(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976913
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 15/00 20060101AFI20211125BHJP
B62J 13/02 20060101ALI20211125BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20211125BHJP
B62L 3/04 20060101ALI20211125BHJP
B62L 3/08 20060101ALI20211125BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20211125BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20211125BHJP
G05G 25/04 20060101ALI20211125BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20211125BHJP
【FI】
B62J15/00 C
B62J13/02
B62J23/00 F
B62L3/04 Z
B62L3/08
B60T7/02 D
B60T7/06 A
G05G25/04 Z
G05G1/30 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-154525(P2018-154525)
(22)【出願日】2018年8月21日
(65)【公開番号】特開2020-29121(P2020-29121A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】鵜川 源也
(72)【発明者】
【氏名】和田 紗矢香
【審査官】
田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2018/062295(WO,A1)
【文献】
特開2011−195024(JP,A)
【文献】
特開2017−052352(JP,A)
【文献】
国際公開第2018/142575(WO,A1)
【文献】
特開2016−132305(JP,A)
【文献】
特開2005−246999(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/169161(WO,A1)
【文献】
国際公開第2017/110587(WO,A1)
【文献】
国際公開第2017/057594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 15/00
B62J 13/02
B62J 23/00
B62L 3/04
B62L 3/08
B60T 7/02
B60T 7/06
G05G 25/04
G05G 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪ブレーキ(BF)と後輪ブレーキ(BR)とを連動させるためにブレーキペダル(27)に連結される連動機構(S)と、後輪(WR)を回転自在に軸支すると共に車体フレーム(7)に揺動可能に軸支されるスイングアーム(44)と、該スイングアーム(44)の上部に取り付けられるカバー部材(80)とを有する鞍乗型車両(1)において、
前記カバー部材(80)が、前記後輪(WR)の車体前方上方を覆うリヤフェンダ部(82)と、前記連動機構(S)の少なくとも一部を車体上方および車体側方から覆う保護カバー部(87)とを含んで一体に形成されており、
前記保護カバー部(87)が、少なくとも車体前方および車体下方が開放された箱状をなしており、
前記カバー部材(80)が、前記リヤフェンダ部(82)と前記保護カバー部(87)とチェーンカバー部(83)とを含む一体形成部品であることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記リヤフェンダ部(82)の上面(82a)は、車体後方に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜した形状を有し、
前記保護カバー部(87)の上面(87a)は、車体前方に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜した形状を有し、
車体側面視で、前記保護カバー部(87)の最上位置(A)が、前記リヤフェンダ部(82)の最上位置(B)より低い位置にあり、
前記リヤフェンダ部(82)の上面(82a)と前記保護カバー部(87)の上面(87a)との結合部(95)が、前記保護カバー部(87)の最上位置(A)より低い最下位置(C)にあることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記保護カバー部(87)が、前記リヤフェンダ部(82)の車体前方側に配設されており、
