特許第6976889号(P6976889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976889
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20211125BHJP
   B62D 1/181 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B62D1/19
   B62D1/181
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-49287(P2018-49287)
(22)【出願日】2018年3月16日
(65)【公開番号】特開2019-156334(P2019-156334A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】富士機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松野 充佳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】木島 章吾
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−024243(JP,A)
【文献】 特開2016−049923(JP,A)
【文献】 特開2018−034701(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128171(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0230596(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられるアウタコラムと、
前記アウタコラムに対し車体前後方向に移動自在に設けられ、ステアリングシャフトを回転自在に支持するインナコラムと、
前記アウタコラムと前記インナコラムとのいずれか一方に設けられ、前記インナコラムを車体前後方向に移動させる電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータの駆動力を、前記アウタコラムと前記インナコラムとのいずれか他方に伝達する駆動部材と、を有し、
前記駆動部材は、前記インナコラムの前記アウタコラムに対する移動方向に沿って互いに間隔をあけて設けられる第1の突起及び第2の突起を備え、
前記いずれか他方は、前記第1の突起が挿入される係合孔と、前記第2の突起が挿入されて、前記インナコラムの前記移動方向に沿って長い長孔と、を備え、
前記第1の突起は、前記インナコラムが車体前方に向けて衝撃荷重を受けたときに、前記係合孔に押し付けられて剪断され、前記第2の突起は、前記インナコラムが車体前方に向けて衝撃荷重を受けたときに、前記長孔内を、弾性変形しつつ車体前後方向に向けて摺動摩擦抵抗を受けながら相対移動することを特徴とするステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記第2の突起は、肉抜き部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【請求項3】
前記肉抜き部は、前記長孔の長手方向に沿って延在する溝で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のステアリングコラム装置。
【請求項4】
前記いずれか他方を構成する材料が金属であり、前記駆動部材を構成する材料が樹脂であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレスコピック操作が可能な上に、衝突時の二次衝突の際に、衝撃荷重によって、インナコラムがステアリングシャフトと共に移動し、衝撃荷重を吸収するステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式のステアリングコラム装置は、アウタコラムに設けた電動モータにねじ軸が連結され、ねじ軸にナットが螺合している。ねじ軸の回転によるナットの移動に伴って、インナコラムの長孔の通常時係合部に係合しているスリーブが移動することで、インナコラムがアウタコラムに対して移動する。二次衝突の際の衝撃吸収時は、スリーブが長孔の通常時係合部から突出部を乗り越えた後、衝撃荷重入力時係合部を摩擦抵抗を受けながら移動して衝突エネルギを吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−24243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、衝突エネルギ吸収時には、スリーブが、通常時係合部の直径より幅が狭められた衝撃荷重入力時係合部を押し拡げながら移動する。このため、移動時の摺動摩擦抵抗が大きくなりがちで、摺動摩擦抵抗を適度なものとするためには、スリーブと衝撃荷重入力時係合部との寸法関係を高精度に設定する必要が生じ、加工コストの上昇を招く。
