特許第6976867号(P6976867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976867
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】入隅壁構造、及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   E04F13/08 Y
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-2571(P2018-2571)
(22)【出願日】2018年1月11日
(65)【公開番号】特開2019-120102(P2019-120102A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】菊地 訓
(72)【発明者】
【氏名】工藤 智勇
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−225016(JP,A)
【文献】 特開2001−342729(JP,A)
【文献】 特開2005−146573(JP,A)
【文献】 特開2000−303652(JP,A)
【文献】 特開平11−324148(JP,A)
【文献】 実開平05−035907(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の入隅部を形成する第1壁パネルと第2壁パネルとを備え、
前記第2壁パネルは、前記第1壁パネルの表面に前記第2壁パネルの端面を突き合わせるように配置されており、
前記入隅部には、上下方向に延在する入隅溝が形成されており、
前記入隅溝は、前記第1壁パネルの表面に形成された第1凹部と、前記第2壁パネルの表面に形成された第2凹部とで構成され
前記入隅溝の内部に、湿式シール材が充填されるシーリングポケットが形成されており、
前記シーリングポケットは、前記第2壁パネルの端面に形成された切欠き部と、前記第1壁パネルの表面の、前記第2壁パネルの端面に対向する対向部に形成された切欠き部とを含むことを特徴とする入隅壁構造。
【請求項2】
記対向部が、前記第1壁パネルの表面において厚さ方向の最も外側に位置する、請求項1に記載の入隅壁構造。
【請求項3】
前記入隅溝には、前記第1壁パネルの表面に略平行な第1底面部と、該第1底面部に連なり、前記第2壁パネルの表面に略平行な第2底面部とが設けられている、請求項1又は2に記載の入隅壁構造。
【請求項4】
前記第2底面部の少なくとも一部が、前記第1凹部に設けられている、請求項3に記載の入隅壁構造。
【請求項5】
前記第1凹部には、前記第1壁パネルの表面と前記第1底面部との間に連設される第1傾斜面が設けられている、請求項3又は4に記載の入隅壁構造。
【請求項6】
前記第2凹部には、前記第2壁パネルの表面と前記第2底面部との間に設けられる第2傾斜面が形成されている、請求項3〜5の何れか一項に記載の入隅壁構造。
【請求項7】
前記第1凹部の深さが前記第1壁パネルに形成された他の溝部の深さと同等であり、
前記第2凹部の深さが前記第2壁パネルに形成された他の溝部の深さと同等である、請求項1〜6の何れか一項に記載の入隅壁構造。
【請求項8】
前記第2壁パネルの上下方向長さが、前記第1壁パネルの上下方向長さよりも短く、
前記入隅溝の上端部、及び下端部の少なくとも何れかに連なり略水平状に延在する他の溝部が前記第1壁パネルに設けられている、請求項1〜7の何れか一項に記載の入隅壁構造。
【請求項9】
前記入隅溝の上下方向長さと、前記第2壁パネルの上下方向長さとが略同一である、請求項1〜の何れか一項に記載の入隅壁構造。
【請求項10】
前記第1凹部には、前記第1壁パネルの表面と前記第1底面との間に連設される第1傾斜面が設けられており、
前記第2凹部には、該第2壁パネルの表面と前記第2底面部との間に連設される第2傾斜面が設けられており、
前記第1壁パネルの表面に対する前記第1傾斜面の傾斜角度が、45°以上60°以下であり、