前記カバー部材(80)の裏面側で、かつ前記保護カバー部(87)と前記リヤフェンダ部(82)との間の位置に、車体下方に向けて立設する壁部材(81)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記壁部材(81)が、前記結合部(95)の裏面側に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記連動機構(S)の車体前方側に、前記ブレーキペダル(27)に連結されるブレーキランプスイッチ(50)が配設されており、
前記保護カバー部(87)の車体前方側端部(87b)が、前記ブレーキランプスイッチ(50)の車体後方側かつ車幅方向内側に位置することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記スイングアーム(44)を揺動自在に軸支するスイングアームピボット(25)が設けられるピボットフレーム(42)を備え、
前記ピボットフレーム(42)は、ヘッドパイプ(38)から車体後方下方に延びるメインフレーム(8)の後端部に固定されており、
前記ブレーキペダル(27)および前記連動機構(S)が、前記ピボットフレーム(42)の車幅方向右側に集中配置されていることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記カバー部材(80)の車幅方向左側に、パワーユニット(P)の回転動力を前記後輪(WR)に伝達するドライブチェーン(43)の上方を覆うチェーンカバー部(83)が一体に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に係り、特に、後輪を回転自在に軸支するスイングアームに、合成樹脂の薄板等からなるカバー部材が取り付けられた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、後輪を回転自在に軸支するスイングアームが設けられた鞍乗型車両において、合成樹脂の薄板等からなるカバー部材をスイングアームの上部に取り付ける構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、後輪の上方を覆うリヤフェンダとドライブチェーンの上方を覆うチェーンカバーとを一体に形成したカバー部材を、スイングアームの上面に取り付けた鞍乗型車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−72623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、後輪ブレーキを作動させるブレーキペダルを有する鞍乗型車両において、ブレーキペダルの操作時に後輪ブレーキと同時に前輪ブレーキも作動する前後連動ブレーキシステムとするために、複数のリンクを含む連動機構をブレーキペダルに連結した構成が知られている。このような連動機構は可動部分が多く、水分や埃等から保護するためのカバーを設けることが好ましいが、連動機構の周囲には余剰スペースが少なく、また新たなカバーを設けると部品点数や組立工数が増えるという課題があった。そこで、本発明の発明者は、特許文献1のようなスイングアームに取り付けられるカバー部材を利用して連動機構を保護することを検討した。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ブレーキペダルに連結される前後連動ブレーキシステムの連動機構を保護するカバー部材を備えた鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、前輪ブレーキ(BF)と後輪ブレーキ(BR)とを連動させるためにブレーキペダル(27)に連結される連動機構(S)と、後輪(WR)を回転自在に軸支すると共に車体フレーム(7)に揺動可能に軸支されるスイングアーム(44)と、該スイングアーム(44)の上部に取り付けられるカバー部材(80)とを有する鞍乗型車両(1)において、前記カバー部材(80)が、前記後輪(WR)の車体前方上方を覆うリヤフェンダ部(82)と、前記連動機構(S)の少なくとも一部を車体上方および車体側方から覆う保護カバー部(87)とを含んで一体に形成されている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記リヤフェンダ部(82)の上面(82a)は、車体後方に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜した形状を有し、前記保護カバー部(87)の上面(87a)は、車体前方に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜した形状を有し、車体側面視で、前記保護カバー部(87)の最上位置(A)が、前記リヤフェンダ部(82)の最上位置(B)より低い位置にあり、前記リヤフェンダ部(82)の上面(82a)と前記保護カバー