【0005】
そこで、本発明は、加工コストを抑えながら、衝突エネルギ吸収時の摺動摩擦抵抗を適度なものとすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体に取り付けられるアウタコラムと、前記アウタコラムに対し車体前後方向に移動自在に設けられ、ステアリングシャフトを回転自在に支持するインナコラムと、前記アウタコラムと前記インナコラムとのいずれか一方に設けられ、前記インナコラムを車体前後方向に移動させる電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの駆動力を、前記アウタコラムと前記インナコラムとのいずれか他方に伝達する駆動部材と、を有し、前記駆動部材は、前記インナコラムの前記アウタコラムに対する移動方向に沿って互いに間隔をあけて設けられる第1の突起及び第2の突起を備え、前記いずれか他方は、前記第1の突起が挿入される係合孔と、前記第2の突起が挿入されて、前記インナコラムの前記移動方向に沿って長い長孔と、を備え、前記第1の突起は、前記インナコラムが車体前方に向けて衝撃荷重を受けたときに、前記係合孔に押し付けられて剪断され、前記第2の突起は、前記インナコラムが車体前方に向けて衝撃荷重を受けたときに、前記長孔内を、弾性変形しつつ車体前後方向に向けて摺動摩擦抵抗を受けながら相対移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1の突起の剪断によって、駆動部材と駆動部材の駆動力を受ける側との連結が解除され、第2の突起の摺動摩擦抵抗を受けながらの弾性変形移動によって衝撃荷重を吸収する。この場合、連結解除と衝撃吸収とを、第1の突起と第2の突起とで別々に行うことになり、衝突時のエネルギ吸収荷重を容易に設定することができ、寸法関係を高精度に設定することによる加工コストの上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係わるステアリングコラム装置を示す斜視図である。
図2図1のステアリングコラム装置の右側面図である。
図3A図1のステアリングコラム装置に適用される駆動部材及びねじ軸の分解斜視図である。
図3B図3Aとは別の角度から見た駆動部材及びねじ軸の分解斜視図である。
図4図2に対して駆動部材及びねじ軸を省略した右側面図である。
図5】インナコラムの係合孔及び長孔と、駆動部材の第1の突起及び第2の突起との前後方向の位置関係を対応させて示す側面図である。
図6図2のB−B断面図である。
図7A】通常時でのインナコラムの係合孔及び長孔と、駆動部材の第1の突起及び第2の突起との位置関係を示す動作説明図である。
図7B図7Aの状態からインナコラムが衝撃荷重を受けて前方へ移動し、第1の突起が剪断され始めた状態を示す動作説明図である。
図7C図7Bの状態からインナコラムがさらに前方へ移動し、第1の突起の剪断破壊がほぼ完了した状態を示す動作説明図である。
図7D図7Cの状態からインナコラムがさらに前方へ移動し、第2の突起が長孔内を弾性変形しながら相対移動する状態を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0010】
図1図2は、本発明の一実施形態に係わるステアリングコラム装置1を示す。なお、ステアリングコラム装置1は、車体に取り付けた状態で図1中の矢印FRで示す方向が車体前方となる。以下、「前方」は車体前方を示し、「後方」は車体後方を示すものとし、「左右方向」は、車体後方から前方を見た状態で左右方向を示すものとする。
【0011】
