【文献】
Am J Transplant, 2012 Aug, vol. 12, no. 8, pp. 2079-2087
【文献】
Transpl Immunol, 2015.10.12, vol. 33, no. 3, pp. 185-191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体又はその抗原結合断片が:(a)完全体の免疫グロブリン分子;(b)scFv;(c)Fab断片;(d)F(ab’)2;及び(e)ジスルフィド結合Fvからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
前記抗体又はその抗原結合断片が:a)IgGの定常ドメイン;及び(b)IgAの定常ドメインからなる群より選択される少なくとも1つの定常ドメインを含むものである、請求項1〜3のいずれか1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
免疫機構の抑制、移植拒絶反応の処置もしくは予防的処置、又は移植拒絶反応が起こるまでの持続時間の長期化を、それを必要とする被験体において行なう用途に用いるための、請求項13に記載の組成物。
前記自己免疫性障害が、全身性エリテマトーデス(SLE)、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー症候群、食道運動障害、強指症及び毛細血管拡張症)、オプソクローヌス、炎症性ミオパチー(例えば、多発性筋炎、皮膚筋炎及び封入体筋炎)、全身性強皮症、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病(例えば、グルテン過敏性腸疾患)、疱疹状皮膚炎、ミラー・フィッシャー症候群、急性運動性軸索型ニューロパチー(AMAN)、伝導ブロックを伴う多巣性運動ニューロパチー、自己免疫性肝炎、抗リン脂質抗体症候群、ウェゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、関節リウマチ、慢性自己免疫性肝炎、硬化性筋炎、重症筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、傍腫瘍性小脳変性症、スティッフパーソン症候群、辺縁系脳炎、アイザックス症候群、シデナム舞踏病、小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経疾患(PANDAS)、脳炎、1型真性糖尿病、視神経脊髄炎、悪性貧血、アジソン病、乾癬、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、シェーグレン症候群、紅斑性狼瘡(例えば、円板状紅斑性狼瘡、薬物誘発性紅斑性狼瘡及び新生児紅斑性狼瘡)、多発性硬化症、反応性関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、多発性内分泌腺不全、シュミット症候群、自己免疫性ブドウ膜炎、副腎炎、甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、胃萎縮、慢性肝炎、ルポイド肝炎、アテローム性動脈硬化症、初老期認知症、脱髄疾患、亜急性皮膚紅斑性狼瘡、副甲状腺機能低下症、ドレスラー症候群、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、円形脱毛症、類天疱瘡、強皮症、全身性進行性硬化症、成人発症型真性糖尿病(例えば、II型糖尿病)、男性及び女性の自己免疫性不妊症、強直性脊椎関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、混合結合組織病、結節性多発性動脈炎、全身性壊死性血管炎、若年発症型関節リウマチ、糸球体腎炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、シャーガス病、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、反復流産、抗リン脂質抗体症候群、農夫肺、多形性紅斑、開心後症候群、クッシング症候群、自己免疫性慢性活動性肝炎、鳥飼病、アレルギー性疾患、アレルギー性脳脊髄炎、中毒性表皮壊死症、脱毛症、アルポート症候群、肺胞炎、アレルギー性肺胞炎、線維化性肺胞炎、間質性肺疾患、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、輸血副作用、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、高安動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞性動脈炎、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、湿疹、リンパ腫様肉芽腫症、ベーチェット病、カプラン症候群、川崎病、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、フックス毛様体炎、IgA腎症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶反応、ヒト免疫不全ウイルス感染、エコーウイルス感染、心筋症、アルツハイマー病、パルボウイルス感染、風疹ウイルス感染、ワクチン接種後症候群、先天性風疹感染、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、腎細胞癌、多発性骨髄腫、イートン・ランバート症候群、再発性多発性軟骨炎、悪性黒色腫、クリオグロブリン血症、ワルデンストレームマクログロブリン血症、エプスタイン−バーウイルス感染、おたふく風邪、エヴァンズ症候群、並びに自己免疫性腺機能不全からなる群より選択される、請求項23に記載の組成物。
前記免疫抑制薬が、カルシニューリン阻害薬、タクロリムス、mTor阻害薬、フィンゴリモド、マイリオシン、アレムツズマブ、リツキシマブ、抗CD4モノクローナル抗体、抗LFA1モノクローナル抗体、抗LFA3モノクローナル抗体、抗CD45抗体、抗CD19抗体、モナバタセプト、ベラタセプト、インドリル−ASC;アザチオプリン、リンパ球免疫グロブリン及び抗胸腺細胞グロブリン[ウマ]、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム、ダクリズマブ、バシリキシマブ、シクロホスファミド、プレドニゾン、プレドニゾロン、レフルノミド、FK778、FK779、15−デオキシスペルグアリン、ブスルファン、フルダラビン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、15−デオキシスペルグアリン、LF15−0195、ブレディニン、ブレキナール、並びにムロモナブ−CD3からなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
前記免疫抑制薬が、カルシニューリン阻害薬、タクロリムス、mTor阻害薬、フィンゴリモド、マイリオシン、アレムツズマブ、リツキシマブ、抗CD4モノクローナル抗体、抗LFA1モノクローナル抗体、抗LFA3モノクローナル抗体、抗CD45抗体、抗CD19抗体、モナバタセプト、ベラタセプト、インドリル−ASC;アザチオプリン、リンパ球免疫グロブリン及び抗胸腺細胞グロブリン[ウマ]、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム、ダクリズマブ、バシリキシマブ、シクロホスファミド、プレドニゾン、プレドニゾロン、レフルノミド、FK778、FK779、15−デオキシスペルグアリン、ブスルファン、フルダラビン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、15−デオキシスペルグアリン、LF15−0195、ブレディニン、ブレキナール、並びにムロモナブ−CD3からなる群より選択される、請求項38に記載の組成物。
前記免疫抑制薬が、カルシニューリン阻害薬、タクロリムス、mTor阻害薬、フィンゴリモド、マイリオシン、アレムツズマブ、リツキシマブ、抗CD4モノクローナル抗体、抗LFA1モノクローナル抗体、抗LFA3モノクローナル抗体、抗CD45抗体、抗CD19抗体、モナバタセプト、ベラタセプト、インドリル−ASC;アザチオプリン、リンパ球免疫グロブリン及び抗胸腺細胞グロブリン[ウマ]、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム、ダクリズマブ、バシリキシマブ、シクロホスファミド、プレドニゾン、プレドニゾロン、レフルノミド、FK778、FK779、15−デオキシスペルグアリン、ブスルファン、フルダラビン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、15−デオキシスペルグアリン、LF15−0195、ブレディニン、ブレキナール、並びにムロモナブ−CD3からなる群より選択される、請求項48に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示は、種々の治療方法、予防方法、診断方法及び他の方法に使用され得る抗CD40抗体及び抗体断片(例えば、該抗体の抗原結合部分)に関する。該抗体は、CD40がCD154に結合する能力をブロックし得るものであり、CD40発現細胞(例えば、B細胞)を活性化させることなくそれを行ない得るものである。本発明の抗体又はその断片は、臓器又は組織の移植に伴う合併症を低減させるために使用され得る。
【0048】
該抗体又はその抗原結合部分としては、限定されないが、ヒト化抗体、ヒト抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ポリクローナル抗体、組換え発現抗体、並びに前述のものの抗原結合部分が挙げられる。抗体の抗原結合部分としては、CD40に特異的に結合する抗体の一部分が挙げられ得る。
【0049】
また、本開示により、移植拒絶反応の尤度を下げるため、移植拒絶反応を処置するため、免疫抑制を誘導するため、及び/又は自己免疫性障害を処置するための組成物及び方法を提供する。該組成物は、CD40に特異的に結合する抗体又はその断片を含有しているものである。
【0050】
一実施形態では、本開示により、哺乳動物に本発明の抗体(又はその断片)を含む組成物を、被験体の移植片対宿主病及び/又は移植拒絶反応の症状の1つ以上が低減されるのに充分な量で投与することを含む、被験体の移植片対宿主病及び/又は移植拒絶反応を処置又は改善する方法を提供する。
【0051】
別の実施形態では、該抗体又は抗原結合断片は、炎症性疾患又は免疫障害、例えば自己免疫疾患を有する被験体に投与される。炎症性疾患又は自己免疫疾患はCD40発現細胞と関連しているものであり得る。
【0052】
本発明では、被験体に本発明の抗体又はその抗原結合部分を有効量で投与することにより、該被験体の移植拒絶反応の尤度を下げる方法、移植拒絶反応を処置する方法、免疫抑制を誘導する方法及び/又は自己免疫性障害を処置する方法を取り上げて記載する。
【0053】
また、本開示には、哺乳動物に本発明の抗体又はその抗原結合部分を含む組成物を、該哺乳動物においてCD40媒介性免疫応答がブロックされるのに充分な量で投与することを含む、哺乳動物におけるCD40の機能をブロックする方法も包含される。
【0054】
本開示の別の方法は、CD40発現細胞の成長及び/又は分化の阻害に関するものであって、本発明の抗体又は抗原結合断片を該細胞に投与することを含み、該抗体又は抗原結合断片がCD40に結合すると該細胞の成長及び/又は分化が阻害されるものである。
【0055】
本開示により、CD40関連障害を有する被験体を処置する方法であって、該被験体に本発明の抗体又は抗原結合断片を投与することを含み、該抗体又は抗原結合断片がCD40に結合するとCD40関連障害の細胞の成長及び/又は分化が阻害される方法を提供する。該細胞は、限定されないが、Bリンパ芽球様細胞、膵臓細胞、肺細胞、乳房細胞、卵巣細胞、結腸細胞、前立腺細胞、皮膚細胞、頭頸部の細胞、膀胱細胞、骨細胞又は腎臓細胞であり得る。
【0056】
本発明の方法は、慢性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、ワルデンストレームマクログロブリン血症又はカポジ肉腫を処置するために使用され得る。
【0057】
本開示のさらなる方法としては、被験体に有効量の本開示の抗CD40抗体又はその断片を投与することを含む、被験体のB細胞による抗体産生の阻害が挙げられる。一実施形態では、該抗体は、被験体においてB細胞の分化及び抗体のアイソタイプスイッチが阻害されるのに有効な量で投与される。別の実施形態では、該抗体は、被験体においてサイトカイン及びケモカインの産生が阻害されるのに有効な量で、及び/又はT細胞及びマクロファージにおける接着分子の上方調節が阻害されるのに有効な量で投与される。第3の実施形態では、該抗体は、被験体において樹状細胞の活性化が阻害されるのに有効な量で投与される。
【0058】
本発明の抗体又はその断片に加えて、本発明の方法はさらに、第2の治療用薬剤、例えば免疫抑制薬、腫瘍壊死因子拮抗薬(TNF拮抗薬)、CTLA4拮抗薬、抗IL−6受容体抗体、抗CD20抗体又はその組合せを投与することを含むものであってもよい。
【0059】
本発明の抗体又はその抗原結合部分は、ヒトCD40及び/又はアカゲザル(rhesus)CD40、例えば、組換えヒトCD40及び天然ヒトCD40に特異的に結合し得るものである。
【0060】
本明細書で用いる場合、CD40を発現する細胞は、CD40の表面発現を特徴とする任意の細胞、例えば限定されないが、正常及び新生物性のB細胞、指状嵌入細胞、基底上皮細胞、癌細胞、マクロファージ、内皮細胞、濾胞樹状細胞、扁桃細胞並びに骨髄由来形質細胞である。
【0061】
ヒト化抗体
本開示のヒト化抗体は、非ヒト種に由来する抗体であって、非抗原結合領域(及び/又は抗原結合領域)内のアミノ酸配列が、該抗体がヒト抗体によりよく似るように改変されているが、依然として元の結合能を保持しているものである。
【0062】
抗体の軽鎖可変領域又は重鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)と称される3つの超可変領域からなる。CDRは、フレームワーク領域(FR)によって可変領域内に支持されている。一実施形態では、重鎖可変領域(又は軽鎖可変領域)には3つのCDRと4つのフレームワーク領域(FR)が含まれており、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列されている。Kabat,E.A.,et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242,1991.Chothia,C.et al.,J.Mol.Biol.196:901−917,1987。
【0063】
一部の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、非ヒト種に由来する抗体分子であって、非ヒト種由来の1つ、2つ、3つ又はすべてのCDRと、ヒト免疫グロブリン分子由来の1つ、2つ、3つ、4つ又はすべてのフレームワーク領域を有するものである。
【0064】
本発明の抗体又はその抗原結合部分のCDRは、非ヒト供給源に由来するものであってもヒト供給源に由来するものであってもよい。本発明の抗体又はその抗原結合部分のフレームワークは、ヒト、ヒト化、非ヒト(例えば、ヒトにおいて抗原性が低減されるように修飾されたマウスフレームワーク)又は合成のフレームワーク(例えば、コンセンサス配列)であり得る。一実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合部分は少なくとも1つの重鎖可変領域及び/又は少なくとも1つの軽鎖可変領域を含むものである。
【0065】
本開示のヒト化抗体は、当該技術分野で知られた方法によって作製することができる。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源由来の1つ以上のアミノ酸残基が導入されたものであり得る。このような非ヒトアミノ酸残基は多くの場合、「インポート」残基と称され、これは典型的には「インポート」可変ドメインから採取される。ヒト化は、Winter及び共同研究者ら(Jones et al.,Nature 321:522−5,1986;Riechmann et al.,Nature 332:323−7,1988;Verhoeyen et al.,Science 239:1534−6,1988)の方法に従い、超可変領域の配列をヒト抗体の対応する配列で置き換えることによって行なわれ得る。したがって、かかるヒト化抗体では、インタクトなヒト可変ドメインよりもかなり少ない部分が非ヒト種に由来する対応配列で置換されている。一部の特定の実施形態では、ヒト化抗体は、超可変領域の残基並びに他の可変領域の残基のうちの少なくともいくつかが非ヒト抗体の類似の部位の残基で置換されているヒト抗体である。
