(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の酸化剤ガス排出流路において、前記酸化剤ガス誘導手段は、前記第1の集電部材の上端よりも低い位置に設けられている、請求項6に記載の燃料電池セルスタック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池装置では、発電に使用されなかったオフガスを燃焼させて改質器を加熱し、改質器において原料ガスを、水素を含む燃料ガスに改質している。このような構成を二段構成の燃料電池に適用しようとする場合には、複数の一次側の燃料電池セルと複数の二次側の燃料電池セルとを並置し、一次側の燃料電池セルの上部に第1のマニホールドを接続し、一次側の燃料電池セル及び二次側の燃料電池セルの下部に第2のマニホールドを接続する構成が考えられる。このような構成を採用する場合には、発電用空気は第1及び第2の燃料電池セルの下方に供給することになる。そして供給された発電用空気は、上昇しながらそれぞれの燃料電池セルの外側表面に形成された空気極に供給される。
【0007】
ところで、複数の燃料電池セルを電気的に接続して燃料電池セルスタックを構成する場合、複数の燃料電池セル同士を、集電部材を用いて接続することが一般的である。ここで燃料電池セルへの発電用空気の供給の観点では、燃料電池セルの間に発電用空気を流通させるために燃料電池セルの間隔をできるだけ広げて配置することが理想である。しかしセル間隔が広がると集電部材を移動する電子の伝導経路が延びるため電気抵抗の増大につながるとともに、部材コストの増大や装置の大型化を招いてしまう。よって発電用空気の供給が実施できる条件で、できるだけ燃料電池セルの間隔を狭く配置することが集電の点で求められる。
【0008】
このようなカスケード型燃料電池の構成において、二次側の燃料電池セルの上方は開放されているため、下方から供給された発電用空気が二次側の燃料電池セル間を流通してセル上方に排出されることが可能である。しかしながら、上述したように燃料電池セル同士の間隔が十分に広く配置されていない場合、一次側の燃料電池セルの上部に第1のマニホールドを接続してしまうと、これにより一次側の燃料電池セルの上方で燃料電池セルの間の発電用空気の流通が妨げられてしまう。このため、一次側の燃料電池セルで発電にムラが生じてしまう。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、一次側の燃料電池セルの上部に第1のマニホールドを接続した場合であっても、第1のマニホールドの直下における一次側の燃料電池セル間における発電用空気の下方から上方へかけての流通、及び発電用空気の一次側の燃料電池セルの上方への排出が可能な燃料電池セルスタック装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の燃料電池セルスタック装置は、燃料ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する燃料電池セルスタック装置であって、内部に長手方向に延びるガス流路を有し、長手方向に直交する方向に並べられた柱状の複数の第1の燃料電池セル、及び、複数の第1の燃料電池セルの間に設けられ、複数の第1の燃料電池セルを直列に電気接続する第1の集電部材を含む第1のセルスタックと、内部に長手方向に延びるガス流路を有し、長手方向に直交する方向に並べられた柱状の複数の第2の燃料電池セル、及び、複数の第2の燃料電池セルの間に設けられ、複数の第2の燃料電池セルを直列に電気接続する第2の集電部材を含む第2のセルスタックと、第1のセルスタックの複数の第1の燃料電池セルの上部に接続され、第1のセルスタックの複数の第1の燃料電池セルのガス流路に燃料ガスを供給するための第1のマニホールドと、第1のセルスタックの複数の第1の燃料電池セル、及び、第2のセルスタックの複数の第2の燃料電池セルの上部に接続され、第1のセルスタックの複数の第1の燃料電池セルのガス流路から排出された燃料ガスを回収するとともに、回収した燃料ガスを、第2のセルスタックの複数の第2の燃料電池セルのガス流路に供給するための第2のマニホールドと、第1のセルスタックの下方及び第2のセルスタックの下方に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給流路と、を備え、第1の集電部材は隣接する第1の燃料電池セルにそれぞれ対向する第1の主面及び第2の主面を有する板状であるとともに、第1の主面と第2の主面との間に、隣接する第1のセルスタックの両側の間を酸化剤ガスが通過できる酸化剤ガス通路を有し、第2の集電部材は隣接する第2の燃料電池セルにそれぞれ対向する第1の主面及び第2の主面を有する板状であるとともに、第1の主面と第2の主面との間に、隣接する第2のセルスタックの両側の間を酸化剤ガスが通過できる酸化剤ガス通路を有し、第1のマニホールドの直下において、酸化剤ガス通路から前記第1のマニホールドの側方への流通を促進する酸化剤ガス流通促進手段が設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
上記構成の本発明によれば、酸化剤ガス流通促進手段により、酸化剤ガスの第1のマニホールドの直下における第1のセルスタックの両側の間の流通が促進される。これにより、第1のセルスタックにおける発電ムラを抑えることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、酸化剤ガス流通促進手段は、第1の集電部材が第1のマニホールドの下面から離間して配置されて構成されている。