部(87)の上面(87a)との結合部(95)が、前記保護カバー部(87)の最上位置(A)より低い最下位置(C)にある点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記保護カバー部(87)が、前記リヤフェンダ部(82)の車体前方側に配設されており、前記カバー部材(80)の裏面側で、かつ前記保護カバー部(87)と前記リヤフェンダ部(82)との間の位置に、車体下方に向けて立設する壁部材(81)が設けられている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記壁部材(81)が、前記結合部(95)の裏面側に配設されている点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記保護カバー部(87)が、少なくとも車体前方および車体下方が開放された箱状をなす点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記連動機構(S)の車体前方側に、前記ブレーキペダル(27)に連結されるブレーキランプスイッチ(50)が配設されており、前記保護カバー部(87)の車体前方側端部(87b)が、前記ブレーキランプスイッチ(50)の車体後方側かつ車幅方向内側に位置する点に第6の特徴がある。
【0013】
また、前記スイングアーム(44)を揺動自在に軸支するスイングアームピボット(25)が設けられるピボットフレーム(42)を備え、前記ピボットフレーム(42)は、ヘッドパイプ(38)から車体後方下方に延びるメインフレーム(8)の後端部に固定されており、前記ブレーキペダル(27)および前記連動機構(S)が、前記ピボットフレーム(42)の車幅方向右側に集中配置されている点に第7の特徴がある。
【0014】
さらに、前記カバー部材(80)の車幅方向左側に、パワーユニット(P)の回転動力を前記後輪(WR)に伝達するドライブチェーン(43)の上方を覆うチェーンカバー部(83)が一体に形成されている点に第8の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴によれば、前輪ブレーキ(BF)と後輪ブレーキ(BR)とを連動させるためにブレーキペダル(27)に連結される連動機構(S)と、後輪(WR)を回転自在に軸支すると共に車体フレーム(7)に揺動可能に軸支されるスイングアーム(44)と、該スイングアーム(44)の上部に取り付けられるカバー部材(80)とを有する鞍乗型車両(1)において、前記カバー部材(80)が、前記後輪(WR)の車体前方上方を覆うリヤフェンダ部(82)と、前記連動機構(S)の少なくとも一部を車体上方および車体側方から覆う保護カバー部(87)とを含んで一体に形成されているので、リヤフェンダ部と一体に形成されるカバー部材の保護カバー部によって連動機構を覆うことで、水や泥、飛び石等から連動機構を保護することが可能となる。これにより、連動機構を保護するために別部品を設けることなく、部品点数および組立工数の増加を防ぐことができる。
【0016】
第2の特徴によれば、前記リヤフェンダ部(82)の上面(82a)は、車体後方に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜した形状を有し、前記保護カバー部(87)の上面(87a)は、車体前方に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜した形状を有し、車体側面視で、前記保護カバー部(87)の最上位置(A)が、前記リヤフェンダ部(82)の最上位置(B)より低い位置にあり、前記リヤフェンダ部(82)の上面(82a)と前記保護カバー部(87)の上面(87a)との結合部(95)が、前記保護カバー部(87)の最上位置(A)より低い最下位置(C)にあるので、リヤフェンダ部および保護カバー部の上面に付着した水分や泥等を、傾斜した上面に沿って結合部に集結させて車幅方向外側に排出することが可能となる。
【0017】
第3の特徴によれば、前記保護カバー部(87)が、前記リヤフェンダ部(82)の車体前方側に配設されており、前記カバー部材(80)の裏面側で、かつ前記保護カバー部(87)と前記リヤフェンダ部(82)との間の位置に、車体下方に向けて立設する壁部材(81)が設けられているので、後輪によって車体前方側に巻き上げられる泥等を壁部材で受け止めることで、連動機構を保護することが可能となる。
【0018】
第4の特徴によれば、前記壁部材(81)が、前記結合部(95)の裏面側に配設されているので、壁部材が車体下方に延出する長さを最小限に抑えつつ、効率よく連動機構を保護することが可能となる。
【0019】
第5の特徴によれば、前記保護カバー部(87)が、少なくとも車体前方および車体下方が開放された箱状をなすので、カバー部材がスイングアームと一体に揺動しても、連動機構の可動域を確保して連動機構との干渉を避けつつ、泥等から連動機構を保護することが可能となる。
