0502】
または、支持基材と有機樹脂からなる絶縁層の間に発熱層を設け、当該発熱層を加熱することにより、当該発熱層と絶縁層の界面で剥離を行ってもよい。発熱層としては、電流を流すことにより発熱する材料、光を吸収することにより発熱する材料、磁場を印加することにより発熱する材料など、様々な材料を用いることができる。例えば発熱層としては、半導体、金属、絶縁体から選択して用いることができる。
【0503】
なお、上述した方法において、有機樹脂からなる絶縁層は、剥離後に基板として用いることができる。
【0504】
以上が可撓性を有する表示パネルを作製する方法についての説明である。
【0505】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0506】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、
図30を用いて説明を行う。
【0507】
<6.表示装置の回路構成>
図30(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部502という)と、画素部502の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(以下、駆動回路部504という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路506という)と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成としてもよい。
【0508】
駆動回路部504の一部、または全部は、画素部502と同一基板上に形成されていることが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部504の一部、または全部が、画素部502と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回路部504の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated Bonding)によって、実装することができる。
【0509】
画素部502は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置された複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路501という)を有し、駆動回路部504は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ504aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するための回路(以下、ソースドライバ504b)などの駆動回路を有する。
【0510】
ゲートドライバ504aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ504aは、端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力する。例えば、ゲートドライバ504aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力され、パルス信号を出力する。ゲートドライバ504aは、走査信号が与えられる配線(以下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲートドライバ504aを複数設け、複数のゲートドライバ504aにより、走査線GL_1乃至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ504aは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ504aは、別の信号を供給することも可能である。
【0511】
ソースドライバ504bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ504bは、端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元となる信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ504bは、画像信号を元に画素回路501に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、データ信号が与えられる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有する。または、ソースドライバ504bは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ソースドライバ504bは、別の信号を供給することも可能である。
【0512】
ソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。ソースドライバ504bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0513】
複数の画素回路501のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介してデータ信号が入力される。また、複数の画素回路501のそれぞれは、ゲートドライバ504aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列目の画素回路501は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ504aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(nはY以下の自然数)を介してソースドライバ504bからデータ信号が入力される。
【0514】
図30(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路501の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保護回路506は、ゲートドライバ504aと端子部507との間の配線に接続することができる。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと端子部507との間の配線に接続することができる。なお、端子部507は、外部の回路から表示装置に電源及び制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0515】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0516】