【0066】
ヒト化抗体の作製において使用するヒト可変ドメイン(軽鎖及び重鎖のどちらも)の選択により抗原性が低減され得る。「ベストフィット」法に従い、非ヒト(例えば、マウスなどの齧歯類)抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次いで、非ヒトのものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワークとして受容させる。例えば、Sims et al.,J.Immunol.151:2296−308,1993;Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901−17,1987を参照のこと。別の方法は、特定のサブグループの軽鎖又は重鎖の全ヒト抗体のコンセンサス配列から誘導した特定のフレームワークを使用するものである。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用してもよい。例えば、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285−9,1992;Presta et al.,J.Immunol.151:2623−32,1993を参照のこと。
【0067】
ヒト化抗体は、抗原結合に直接関与していない可変領域の配列をヒト可変領域由来の対応配列で置き換えることにより作製され得る。該方法は、少なくとも1つの重鎖又は軽鎖の可変領域の全部又は一部をコードしている核酸配列を単離し、操作して発現させることを含むものである。かかる核酸の供給源は当業者によく知られており、例えば、CD40に対する抗体を産生するハイブリドーマから得られ得る。次いで、該ヒト化抗体又はその断片をコードしている組換えDNAは適切な発現ベクター内にクローニングされ得る。
【0068】
別の例では、非ヒト(例えば、マウス)抗体が得られたら可変領域がシーケンシングされ得、CDR残基及びフレームワーク残基の位置が決定され得る。Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242。Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.,196:901−917。軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を対応する定常領域にライゲーションしてもよい。CDRグラフティング又はCDR置換によってCDRグラフト抗体分子を作製してもよい。免疫グロブリン鎖の1つ、2つ、3つ又はすべてのCDRが置き換えられ得る。例えば、特定の抗体のすべてのCDRが非ヒト動物の少なくとも一部分に由来するものであってもよく(例えば、マウスの表1に示すCDRなど)、いくつかのCDRだけが置き換えられていてもよい。必要なのは、該抗体が所定の抗原(例えば、CD40)に結合するのに必要とされるCDRが維持されていることだけである。Morrison,S.L.,1985,Science,229:1202−1207.Oi et al.,1986,BioTechniques,4:214。米国特許第5,585,089号;同第5,225,539号;同第5,693,761号及び同第5,693,762号。欧州特許第519596号。Jones et al.,1986,Nature,321:552−525。Verhoeyan et al.,1988,Science,239:1534。Beidler et al.,1988,J.Immunol.,141:4053−4060。
【0069】
抗体が、抗原に対する高い親和性及び他の好都合な生物学的特性を保持した状態でヒト化されることが望ましい場合があり得る。この目的を達成するため、一例の方法によれば、親配列及び種々の概念的ヒト化産物を親配列及びヒト化配列の3次元モデルを用いて解析する方法によってヒト化抗体を調製する。3次元の免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者は熟知している。選択した候補免疫グロブリン配列の推定され得る3次元立体構造を図解し、表示するコンピュータプログラムも入手可能である。このような表示された構造を検討することにより、候補免疫グロブリン配列の機能発揮における残基の考えられ得る役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の解析が可能である。このようにして、FR残基が選択され得、所望の抗体特性((1又は複数の)標的抗原に対する高い親和性など)が得られるようにレシピエント配列及びインポート配列と結合され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、ヒト化抗CD40抗体はまた、免疫グロブリンの定常領域(典型的にはヒト免疫グロブリンのものである)の少なくとも一部分も含むものである。一実施形態では、該抗体は、軽鎖並びに重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含む。また、該抗体は、適宜、重鎖の定常ドメインCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及び/又はCH4のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0071】
本開示の一部の態様では、ヒト化抗体の1つ以上のドメインが組換え発現される。かかる組換え発現には、1つ以上の制御配列、すなわち、作動可能に連結されたコード配列が特定の宿主生物体において発現されるのに必要なポリヌクレオチド配列が使用され得る。原核生物細胞における使用に適した制御配列としては、例えば、プロモーター、オペレーター及びリボソーム結合部位の配列が挙げられる。真核生物系の制御配列としては、限定されないが、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーが挙げられる。このような制御配列は、原核生物宿主細胞及び真核生物宿主細胞におけるヒト化抗CD40抗体の発現及び産生のために使用され得る。
【0072】
また、本明細書に開示した1つ、2つ又はすべてのCDRを含み、その他の領域が少なくとも1種類の異なる種、例えば限定されないが、ヒト、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、サル、類人猿、ゴリラ、チンパンジー、アヒル、ガチョウ、ニワトリ、両生類、爬虫類及び他の動物に由来する配列で置き換えられた抗体又はその抗原結合部分も本開示に包含される。
【0073】
ヒト抗体
本開示のヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択した(1又は複数の)Fvクローン可変ドメイン配列を既知の(1又は複数の)ヒト定常ドメイン配列と結合することにより構築され得る(Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.227:381−8,1992;Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−97,1991)。あるいはまた、ヒト抗体は、ハイブリドーマ法によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の作製のためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、例えば、Kozbor,J.Immunol.133:3001−5,1984;Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.147:86−95,1991に報告されている。
【0074】
免疫処置したら内因性免疫グロブリン産生なしでヒト抗体の全レパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することも可能である。例えば、キメラの生殖細胞変異型マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失により、内因性抗体産生の完全阻害がもたらされることが報告されている。かかる生殖細胞変異型マウスにおけるヒト生殖細胞免疫グロブリン遺伝子アレイの導入により、抗原刺激するとヒト抗体の産生がもたらされる。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551−5,1993;Jakobovits et al.,Nature 362:255−8,1993;Brueggemann et al.,Year Immunol.7:33−40,1993を参照のこと。
【0075】
また、非ヒト、例えば齧歯類の抗体からヒト抗体を誘導するために遺伝子シャッフリングを使用することもでき、この場合、ヒト抗体は出発物質の非ヒト抗体と同様の親和性及び特異性を有する。この方法(これは、「エピトープインプリンティング」とも称される)によれば、ファージディスプレイ手法によって得た非ヒト抗体断片の本明細書に記載の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のいずれかをヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換え、非ヒト鎖/ヒト鎖scFv又はFabキメラの集団を作出する。抗原を用いて選択すると非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFv又はFabが単離され、このとき、ヒト鎖には、1次ファージディスプレイクローンの対応する非ヒト鎖を除去した際に破壊された抗原結合部位が復元される、すなわち、エピトープによってヒト鎖パートナーの選択が支配(インプリント)される。残りの非ヒト鎖も置き換えるためにこのプロセスを繰り返すとヒト抗体が得られる(国際公開第93/06213号参照)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の従来のヒト化とは異なり、この手法では、非ヒト起源のFR又はCDR残基を有しない完全ヒト抗体が得られる。
【0076】
キメラ抗体
キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。例えば、抗体は、マウス抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリンの定常領域を含むものであり得る。キメラ抗体は組換えDNA手法によって作製され得る。Morrison,et al.,Proc Natl Acad Sci,81:6851−6855(1984)。例えば、マウス(又は他の種)のモノクローナル抗体分子をコードしている遺伝子を制限酵素で消化してマウスFcをコードしている領域を除去し、ヒトFc定常領域をコードしている遺伝子の対応部分に置換する。また、キメラ抗体は、マウスV領域をコードしているDNAがヒト定常領域をコードしているDNAにライゲートされ得る組換えDNA手法によっても作出され得る。Better et al.,Science,1988,240:1041−1043。Liu et al.PNAS,1987 84:3439−3443。Liu et al.,J.Immunol.,1987,139:3521−3526。Sun et al.PNAS,1987,84:214−218。Nishimura et al.,Canc.Res.,1987,47:999−1005。Wood et al.Nature,1985,314:446−449。Shaw et al.,J.Natl.Cancer Inst.,1988,80:1553−1559。国際特許出願国際公開第1987002671号及び同第86/01533号。欧州特許出願第184,187号;同第171,496号;同第125,023号;及び同第173,494号。米国特許第4,816,567号。
【0077】
可変領域及びCDR
マウス2C10抗体及び特定のヒト化抗CD40抗体の重鎖可変領域、軽鎖可変領域及びCDRを表1に示す。
【0079】
一部の特定の実施形態では、該抗体又はその抗原結合部分は、配列番号:11、19、20、21、24、25及び26のいずれかに示す重鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むものである。
【0080】
一部の特定の実施形態では、該抗体又はその抗原結合部分は、配列番号:12、22、23、27、28及び29のいずれかに示す軽鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むものである。
【0081】
一部の特定の実施形態では、該抗体又はその抗原結合部分は各々、配列番号:11、19、20、21、24、25及び26のいずれかに示す重鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号:12、22、23、27、28及び29に示す軽鎖可変領域のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域の両方を含むものである。
【0082】
該抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域は、2C10抗体の重鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:13、14、15に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一の1つ、2つ、3つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR)を含むものであり得る。
【0083】
該抗体又はその抗原結合部分の軽鎖可変領域は、2C10抗体の軽鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:16、17、18に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一の1つ、2つ、3つ又はそれ以上のCDRを含むものであり得る。
【0084】
本発明の抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域は、2C10抗体の重鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:13、14、15に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一の1つ、2つ、3つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR)を含むものであり得、該抗体又はその抗原結合部分の軽鎖可変領域は、2C10抗体の軽鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:16、17、18に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一の1つ、2つ、3つ又はそれ以上のCDRを含むものであり得る。
【0085】
該抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域は、2C10抗体の重鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:13、14、15に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一の3つのCDRを含むものであり得る。
【0086】
一実施形態では、該抗体又はその抗原結合部分の軽鎖可変領域は、2C10抗体の軽鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:16、17、18に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一の3つのCDRを含むものである。
【0087】