上記構成の本発明によれば、第1のマニホールドの直下に第1の集電部材が配置されていない領域が形成される。これにより、第1のマニホールドの直下における第1のセルスタックの両側の間の流通を促進できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、第1の集電部材の上端は、第2の集電部材の上端よりも低い。
上記構成の本発明によれば、第1のセルスタックにおける発電ムラを抑えることができるとともに、第2のセルスタックにおける集電効率を向上することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、酸化剤ガス供給流路は、第1のセルスタックと第2のセルスタックの間に垂下している。
上述の通り、本発明によれば、第1のマニホールドの直下においても、酸化剤ガスの第1のセルスタックの両側の間の流通が促進されている。このため、第1のセルスタックが設けられる空間と、第2のセルスタックが設けられる空間との間に酸化剤ガス供給流路を設けて、これら空間を分離したとしても、第1のセルスタックの設けられた空間内において酸化剤ガスが十分に流通する。そして、酸化剤ガス供給流路を第1のセルスタックと第2のセルスタックとの間に設けることにより、一の供給流路により酸化剤ガスを第1及び第2のセルスタックの両方に供給することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、第1のセルスタックに対して酸化剤ガス供給流路の反対側には、第1のセルスタックに沿って壁状の第1の断熱材が配置され、第1のセルスタックと酸化剤ガス供給流路との隙間、及び、第1のセルスタックと第1の断熱材との隙間は、酸化剤ガスが流通する第1の酸化剤ガス排出流路として形成されている。
【0016】
上記の構成の本発明によれば、第1のマニホールドの直下における酸化剤ガスの第1のセルスタックの両側の間の流通が促進されているため、酸化剤ガス供給流路の取り付け誤差や、断熱材の寸法誤差の影響で酸化剤ガス排出流路が狭くなったとしても、第1のセルスタックに十分に酸化剤ガスを供給することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、第2のセルスタックに対して酸化剤ガス供給流路の反対側には、第2のセルスタックに沿って壁状の第2の断熱材が配置され、第2のセルスタックと酸化剤ガス供給流路との隙間、及び、第2のセルスタックと第2の断熱材との隙間は、酸化剤ガスが流通する第2の酸化剤ガス排出流路として形成されており、第1の酸化剤ガス排出流路及び第2の酸化剤ガス排出流路には、酸化剤ガスを第1の燃料電池セル及び第2の燃料電池セルに誘導する酸化剤ガス誘導手段が設けられている。
【0018】
上記構成の本発明によれば、酸化剤ガス誘導手段により酸化剤ガスが第1の燃料電池セル及び第2の燃料電池セルに誘導されるため、酸化剤ガスを効果的に発電に利用することができ、発電効率を向上することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、第1の酸化剤ガス排出流路において、酸化剤ガス誘導手段は、第1の集電部材の上端よりも低い位置に設けられている。
酸化剤ガス誘導手段を第1の集電部材の上端よりも上方に設けてしまうと、酸化剤ガス流通促進手段による酸化剤ガスの流通促進効果が減ってしまうが、上記構成の本発明によれば、酸化剤ガス誘導手段が第1の集電部材の上端よりも低い位置に設けられているため、確実に酸化剤ガスの流通を促進することができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、第1の集電部材及び第2の集電部材は、それぞれが有する酸化剤ガス通路から酸化剤ガスが内外へ流動することのできる複数の隙間を有し、第1の集電部材は、第1のマニホールドの直下において、隙間の開口面積が他の部分よりも広い。
上記構成の本発明によれば、第1のマニホールドの直下において、第1の集電部材の隙間の開口面積が他の部分よりも広いため、酸化剤ガスの第1のマニホールドの直下における第1のセルスタックの両側の間の流通が促進される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一次側の燃料電池セルの上部に第1のマニホールドを接続した場合であっても、第1のマニホールドの直下における一次側の燃料電池セルの両側の空間の間の発電用空気の流通が可能な燃料電池セルスタック装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。以下の説明から、当業者にとって、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、以下の説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することができる。
【0024】
以下、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置を示す第1のセルスタック側から見た斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置を示す第2のセルスタック側から見た斜視図である。
図3は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置を示す第1のセルスタック側から見た側面図である。