図30(A)に示すように、画素部502と駆動回路部504にそれぞれ保護回路506を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。ただし、保護回路506の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ504aに保護回路506を接続した構成、またはソースドライバ504bに保護回路506を接続した構成とすることもできる。あるいは、端子部507に保護回路506を接続した構成とすることもできる。
【0517】
また、
図30(A)においては、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bによって駆動回路部504を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ504aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実装する構成としても良い。
【0518】
また、
図30(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、
図30(B)に示す構成とすることができる。
【0519】
図30(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容量素子560と、を有する。トランジスタ550に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる。
【0520】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0521】
例えば、液晶素子570を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro−cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、又はTBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様々なものを用いることができる。
【0522】
m行n列目の画素回路501において、トランジスタ550のソース電極またはドレイン電極の一方は、データ線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線GL_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0523】
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL)に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続される。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0524】
例えば、
図30(B)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図30(A)に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ550をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0525】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ550がオフ状態になることで保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0526】
また、
図30(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、
図30(C)に示す構成とすることができる。
【0527】
また、
図30(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素子562と、発光素子572と、を有する。トランジスタ552及びトランジスタ554のいずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる。
【0528】
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ552のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気的に接続される。
【0529】
トランジスタ552は、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0530】
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0531】
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0532】
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電気的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0533】
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続され、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0534】
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子ともいう)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0535】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0536】
図30(C)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図30(A)に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ552をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0537】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ552がオフ状態になることで保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554のソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0538】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0539】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示モジュール及び電子機器について、
