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特許6976861表示パネルマザーボード及び表示パネルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976861
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】表示パネルマザーボード及び表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20211125BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20211125BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20211125BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   G09F9/00 338
   G09F9/30 308Z
   G02F1/1333 500
   G02F1/1333 505
   G02F1/13 101
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-565707(P2017-565707)
(86)(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公表番号】特表2020-513578(P2020-513578A)
(43)【公表日】2020年5月14日
(86)【国際出願番号】CN2017090328
(87)【国際公開番号】WO2018107716
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2020年6月24日
(31)【優先権主張番号】201611170309.0
(32)【優先日】2016年12月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】511121702
【氏名又は名称】成都京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】徐 元杰
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−096951(JP,A)
【文献】 特開2016−021384(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0129122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
G09F 9/30
G02F 1/1333
G02F 1/13
C08C 19/00−19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 283/01
C08F 290/00−290/14
C08F 299/00−301/00
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性基板と、
フレキシブルサブストレートと、
剛性基板とフレキシブルサブストレートとの間に設けられる液体親和性調整可能層と、を含み、
液体親和性調整可能層がフレキシブルサブストレートを剛性基板に接着し、
液体親和性調整可能層は、1つ又は複数の調整可能層部を含み、調整可能層部毎に、
第一液体親和性調整可能層と、
光熱遮蔽層と、
第二液体親和性調整可能層と、を含み、
光熱遮蔽層は第一液体親和性調整可能層と第二液体親和性調整可能層との間に位置する、表示パネルマザーボード。
【請求項2】
液体親和性調整可能層は1つの調整可能層部を含み、当該調整可能層部の第一液体親和性調整可能層が光熱遮蔽層とフレキシブルサブストレートとの間に位置し、第二液体親和性調整可能層が光熱遮蔽層と剛性基板との間に位置する、請求項に記載の表示パネルマザーボード。
【請求項3】
液体親和性調整可能層は複数の積層設置された調整可能層部を含み、フレキシブルサブストレートと接触する調整可能層部の第一液体親和性調整可能層がフレキシブルサブストレートと接触し、剛性基板と接触する調整可能層部の第二液体親和性調整可能層が剛性基板と接触する、請求項に記載の表示パネルマザーボード。
【請求項4】
フレキシブルサブストレートの、液体親和性調整可能層と離反する側に設けられる表示素子を更に含む、請求項1〜の何れか1項に記載の表示パネルマザーボード。
【請求項5】
表示パネルの製造方法であって、
剛性基板とフレキシブルサブストレートを製造するステップと、
剛性基板とフレキシブルサブストレートの互いに対向する面に親水処理を施すステップと、
剛性基板とフレキシブルサブストレートの少なくとも一方の、親水処理が施された表面に液体親和性調整可能層を設けるステップと、
液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成し、且つ、フレキシブルサブストレートを剛性基板に接着するために、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップと、
フレキシブルサブストレートの、剛性基板と離反する表面に表示素子を形成するステップと、
液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成し、且つ、フレキシブルサブストレートを剛性基板から剥がすために、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップと、
を含む、表示パネルの製造方法。
【請求項6】
液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第一温度に保持するステップを含み、