一実施形態では、該抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域は、2C10抗体の重鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:13、14、15に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一の3つのCDRを含むものであり、該抗体又はその抗原結合部分の軽鎖可変領域は、2C10抗体の軽鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:16、17、18に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一の3つのCDRを含むものである。
【0088】
一部の特定の実施形態では、該抗体又はその抗原結合部分の重鎖可変領域は、2C10抗体の重鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:13、14、15に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と同一の3つのCDRを含むものであり、該抗体又はその抗原結合部分の軽鎖可変領域は、2C10抗体の軽鎖可変領域のCDR(それぞれ配列番号:16、17、18に示すCDR1、CDR2及びCDR3)と同一の3つのCDRを含むものである。
【0089】
本開示には、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、それぞれ抗体2C10の重鎖可変領域(配列番号:11)及び軽鎖可変領域(配列番号:12)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一のアミノ酸配列を有するものである抗体も包含される。
【0090】
関連する実施形態では、抗CD40抗体又はその抗原結合部分は、例えば、2C10の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のCDRを含むものである。
【0091】
一実施形態では、該抗体又はその抗原結合部分は、2C10抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域(それぞれ配列番号:11と配列番号:12)と同一の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むものである。
【0092】
種々の実施形態において、該抗体又はその抗原結合部分は、2C10抗体が結合するエピトープと重複するエピトープに特異的に結合するもの、又は2C10抗体が結合するエピトープと少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%もしくは約100%同一のエピトープに特異的に結合するものである。該エピトープは配列番号:6の配列内に存在しているものであり得るか、又は配列番号:6のアミノ酸8〜40の配列内に存在しているものであり得る
一部の特定の実施形態では、表1のCDRに相当するCDRは配列バリエーションを有するものである。例えば、CDRの1、2 3、4、5、6、7もしくは8個の残基又は全残基の20%未満、30%未満もしくは約40%未満が置換されているか、又は欠失しているCDRが、CD40に結合する抗体(又はその抗原結合部分)内に存在し得る。
【0093】
また、特定のアミノ酸が置換、欠失又は付加されている抗体又はその抗原結合部分も本開示の範囲に含まれる。このような改変は、結合活性などのペプチドの生物学的特性に対して実質的な効果を有しないものである。例えば、抗体は、例えば抗原に対する結合を改善するためにフレームワーク領域内にアミノ酸置換を有するものであり得る。別の例では、選択された少数のアクセプターフレームワーク残基が対応するドナーアミノ酸で置き換えられ得る。ドナーフレームワークは、成熟又は生殖細胞系列のヒト抗体フレームワーク配列又はコンセンサス配列であり得る。表現型においてサイレントなアミノ酸置換をどのようにして行なうかに関する手引きは、Bowie et al.,Science,247:1306−1310(1990).Cunningham et al.,Science,244:1081−1085(1989).Ausubel(ed.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.(1994).T.Maniatis,E.F.Fritsch and J.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989).Pearson,Methods Mol.Biol.243:307−31(1994).Gonnet et al.,Science 256:1443−45(1992)に示されている。
【0094】
本発明のペプチドは、例えば、約30%未満、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%又は約1%のアミノ酸残基が置換されているか又は欠失しているが本質的に同じ免疫学的特性、例えば限定されないがCD40に対する結合を保持している本明細書に開示した抗体又はその抗原結合部分の機能的に活性なバリアントであってもよい。
【0095】
該抗体又はその抗原結合部分には、生物学的活性、例えば、CD40などの抗原の結合を示すペプチドバリアント、ペプチドアナログ、ペプチドオルソログ、ペプチドホモログ及びペプチド誘導体もまた包含され得る。該ペプチドは、1個以上のアミノ酸アナログ(例えば、天然に存在しないアミノ酸、無関連の生物学的系にのみ天然に存在するアミノ酸、哺乳動物の系に由来する修飾アミノ酸など)を含有しているもの、置換型結合を有するペプチド並びに当該技術分野で知られた他の修飾型であり得る。
【0096】
該抗体又はその抗原結合部分を誘導体化してもよく、別の機能性分子に連結させてもよい。例えば、抗体は、1種類以上の他の分子実体、例えば、別の抗体、検出可能な薬剤、免疫抑制薬、細胞毒性剤、医薬用薬剤、別の分子との会合を媒介し得るタンパク質もしくはペプチド(例えば、ストレプトアビジンコア領域もしくはポリヒスチジンタグ)、アミノ酸リンカー、シグナル配列、免疫原性担体、又はタンパク質の精製に有用なリガンド、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ、及びブドウ球菌のプロテインAに機能的に連結され得る(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性相互作用などによって)。細胞毒性剤としては、放射性同位体、化学療法剤、及び毒素、例えば細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素活性毒素、並びにその断片が挙げられ得る。かかる細胞毒性剤は、本開示のヒト化抗体に標準的な手順を用いてカップリングされ、例えば、該抗体での治療が指示された患者を処置するために使用され得る。
【0097】
一例の型の誘導体化タンパク質は、(同じ型又は異なる型の)2種類以上のタンパク質を架橋させることにより作製されるものである。好適な橋かけ剤としては、ヘテロ二官能性であり、適切なスペーサーによって隔離された2つの相違する反応性基を有するもの(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)又はホモ二官能性を有するもの(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)が挙げられる。タンパク質を誘導体化させ(又は標識し)得る有用な検出可能な薬剤としては、蛍光性薬剤、種々の酵素、補欠分子族、発光性物質、生物発光性物質、及び放射性物質が挙げられる。非限定的で例示的な蛍光性の検出可能な薬剤としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、及びフィコエリトリンが挙げられる。また、タンパク質又は抗体を、検出可能な酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼなどを用いて誘導体化してもよい。また、タンパク質を、補欠分子族(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチン)を用いて誘導体化してもよい。
【0098】
別の実施形態では、ヒト化抗CD40抗体又はその断片を標識なしで使用し、ヒト化抗CD40抗体又はその断片に結合する標識抗体を用いて検出する。
【0099】
抗体断片
該抗体は完全長であってもよく、抗原結合部分を有する該抗体の断片(1つ又は複数)を含むもの、例えば限定されないが、Fab、F(ab’)2、Fab’、F(ab)’、Fv、単鎖Fv(scFv)、二価scFv(bi−scFv)、三価scFv(tri−scFv)、Fd、dAb断片(例えば、Ward et al.,Nature,341:544−546(1989))、単離CDR、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体であってもよい。また、組換え方法又は合成リンカーを用いて抗体断片を連接することにより作製される一本鎖抗体も本開示に包含される。Bird et al.Science,1988,242:423−426。Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1988,85:5879−5883。
【0100】
抗体のパパイン消化により「Fab」断片と称される2つの同一の抗原結合断片が生じ、各々は1つの抗原結合部位を有し、残部は「Fc」断片であり、その名称は容易に結晶化する能力を反映している。ペプシン処理によりF(ab’)
2断片が生じ、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋させる能力を有する。
【0101】
Fvは、完全な抗原結合部位を含有している最小限の抗体断片である。一実施形態では、2つの鎖のFv種は、堅固な非共有結合状態の1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなるものである。単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが柔軟性のペプチドリンカーにより、軽鎖と重鎖が2つの鎖のFv種のものと同様の「二量体」構造の状態に会合し得るように共有結合され得る。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してV
H−V
L二量体の表面上に抗原結合部位を画定するのはこの構成においてである。合わせて6つのCDRが該抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(すなわち抗原に特異的な3つのCDRのみを含む片方のFv)であっても抗原を認識して結合する能力を有するが、完全な結合部位より親和性は低い。
【0102】
Fab断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインを含んでおり、また、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含んでいるものである。Fab’断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数個の残基が付加されており、抗体のヒンジ領域の1つ以上のシステインを含むことによってFab断片と異なっている。Fab’−SHは、定常ドメインの(1又は複数の)システイン残基が遊離チオール基を有しているFab’の表示である。F(ab’)
2抗体断片は、元々は、間にヒンジシステインを有するFab’断片ペアとして作製されたものである。また、抗体断片の他の化学カップリングも知られている。
【0103】
単鎖Fv又はscFv抗体断片は抗体のV
H及びV
Lドメインを含み、ここで、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、scFvポリペプチドはさらに、V
HドメインとV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーを含んでおり、これによりscFvが抗原結合のための所望の構造を形成することが可能である。scFvの概説については、例えば、Pluckthuen,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer−Verlag,New York,1994),pp.269−315を参照のこと。
【0104】
ダイアボディは2つの抗原結合部位を有する抗体断片であり、該断片は、重鎖可変ドメイン(V
H)が軽鎖可変ドメイン(V
L)に同じポリペプチド鎖内で連結されたもの(V
H−V
L)を含むものである。同じ鎖上のこの2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、該ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合せざるを得ず、2つの抗原結合部位が作出される。ダイアボディは二価又は二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al.,Nat.Med.9:129−34,2003;及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−8,1993.にさらに充分に記載されている。また、トリアボディ及びテトラボディもHudson et al.,Nat.Med.9:129−34,2003に記載されている。
【0105】
抗体断片は、従来の手段、例えば酵素での消化によって、又は組換え手法によって作製され得る。一部の特定の状況では、完全体の抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。小サイズの断片の方が迅速な排出か可能であり、充実性腫瘍への到達の改善がもたらされる場合があり得る。一部の特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129−134,2003を参照されたい。
【0106】
抗体断片の作製のための種々の手法が開発されている。従来では、このような断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解性消化によって誘導されていた(例えば、Morimoto et al.,J.Biochem.Biophys.Methods 24:107−17,1992;及びBrennan et al.,Science 229:81−3,1985参照)。しかしながら、現在では、このような断片は組換え宿主細胞によって直接生成させることができる。Fab、Fv及びScFv抗体断片はすべて、大腸菌(E.coli)で発現させて分泌させることができ、したがって、大量のこのような断片を容易に作製することが可能である。抗体断片は、抗体ファージライブラリーから単離されるものであってもよい。あるいはまた、Fab’−SH断片を大腸菌(E.coli)から直接回収し、化学カップリングさせてF(ab’)
2断片を形成してもよい(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−7,1992)。別のアプローチでは、F(ab’)
2断片を組換え宿主細胞培養物から直接単離する。長いインビボ半減期を有し、サルベージ受容体結合性エピトープ残基を含むFab及びF(ab’)
2断片が米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の作製のための他の手法は当業者に自明であろう。
【0107】
本発明の抗体又はその抗原結合部分は少なくとも1つの定常ドメイン、例えば(a)IgGの定常ドメイン;(b)IgAの定常ドメインなどを含むものであり得る。
【0108】
あらゆる抗体のアイソタイプ、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(IgA1、IgA2)、IgD又はIgEが本開示に包含される。該抗体又はその抗原結合部分は哺乳動物(例えば、マウス、ヒト)の抗体又はその抗原結合部分であり得る。該抗体の軽鎖はκ又はλ型のものであり得る。代替的なヒト化抗CD40抗体は、1種類より多くの免疫グロブリンクラス又はアイソタイプに由来する配列を含むものであり得、所望のエフェクター機能を最適化するための特定の定常ドメインの選択は当該技術分野の通常の技能の範囲内である。