前記第2壁パネルの表面に対する前記第2傾斜面の傾斜角度が、45°以上60°以下である、請求項の何れか一項に記載の入隅壁構造。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の入隅壁構造を備えた建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の入隅壁構造、及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造の軸組みを有する工業化住宅などの建物においては、その外壁や内壁に、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等の壁パネルを備えている。このような建物の外壁や内壁に、凹部や凸部によって入隅部が形成される場合の構造としては、以下のようなものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、相互に垂直となるように間隔を空けて配置された2枚の平坦な外壁パネルの間に、平面視での断面がL字状の入隅外壁パネルを設置した入隅壁構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、一方の外壁パネルの端面が他方の外壁パネルの表面に対して間隙を空けて突き合うように相互に垂直に2枚の外壁パネルが配置され、当該間隙に合成樹脂製の目地材を弾縮して挿入した入隅壁構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−70446号公報
【特許文献2】実開昭62−19306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の入隅壁構造では、断面がL字状の入隅外壁パネルを用いるため、例えば腰壁や垂れ壁のような、入隅部を構成する両側の壁の高さが異なる場合には対応できないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の入隅構造では、目地材が外部から視認し易く、外観を損なう虞があるため、より意匠性の高い外観を実現可能な入隅壁構造が望まれている。
【0008】
それゆえ、本発明は、両側の壁の高さが異なる入隅部にも対応可能であり、且つ、意匠性の高い外観が実現可能な入隅壁構造、及び建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の入隅壁構造は、建物の入隅部を形成する第1壁パネルと第2壁パネルとを備え、
前記第2壁パネルは、前記第1壁パネルの表面に前記第2壁パネルの端面を突き合わせるように配置されており、
前記入隅部には、上下方向に延在する入隅溝が形成されており、
前記入隅溝は、前記第1壁パネルの表面に形成された第1凹部と、前記第2壁パネルの表面に形成された第2凹部とで構成されることを特徴とする。
【0010】
なお、本発明の入隅壁構造にあっては、前記第2壁パネルの端面に対向する前記第1壁パネルの対向部が、前記第1壁パネルの表面において厚さ方向の最も外側に位置することが好ましい。
【0011】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記入隅溝には、前記第1壁パネルの表面に略平行な第1底面部と、該第1底面部に連なり、前記第2壁パネルの表面に略平行な第2底面部とが設けられていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記第2底面部の少なくとも一部が、前記第1凹部に設けられていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記第1凹部には、前記第1壁パネルの表面と前記第1底面部との間に連設される第1傾斜面が設けられていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記第2凹部には、前記第2壁パネルの表面と前記第2底面部との間に設けられる第2傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記第1凹部の深さが前記第1壁パネルに形成された他の溝部の深さと同等であり、
前記第2凹部の深さが前記第2壁パネルに形成された他の溝部の深さと同等であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記第2壁パネルの上下方向長さが、前記第1壁パネルの上下方向長さよりも短く、
前記入隅溝の上端部、及び下端部の少なくとも何れかに連なり略水平状に延在する他の溝部が前記第1壁パネルに設けられていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記入隅溝の内部に、湿式シール材が充填されるシーリングポケットが形成されており、
前記シーリングポケットは、前記入隅溝の前記第2底面部を構成する前記第1壁パネルの第1側面と、前記対向部とに開口する切欠き部を含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記入隅溝の内部に、湿式シール材が充填されるシーリングポケットが形成されており、