液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第二温度に保持するステップを含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第一pH値に保持するステップを含み、
液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第二pH値に保持するステップを含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、第一電界強度を有する電圧を液体親和性調整可能層に印加するステップを含み、
液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、第二電界強度を有する電圧を液体親和性調整可能層に印加するステップを含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、第一強度を有する光線を液体親和性調整可能層に照射するステップを含み、
液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、第二強度を有する光線を液体親和性調整可能層に照射するステップを含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第一反応液内に設けるステップを含み、
液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、
液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第二反応液内に設けるステップを含む、請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示技術分野に関わり、具体的に表示パネルマザーボード及び表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、フレキシブル表示装置は薄いフレキシブルサブストレートで製造されてなる。従来の表示器に比べて、フレキシブル表示装置は、超薄型、軽量、耐久性がある、格納容量が大きい、設計自在、巻取可能などといった利点があり、すでに表示製品に幅広く応用されており、特に、モバイル通信機器に応用されている。目下、フレキシブル表示装置の研究については主に、フレキシブル有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(Flexible Organic Light Emitting Diode,FOLED)、フレキシブル電子インクディスプレイ(フレキシブル電機泳動表示器(Flexible Electrophoretic Display),FEPDともいう)及びフレキシブル液晶ディスプレイ(Flexible Liquid Crystal Display,FLCD)がある。
【0003】
上記の各種フレキシブル表示装置の表示パネルのサブストレートはフレキシブルサブストレートである。フレキシブル表示パネルの製造プロセスは、フレキシブルサブストレートを当該剛性基板に接着するステップと、フレキシブルサブストレートに表示素子を形成するステップと、フレキシブル表示パネルを得るために、フレキシブル表示パネルを剛性基板から剥がすという3つのステップを主に含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブル表示パネルを剛性基板から剥がす過程において、操作が不適切であればフレキシブルサブストレートと表示素子が変形して破損することになり、また、剥がした際の残留物が多いなどの問題点があり、これにより、表示素子の性能に影響を与え、生産量が低下する。
【0005】
よって、フレキシブルサブストレートが剛性基板から効果的に剥がれることを特徴とするフレキシブル表示パネルマザーボードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来技術に存在する技術課題のうちの1つを少なくとも解決することを目的とし、表示パネルマザーボード及び表示パネルの製造方法を提供する。
【0007】
本発明は、剛性基板と、フレキシブルサブストレートと、剛性基板とフレキシブルサブストレートとの間に設けられる液体親和性調整可能層と、を含む表示パネルマザーボードを提供する。液体親和性調整可能層はフレキシブルサブストレートを剛性基板に接着する。
【0008】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層は、1つ又は複数の調整可能層部を含む。調整可能層部毎に、第一液体親和性調整可能層と、光熱遮蔽層と、第二液体親和性調整可能層と、を含む。光熱遮蔽層は第一液体親和性調整可能層と第二液体親和性調整可能層との間に位置する。
【0009】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層は1つの調整可能層部を含む。当該調整可能層部の第一液体親和性調整可能層が光熱遮蔽層とフレキシブルサブストレートとの間に位置し、第二液体親和性調整可能層が光熱遮蔽層と剛性基板との間に位置する。
【0010】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層は複数の積層設置された調整可能層部を含む。フレキシブルサブストレートと接触する調整可能層部の第一液体親和性調整可能層はフレキシブルサブストレートと接触し、剛性基板と接触する調整可能層部の第二液体親和性調整可能層は剛性基板と接触する。
【0011】
本発明の実施例によれば、前記表示パネルマザーボードは、フレキシブルサブストレートの、液体親和性調整可能層と離反する側に設けられる表示素子を更に含む。
【0012】