【0109】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は単一特異性であっても二重特異性であっても多重特異性であってもよい。多重特異性もしくは二重特異性抗体又はその断片は、1種類の標的ポリペプチド(例えば、CD40)の異なるエピトープに特異的なものであってもよく、1種類より多くの標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメイン(例えば、CD40及び移植拒絶反応又は自己免疫疾患に関連する他の抗原に特異的な抗原結合ドメイン)を含むものであってもよい。一実施形態では、多重特異性抗体又はその抗原結合部分は少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むものであって、該可変ドメインの各々が別々の抗原又は同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合し得るものである。Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60−69.Kufer et al.,2004、Trends Biotechnol.22:238−244。本発明の抗体を別の機能性分子、例えば別のペプチド又はタンパク質に連結させてもよく、又はこれらと共発現させてもよい。例えば、該抗体又はその断片を1種類以上の他の分子実体、例えば別の抗体又は抗体断片に機能的に連結させ(例えば、化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合又はその他の手段によって)、第2の結合特異性を有する二重特異性抗体又は多重特異性抗体を作製してもよい。例えば、本開示には、免疫グロブリンの一方のアームがCD40に特異的であり、該免疫グロブリンの他方のアームが第2の治療標的に特異的であるか、又は治療性部分、例えば免疫抑制薬にコンジュゲートされている二重特異性抗体が包含される。
【0110】
抗体の作製
本開示により、CD40に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分を作製するための方法を提供する。
【0111】
例えば、非ヒト動物を、CD40を含む組成物で免疫処置し、次いで特異的抗体を該動物から単離する。該方法にさらに、CD40に対する該抗体の結合を評価することを含めてもよい。
【0112】
一実施形態では、本開示により、CD40に特異的に結合する抗体を発現するハイブリドーマを作製するための方法を提供する。該方法は、以下の工程:動物を、CD40又はその断片を含む組成物で免疫処置すること;脾細胞を該動物から単離すること;該脾細胞からハイブリドーマを作製すること;及びCD40に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択することを含むものである。Kohler and Milstein,Nature,256:495,1975。Harlow,E.and Lane,D.Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988。
【0113】
一実施形態では、CD40を、マウスを腹腔内又は静脈内にて免疫処置するために使用する。1回以上の追加免疫を行なってよく、行なわなくてもよい。血漿中の抗体の力価が、例えば、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)又はフローサイトメトリーによってモニタリングされ得る。充分な抗CD40抗体力価を有するマウスが融合に使用される。マウスに、致死させ脾臓を取り出す3日前に抗原で追加免疫してもよく、しなくてもよい。マウスの脾細胞を単離し、PEGを用いてマウス骨髄腫細胞株と融合させる。次いで、得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングする。細胞をプレーティングし、次いで選択培地中でインキュベートする。次いで、個々のウェルからの上清みをELISAにより、ヒト抗CD40モノクローナル抗体についてスクリーニングする。抗体分泌ハイブリドーマを再度プレーティングし、再度スクリーニングし、依然として抗CD40モノクローナル抗体について陽性である場合、限界希釈によってサブクローニングされ得る。
【0114】
CD40の免疫原性を高めるために使用され得るアジュバントとしては、ペプチド又はペプチドの組合せに対する免疫応答を高める作用をする任意の薬剤(1種類又は複数種)が挙げられる。アジュバントの非限定的な例としては、ミョウバン、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、MF59(4.3%w/vのスクアレン,0.5%w/vのポリソルベート80(Tween 80),0.5%w/vのソルビタントリオレエート(Span 85))、CpG含有核酸、QS21(サポニンアジュバント)、MPL(モノホスホリルリピドA)、3DMPL(3−O−脱アシル化MPL)、Aquillaエキス、ISCOMS(例えば、Sjolander et al.(1998)J.Leukocyte Biol.64:713;国際公開第90/03184号;国際公開第96/11711号;国際公開第00/48630号;国際公開第98/36772号;国際公開第00/41720号;国際公開第06/134423号及び国際公開第07/026190号参照)、LT/CT変異型、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)マイクロ粒子、Quil A、インターロイキン、フロイント、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11637,ノル−MDPと称される)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−dip−アルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A, MTP−PEと称される)、並びにRIBI(これは、細菌から抽出された3種類の成分、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコール酸及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)が2%スクアレン/Tween 80乳剤中に含有されたものである)が挙げられる。
【0115】
免疫処置される動物は、免疫原を投与すると回収可能な抗体が生成し得る任意の動物、限定されないが、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、ヤギ、ウマ、サル、ヒヒ及びヒトなどであり得る。一態様では、宿主はトランスジェニックであってヒト抗体を生成するもの、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子のセグメントを発現するマウスである。米国特許第8,236,311号;同第7,625,559号及び同第5,770,429号(これらの各々の開示内容は引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)。Lonberg et al.,Nature 368(6474):856−859,1994。Lonberg,N.,Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101,1994。Lonberg,N.and Huszar,D.,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93,1995。Harding,F.and Lonberg,N.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,764:536−546,1995。
【0116】
本発明の抗体又はその一部分は、所望の抗体の軽鎖及び重鎖(又はその一部分)をコードしているDNAで形質転換した宿主細胞によって作製することができる。該抗体(又はその一部分)は、このような培養上清み及び/又は細胞から標準的な手法を用いて単離及び精製することができる。例えば、宿主細胞は、抗体の軽鎖、重鎖又は両方をコードしているDNAで形質転換され得る。また、組換えDNA技術を使用し、軽鎖及び重鎖のいずれか又は両方の少なくとも一部分をコードしているDNAの結合に必要でない一部分又は全部、例えば定常領域を除去してもよい。
【0117】
また、本発明は、CD40に特異的に結合する少なくとも1種類の本発明の抗体又はその抗原結合部分をコードしている核酸又はポリヌクレオチドも包含している。該核酸を細胞内で発現させ、本発明の抗体又はその抗原結合部分を産生させてもよい。本開示の単離された核酸又はポリヌクレオチドは、配列番号:11〜29のいずれかと少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一のペプチドをコードしている少なくとも1つの配列を含むものである。
【0118】
本発明ではまた、配列番号:11〜29のいずれかと少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%同一のペプチドをコードしている少なくとも1種類の核酸又はポリヌクレオチドを含む発現ベクターを取り上げて記載する。
【0119】
また、本発明の抗体又はその抗原結合部分の機能的に活性なバリアントをコードしている核酸分子も本開示に包含される。このような核酸分子は、本発明の任意の抗体又はその抗原結合部分をコードしている核酸と、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー又は超高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし得る。ハイブリダイゼーション反応を行なうための手引きは、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.6.3.1−6.3.6,1989(これは引用により本明細書に組み込まれる)を見るとよい。本明細書でいう特異的ハイブリダイゼーション条件は以下のとおり:(1)中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃で6×SSCの後、0.2×SSC,0.1%SDS中で60℃にて1回以上の洗浄;(2)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:約45℃で6×SSCの後、0.2×SSC,0.1%SDS中で65℃にて1回以上の洗浄;及び(3)超高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件:65℃で0.5Mリン酸ナトリウム,7%SDSの後、0.2×SSC,1%SDSで65℃にて1回以上の洗浄である。
【0120】
本発明の抗体又はその抗原結合部分をコードしている核酸又はポリヌクレオチドは、適切な発現系内で発現され得る発現ベクター内に導入され、その後、発現された抗体又はその抗原結合部分の単離又は精製が行なわれ得る。本発明の抗体又はその抗原結合部分をコードしている核酸を無細胞翻訳系内で翻訳させてもよい。米国特許第4,816,567号。Queen et al.,Proc Natl Acad Sci USA、86:10029−10033(1989)。
【0121】
本発明の核酸は種々の適切な細胞内で、例えば、原核生物細胞及び真核生物細胞、例えば、細菌細胞,(例えば、大腸菌(E.coli))、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞内で発現させることができる。いくつかの哺乳動物細胞株が当該技術分野で知られており、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な不死化細胞株が挙げられる。該細胞の非限定的な例としては、哺乳動物起源又は哺乳動物様の特徴のあらゆる細胞株、例えば限定されないが、サル腎臓細胞(COS、例えば、COS−1、COS−7)、HEK293、乳児ハムスター腎臓(BHK、例えば、BHK21)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、NS0、PerC6、BSC−1、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、SP2/0、HeLa、マディン・ダービーウシ腎臓(MDBK)、骨髄腫及びリンパ腫細胞の親細胞、誘導体及び/又は改変バリアントが挙げられる。改変バリアントとしては、例えば、グリカンプロフィール修飾型及び/又は部位特異的組込み部位誘導体が挙げられる。
【0122】
また、本開示により、本明細書に記載の核酸を含む細胞を提供する。該細胞はハイブリドーマであってもトランスフェクタントであってもよい。本発明の抗体又はその抗原結合部分は種々の細胞内で発現させることができる。該細胞の型は本明細書において論考している。
【0123】
例えばヒト化抗体又はその抗原結合部分を作製するために組換え手法を使用する場合、該抗体又はその一部分は、細胞内で、細胞周辺腔内で、又は培地中に直接分泌させて生成させ得る。抗体を細胞内で産生させる場合、第1工程として、細胞が、タンパク質を放出させるために破壊され得る。宿主細胞又は溶解断片のいずれかである粒状残屑は、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去され得る。Carter et al.,1992,Bio/Technology 10:163−167には、大腸菌(E.coli)の細胞周辺腔に分泌された抗体を単離するための手順が記載されている。簡単には、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間にわたって解凍する。細胞残屑は遠心分離によって除去され得る。抗体を培地中に分泌させる場合では、かかる発現系の上清みがまず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて濃縮され得る。宿主細胞から抗体を単離するためには、さまざまな方法が使用され得る。
【0124】
細胞で調製された抗体又はその一部分は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製され得、アフィニティークロマトグラフィーは典型的な精製手法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの好適性は、抗体に存在させる免疫グロブリンFcドメイン(あれば)の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖がベースの抗体を精製するために使用され得る(例えば、Lindmark et al.,1983 J.Immunol.Meth.62:1−13参照)。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨される(例えば、Guss et al.,1986 EMBO J.5:1567−1575参照)。親和性リガンドを結合させるマトリックスは、たいていはアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。機械的に安定なマトリックス、例えば細孔制御ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンでは、アガロースで得られ得るものより速い流速及び短い加工処理時間が可能である。抗体がC
H3ドメインを含むものである場合は、Bakerbond ABX.TM.樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。また、回収対象の抗体に応じて、タンパク質精製のための他の手法、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンセファロース.TM.でのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アルミニウム沈殿も利用可能である。
【0125】
(1回又は複数の)予備精製工程(あれば)後、目的の抗体及び夾雑物を含む混合物は、約2.5〜4.5のpHの溶出バッファーが使用され、典型的には低塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)で行なわれる低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供され得る。