【0020】
第6の特徴によれば、前記連動機構(S)の車体前方側に、前記ブレーキペダル(27)に連結されるブレーキランプスイッチ(50)が配設されており、前記保護カバー部(87)の車体前方側端部(87b)が、前記ブレーキランプスイッチ(50)の車体後方側かつ車幅方向内側に位置するので、カバー部材がスイングアームと一体に揺動した際に、保護カバー部とブレーキランプスイッチとが干渉することを防ぐことができる。
【0021】
第7の特徴によれば、前記スイングアーム(44)を揺動自在に軸支するスイングアームピボット(25)が設けられるピボットフレーム(42)を備え、前記ピボットフレーム(42)は、ヘッドパイプ(38)から車体後方下方に延びるメインフレーム(8)の後端部に固定されており、前記ブレーキペダル(27)および前記連動機構(S)が、前記ピボットフレーム(42)の車幅方向右側に集中配置されているので、ブレーキペダルおよび連動機構の組立作業やメンテナンスを容易にすることができる。
【0022】
第8の特徴によれば、前記カバー部材(80)の車幅方向左側に、パワーユニット(P)の回転動力を前記後輪(WR)に伝達するドライブチェーン(43)の上方を覆うチェーンカバー部(83)が一体に形成されているので、カバー部材にチェーンカバーを一体に形成することで、より一層、部品点数および組立工数の低減を図ることができる。また、車幅方向中央に位置するリヤフェンダ部の右側に保護カバー部を設けると共に、車幅方向左側にチェーンカバー部を設けることで、カバー部材の成形が容易になると共にカバー部材の剛性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
【
図7】カバー部材を車体右前方から見た斜視図である。
【
図8】カバー部材を車体右下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両としての自動二輪車1の右側面図である。自動二輪車1は、パワーユニットPの回転動力を、ドライブチェーンを介して後輪WRに伝達して走行する鞍乗型車両である。車体フレーム7を構成するメインフレーム8の前端部には、ステアリングステム5を回動自在に軸支するヘッドパイプ38が固定されている。ステアリングステム5の下端部には、左右一対のフロントフォーク33を支持するボトムブリッジ35が固定されており、フロントフォーク33の下端部には、前輪WFが回転自在に軸支されている。ステアリングステム5の上端部には、バックミラー3が取り付けられた操向ハンドル4が固定されており、操向ハンドル4の車幅方向右側にはブレーキレバー2が配設されている。
【0025】
メインフレーム8の後端下部には、スイングアームピボット25を支持する箱状のピボットフレーム42が取り付けられている。メインフレーム8の上部には、左右一対の上側リヤフレーム11と、上側リヤフレーム11を下方から支持する下側リヤフレーム12とが固定されている。メインフレーム8、上側リヤフレーム11および下側リヤフレーム12で囲まれる空間には、エアクリーナボックス48が配設されている。後輪WRを回転可能に軸支するスイングアーム44の前端部は、スイングアームピボット25によって揺動自在に軸支される。スイングアーム44の後端部は、左右一対のリヤクッション17によって上側リヤフレーム11に吊り下げられている。
【0026】
メインフレーム8の車体下方かつピボットフレーム42の車体前方の位置には、単気筒4サイクルエンジンと有段変速機とを一体に構成したパワーユニットPが吊り下げられている。エンジンのシリンダヘッドの上方側には、スロットルボディ10に連なる吸気管9が接続されており、一方の下方側には、車体後方のマフラ18に連なる排気管28が接続されている。燃料噴射装置およびスロットルバルブを内蔵するスロットルボディ10の上流側には、エアクリーナボックス48が連結されている。
【0027】
パワーユニットPの右側面には、運転者が人力でパワーユニットPを始動するためのキックペダル24が取り付けられている。キックペダル24の前方には、パワーユニットPの底部に固定される左右一対の足載せステップ26が配設されており、足載せステップ26の前方から後方にかけてブレーキペダル27が配設されている。
【0028】
ヘッドパイプ38の前方からメインフレーム8および上側リヤフレーム11の側方にかけては、ヘッドライト37および防風スクリーン39を支持するフロントカウル6で覆われている。フロントカウル6の側面には左右一対の前側ウインカー36が取り付けられており、ボトムブリッジ35の前方には、前輪WFの上方を覆うフロントフェンダ34が取り付けられている。フロントカウル6の後部には、左右一対のリヤカウル14が配設されている。シート13は、フロントカウル
6およびリヤカウル14を跨ぐように前後に延びており、リヤカウル14で覆われる左右一対の上側リヤフレーム11の内側に燃料タンク59が配設されている。
【0029】