本発明は、一方で、剛性基板とフレキシブルサブストレートを製造するステップと、剛性基板とフレキシブルサブストレートの互いに対向する面に親水処理を施すステップと、剛性基板とフレキシブルサブストレートの、少なくとも一方の親水処理が施された表面に液体親和性調整可能層を設けるステップと、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成し、且つ、フレキシブルサブストレートを剛性基板に接着するために、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップと、フレキシブルサブストレートの、剛性基板と離反する表面に表示素子を形成するステップと、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成し、且つ、フレキシブルサブストレートを剛性基板から剥がすために、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップと、を含む、表示パネルの製造方法を提供する。
【0013】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第一温度に保持するステップを含み、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第二温度に保持するステップを含む。
【0014】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第一pH値に保持するステップを含み、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第二pH値に保持するステップを含む。
【0015】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、第一電界強度を有する電圧を液体親和性調整可能層に印加するステップを含み、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、第二電界強度を有する電圧を液体親和性調整可能層に印加するステップを含む。
【0016】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、第一強度を有する光線を液体親和性調整可能層に照射するステップを含み、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、第二強度を有する光線を液体親和性調整可能層に照射するステップを含む。
【0017】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第一反応液内に設けるステップを含み、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第二反応液内に設けるステップを含む。
【0018】
本発明の表示パネルマザーボード及び表示パネルの製造方法によれば、フレキシブルサブストレートの表面に表示素子を形成するとき、液体親和性調整可能層の液体親和性を調整して親水基を形成することにより、フレキシブルサブストレートと剛性基板は、第一液体親和性を備える液体親和性調整可能層の液体親和性によって強固に接着され、表示素子の各膜層に脱落又は摺動現象が起こることを有効に回避できる。フレキシブルサブストレートと剛性基板を分離するとき、液体親和性調整可能層の液体親和性を調整して撥水基を形成することにより、第二液体親和性を備える液体親和性調整可能層の接着性が悪くなるか接着力がなくなり、これにより、フレキシブルサブストレートを剛性基板から剥がすのに有利になり、剥離効率が向上すると同時に表示パネルの機能を有効に保証できる。
【0019】
図面は、本発明をよりよく理解するために提供するものであり、明細書の一部を構成し、下記の具体的な実施の形態とともに本発明の思想を解釈するものであるが、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明実施例に係る表示パネルマザーボードの構造模式図である。
図2図2は本発明の別の実施例に係る表示パネルマザーボードの構造模式図である。
図3図3は本発明の実施例による表示パネルマザーボードにおける液体親和性調整可能層が親水基を備えるときの、フレキシブルサブストレートとの接着構造を模式的に示したものである。
図4図4は本発明の実施例による表示パネルマザーボードにおける液体親和性調整可能層が撥水基を備えるときの、フレキシブルサブストレートとの剥離構造を模式的に示したものである。
図5図5は本発明実施例に係る、表示パネル製造のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を組み合わせて本発明の具体的な実施の形態について詳細に説明する。ここに記載する具体的な実施の形態は本発明を説明及び解釈するために用いられるものであって、本発明を限定するものではない。
【0022】
図1は本発明実施例に係る表示パネルマザーボードの構造模式図である。図2は、図1に示す表示パネルマザーボードにおける液体親和性調整可能層の構造模式図を更に示す。
【0023】
図1を参照すると、本発明実施例に係る表示パネルマザーボード100は剛性基板110と、フレキシブルサブストレート120と、剛性基板110とフレキシブルサブストレート120との間に設けられた液体親和性調整可能層130と、を含む。液体親和性調整可能層130によってフレキシブルサブストレート120を剛性基板110に接着する。
【0024】
説明しておくと、本発明では、剛性基板110については具体的に限定せず、例えば、剛性基板110は、硬質ガラス基板であってもよく、或いは、その他の一定の強度を有する材料で製造された基板であってもよく、これにより、その上にあるフレキシブルサブストレート120を支持する。
【0025】
