【実施例】
【0033】
以下のようにして複数の試験片を作成し、当該試験片の各々について、巻込試験を行って使用時における強度を検証した。
【0034】
図4に、試験片となる構造体20が模式的に示されている。この構造体20は、上述した釣竿R1の竿体1のうちリールシート3よりも前方の部位に相当する。図示のように、試験片となる構造体20は、ソリッド体21と、ソリッド体21の外周面に設けられた釣糸ガイド15−1〜15−4と、釣糸ガイド15−1と釣糸外15−2との間においてソリッド体21に巻回された繊維強化樹脂層22と、を備える。
【0035】
構造体20は、以下のようにして作成した。炭素繊維に不飽和ポリエステルを含浸させた繊維強化樹脂製の丸棒を引抜成形で作成後、センタレス加工等によりテーパー加工することによりソリッド体21を作成した。このようにして得られたソリッド体21は、その全長L3が466mmであり、その先端の直径が0.8mmであった。また、ソリッド体21は、先端に近く付くほどその外径が小さくなる先細形状を有し、そのテーパは3/1000であった。
【0036】
次に、ソリッド体21の外周面の所定の位置に、釣糸ガイド15−1〜15−4をそれぞれ取り付けた。釣糸ガイド15−1は、ソリッド体21の先端に取り付けられ、釣糸ガイド15−2は、ソリッド体21の先端から距離L2(100mm)の位置に取り付けられた。
【0037】
次に、釣糸ガイド15−1と釣糸外15−2との間の領域においてソリッド体21に、液晶ポリエステル繊維にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグシートを1.0〜1.1プライだけ巻回した。このプリプレグシートに含有される液晶ポリエステル繊維のJIS K 7161に準拠して測定される引張弾性率は、500〜1100cN/dtexであり、JIS K 7161に準拠して測定される引張破断強度は、20〜33cN/dtexであった。次に、ソリッド体21に巻回されたプリプレグシートを加熱してエポキシ樹脂を固化させることで繊維強化樹脂層22を形成した。繊維強化樹脂層22は、ソリッド体21の先端からL1(20mm)だけ後方の位置から、ソリッド体21の先端からL2(100mm)だけ後方の位置まで延在させた。つまり、ソリッド体21の長手方向における繊維強化樹脂層22の長さは、80mmであった。以上のようにして、試験片となる構造体20を得た。
【0038】
また、上記の構造体20から繊維強化樹脂層22を省略した構造体を比較例として作成した。この比較例の製造方法は、繊維強化樹脂層22が形成されない点以外は、構造体20の製造方法と同様である。
【0039】
図5に模式的に示されている巻込試験装置30により、巻き込み量及び巻き込み破壊荷重を測定した。試験装置30は、釣糸31と、この釣糸31を巻き取る巻取機32と、を備える。巻取機32は、釣糸31の巻取量を計測する計測装置と、釣糸を巻き取るための巻取りトルクを計測するトルク計測装置と、を備えている。釣糸31は、その一端が構造体20の先端に設けられた釣糸ガイド15−1に結びつけられ、釣糸ガイド15−2〜15−4にガイドされて、その他端が巻取機32に接続される。
【0040】
試験開始時においては、構造体20は、台に戴置されている。このとき、構造体20には釣糸31からの引張力が作用していないため、構造体20は
図5に2点鎖線で示されている伸長姿勢を取る。巻取機32を作動させると、釣糸31が巻取機32に巻き取られるため、構造体20は、
図5に実線で示されているように、巻取機32側に向かって撓む。構造体20の撓みが大きくなると、構造体20は、釣糸ガイド15−1と釣糸ガイド15−2との間で破壊される。この破壊時における釣糸31の巻取量及び破壊時における巻取トルクをそれぞれ計測した。また、上記の比較例のサンプルについても、同様の方法で、破壊時における釣糸31の巻取量及び破壊時における巻取トルクをそれぞれ計測した。