前記シーリングポケットは、前記第2壁パネルの前記端面と、前記第2傾斜面とに開口する切欠き部を含むことが好ましい。
【0019】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記入隅溝の上下方向長さと、前記第2壁パネルの上下方向長さとが略同一であることが好ましい。
【0020】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記入隅溝が、前記第1壁パネルの表面と前記第2壁パネルの表面とがなす角度を2等分する仮想平面に対して対称形状となっていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の入隅壁構造にあっては、前記第1凹部には、前記第1壁パネルの表面と前記第1底面との間に連設される第1傾斜面が設けられており、
前記第2凹部には、該第2壁パネルの表面と前記第2底面部との間に連設される第2傾斜面が設けられており、
前記第1壁パネルの表面に対する前記第1傾斜面の傾斜角度が、45°以上60°以下であり、
前記第2壁パネルの表面に対する前記第2傾斜面の傾斜角度が、45°以上60°以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の建物は、上記の何れかの入隅壁構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、両側の壁の高さが異なる入隅部にも対応可能であり、且つ、意匠性の高い外観が実現可能な入隅壁構造、及び建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態としての建物を示す斜視図である。
図2図1の建物の部分拡大図である。
図3図1の建物を別の角度から見た斜視図である。
図4図1の建物における入隅部を拡大して一部を断面で示した斜視図である。
図5】入隅部の平面視での部分拡大図である。
図6】入隅部の変形例を示す斜視図である。
図7】入隅部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の入隅壁構造10を備える建物1を示した斜視図である。図2は、図1における組立て家屋としての建物1の入隅部2を拡大して示した図である。図3は、図1の建物1を、図1とは別の角度から見た斜視図である。建物1は、1階部分1aと2階部分1bを有する2階建ての住宅であり、2階部分1bにおける正面側の2箇所に入隅部2、2’が設けられている。なお、建物1は1階建てでもよいし、3階建て以上でもよく、入隅部2、2’の位置及びその数も特に限定されない。
【0026】
なお、建物1は、例えば、鉄骨造の軸組みを有する工業化住宅とすることができる。なお、工業化住宅としては例えば、鉄筋コンクリート造の基礎などの下部構造体3と、柱や梁などの軸組部材で構成される軸組架構を有し、下部構造体3の上方に設けられた上部構造体4と、で構成される。なお、下部構造体3は、地盤上に設置され、上部構造体4を支持する。また、軸組架構を構成する軸組部材は、予め規格化(標準化)されたものとすることができ、その場合、予め工場にて製造された後、建築現場に搬入されて組み立てられる。
【0027】
建物1の入隅部2に設けられる本実施形態の入隅壁構造10は、図4に示すように、第1壁パネル11と、当該第1壁パネル11の表面11aに端面12bを突きあてるように配置した第2壁パネル12とを備える。第1壁パネル11及び第2壁パネル12はそれぞれ、柱や梁などの軸組部材で構成される軸組架構に対して直接、あるいは金物等を介して間接的に取り付けられる。なお、第1壁パネル11と第2壁パネル12の厚さは同じでもよいし異なっていてもよい。
【0028】
図5に示すように、本例では、第1壁パネル11の表面11aの端部に設けられた平坦な対向部11cに、第2壁パネル12の端面12bが対向配置されている。なお、対向部11cに、第2壁パネル12の端面12bが対向して配置されていれば、対向部11cと端面12bとの間に隙間が形成されていてもよいし、対向部11cと端面12bとが当接していてもよい。対向部11cは、第1壁パネル11の表面11aにおける対向部11c以外の領域(露出部11d)と同一平面上に位置している。また、本例において対向部11cは、第1壁パネル11の表面11aにおいて厚さ方向の最も外側に位置する。
【0029】