【0126】
ハイブリドーマ又は好ましくは高い親和性でCD40に結合する抗体を産生する他の細胞は次いでサブクローニングされ、さらに特性評価され得る。各ハイブリドーマ又は細胞からの、親細胞の反応性を保持している(ELISAにより)1つのクローンが次いで、細胞バンクの作製のため、及び抗体精製のために選択され得る。
【0127】
あるいはまた、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、当該技術分野でよく知られた固相手順によって合成され得る。Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach by E.Atherton and R.C.Sheppard,published by IRL at Oxford University Press(1989)。Methods in Molecular Biology,Vol.35:Peptide Synthesis Protocols(ed.M.W.Pennington and B.M.Dunn),chapter 7.Solid Phase Peptide Synthesis,2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL(1984)。G.Barany and R.B.Merrifield,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,editors E.Gross and J.Meienhofer,Vol.1 and Vol.2,Academic Press,New York,(1980),pp.3−254。M.Bodansky,Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,Berlin(1984)。
【0128】
2C10によって認識されるCD40エピトープに対するさらなる抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナル、多重特異性又は単一特異性抗体)は、例えば、抗体作製のための適切な方法を用いて作製することができる。一例では、2C10抗体によって認識されるエピトープのコード配列を、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)とのC末端融合体として発現させる(Smith et al.,Gene 67:31−40,1988)。この融合タンパク質は、グルタチオン−セファロースビーズで精製され、グルタチオンを用いて溶出され、トロンビンを用いて(改変切断部位で)切断され、ウサギの免疫処置のために精製される。一次免疫処置は完全フロイントアジュバントを用いて、その後の免疫処置は不完全フロイントアジュバントを用いて行なわれる。抗体力価は、ウエスタンブロット及び免疫沈降解析(GST融合タンパク質のトロンビン切断タンパク質断片を使用)によってモニタリングされる。免疫血清は、CNBr−セファロース結合タンパク質を用いてアフィニティー精製される。抗血清の特異性は、一群の無関連GSTタンパク質を用いて測定され得る。
【0129】
GST融合タンパク質の代替又は補助免疫原として、本発明のポリペプチドの比較的固有の免疫原性領域に相当するペプチドを作製し、スカシガイヘモシアニン(KLH)に、導入したC末端リシンを介してカップリングさせてもよい。このようなペプチドの各々に対する抗血清は、BSAにコンジュゲートさせたペプチドで同様にアフィニティー精製され、特異性が、ELISAもしくはウエスタンブロット解析(ペプチドコンジュゲートを使用)又はウエスタンブロットもしくは免疫沈降(GST融合タンパク質として発現させたポリペプチドを使用)によって試験される。
【0130】
あるいはまた、2C10抗体によって認識されるCD40エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体を、標準的なハイブリドーマ技術を用いて調製してもよい(例えば、Kohler et al.,Nature 256:495−7,1975;Kohler et al.,Eur.J.Immunol.6:511−9,1976;Kohler et al.,Eur.J.Immunol.6:292−5,1976;Hammerling et al.,Monoclonal Antibodies and T Cell Hybridomas,Elsevier,NY,1981参照)。作製されたら、モノクローナル抗体も同様に、特異的認識についてウエスタンブロット又は免疫沈降解析によって試験され得る。あるいはまた、モノクローナル抗体は、上記の本発明のポリペプチド及びファージディスプレイライブラリーを用いて調製され得る(Vaughan et al.,Nat.Biotechnol.14:309−14,1996)。
【0131】
エピトープ断片を標準的な手法により、例えば、PCR及びpGEX発現ベクター内への断片のクローニングを用いて作製してもよい。融合タンパク質を大腸菌(E.coli)内で発現させ、グルタチオンアガロースアフィニティーマトリックスを用いて精製する。抗血清の低い親和性又は特異性が問題となる可能性を最小限にするため、各タンパク質について2種類又は3種類のかかる融合体を作製し、各融合体を少なくとも2匹のウサギに注射する。一連の注射によって抗血清が生じ、例えば、少なくとも3回の追加免疫注射が含められ得る。
【0132】
ポリクローナル抗体を大規模に低コストで作製するためには、適切な動物種が選択され得る。ポリクローナル抗体は、例えば、免疫処置したウシの乳汁又は初乳から単離され得る。ウシの初乳には1リットルあたり28gのIgGが含有されており、一方、ウシの乳汁には1リットルあたり1.5gのIgGが含有されている(Ontsouka et al.,J.Dairy Sci.86:2005−11,2003)。また、ポリクローナル抗体は、免疫処置したニワトリの卵の卵黄からから単離することもできる(Sarker et al.,J.Pediatr.Gastroenterol.Nutr.32:19−25,2001)。
【0133】
アッセイ
目的の抗原に対する特異性を確認するため、及び/又は特性を試験するために該抗体又はその抗原結合部分をアッセイするのに、種々の方法が使用され得る。かかるアッセイの実施方法の一例は、米国特許出願公開第2004/0126829号に記載の血清スクリーニングアッセイである。抗CD40抗体は、CD40に対する結合について既知のさまざまな手法によって特性評価され得る。例えば、ELISAでは、マイクロタイタープレートをCD40又はCD40断片(PBS中)でコーティングし、次いで、無関連タンパク質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)(PBSで希釈)を用いてブロックする。CD40で免疫処置したマウス由来の血漿の希釈液(又は抗CD40抗体を含有する溶液)を各ウェルに添加し、インキュベートする。プレートを洗浄し、次いで、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)にコンジュゲートさせた二次抗体とともにインキュベートする。洗浄後、プレートで該酵素の基質(例えば、ABTS)を用いて発色させ、特定のODで解析する。他の実施形態では、選択されたモノクローナル抗体が独自のエピトープに結合するかどうかを調べるため、該抗体がビオチン化され得、次いで、これが、ストレプトアビジン標識プローブを用いて検出され得る。抗CD40抗体を、CD40との反応性についてウエスタンブロッティングによって試験してもよい。
【0134】
また、本開示の抗体又はその抗原結合断片、バリアントもしくは誘導体は、抗原に対する結合親和性に関して説明又は明記され得る。抗原に対する抗体の親和性は、任意の適切な方法を用いて実験により測定され得る(例えば、Berzofsky et al.,“Antibody−Antigen Interactions,”In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,N.Y.(1984);Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,N.Y.(1992);及び本明細書に記載の方法参照)。特定の抗体−抗原相互作用の親和性の測定値は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定した場合、異なる場合があり得る。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、K
D、K
a、K
d)の測定は好ましくは、抗体及び抗原の標準化溶液並びに標準化バッファーを用いて行なわれる。
【0135】
本発明の抗体又はその抗原結合部分はCD40に、約10
−7M未満、約10
−8M未満、約10
−9M未満、約10
−10M未満、約10
−11M未満、約10
−12M未満、約10
−7M〜約10
−12M、約10
−8M〜約10
−11M、約10
−9M〜約10
−10M又は約10
−8M〜約10
−12Mの解離定数(K
D)で特異的に結合するものである。
【0136】
また、抗体(又はその断片)がCD154に対するCD40の結合をブロックする能力、又はCD40媒介性応答を阻害もしくは低減させる能力を試験するためのアッセイを使用してもよい。
【0137】
本明細書で用いる場合、用語「結合を阻害する」及び「結合をブロックする」(例えば、CD40に対するCD154の結合の阻害/ブロック)は互換的に用いており、一部阻害/ブロックと完全な阻害/ブロックの両方を包含している。また、阻害及びブロックは、本明細書に開示の抗CD40抗体又はその一部分と接触している場合の、抗CD40抗体と接触していないリガンドと比べたときの、CD40に対するCD154の結合の任意の測定可能な低減、例えば、CD40に対するCD154の少なくとも約10%,20%、30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のブロックを包含していることも意図する。
【0138】
一実施形態では、B細胞の活性化又はその阻害は、CD23、CD80、CD86及びCD20+細胞上の任意のさらなる適切なマーカーから選択される1種類以上のマーカーの発現を測定することにより測定され得る。
【0139】
本発明の抗体又はその断片は、T細胞媒介性抗体応答に対する効果を特徴とするものであり得る。例えば、該抗体又はその断片は、該抗体又はその抗原結合部分を哺乳動物に約1mg/kg体重〜約50mg/kg体重、約2mg/kg体重〜約40mg/kg体重、約3mg/kg体重〜約30mg/kg体重、約5mg/kg体重〜約20mg/kg体重、約8mg/kg体重〜約13mg/kg体重の範囲の投薬量、約1mg/kg体重、約2mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約15mg/kg体重、約20mg/kg体重、約25mg/kg体重、約30mg/kg体重、約35mg/kg体重、約40mg/kg体重、約50mg/kg体重、約60mg/kg体重、約70mg/kg体重又は約80mg/kg体重で投与した場合、該哺乳動物におけるIgM及び/又はIgGの産生を阻害し得るものである。
【0140】
本発明の抗体又はその断片は、移植後の移植片の生着の長期化に対する効果を特徴とするものであり得る。本発明の抗体又はその断片は、単独又は1種類以上の他の免疫抑制薬との組合せで、移植片の生着を約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超又は約90%超、約2倍超、約5倍超、約10倍超、約20倍超、約30倍超又は約40倍超、長期化させ得るものである。例えば、本発明の抗体又はその断片は膵島同種移植片の生着を長期化させ得るものである。
【0141】
一部の特定の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合断片は:a)CD154に対するCD40の結合をブロックし得るものである;c)抗原提示細胞(例えば、B細胞、樹状細胞、マクロファージなど)の活性化をブロックし得るものである;d)B細胞の枯渇を誘導するものであってもそうでなくてもよい;e)抗原提示細胞からのサイトカイン放出を阻害もしくは低減するものであってもそうでなくてもよい;f)腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するものであってもそうでなくてもよい;g)腫瘍細胞の増殖を阻害するものであってもそうでなくてもよい;h)腫瘍細胞を死滅させるものであってもそうでなくてもよい;i)抗腫瘍T細胞応答を刺激するものであってもそうでなくてもよい;及び/又はj)確立された腫瘍を縮小させるものであってもそうでなくてもよい。本明細書に記載の抗体は、これらの属性又は活性の任意の1つ以上の組合せを有するもの、又は誘導するものであり得る。Tai,et al.,Cancer Res.2005,1;65(13):5898−906;Luqman et al.,Blood 112:711−720,2008。また、本明細書に記載の抗体又はその一部分は、CD40インターナリゼーション、インビトロ及びインビボでの有効性などに対する効果について試験され得る。かかるアッセイは、当業者に知られた充分に確立されたプロトコル(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,NY,N.Y.);Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley & Sons,NY,N.Y.)参照;又は市販のキットを用いて行なわれ得る。
【0142】
処置対象の病状
本発明の抗体又はその抗原結合部分は、インビトロ及びインビボで治療的、予防的及び/又は診断的な有用性を有する。例えば、細胞を培養培地中でインビトロで培養し、抗CD40抗体又はその断片と接触させることができる。該抗体又はその抗原結合部分は被験体において、インビボ(例えば、治療的又は予防的な)プロトコルの一部として投与され得る。インビボでの実施形態では、接触工程は被験体内で行なわれ、抗CD40抗体又はその一部分を被験体に、該被験体において該抗体又はその一部分がCD40に結合することを可能にするのに有効な条件下で投与することを含む。該抗体又はその抗原結合部分は、移植拒絶反応の尤度を下げるか、又は移植拒絶反応までの持続時間を長くし、免疫抑制を誘導するため、又は自己免疫性障害を処置するために投与され得る。
【0143】
本明細書に記載の抗体又は抗体断片は、免疫抑制が所望される任意の状況(例えば、移植拒絶反応又は自己免疫性障害)において使用され得る。このような抗体は、移植拒絶反応の処置、例えば、宿主が特定の移植に拒絶反応を示す尤度の低下又は拒絶反応が起こるまでの時間の長期化に特に有用である。本明細書に記載の抗体又は抗体断片は、移植に適した任意の臓器又は任意の組織の移植とともに使用され得る。非限定的で例示的な臓器としては心臓、腎臓、肺、肝臓、膵臓、腸及び胸腺が挙げられ;非限定的で例示的な組織としては骨、腱、角膜、皮膚、心臓の弁、静脈及び骨髄が挙げられる。また、該抗体及び抗体断片は自己免疫性障害を処置するためにも使用され得る。一実施形態では、自己免疫性障害は、自己抗体の存在と関連しているもの、自己抗体の存在によって引き起こされるものであり得る。本発明の抗体又はその断片で処置され得る自己免疫疾患としては、限定されないが、全身性エリテマトーデス(SLE)、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー症候群、食道運動障害、強指症及び毛細血管拡張症)、オプソクローヌス、炎症性ミオパチー(例えば、多発性筋炎、皮膚筋炎及び封入体筋炎)、全身性強皮症、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病(例えば、グルテン過敏性腸疾患)、疱疹状皮膚炎、ミラー・フィッシャー症候群、急性運動性軸索型ニューロパチー(AMAN)、伝導ブロックを伴う多巣性運動ニューロパチー、自己免疫性肝炎、抗リン脂質抗体症候群、ウェゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、関節リウマチ、慢性自己免疫性肝炎、硬化性筋炎、重症筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、傍腫瘍性小脳変性症、スティッフパーソン症候群、辺縁系脳炎、アイザックス症候群、シデナム舞踏病、小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経疾患(PANDAS)、脳炎、1型真性糖尿病並びに視神経脊髄炎が挙げられる。他の自己免疫性障害としては、悪性貧血、アジソン病、乾癬、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、シェーグレン症候群、紅斑性狼瘡(例えば、円板状紅斑性狼瘡、薬物誘発性紅斑性狼瘡及び新生児紅斑性狼瘡)、多発性硬化症並びに反応性関節炎が挙げられる。