ステアリングコラム装置1は、図示しない車体に取り付けられる車体取付ブラケット3と、車体取付ブラケット3に対し上下方向に揺動自在に支持されるアウタコラム5と、アウタコラム5に対し車体前後方向に移動可能なインナコラム7とを備える。車体取付ブラケット3は、複数箇所に取付部3aを備えており、取付部3aを介して車体に取り付けられる。図2に示すように、アウタコラム5の後端5aは、車体取付ブラケット3の後端3bよりもやや後方に位置している。アウタコラム5の後端5aからインナコラム7が後方へ突出している。
【0012】
アウタコラム5は、車体取付ブラケット3に対し、チルト駆動用モータ4(図6参照)や該モータ4によって動作するボールねじ機構6及び図外のリンク機構等を介して上下方向に揺動する。これらモータ4やリンク機構等は、ステアリングコラム装置1の左側部に設けられている。アウタコラム5が上下方向に揺動する際には、インナコラム7及びインナコラム7内に回転自在に挿入されるステアリングシャフト9も一体となって揺動する。ステアリングシャフト9の後方側の端部には、図示しないステアリングホイールが取り付けられる。
【0013】
したがって、ステアリングコラム装置1は、ステアリングホイールが上下方向に揺動自在となる電動チルト機構を備えている。ステアリングコラム装置1は、さらにステアリングホイールが前後方向に移動自在となる電動テレスコピック機構を備えている。以下、電動テレスコピック機構について説明する。
【0014】
電動テレスコピック機構は、アウタコラム5の右側部に取り付けられる電動アクチュエータとしてのテレスコ駆動用モータ(以下、単に「モータ」とする。)11を備えている。モータ11は、減速機構部12と共にアウタコラム5に取り付けられている。モータ11によって回転駆動するねじ軸13は、円筒形状のインナコラム7の軸方向に沿って延長されている。
【0015】
図3A図3Bにも示すように、ねじ軸13は、駆動部材15が螺合する雄ねじ部13aと、雄ねじ部13aに対して前方に位置する軸部13bと、雄ねじ部13aと軸部13bとの間に位置するフランジ部13cとを備えている。ねじ軸13は、軸部13bが支持部17を介してアウタコラム5に支持されている。軸部13bは、支持部17に対して軸方向への移動が規制された状態で、支持部17に対して回転自在である。減速機構部12からねじ軸13への動力伝達は、フレキシブルシャフト19によってなされる。なお、モータ11や減速機構部12の取付位置あるいは形状によっては、フレキシブルシャフト19を用いずに、軸部13bを減速機構部12に直接連結することもできる。
【0016】
駆動部材15は、インナコラム7を構成する材料よりもヤング率が低い、例えば樹脂で一体成形されている。駆動部材15は、雄ねじ部13aに螺合するナット部21と、ナット部21の一側部から、アウタコラム5に向けて突出するようにして形成される突起形成部23とを備えている。ナット部21は、ほぼ円筒形状であり、円筒内面に雌ねじ21aが形成されている。
【0017】
突起形成部23は、ナット部21と反対側の端部に端板部23aを備えている。端板部23aは、左右方向から見て前後方向に長い長方形状である。端板部23aのナット部21と反対側の端面に、インナコラム7に向けて突出する第1の突起23b及び第2の突起23cが形成されている。第1の突起23bと第2の突起23cとは、インナコラム7のアウタコラム5に対する移動方向Aに沿って互いに間隔をあけて設けられ、第1の突起23bは、第2の突起23cよりも前方に位置している。
【0018】
第1の突起23bはほぼ円柱形状である。第2の突起23cは、全体として円柱形状であるが、肉抜き部としての溝23dが上記移動方向Aに沿って形成されている。第2の突起23cは、溝23dを間にして上部23eと下部23fとに分割される。
【0019】
図4は、図2に対し、ねじ軸13及び駆動部材15を省略している。図4に示すように、ねじ軸13に対応する位置のアウタコラム5の右側部には、開口部5bが形成されている。開口部5bは、アウタコラム5の右側部を貫通しており、移動方向Aに沿って長く形成されている。
【0020】
開口部5bに対応してインナコラム7の右側部には、第1の突起23bが挿入される係合孔7aと、第2の突起23cが挿入される長孔7bとが形成されている。係合孔7aは、長孔7bよりも前方に位置している。係合孔7aは、円柱形状の第1の突起23bに対応して円形であり、第1の突起23bが圧入固定される。これにより、駆動部材15とインナコラム7とが連結される。長孔7bは、移動方向Aに沿って長く形成されている。
【0021】