第1壁パネル11及び第2壁パネル12によって形成される入隅部2には、当該入隅部2に沿って上下方向に延在する入隅溝14が形成されている。入隅溝14は上下方向に一直線状に延在しており、第1壁パネル11の表面11aに形成された第1凹部15と、第2壁パネル12の表面12aに形成された第2凹部16とで構成されている。また、入隅溝14は、第1壁パネル11の表面11aに略平行な第1底面部14a(後述する第1底面15a)と、第1底面部14aに連なり、第2壁パネル12の表面12aに略平行な第2底面部14b(後述する第1側面15c、及びシーリング17の表面17a)とが設けられている。
【0030】
本例において、第1凹部15は、第1壁パネル11の端面11bから所定の距離(対向部11cの幅に対応した距離)だけ離間した位置に形成されている。また、第2凹部16は、第2壁パネル12の表面12a側及び端面12b(第1壁パネル11に当接する面)側に開口するように形成されている。
【0031】
第1凹部15には、第1壁パネル11の表面11a(露出部11d)から所定の距離だけ後退した位置にあり、当該表面11aに略平行な第1底面15aが設けられている。また第1凹部15には、表面11a(露出部11d)と第1底面15aとの間に連設されるとともに、表面11a及び第1底面15aに対して傾斜する第1傾斜面15bが設けられている。さらに本例では、第1凹部15に、第1底面15aに連なるとともに第1底面15aに略垂直に延在する第1側面15cが設けられている。第1側面15cは、第2壁パネル12の表面12aに略平行であり、入隅溝14の第2底面部14bの一部を構成している。
【0032】
第1傾斜面15bは、表面11aに対して所定の角度θ1(本例では45°)をなすように傾斜して延在している。なお、本例では、第1壁パネル11の表面11a、第1底面15a、第1傾斜面15b、及び第1側面15cは平坦な面で構成されているが、これに限定されず、湾曲面であったり、凹凸を有する面であったりしてもよい。また、第1底面15aは、第1壁パネル11の表面11aに対して平行でなくてもよい。
【0033】
第2凹部16には、第2傾斜面16bが設けられている。なお、第2壁パネル12に、第2壁パネル12の表面12aに対して略平行に延在し、第2壁パネル12の表面12aから所定の距離だけ後退した位置にある第2底面を設けてもよい。その場合、第2底面は入隅溝14の第2底面部14bの少なくとも一部を構成する。例えば、第2底面は、第1壁パネル11の第1側面15cと同一平面上に位置するとともに、第2傾斜面16bに連設される面とすることができる。
【0034】
第2傾斜面16bは、表面12aに対して所定の角度θ2(本例では45°)をなすように傾斜して延在している。また、本例の第2傾斜面16bは、第1傾斜面15bに平行に延在しているが、これに限られない。第1傾斜面15bと、第2傾斜面16bとの距離は、例えば40mmとすることができるが、これに限られない。なお、意匠の外観上は当該間隔がより小さいことが好ましく、シーリング17等の施工性の観点からは当該間隔が大きいことが好ましい。これら意匠の観点及び施工性の観点の作用効果の両立を図るため、第1傾斜面15bと、第2傾斜面16bとの距離は30mm〜50mmとすることが好ましい。本例では、第2壁パネル12の表面12a及び第2傾斜面16bは平坦面で構成されているが、これに限定されず、湾曲面であったり、凹凸を有する面であったりしてもよい。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の入隅壁構造10にあっては、入隅溝14が、第1壁パネル11の表面11aに形成された第1凹部15と、第2壁パネル12の表面12aに形成された第2凹部16とで構成されている。つまり、入隅溝14は、第1壁パネル11の表面11aからも凹となり、第2壁パネル12の表面12aからも凹となるように形成されている。このような構成により、両側の壁(第1壁パネル11及び第2壁パネル12)の高さが異なる入隅部2にも対応可能であり、且つ、意匠性の高い外観が実現可能となる。すなわち、例えば従来のように、断面L字状の入隅部壁パネルと、左右両側の平坦な壁パネルとで入隅部を構成する場合、左右両側の壁パネルの高さが異なる場合には当該断面L字状の入隅部壁パネルを切断して使用しなければならなかったが、本実施形態では、第1壁パネル11の表面11aに第2壁パネル12の端面12bを突き合わせる構成としたことで、左右の壁パネル(第1壁パネル11と第2壁パネル12)の高さが異なっていても容易に入隅部2を形成可能である。また、入隅溝14が、第1壁パネル11の表面11aに形成された第1凹部15と、第2壁パネル12の表面12aに形成された第2凹部16とで構成されていることで、入隅溝14を様々な角度から見え易くして、立体的な意匠性の高い壁の外観を実現できる。