【0144】
本開示の方法を用いて処置され得るさらなる障害としては、例えば、多発性筋炎、皮膚筋炎、多発性内分泌腺不全、シュミット症候群、自己免疫性ブドウ膜炎、副腎炎、甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、胃萎縮、慢性肝炎、ルポイド肝炎、アテローム性動脈硬化症、初老期認知症、脱髄疾患、亜急性皮膚紅斑性狼瘡、副甲状腺機能低下症、ドレスラー症候群、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、円形脱毛症、類天疱瘡、強皮症、全身性進行性硬化症、成人発症型真性糖尿病(例えば、II型糖尿病)、男性及び女性の自己免疫性不妊症、強直性脊椎関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、混合結合組織病、結節性多発性動脈炎、全身性壊死性血管炎、若年発症型関節リウマチ、糸球体腎炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、シャーガス病、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、反復流産、抗リン脂質抗体症候群、農夫肺、多形性紅斑、開心後症候群、クッシング症候群、自己免疫性慢性活動性肝炎、鳥飼病、アレルギー性疾患、アレルギー性脳脊髄炎、中毒性表皮壊死症、脱毛症、アルポート症候群、肺胞炎、アレルギー性肺胞炎、線維化性肺胞炎、間質性肺疾患、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、輸血副作用、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、高安動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞性動脈炎、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、湿疹、リンパ腫様肉芽腫症、ベーチェット病、カプラン症候群、川崎病、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、フックス毛様体炎、IgA腎症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶反応、ヒト免疫不全ウイルス感染、エコーウイルス感染、心筋症、アルツハイマー病、パルボウイルス感染、風疹ウイルス感染、ワクチン接種後症候群、先天性風疹感染、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、腎細胞癌、多発性骨髄腫、イートン・ランバート症候群、再発性多発性軟骨炎、悪性黒色腫、クリオグロブリン血症、ワルデンストレームマクログロブリン血症、エプスタイン−バーウイルス感染、おたふく風邪、エヴァンズ症候群、並びに自己免疫性腺機能不全が挙げられる。
【0145】
別の実施形態では、本発明の抗体又はその断片は、CD40の発現と関連している種々の障害の処置において使用され得る。
【0146】
障害は、本発明の抗体又はその断片での処置の恩恵を被り得る任意の病状であり得る。これには慢性及び急性の障害又は疾患が包含され、哺乳動物の対象障害の素因をもたらす病理学的状態も包含される。本明細書における処置対象の障害の非限定的な例としては、自己免疫疾患、免疫学的障害、炎症性障害、癌、血液悪性腫瘍、良性及び悪性の腫瘍、白血病、リンパ系の悪性腫瘍、並びに血管系の障害が挙げられる。
【0147】
本明細書で用いる場合、用語「CD40関連障害」又は「CD40関連疾患」は、CD40発現細胞の修飾又は消失が示される病状をいう。このようなものは、異常な増殖を示すCD40発現細胞又は癌性もしくは悪性の増殖と関連しているCD40発現細胞を含むものである。CD40関連障害としては、限定されないが、免疫機構の疾患及び障害、例えば、自己免疫性障害及び炎症性障害が挙げられる。かかる病状としては、限定されないが、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、肺の炎症、喘息、及び特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が挙げられる。CD40抗原の異常な発現を示す癌のより具体的な例としては、Bリンパ芽球様細胞、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞リンパ腫、カポジ肉腫、骨肉腫、上皮及び内皮の腫瘍、膵臓、肺、乳房、卵巣、結腸、前立腺、頭頸部、皮膚(黒色腫)、膀胱及び腎臓の癌が挙げられる。また、かかる障害としては、限定されないが、白血病、リンパ腫、例えばB細胞リンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症;充実性腫瘍、例えば肉腫、例えば、骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性黒色腫、腺癌、例えば、卵巣腺癌、カポジ肉腫/カポジ腫瘍及び扁平上皮癌も挙げられる。米国特許第9,090,696号。
【0148】
また、本発明の抗体又はその断片によって処置又は予防され得るCD40発現癌としては、例えば、白血病、例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(例えば、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性もしくは赤白血病)、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病もしくは慢性リンパ性白血病;真性赤血球増加症;リンパ腫(例えば、ホジキン疾患もしくは非ホジキン疾患);多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症;重鎖病;充実性腫瘍、肉腫及び癌など(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、鼻咽腔癌又は食道癌)も挙げられる。
【0149】
また、Bリンパ球(例えば、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、関節リウマチ及びI型糖尿病)、Th1−リンパ球(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核もしくは移植片対宿主病)、又はTh2−リンパ球(例えば、アトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、アトピー性喘息、鼻炎結膜炎、アレルギー性鼻炎、オーメン症候群、全身性硬化症もしくは慢性移植片対宿主病)の障害を処置する方法も包含される。
【0150】
いくつかの実施形態では、免疫学的障害はT細胞媒介性免疫学的障害、例えば、障害と関連している活性化T細胞がCD40を発現しているT細胞障害である。抗CD40抗体又は薬剤は、かかるCD40発現活性化T細胞を枯渇させるために投与され得る。特定の一実施形態では、抗CD40抗体又は薬剤の投与によりCD40発現活性化T細胞は枯渇され得るが、休止T細胞は抗CD40又は薬剤によって実質的に枯渇されない。この状況において、「実質的に枯渇されない」とは、休止T細胞の約60%未満、又は約70%未満又は約80%未満が枯渇されないことを意味する。
【0151】
併用療法
本発明の抗体又はその抗原結合部分は単独で、又は1種類以上の他の治療用薬剤(例えば、第2の治療用薬剤)と併用して投与され得る。いくつかの実施形態では、抗CD40抗体又はその断片を含む医薬組成物はさらに、該抗体又はその断片とコンジュゲートされた状態又はコンジュゲートされていない状態のいずれかである第2の治療用薬剤を含むものであり得る。一実施形態では、該第2の薬剤は別のモノクローナルもしくはポリクローナル抗体又はその抗原結合部分である。別の実施形態では、該第2の薬剤は免疫抑制薬である。第3の実施形態では、該第2の薬剤は細胞毒性剤又は細胞増殖抑制性剤である。第4の実施形態では、該第2の薬剤は、活性化リンパ球、樹状細胞又はCD40発現癌細胞の表面上のCD40以外の受容体又は受容体複合体を標的化し得るものであり得る。
【0152】
かかる併用療法は、病状パラメータ(例えば、症状の重症度、症状の数又は再発頻度)に対して相加効果又は相乗効果を有し得る。
【0153】
本発明の抗CD40抗体又はその断片は第2の治療用薬剤と並行して投与され得る。別の特定の実施形態では、第2の治療用薬剤は、抗CD40抗体又はその断片の投与の前又は後に投与される。
【0154】
本明細書に記載の抗体及び抗体断片を免疫抑制薬との組合せで製剤化又は投与してもよい。免疫抑制薬の例としては、限定されないが、カルシニューリン阻害薬(例えば、シクロスポリンA(Sandimmune(登録商標))、シクロスポリンG タクロリムス(Prograf(登録商標)、Protopic(登録商標)))、mTor阻害薬(例えば、シロリムス(Rapamune(登録商標)、Neoral(登録商標))、テムシロリムス(Torisel(登録商標))、ゾタロリムス及びエベロリムス(Certican(登録商標)))、フィンゴリモド(Gilenya(商標))、マイリオシン、アレムツズマブ(Campath(登録商標)、MabCampath(登録商標)、Campath−1H(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、MabThera(登録商標))、抗CD4モノクローナル抗体(例えば、HuMax−CD4)、抗LFA1モノクローナル抗体(例えば、CD11a)、抗LFA3モノクローナル抗体、抗CD45抗体(例えば、抗CD45RB抗体)、抗CD19抗体(例えば、米国特許公開公報第2006/0280738号参照)、モナバタセプト(Orencia(登録商標))、ベラタセプト、インドリル−ASC(タクロリムス及びアスコマイシンの32−インドールエーテル誘導体)、アザチオプリン(Azasan(登録商標)、Imuran(登録商標))、リンパ球免疫グロブリン及び抗胸腺細胞グロブリン[ウマ](Atgam(登録商標))、ミコフェノール酸モフェチル(Cellcept(登録商標))、ミコフェノール酸ナトリウム(myfortic(登録商標))、ダクリズマブ(Zenapax(登録商標))、バシリキシマブ(Simulect(登録商標))、シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(商標)、Procytox(商標)、Revimmune(商標))、プレドニゾン、プレドニゾロン、レフルノミド(Arava(登録商標))、FK778、FK779、15−デオキシスペルグアリン(DSG)、ブスルファン(Myleran(登録商標)、Busulfex(登録商標))、フルダラビン(Fludara(登録商標))、メトトレキサート(Rheumatrex(登録商標)、Trexall(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、アダリムマブ(Humira(登録商標))、6−メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、15−デオキシスペルグアリン(Gusperimus)、LF15−0195、ブレディニン、ブレキナール、並びにムロモナブ−CD3(Orthoclone(登録商標))が挙げられる。
【0155】
薬剤の免疫抑制活性を評価するための方法は当該技術分野で知られている。例えば、薬理学的介入あり及びなしでの移植臓器のインビボでの生存期間の長さが、免疫応答の抑制の定量的尺度として使用される。また、インビトロアッセイ、例えば、混合リンパ球反応(MLR)アッセイ(例えば、Fathman et al.,J.Immunol.118:1232−8,1977参照);CD3アッセイ(抗CD3抗体(例えば、OKT3)による免疫細胞の特異的活性化)(例えば、Khanna et al.,Transplantation 67:882−9,1999;Khanna et al.(1999)Transplantation 67:S58参照);及びIL−2Rアッセイ(外来的に添加されたサイトカインIL−2による免疫細胞の特異的活性化)(例えば、Farrar et al.,J.Immunol.126:1120−5,1981参照)も使用され得る。
【0156】
シクロスポリンA(CsA;CAS番号59865−13−3;米国特許第3,737,433号)及びそのアナログは免疫抑制薬として使用され得る。免疫抑制活性を示すいくつかの他のシクロスポリン並びにその誘導体及びアナログも知られている。シクロスポリン及びその製剤は、例えば、2004 Physicians’Desk Reference(登録商標)(2003)Thomson Healthcare,58th ed.並びに米国特許第5,766,629号;同第5,827,822号;同第4,220,641号;同第4,639,434号;同第4,289,851号;同第4,384,996号;同第5,047,396号;同第4,388,307号;同第4,970,076号;同第4,990,337号;同第4,822,618号;同第4,576,284号;同第5,120,710号;及び同第4,894,235号に記載されている。
【0157】
タクロリムス(FK506)は、分子レベルでの作用様式及びその臨床有効性の両方に関しておおむねCsAと同様の効果を奏するマクロライドである(Liu,Immunol.Today 14:290−5,1993;Schreiber et al.,Immunol.Today,13:136−42,1992);しかしながら、このような効果は、CsAより20〜100倍少ない用量で示される(Peters et al.,Drugs 46:746−94,1993)。タクロリムス及びその製剤は、例えば、2004 Physicians’Desk Reference(登録商標)(2003)Thomson Healthcare,58th ed.並びに米国特許第4,894,366号;同第4,929,611号;及び同第5,164,495号に記載されている。
【0158】
シロリムス(ラパマイシン)は、例えばストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)によって産生され得る免疫抑制性のラクタムマクロライドである。シロリムス及びそのアナログの数多くの誘導体並びにその製剤が知られており、例えば、2004 Physicians’Desk Reference(登録商標)(2003)Thomson Healthcare,58th ed.、欧州特許第0467606号;国際公開第94/02136号、同第94/09010号、同第92/05179号、同第93/11130号、同第94/02385号、同第95/14023号及び同第94/02136号並びに米国特許第5,023,262号;同第5,120,725号;同第5,120,727号;同第5,177,203号;同第5,258,389号;同第5,118,677号;同第5,118,678号;同第5,100,883号;同第5,151,413号;同第5,120,842号;及び同第5,256,790号に記載されている。
【0159】
いくつかの実施形態では、該第2の薬剤が、慣用的な化学療法薬であり得る細胞毒性剤、例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、メルファラン、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、マイトマイシンC又はエトポシドなどである。また、強力な薬剤、例えば、CC−1065アナログ、カリケアミシン、マイタンシン、ドラスタチン10のアナログ、リゾキシン、及びパリトキシンを抗CD40抗体又はその薬剤に連結させてもよい。
