(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
義歯を作り上げる伝統的な方法は、幾つかのアポイントメントをとる多大な労力を必要とするプロセスである。総義歯を作り上げるための現在の標準プロセスは、以下に記載される多くの工程を含み得る。
【0003】
第一に、患者の口腔の初期の印象が、初期の訪問の間に取られる。印象は、診断用模型を形成するためにイエローストーン(yellow stone)とともに注がれる。個人トレーが、合成物またはレジン床を用いて患者の鋳型から作られる。個人トレーは、患者の口内で試され、軟組織へと深く伸長しすぎないように調節される。個人トレーを縁成形するために、灰色のスティック化合物(stick compound)、熱可塑性化合物、または粘性印象材が使用され、前庭深さの解剖学的構造を捕らえる。個人トレーは、印象材を充填され、最終的な印象は患者の口腔から取られる。最終的な印象は、箱詰め及び数珠状にされ(boxed and beaded)(最終的な印象のまわりの壁を構築するために使用される技術)、最終的な鋳型のためにグリーンストーン(green stone)とともに注がれる。義歯床は、最終的な印象の鋳型からの合成物またはレジン床から作られる。咬合堤は、ワックスから及び標準化された測定値に対して(to)作られる。顎関係は、患者の口内の咬合堤とともに実行され、同一平面上となるように調節される。咬合堤の縁は切縁に対応している。鋳型を咬合器上に載せるために、顔弓移動が行われる。歯、義歯材料、および咬合設計が選択される。咬合堤からワックスが除去され、前義歯が上顎および下顎の弓に置かれる。前義歯を有する咬合堤は、患者の口内で試される。顎関係が繰り返される。咬合堤からワックスが除去され、後義歯が上顎および下顎の弓に置かれる。前後の義歯を有する咬合堤は、患者の口内で試される。顎関係は繰り返される。中心位が確認される。咬合堤および記録床は、義歯の形成操作のために送られる。義歯は、患者に送達され、必要に応じて調節される。上記からわかるように、完全な総義歯を作り上げるための現在の標準プロセスは、患者にとってかなり長く、複雑であり、不都合ある。
【0004】
部分的な義歯を作り上げるための現在の標準プロセスは、以下に記載される多くの工程を含み得る。患者の口腔の初期の印象は、初期の訪問の間に取られる。印象は、診断用模型を形成するためにイエローストーンとともに注がれる。フレームワーク、歯の選択、および鉤設計が決定される。個人トレーは、合成物またはレジン床で患者の鋳型から作られる。輪郭調整のレストおよび高さに対する歯への変更は、口腔内で行われる。個人トレーは、患者の口内で試され、軟組織へと深く伸長しすぎないように調節される。個人トレーを縁成形するために、灰色のスティック化合物、熱可塑性化合物、または粘性印象材が使用される。個人トレーは、印象材を充填され、最終的な印象は患者の口腔から取られる。最終的な印象は、箱詰め及び数珠状にされ(最終的な印象のまわりの壁を構築するために使用される技術)、最終的な鋳型のためにイエローストーンとともに注がれる。最終的な鋳型は研究所に送られ、各弓に対してフレームワークが作成される。フレームワークは、患者の口内で試され、必要に応じて調節される。咬合堤は、ワックスからフレームワーク上に及び標準化された測定値に対して構築される。顎関係は、患者の口内の咬合堤とともに実行され、同一平面上となるように調節される。咬合堤の縁は切縁に対応している。鋳型を咬合器上に載せるために、顔弓移動が行われる。咬合堤からワックスが除去され、歯が置かれる。義歯を有する咬合堤は、患者の口内で試される。顎関係は繰り返される。中心位が確認される。咬合堤およびフレームワークは、義歯の形成操作のために送られる。義歯は、患者に送達され、必要に応じて調節される。
【0005】
完全および部分的な義歯を作り上げるための上記の従来の手順は、5のアポイントメント、各印象に対する幾つかの材料、義歯を作り上げるための熟練労働、および口腔内で作られる複数の不快且つしばしば乱雑な印象を必要とする。
【0006】
最近、義歯の成形プロセスをよりコストおよび時間効率の良いプロセスにするために、新しい装置および手順が開発された。例えば、Howeは、義歯のデジタル版を設計するために患者の口腔の3D画像を使用する技術を開発した(特許番号:8,641,938 B2)。記録床および咬合堤は、顎関係に対して選択された材料から加工され、その後、デジタルで調節される。咬合堤のかなりの部分は加工されて除去され、より審美的な材料が注がれ、その場所で硬化され、これは、その後、歯の輪郭へと加工される。
【0007】
完全および部分的な義歯の両方に対するCAD/CAM設計が、市場に存在する。「熱溶解積層法」は、義歯を作り上げるために使用される3D印刷の形態であり、義歯の3D画像を構築するために、材料の微小液滴がx−y平面において排出される。義歯は、患者の口腔の3D画像を必要とする義歯の3Dモデルから作成される。しかしながら、このプロセスにおいて作成された義歯は摩耗耐性が低い。歯科用補綴物を製造するための当該技術分野における当業者に公知の3D印刷の別の形態は、光造形法である。
【0008】
代替的に、幾つかのグループは、義歯を設計するためにコンピューターモデリングを使用しているが、加工された義歯床を有しているだけである。これらの義歯床は、しばしば、検査技師が義歯を作成するときに置く歯に対する場所に対応する穴で加工される。
【0009】
Fisker(米国特許公開番号2013/0316302 A1)は、1つの材料において仮想歯を及び別の材料において歯肉部を事実上モデル化する、およびその後、加工するか又は3D印刷するために、患者の口腔の3D画像を使用する技術の特許を取った。その後、歯および歯肉部は、両方の成分の設計に組み込まれた特有のアタッチメントシステムでつながれる。
【0010】
Scottsdale AZのAvadent(登録商標) Digital Dental Solutionsは、現在、わずか2回の往診での義歯の成形を提供している。最初の往診の間に、医師は、印象を取るために、Avadent(登録商標) によって提供されたAnatomical Measuring Deviceを使用する。印象は、Avadent’s(登録商標) の研究室に送られ、ここで、それはスキャンされ、歯を設定する及び顎関係を実行するためにアルゴリズムが使用される。理想的な設計を決定した後に、Avadent(登録商標) は、置かれ及び結合される人工歯に対する対応する穴を用いて記録床を加工するか、または多色性の材料から義歯全体を加工する。義歯は、検査技師によって磨かれて、検査され、検査技師は、医師に義歯を送り返す前に、最終製品を仮想設計と比較する。
【0011】
縁成形を得ない及び前庭の解剖学的構造を捕らえないシステムは、多くの医師によって劣っていると考えられている。縁成形は、個人トレーの周縁のカスタマイゼーションを可能にする不可欠な手順であり、これは、前庭を正確に捕らえ、最適な義歯の維持および安定性を確かなものとするのに重要である。
【0012】
上記の例はすべて、デジタル義歯の現在の実施例であり、患者の口腔の3Dモデルを必要とする。各技術は、現在、患者の口腔の物理的な印象を取り、その後、3Dモデルを開発するために、それをネガとしてスキャンする。
【0013】
口腔内スキャナーは、現在、歯冠および橋義歯のために調製された歯をスキャンするために使用される。これらの調製物をスキャンする前に、歯肉溝組織は、しばしば、歯頚部と歯肉組織との間でhemodentに浸されたパッキング用のコード(packing cord)によって圧排され(retracted)、10分後に除去される。このコードは、最終的なレンダリングにおける調製物の縁をより良く検出し、理想的な適合する歯冠を作成するために、調製物の縁と軟組織との間に空間を作るために使用される。歯肉下にある縁のスキャンを行うときに、圧排コードが除去された後に歯肉溝組織が縁の上に重なるために、明確な縁とともにレンダリングを得ることは特に困難になりかねない。
【0014】
現在の方法および装置が歯肉下の縁を検出することができないことは、産業上の課題の1つであり、これによって、多くの医師は歯科用補綴物を調製する方法を変えなければならない。理想的に、歯冠の場合には、例えば、医師は、歯冠調製物(preparation)の縁を、およそ1mm歯肉下に位置付けるように努め、その結果、歯冠が置かれると縁は可視ではない。現在のスキャナーが歯肉下領域をスキャンすることができないため、歯肉下のスキャンが必要であるときに、口腔内スキャナーを使用する医師は、それらの縁を歯肉縁に又はその上に置く。結果として、口腔内スキャナーの使用は後方歯に委ねられ(relegated)、ここで、縁は可視ではなく、伝統的な歯の調製および印象法が、前歯およびより審美的な事例に使用される。
【0015】
