【0007】
本発明のセメント添加材は、「JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)」のフライアッシュIV種の規定に適合するフライアッシュ100質量部、および、ブレーン比表面積が3,000〜10,000cm
2/gである石炭ガス化スラグ粉砕物15〜400質量部を含むセメント添加材であって、上記石炭ガス化スラグ粉砕物中、CaOの含有率が11.0〜23.0質量%であるものである。
フライアッシュの強熱減量は、本発明のセメント添加材を含むセメント組成物の流動性及び空気連行性の向上や、意匠性の低下(モルタル等の表面の黒色化)の防止の観点から、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは0.1〜4.3質量%、さらに好ましくは0.3〜4.0質量%、特に好ましくは0.5〜3.5質量%である。
フライアッシュのブレーン比表面積は、本発明のセメント添加材を含むセメント組成物の流動性や強度発現性をより向上させるなどの観点から、好ましくは2,000〜5,000cm
2/g、より好ましくは2,200〜4,500cm
2/g、さらに好ましくは2,300〜4,300cm
2/g、さらに好ましくは2,500〜4,000cm
2/g、特に好ましくは2,500〜3,600cm
2/gである。
【0009】
石炭ガス化スラグ粉砕物中、CaOの含有率は、11.0〜23.0質量%、好ましくは13.0〜21.0質量%、より好ましくは14.0〜20.0質量%、特に好ましくは15.0〜19.0質量%である。該含有率が11.0質量%未満であると、本発明のセメント添加材を含むセメント組成物の強度発現性が、該含有率が11.0質量%以上である場合と比べて小さくなる。該含有率が23.0質量%を超える石炭ガス化スラグ粉砕物の入手は困難である。
石炭ガス化スラグ粉砕物中、SiO
2の含有率は、好ましくは43.0〜55.0質量%、より好ましくは44.5〜53.5質量%、特に好ましくは46.0〜51.0質量%である。該含有率が43.0質量%未満である石炭ガス化スラグ粉砕物の入手は困難である。該含有率が55.0質量%以下であれば、本発明のセメント添加材を含むセメント組成物の強度発現性が、該含有率が55.0質量%を超える場合と比べて大きくなる。
石炭ガス化スラグ粉砕物中、Al
2O
3の含有率は、好ましくは15.0〜25.0質量%、より好ましくは16.0〜23.5質量%、特に好ましくは17.0〜22.0質量%である。該含有率が15.0質量%以上であれば、本発明のセメント添加材を含むセメント組成物の強度発現性が、該含有率が15.0質量%未満である場合と比べて大きくなる。該含有率が25.0質量%を超える石炭ガス化スラグ粉砕物の入手は困難である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)セメント;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)フライアッシュA;「JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)」のフライアッシュIV種の規定に適合するもの、ブレーン比表面積:3,180cm
2/g、強熱減量:0.8質量%、材齢28日における活性度指数:75、材齢91日における活性度指数:85
(3)フライアッシュB;「JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)」のフライアッシュIV種の規定に適合するもの、ブレーン比表面積:2,350cm
2/g、強熱減量:4.0質量%、材齢28日における活性度指数:71、材齢91日における活性度指数:83
(4)石炭ガス化スラグ粉砕物A〜C;表1参照
(5)細骨材;「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に規定する標準砂
(6)水;水道水
【0016】
【表1】
【0017】
[実施例1〜8、比較例1〜4、参考例2〜4]
フライアッシュAと、表2に示す種類の石炭ガス化スラグ粉砕物を、表2に示す配合で混合してセメント添加材を調製した。
普通ポルトランドセメントと、得られたセメント添加材を、普通ポルトランドセメント及びセメント添加材の合計100質量%中、セメント添加材の含有率が25質量%となるような配合で混合してセメント組成物を調製した。