【0036】
より具体的に、本例の入隅溝14は、第1壁パネル11に平行な方向(図5の矢印A参照)からも視認することができ(図2B参照)、且つ、第2壁パネル12に平行な方向(図5の矢印B参照)からも視認可能に構成されている(図2A参照)。このような構成により、入隅溝14を様々な角度から見え易くして、立体的な意匠性の高い外壁の外観を実現できる。
【0037】
また、入隅溝14の第1底面部14aと第2底面部14bとの境界に形成される底部14cが、図5に示すように平面視の断面図においてV字状の角部(本例では垂直な角部)を形成していることで、エッジが効いた(輪郭がはっきりした)シャープな外観の入隅部2を実現することできる。また、入隅溝14の底部14cが、第1壁パネル11の第1底面15aと第1側面15cとで構成されていることにより、第1壁パネル11と第2壁パネル12との位置がずれた場合等でも関係なく、入隅溝14の底部14cは意図した形状となる。すなわち、本例の場合であれば入隅溝14の底部14cが確実に一直線状に形成されるため、意匠性の高い外観を実現することができる。
【0038】
第1底面部14aの深さ(表面11a(露出部11d)から第1底面15aまでのパネル厚さ方向の距離)は、第1壁パネル11に形成された化粧目地等の他の溝部の深さと同等であることが好ましい。このような構成により、他の溝部と第1凹部15とが交差する部分において底面に段差ができ難くなり、湿式シール材の充填作業における作業性が向上する。また、外壁面に段差が生じることによる意匠性の低下を抑制することができる。他の溝部としては、例えば、水平方向に延在する横溝18a(化粧目地)や、隣接する他の壁パネル22(図4参照)との境界部に形成された縦溝19a等とすることができる。なお、他の溝とは、上下方向に隣接する他の壁パネルとの境界部に形成された溝でもよい。
【0039】
同様に、第2底面部14bの深さ(表面12aから第1側面15c及びシーリング17の表面17aまでのパネル厚さ方向の距離)は、第2壁パネル12に形成された他の溝部(本例では、水平方向に延在する横溝18b及び鉛直方向に延在する縦溝19b)の溝深さと同等であることが好ましい。
【0040】
第1壁パネル11と、第1壁パネル11に隣接する壁パネル22に設けられた縦溝19aは、底面と傾斜面を有する断面等脚台形状となっている。このような構成により、入隅溝14の形状と縦溝19aの形状に統一感がでて、外観の意匠性が向上する。なお、断面等脚台形状とは、断面が長方形である場合も含む。同様に、横溝18aの断面形状も、断面等脚台形状であることが好ましい。同様の観点から、第2壁パネル12と、第2壁パネル12に隣接する壁パネル21との境界部分に設けられた縦溝19b、及び、第2壁パネル12に設けられた横溝18bについても、断面等脚台形状であることが好ましい。なお、縦溝19a、19bは、隣接する壁パネル(第1壁パネル11と壁パネル22、第2壁パネル12と壁パネル21)同士の繋ぎ目に設けられているが、化粧目地として壁パネルの中間部に形成されていてもよい。
【0041】
表面11aの露出部11dに対する第1傾斜面15bの傾斜角θ1は、45°以上60°以下であることが好ましい。このような構成により、入隅溝14の内部におけるシーリング材(シーリング17を形成する)の充填や吹付塗装等の作業が容易となる。また、入隅溝14の輪郭の視認性が向上し、意匠性を高めることができる。同様の観点から、表面12aに対する第2傾斜面16bの傾斜角θ2も、45°以上60°以下であることが好ましい。なお、第1傾斜面15bの傾斜角θ1及び第2傾斜面16bの傾斜角θ2は、上記の範囲に限られず、例えば90°であってもよい。
【0042】
また、入隅溝14の内部において、第1壁パネル11と第2壁パネル12との境界部分には、シーリング17が施されている。シーリング17を入隅溝14の内部に設けることで、外部から視認され難くなり、外観の意匠性を高めることができる。シーリング17は、第1壁パネル11に形成された切欠き部(シーリングポケット)15dと、第2壁パネル12に形成された切欠き部(シーリングポケット)16cと、に充填された湿式シール材で構成されている。切欠き部15dは、第1側面15cと対向部11cに開口する面取り状の切欠き部であり、切欠き部16cは、第2傾斜面16bと第2壁パネル12の端面12bに開口している。またシーリング17は、露出する表面17aが第1側面15cと同一平面となるように形成され、入隅溝14の第2底面部14bの一部を構成している。なお、本例ではシーリングポケットが第1壁パネル11側の切欠き部15dと第2壁パネル12側の切欠き部16cとで構成されているが、何れか一方のみで構成されていてもよい。また、第1壁パネル11と第2壁パネル12との境界部分に形成されていれば、シーリングポケットの形状は特に限定されない。