更に説明しておくと、本発明に係る「表示パネルマザーボード」とは、その寸法が製造後の表示パネルの寸法に合致する、剛性基板とフレキシブルサブストレートとを含むマザーボードを指す。よって、大型の基板を複数の小型の表示パネルに分割する過程を必要とせず、表示素子が形成されたフレキシブルサブストレートを剛性基板から剥がするだけで表示パネルを形成できる。
【0026】
図3は本発明の実施例による表示パネルマザーボードにおける液体親和性調整可能層が親水基を備えるときの、フレキシブルサブストレートとの接着構造を模式的に示す。図4は本発明の実施例による表示パネルマザーボードにおける液体親和性調整可能層が撥水基を備えるときの、フレキシブルサブストレートとの剥離構造を模式的に示す。
【0027】
本発明の実施例によれば、フレキシブルサブストレート120の表面に表示素子140を形成するとき、液体親和性調整可能層130の液体親和性を変えて親水基Aを形成することにより(例えば、図3に示す)、フレキシブルサブストレート120と剛性基板110を強固に接着することができ、表示素子の各膜層に脱落又は摺動現象が起こることを有効に回避できる。フレキシブルサブストレート120を剛性基板110から剥がすとき、液体親和性調整可能層130の液体親和性を変えて撥水基Bを形成することにより(例えば、図4に示す)、液体親和性調整可能層130の接着性が悪くなるか接着力がなくなり、これにより、フレキシブルサブストレート120を剛性基板110から剥がすのに有利になり、剥離効率の向上と同時に表示パネルの機能を有効に保証できる。
【0028】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層130の材料は、異なる条件で親水基Aと撥水基Bをそれぞれ形成できるという条件を満たすべきである。しかし、本願は液体親和性調整可能層130の材料については具体的に限定せず、異なる処理条件に対応する材料を含んでもよいこととする。液体親和性調整可能層130を処理する方式には、異なる温度、pH値、電界強度、光照射強度、反応液などを用いて液体親和性調整可能層130を処理することで親水基Aと撥水基Bをそれぞれ形成することを含み(しかしこれに限定されない)、液体親和性調整可能層130の材料は、各種処理方式に対応する異なる材料を含んでもよい。
【0029】
液体親和性調整可能層130が形成する親水基Aと水酸基(−OH)との間の吸着力が強いため、本発明の実施例によれば、フレキシブルサブストレート120と剛性基板110の表面に予め親水処理を施すことで、フレキシブルサブストレート120と剛性基板110の表面に水酸基(−OH)を形成し、これにより、親水基Aを含む液体親和性調整可能層130は、フレキシブルサブストレート120及び剛性基板110の表面接着性を改善することができ、剛性基板110とフレキシブルサブストレート120が強固に接着され、後続のプロセスにおいて、フレキシブルサブストレート120に表示素子140を形成しやすくなる。
【0030】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層130の材料は、2014年中国化学学会学術年次総会において、蘇春平氏が述べた樹枝状ビスマス層を含んでも良く、具体的には、蘇春平氏の『光制御可逆超撥水/超親水転換特性を有する樹枝状ビスマス層』を参照することができ、本著作では、簡単なケミカルメッキにて樹枝状ビスマス層を合成することが述べられており、当該文献の全ての公開内容は引用という形でここに併せられる。ステアリン酸により表面性質を変えた後、当該コーティング層は優れた超撥水性能(すなわち、撥水基Bを形成する)とセルフクリーニング性能を備え、その静的水接触角は165°に達し、滑落角は5°未満である。また、製造した超撥水ビスマス層は、紫外線照射を50分経た後、超撥水性能から超親水性能に変わる(すなわち、親水基Aが形成される)。光照射後の親水表面を、ステアリン酸により再び性質を変えて超撥水状態に戻し、超撥水と超親水との間での光制御可逆転換を実現する。
【0031】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層130の材料は、N−イソプロピルアクリルアミドを介して形成されるポリN−イソプロピルアクリルアミド(pNIPA、pNIPAAm、pNIPAA又はpNIPAm)感熱性ポリマーを更に含んでも良く、熱処理、電界印加などの処理を経て超親水Aと超撥水Bとの間で切り換える。
【0032】
よって、フレキシブルサブストレート120に表示素子140を形成する前に、剛性基板110とフレキシブルサブストレート120における水酸基(−OH)が強い吸着力(つまり、強い接着性)である親水基Aを有するように液体親和性調整可能層130を制御して、剛性基板110とフレキシブルサブストレート120が強固に接着されるようにする。剛性基板110とフレキシブルサブストレート120を分離するとき、接着性が悪い撥水基Bを有するように液体親和性調整可能層130を制御することで、剛性基板110とフレキシブルサブストレート120の分離に有利になり、表示パネルの生産量を有効に保証できる。
【0033】
図2は本発明の別の実施例に係る表示パネルマザーボードの構造模式図である。
【0034】
図2を参照すると、本発明実施例に係る液体親和性調整可能層130は、1つの調整可能層部を含んでもよい。調整可能層部は第一液体親和性調整可能層131と、第二液体親和性調整可能層133と、第一液体親和性調整可能層131と第二液体親和性調整可能層133との間に位置する光熱遮蔽層132と、を含んでもよい。第一液体親和性調整可能層131は、光熱遮蔽層132とフレキシブルサブストレート120との間に位置してフレキシブルサブストレート120と接触し、第二液体親和性調整可能層133は、光熱遮蔽層132と剛性基板110との間に位置して剛性基板110と接触する。
【0035】