図4は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置を示す第2のセルスタック側から見た側面図である。
図5は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置の上面図である。
図6は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置を構成する第1のセルスタックの部分水平断面図である。
図7は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置を構成する第1のセルスタックに用いられる集電部材を示す斜視図である。
図8は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置の鉛直断面図である。
図9は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置の第1及び第2のセルスタックの上端部の拡大断面図である。
図10は、本発明の第1実施形態による燃料電池セルスタック装置の第1及び第2のセルスタックの下端部の拡大断面図である。なお、
図2〜
図5、
図9では仕切り板を省略している。
【0025】
図1〜
図9に示すように、燃料電池セルスタック装置100は、第1のセルスタック10aと、複数の柱状(筒状)の燃料電池セル1により構成された第2のセルスタック10bと、第1のセルスタック10aの上方に設けられた第1のマニホールド2aと、第1のセルスタック10a及び第2のセルスタック10bの下方に設けられたマニホールド2bと、第2のセルスタック10bの上方に設けられ、改質触媒が充填された改質部12Bを有する改質器12と、から構成される。改質器12と第1のマニホールド2aとは接続部14を介して流体接続されている。また、第1のセルスタック10aと、第2のセルスタック10bとの間には、仕切り板60が垂下するように設けられている。
【0026】
また、
図8に示すように、燃料電池セルスタック装置100は断熱材90A、90B、90Cにより包囲されている。第1のセルスタック10aに対して仕切り板60の反対側には第1のセルスタック10aに沿うように第1の断熱材90Aが設けられている。第2のセルスタック10bに対して仕切り板60の反対側には第2のセルスタック10bに沿うように第2の断熱材90Bが設けられている。第2のマニホールド2bの下方には第3の断熱材90Cが設けられている。
【0027】
第1の断熱材90Aと第1のセルスタック10aとの間には、第1の外側酸化剤ガス排出流路80Aが形成されており、第1のセルスタック10aと仕切り板60との間には第1の内側酸化剤ガス排出流路81Aが形成されている。これら第1の外側酸化剤ガス排出流路80A及び第1の内側酸化剤ガス排出流路81Aを通り酸化剤ガス(空気)が流通する。また、第1の外側酸化剤ガス排出流路80A及び第1の内側酸化剤ガス排出流路81Aの第1のセルスタック10aの燃料電池セル1aの上端よりも低い位置には、上下方向に交互にこれら流路を横方向(紙面に垂直な方向)に閉塞する酸化剤ガス誘導部材82Aが設けられている。
【0028】
第2の断熱材90Bと第2のセルスタック10bとの間には、第2の外側酸化剤ガス排出流路80Bが形成されており、第2のセルスタック10bと仕切り板60との間には第2の内側酸化剤ガス排出流路81Bが形成されている。これら第2の外側酸化剤ガス排出流路80B及び第2の内側酸化剤ガス排出流路81Bを通り酸化剤ガス(空気)が流通する。また、第2の外側酸化剤ガス排出流路80B及び第2の内側酸化剤ガス排出流路81Bの第2のセルスタック10bの燃料電池セル1bの上端よりも低い位置には、上下方向に交互にこれら流路を横方向(紙面に垂直な方向)に閉塞する酸化剤ガス誘導部材82Bが設けられている。
【0029】
断熱材90A、90B、90Cの外周には内側ハウジング92が設けられており、さらに、内側ハウジング92の外周には外側ハウジング94が取り付けらえている。内側ハウジング92と断熱材90との間には排ガス流路96が形成されている。また、内側ハウジング92と外側ハウジング94との間には空気流路98が形成されている。仕切り板60の上端は内側ハウジング92に接続されている。内側ハウジング92の下面に排ガス流路96と連通し、外側ハウジング94の外部まで延びる排ガス排出孔92aが形成されている。また、外側ハウジング94の下面には、空気流路98と連通し、外側ハウジング94の外部まで延びる空気流入孔(図示せず)が形成されている。
【0030】
第1のセルスタック10aは、内部に軸方向に延びるガス流路が形成された複数の柱状の燃料電池セル1aが水平方向(横方向)に一列に配列されてなる。また、第2のセルスタック10bも、第1のセルスタック10aと同様に、内部に軸方向に延びるガス流路が形成された複数の柱状の燃料電池セル1bが水平方向(横方向)に一列に配列されてなる。
【0031】
第1のセルスタック10aを構成するそれぞれの燃料電池セル1aの上端は、第1のマニホールド2aに流体接続されている。また、第1のセルスタック10aを構成するそれぞれの燃料電池セル1aの下端は、第2のマニホールド2bの短辺方向一側に流体接続されている。第2のセルスタック10bを構成するそれぞれの燃料電池セル1bの下端は、第2のマニホールド2bの短辺方向他側に流体接続されている。第2のセルスタック10bを構成するそれぞれの燃料電池セル1bの上端は開放されており、第2のセルスタック10の上端と、改質器12との間には、第2のセルスタック10bから放出されたガスが燃焼される燃焼部18が形成されている。