この不足を克服するための試みがなされており、それには、縁を検出するために軟組織および流体をスキャンするレーダー式のシステムの開発を含む。しかしながら、これは新しく複雑な試みである。したがって、医師が明確な縁とともにレンダリングを容易に得ることができる方法および装置が必要とされている。
【0016】
他の場合には、歯肉溝組織は電気手術によって圧排される。多くの場合には、電気手術およびhemodentに浸されたパッキング用の圧排コードの両方を用いると、出血があり得る。湿気は、歯冠辺縁をデジタルで捕らえる医師の能力を妨げる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
3D画像または映像をレンダリングし、あるいは、鋳型の陽性または陰性、あるいは、補綴物または補綴物の構成要素を3D印刷するなどの体腔の3Dモデルを提示するために、患者の口腔または結腸のような体腔のデジタル画像を記録するための方法と装置が記載されている。以下の記載では、本発明を十分に理解するべく、説明のために多くの特定の詳細が明記されている。しかしながら、こうした特定の詳細がなくとも本発明を実行可能であることが当業者には明らかとなるであろう。他の例では、本発明を不必要に不明瞭にすることがないように周知の構造とデバイスはブロック図の形で示している。
【0028】
別段の定めのない限り、図面と詳細な記載では、図面の同じ参照番号は同じ要素、特徴、および構造を指すことを理解されたい。こうした要素の相対的な大きさと描写は分かりやすくするために誇張されることがある。さらに、要素が別の要素に「接続される」ものとして参照されている場合、その要素が他の要素に直接接続されることもあれば、あるいは、介在する要素が存在することもあることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載するためにあり、本開示を制限することを意図していない。
【0029】
いくつかの特徴は個々の典型的な実施形態に関して記載されることもあるが、1つ以上の典型的な実施形態からの特徴が1つ以上の典型的な実施形態からの他の特徴と組み合わせ可能となるように、態様はそれらの実施形態に限定される必要はない。
【0030】
広い範囲を説明する数値の範囲とパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の非限定的な例で説明される数値はできるだけ正確に報告される。しかしながら、どんな数値も、本明細書を書く時点でのそれぞれの試験測定値で見られる標準偏差に必ず起因する特定の誤差を本質的に含む。さらに、文脈から明らかでない限り、本明細書で提示される数値は、最下位桁により与えられる言外の精度を有する。したがって、値1.1とは1.05から1.15までの値を意味する。用語「約(about)」は、所定の値を中心とするより広い範囲を示すために使用され、文脈から明らかでない限り、「約1.1」が1.0から1.2までの範囲を意味するなど、最下位桁の付近の広範な範囲を意味する。最下位桁が不明瞭である場合、用語「約」は2の係数を意味し、例えば、「約X」とは約0.5Xから2Xまでの範囲の値を意味し、例えば、約100は50から200までの範囲の値を意味する。さらに、本明細書で開示されるすべての範囲は、本明細書で含まれる全ての部分範囲を包含するように理解されるものとする。例えば、「10未満」の範囲は、ゼロの最小値と10の最大値との間の(およびこれらを含む)全ての部分範囲、すなわち、0以上の最小値と10以下の最大値を有するすべての部分範囲、例えば、1〜4を含み得る。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態は、義歯のような歯科用補綴物の製作の文脈で以下に記載される。しかしながら、本発明はこの文脈には制限されない。他の実施形態において、本発明は、歯冠や矯義歯などの他の歯科用補綴物の文脈で、または、内視鏡、結腸内視鏡、腹腔鏡、関節鏡などの他の光プローブを用いて検査される被験体の身体の他の管腔の3Dモデルを開発するために、使用されてもよい。
【0032】
1.概観
歯科用補綴物を作り上げるために使用される被験体の口腔の画像のような体腔の3D画像を、光プローブ中の光センサーを用いて記録するための技術が提供される。後者の実施形態では、ある領域の3D画像は、光センサーによって口腔をスキャンし、その領域の静止画像、映像、または静止画像と映像の組み合わせを撮影する口腔内スキャナーを使用して得られる。光プローブは、組織の弾性に基づいた量でスキャンされる領域から組織を偏向させるか、あるいは軟組織によって覆われた表面から軟組織をさらに分離させる流体噴流を方向づけるノズルを備え、それによって、以前は覆われていたスキャンされる表面/領域の視野を光センサーに与える。流体噴流は、画像化領域を漏出した口腔内流体(例えば、血液や唾液)のない状態に保ち、それによりその領域をうまく分離させることもある。さらに、流体噴流は流体が光センサー上に跳ね返るのを防ぐこともある。
【0033】
以下の記載の多くの実施形態では、典型的な体腔は口腔であり、典型的な流体は空気である。様々な実施形態では、ノズルは、流体供給部と、重力供給部、ポンプ、あるいはチューブおよびプランジャーの配置(プランジャーは手動でまたはモーターを使用して作動する)を備えるノズルなどの流体供給部からの流体に対する圧力源とに流体連通している。任意の液体あるいはガス状流体は水または食塩水などの軟組織を移動させる役目を果たすこともある。しかしながら、口腔内スキャナーによって撮られる画像に干渉しないため、透明なガス状流体が好ましい。ガスなどの乾燥した流体は管腔で湿気を取り除くことができる。さらに、患者に無害な透明な流体は、安全性と良好な画像化の両方のために好ましい。例証される実施形態の多くでは、流体は空気である。しかしながら、高濃度の酸素、窒素、二酸化炭素、貴ガスなどの当該技術分野で知られている他のものも、単独であるいはいくつか組み合わせて使用されてもよい。
【0034】
さらに他の態様、特徴、および利点は、本発明を実行するために企図される最良の形態を含む、多くの特定の実施形態と実施を単に例証することにより、以下の詳細な記載から容易に明白である。さらに、他の実施形態は他のおよび様々な特徴と利点も例証でき、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、その詳細のいくつかを様々な明らかな点で修正することができる。それに応じて、図面と記載は自然界で例示的なものであり、かつ限定的ではないと見なされるものとする。
【0035】
例証されるデバイスは、空気ノズルなどの埋め込まれたあるいは取り付けられた1つ以上の流体ノズルを備えた3Dの口腔内スキャナーである。口腔内の硬組織をスキャンする場合、デバイスは最新の口腔内スキャナーと同じ方法で使用される。軟組織、とりわけ、前庭をスキャンする場合、1つ以上の流体ノズルは、負荷力を与えるために、かつ以前は縁成形によってでしか得られなかった口腔の解剖学的構造のような軟組織解剖学的構造を捕らえるために、一定あるいは調整可能な圧力で流体を吹きつける。流体圧力は、歯冠辺縁をスキャンする際に歯肉溝の圧排をもたらして維持するのに役立つ。いくつかの実施形態では、流体は乾燥しており、例えば、流体は、含むにしても水蒸気飽和水準よりも低い水蒸気を含んだ気体であり、その結果、湿気は、光センサーを考慮して衝突する気体によって乾かされる。
【0036】
スキャナーは、体腔の3Dモデルに基づいて、体腔のデジタル3Dモデルを、画像または他の種類の出力(例えば、3Dの回転可能な画像または映像、3D印刷した出力または3D加工した(milled)オブジェクト)としてレンダリングするために、スキャナーによって得られたデジタル画像データを保持および分析する、ソフトウェアを備えたコンピュータなどのプロセッサーに物理的に、あるいは無線接続される。例えば、この3Dモデルは、記録床を加工または3D印刷するために使用可能であり、あるいは物理的な最終的な印象をスキャンする他のデジタル義歯方法を補足することができる。
【0037】
本明細書で開示される方法とデバイスにより、例えば、医師は、高価で汚い印象材を使用することなく、最初の面談時に同等のまたは改良された最終印象の詳細を用いて、患者の口腔の3Dデジタルモデルを作り出すことができる。この方法と技術は、記録床を設計および加工することができる元となる口腔内の3D画像を提供することにより、およびその後、実験技術者に顎関係のための咬合堤を開発させ、最終的に手動で歯をセットさせることにより、従来の義歯の製造を支援するために使用可能である。その代わりに、該方法と技術は、デバイスが口腔のスキャンに基づいて義歯床と咬合堤または義歯全体を作り上げる高度なデジタル義歯手順に対して、物理的な印象の代わりに使用可能である。両方を使用することで、医師と患者の両方にとって材料、手間、および時間を節約することできる。
【0038】