長孔7bは、図5にも示すように、係合孔7a側の端部に位置する拡大部7b1と、拡大部7b1に対し係合孔7aと反対側に連続する摺動抵抗部7b2とを備えている。拡大部7b1は、第2の突起23cの直径Cよりも移動方向Aに沿って長く形成されている。
【0022】
第2の突起23cは、第1の突起23bが係合孔7aに圧入された状態で、拡大部7b1の係合孔7a側の端縁部7b3に近接する位置にある。拡大部7b1の端縁部7b3は円弧形状となっている。拡大部7b1の上下方向の幅Dは、第2の突起23cの直径Cよりも僅かに大きいかほぼ同等である(D≧C)。したがって、第2の突起23cは、拡大部7b1に対し移動方向Aに沿って大きな摺動摩擦抵抗を受けることなく相対移動することができる。
【0023】
摺動抵抗部7b2は、拡大部7b1よりも移動方向Aに沿った長さが充分に長く、上下方向の幅Eが、第2の突起23cの直径Cよりも僅かに小さい(E<C)。拡大部7b1は、摺動抵抗部7b2に連続する連続部7b4が、傾斜面もしくは凹状の円弧形状となっている。
【0024】
図4では、係合孔7aが、開口部5bの前後方向(図4中では左右方向)のほぼ中央に位置しており、この位置からインナコラム7をアウタコラム5に対して前後に移動させることで、ステアリングホイールの前後方向位置を調整できる。図4の状態で、長孔7bは、アウタコラム5の後端5aを中心として前方及び後方にそれぞれ延長されている。すなわち、図4の状態で長孔7bは、前方側のほぼ半分が開口部5bに臨み、後方側のほぼ半分がアウタコラム5の外部に位置している。
【0025】
第1の突起23bを係合孔7aに圧入固定した状態で、第2の突起23cは、図7Aに示すように、拡大部7b1の端縁部7b3に近接する位置にある。この状態で、モータ11を駆動してねじ軸13を回転させると、ねじ軸13は駆動部材15のナット部21に対して回転する。これにより駆動部材15は、ねじ軸13に沿って前後方向に移動する。駆動部材15の移動に伴って、インナコラム7が前後方向に移動し、ステアリングホイールの前後方向位置が調整される。このとき、駆動部材15の駆動力が第1の突起23bから係合孔7aに伝達されて、インナコラム7が移動する。
【0026】
車両が前後方向に衝突し、インナコラム7がステアリングシャフト9を介して前方に向けて、図7Aに示すように衝撃荷重Fを受けると、衝撃荷重Fは、第1の突起23bと係合孔7aとの間に作用する。ここで、第1の突起23bを備える駆動部材15は、樹脂製であって、金属製のインナコラム7に対して剪断応力が低く設定されている。このため、第1の突起23bが係合孔7aの縁部によって剪断破壊し、第1の突起23bを備える駆動部材15と係合孔7aを備えるインナコラム7との連結が解除される。このとき駆動部材15は、ねじ軸13に螺合しているため、前方への移動は抑制されている。
【0027】
第1の突起23bが剪断破壊する際には、インナコラム7がアウタコラム5に対して前方へ移動する。このとき、図7Aに示す位置にある第2の突起23cは、長孔7bの拡大部7b1内を、図7Bに示すように、後方に向けて相対移動する。第2の突起23cが拡大部7b1内を後方へ相対移動する際に、第1の突起23bの剪断破壊がほぼ完了する。したがって、第2の突起23cの拡大部7b1内での後方への相対移動量は、第1の突起23bの直径とほぼ同等である。ここで、第1の突起23bを備える駆動部材15は、樹脂製であって、金属製のインナコラム7に対してヤング率が低く設定されているため、荷重のコントロールがし易い。
【0028】
第1の突起23bの剪断破壊がほぼ完了する間に、第2の突起23cは、図7C図7Dに示すように、連続部7b4を経て摺動抵抗部7b2に入り込み、さらに後方へ相対移動する。第2の突起23cは、摺動抵抗部7b2を相対移動する際に、摺動抵抗部7b2の上下両側縁から押し付けられ、上部23e及び下部23fが互いに接近するように弾性変形する。このため、インナコラム7がアウタコラム5に対して前方へ移動する際には、第2の突起23cと摺動抵抗部7b2との間で摺動摩擦抵抗が発生して、衝撃荷重を吸収する。
【0029】
次に、作用効果を説明する。
【0030】
本実施形態は、車体に取り付けられるアウタコラム5と、アウタコラム5に対し車体前後方向に移動自在に設けられ、ステアリングシャフト9を回転自在に支持するインナコラム7と、アウタコラム5に設けられ、インナコラム7を車体前後方向に移動させるモータ11と、モータ11の駆動力を、インナコラム7に伝達する駆動部材15と、を有する。駆動部材15は、インナコラム7を構成する材料よりもヤング率の低い材料で構成されかつ、インナコラム7のアウタコラム5に対する移動方向に沿って互いに間隔をあけて設けられる第1の突起23b及び第2の突起23cを備える。インナコラム7は、第1の突起23bが挿入される係合孔7aと、第2の突起23cが挿入されて、インナコラム7の移動方向Aに沿って長い長孔7bと、を備える。