【0032】
改質器12には、原料ガス及び水(又は水蒸気)が供給される。改質器12は、燃焼部18の熱により供給された燃料ガスを、水素を含む燃料ガスに改質する。改質器12により改質された燃料ガスは、接続部14を介して第1のマニホールド2bに供給される。第1のマニホールド2bに供給された燃料ガスは、第1のセルスタック10aを構成する燃料電池セル1aに送られ、燃料電池セル1aの内部流路に下方に向かって流れる。この際、第1のセルスタック10aの燃料電池セル1aにより発電がおこなわれる。
【0033】
第1のセルスタック10aの燃料電池セル1aから排出された燃料ガスは、第2のマニホールド2bにより回収される。第2のマニホールド2bにより回収された燃料ガスは、第2のセルスタック10bを構成する燃料電池セル1bの内部流路に供給され、内部流路を上方に向かって流れる。この際、第2のセルスタック10bの燃料電池セル1bにより発電がおこなわれる。
【0034】
第2のセルスタック10bの燃料電池セル1bを通過した燃料ガスは、第2のセルスタック10bの上方の燃焼部18に排出される。そして、燃焼部18に排出された発電に使用されなかった燃料ガスは着火され燃焼される。なお、本実施形態では、セル群は1つの第1のセルスタック10aと、1つの第2のセルスタック10bのみを含んで構成されている。しかしながら、第1のセルスタックを2つ以上設けてもよく、第2のセルスタックを2つ以上設けてもよく、第2のセルスタックの下流に第3のセルスタックを設けてもよい。
【0035】
図6に示すように、第1のセルスタック10aは、複数の燃料電池セル1aが一列に間隔をあけて並置されており、隣接する燃料電池セル1aの間に集電部材30が配置されて構成されている。これにより、複数の燃料電池セル1aは直列に電気的に接続されている。第2のセルスタック10bは、複数の燃料電池セル1bが一列に間隔をあけて並置されており、隣接する燃料電池セル1bの間に集電部材31が配置されて構成されている。これにより、複数の燃料電池セル1aは直列に電気的に接続されている。また、第1のセルスタック10aの最も外側に位置する燃料電池セル1aに端部集電部材31aが接着されている。また、これと同様に、第2のセルスタック10bの最も外側に位置する燃料電池セル1bに端部集電部材31bが接着されている。燃料電池セルスタック装置100の一方の側において、第1のセルスタック10aの端部集電部材31aは、第2のセルスタック10bの端部集電部材31bと連結集電部材32を介して接続されている。これにより、第1のセルスタック10aを構成する燃料電池セル1aと、第2のセルスタック10bを構成する燃料電池セル1bとは直列接続される。そして、燃料電池セルスタック装置100の他方の側の第1のセルスタック10aの端部集電部材31aと、第2のセルスタック10bの端部集電部材31bとから発電された電流が取り出される。なお、本実施形態では、第1のセルスタック10aを構成する燃料電池セル1aと、第2のセルスタック10bを構成する燃料電池セル1bとは直列接続されているが、並列接続とすることも可能である。柱状の燃料電池セル1aの積層構造について、その一例を以下に説明する。
【0036】
各燃料電池セル1aの内部には、一端から他端へ貫通するガス流路34Aが形成されている。図示するようにガス流路34Aは複数でもよく、単数であってもよい。
燃料電池セル1aは、一対の対向する平坦面を有する柱状の導電性支持基板34と、支持基板34の一方の平坦面上に形成された燃料側電極層36と、燃料側電極層36の外面に形成された固体電解質層38と、固体電解質層38の外面に形成された空気側電極層40と、からなる。また、燃料電池セル1aの他方の平坦面上にはインターコネクタ42が設けられている。
【0037】
支持基板34の内部には、軸方向に燃料ガスを流すためのガス流路34Aが両端部の間にわたって形成されている。インターコネクタ42の外面にはP型半導体層44が設けられている。インターコネクタ42は、P型半導体層44を介して、集電部材30に接続させている。
【0038】
燃料側電極層36は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0039】
固体電解質層38は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0040】
空気側電極層40は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0041】
支持基板34としては、燃料ガスが燃料側電極層36まで透過するようにガス透過性を有するように、気孔率の高い導電性セラミックスやサーメット等を用いることができる。
なお、支持基板34の形状は柱状であれば良く、円筒状であってもよい。
【0042】
P型半導体層44としては、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO3系酸化物、LaFeO
3系酸化物、LaCoO
3系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。
【0043】
インターコネクタ42は、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO
3系酸化物)、もしくは、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO
3系酸化物)等を用いることができる。
【0044】
図6及び
図7に示すように、集電部材30は間隔をあけて配置された一対の側板30aと、一対の側板30aの間を延びる第1及び第2の突出部材30b1、30b2とを有する。第1の突出部材30b1は、一対の側板30aを結ぶ平面から一方に(
図7の紙面奥側)平面視台形状に突出した部材である。複数の第1の突出部材30b1の一対の側板30aを結ぶ平面に平行な平坦面が、隣接する燃料電池セルと対向して接触する第1の主面を形成する。第2の突出部材30b2は、一対の側板30aを結ぶ平面から他方(
図7の紙面手間側)に平面視台形状に突出した部材である。複数の第2の突出部材30b2の一対の側板30aを結ぶ平面に平行な平坦面が、隣接する燃料電池セルと対向して接触する第2の主面を形成する。
【0045】
集電部材30において、上方から下方に向かって第1の突出部材30b1と、第2の突出部材30b2とが交互に配置されている。また、上方の第2の突出部材30b2と下方の第1の突出部材30b1との間には隙間30cが設けられている。このような構造とすることで、第1の主面と第2の主面との間に酸化剤ガス通路30dが形成され、隙間30cから酸化剤ガス通路30dに流れ込んだ酸化剤ガスが酸化剤通路30dの内部を流動し、さらに隙間30cを通じて燃料電池セル1a、1bのそれぞれの空気極に酸化剤ガスが供給される。また、集電部材30は変形可能な弾性構造体となるため、セルスタックの形成による配列方向両端からの応力、あるいは燃料電池セルの膨張収縮に伴う応力を、吸収し緩和させることができる。なお、第2のセルスタック10b集電部材31は、第1のセルスタック10aの集電部材30と高さが異なるものの、基本構成は同じである。
なお、集電部材30は、Fe−Cr系やFe−Ni系等の合金材料を用いることができ、所定の弾性を確保するために、厚みを例えば0.2〜1.0mmとすると良い。
【0046】
図1、
図2、及び、
図8に示すように、第1のセルスタック10aと、第2のセルスタック10bとは、それぞれの燃料電池セル1a、1bの配列方向が平行になるように配置されている。
【0047】
第1のセルスタック10aの構成と、第2のセルスタック10bの構成は、集電部材30、31の高さが異なるものの、その他の構成は同一である。第1のセルスタック10aの集電部材30の長さは、第2のセルスタック10bの集電部材31の長さよりも短く、第1のセルスタック10aの集電部材30の上端は、第2のセルスタック10bの集電部材31の上端よりも低い位置に位置している。そして、第1のセルスタック10aの集電部材30の上端は、第1のマニホールド2aの下面から離間している。後に詳述するが、このように第1のセルスタック10aの集電部材30の上端は、第1のマニホールド2aの下面から離間していることにより、第1の外側酸化剤ガス排出流路80Aと第1の内側酸化剤ガス排出流路81Aとの間での酸化剤ガスの流通が促進される。すなわち、この構成が、第1のセルスタックの両側の間の流通を促進する酸化剤ガス流通促進手段として機能する。
【0048】
第2のセルスタック10bを構成する燃料電池セル1bの上方は開放されており、第2のセルスタック10bの上方には燃焼部18が形成されている。燃焼部18では、発電に使用されなかった燃料ガスが燃焼される。
【0049】
図1〜
図5に示すように、改質器12は、蒸発部12Aと、改質部12Bとを備える。改質器12へは、外部から原料ガスと水が供給管13A,13Bを通じて供給される。蒸発部12Aは、燃焼部18の燃焼熱により水を加熱して水蒸気を生じさせる。
【0050】
改質部12Bには、混合ガスを改質するための改質触媒が充填されている。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。改質部12Bは、燃焼部18の燃焼熱により供給された原料ガスを水蒸気を用いて、水素を含む燃料ガスに改質する。改質器12は底面が水平になるように保持されている。改質器12は、第1のマニホールド2aよりも上方に位置している。
【0051】
図9に示すように、第1のマニホールド2aは、中空の筐体22を有し、筐体22の下端面に第1セルスタック10aを構成する燃料電池セル1aの断面形状と略同形状の複数の開口22Aが形成されている。第1セルスタック10aを構成する全ての燃料電池セル1aの上端は、筐体22に形成された開口22Aに接続されている。筐体22の開口22Aの縁には内側に折り返された折り返し部22Bが形成されている。第1のセルスタック10aを構成する燃料電池セル1aの上端は、第1のマニホールド2aの開口22A内に挿入されている。燃料電池セル1aの上端と筐体22の折り返し部22Bとの間の隙間が第1の接合部材24(上端側接合部材)により気密に固定されている。すなわち、第1の接合部材24は、筐体22内に位置しており、燃料電池セル1aの上端は第1のマニホールド2a内で筐体22に接続されている。第1の接合部材24としては、例えば、ガラス組成物、セラミック、ポリマー等を用いることができる。なお、本実施形態では、燃料電池セル1aとの接合部全体が第1のマニホールド2b内に位置しているが、これに限らず、少なくとも一部が第1のマニホールド2b内に位置していればよい。
【0052】
接続部14は、改質器12及び第1のマニホールド2aと継ぎ目なく一体に構成されており、互いの内部流路が流体接続されている。また、接続部14は改質器12から第1のマニホールド2aに向かって下方に向かって傾斜するような湾曲形状を有している。