さらに、本出願で開示される方法と装置は、歯肉溝を空気で満たすことにより歯冠と矯義歯のために用意された歯をスキャンし、コードによってもたらされた圧排を維持しつつ、歯肉下の辺縁部を捕らえる医師の能力を高めることができる。さらに、空気ノズルからの気流は、歯面と歯肉溝組織の分離を維持しつつ、対象領域の湿気を制御する医師の能力を著しく高め、それにより、歯冠をスキャンし、かつデジタルで永久的な歯冠を作成するのに理想的な条件を可能にする。さらに、光センサーによって捕えられた画像中の目に見えるくぼみを生ずるなどのガス圧力に対する組織の反応は、口腔または結腸または他の体腔中の組織の弾性特性を指すことがあり得る。
【0039】
2.典型的な実施形態
図1は、従来技術に基づいて、患者の口腔の3D画像を記録し、3D画像を使用して歯科用補綴物を製造するための典型的な装置の図である。該装置は口腔内スキャナー(102)、口腔内スキャナー(102)によってスキャンされたデータを解釈するように構成されたソフトウェアを保存および実行するためのコンピュータ(104)、ディスプレイ(106)、および加工ユニット(108)を含んでいる。加工ユニットの典型的なメーカーとしては以下が挙げられる:Roland DGA Corp.; Sirona; E4d; Origin; Glidewell Laboratories; Zubler USA; Zirkonzahn USA; Schutz Dental; Jensen Dental; Ivoclar Vivadent; Datron Dynamics; Creo Dental Systems; CadBlu Inc.; B&D Dental Technologies (Origin); Amann Girrbach GmbH; Axsys Dental Solutions; Carestream Dental; Nobel Biocare;および3M。
【0040】
いくつかの実施形態では、装置(100)の要素は互いに有線通信している一方で、他の実施形態では、要素は互いに無線通信している。口腔内スキャナー(102)は少なくとも1つの光センサー(112)を含み、患者の口腔をスキャンし、かつコンピュータ(104)にデータを送信するように構成される。コンピュータ(104)は、データを解釈し、かつ患者の口腔内の3Dモデル(110)を開発するためにソフトウェアを使用する。一実施形態では、3Dモデルに基づいた画像がディスプレイ(106)に示される。一実施形態では、記録床、咬合堤、あるいは潜在的には義歯全体を加工するために、3Dモデル(110)は3D設計として使用される。他の実施形態では、記録床、咬合堤、あるいは義歯全体を作るために、3Dモデルは3Dプリンターによって使用される。3Dプリンターの典型的なメーカーとしては以下が挙げられる:EnvisionTec; FormLabs; Javelin Technologies; BEGO;および、Stratasys。典型的な3Dプロセスは熱溶解積層法と光造形法の融合型を含む。
【0041】
図2は、1つの実施形態に係る、内腔スキャナー(260)、加圧流体保管ユニット(218)、およびコンピュータ(104)を含む、患者の口腔内の3D画像を記録する典型的な装置(250)を例証する。内腔スキャナ(260)は、少なくとも1つの流体ノズル(202)を有する流体ノズル配置(200)を含む。流体ノズル(202)は、軟組織上に送達可能であり、かつ、単独でまたは他の流れと組み合わせて、軟組織を移動させるのに十分な力を与えることができる、流体の流れを生成するように構成される構造である。一実施形態では、構造は簡易な直線の導管に類似する。別の実施形態では、その構造は、閾値量の流体の視準が確実に実現されるように、必要に応じてより複雑な形をとることがある。任意の液体あるいはガス状流体は軟組織を移動させる役目を果たすことがある。しかしながら、内腔スキャナ(260)によって写される画像に干渉しないため、透明なガス状流体が好ましい。さらに、患者に無害な透明な流体が好ましい。一実施形態では、流体は空気である。しかしながら、従来技術で知られている他のものが使用されてもよい。この典型的な実施形態では、流体ノズル(202)は、内腔スキャナ(260)のスキャナーヘッド(204)に一体的に形成される。例証的な典型的な実施形態では、光センサー(240)の視野計(206)に関して配置された4つの(4)流体ノズル(202)がある。この典型的な実施形態では、光センサー(240)はスキャナーヘッド(204)の内部に収容される。様々な実施形態では、光センサーは、単一のセンサー、あるいは1次元または2次元の電荷結合素子(CCD)アレイのようなセンサーのアレイである。しかしながら、いくつかの実施形態では、光センサー(240)は内腔スキャナ(260)の外部表面(210)から突出するか、あるいは該外部表面に固定される。同様に、この典型的な実施形態では、流体ノズル(202)はスキャナーヘッド(204)の内部に収容される。しかしながら、いくつかの実施形態では、流体ノズル(202)は内腔スキャナ(260)の外部表面(210)から突出するか、あるいは該外部表面に固定される。流体ノズル(202)はそれぞれ、流体噴流(212)の形態の流体を、光センサー(240)の視野(214)へと放出する。
図2は4つの流体ノズル(202)だけを示しているが、他の実施形態では、スキャンされている軟組織を移動させ安定させるために、流体ノズル(202)の様々な構成を使用することができる。さらに、一実施形態では、流体ノズル(202)は
図2に示されるような平行の流体噴流(212)を生成するように構成される。その代わりに、流体ノズル(202)は、互いに集束し、あるいは互いから分岐し、あるいは様々な他の実施形態ではそれらを組み合わせる、流体噴流(212)を生成するように構成されてもよい。
【0042】
一実施形態では、内腔スキャナ(260)は、加圧流体保管ユニット(218)から流体ノズル(202)まで流体を供給する流体導管(216)をその本体内に含む。一実施形態では、流体圧力は圧力調整器(220)によって医師の仕様書を満たすように調整可能である。流体導管(216)は、加圧流体保管ユニット(218)と流体ノズル(202)との間の流体連通を提供し、内腔スキャナ(260)のハウジング(222)内に少なくとも部分的に配置されてもよい。同様に、電源線(224)は電源(228)から電気を提供し、一実施形態では、ハウジング(222)内に少なくとも部分的に配置される。その代わりに、またはそれに加えて、電源(228)が利用できない場合には、内腔スキャナ(260)に動力を供給するためにバッテリー(230)がハウジング内に配置される。一実施形態では、データ通信回線(232)は、光センサー(240)とコンピュータ(104)との間のデータ通信をもたらす。その代わりに、またはそれに加えて、無線送信機ユニット(234)はハウジング(222)内に配置され、様々な他の実施形態において、コンピュータ(104)とデータ通信した無線受信機ユニット(236)にデータを無線送信する。
【0043】
図3は、別の実施形態に係る、患者の口腔内の3D画像を記録するための典型的な装置(350)の内腔スキャナ(360)を例証する。この実施形態では、4つの流体ノズル(202)が光センサー(240)の視野計(206)のまわりに埋め込まれ、追加の流体ノズル(300)は光センサー(240)の中心に埋め込まれている。流体噴流(212)はそれぞれ、軟組織に接触するそれぞれの位置で軟組織に対して力を付与する。
図2の流体ノズル配置(200)のような4つの平行の流体噴流(212)がある場合、流体噴流(212)は、各々がそれぞれの流体噴流(212)に関連した4つのくぼみを軟組織に形成することができる。こうした4つのくぼみは、その間に軟組織の隆起した領域を形成する。光センサー(240)の中心にある追加の流体ノズル(300)により、追加の流体噴流(302)はくぼみの間のその領域の軟組織に衝突する。これによりくぼみの間における隆起領域の形成を低減するかまたは防ぐ。これにより、その後、光センサー(240)の視野(214)内に軟組織のより滑らかな輪郭を捕らえることができ、それによってより正確な画像化が可能となる。いくつかの実施形態では、ガス噴射の圧力に対するくぼみのサイズまたは深さは、例えば、歯ぐきあるいは頬、または健常な組織あるいは病的な組織などの組織を特徴づけるために使用可能な組織の剛性を評価するために使用される。
【0044】
図4は、さらに別の実施形態に係る、患者の口腔内の3D画像を記録するための内腔スキャナ(460)と典型的な装置(450)の携帯加圧流体保管ユニット(218)を例証する。この実施形態では、内腔スキャナ(460)に取り付けられた複数の流体ノズル(400)が提供される。流体ノズル(400)は、内腔スキャナ(460)に固定される取り付け装置(402)によって接続される。典型的な実施形態では、取り付け装置(402)は、ハウジング(222)の首部(406)に留められるが解除しやすい取り付けクリップ(404)を含む。複数の流体ノズル(400)は同様に内腔スキャナ(460)の先端(408)のまわりに位置することがある。この実施形態では、流体導管(216)はハウジング(222)の外部に配される。例えば、流体導管(410)は、加圧流体保管ユニット(218)間のハウジング(222)の外部表面(210)に沿って流体ノズル(400)まで延びている。一実施形態では、流体ノズル(400)は、内腔スキャナ(460)の先端(408)に留められるようにも構成され、それによって第2の固定点を提供するという点で、二重の役割を果たす。この配置の利点は既存のスキャナーに流体ノズルを据え付けることができるということである。さらなる利点は廉価な使い捨ての材料で流体ノズルを作ることができるということである。廉価な使い捨ての材料を使用することで、毎回新しいノズル配置(200)を使用することができ、繰り返し使用するためにノズルを殺菌する必要がなくなる。