【0031】
第1の突起23bは、インナコラム7が車体前方に向けて衝撃荷重を受けたときに、係合孔7aに押し付けられて剪断される。第2の突起23cは、インナコラム7が車体前方に向けて衝撃荷重を受けたときに、長孔7bの摺動抵抗部7b2内を、弾性変形しつつ車体後方に向けて摺動摩擦抵抗を受けながら相対移動する。
【0032】
この場合、第1の突起23bが剪断破壊することによって駆動部材15とインナコラム7との連結が解除される。その後、第2の突起23cが、弾性変形しつつ摺動抵抗部7b2に対し摺動摩擦抵抗を受けながら相対移動することによって衝撃荷重を吸収する。したがって、駆動部材15とインナコラム7との連結解除と、衝撃吸収とを、第1の突起23b及び第2の突起23cによって別々に行うことになり、衝突時のエネルギ吸収荷重を容易に設定することができ、寸法関係を高精度に設定することによる加工コストの上昇を抑えることができる。
【0033】
第1の突起23b及び第2の突起23cを備える駆動部材15は、樹脂で構成されているため、金属で構成する場合に比較して、成形時の寸法精度を比較的容易に設定することができ、コスト低下にも寄与することができる。
【0034】
本実施形態は、第2の突起23cが肉抜き部となる溝23dを備えている。このため、第2の突起23cが長孔7bに対し摺動摩擦抵抗を受けながら相対移動する際に、弾性変形しやすく、衝撃吸収を安定して行うことができる。
【0035】
本実施形態は、肉抜き部が、長孔7bの長手方向に沿って延在する溝23dで構成されている。この場合、第2の突起23cは、溝23dを間にしてその両側の上部23e及び下部23fが、摺動抵抗部7b2の側縁に押されてより弾性変形しやすく、衝撃吸収をより安定して行うことができる。
【0036】
本実施形態は、インナコラム7を構成する材料が金属であり、駆動部材15を構成する材料が樹脂である。このため、第1の突起23bが係合孔7aの縁部によって容易に剪断破壊し、駆動部材15側のアウタコラム5と係合孔7a側のインナコラム7との連結を容易に解除することができる。また、金属同士の寸法精度必要とせず、駆動部材15を樹脂により容易に成形できるので、製造が容易であり加工コストを低減することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含む。
【0038】
例えば、上記実施形態では、モータ11やねじ軸13及び駆動部材15等の駆動側をアウタコラム5に設けているが、これらの駆動側をインナコラム7に設けてもよい。この場合、アウタコラム5に、被駆動側となる係合孔及び長孔を設けることになる。駆動側をインナコラム7に設ける場合には、図5に対し、第1の突起23bが第2の突起23cより後方に位置し、これに対応して係合孔7aが長孔7bより後方に位置する。すなわち、図5において、右側を前方としたままで、左右を逆にした図になる。
【0039】
駆動部材15は、樹脂で一体成形されたものに限るものではなく、インナコラム7を構成する材料よりもヤング率が低く、剛性が低い材料であればよい。
【0040】
第2の突起23cに溝23dを設けているが、溝23dに代えて、例えば第2の突起23cの先端面に1個または複数の凹部や孔を設けてもよく、溝23dの延長方向と同方向に貫通する貫通孔を設けてもよい。第1の突起23b及び第2の突起23cは、円柱形状に限るものではなく、例えば四角柱形状など多角柱形状でもよい。
【0041】
上記実施形態のステアリングコラム装置1は、ステアリングホイールが上下方向に揺動自在となる電動チルト機構を備えているが、電動チルト機構を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0042】
5 アウタコラム
7 インナコラム
7a 係合孔
7b 長孔
9 ステアリングシャフト
11 テレスコ駆動用モータ(電動アクチュエータ)
15 駆動部材
23b 第1の突起
23c 第2の突起
23d 溝(肉抜き部)
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D