得られたセメント組成物について「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、モルタルのフロー値、及び、材齢28日、91日におけるモルタルの圧縮強さを測定した。
結果を表2に示す。なお、表2中、モルタルのフロー値は、「フロー値」として表記した。表3〜4も同様である。
[参考例1]
普通ポルトランドセメントについて、実施例1と同様にして、モルタルのフロー値、及び、材齢28日、91日におけるモルタルの圧縮強さを測定した。
結果を表2〜3に示す。
【0018】
【表2】
【0019】
[実施例9〜10]
フライアッシュAと石灰ガス化スラグ粉砕物Aと普通ポルトランドセメントを含むセメント組成物について「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、モルタルのフロー値、及び、材齢28日、91日におけるモルタルの圧縮強さを測定した。フライアッシュA、石灰ガス化スラグ粉砕物A、及び普通ポルトランドセメントは、モルタルを混練する際に、別々にミキサに投入した。
フライアッシュA及び石灰ガス化スラグ粉砕物Aの組み合わせであるセメント添加材は、表3に示す配合に従った。また、セメント組成物は、普通ポルトランドセメント及びセメント添加材の合計100質量%中、セメント添加材の含有率が25質量%となるような配合とした。
結果を表3に示す。
【0020】
【表3】
【0021】
[実施例11]
フライアッシュAの代わりにフライアッシュBを使用したこと以外は、実施例2と同様にして、モルタルのフロー値、及び、材齢28日、91日におけるモルタルの圧縮強さを測定した。
[比較例5]
フライアッシュAの代わりにフライアッシュBを使用したこと以外は、比較例1と同様にして、モルタルのフロー値、及び、材齢28日、91日におけるモルタルの圧縮強さを測定した。
結果を表4に示す。
【0022】
【表4】
【0023】
表2、4から、比較例1(普通ポルトランドセメントとフライアッシュAからなるセメント組成物)又は比較例5(普通ポルトランドセメントとフライアッシュBからなるセメント組成物)と、参考例1(普通ポルトランドセメントのみからなるセメント組成物)を比較すると、比較例1及び比較例5の各材齢におけるモルタルの圧縮強さは、各々、参考例1の各材齢におけるモルタルの圧縮強さよりも小さいことがわかる。
このことから、セメントの一部をフライアッシュに置き換えた場合、セメント組成物の強度発現性(特に、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さ)が低下することがわかる。
表2から、実施例1〜4(フライアッシュA及び石炭ガス化スラグ粉砕物Aを用いたセメント組成物)の各材齢におけるモルタルの圧縮強さは、比較例1(普通ポルトランドセメントとフライアッシュAからなるセメント組成物)の各材齢におけるモルタルの圧縮強さよりも大きいことがわかる。
また、実施例5〜8(フライアッシュA及び石炭ガス化スラグ粉砕物Bを用いたセメント組成物)の各材齢におけるモルタル圧縮強さは、比較例1の各材齢におけるモルタルの圧縮強さよりも大きいことがわかる。
表2から、比較例2〜4(フライアッシュA及びブレーン比表面積が2,500cm
2/gの石炭ガス化スラグ粉砕物Cを用いたセメント組成物)の各材齢におけるモルタルの圧縮強さは、比較例1及び参考例1の各材齢におけるモルタルの圧縮強さよりも小さいことがわかる。
表2、3から、実施例2〜3(予め混合したセメント添加材と普通ポルトランドセメントを混合してなるセメント組成物を用いた場合)と、実施例9〜10(モルタルを混練する際に各材料を別々にミキサに投入した場合)を比較すると、モルタルのフロー値及びモルタルの圧縮強さは同程度であることがわかる。
表4から、実施例11(フライアッシュB及び石炭ガス化スラグ粉砕物Aを用いたセメント組成物)の各材齢におけるモルタルの圧縮強さは、比較例5(普通ポルトランドセメントとフライアッシュBからなるセメント組成物)の各材齢におけるモルタルの圧縮強さよりも大きいことがわかる。
これらのことから、本発明のセメント添加材によれば、「JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)」のフライアッシュIV種の規定に適合するフライアッシュを含むにもかかわらず、該フライアッシュを含むセメント組成物の強度発現性の低下を抑制しうることがわかる。