図31乃至
図34を用いて説明を行う。
【0540】
<7−1.表示モジュール>
図31に示す表示モジュール7000は、上部カバー7001と下部カバー7002との間に、FPC7003に接続されたタッチパネル7004、FPC7005に接続された表示パネル7006、バックライト7007、フレーム7009、プリント基板7010、バッテリ7011を有する。
【0541】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル7006に用いることができる。
【0542】
上部カバー7001及び下部カバー7002は、タッチパネル7004及び表示パネル7006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0543】
タッチパネル7004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル7006に重畳して用いることができる。また、表示パネル7006の対向基板(封止基板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル7006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
【0544】
バックライト7007は、光源7008を有する。なお、
図31において、バックライト7007上に光源7008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例えば、バックライト7007の端部に光源7008を配置し、さらに光拡散板を用いる構成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射型パネル等の場合においては、バックライト7007を設けない構成としてもよい。
【0545】
フレーム7009は、表示パネル7006の保護機能の他、プリント基板7010の動作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレーム7009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0546】
プリント基板7010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても良いし、別途設けたバッテリ7011による電源であってもよい。バッテリ7011は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0547】
また、表示モジュール7000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
【0548】
<7−2.電子機器1>
次に、
図32(A)乃至
図32(E)に電子機器の一例を示す。
【0549】
図32(A)は、ファインダー8100を取り付けた状態のカメラ8000の外観を示す図である。
【0550】
カメラ8000は、筐体8001、表示部8002、操作ボタン8003、シャッターボタン8004等を有する。またカメラ8000には、着脱可能なレンズ8006が取り付けられている。
【0551】
ここではカメラ8000として、レンズ8006を筐体8001から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ8006と筐体が一体となっていてもよい。
【0552】
カメラ8000は、シャッターボタン8004を押すことにより、撮像することができる。また、表示部8002はタッチパネルとしての機能を有し、表示部8002をタッチすることにより撮像することも可能である。
【0553】
カメラ8000の筐体8001は、電極を有するマウントを有し、ファインダー8100のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0554】
ファインダー8100は、筐体8101、表示部8102、ボタン8103等を有する。
【0555】
筐体8101は、カメラ8000のマウントと係合するマウントを有しており、ファインダー8100をカメラ8000に取り付けることができる。また当該マウントには電極を有し、当該電極を介してカメラ8000から受信した映像等を表示部8102に表示させることができる。
【0556】
ボタン8103は、電源ボタンとしての機能を有する。ボタン8103により、表示部8102の表示のオン・オフを切り替えることができる。
【0557】
カメラ8000の表示部8002、及びファインダー8100の表示部8102に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0558】
なお、
図32(A)では、カメラ8000とファインダー8100とを別の電子機器とし、これらを脱着可能な構成としたが、カメラ8000の筐体8001に、表示装置を備えるファインダーが内蔵されていてもよい。
【0559】
図32(B)は、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示す図である。
【0560】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体8203、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バッテリ8206が内蔵されている。
【0561】
ケーブル8205は、バッテリ8206から本体8203に電力を供給する。本体8203は無線受信機等を備え、受信した画像データ等の映像情報を表示部8204に表示させることができる。また、本体8203に設けられたカメラで使用者の眼球やまぶたの動きを捉え、その情報をもとに使用者の視点の座標を算出することにより、使用者の視点を入力手段として用いることができる。
【0562】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に複数の電極が設けられていてもよい。本体8203は使用者の眼球の動きに伴って電極に流れる電流を検知することにより、使用者の視点を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流を検知することにより、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部8201には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使用者の生体情報を表示部8204に表示する機能を有していてもよい。また、使用者の頭部の動きなどを検出し、表示部8204に表示する映像をその動きに合わせて変化させてもよい。
【0563】
表示部8204に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0564】