【0160】
さらなる実施形態では、該第2の薬剤がヒト化抗HER2モノクローナル抗体;RITUXAN(リツキシマブ;Genentech,Inc.,South San Francisco,Calif.);キメラ抗CD20モノクローナル抗体);OVAREX(AltaRex Corporation,MA);PANOREX(Glaxo Wellcome,NC;マウスIgG2a抗体);ERBITUX(セツキシマブ)(Imclone Systems Inc.,NY;抗EGFR IgGキメラ抗体);VITAXIN(Medlmmune,Inc.,MD);CAMPATH I/H(Leukosite,MA;ヒト化IgG1抗体);Smart MI95(Protein Design Labs,Inc.,CA;ヒト化抗CD33 IgG抗体);LymphoCide(Immunomedics,Inc.,NJ;ヒト化抗CD22 IgG抗体);Smart ID10(Protein Design Labs,Inc.,CA;ヒト化抗HLA−DR抗体);Oncolym(Techniclone,Inc.,CA;放射性標識マウス抗HLA−Dr10抗体);ALLOMUNE(BioTransplant,CA;ヒト化抗CD2 mAb);AVASTIN(Genentech,Inc.,CA;抗VEGFヒト化抗体);Epratuzamab(Immunomedics,Inc.,NJ及びAmgen,CA;抗CD22抗体);並びにCEAcide(Immunomedics,NJ;ヒト化抗CEA抗体)である。
【0161】
該第2の薬剤として使用され得る他の好適な抗体としては、限定されないが、以下の抗原:CA125、CA15−3、CA19−9、L6、ルイスY、ルイスX、αフェトプロテイン、CA 242、胎盤アルカリホスファターゼ、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、上皮成長因子、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、抗トランスフェリン受容体、p97、MUC1−KLH、CEA、gp100、MART1、前立腺特異抗原、IL−2受容体、CD20、CD52、CD33、CD22、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CD38、ムチン、P21、MPG、及びNeu癌遺伝子産物に対する抗体が挙げられる。
【0162】
非治療的使用
本明細書に記載の抗体は親和性精製用薬剤として有用である。この方法では、該抗体又はその断片をプロテインA樹脂などの固相上に、当該技術分野でよく知られた方法を用いて固定化する。固定化した該抗体又はその断片を、精製対象のCD40タンパク質(又はその断片)含有試料と接触させ、その後、支持体を、CD40タンパク質(これは固定化した抗体に結合されている)以外の試料中の実質的にすべての物質を除去する適切な溶媒で洗浄する。最後に、支持体を、該抗体からCD40タンパク質を放出させる別の適切な溶媒で洗浄する。
【0163】
また、本発明の抗CD40抗体は、CD40タンパク質を検出及び/又は定量するための、例えば、特定の細胞、組織又は血清中におけるCD40発現を検出するための診断アッセイにも有用である。
【0164】
本明細書に記載の抗体は、任意の既知のアッセイ法、例えば、競合的結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイにおいて使用され得る。例えば、Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)を参照のこと。
【0165】
医薬組成物
本開示により、薬学的に許容され得る担体と一緒に製剤化された本開示の抗体又はその(1種類又は複数種の)抗原結合部分を含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。別の実施形態では、該組成物は、本発明の抗体又はその抗原結合部分をコードしている単離核酸及び薬学的に許容され得る担体を含むものであり得る。該組成物は、移植拒絶反応の尤度を下げるため、もしくは移植拒絶反応までの持続時間を長くするため、免疫抑制を誘導するため、又は被験体の自己免疫性障害を処置するために有効であり得る。本発明の組成物は、本明細書に記載の任意の方法において有効であり得る。
【0166】
薬学的に許容され得る担体としては、生理学的に適合性のある任意のあらゆる適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤並びに吸収遅延剤などが挙げられる。投与経路に応じて、本発明の抗体(又はその(1又は複数の)抗原結合部分)を、該抗体(又はその(1又は複数の)抗原結合部分)を酸及び該抗体(又はその(1又は複数の)抗原結合部分)を不活化させ得る他の天然条件の作用から保護するための物質でコーティングしてもよい。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコールなど)、並びに適切なその混合物を含有している溶媒又は分散媒であり得る。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散体の場合では必要とされる粒径の維持及び界面活性剤の使用によって維持され得る。一部の特定の実施形態では、本発明の組成物は、等張剤、例えば糖類、多価アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)又は塩化ナトリウムを該組成物中に含むものであり得る。注射用組成物の持効性吸収は、該組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0167】
本発明の医薬組成物は本発明の抗体又はその断片及び本明細書に記載の第2の治療用薬剤(例えば、1種類以上の免疫抑制薬)を含むものであり得る。
【0168】
該組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、輸注デバイスもしくは埋込み用送達デバイスの形態であり得るか、又は使用直前に水もしくは別の適切なビヒクルで再構成される固形形態(例えば、乾燥粉末)として提示され得る。該組成物は、油性乳剤、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、部位特異的乳剤、長時間滞留型乳剤、粘性乳剤、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロスフェア、ナノスフェア、ナノ粒子並びに種々の天然又は合成のポリマー、例えば非吸収性不透過性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー及びHytrel(登録商標)コポリマー、膨潤性ポリマー、例えばヒドロゲル、又は吸収性ポリマー、例えばコラーゲン及び特定のポリ酸又はポリエステル(吸収性縫合糸を作製するために使用されるものなど)の形態であって、ワクチンの持続放出が可能な形態であり得る。
【0169】
該組成物は、経口投与のためには丸剤、錠剤、カプセル剤、液状剤もしくは持続放出性錠;又は静脈内、髄腔内、皮下もしくは非経口投与のためには液状剤;又は局所投与のためにはポリマーもしくは他の持続放出性ビヒクルの形態であり得る。
【0170】
一態様では、該組成物が水溶性である場合、該組成物の溶液を薬学的に許容され得る担体、例えば水性担体に溶解させる。水性液の例としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス液、リンゲル液、デキストロース/生理食塩水、グルコース液などが挙げられる。製剤に必要に応じて、生理学的条件に近づけるための薬学的に許容され得る補助物質、例えば、緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤、デタージェントなどを含有させてもよい。また、添加剤としては、さらなる活性成分、例えば殺菌剤又は安定剤も挙げられ得る。例えば、該溶液は、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート又はトリエタノールアミンオレエートを含有しているものであり得る。本開示においては固形製剤も使用され得る。該製剤は、例えば、丸剤、錠剤、散剤又はカプセル剤として製剤化され得る。固形組成物には慣用的な固形担体が使用され得、該担体としては、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。好適な医薬用賦形剤としては、例えば、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールが挙げられる。
【0171】
製剤を作製するための当該技術分野でよく知られた方法は、例えば、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”(20th ed.,ed.A.R.Gennaro AR.,2000,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA)を見るとよい。
【0172】
一態様では、本発明の組成物又は核酸、ポリペプチドもしくは抗体を含む医薬用製剤は脂質の単層又は二重層、例えばリポソーム内に組み込まれる。米国特許第6,110,490号;同第6,096,716号;同第5,283,185号及び同第5,279,833号。また、本発明の諸態様により、本発明の水溶性の核酸、ペプチド又はポリペプチドが該単層又は二重層の表面に結合されている製剤を提供する。例えば、ペプチドはヒドラジド−PEG−(ジステアロイルホスファチジル)エタノールアミン含有リポソーム(例えば、Zalipsky,Bioconjug.Chem.6:705−708,1995参照)に結合され得る。リポソーム又は任意の形態の脂質膜、例えば、平面脂質膜又はインタクトな細胞、例えば赤血球の細胞膜が使用され得る。リポソーム製剤は、任意の手段、例えば静脈内投与、経皮投与(例えば、Vutla,J.Pharm.Sci.85:5−8,1996参照)、経粘膜投与又は経口投与によるものであり得る。また、本発明により、本発明の核酸、ペプチド及び/又はポリペプチドがミセル及び/又はリポソーム内に組み込まれた医薬調製物を提供する(例えば、Suntres,J.Pharm.Pharmacol.46:23−28,1994;Woodle,Pharm.Res.9:260−265,1992参照)。リポソーム及びリポソーム製剤は標準的な方法に従って調製され得、また、当該技術分野でよく知られている。Akimaru,Cytokines Mol.Ther.1:197−210,1995。Alving,Immunol.Rev.145:5−31,1995。Szoka,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467,1980。米国特許第4,235,871号;同第4,501,728号及び同第4,837,028号。
【0173】
一態様では、該組成物は、該ペプチドを体内からの急速な消失から保護する担体、例えば、制御放出製剤、例えば、埋入物及びマイクロカプセル封入送達系を用いて調製される。生分解性で生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸使用することもできる。かかる製剤の調製方法は当業者に自明であろう。また、リポソーム懸濁剤を薬学的に許容され得る担体として使用してもよい。米国特許第4,522,811号。
【0174】
本開示の組成物は、当該技術分野で知られたさまざまな方法によって投与され得る。当業者には認識されるように、投与の経路及び/又は様式は所望される結果に応じて異なる。投与は非経口、静脈内、髄腔内、皮下、経口、経表面、局所、筋肉内、皮内、経皮、皮下、経直腸、経脊髄又は経上皮であり得る。連続輸注による静脈内送達は本発明の抗体を投与するための例示的な方法の一例である。
【0175】
本発明の薬剤を特定の投与経路によって投与するためには、該薬剤をその不活化を抑制する物質でコーティングするか、又は該薬剤を該物質と共投与することが必要な場合があり得る。例えば、該薬剤は被験体に、適切な担体内、例えばリポソーム内又は希釈剤中にて投与され得る。薬学的に許容され得る希釈剤としては生理食塩水及び水性バッファー溶液が挙げられる。リポソームとしては水中油中水型CGFエマルジョン並びに慣用的なリポソームが挙げられる(Strejan et al.,J.Neuroimmunol.7:27−41,1984)。
【0176】
非経口投与には経腸投与及び経表面投与以外の、通常、注射による投与様式が包含され得、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管経由、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、硬膜外及び胸骨内注射及び輸注が挙げられ得る。本発明の医薬組成物において使用され得る好適な水性担体及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及び適切なその混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。適正な流動性は、例えば、コーティング物質、例えばレシチンの使用、分散体の場合では必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0177】
非経口投与可能な組成物を調製するための方法は知られているか、又は当業者に自明であり、詳細の報告されている。Bai,J.Neuroimmunol.80:65−75,1997。Warren,J.Neurol.Sci.152:31−38,1997。Tonegawa,J.Exp.Med.186:507−515,1997。非経口投与のための製剤には、例えば、賦形剤、滅菌水、生理食塩水、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、植物起源の油、又は水素化ナフタレンが含有され得る。生体適合性で生分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーは本発明の薬剤の放出を制御するために使用され得る。ナノ粒子状製剤(例えば、生分解性ナノ粒子、固形脂質ナノ粒子、リポソーム)は、本発明の薬剤の体内分布を制御するために使用され得る。他の潜在的に有用な送達系としては、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、髄腔内ポンプ、埋込み可能な輸注システム及びリポソームが挙げられる。製剤中の該薬剤の濃度は、いくつかの要素、例えば、投与される薬物の投薬量及び投与経路に応じて異なる。
【0178】
滅菌注射用液剤は、必要とされる量の本発明の薬剤を適切な溶媒中に、必要に応じて、上記に列挙した成分のうちの1種類又はその組合せとともに組み込んだ後、滅菌精密濾過することにより調製され得る。一般的に、分散剤は、本発明の薬剤を、ベースとなる分散媒及び上記に列挙したもののうちの必要とされる他の成分を含有している滅菌ビヒクル中に組み込むことにより調製される。滅菌注射用液剤の調製用の滅菌粉末の場合、その調製方法は、活性成分+任意のさらなる所望の成分の粉末が先のこれらの滅菌濾過溶液から得られる真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)を含むものである。投薬量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)がもたらされるように調整される。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、数回の分割用量を経時的に投与してもよく、治療状況の要件に示されるとおりに用量を比例的に減少又は増加してもよい。例えば、本発明の抗体は、週に1回又は2回、皮下注射によって投与してもよく、月に1回又は2回、皮下注射によって投与してもよい。非経口用組成物は、容易な投与及び均等な投薬量のために単位投薬形態に製剤化され得る。単位投薬形態は、本明細書で用いる場合、処置対象の被験体に対する投薬ユニットとして適した物理的に独立した単位をいい;各単位は、所望の治療効果がもたらされるように計算された所定の量の活性薬剤を、必要とされる医薬用担体との会合状態で含有している。本発明の単位投薬形態の仕様は、(a)活性薬剤の特有の特徴及び得ようとする具体的な治療効果、並びに(b)個体の過敏性の処置のためのかる活性薬剤の薬剤化の技術分野に固有の制限によって決定され、これらに直接依存する。