リヤカウル14の後端部にはテールライト15が配設されている。テールライト15の前方下部には、後輪WRの後方上方を覆う泥除け装置58が配設されており、泥除け装置58の側面に左右一対の後側ウインカー16が取り付けられている。
【0030】
前輪WFには、前輪ブレーキドラム32によって制動力を発生する前輪ブレーキBFが設けられている。また、後輪WRには、後輪ブレーキドラム21によって制動力を発生する後輪ブレーキBRが設けられている。後輪ブレーキドラム21の下端部は、スイングアーム44の下部に連結されるトルクロッド22によって回転不能に支持されている。
【0031】
本実施形態に係る自動二輪車1には、操向ハンドル4に設けられたブレーキレバー2の操作によって前輪ブレーキBFが作動する一方、ブレーキペダル27を操作した際には、後輪ブレーキBRだけでなく前輪ブレーキBFも同時に作動するようにした機械式の前後連動ブレーキシステムが適用されている。
【0032】
後輪ブレーキドラム21を作動させる後輪ブレーキアーム19には、ブレーキペダル27によって牽引されるブレーキロッド20が接続されている。一方、前輪ブレーキドラム32を作動させる前輪ブレーキアーム31には、ブレーキレバー2に連結される第1ブレーキケーブル30と、ブレーキペダル27の操作に連動して牽引される第2ブレーキケーブル29とが接続されている。ブレーキペダル27を軸支するピボットフレーム42の車幅方向右側側面には、ブレーキペダル27の揺動動作を第2ブレーキケーブル29に伝達するための連動機構(
図4参照)が配設されている。
【0033】
後輪WRの車体前方側には、スイングアーム44の上部に固定されるカバー部材80(点描ハッチング部)が配設されている。合成樹脂の薄板等からなるカバー部材80は、車幅方向左側のドライブチェーンの上方を覆うチェーンカバー部と、後輪WRの前方上方を覆うリヤフェンダ部と、前後連動ブレーキシステムを構成するための連動機構を覆う保護カバー部とを含む一体形成部品とされる。左右一対のピリオンステップ23は、スイングアーム44の上部に取り付けられている。
【0034】
図2は、
図1の一部拡大図である。スイングアームピボット25を支持するピボットフレーム42は、縦長の箱型形状とされ、その上端部がメインフレーム8の下面に結合されている。スイングアーム44の前端部は、2本のアーム部材の先端部がピボットフレーム42を車幅方向両側から挟むようにピボットフレーム42に係合している。マフラ18の右側側面にはマフラカバー18aが取り付けられている。マフラ18は、スイングアーム44の車幅方向右側を覆う板状のマフラステー18bをスイングアームピボット25で共締め固定することで、ピボットフレーム42に支持されている。
【0035】
カバー部材80の車幅方向右寄りの前部には、連動機構Sの後部を覆う保護カバー部87が形成されている。複数のリンクを含む連動機構Sは、ブレーキペダル27の揺動軸27aからメインフレーム8の下部までに至る縦長形状を有している。連動機構Sは、その上方側が保護カバー部87で覆われると共に下方側がマフラステー18bによって覆われており、車体側面視では、連動機構Sの前方上端部のみが外方に露出する。
【0036】
スイングアーム44が揺動した際に、ピボットフレーム42側に固定されたマフラステー18bは何ら影響を受けないが、スイングアーム44に固定されたカバー部材80はスイングアーム44と一体に揺動するため、保護カバー部87の車体前方側端部87bの位置が変わり、連動機構Sの露出度合いが若干変化する。保護カバー部87は、この揺動動作があっても他の部品等と干渉しない範囲で連動機構Sを可能な限り覆う形状とされている。ブレーキペダル27の揺動動作によって作動するブレーキランプスイッチ50は、連動機構Sおよびスイングアームピボット25の前方の位置でピボットフレーム42に固定されている。
【0037】
図3は、自動二輪車1の一部拡大左側面図である。パワーユニットPの車幅方向左側には、変速機のギヤ段を変更するシーソー式のシフトペダル40が取り付けられている。足載せステップ26の近傍には、サイドスタンド41が揺動自在に取り付けられている。スイングアームピボット25の車体前方には、パワーユニットPの出力軸に固定されるドライブスプロケット(不図示)を覆うスプロケットカバー47が取り付けられている。
【0038】
パワーユニットPの回転動力は、ドライブチェーン43を介して後輪WRと一体回転するドリブンスプロケット45に伝達される。カバー部材80の車幅方向左寄りの位置には、ドライブチェーン43を上方から覆うと共に、支持板
49に支持される後輪車軸46の後方まで延びるチェーンカバー部83が形成されている。
【0039】
図4は、自動二輪車1の一部断面右側面図である。この図は、スイングアーム44の右側アームと後輪WRとの間で切断し、車幅方向右側から見た状態を示している。複数のリンクを有する連動機構Sは、スイングアームピボット25を避けるように車体後方に湾曲するステー51によってピボットフレーム42に固定されている。連動機構Sの上部には、前輪ブレーキアーム31に連結される第2ブレーキケーブル29が接続されている。後輪ブレーキアーム19(