【0045】
図4は任意の個々の流体ノズル制御部(412)をさらに開示しており、個々の流体ノズル制御部(412)は一実施形態においてそれぞれの流体ノズル(400)への流体の流れを制御する。これにより、それぞれの流体噴流(212)を個々に制御することが可能となり、メインバルブ(414)は、流体ノズル配置(416)に対する完全な流体流動を制御する。個々の流体ノズル制御部(412)とメインバルブ(414)は、任意の実施形態において任意の組み合わせで存在することもある。典型的な実施形態では、選択されたノズルは、移動を助けるためにより高い圧力の空気噴射口を備えることもあるが、他のノズルは歯肉組織の安定化を助けるためにより低い圧力を備えることもある。不均等な圧力は組織を安定させ、口腔内の流体を取り除き、および特定の状況下で組織を独自に変形させる助けとなり得る。
【0046】
従来、口全体で得られる印象は一連の抵抗量を与える1つの材料で作られていた。印象を採る当業者は、1つの領域に対して他の領域よりも多くの圧力を加えることができるが、それにより組織と印象材の両方を移動させることになり、望ましくない。本明細書に記載の教示により、従来技術に関連する損害のない口腔内の様々な領域で様々な量の圧力を使用することが可能となり、それによってこれまで達成されることのなかった装着度合を与えることができる。
【0047】
別の典型的な実施形態(図示せず)では、個々のバルブの代わりに、制御システムはビデオゲームコントローラーのジョイスティックに似たジョイスティックを含むこともある。ジョイスティックをある方向に動かすと、その方向に関連したノズル中の圧力を制御することができる。例えば、ジョイスティックを右上に押すと、右上の空気ノズルに対する圧力が増える。ジョイスティックを押し下げると、下方の空気ノズルの両方に対する圧力が増える。空気ノズルから来る圧力はソフトウェアで制御することもできる。スキャンされている領域と所望の結果次第では、ソフトウェアは、口腔内スキャナーによってリアルタイムで結果を測定しながら、それ自体で気圧を調節することができる。
【0048】
データ通信に関して、
図2乃至7における構成は、バッテリーにより単独で無線操作され(例えば、コードレス)、且つ獲得したデータをコンピュータ(104)へと無線送信するよう組み立てられてもよい。幾つかの実施形態において、加圧流体保管ユニット(218)は、単独で無線操作されるよう組み立てられる内腔スキャナー(460)に取り付けられ、特に、医師による操作の自由度をより大きなものにする携帯型デバイスに役立つ。
【0049】
図5乃至7は、また別の実施形態に係る、患者の口腔の3D画像を記録するための典型的な装置(550)の口腔内スキャナー(560)を示す。この実施形態において、口腔内スキャナーは、異なるハウジング(222)、及び、口腔内スキャナーの先端(408)の外部にあり且つそれに取り外し自在に固定される流体ノズル配置(416)と共に示される。流体導管(216)は流体ノズルヘッド(500)に接続される。一実施形態において、流体導管(216)は、例えば、剛性(例えばステンレス鋼)チューブを包囲するプラスチックチューブ(例えばポリプロピレン)を含む。流体導管(216)は、流体ノズルヘッド(500)へと機械的(例えば、プレス嵌め又はファスナーを介して)及び/又は、化学的に(例えば接着剤を介して)固定される。流体ノズルヘッド(500)は、3D印刷プロセスを含む、当業者に既知の方法を介して製作される。流体ノズルヘッド(500)は、先端(408)へと機械的に(例えば、ファスナー)又は化学的に(例えば、両面テープなどの接着剤を介して)固定される。接着剤が使用される場合、接着剤は、流体噴流(212)により生成された力に耐えるほど強力なものが好都合であり、なぜならば、この力が流体ノズルヘッド(500)を先端(408)から離すのを促す傾向があるためである。別の一例の実施形態において、流体ノズル配置(416)は、ハウジング(222)に統合される流体ノズル(212)と、ハウジング(222)の外部にある流体ノズル(212)を組み合わせている。例えば、統合された流体ノズル(202)は、
図5乃至7に示される一例の実施形態の光センサー(240)の中央に付加されてもよい。加圧流体は、示される流体導管(216)により、及び/又はハウジング(222)の外部又は内部にあり得る追加の流体導管(示されず)により、流体ノズル(202)へと供給され得る。
【0050】
一例の実施形態(示されず)において、個々のノズルは、第1に1つのタスクに関与し、第2に別のタスクに関与し得る。例えば、選択されたノズル(複数可)は、第1に軟組織を動かす力を与えるタスクに関与し、第2に流体が光センサーに跳ね返るのを防ぐタスクに関与し得る。同様に、残りのノズルの選択されたノズルは、第1に流体が光センサーに跳ね返るのを防ぐタスクに関与し、第2に軟組織を動かす力を与えるタスクに関与し得る。この役割の分担は、上記に見られるような実施形態を使用して達成されてもよく、及び/又は、追加のノズルが付加されてもよい。
【0051】
一例の実施形態において、ノズルは、光センサー(240)の周辺(206)に位置付けられ、及び光センサー(240)へと内方向に角度を形成され得る。そのような構成において、角度形成されたノズルから出る流体噴流(212)は、光スキャナーを通り抜け、それにより光センサー(240)上に空気膜を形成する。空気膜は、光センサー(240)の方に跳ね返り得る流体を流入させる。一旦流入されると、跳ね上がった流体は、光センサーに到達する前に空気膜により光センサー(240)から離れるように再び配向され、跳ね返りにより妨げられることなく光センサー(240)が自由にスキャンを行うようにする。
【0052】
一例の実施形態において、複数のノズルが、空気膜ノズルに寄与するよう内方向に角度形成されてもよい。理想的には、このような空気膜ノズルにより形成される流体噴流は、1つの形態又は別の形態で互いと協働するように構成される。例えば、流体噴流はそれぞれ、光スキャナーのそれぞれの異なる領域を通り抜け、それにより、流体噴流は共に、1つの噴流がそれ自体により可能とするよりも幅広い領域を覆う。別の一例の実施形態において、流体噴流は、重複する領域ではあるが、光センサー(240)とは異なる距離で通り抜ける場合もある。この構成において、結果として生じる空気膜は、より幅広いとは反対に、より厚いと考慮され得る。別の一例の実施形態において、流体噴流は、光スキャナーからずらされる領域を通過するように構成されてもよい。例えば、実施により、跳ね返りが特定の方向から、より生じる傾向があることが示される場合、流体噴流は、光センサー(240)と跳ね返りの予測された最初の位置との間に空気膜を形成することにより、光センサー(240)を好ましくは押し流す(sweeping)/保護するのを好むように構成されてもよい。
【0053】
更に、空気膜ノズルが配向される角度は、予期された操作環境に基づいて選択され得る。一例の実施形態において、角度は、光センサー(240)のアレイと略平行であり、且つ
図4に示される流体噴流(212)に垂直である空気膜を形成するために流体噴流が光センサー(240)を通り抜けるようなものでもよい。代替的に、角度は、流体噴流(212)が、光センサー(240)のアレイに対しほぼ垂直であり、且つ
図4の流体噴流(212)と平行になるような角度でもよい。前者の例において、任意の跳ね返りが押しのけられ、一方で後者の例において、任意の跳ね返りはその最初の位置の方へと押し返され得る。前者は、任意の方向から生じるあまり活動的でない跳ね返りの方に適しており、一方で後者は、既知の方向から生じる更に活動的な跳ね返りの方に適していてもよい。従って、空気膜ノズルの構成は、予測された動作環境に適合され得る。
【0054】