図32(C)(D)(E)は、ヘッドマウントディスプレイ8300の外観を示す図である。ヘッドマウントディスプレイ8300は、筐体8301と、表示部8302と、バンド状の固定具8304と、一対のレンズ8305と、を有する。
【0565】
使用者は、レンズ8305を通して、表示部8302の表示を視認することができる。なお、表示部8302を湾曲して配置させる好適である。表示部8302を湾曲して配置することで、使用者が高い臨場感を感じることができる。なお、本実施の形態においては、表示部8302を1つ設ける構成について例示したが、これに限定されず、例えば、表示部8302を2つ設ける構成としてもよい。この場合、使用者の片方の目に1つの表示部が配置されるような構成とすると、視差を用いた3次元表示等を行うことも可能となる。
【0566】
なお、表示部8302に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置は、極めて精細度が高いため、
図32(E)のようにレンズ8305を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、より現実感の高い映像を表示することができる。
【0567】
<7−3.電子機器2>
次に、
図32(A)乃至
図32(E)に示す電子機器と、異なる電子機器の一例を
図33(A)乃至
図33(G)に示す。
【0568】
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0569】
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。また、
図33(A)乃至
図33(G)には図示していないが、電子機器には、複数の表示部を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0570】
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0571】
図33(A)は、テレビジョン装置9100を示す斜視図である。テレビジョン装置9100は、表示部9001を大画面、例えば、50インチ以上、または100インチ以上の表示部9001を組み込むことが可能である。
【0572】
図33(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、スピーカ、接続端子、センサ等を設けてもよい。また、携帯情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
【0573】
図33(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信した電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0574】
図33(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子9006を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0575】
図33(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、
図33(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、
図33(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図であり、
図33(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることにより、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0576】
次に、
図32(A)乃至
図32(E)に示す電子機器、及び
図33(A)乃至
図33(G)に示す電子機器と異なる電子機器の一例を
図34(A)(B)に示す。
図34(A)(B)は、複数の表示パネルを有する表示装置の斜視図である。なお、
図34(A)は、複数の表示パネルが巻き取られた形態の斜視図であり、
図34(B)は、複数の表示パネルが展開された状態の斜視図である。
【0577】
図34(A)(B)に示す表示装置9500は、複数の表示パネル9501と、軸部9511と、軸受部9512と、を有する。また、複数の表示パネル9501は、表示領域9502と、透光性を有する領域9503と、を有する。
【0578】
また、複数の表示パネル9501は、可撓性を有する。また、隣接する2つの表示パネル9501は、それらの一部が互いに重なるように設けられる。例えば、隣接する2つの表示パネル9501の透光性を有する領域9503を重ね合わせることができる。複数の表示パネル9501を用いることで、大画面の表示装置とすることができる。また、使用状況に応じて、表示パネル9501を巻き取ることが可能であるため、汎用性に優れた表示装置とすることができる。
【0579】
また、
図34(A)(B)においては、表示領域9502が隣接する表示パネル9501で隔離する状態を図示しているが、これに限定されず、例えば、隣接する表示パネル9501の表示領域9502を隙間なく重ねあわせることで、連続した表示領域9502としてもよい。
【0580】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有することを特徴とする。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機器にも適用することができる。
【0581】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例1】
【0582】
本実施例では、本発明の一形態のトランジスタを作製した。また、トランジスタのId−Vg特性を測定し、GBT試験を行った。
【0583】
[トランジスタの作製]
上記説明したトランジスタ100Eに相当するトランジスタを作製し、当該トランジスタの電気特性を評価した。本実施例においては、以下に示す試料A1及びA2を作製した。
【0584】
なお、試料A1及び試料A2は、トランジスタが形成された試料であり、トランジスタそれぞれのチャネル長Lは、順に3μm及び6μmであり、チャネル幅Wは全て50μmである。
【0585】
[試料A1及びA2の作製方法]
まず、ガラス基板上に厚さ100nmのタングステン膜を、スパッタリング装置を用いて形成した。続いて当該導電膜をフォトリソグラフィ法により加工して、第1のゲート電極として機能する導電膜104を形成した。
【0586】
次に、基板及び導電膜上に絶縁膜を4層積層して積層して、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106を形成した(