本発明の実施例によれば、第一液体親和性調整可能層131と第二液体親和性調整可能層133との間に設けられた光熱遮蔽層132は、フレキシブルサブストレート120と接触する第一液体親和性調整可能層131、及び、剛性基板110と接触する第二液体親和性調整可能層133をそれぞれ制御できる。例えば、剛性基板110と接触する第二液体親和性調整可能層133の液体親和性を変え、それが親水基Aを具備し続けるようにすることができるため、吸着力が強い。剛性基板110とフレキシブルサブストレート120を分離するとき、フレキシブルサブストレート120と接触する第一液体親和性調整可能層131の液体親和性のみを変え、撥水基Bを具備させることができ、これにより、フレキシブルサブストレート120と第一液体親和性調整可能層131のみを剥がすことを実現でき、製造プロセスにかかる時間をさらに短縮でき、製造率が向上する。また、第二液体親和性調整可能層133を交換するときは、第二液体親和性調整可能層133の液体親和性のみを変え、撥水基Bを具備させることができ、剛性基板110との分離を実現でき、新たな第二液体親和性調整可能層133と交換しやすい。
【0036】
第一液体親和性調整可能層131の液体親和性を変えるとき、第一液体親和性調整可能層131へ光照射或いは加熱処理を行うことにより、第一液体親和性調整可能層131の液体親和性を変える(例えば、撥水基Bを形成する)。光熱遮蔽層132は、他方に位置する第二液体親和性調整可能層133への光又は熱の伝達を遮ることができるため、第二液体親和性調整可能層133の液体親和性を変えることはない。
【0037】
説明しておくと、本発明では、光熱遮蔽層132の具体的な構造については限定せず、光と熱を遮蔽できるものであればよい。また、光熱遮蔽層132は、第一液体親和性調整可能層131と第二液体親和性調整可能層133との間において接着接続される。本発明の実施例によれば、第一液体親和性調整可能層131と、第二液体親和性調整可能層133と、光熱遮蔽層132とは一体に形成でき、光熱遮蔽層132を第一液体親和性調整可能層131と第二液体親和性調整可能層133との間に挟める。
【0038】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層130は複数の積層設置された調整可能層部(図示しない)を含んでもよい。フレキシブルサブストレート120と接触する調整可能層部の第一液体親和性調整可能層131はフレキシブルサブストレート120と接触し、剛性基板110と接触する調整可能層部の第二液体親和性調整可能層133は剛性基板110と接触する。
【0039】
複数の調整可能層部を設けることにより、液体親和性調整可能層130の使用回数を増やすことができる。ある調整可能層部が複数回の使用により破損した時は、その次の調整可能層部を用いることができるため、製造時間を短縮し、製造率が向上する。
【0040】
本発明の実施例によれば、表示パネルマザーボード100は、フレキシブルサブストレート120の、液体親和性調整可能層130と離反する側に設けられる表示素子140を更に含んでもよい。
【0041】
フレキシブルサブストレート120に表示素子140を形成するとき、フレキシブルサブストレート120と剛性基板110は親水基Aを有する液体親和性調整可能層130によって強固に接着され、表示素子140を形成する過程(例えば、コーティング過程)において、各膜層が設計通りの箇所に位置でき、表示素子140の性能を有効に保証できる。
【0042】
図5は本発明実施例に係る、表示パネル製造のフローチャートである。
【0043】
図5を参照すると、本発明実施例に係る、表示パネルを製造する方法は次のステップを含む。
【0044】
S100、剛性基板とフレキシブルサブストレートを製造する。
【0045】
S200、剛性基板とフレキシブルサブストレートにおいて、互いに対向する面に親水処理を施す。
【0046】
S300、剛性基板とフレキシブルサブストレートの少なくとも一方の、親水処理が施された表面に液体親和性調整可能層を設ける。
【0047】
S400、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成し、且つ、フレキシブルサブストレートを剛性基板に接着するために、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御する。
【0048】
S500、フレキシブルサブストレートの、剛性基板と離反する表面に表示素子を形成する。
【0049】
S600、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成し、且つ、フレキシブルサブストレートを剛性基板から剥がすために、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御する。
【0050】
本発明の実施例によれば、フレキシブルサブストレートの表面に表示素子を形成する前に、液体親和性調整可能層を第一事前設定条件下に置き、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成することで、フレキシブルサブストレートと剛性基板を強固に接着できる。フレキシブルサブストレートと剛性基板を分離するとき、液体親和性調整可能層を第二事前設定条件下に置き、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成することで、剛性基板とフレキシブルサブストレートの分離に有利になり、剥離効率の向上を有効に保証でき、製造される表示パネルの表示素子の性能が向上し、製造時間を有効に節約し、コストを削減する。
【0051】
本発明の実施例によれば、上記第一事前設定条件と第二事前設定条件は、温度、pH値、電界強度、光照射強度、反応液などの処理条件を含む(しかしこれに限らない)。