図8及び9は、一実施形態に係る、患者の口腔の3D画像を記録するための典型的な装置(550)の流体ノズル配置(416)を示す。この実施形態において、流体ノズルヘッド(500)と流体導管(216)は、内腔スキャナー(560)とは離れている。流体ノズルヘッド(500)は、内部チャネル(800)を含み、その各々は、流体導管(216)と、流体ノズル(804)それぞれの出口(802)との間の流体連通をもたらす。内部チャネルは、プレナム(806)にて上流に結合する。一例の実施形態において、内部チャネルは、流体導管(216)がプレナム(806)の出口(802)それぞれに接続する入口(808)から、同じ圧力損失を持つように設計される。しかし、内部チャネル(800)は、異なる長さ及び/又は異なる幾何学的形状を有する場合もあり、これらは結果として異なる内部圧力損失をもたらしかねない。圧力損失が等しいことを確認するために、内部チャネル(800)は、一実施形態での内部チャネル(800)における圧力損失を調整するように意図された1以上の特徴を含むように設計される。例えば、比較的低い圧力損失を伴う内部チャネル(800)は、より曲がりくねった経路を持つように作られてもよく、及び/又は、圧力損失を他の内部チャネルのものにまで増大させる、流れ妨害物を含んでもよい。このように、出口(802)における圧力は、等しくなるように設計され得る。代替的に、圧力は異なるように設計されてもよい。その代わり、チャネルはそれぞれ、異なる圧力損失を伴う場合もある。訂正されていないと、これは、あまり正確でない3D画像を生成し得るが、流体ノズルヘッド(500)の製造はあまり高価ではなく、誤差は許容可能なパラメータ内にあってもよい。代替的に、ソフトウェアは、局所の圧力変動及び関連する異なる軟組織の偏向の光学的効果を考慮し、且つ場合により解消するようにプログラムされ得る。幾つかの実施形態において、各ノズル又は噴流での異なる圧力は都合が良く、故に、必要であれば訂正は、各出力ポートにて都合の良い異なる圧力をもたらすように設計される。
【0055】
一例の実施形態において、流体ノズル(804)は互いに平行となるように配向され、一方で別の例の実施形態において、流体ノズル(804)は、流体噴流(212)が一点に集中する又は分散するように傾けられる。一例の実施形態において、流体噴流(212)は、焦点として考慮される単一の点に集中する。この例の実施形態において、焦点は、内腔スキャナー(560)の先端(408)から設定された距離に位置付けられる。操作中、医師は、焦点が曲げられる軟組織とほぼ一致するのを確実にするために、およその設定された距離により曲げられる軟組織から先端(408)が後退することを確実にし得る。代替的に、流体噴流(212)は、それらが、光センサー(240)においてアレイに垂直となるよう配向され、且つ光センサー(240)中ではあるが先端(408)から異なる距離にて集中された線と交差するように、配向される。(この線は、
図2の追加の流体ノズル(300)から出ている、流体噴流(212)の軌道と同様である。)例えば、第1の流体噴流(212)は、1ミリメートルで中心線と交差し、第2の流体噴流(212)は2ミリメートルで中心線と交差し、第3の流体噴流(212)3ミリメートルで、及び第4の流体噴流は4ミリメートルで中心線と交差し得る。そのような実施形態において、移動される軟組織が中心線に沿って配置されると、先端(408)は、様々な距離(例えば1−4ミリメートル)により軟組織とは切り離され、且つ未だに、少なくとも1つの流体噴流(212)の完全な移動力を受けることができる。1つの流体噴流(212)の移動力が焦点にて4つの噴流の移動力未満である一方、焦点は、内腔スキャナー(560)の先端(408)の位置決めに関してより寛容である(forgiving)。一例の実施形態において、限定的であることを意味していないが、組織上に加えられる力は、1平方センチメートル(cm
2)当たり約0.5〜約25キロニュートン(kN)に及ぶ。約5kN/cm
2より下の圧力は、歯肉溝(一方の歯のエナメル及び歯根の基部と、他方の歯肉との間の境界)の開口に都合が良く、この範囲におけるより高い圧力は、ゴムから頬を離し且つ下にある筋肉を動かすことに都合が良い。
【0056】
3D画像の記録用の機器を使用する方法は、本発明の例の実施形態に従って以下に記載される。
図10Aは、冠状面において適所に義歯(1002)を含む上顎無歯の歯列弓(1000)の右側の第1の断面図を示す。
図10Bは、一実施形態に従ってスキャンされる、適所に義歯(1002)が無い冠状面の上顎無歯の歯列弓(1000)の右側の別の断面図を示す。これらの図は、頬部口腔前庭(1008)及び顎堤(1010)に対して適所に義歯(1002)を含む、及び含んでいない頬粘膜(1004)の静止位置を表す。流体ノズル(202)が欠如している状態では、頬部口腔前庭(1008)は頬粘膜(1004)により遮断され、且つ軟組織に負荷を与える力が必要とされるため、内腔スキャナー(560)は、負荷を与えられた頬部口腔前庭(1008)の解剖学的構造を捕捉することができない場合もある。
【0057】
図11は、一実施形態に従って、冠状面における
図10A−10Bの上顎無歯の歯列弓(1000)の右側、口腔内スキャナーヘッド(204)、及び、第1の位置及び第1の配向での流体噴流(212)の動作を示す断面図である。流体ノズル(202)は、流体噴流(212)を押し出し、頬部口腔前庭(1008)の深さの方へ頬粘膜(1004)に沿って動かされる。
図12は、一実施形態に従って、第2の位置及び第2の配向での口腔内スキャナーヘッド(204)及び流体噴流(212)の動作を示す
図11の断面図である。スキャナーヘッド(204)は頬粘膜(1004)から顎堤(1010)へと回転され、流体は至る所に押し出されている。流体噴流(212)が頬部口腔前庭(1008)へと表されると、未付着組織は、縁成形中に負荷を与えられる方法と同様に負荷を与えられる。流圧を調整し、頬部口腔前庭(1008)中の筋肉を係合させることで、基礎をなす筋肉解剖学的構造の検出を可能にしてもよい。この解剖学的構造は、視野(214)をスキャンしている、スキャナーヘッド(204)における光センサー(240)により捕捉される。
【0058】
図13は、一実施形態に従って、第3の位置及び第3の配向での口腔内スキャナーヘッド(204)及び流体噴流(212)の動作を示す
図11の断面図である。スキャナーヘッド(204)は、流体噴流(212)と共に顎堤(1010)の稜(1300)の方へと顎堤(1010)に沿って冠状に動かされる。医師は、軟口蓋と硬口蓋(1302)を中央に動かしてスキャンする前に、無歯患者、又は部分的に無歯の患者の歯について顎堤(1010)をスキャンする。
【0059】
幾つかの実施形態において、捕捉ソフトウェアは、任意の流体リップルを補正するために特定の領域それぞれの捕捉画像を平均化し、それにより、結果として生じるレンダリングは最終印象において得られた解剖学的構造を含んでおり、これによりレンダリングは記録床形態(from)を加工するのに理想的なものとされる。
【0060】
3D画像記録用の機器(
図1乃至7に示される機器など)を使用する他の方法は、本発明の例の実施形態に従って以下に記載される。
図14は、実施形態に従って、スキャンされる臼歯の歯冠調製物(1400)の冠状断面図である。歯冠調製物(1400)の縁(1403)と、付着歯肉(1404)との間には、歯肉溝(1406)がある。歯冠調製物(1400)をスキャンする前に、歯冠調製物(1400)の縁(1402)と付着歯肉(1404)の間の空間は、様々な方法により作られる。前記空間を作るための一般的な方法は、Hemodentに浸された圧排コード(1500)を歯肉溝に詰め込む工程を含む。
図15は
図14の冠状断面図であり、パッケージング用の圧排コード(1500)を伴う臼歯の歯冠調製物(1400)を示す。
【0061】
図16は
図14の環状断面図の拡大図であり、一実施形態に従い、臼歯の歯冠調製物(1400)を示し、且つ口腔内スキャナーヘッド(204)と流体噴流(212)の動作を示す。本発明の一例の実施形態に従い、前記冠部調製部の空間を作る方法は、内腔スキャナー(260)の使用を含み、流体ノズル(202)を使用して歯肉溝(1406)を満たす(flood)流体噴流(212)を生成し、(
図16に示されるように)歯冠辺縁(1402)と付着歯肉(1404)との間に空間(1600)を維持することを補助し、且つ歯冠調製物(1400)が光センサー(240)によりスキャンされている間に水分調節を支援する。一例の実施形態において、流体ノズル配置(200)と退縮帯(1500)の両方が上述のように使用されてもよい。代替的に、流体噴流(212)単独の力は、歯冠辺縁(1402)と付着歯肉(1404)との間に十分な空間(1600)を作るのに十分であり、退縮帯(1500)又は他の空間作成方法のための必要性を否定し得る。
【0062】
幾つかの実施形態において、流体ノズル(202)が交番圧力にて流体噴流(212)を吹き付けている間、歯冠調製物(1400)がスキャンされる。このような様々な圧力は、硬組織及び骨からの軟組織の分化を可能にする。例えば、特定領域をスキャンし且つその上に流体噴流(212)を向ける間、軟組織と流体の移動が存在する。一例の実施形態において、医師は、多数の画像が記録される時間中、様々な動作のためにその領域において内腔スキャナー(260)を保持する。画像は、絶えず動いている軟組織、同様に硬組織も示している。軟組織/歯肉組織が硬組織又は骨(例えば、歯冠辺縁(1402))の上を上下に動いていたとしても、軟組織が離れるごとに、歯冠辺縁(1402)は同じ場所に位置している。画像の評価により、ソフトウェアは、どの組織が軟組織であり、どの組織が硬組織であるのかを判定し、それにより優れた歯冠辺縁の検出を提供することができる。変形の量により、ユーザー又はソフトウェアは、組織における抵抗/弾性の量を判定することができる。更に、流体の力により、下にある筋肉を係合させ、移動に抵抗することができる。これにより、下にある筋肉の解剖学的構造の検出が可能になる。