【0041】
この測定結果を
図6及び
図7に示す。
図6は、破壊時までの釣糸31の巻取量の計測結果(N=5)を示し、
図7は、破壊時における巻取トルクの計測結果(N=5)を示す。
【0042】
図6のグラフから、ソリッド体21に繊維強化樹脂層22が設けられた構造体20は、繊維強化樹脂層22を有していない構造体よりも、破断までに巻き取ることができる釣糸の巻取量が多いことが分かる。
【0043】
図7のグラフから、ソリッド体21に繊維強化樹脂層22が設けられた構造体20は、繊維強化樹脂層22を有していない構造体よりも、破壊時における巻取トルクが大きいことが分かる。
【0044】
この測定結果から、JIS K 7161に準拠して測定される引張弾性率が500〜1100cN/dtexであり、JIS K 7161に準拠して測定される引張破断強度が20〜33cN/dtexである液晶ポリエステル繊維を含むプリプレグシートから成る繊維強化樹脂層をソリッド体に設けた構造体は、かかる繊維強化樹脂層を有しない構造体と比べて破断が起こりにくいことが分かった。
【0045】
次に、試験片となる構造体20、比較例1及び比較例2について、ねじり試験を行った。比較例1は、構造体20から繊維強化樹脂層22を省略した構造体である。この比較例1の製造方法は、繊維強化樹脂層22が形成されない点以外は、構造体20の製造方法と同様である。比較例2は、ソリッド体21に、ケブラー繊維にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグシートを巻回し、ソリッド体21に巻回されたプリプレグシートを加熱してエポキシ樹脂を固化させることで作成した。つまり、比較例2は、ソリッド体21の周囲に巻回されている繊維強化樹脂層の強化繊維がケブラー繊維である点で構造体20と異なっており、それ以外の点は構造体20と同じである。ただし、ねじり試験用の構造体20、比較例1、及び比較例2には、釣糸ガイド15−1〜15−4を設けなかった。
【0046】
ねじり試験は、島津製作所製オートグラフを使用し、試験片である構造体20の先端と先端から100mmだけ後方に離れた位置を支持し(支持距離100mm)、ねじり速度7.2°/secで、構造体20にねじりモーメントを加え、ねじりトルクを測定した。比較例1及び比較例2についても同様にしてねじりモーメントを加え、ねじりトルクを測定した。構造体20、比較例1、及び比較例2のそれぞれについて、ねじり角度を横軸にとし、ねじりトルクを縦軸とするグラフを作成した。
【0047】
この測定結果を
図8及び
図9に示す。
図8は、上記試験により計測された最大ねじりトルクを示し、
図9は、上記試験により計測されたねじり角度を横軸にとりねじりトルクを縦軸にとったグラフの初期勾配を示す。
【0048】
この測定結果から、JIS K 7161に準拠して測定される引張弾性率が500〜1100cN/dtexであり、JIS K 7161に準拠して測定される引張破断強度が20〜33cN/dtexである液晶ポリエステル繊維を含有するプリプレグシートから成る繊維強化樹脂層をソリッド体に設けた構造体、かかる繊維強化樹脂層を有しない構造体と比べてねじり剛性及びねじり強度に優れていることが分かった。
【0049】
また、比較例2と構造体20との比較から、ソリッド体に巻回される繊維強化樹脂層の強化繊維として液晶ポリエステル繊維が用いられる場合に、ケブラー繊維が用いられる場合よりもねじり剛性が高くなることが確認できた。ケブラー繊維は、液晶ポリエステル繊維と同程度の引張弾性率を有するが、液晶ポリエステル繊維と比べてマトリクス樹脂との密着性において劣るため、ソリッド体からの剥離が起こりやすく、その結果、液晶ポリエステル繊維が使用される場合と比べて優れたねじり剛性が得られない場合があると考えられる。
【0050】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。