【0053】
図10に示すように、第2のマニホールド2bは、筐体50を有する。筐体50は、下方筐体50aと上方筐体50bとが接続されてなり、内部に空間が形成されている。上方筐体50bには、幅方向両側に長手方向に延びるように第1の開口50cと、第2の開口50dとが幅方向に並ぶように平行に形成されている。第1の開口50cは、第1セルスタック10aを構成する燃料電池セル1aの断面形状と略同形状に形成されている。上方筐体50bの第1の開口50cの縁には内側に折り返された折り返し部50eが形成されている。第1のセルスタック10aを構成する燃料電池セル1aの下端は、上方筐体50bの第1の開口50c内に挿入されている。燃料電池セル1aの下端と上方筐体50bの折り返し部50eとの間の隙間が第2の接合部材25(下端側接合部材)により気密に固定されている。
【0054】
また、第2の開口50dは、第2セルスタック10bを構成する燃料電池セル1bの断面形状と略同形状に形成されている。上方筐体50bの第2の開口50dの縁には内側に折り返された折り返し部50fが形成されている。第2のセルスタック10bを構成する燃料電池セル1bの下端は、上方筐体50bの第2の開口50d内に挿入されている。燃料電池セル1bの下端と上方筐体50bの折り返し部50fとの間の隙間は、燃料電池セル1aの下端と開口50cとの間の隙間を接続する接合部材と同じ、第2の接合部材25により気密に接続されている。
【0055】
第1及び第2の接合部材24、25としては、例えば、ガラス組成物、セラミック、ポリマー等を用いることができる。好ましくは、第1及び第2の接合部材24、25は、第1及び第2のガラス組成物により構成されており、より好ましくは、第1のガラス組成物は非晶質ガラスにより構成されている。具体的には、非晶質のガラス組成物としては、SiO
2−B
2O
3−PbO、SiO
2−PbO、SiO
2−ZnO−PbO、SiO
2−ZnO、SiO
2−ZnO−RO(Rはアルカリ土類金属、Mg,Ca,Sr,Baの略号)、SiO
2−ZrO
2−R
2O(Rはアルカリ金属、Li,Na,Kの略号)などを用いることができる。また、結晶化ガラスとしては、Li
2O−SiO
2,Li
2O−Al
2O
3−SiO
2,Li
2O−RO(R;Mg,Zn)−Al
2O
3−SiO
2,Na
2O−Al
2O
3−SiO
2、RO(R;Mg,Zn)−Al
2O
3−SiO
2,RO(R;Mg,Zn)−B
2O
3−SiO
2,(BaO,PbO)−TiO
2−Al
2O
3−SiO
2,(PbO,Na
2O)−Nb
2O
5−Al
2O
3−SiO
2等をもちいることができる。
【0056】
このような構成により、第1の接合部材24(上端側接合部材)の200〜800℃の所定温度(例えば、500℃)における所定荷重に対する塑性変形量が、第2の接合部材25(下端側接合部材)の所定温度における所定荷重に対する塑性変形量よりも大きくなっている。なお、この所定温度としては、燃料電池セルにより発電を行っている際の第1の接合部材24及び第2の接合部材25と等しく又は近い値となるように決定すればよい。上記の組成物の種類及び配合を変更することにより、所定温度における所定荷重に対する塑性変形量を調整することができる。
【0057】
なお、このような接合部材(ガラス組成物)の所定温度(例えば、500℃)における所定荷重に対する塑性変形量は、以下のようにして比較することができる。
図11は、接合部材の塑性変形量を測定するための装置を示す構成図である。接合部材の塑性変形量を測定する際には、熱機械分析装置を用いる。熱機械分析装置とは、試料の温度を一定のプログラムによって変化させながら、圧縮、引張り、曲げなどの非振動的荷重を加えてその物質の変形を温度又は時間の関数として測定する装置であり、市販の装置を用いることができる。
【0058】
図11に示すように、熱機械分析装置は、試料皿201とプローブ202とを備える。接合部材の塑性変形量を測定するためには、まず、熱機械分析装置の試料皿201上に平板状の冶具203を設置し、この冶具203上に測定対象の試料(ガラス組成物)200を配置する。そして、これら試料200及び冶具203を覆うように、鉛直に延びる開口204Aを有する冶具204を配置する。次に、この冶具204の開口204A内に芯材205(例えば、2H、Φ0.5のシャープペンシルの芯)を配置する。このような状態で、熱機械分析装置により試料200を所定温度まで加熱する。そして、プローブ202を下降させて芯材205を介して試料200に所定の荷重(例えば、0.5N)を印加し、この際のプローブ202の変位を測定する。そして、接合部材ごとの測定された変位を比較することにより、所定荷重に対する塑性変形量を比較することができる。
【0059】
仕切り板60は、例えば、ステンレス等の耐熱性を有する中空の板材からなり、内部に空気(酸化剤ガス)を供給するために酸化剤ガス供給流路60aが形成されている。仕切り板60の下端部には下端噴出孔60bが形成されている。仕切り板60の上端は内側ハウジング92の上面に接続されており、酸化剤ガス供給流路60aは空気流路98と連通している。これにより、酸化剤ガス供給流路60aには、空気流路98を介して上端から発電用空気が供給され、下端噴出孔60bから放出される。仕切り板60は、改質器12よりも上方の高さ位置から下端が第1のセルスタック10a及び第2のセルスタック10bの下端部近傍まで上下方向に延びている。これにより、仕切り板60は、第1のマニホールド2aと第1のセルスタック10aとの接続部と、燃焼部18との間を仕切り、熱影響を低減することができる。