図1参照)に連結されるブレーキロッド20は、ブレーキペダル27の揺動軸27aから後方上方に延びる作動アーム27bに連結されている。
【0040】
連動機構Sの上部後方を覆う保護カバー部87は、車体前方および車体下方が開放された箱状をなしており、カバー部材80がスイングアーム44と一体に揺動しても、連動機構Sの可動域を確保して連動機構Sとの干渉を避けつつ、水や泥、飛び石等から連動機構Sを保護することを可能とする。この保護カバー部87を、スイングアーム44の上部に取り付けられるカバー部材80に一体に形成することにより、連動機構Sを保護するために別部品を設ける必要がなく、部品点数および組立工数の増加を防ぐことができる。
【0041】
また、カバー部材80の裏面側で、リヤフェンダ部82と保護カバー部87との間の位置には、車体下方に向けて立設する壁部材81が設けられている。これにより、後輪WRによって車体前方側に巻き上げられる泥等を受け止めることが可能となる。スイングアーム44は、丸パイプ材からなる左右一対のアーム部材を、車幅方向に指向する角型断面の連結パイプ53で互いに連結した構成を有する。
【0042】
壁部材81は、連結パイプ53の上面に接する位置まで下方に延びており、リヤフェンダ部82の裏面に付着した水や泥等が壁部材81より車体前方に侵入することを防ぐ。連結パイプ53の下部には、トルクロッド22の前端部を支持する支持ステー52が設けられている。
【0043】
図5は、連動機構Sの拡大斜視図である。板状部材を折り曲げることで車体前方側が開放された箱状に形成されるピボットフレーム42は、丸パイプ材からなるメインフレーム8の後端下部に溶着されている。ピボットフレーム42の背面には、ブレーキペダル27の揺動軸27aを軸支する支持ボス42aが固定されており、スイングアームピボット25を支持する支持パイプ42bは、ピボットフレーム42を車幅方向に貫通して固定されている。連動機構Sを支持するステー51は、上下端部に配設されるボルト71によって、ピボットフレーム42の右側側面に固定されている。
【0044】
ブレーキペダル27の揺動軸27aに固定される作動アーム27bの上端部は、第1揺動軸69によって第1イコライザ68の略中央に揺動自在に軸支されている。第1イコライザ68の下端部は、第2揺動軸70によってブレーキロッド20に連結されており、第1イコライザ68の上端部は、第3揺動軸67によって左右一対の板状部材からなる第2イコライザ63の下端部に連結されている。第2イコライザ63の中央部は、上側のボルト71および位置決めボルト62aによって固定された支持板62の後端部に配設される第4揺動軸65によって揺動自在に軸支されている。
【0045】
第2イコライザ63の上部側は、第5揺動軸64によって第2ブレーキケーブル29のワイヤ29aに連結されている。第2ブレーキケーブル29の外筒部材は、位置決めボルト62aで固定されたホルダ60に支持されている。ステー51には、ホルダ60の回転を防ぐ回り止めピン51bが設けられており、ホルダ60の上部には、リターンスプリング61の係合フック60aが形成されている。リターンスプリング61の他方側は、第2イコライザ63の上端部に設けられたフックピン63aに係合している。ステー51の後端部には、第1イコライザ68の上部が車体後方側に移動することを防ぐストッパ66が設けられている。
【0046】
上記した連動機構Sによれば、ブレーキペダル27を足で踏み込んだ際に、まず、第1イコライザ68が
反時計方向に回動してブレーキロッド20が牽引される。次に、後輪ブレーキBRが制動力を発揮し始めて、第1イコライザ68が回動しなくなってからさらにブレーキペダル27を踏み込むと、第2揺動軸70を中心にして第1イコライザ68が時計方向に回動を開始する。これに伴って、第2イコライザ63が
反時計方向に回動すると、第5揺動軸64によって第2ブレーキケーブル29のワイヤ29aが牽引されて、前輪ブレーキBFが作動することとなる。そして、ブレーキペダル27をリリースすると、リターンスプリング61の弾性力によって、第2イコライザ63が初期位置に戻ることとなる。
【0047】
ブレーキランプスイッチ50は、ピボットフレーム42の側面に設けられたステー42cによって支持されており、突没式のスイッチ操作子50bとブレーキペダル27との間には、スプリング付きの牽引部材50aが係合されている。保護カバー部87の車体前方側端部87bは、ブレーキランプスイッチ50の車体後方側かつ車幅方向内側に位置する。詳しくは、ブレーキランプスイッチ50は、連動機構Sの車体前方側で、かつ車幅方向外側にオフセットして配設されている。これにより、カバー部材80がスイングアーム44と一体に揺動した際に、保護カバー部87とブレーキランプスイッチ50とが干渉することを防ぐことができる。
【0048】
図6は、カバー部材80の右側面図である。また、