【0052】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第一温度に保持するというステップを含んでもよく、また、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第二温度に保持するというステップを含んでもよい。
【0053】
換言すれば、ステップS400では、液体親和性調整可能層を第一温度に保持することで、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成する。また、ステップS600では、液体親和性調整可能層を第二温度に保持することで、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成する。
【0054】
液体親和性調整可能層の温度を変える方式は幾つもあり、ここでは改めて論じない。
【0055】
説明しておくと、前記第一温度及び/又は第二温度は、温度範囲、ある温度の限界値、複数の離散した温度値、又は以上の3つの組み合わせであってもよい。
【0056】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第一pH値に保持するステップを含んでもよく、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第二pH値に保持するステップを含んでもよい。
【0057】
換言すれば、ステップS400では、液体親和性調整可能層を第一pH値に保持することで、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成する。また、ステップS600では、液体親和性調整可能層を第二pH値に保持することで、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成する。
【0058】
本発明の実施例によれば、例えば、収容溝(図示しない)を用いて異なるpH値の溶液を収容することができ、さらに、液体親和性調整可能層を当該収容溝内に設けることで、液体親和性調整可能層が存在する箇所のpH値条件を変えることができる。
【0059】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、第一電界強度を有する電圧を液体親和性調整可能層に印加するステップを含んでもよく、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、第二電界強度を有する電圧を液体親和性調整可能層に印加するステップを含んでもよい。
【0060】
換言すれば、ステップS400では、第一電界強度を有する電圧を液体親和性調整可能層に印加することで、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成する。また、ステップS600では、第二電界強度を有する電圧を液体親和性調整可能層に印加することで、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成する。
【0061】
本発明の実施例によれば、例えば、対向設置された2つの電極を用いて、液体親和性調整可能層に電圧を印加することができる。印加する電圧の電界強度を変えることにより液体親和性調整可能層の液体親和性を変えられ、操作が便利である。
【0062】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、第一強度を有する光線を液体親和性調整可能層に照射するステップを含み、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、第二強度を有する光線を液体親和性調整可能層に照射するステップを含んでもよい。
【0063】
換言すれば、ステップS400では、第一強度を有する光線を液体親和性調整可能層に照射することで、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成する。また、ステップS600では、第二強度を有する光線を液体親和性調整可能層に照射することで、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成する。
【0064】
本実施例によれば、例えば、光源(例えば、紫外線光源)によって液体親和性調整可能層に照射することができる。照射光線の強度を変えることで液体親和性調整可能層の液体親和性を変えられ、操作が便利である。
【0065】
本発明の実施例によれば、液体親和性調整可能層が第一液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第一反応液内に設けるステップを含んでもよく、液体親和性調整可能層が第二液体親和性を備えるように制御するステップは、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成するために、液体親和性調整可能層を第二反応液内に設けるステップを含んでもよい。
【0066】
換言すれば、ステップS400では、液体親和性調整可能層を第一反応液内に設けることで、液体親和性調整可能層の表面に親水基を形成する。また、ステップS600では、液体親和性調整可能層を第二反応液内に設けることで、液体親和性調整可能層の表面に撥水基を形成する。
【0067】
本発明の実施例によれば、例えば、当該液体親和性調整可能層を異なる反応液内におくことで液体親和性調整可能層の液体親和性を変えられ、操作が便利である。
【0068】
以上の実施の形態は、本発明の原理を説明するために用いた例示的な実施の形態であって、本発明はこれに限らない。本分野の一般的な技術者は、本発明の精神と実質的な状況を逸脱しなければ、各種変形と改善をなすことができ、これらの変形と改善も本発明の請求範囲であると見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5