【0060】
以下、本実施形態の燃料電池セルスタック装置100における燃料ガス及び水(水蒸気)と、発電用空気の流れについて説明する。
原料ガス及び水(水蒸気)は、燃料電池セルスタック装置100に供給管13A,13Bを通じて外部から改質器12に供給される。改質器12に供給された水は改質器12の蒸発部12Aにおいて燃焼部18の熱により蒸発される。そして、原料ガス及び水蒸気は改質部12Bへ送られる。原料ガス及び水蒸気は、改質部12Bにおいて燃焼部18の熱により、水素を含む燃料ガスに改質される。
【0061】
改質器12において改質された燃料ガスは、接続部14を介して第1のマニホールド2aに供給される。第1のマニホールド2aに供給された燃料ガスは、第1のセルスタック10aを構成するそれぞれの燃料電池セル1aの内部流路に上端から送り込まれる。燃料ガスは、燃料電池セル1aの上端から下端に向かって流通し、下端から第2のマニホールド2b内に放出される。この際、それぞれの燃料電池セル1aは発電を行う。
【0062】
第2のマニホールド2bに流れ込んだ燃料ガスは、第2のセルスタック10bを構成する燃料電池セル1bの内部流路に下端から送られる。燃料電池セル1bに送り込まれた燃料ガスは内部流路内を下端から上端に向かって流れる。この際、それぞれの燃料電池セル1bは発電を行う。
【0063】
第2のセルスタック10bを構成する燃料電池セル1bを通過した、発電に使用されなかった燃料ガスは、燃料電池セル1bの上端から燃焼部18に放出される。燃焼部18に放出された燃料ガスは燃焼され、その際に発生する熱は改質器12を加熱するのに用いられる。
【0064】
燃料ガスを燃焼部18で燃焼して発生した排ガスは上方に向かって上昇する。そして、排ガスは、排ガス流路96を下方に向かって流れる。この際、排ガス流路96を流れる排ガスと、空気流路98を流れる発電用空気との間で熱交換が行われ、発電用空気を加熱することができる。そして、排ガスは排ガス排出孔92aから外側ハウジング94の外部に排出される。
【0065】
次に、発電用空気は、外部から空気流入孔を通じて空気流路98に送り込まれる。空気流路98内に送り込まれた空気は空気流路98を上方に向かって流れる。この際、排ガス流路96を流れる排ガスと熱交換が行われ、空気は加熱される。空気流路98の上部まで到達した空気は、仕切り板60の上端から酸化剤ガス供給流路60aに送られる。
【0066】
酸化剤ガス供給流路60aに送り込まれた発電用空気は、下端噴出孔60bを通じて、第1及び第2の内側酸化剤ガス排出流路81A、81Bに排出される。そして、酸化剤ガスは、第1及び第2の内側酸化剤ガス排出流路81A、81Bと、第1及び第2の外側酸化剤ガス排出流路80A、80Bと、を通じて上方に移動する。この際、これら排出流路には酸化剤ガス誘導部材82A、82Bが設けられているため、酸化剤ガスは、
図8に矢印で示すように、第1及び第2のセルスタック10a、10bの集電部材30、31の酸化剤ガス通路30dを通じて、隣接する燃料電池セル1a、1bの間を通り、第1及び第2の内側酸化剤ガス排出流路81A、81Bと第1及び第2の外側酸化剤ガス排出流路80A、80Bとの間で流通する。また、第1のセルスタック10aの上端部(
図8のA部には、集電部材30が設けられていない。このため、酸化剤ガスは第1のセルスタック10aの上端部で停滞することなく、排ガス流路96へ流れこむ。
【0067】
本実施形態によれば、以下の作用効果が奏される。
発明が解決しようとする課題において説明したが、燃料電池セル同士の間隔が十分に広く配置されていない場合に、第1の燃料電池セル1aの上部に第1のマニホールド2aを接続してしまうと、第1の燃料電池セル1aの上部(
図8のA部)で燃料電池セル1aの間の発電用空気の流通が妨げられてしまう。このため、発電用空気が第1の外側酸化剤ガス排出流路80Aを通って上昇してしまい、第1の燃料電池セル1aの上部で発電にムラが生じてしまうおそれがあった。本実施形態によれば、酸化剤ガス流通促進手段により、酸化剤ガスの第1のマニホールド2aの直下における第1のセルスタック10aの両側の間の流通が促進される。これにより、第1のセルスタック10aにおける発電ムラを抑えることができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、第1のセルスタック10aの集電部材30が第1のマニホールド2aの下面から離間して配置されて構成されている。このため、第1のマニホールド2aの直下に集電部材30が配置されていない領域が形成され、第1のマニホールド2aの直下における第1のセルスタック10aの両側の間の流通を促進できる。
【0069】
また、本実施形態によれば、第1のセルスタック10aの集電部材30の上端は、第2のセルスタック10bの集電部材31の上端よりも低い。これにより、第1のセルスタック10aにおける発電ムラを抑えることができるとともに、第2のセルスタック10bにおける集電効率を向上することができる。
【0070】
また、本実施形態では、仕切り板60は、第1のセルスタック10aと第2のセルスタック10bの間に垂下している。上述の通り、本実施形態では、第1のマニホールド2aの直下においても、酸化剤ガスの第1のセルスタック10aの両側の間の流通が促進されている。このため、第1のセルスタック10aが設けられる空間と、第2のセルスタック10bが設けられる空間との間に仕切り板60を設けて、これら空間を分離したとしても、第1のセルスタック10aの設けられた空間内において酸化剤ガスが十分に流通する。そして、仕切り板60を第1のセルスタック10aと第2のセルスタック10bとの間に設けることにより、一の供給流路により酸化剤ガスを第1及び第2のセルスタック10a、10bの両方に供給することができる。