図7はカバー部材80を車体右前方から見た斜視図である。前記したように、カバー部材80は、リヤフェンダ部82の左右に保護カバー部87およびチェーンカバー部83を一体に成形して構成される。これにより、各カバー部を別体とする構成に比して、部品点数および組立工数の低減を図るほか、一体部品としてのカバー部材の成形を容易とし、さらに、カバー部材の剛性も高められている。
【0049】
リヤフェンダ部82の上面82aは、車体後方に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜した形状を有する。これに対し、保護カバー部87の上面87aは、車体前方に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜した形状を有しており、リヤフェンダ部82と保護カバー部87との間の結合部95は、車体側面視で略直角をなしている。
【0050】
保護カバー部87の最上位置Aは、リヤフェンダ部82の最上位置Bより低い位置にあり、リヤフェンダ部82の上面82aと保護カバー部87の上面87aとの結合部95は、保護カバー部87の最上位置Aより低い最下位置Cにある。これにより、リヤフェンダ部82および保護カバー部87の上面に付着した水分や泥等を、傾斜した上面に沿って結合部95に集結させて、車幅方向外側に排出することが可能となる。
【0051】
後輪WRが巻き上げる水や泥等を受け止める壁部材81は、結合部95の裏面側に配設されている。これにより、壁部材81が車体下方に延出する長さを最小限に抑えつつ、効率よく連動機構Sを保護することができる。
【0052】
チェーンカバー部83の前端部は、保護カバー部87の前端部より車体前方まで延びており、チェーンカバー部83と保護カバー部87との間には、略水平に指向する平面部88が形成されている。この平面部88とリヤフェンダ部82との間には、連結パイプ53の上面にカバー部材80を固定するための支持孔89が設けられている。リヤフェンダ部82の後方寄りの下端部には、車幅方向右側のピリオンステップ23にカバー部材80を固定するための支持孔85が形成されており、チェーンカバー部83の車体後方寄りの位置には、後輪車軸46の支持板49にカバー部材80を固定するための支持孔84が形成されている。
【0053】
図8は、カバー部材80を車体右下方から見た斜視図である。また、
図9はカバー部材80の壁部材81の拡大斜視図であり、
図10は
図4のX−X線断面図である。車幅方向中央の支持孔89は、車体下方に突出する円筒凹部89aの底面に形成されている。また、チェーンカバー部83の車体前方寄りの位置には、スイングアーム44の左側のアーム部材に設けられたステーにカバー部材80を固定するための支持孔90が形成されている。これにより、カバー部材80は、車幅方向右側の1カ所、車幅方向中央の1カ所、車幅方向左側の2カ所からなる計4カ所で、スイングアーム44の上部に安定的に固定されることとなる。
【0054】
リヤフェンダ部82の裏面側には、車体前後方向に指向する2本の縦リブ91と、車幅方向に指向する1本の横リブ92とが形成され、変形に対する強度が高められている。また、リヤフェンダ部82と保護カバー部87との間に形成される壁部材81は、車体後方側の後壁81aの両端部に右壁81bおよび左壁81cを連結し、連動機構Sを後方から囲うような形状とされている。左壁81cには、車幅方向に指向してチェーンカバー部83まで延びる中央壁86が連なっている。この中央壁86は、スイングアーム44の連結パイプ53の前面に接するように配置され、後輪WRが巻き上げる水や泥等を車体前方側に侵入させない効果を、連動機構Sが位置する車幅方向右側だけでなく、車幅方向中央においても発揮することを可能としている。
【0055】
なお、自動二輪車の形態、前後ブレーキの構造、メインフレームやピボットフレームの形状や構造、連動機構の形状や構造、カバー部材の材質や形状、保護カバー部および壁部材の形状等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、前後ブレーキの一方または両方をドラム式に換えて油圧ディスク式としてもよい。本発明に係るカバー部材は、自動二輪車に限られず、スイングアームおよび前後連動ブレーキシステムを有する鞍乗型三輪車に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、7…車体フレーム、8…メインフレーム、25…スイングアームピボット、27…ブレーキペダル、38…ヘッドパイプ、42…ピボットフレーム、43…ドライブチェーン、44…スイングアーム、50…ブレーキランプスイッチ、80…カバー部材、81…壁部材、82…リヤフェンダ部、82a…リヤフェンダ部の上面、83…チェーンカバー部、87…保護カバー部、87a…保護カバー部の上面、87b…保護カバー部の車体前方側端部、95…結合部、A…保護カバー部の最上位置、B…リヤフェンダ部の最上位置、C…最下位置、BF…前輪ブレーキ、BR…後輪ブレーキ、S…連動機構、P…パワーユニット、WR…後輪