【0063】
加えて、パラメータのスキャンは、組織分化を改善するように調整され得る。例えば、空気噴流(212)における流体の圧力は、プロセス中に調製され得る。圧力上昇は、例えば、より下方の圧力で移動しない軟組織を移動させる場合もある。
【0064】
<3.口腔を画像化する方法>
図17は、一実施形態に従って、流体噴流用いて3Dスキャナーを操作し且つ使用するための、一例となる方法(1700)を示すフローチャートである。工程は
図17において、例示目的のために特定の順で必須工程として表されるが、他の実施形態において、1以上の工程、又はその一部は、異なる順で、時間が重なりあって、連続して、又は平行して実行され、或いは省略され、又は、1以上の追加の工程が加えられ、又は前記方法は、方法の幾つかの組み合わせで変更される。
【0065】
工程(1703)において、内腔スキャナーは、光センサーにより画像化される体腔の表面(壁)の一部付近に内腔スキャナーを動かすことにより、体腔の表面の一部に内腔スキャナーの光センサーを向けることにより、及び、軟組織により覆われ得る体腔の表面の一部の覆いを取るよう軟組織の弁を動かすのに十分な力で、又は、組織の剛性を判定するのに十分に体腔の表面の一部を構築する組織を動かす力で、画像化目的に十分な速度(例えば、表面が目に見え又は組織の剛性が判定されない流れが無い)で流体ノズルを通じて流体を方向付けることにより、体腔に配向される。
【0066】
工程(1705)において、体腔の表面の一部の1以上の画像は、内腔スキャナーの位置と配向を示すデータ、及び、流体の流れのメトリックを示すデータ(ノズルにおける流速又は圧力、或いは1以上のノズル又は幾つかの組み合わせの方向など)と共に、集められる。例えば、画像データは、有線式電機通信又は無線電磁気通信を介して集められ、流体の流れのメトリックは、モーター又はポンプなどのアクチュエータへの命令信号、及び流体の流れのメトリックへの命令信号に関連する較正曲線により判定される。幾つかの実施形態において、流速又は圧力センサーが、流体の流れのメトリックを提供するために、ノズルに、又はその付近に位置付けられる。流体の流れのメトリックは、体腔の表面の一部の画像に関連してコンピュータ可読メモリに保存される。
【0067】
工程(1711)では、例えば、流量、圧力、または流れの方向を変更するために、流体の流れを変化させるための条件が満たされているかが判断される。例えば、軟組織の弁が画像化される表面を覆うことを、例えば現在の画像を表示している画面を見ることによって、医師が観察する場合は、医師は、画面上に表示される画像が、軟組織を移動させて画像化される体腔の表面の一部を可視化することを示すまで、例えば内腔スキャナーを回転させることにより、流体の流れの量を増加させるか、または流体の流れの方向を変えるかを決定する。口腔の実施形態において、このことは、頬部口腔前庭(1008)が頬粘膜(1004)(頬)によって遮られることを観察し、頬粘膜が頬部口腔前庭(1008)によって移動されるまで流体の流れまたは方向を変えることに相当する。口腔のスキャンのいくつかの実施形態において、歯冠調製物(1400)の縁(1402)と付着歯肉(1404)との間の歯肉溝(1406)(隙間)が、十分に開いているかが判断され、そうではない場合、歯肉溝をさらに開くために向き、流体の流量または圧力を変える。いくつかの実施形態において、軟組織が、画像化される表面を覆わない場合、流体の流量または圧力が減少する。
【0068】
いくつかの実施形態において、画像化される体腔の表面の一部の組織が、流体の流れの現在の速度または圧力下で移動することが観察される場合、圧力は、軟組織が組織Lの剛性を判断するために移動しなくなるまで低下し、同様に、画像化される体腔の表面の一部の組織が流体の流れの現在の速度または圧力の下で移動することが観察されない場合、圧力は、軟組織がその表面の一部で組織の剛性を判断するために移動し始めるまで上昇する。流体のメトリック(fluid metric)(流量、圧力、方向、またはいくつかの組合せ)の変化を必要とする組織の剛性の変化は、健康な組織と患部組織との間の変化を示すことができる。
【0069】
工程(1711)において、流体の流れを変えるための条件が満たされると判断された場合、工程(1713)において、流体の流れは、流体の流量、圧力、方向、またはいくつかの組合せを増加または減少させることにより変化し、制御は、体腔の表面の一部で内腔スキャナーを操作するために工程(1703)および(1705)に戻り、より多くの画像データおよび流れのメトリックデータを収集する。流体の流れを変えるための条件が満たされていない場合、制御は工程(1721)に移る。
【0070】
工程(1721)において、スキャンが完了したのか、例えば、画像化された体腔の全ての部分が画像化されてきたのかが判断される。そうでない場合、制御は、工程(1703)に戻り、内腔スキャナーを操作し、内腔スキャナーを新しい位置に移動させ、体腔の表面の新しい部分を画像化する。スキャンが完了した場合、制御は工程(1723)に移る。
【0071】
工程(1723)において、体腔を規定する表面の3次元モデルは、当技術分野で知られている方法を使用して判断される。いくつかの市販のソフトウェアパッケージは、体腔内で収集された画像から3Dモデルを判断する。
【0072】
いくつかの実施形態では、工程(1725)において、体腔の3次元モデルの表面に沿う組織の剛性は、3Dモデルの一部に寄与する画像が収集されたときに、組織を移動させることに関与する流体のメトリックに基づいて判断される。いくつかの実施形態では、体腔の3次元モデルの表面に沿う組織の剛性は、判断されず、工程(1725)は省略される。
【0073】
工程(1727)において、3Dモデルは出力装置上で提示され、例えば、内部または外部の位置からの表示は画面に表示され、体腔の経路の映像(a video of a flight through the body lumen)は画面上に映像として表示され、3Dプリンターは体腔を満たす鋳型に相当する口腔の3D印刷またはそのネガ(negative)をレンダリングする。
【0074】
工程(1729)において、3Dモデルを生成するために体腔が画像化されている被験体は、出力装置の産物に基づいて処置される。例えば、義歯床は、体腔の表面の3Dモデルのレンダリングの1つ以上の部分にぴったりとはめ込むように加工されるか、健康な組織の範囲外の剛性を有する体腔の一部分は、放射線、または電気的もしくは化学的アブレーションで切除されるか、処置される。
【0075】
いくつかの実施形態では、方法(1700)の1つ以上の工程は、プロセッサーにより自動的に行われる。例えば、プロセッサーは、工程(1705)の間に、装置に、被験体の体腔内に配置された内腔スキャナーの光センサーから、体腔の可視部分と、光センサーの部分と、光センサーの向きと、を示す第1信号を提供させ、内腔スキャナーの光センサーに隣接して配置された流体ノズルと流体連通している、流体に適用された圧力の量を示す第2信号を受信させる命令を用いてプログラムされる。工程(1723)の間、プロセッサーは、装置に、第1信号および第2信号に基づいて体腔のデジタル3Dモデルを判断させ、そして工程(1727)の間、プロセッサーは、装置に、第1信号および第2信号に基づいて体腔のデジタル3Dモデルを判断させ、出力装置上でデジタル3Dモデルのレンダリングを提示する。
【0076】
4.コンピュータハードウェア(Computational hardware)の概要
図18は、本発明の実施形態が実施され得るコンピュータシステム(1800)を例証するブロック図である。コンピュータシステム(1800)は、コンピュータシステム(1800)の他の内部コンポーネントと外部コンポーネントとの間で情報を伝えるためのバス(1810)のような通信機構を含む。情報は、測定可能な現象の物理的信号として示され、典型的には電圧であるが、他の実施形態においては、磁気的、電磁気的、圧力的、化学的、分子原子的、および量子化学的な相互作用のような現象を含んでいる。例えば、北向きおよび南向きの磁界、または0および非0の電圧は、2進数(ビット)の2つの状態(0,1)を示している。他の現象は、より高次の桁(digits of a higher base)を示し得る。測定前の多数の同時な量子状態の重ね合せは、量子ビット(キュービット)を示す。1つ以上の数のシーケンスは、文字のための数またはコードを表すために使用されるデジタルデータを構成する。いくつかの実施形態において、アナログデータと呼ばれる情報は、特定の範囲内の測定可能な値の実質的な(near)連続体によって表される。コンピュータシステム(1800)、またはその一部は、本明細書に記載の1つ以上の方法の1つ以上の工程を行うための手段を構成する。