図7(A)参照)。絶縁膜106は、プラズマ化学気相堆積(PECVD)装置を用いて、真空中で連続して形成した。絶縁膜106は、下から厚さ50nmの窒化シリコン膜、厚さ300nmの窒化シリコン膜、厚さ50nmの窒化シリコン膜、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜をそれぞれ用いた。
【0587】
次に、絶縁膜106上に酸化物半導体膜108_1_0及び酸化物半導体膜108_2_0を順に形成した(
図7(C)参照。)。次に、当該積層された酸化物半導体膜を島状に加工することで、酸化物半導体膜108を形成した(
図8(A)参照)。酸化物半導体膜108_1_0は、厚さ20nmのIn−Ga−Zn膜を用い、酸化物半導体膜108_2_0は、厚さ25nmのIn−Ga−Zn膜を用いた。
【0588】
酸化物半導体膜108_1_0は、基板温度を130℃として、流量180sccmのアルゴンガスと、流量20sccmの酸素ガスとをスパッタリング装置のチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、インジウムと、ガリウムと、亜鉛とを有する金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])に、2.5kwの交流電力を印加することで形成した。なお、成膜ガス全体に占める酸素の割合から、「酸素流量比」と記載する場合がある。酸化物半導体膜108_1_0の成膜時における酸素流量比は10%である。
【0589】
酸化物半導体膜108_2_0は、酸化物半導体膜108_1_0の成膜条件においてスパッタリングガスの流量を変えて成膜した。具体的には、チャンバーへの酸素ガスの導入を停止し、流量200sccmの酸素ガスをスパッタリング装置のチャンバー内に導入することで形成した。なお、酸化物半導体膜108_2_0の成膜時における酸素流量比は100%である。
【0590】
次に、熱処理を行った。当該熱処理として、加熱温度を350℃とし、窒素雰囲気で1時間熱処理を行った後、窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で、1時間の熱処理を行った。
【0591】
次に、絶縁膜106及び酸化物半導体膜108上に導電膜を形成し、当該導電膜を加工することで、導電膜112a、112bを形成した。ここでは、導電膜としては、厚さ30nmの第1のチタン膜と、厚さ200nmの銅膜とを順にスパッタリング装置を用いて形成した。(
図8(C)参照)。次に、フォトリソグラフィ法により銅膜をエッチングした後、厚さ50nmの第2のチタン膜をスパッタリング装置を用いて形成した。次に、フォトリソグラフィ法により、第1のチタン膜及び第2のチタン膜をエッチングして、
図8(C)に示す形状の導電膜112a、112bを形成した。
【0592】
次に、酸化物半導体膜108の表面(バックチャネル側)をリン酸を用いて洗浄した。
【0593】
次に、絶縁膜106、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に、絶縁膜114を形成し、絶縁膜114上に絶縁膜116を形成した(
図9(A)参照)。絶縁膜114及び絶縁膜116は、プラズマ化学気相堆積(PECVD)装置を用いて、真空中で連続して形成した。絶縁膜114は、厚さ30nmの酸化窒化シリコン膜、絶縁膜116は、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をそれぞれ用いた。
【0594】
次に、熱処理を行った。当該熱処理として、加熱温度は350℃とし、窒素雰囲気で1時間熱処理を行った。
【0595】
次に、絶縁膜116上に導電膜(図示しない。)を形成した。導電膜は、スパッタリング装置を用いて、厚さ6nmのITSO膜を形成した。
【0596】
次に、プラズマ処理法により導電膜に酸素を通過させて、絶縁膜116に酸素を添加した。プラズマ処理法として、酸素ガスを含む雰囲気にてプラズマを放電させた。
【0597】
次に、導電膜をエッチングした。
【0598】
次に、絶縁膜116上に絶縁膜を形成した。絶縁膜は、プラズマ化学気相堆積(PECVD)装置を用い、厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0599】
次に、絶縁膜の所望の領域に開口部を形成した。開口部の形成方法としては、ドライエッチング法を用いた。
【0600】
次に、開口部を充填するように、導電膜を形成し、当該導電膜を島状に加工することで、第2のゲート電極として機能する導電膜を形成した。当該導電膜としては、厚さ100nmのITSO膜を、スパッタリング装置を用いて形成した。
【0601】
次に、絶縁膜、及び導電膜上に絶縁膜を形成した。絶縁膜としては、厚さ1.5μmのアクリル系の感光性樹脂を用いた。
【0602】
以上のようにして、試料A1及び試料A2を作製した。
【0603】
[トランジスタのId−Vg特性]
次に、上記作製した試料A1及び試料A2のトランジスタのId−Vg特性を測定した。なお、トランジスタのId−Vg特性の測定条件としては、第1のゲート電極として機能する導電膜に印加する電圧(以下、ゲート電圧(Vg)ともいう)、及び第2のゲート電極として機能する導電膜に印加する電圧(Vbg)ともいう)を、−10Vから+10Vまで0.25Vのステップで印加した。また、ソース電極として機能する導電膜に印加する電圧(以下、ソース電圧(Vs)ともいう)を0V(comm)とし、ドレイン電極として機能する導電膜に印加する電圧(以下、ドレイン電圧(Vd)ともいう)を、0.1V及び20Vとした。
【0604】
図35(A)(B)に、試料A1及び試料A2のId−Vg特性結果をそれぞれ示す。なお、
図35(A)(B)において、第1縦軸がId(A)を、第2縦軸が電界効果移動度(μFE(cm
2/Vs))を、横軸がVg(V)を、それぞれ表す。なお、電界効果移動度については、Vdを20Vで測定した際の値である。
【0605】
図35(A)(B)に示すように、電界効果移動度が高く、優れたスイッチング特性を有するトランジスタを作製できたことが分かる。
【0606】
[ゲートバイアス−熱ストレス試験(GBT試験)]
次に、上記作製した試料A2の信頼性評価を行った。信頼性評価としては、GBT試験とした。
【0607】
本実施例でのGBT試験条件としては、第1のゲート電極として機能する導電膜及び第2のゲート電極として機能する導電膜に印加される電圧、(以下、ゲート電圧(Vg)という。)を±30V、とし、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜に印加される電圧(以下、それぞれドレイン電圧(Vd)、ソース電圧(Vs)という。)を0V(COMMON)とし、ストレス温度を60℃とし、ストレス印加時間を1時間とし、測定環境をダーク環境及び光照射環境(白色LEDにて約10000lxの光を照射)の2つの環境で、それぞれ行った。すなわち、トランジスタのソース電極とドレイン電極を同電位とし、第1のゲート電極及び第2のゲート電極には、ソース電極及びドレイン電極とは異なる電位を一定時間(ここでは1時間)印加した。