【0043】
このような構成により、特殊なヘラ等が不要となり、通常の平板状のヘラで第1壁パネル11の第1側面15cをガイドにして湿式シール材を押さえることができるので、シーリング17の施工作業が容易となる。また、シーリング17によって、第1壁パネル11と第2壁パネル12との間に生じ得る製造誤差や施工誤差等に起因する段差を目立たなくすることも可能となる。
【0044】
なお、シーリング17の位置は、本例の図5に示すように、入隅溝14の第1底面部14aと第2底面部14bとの境界に形成される底部14c(角部)から離間した位置であることが好ましい。このように入隅溝14の角部から離れた位置とすることにより、現場でのシーリング作業を容易にすることができる。なお、このように作業の容易性を高める観点から、シーリング17の位置は、第1壁パネル11の表面11aよりも外側にあることがより望ましい。すなわち、例えば、切欠き部(シーリングポケット)15dを、第1壁パネル11側ではなく第2壁パネル12側に設けて、そこに湿式シール材を充填することで、シーリング作業がより容易となる。
【0045】
入隅溝14は、本例のように、左右対称の形状となっていることが好ましい。すなわち、入隅部2において、第1壁パネル11の表面11aと第2壁パネル12の表面12aとがなす角度を2等分する仮想平面S(図5参照)に対して対称となっていることが好ましい。なお、本例において仮想平面Sは、入隅溝14の底部14c(第1底面15aと第1側面15cとの境界部)を通り、第1壁パネル11の表面11a及び第2壁パネル12の表面12aに対して45°を形成する平面である。このような構成により、例えば、入隅部2を構成する第1壁パネル11と第2壁パネル12の関係が逆となっても、同様の外観を得ることができる。したがって、入隅部2を構成する第1壁パネル11と第2壁パネル12の配置方法に制限が少なくなり、例えば、入隅部2の上側と下側とで第1壁パネル11と第2壁パネル12の関係が逆とならざるを得ないような場合であっても不自然な段差等が生じることがなく、高い意匠性を維持することが可能となる。
【0046】
また、対向部11cは、第1壁パネル11の表面11aにおいて厚さ方向の最も外側に位置することが好ましい。これによれば、対向部11cが露出部11dと同一平面上、または、露出部11dよりも厚さ方向の外側に位置していることとなる。その結果、例えば図4に示す壁パネル21(第2壁パネル12に対して、第1壁パネル11とは逆側に隣接する壁パネル)と、第1壁パネル11が先に設置されている場合でも、第2壁パネル12を壁パネル21と第1壁パネル11の間に嵌め込むように容易に設置することができる。すなわち、例えば、対向部11cが露出部11dよりも後退している(第1壁パネル11の露出部11dよりも厚さ方向内側に位置している)場合、予め設置された第1壁パネル11の対向部11cに第2壁パネル12の端面12bを当接させる際に、当該第2壁パネル12を対向部11c側にスライドさせなければならない。また、第2壁パネル12の、第1壁パネル11とは逆側に隣接する壁パネル21が先に設置されている場合には、第1壁パネル11と壁パネル21との間に第2壁パネル12を設置することが困難になる。これに対して、本実施形態によれば、第2壁パネル12の両側に位置する第1壁パネル11と壁パネル21が先に設置されていても、第2壁パネル12を容易に取り付けることができる。
【0047】
より好適には、本例のように、対向部11cが、露出部11dと同一平面上に位置していることが望ましい。これによれば、予め設置した第1壁パネル11の露出部11dに沿わせるように移動させながら第2壁パネル12の端面12bを第1壁パネル11の対向部11cに配置することができる。つまり、第2壁パネル12の端面2bを第1壁パネル11の対向部11cに当接させるために第2壁パネル12を第1壁パネル11の対向部11cに向けてスライドさせる必要がないので、第2壁パネル12の取り付け作業がより容易となる。
【0048】
