(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976814
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】スピニングリール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
A01K89/01 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-208773(P2017-208773)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2019-80505(P2019-80505A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 卓司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】池袋 哲史
(72)【発明者】
【氏名】出口 友哉
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−97581(JP,A)
【文献】
特開2017−216946(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0181406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に釣り糸を繰り出すスピニングリールであって、
収容空間を含む収容部、前記収容部の側面に形成される開口部、及び前記収容部の前方に配置される筒状部、を有するリール本体部と、
前記開口部を封鎖する蓋本体部、及び前記蓋本体部から前方に突出する突出部、を有する前記蓋部材と、
を備え、
前記突出部は、側面視において前記筒状部と重複し、
前記筒状部は、外周面上に形成された凹部を有し、
前記突出部は、前記凹部内に収容される、
スピニングリール。
【請求項2】
前記突出部の外側面は、前記筒状部の外周面と面一である、
請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記突出部の外側面は、前記蓋本体部の外側面と同一面上にある、
請求項1又は2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記蓋部材は、前記突出部と前記蓋本体部との境界部の内側面から延びる壁部をさらに有し、
前記筒状部は、前記壁部と対向する底部を有する、
請求項1から3のいずれかに記載のスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールは、リール本体、ロータ、スプール、及びハンドルを備えている。ハンドルを回転させると、ロータが回転してスプールに釣り糸を巻き付ける。
【0003】
リール本体は、リール本体部と、蓋部材とを有する。リール本体部は、内部に収容空間を有し、駆動機構、及びオシレーティング機構などを収容している。また、リール本体部は、側面に開口部を有する。この開口部は、蓋部材によって封鎖される。リール本体部は、筒状部を前部に有する。この筒状部に、ワンウェイクラッチなどが装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−136338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような構成のスピニングリールは、
図6に示すように、筒状部230と蓋部材30との境界部に形成される溝40が、釣糸の巻き付け方向、すなわち、筒状部230の円周方向に、略平行に直線状に延びている。このため、フランジ部が形成されていない場合などは、この境界部に形成される溝40に釣り糸が落ち込むおそれがあるという問題がある。そこで、本発明の課題は、筒状部と蓋部材との境界部の溝に釣り糸が落ち込むことを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係るスピニングリールは、前方に釣り糸を繰り出すように構成されている。このスピニングリールは、リール本体部と、蓋部材とを備える。リール本体部は、収容空間を含む収容部、収容部の側面に形成される開口部、及び収容部の前方に配置される筒状部、を有する。蓋部材は、開口部を封鎖する蓋本体部、及び蓋本体部から前方に突出する突出部、を有する。突出部は、側面視において筒状部と重複する。
【0007】
この構成によれば、突出部が側面視において筒状部と重複しているため、突出部は、釣り糸の巻き付け方向に直線状に延びる溝に対して、横断するように延びる。このため、釣り糸が溝に落ち込むことを防止することができる。
【0008】
好ましくは、筒状部は、外周面上に形成された凹部を有する。そして、突出部は、凹部内に収容される。
【0009】
好ましくは、突出部の外側面は、筒状部の外周面と面一である。
【0010】
好ましくは、突出部の外側面は、蓋本体部の外側面と同一面上にある。
【0011】
好ましくは、蓋部材は、突出部と蓋本体部との境界部の内側面から延びる壁部をさらに有する。そして、筒状部は、壁部と対向する底部を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、筒状部と蓋部材との境界部の溝に釣り糸が落ち込むことを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るスピニングリールの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1はスピニングリール100の側面図である。なお、本明細書において、釣り糸が繰り出される方向を「前」と称し、釣り糸が巻き取られる方向を「後」と称する。また。釣竿に装着された状態において釣竿に近付く方向を「上」、釣竿から離れる方向を「下」と称する。
【0015】
[全体構成]