【0608】
また、第1のゲート電極及び第2のゲート電極に与える電位がソース電極及びドレイン電極の電位よりも高い場合をプラスストレスとし、第1のゲート電極及び第2のゲート電極に与える電位がソース電極及びドレイン電極の電位よりも低い場合をマイナスストレスとした。したがって、測定環境と合わせて、プラスGBT(ダーク)、マイナスGBT(ダーク)、プラスGBT(光照射)、及びマイナスGBT(光照射)の合計4条件にて信頼性評価を実施した。なお、プラスGBT(ダーク)をPBTS(Positive Bias Temperature Stress)とし、マイナスGBT(ダーク)を、NBTS(Negative Bias Temperature Stress)とし、プラスGBT(光照射)をPBITS(Positive Bias Illumination Temperature Stress)とし、マイナスGBT(光照射)をNBITS(Negative Bias Illumination Temperature Stress)として、以下記載する。
【0609】
試料A2のGBT試験結果を
図36に示す。また、
図36において、左欄にトランジスタのしきい値電圧の変化量(ΔVth)を示し、右欄にShift値の変化量(ΔShift)を示す。
【0610】
なお、Shift値とは、トランジスタのドレイン電流(Id)−ゲート電圧(Vg)特性における、対数で表されるドレイン電流(Id)の最大の傾きの接線と1×10
−12Aの軸との交点のゲート電圧(Vg)である。また、ΔShiftとは、Shift値の変化量である。
【0611】
図36に示す結果から、試料A2が有するトランジスタは、GBT試験における、しきい値電圧の変化量(ΔVth)及びシフト値の変化量(ΔShift)が、±2V以内であった。したがって、試料A2が有するトランジスタは、高い信頼性を有することが分かる。
【実施例2】
【0612】
本実施例では、本発明の一形態を用いてトランジスタを作製した。また、トランジスタのId−Vg特性を測定し、GBT試験を行った。
【0613】
[トランジスタの作製]
上記説明したトランジスタ100Eに相当するトランジスタを作製し、当該トランジスタの電気特性を評価した。本実施例においては、以下に示す試料B1及びB2を作製した。なお、試料B1及び試料B2は、試料A1及び試料A2と比較して、酸化物半導体膜108_1のZnの原子数に対するInの原子数比が、酸化物半導体膜108_2のZnの原子数に対するInの原子数比より大きい点が異なる。
【0614】
なお、試料B1及び試料B2は、トランジスタが形成された試料であり、トランジスタそれぞれのチャネル長Lは、順に3μm及び6μmであり、チャネル幅Wは全て50μmである。
【0615】
[試料B1及びB2の作製方法]
試料B1及び試料B2はそれぞれ、試料A1及び試料A2と酸化物半導体膜の作製方法が異なる。具体的には、酸化物半導体膜108_1_0と、酸化物半導体膜108_2_0の形成に用いるターゲットの原子数比が異なる。
【0616】
酸化物半導体膜108_1_0は、基板温度を130℃として、流量180sccmのアルゴンガスと、流量20sccmの酸素ガスとをスパッタリング装置のチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、インジウムと、ガリウムと、亜鉛とを有する金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])に、2.5kWの交流電力を印加することで形成した。なお、成膜ガス全体に占める酸素の割合から、「酸素流量比」と記載する場合がある。酸化物半導体膜108_1_0の成膜時における酸素流量比は10%である。なお、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物膜のエネルギーギャップは約3.0eV、電子親和力は約4.4eVである。
【0617】
酸化物半導体膜108_2_0は、基板温度を170℃として、流量100sccmのアルゴンガスと、流量100sccmの酸素ガスとをスパッタリング装置のチャンバー内に導入し、圧力を0.6Paとし、インジウムと、ガリウムと、亜鉛とを有する金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])に、0.5kWの交流電力を印加することで形成した。なお、成膜ガス全体に占める酸素の割合から、「酸素流量比」と記載する場合がある。酸化物半導体膜108_2_0の成膜時における酸素流量比は50%である。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のターゲットを用いて形成したIn−Ga−Zn酸化物膜のエネルギーギャップは約3.2eV、電子親和力は約4.7eVである。
【0618】
[トランジスタのId−Vg特性]
次に、上記作製した試料B1及び試料B2のトランジスタのId−Vg特性を測定した。なお、トランジスタのId−Vg特性の測定条件として、試料A1及び試料A2と同様の測定条件を用いた。
【0619】
図37(A)(B)に、試料B1及び試料B2のId−Vg特性結果をそれぞれ示す。なお、
図37(A)(B)において、第1縦軸がId(A)を、第2縦軸が電界効果移動度(μFE(cm
2/Vs))を、横軸がVg(V)を、それぞれ表す。なお、電界効果移動度については、Vdを20Vで測定した際の値である。
【0620】
図37(A)(B)に示すように、電界効果移動度が高く、優れたスイッチング特性を有するトランジスタを作製できたことが分かる。
【0621】
[ゲートバイアス−熱ストレス試験(GBT試験)]
次に、上記作製した試料B2の信頼性評価を行った。信頼性評価としては、GBT試験とした。なお、GBT試験条件として、試料A1及び試料A2と同様の測定条件を用いた。
【0622】
試料B2のGBT試験結果を
図38に示す。また、
図38において、左欄にトランジスタのしきい値電圧の変化量(ΔVth)を示し、右欄にShift値の変化量(ΔShift)を示す。
【0623】
なお、Shift値とは、トランジスタのドレイン電流(Id)−ゲート電圧(Vg)特性における、対数で表されるドレイン電流(Id)の最大の傾きの接線と1×10
−12Aの軸との交点のゲート電圧(Vg)である。また、ΔShiftとは、Shift値の変化量である。
【0624】
図38に示す結果から、試料B2が有するトランジスタは、GBT試験における、しきい値電圧の変化量(ΔVth)及びシフト値の変化量(ΔShift)が、±3V以内であった。したがって、試料B2が有するトランジスタは、高い信頼性を有すること分かる。
【0625】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。