また、入隅溝14の上下方向の長さは、第2壁パネル12の上下方向長さ(高さ)と略同一であることが好ましい。この場合、第2壁パネル12の上下方向長さと同じ長さの第1凹部15を第1壁パネル11に設けておき、当該第1壁パネル11に第2壁パネル12を突き合わせることで、突き合わせた入隅部2のみに入隅溝14が形成されることになる。これによれば、第1壁パネル11と第2壁パネル12の上下方向長さが異なる場合でも、第1壁パネル11の長さを切断することなく入隅部2を形成することができるため、コストの上昇を抑制することができる。
【0049】
ここで、図6、7は、入隅壁構造10の変形例を示している。図6に示す入隅壁構造30は、第1壁パネル31よりも上下方向長さが小さい第2壁パネル32が、第1壁パネル31の上部に配置されている。入隅溝34は、第1壁パネル31の第1凹部35及び第2壁パネル32の第2凹部36で構成されている。また入隅溝34は、第2壁パネル32に対応する上下方向の範囲、すなわち、第2壁パネル32の下端部32aから上端部32bにわたって設けられている。また、第2壁パネル32の下端部32aの高さにおいて、第1壁パネル31に水平溝38aが形成されており、入隅溝34の下端部に連設されている。水平溝38aの溝深さ及び延在方向に垂直な断面形状は、入隅溝34を構成する第1凹部35と同一であることが好ましい。このような構成により、他の溝部(水平溝38a)と第1凹部35とが交差する部分において底面に段差ができ難くなり、意匠性の低下を抑制することができるとともに、形状に統一感がでて、外観の意匠性が向上する。なお、長さが短い第2壁パネル32の位置は、図6に示すように第1壁パネル31の上部に限らず、第1壁パネル31の中段でも下部でもよい。
【0050】
図7に示す例では、第1壁パネル41よりも上下方向長さが小さい第2壁パネル42が、第1壁パネル41の下部に配置されている。この場合においても入隅溝44は、第1壁パネル41の第1凹部45及び第2壁パネル42の第2凹部46で構成されている。また入隅溝44は、第2壁パネル42に対応する上下方向の範囲、すなわち、第2壁パネル42の下端部42aから上端部42bにわたって設けられていることが好ましい。また、第2壁パネル42の上端部42bの高さにおいて、第1壁パネル41に水平溝48aが形成されており、入隅溝44の上端部42bに連設されている。水平溝48aの溝深さ、及び延在方向に垂直な断面形状は、入隅溝44を構成する第1凹部45と同一であることが好ましい。このような構成により、他の溝部(水平溝48a)と第1凹部45とが交差する部分において底面に段差ができ難くなり、意匠性の低下を抑制することができるとともに、形状に統一感がでて、外観の意匠性が向上する。なお、長さが短い第2壁パネル42の位置は、図7に示すように第1壁パネル41下部に限らず、第1壁パネル41の中段でも上部でもよい。
【0051】
本発明に係る入隅壁構造は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、入隅溝14の第1底面部14a(第1底面15a)及び第2底面部14b(第1側面15c、及びシーリング17の表面17a)は、必須の構成ではない。また、建物1に、異なる形状を有する複数の入隅部2を設けてもよい。その場合、複数の入隅部2の位置は、同一階層の異なる位置、あるいは、異なる階層にそれぞれ設けることができる。なお、図1の入隅部2’の壁構造は、基本的に入隅部2と同様であるため、説明を省略するが、図5に示す入隅壁構造10とは、第1壁パネル11と第2壁パネル12の位置関係が逆となる。
【符号の説明】
【0052】
1:建物
2、2’:入隅部
3:下部構造体
4:上部構造体
10:入隅壁構造
11:第1壁パネル
11a:表面
11b:端面
11c:対向部
11d:露出部
12:第2壁パネル
12a:表面
12b:端面
14:入隅溝
14a:第1底面部
14b:第2底面部
14c:入隅溝の底部
15:第1凹部
15a:第1底面
15b:第1傾斜面
15c:第1側面
15d:切欠き部(シーリングポケット)
16:第2凹部
16b:第2傾斜面
16c:切欠き部(シーリングポケット)
17:シーリング
17a:シーリングの表面
18a、18b:横溝(他の溝部)
19a、19b:縦溝(他の溝部)
30:入隅壁構造
31:第1壁パネル
32:第2壁パネル
32a:第2壁パネルの下端部
32b:第2壁パネルの上端部
34:入隅溝
35:第1凹部
36:第2凹部
38a:横溝(他の溝部)
40:入隅壁構造
41:第1壁パネル
42:第2壁パネル
42a:第2壁パネルの下端部
42b:第2壁パネルの上端部
44:入隅溝
45:第1凹部
46:第2凹部
48a:横溝(他の溝部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7