【0077】
2進数のシーケンスは、文字のための数またはコードを表すために使用されるデジタルデータを構成する。バス(1810)は、情報がバス(1810)に接続される装置間で迅速に転送されるように、情報の多くの平行導体を含む。情報を処理するための1つ以上のプロセッサー(1802)は、バス(1810)に接続される。プロセッサー(1802)は、情報に対して一連の操作を行う。一連の操作は、バス(1810)内から情報を取り出すこと、およびバス(1810)上に情報を配することを含む。一連の操作は、典型的には、2つ以上の情報単位を比較すること、情報単位の位置を変えること、および2つ以上の情報単位を加算および乗算などによって組み合わせることも含む。プロセッサー(1802)によって実行される操作のシーケンスは、コンピュータ命令を構成する。
【0078】
コンピュータシステム(1800)は、バス(1810)に接続されたメモリ(1804)も含む。ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶装置などのメモリ(1804)は、コンピュータ命令を含む情報を記憶する。ダイナミックメモリは、そこに記憶された情報がコンピュータシステム(1800)によって変更されることを可能にする。RAMは、メモリアドレスと呼ばれる場所に記憶された情報単位が、隣接するアドレスの情報とは独立して記憶され、取得されることを可能にする。メモリ(1804)はまた、コンピュータ命令の実行中に、一時的な値を記憶するためにプロセッサー(1802)によって使用される。コンピュータシステム(1800)は、コンピュータシステム(1800)によって変更されない命令を含む静的情報を記憶するためのバス(1810)に接続される、読み出し専用メモリ(ROM)(1806)、または他の静的記憶装置も含む。コンピュータシステム(1800)の電源が切られたとき、そうでなければ電力を喪失したときでさえ持続する、命令を含む情報を記憶するための磁気ディスクまたは光ディスクのような、不揮発性(永続的)記憶装置(1808)も、バス(1810)に接続される。
【0079】
命令を含む情報は、人間のユーザーによって操作される英数字キーを含むキーボード、またはセンサーなどの外部入力装置(1812)から、プロセッサーによる使用のためのバス(1810)に提供される。センサーは、その近傍の状態を検出し、これらの検出を、コンピュータシステム(1800)において情報を表すために用いられる信号と互換性のある信号へと変換する。バス(1810)に接続され、主に人間とやりとりするために使用される他の外部装置は、画像を提示するための陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)のようなディスプレイ装置(1814)と、ディスプレイ(1814)上に提示される小さなカーソル画像の位置を制御し、ディスプレイ(1814)上に提示される図形要素に関連するコマンドを発行するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キーのようなポインティングデバイス(1816)と、を含む。
【0080】
例証された実施形態において、特定用途向け集積回路(IC)(1820)のような特殊な用途のハードウェアが、バス(1810)に接続されている。特殊な用途のハードウェアは、特殊な用途にとって十分迅速なプロセッサー(1802)で行われない操作を行うように構成されている。特定用途向けICの例は、ディスプレイ(1814)に画像を生成するためのグラフィックスアクセラレータカード、ネットワークを介して送信されるメッセージを暗号化および復号化するための暗号ボード、音声認識、ハードウェアにおいてより効率的に実施されるいくつかの複雑な操作のシーケンスを繰り返し行う、ロボットアームおよび医療スキャン設備のような特別な外部装置に対するインターフェースを含む。
【0081】
コンピュータシステム(1800)は、バス(1810)に接続された通信インターフェース(1870)の1つ以上のインスタンスも含む。通信インターフェース(1870)は、それ自体のプロセッサーと共に操作されるプリンター、スキャナー、および外部ディスクのような種々の外部装置に接続して、2方向通信を提供する。一般的に、接続には、それ自体のプロセッサーを含む種々の外部装置が接続されるローカルネットワーク(1880)に接続される、ネットワークリンク(1878)が用いられる。例えば、通信インターフェース(1870)は、パーソナルコンピュータ上のパラレルポート、シリアルポート、またはユニバーサルシリアルバス(USB)ポートであってもよい。いくつかの実施形態では、通信インターフェース(1870)は、統合サービスデジタル通信網(ISDN)カード、デジタル加入者回線(DSL)カード、または対応するタイプの電話線に情報通信接続を提供する電話モデムである。いくつかの実施形態では、通信インターフェース(1870)は、バス(1810)上の信号を、同軸ケーブルを介する通信接続のための信号へと、または光ファイバーケーブルを介する通信接続のための光信号へと変換するケーブルモデムである。別の例として、通信インターフェース(1870)は、ローカルエリアネットワーク(LAN)カードであってもよく、イーサネット(登録商標)のような互換性のあるLANにデータ通信接続を提供する。無線接続もまた実施されてもよい。電波、光波、および赤外線波を含む、音波および電磁波のような搬送波は、ワイヤまたはケーブルを用いずに、空間を介して移動する。信号は、搬送波の振幅、周波数、位相、偏光、または他の物理特性の人為的な変動を含む。無線接続として、通信インターフェース(1870)は、デジタルデータのような情報ストリームを搬送する赤外線信号および光信号を含む、電気的、音響的または電磁気的な信号を送受信する。
【0082】
用語「コンピュータ可読媒体」は、実行のための命令を含む、プロセッサー(1802)に情報を提供することに関与する媒体を指すために本明細書で使用される。そのような媒体は、限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含む、多くの形態を取ってもよい。不揮発性媒体は、例えば、記憶装置(1808)のような光または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、例えば、ダイナミックメモリ(1804)を含む。伝送媒体は、例えば、同軸ケーブル、銅線、光ファイバーケーブル、およびワイヤまたはケーブルを用いることなく、電波、光波、および赤外線波を含む音波および電磁波のような、空間を介して移動する波を含む。用語「コンピュータ可読記憶媒体」は、伝送媒体を除いた、情報をプロセッサー(1802)に提供することに関与する媒体を指すために、本明細書で使用される。
【0083】
コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または他の磁気媒体、コンパクトディスクROM(CD−ROM)、デジタルビデオディスク(DVD)、または他の光媒体、パンチカード、紙テープ、または穴のパターンを有する他の物理媒体、RAM、プログラマブルROM(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、フラッシュEPROM、または他のメモリチップもしくはカートリッジ、搬送波、またはコンピュータが読み込むことができる他の媒体を含む。用語「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」は、搬送波および他の信号を除く、情報をプロセッサー(1802)に提供することに関与する媒体を指すために、本明細書で使用される。
【0084】
1つ以上の有形媒体内にエンコードされたロジックは、ASIC(1820)のようなコンピュータ可読記憶媒体および特殊な用途のハードウェア上の、プロセッサー命令の1つまたはその両方を含む。
【0085】
ネットワークリンク(1878)は、典型的には、1つ以上のネットワークを介して、情報を使用するか処理する他の装置へ情報通信を提供する。例えば、ネットワークリンク(1878)は、のローカルネットワーク(1880)を介して、ホストコンピュータ(1882)へ、またはインターネットサービスプロバイダ(ISP)によって操作される機器(1884)へ、接続を提供してもよい。同様に、ISP機器(1884)は、現在一般的にインターネット(1890)と呼ばれるネットワークの公共のワールドワイドパケット交換通信ネットワーク(the public, world−wide packet−switching communication network)を介して、データ通信サービスを提供する。インターネットに接続されたサーバ(1892)と呼ばれるコンピュータは、インターネット上で受信した情報に応じてサービスを提供する。例えば、サーバ(1892)は、ディスプレイ(1814)で提示される映像データを表す情報を提供する。