【0071】
また、本実施形態では、第1のセルスタック10aに対して仕切り板60の反対側には、第1のセルスタック10aに沿って壁状の第1の断熱材90Aが配置され、第1のセルスタック10aと仕切り板60との隙間、及び、第1のセルスタック10aと第1の断熱材90Aとの隙間は、酸化剤ガスが流通する第1の酸化剤ガス排出流路80A,80Bとして形成されている。上述の通り、第1のマニホールド2aの直下における酸化剤ガスの第1のセルスタック10aの両側の間の流通が促進されているため、仕切り板60の取り付け誤差や、断熱材の寸法誤差の影響で第1の酸化剤ガス排出流路80A,80Bが狭くなったとしても、第1のセルスタック10aに十分に酸化剤ガスを供給することができる。
【0072】
また、本実施形態では、第2のセルスタック10bに対して仕切り板60の反対側には、第2のセルスタック10bに沿って壁状の第2の断熱材90Bが配置され、第2のセルスタック10bと仕切り板60との隙間、及び、第2のセルスタック10bと第2の断熱材90Bとの隙間は、酸化剤ガスが流通する第2の酸化剤ガス排出流路81A,81Bとして形成されており、第1の酸化剤ガス排出流路80A,80B及び第2の酸化剤ガス排出流路81A,81Bには、酸化剤ガスを燃料電池セル1a、1bに誘導する酸化剤ガス誘導部材82A,82Bが設けられている。このような本実施形態によれば、酸化剤ガス誘導部材82A,82Bにより酸化剤ガスが燃料電池セル1a、1bに誘導されるため、酸化剤ガスを効果的に発電に利用することができ、発電効率を向上することができる。
【0073】
また、本実施形態では、第1の酸化剤ガス排出流路80A,80Bにおいて、酸化剤ガス誘導部材82Aは、集電部材30の上端よりも低い位置に設けられている。酸化剤ガス誘導部材82Aを集電部材30の上端よりも上方に設けてしまうと、酸化剤ガス流通促進手段による酸化剤ガスの流通促進効果が減ってしまうが、本実施形態によれば、酸化剤ガス誘導部材82Aが集電部材30の上端よりも低い位置に設けられているため、確実に酸化剤ガスの流通を促進することができる。
【0074】
なお、本発明の燃料電池セルスタック装置の構成は上記の構成に限られない。
図12は、本発明の第2実施形態による燃料電池セルスタック装置の第1及び第2のセルスタックの上端部を示す鉛直断面図である。また、
図13は、本発明の第2実施形態による燃料電池セルスタック装置の第1のセルスタックの集電部材の構成を示す斜視図である。第2実施形態の燃料電池セルスタック装置では、第1のセルスタックの構成が第1実施形態と異なっている。
【0075】
図12に示すように、本実施形態においても、第1のセルスタック110aを構成する燃料電池セル101aの上端は、第1のマニホールド2aの開口22A内に挿入されている。燃料電池セル101aの上端と筐体22の折り返し部22Bとの間の隙間が第1の接合部材24(上端側接合部材)により気密に固定されている。
【0076】
図13に示すように、集電部材130は間隔をあけて配置された一対の側板130aと、一対の側板130aの間を延びる第1及び第2の突出部材130b1、130b2とを有する。第1の突出部材130b1は、一対の側板130aを結ぶ平面から一方に(
図13の紙面奥側)平面視台形状に突出した部材である。複数の第1の突出部材130b1の一対の側板130aを結ぶ平面に平行な平坦面が、隣接する燃料電池セルと対向して接触する第1の主面を形成する。第2の突出部材130b2は、一対の側板130aを結ぶ平面から他方(
図13の紙面手間側)に平面視台形状に突出した部材である。複数の第2の突出部材130b2の一対の側板130aを結ぶ平面に平行な平坦面が、隣接する燃料電池セルと対向して接触する第2の主面を形成する。
【0077】
集電部材130において、上方から下方に向かって第1の突出部材130b1と、第2の突出部材130b2とが交互に配置されている。また、上方の第2の突出部材130b2と下方の第1の突出部材130b1との間には隙間(開口)130cが設けられている。このように第1の主面と第2の主面との間には、ガス(酸化剤ガス)が流通可能な酸化剤ガス通路130dが形成されている。
【0078】
本実施形態では、集電部材130の上部において、隙間130cの高さ(すなわち、上方の第2の突出部材130b2と下方の第1の突出部材130b1との距離)が他の部分に比べて大きくなっている。言い換えると、集電部材130の開口面積が大きい。なお
図13においては、集電部材130のうち、第1のマニホールド2aの直下の隙間130c3つが大きくその他は小さいものとして示しているが、第1のマニホールド2aの直下で酸化剤ガスの流通が十分確保することができるのであれば、その比較的大きな隙間130cの数や形状は任意に設計することができ、例えば上方ほど開孔面積が段階的に広がるように設計しても良い。
【0079】
このように、本実施形態において、第1のセルスタック110aの集電部材130の上部において、隙間130cの高さが大きくなっていることにより、第1の外側酸化剤ガス排出流路80Aと第1の内側酸化剤ガス排出流路81Aとの間での酸化剤ガスの流通が促進される。すなわち、この構成が、第1のセルスタックの両側の間の流通を促進する酸化剤ガス流通促進手段として機能する。