図1に示すように、スピニングリール100は、リール本体110、スプール120、ロータ130、ハンドル140、及び釣糸案内機構150を備えている。スピニングリール100は、前方に釣り糸を繰り出すように構成されている。
【0016】
[リール本体の概要]
リール本体110は、内部に収容空間を有しており、種々の機構を収容している。例えば、リール本体110は、ロータ130を回転させるロータ駆動機構(図示省略)、及びスプール120を前後移動させるオシレーティング機構(図示省略)などを収容している。リール本体110の詳細については後述する。
【0017】
[スプール]
スプール120は、釣糸が巻き付けられる部材である。スプール120は、略円筒状である。ハンドル140を回転させると、スプール120は前後方向に往復移動する。スプール120は、糸巻胴部121及びスカート部122を有する。糸巻胴部121は、円筒状であり、外周面に釣り糸が巻き付けられる。スカート部122は、円筒状であり、糸巻胴部121よりも径が大きい。
【0018】
[ロータ及び釣糸案内機構]
ロータ130は、スプール120に釣糸を巻き付けるための部材である。釣糸案内機構150は、釣糸をスプール120へと案内する機構である。ハンドル140を回転させると、ロータ130はスプール120の中心軸を中心に回転する。そして、ロータ130とともに回転する釣糸案内機構150は、釣糸をスプール120へと案内する。
【0019】
ロータ130は、ロータ本体部131と、一対のロータアーム132を有している。ロータ本体部131は、円筒状である。ロータ本体部131は、後端部を除いて、スカート部122内に配置される。
【0020】
一対のロータアーム132は、ロータ本体部131の外周面から前方に向かって延びている。一対のロータアーム132は、ロータ本体部131の周方向において、互いに反対側の位置に配置されている。そして、釣糸案内機構150は、一対のロータアーム132に、揺動可能に取り付けられている。
【0021】
[リール本体の詳細]
リール本体110は、リール本体部2及び蓋部材3を有している。リール本体110には、ハンドル140が回転可能に取り付けられる。また、リール本体110は、釣竿に装着される。
【0022】
[リール本体部]
図2に示すように、リール本体部2は、収容部21、開口部22、筒状部23、及び取付脚24を有する。収容部21、筒状部23、及び取付脚24は、1つの部材によって形成されている。
【0023】
収容部21は、内部に収容空間を有する。この収容部21の収容空間内に、上述したロータ駆動機構及びオシレーティング機構などが収容される。収容部21から取付脚24が上方に延びている。この取付脚24は、釣竿に装着されるように構成されている。
【0024】
開口部22は、収容部21の側面に形成される。開口部22は、収容空間を外部空間に開口する。開口部22は、収容部21の側面全体に形成されている
【0025】
筒状部23は、収容部21の前方に配置される。筒状部23は、円筒状である。筒状部23は、ロータ130のロータ本体部131内に配置される。
【0026】
筒状部23は、外周面上に形成された凹部231を有する。凹部231は、筒状部23の外周面上において、開口部22が形成される側に形成される。凹部231は、後方に向かって開口する。
【0027】
筒状部23の下端面は、収容部21の下端面よりも下方に位置している。また、リール本体部2において、筒状部23の下端面が最も下側に位置する。筒状部23と収容部21との間には円板状のフランジ部は形成されない。
【0028】
[蓋部材]
図1に示すように、蓋部材3は、リール本体部2の開口部22を封鎖するように構成されている。
図3に示すように、蓋部材3は、蓋本体部31及び突出部32を有する。なお、蓋部材3は、ロータ本体部131との隙間を埋めるための円板状のフランジ部を有していない。
【0029】
蓋本体部31は、開口部22を封鎖する。蓋本体部31は、開口部22の一回り大きい形状を有する。蓋本体部31は、例えば、ボルトなどによって、リール本体部2に固定される。
【0030】
突出部32は、蓋本体部31から前方に突出する。
図4に示すように、突出部32は、側面視において筒状部23と重複する。突出部32が筒状部23と重複する長さLは、前後方向において、2〜3mm程度である。突出部32は、筒状部23の凹部231内に収容される。突出部32及び凹部231は、側面視において、例えば矩形状である。
【0031】
図5に示すように、突出部32の外側面は、筒状部23の外周面と面一である。なお、突出部32の外側面と、筒状部23の外周面とは、完全に面一でなくてもよい。例えば、突出部32の外側面と、筒状部23の外周面との間に、0.5〜1mm程度の段差があってもよい。なお、突出部32の厚さtは、例えば、2.5〜3.5mm程度である。
【0032】
突出部32の外側面は、蓋本体部31の外側面と同一面上にある。すなわち、突出部32と蓋本体部31との間に段差部が形成されていない。突出部32と蓋本体部31とは、互いに滑らかに繋がっている。このように、蓋部材3は、ロータ本体部131との隙間を埋めるための円板状のフランジ部を有していない。なお、蓋部材3は、円板状のフランジ部を有していてもよい。
【0033】
蓋部材3は、突出部32と蓋本体部31との境界部の内側面から延びる壁部33をさらに有している。そして、筒状部23は、壁部33と対向する底部232を有する。
【0034】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0035】
変形例1
上記実施形態では、蓋部材3は、1つの突出部32を有しているが、複数の突出部32を有していてもよい。
【0036】
変形例2
上記実施形態では、蓋部材3の突出部32は、凹部231内に収容されているが、この構成に限定されない。例えば、筒状部23は、凹部231を有していなくてもよい。この場合、突出部32は、筒状部23の外周面の一部を覆うように配置される。
【符号の説明】
【0037】
100 スピニングリール
2 リール本体部
21 収容部
22 開口部
23 筒状部
231 凹部
3 蓋部材
31 蓋本体部
32 突出部