【0086】
本発明は、本明細書に記載された技術を実施するためのコンピュータシステム(1800)の使用に関する。本発明の1つの実施形態によれば、これらの技術は、メモリ(1804)に含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを行うプロセッサー(1802)に応じて、コンピュータシステム(1800)により実行される。ソフトウェアおよびプログラムコードとも呼ばれるこのような命令は、記憶装置(1808)のような、別のコンピュータ可読媒体からメモリ(1804)へと読み込まれてもよい。メモリ(1804)に含まれる命令のシーケンスの実行は、本明細書に記載の方法の工程を、プロセッサー(1802)に行わせる。代替的な実施形態において、特定用途向け集積回路(1820)のようなハードウェアは、本発明を実施するためのソフトウェアの代わりに、またはそれと組み合わせて使用されてもよい。したがって、本発明の実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアの特定の組み合わせに限定されない。
【0087】
ネットワークリンク(1878)、および通信インターフェース(1870)を通る他のネットワーク上で送信される信号は、情報をコンピュータシステム(1800)へ、およびコンピュータシステム(1800)から搬送する。コンピュータシステム(1800)は、ネットワーク(1880)、(1890)を介して、とりわけネットワークリンク(1878)および通信インターフェース(1870)を介して、プログラムコードを含む情報を送受信し得る。インターネット(1890)を使用する例において、サーバ(1892)は、インターネット(1890)、ISP機器(1884)、ローカルネットワーク(1880)、および通信インターフェース(1870)を介して、コンピュータ(1800)から送られるメッセージによって要求される、特定用途のためのプログラムコードを送信する。受信されたコードは、受信されると同時にプロセッサー(1802)によって実行されるか、後で実行するために記憶装置(1808)もしくは他の不揮発性記憶装置に記憶されるか、あるいはその両方であってもよい。このようにして、コンピュータシステム(1800)は、搬送波上で信号の形態のアプリケーションプログラムコードを得てもよい。
【0088】
コンピュータ可読媒体の種々の形態は、実行のためのプロセッサー(1802)へ、1つ以上の命令のシーケンス、データ、またはその両方を搬送することに関与してもよい。例えば、命令およびデータは、最初、ホスト(1882)などのリモートコンピュータの磁気ディスク上で搬送されてもよい。リモートコンピュータは、命令およびデータをそのダイナミックメモリへとロードし、モデムを使用して、電話線上で命令およびデータを送信する。コンピュータシステム(1800)固有のモデムは、電話線上で命令およびデータを受信し、命令およびデータを、ネットワークリンク(1878)として機能する赤外線搬送波上の信号に変換するために赤外線送信機を使用する。通信インターフェース(1870)として機能する赤外線検出器は、赤外線信号で搬送された命令およびデータを受信し、命令およびデータを表す情報をバス(1810)上に配する。バス(1810)は、メモリ(1804)へ情報を搬送し、メモリ(1804)から、プロセッサー(1802)が命令を取得し、命令と共に送信されたデータの一部を用いて命令を実行する。メモリ(1804)に受信された命令およびデータは、プロセッサー(1802)によって実行される前または後に、記憶装置(1808)上で随意に記憶されてもよい。
【0089】
図19は、本発明の実施形態が実施され得るチップセット(1900)を例証する。チップセット(1900)は、本明細書に記載の方法の1つ以上の工程を行うようにプログラムされており、例えば、1つ以上の物理的パッケージ(例えば、チップ)で組み込まれた、
図18に関して記載されるプロセッサーおよびメモリコンポーネントを含む。例として、物理的パッケージは、物理的強度、サイズの保全、および/または電気的相互作用の制限のような、1つ以上の特徴を提供するために、構造組立品(例えばベースボード)上に、1つ以上の材料、コンポーネント、および/またはワイヤの配置を含む。チップセットは、特定の実施形態において、単一のチップで実施される可能性があることが考えられる。また、チップセット(1900)、またはその一部は、本明細書に記載の方法の1つ以上の工程を行うための手段を構成する。
【0090】
1つの実施形態において、チップセット(1900)は、チップセット(1900)のコンポーネント間に情報を渡すためのバス(1901)のような通信機構を含む。プロセッサー(1903)は、例えば、命令を実行し、メモリ(1905)内に記憶される情報を処理するために、バス(1901)との接続性を有する。プロセッサー(1903)は、1つ以上の処理コアを含んでもよく、各処理コアは独立して働くように構成される。マルチコアプロセッサーは、単一の物理的パッケージ内での多重処置を可能にする。マルチコアプロセッサーの例は、2、4、8、またはそれ以上の数の処理コアを含む。代替的に、または加えて、プロセッサー(1903)は、命令と、パイプライン処理(pipelining)と、マルチスレッディング(multithreading)と、を独立して実行可能にするために、バス(1901)を介して並んで構成された1つ以上のマイクロプロセッサーを含んでもよい。プロセッサー(1903)は、1つ以上のデジタル信号プロセッサー(DSP)(1907)または1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)(1909)のような、特定の処理機能およびタスクを行うために、1つ以上の特殊化されたコンポーネントを伴ってもよい。DSP(1907)は、典型的には、プロセッサー(1903)とは無関係にリアルタイムで実世界の信号(例えば音)を処理するように構成されている。同様に、ASIC(1909)は、汎用的なプロセッサーでは容易には行われない、特殊用途の機能を行うように構成され得る。本明細書に記載の発明的な機能を行うことを補助する他の特殊用途のコンポーネントは、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)(図示せず)、1つ以上の制御装置(図示せず)、または1つ以上の他の特殊用途のコンピュータチップを含む。
【0091】
プロセッサー(1903)および付随するコンポーネントは、バス(1901)を介するメモリ(1905)への接続性を有する。メモリ(1905)は、実行時に本明細書に記載の方法の1つ以上の工程を行う、実行可能な命令を記憶するためのダイナミックメモリ(例えば、RAM、磁気ディスク、書き込み可能な光ディスク等)、およびスタティックメモリ(例えば、ROM、CD−ROM等)の両方を含む。メモリ(1905)は、本明細書に記載の方法の1つ以上の工程の実行に関連するデータ、またはそれにより生成されたデータも記憶する。
【0092】
5.変更および修正
前述の明細書では、本発明は、本明細書の特定の実施形態を参照して記載されている。しかしながら、本発明のより広い趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本発明に行ってもよいということは明らかである。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味というよりむしろ、例示的なものと考えるべきである。本明細書および特許請求の範囲を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「含む(comprise)」および、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」のようなその変形は、記載した項目、要素または工程、もしくは記載した項目、要素または工程の群の包含を意味するが、他の項目、要素または工程、もしくは他の項目、要素または工程の群の除外は意味しないと理解されるであろう。さらに、不定冠詞「a」または「an」は、その冠詞によって修正される項目、要素または工程の1つ以上を示すことを意味する。本明細書で使用する場合、文脈から明らかでない限り、他の値が2の係数(2倍または2分の1)以内である場合は、「約」他の値(”about” another value )である。例の範囲が与えられる場合、文脈から明らかでない限り、含まれる範囲は、様々な実施形態においても意図されている。したがって、0から10の範囲は、いくつかの実施形態において1から4の範囲を含む。