【0179】
経口投与される場合、本発明の組成物を消化から保護してもよい。これは、該抗体又はその抗原結合部分を酸による加水分解及び酵素による加水分解に対して抵抗性にするための組成物と複合体化すること、又は該抗体又はその抗原結合部分を適切に抵抗性の担体、例えばリポソーム内に封入することのいずれかによって行なわれ得る。薬剤を消化から保護する手段は当該技術分野でよく知られている。Fix,Pharm Res.13:1760−1764,1996。Samanen,J.Pharm.Pharmacol.48:119−135,1996。米国特許第5,391,377号。
【0180】
経粘膜投与又は経皮投与のためには、バリアを透過するのに適切な浸透剤が製剤中に使用され得る。かかる浸透剤は一般的に当該技術分野で知られており、例えば、経粘膜投与では、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。また、デタージェントが、透過を助長するために使用され得る。経粘膜投与は経鼻スプレー剤又は坐剤の使用によるものであり得る。Sayani,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.13:85−184,1996。経表面投与、経皮投与のためには、該薬剤は軟膏、クリーム剤、膏薬、粉末剤及びゲル剤に製剤化される。また、経皮送達系としては、例えば貼付剤も挙げられ得る。
【0181】
また、本発明の組成物を持続送達又は徐放機構で投与してもよい。例えば、生分解性のマイクロスフェアもしくはカプセル又はペプチドの持続送達が可能な他の生分解性のポリマー構成が本発明の製剤に包含され得る(例えば、Putney,Nat.Biotechnol.16:153−157,1998参照)。
【0182】
吸入のためには、本発明の組成物は、当該技術分野で知られた任意のシステム、例えば、乾燥粉末エーロゾル、液体送達系、エアジェット式ネブライザ、噴射剤系などを用いて送達され得る。Patton,Biotechniques 16:141−143,1998。同様に本開示において使用され得るのは、例えば、Dura Pharmaceuticals(San Diego,Calif.)、Aradigrn(Hayward,Calif.)、Aerogen(Santa Clara,Calif.)、Inhale Therapeutic Systems(San Carlos,Calif.)などによるポリペプチド巨大分子用の製品及び吸入送達系である。例えば、医薬用製剤はエーロゾル又はミストの形態で投与され得る。エーロゾル投与のためには、製剤は、微粉化された形態で界面活性剤及び噴射剤とともに供給され得る。別の態様では、製剤を呼吸器組織に送達するためのデバイスは、製剤を気化させる吸入器である。他の液状物送達系としては、例えば、エアジェット式ネブライザが挙げられる。
【0183】
該組成物は、単回用量処置で投与してもよく、反復用量処置で、被験体の年齢、体重及び体調、使用される具体的な組成物並びに投与経路に適切なスケジュール及び期間で投与してもよい。投与頻度は、任意のさまざまな要素、例えば、症状の重症度、所望される免疫防御の度合、該組成物が予防目的で使用されるのか治癒目的で使用されるのかなどに応じて異なり得る。例えば、一実施形態では、本発明による組成物は月1回、月2回、月3回、隔週(qow)、週1回(qw)、週2回(biw)、週3回(tiw)、週4回、週5回、週6回、1日おき(qod)、毎日(qd)、1日2回(qid)又は1日3回(tid)で投与される。
【0184】
本発明によるポリペプチドの投与の持続期間、例えば、該組成物を投与する期間は、任意のさまざまな要素、例えば被験体の応答などに応じて異なり得る。例えば、該組成物は約1日〜約1週間、約2週間〜約4週間、約1ヶ月間〜約2ヶ月間、約2ヶ月間〜約4ヶ月間、約4ヶ月間〜約6ヶ月間、約6ヶ月間〜約8ヶ月間、約8ヶ月間〜約1年間、約1年間〜約2年間、もしくは約2年間〜約4年間の範囲又はそれ以上の期間にわたって投与され得る。
【0185】
経口用又は非経口用の組成物を、容易な投与及び均等な投薬量のために単位投薬形態に製剤化することが好都合である。単位投薬形態は、本明細書で用いる場合、処置対象の被験体に対する投薬ユニットとして適した物理的に独立した単位をいい;各単位は、所望の治療効果がもたらされるように計算された所定の量の活性薬剤を、必要とされる医薬用担体との会合状態で含有している。
【0186】
本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、具体的な患者、組成物及び投与様式で該患者に対して毒性になることなく所望の治療応答が得られるのに有効な活性成分量が得られるように変更され得る。選択される投薬量レベルは、さまざまな薬物動態学的要素、例えば、使用される本開示の具体的な組成物又はそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与期間、使用される具体的な薬剤の排出速度、処置の持続期間、使用される具体的な組成物と併用して使用される他の薬物、薬剤及び/又は物質、処置対象の患者の年齢、性別、体重、体調、一般健康状態及び既往歴などの医学分野でよく知られた要素に依存する。当該技術分野の通常の技能を有する医師又は獣医は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができよう。例えば、医師又は獣医により、医薬組成物に使用する本発明の薬剤の用量は所望の治療効果を得るために必要とされるものより低いレベルから開始され、所望の効果が得られるまで投薬量が徐々に増やされ得る。一般に、本発明の組成物の好適な日用量は、治療効果がもたらされるのに有効な最小用量である薬剤量である。かかる有効用量は、一般的には上記の要素に依存する。所望される場合は、治療用組成物の有効日用量を、その日中に適切な間隔で別々(単位投薬形態でもよい)に投与される2、3、4、5、6回又はそれ以上の分割用量として投与してもよい。
【0187】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量範囲の設定において使用され得る。一実施形態では、かかる薬剤の投薬量は、毒性をほとんど又はまったく伴わないED
50を含む循環濃度の範囲内である。投薬量は、この範囲内で、使用される投薬形態及び使用される投与経路に応じて変更され得る。別の実施形態では、まず細胞培養アッセイから治療有効用量が推定され得る。細胞培養で測定されたIC
50(すなわち、症状の最大阻害の半分がもたらされる試験薬剤濃度)を含む循環血漿濃度範囲が得られる用量が動物モデルにおいて設定され得る。Sonderstrup,Springer,Sem.Immunopathol.25:35−45,2003。Nikula et al.,Inhal.Toxicol.4(12):123−53,2000。
【0188】
本発明の抗体又は抗原結合部分の治療有効量又は予防有効量の例示的で非限定的な範囲は約0.001〜約100mg/kg体重もしくはそれ以上、約0.1〜約100mg/kg体重、約0.01〜約80mg/kg体重、約0.001〜約60mg/kg体重、約0.01〜約30mg/kg体重、約0.01〜約25mg/kg体重、約0.5〜約25mg/kg体重、約0.1〜約15mg/kg体重、約0.1〜約20mg/kg体重、約10〜約20mg/kg体重、約0.75〜約10mg/kg体重、約1〜約10mg/kg体重、約2〜約9mg/kg体重、約1〜約2mg/kg体重,約3〜約8mg/kg体重、約4〜約7mg/kg体重、約5〜約6mg/kg体重、約8〜約13mg/kg体重、約8.3〜約12.5mg/kg体重、約4〜約6mg/kg体重、約4.2〜約6.3mg/kg体重、約1.6〜約2.5mg/kg体重、約2〜約3mg/kg体重、又は約10mg/kg体重である。また、被験体に投与される投薬量は約0.1mg/kg〜約50mg/kg、約1mg/kg〜約30mg/kg、約1mg/kg〜約20mg/kg、約1mg/kg〜約15mg/kg、又は約1mg/kg〜約10mg/kg被験体体重であり得る。例示的な用量としては、限定されないが1ng/kg〜100mg/kgが挙げられる。いくつかの実施形態では、用量は約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg又は約16mg/kg被験体体重である。国際公開第94/04188号。
【0189】
該組成物は、有効量の本発明の抗体又はその抗原結合部分を含有するように製剤化され、ここで、該量は、処置対象の動物及び処置対象の病状に依存する。一実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、約0.01mg〜約10g、約0.1mg〜約9g、約1mg〜約8g、約1mg〜約7g、約5mg〜約6g、約10mg〜約5g、約20mg〜約1g、約50mg〜約800mg、約100mg〜約500mg、約0.01mg〜約10g、約0.05μg〜約1.5mg、約10μg〜約1mgのタンパク質、約30μg〜約500μg、約40pg〜約300pg、約0.1μg〜約200mg、約0.1μg〜約5μg、約5μg〜約10μg、約10μg〜約25μg、約25μg〜約50μg、約50μg〜約100μg、約100μg〜約500μg、約500μg〜約1mg、約1mg〜約2mgの範囲の用量で投与される。任意の具体的な被験体に対する具体的な用量レベルは、さまざまな要素、例えば、具体的なペプチドの活性、年齢、体重、一般健康状態、性別、食生活、投与期間、投与経路及び排出速度、薬物併用並びに治療が施されている具体的な疾患の重症度に依存する。
【0190】
製造物品
別の態様では、本明細書に記載の病状又は障害の処置に有用な物質を含むものである製造物品が包含される。製造物品は容器とラベルを含むものである。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ及び試験管が挙げられる。容器は、さまざまな材質、例えばガラス又はプラスチックで形成されたものであり得る。容器は、該病状の処置に有効な組成物を保持し、滅菌されたアクセスポートを有していてもよい。例えば、容器は静脈内用液剤バッグ又はストッパーを有し、皮下注射針が貫通可能なバイアルであり得る。組成物中の活性薬剤はヒト化抗CD40抗体もしくはその断片、又は本明細書に記載の任意の他の抗体もしくはその断片であり得る。容器上又は容器に付随させたラベルには、該組成物が選択肢の病状を処置するために使用されるものであることが表示されている。製造物品はさらに、薬学的に許容され得るバッファー、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース液が入った第2の容器を含むものであってもよい。これは、さらに、市販品としてユーザーの観点から望ましい他の物質、例えば、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ及び使用のための使用説明を有する添付文書を含むものであってもよい。
【0191】
一実施形態では、本発明により、抗CD40抗体又はその抗原結合部分を含むものであるキットを提供する。キットのさらなる成分としては、以下:使用説明書;他の試薬、治療用薬剤、又は抗体を標識もしくは治療用薬剤にカップリングさせるのに有用な薬剤又は投与用の抗体を調製するための他の物質;薬学的に許容され得る担体;及び被験体への投与のためのデバイス又は他の物質のうちの1種類以上が挙げられ得る。
【0192】
キットに本明細書に記載の第2の治療用薬剤を含めてもよく、含めなくてもよい。諸薬剤はキット内において一緒に混合されていてもよく、個々にパッケージングされていてもよい。
【0193】
キットは、抗CD40抗体又はその断片をコードしている少なくとも1種類の核酸及び該核酸の発現のための使用説明書を含むものであってもよく、そうでなくてもよい。キットの他の考えられ得る成分としては発現ベクター及び細胞が挙げられる。
【0194】
本発明の抗体又はその断片を診断キット、すなわち、診断アッセイを行なうための使用説明書とともにパッケージ化された所定の量の試薬の組合せにおいて使用してもよい。該抗体が酵素で標識されている場合、キットには、該酵素に必要とされる基質及び補因子、例えば検出可能な発色団又はフルオロフォアをもたらす基質前駆物質が含められ得る。また、他の添加剤、例えば安定剤、バッファー(例えば、ブロックバッファー又は溶解バッファー)などを含めてもよい。アッセイの感度が実質的に最適化される試薬溶液中の濃度をもたらすための種々の試薬の相対量は広く異なり得る。試薬は、溶解させると適切な濃度を有する試薬溶液をもたらす賦形剤を含む乾燥粉末(通常、凍結乾燥状態)として提供され得る。
【0195】
エピトープマッピング
抗体が結合する対象の具体的なエピトープを同定するための方法は当業者に知られている。標準的な手法としてはペプチドスキャニングが挙げられ、これは、抗体が結合する対象の完全長タンパク質に由来する重複している短鎖ペプチド(例えば10〜30個、例えば20個のアミノ酸長)を個々に、該抗体に対する結合能について試験するというものである。かかる実験により、次いで、抗体が結合する対象のタンパク質領域が決定され得る。
【0196】
また、部位特異的変異誘発も、特定のタンパク質の(1又は複数の)抗原性領域を同定するために使用され得る。このアプローチでは、点変異を標的ポリペプチド内に体系的に導入し、種々の位置に変異を有するペプチドに抗体が結合する能力を用いて、該タンパク質の特定の領域に該抗体が結合する対象のエピトープが含まれているかどうかを調べる。
【0197】
また、抗体エピトープは、ハイスループット変異誘発手法、例えば、ショットガン変異誘発(Shotgun Mutagenesis)(Integral Molecular,Inc.,Philadelphia,Pa.)(これは、標的タンパク質内に大量数の変異を生じさせるために使用され得る)を用いて同定することもできる。かかる方法論では、タンパク質内における効率的なエピトープ同定が可能である。
【0198】
CD40に対する種々の抗体が同様のエピトープに結合するかどうかを調べるため、インビトロ競合的ブロックアッセイが行なわれ得る。一実施形態において、キメラIgG1 CD40特異的抗体である抗体2C10、3A8及びChi220をこのアッセイに使用した。2C10をアロフィコシアニン(APC)に、Lightning Link抗体標識キット(Novus Biologics,Littleton,CO)を用いてコンジュゲートさせた。ヒトPBMCを漸増濃度の2C10、3A8又はChi220とともにインキュベートし、次いでAPTコンジュゲート2C10で染色し、各抗体が2C10を交差ブロックする能力を評価した。APCコンジュゲート2C10の結合は、
図12に示されるように、2C10では濃度の増大に伴って低減されたがChi220又は3A8ではそうではなかった。この結果は、2C10が、Chi220又は3A8のいずれとも相違する独自のエピトープに結合することを示す。
【0199】
CD40断片
本発明ではまた、2C10抗体によって特異的に結合されるエピトープを含むCD40の断片を取り上げて記載する。2C10抗体を、CD40ポリペプチドの細胞外部分に対して生じさせた。2C10抗体は、この配列(配列番号:5及び6)の一部分と反応する。
【0200】
したがって、本開示では、2C10抗体によって特異的に結合されるCD40断片(例えば、150個より少ない、120、100、80、70、60、50、40、30,20、18、15、12、11、10、9、8又は7個の)アミノ酸長を取り上げて記載する。一部の特定の実施形態では、該断片は8〜10、8〜12、8〜15、8〜20、8〜30、8〜40、8〜50、8〜60、8〜70、8〜80又は8〜100個のアミノ酸長である。他の実施形態では、該断片は7〜10、7〜12、7〜15、7〜20、7〜30、7〜40、7〜50、7〜60、7〜70、7〜80又は7〜100個の長さである。
【0201】
2C10抗体は、配列番号:6のアミノ酸8〜10、8〜12、8〜15、8〜20、8〜30、8〜40、8〜50、8〜60、8〜70、8〜80、8〜100、7〜10、7〜12、7〜15、7〜20、7〜30、7〜40、7〜50、7〜60、7〜70、7〜80又は7〜100個の配列内に存在するエピトープに結合する。
【0202】
本発明ではまた、本明細書に記載の断片と非相同配列を含む融合タンパク質を取り上げて記載する。一部の特定の実施形態では、融合パートナーの一方はFcタンパク質(例えば、マウスFc又はヒトFc)である。また、融合パートナーの一方は、抗体産生に有用な配列、例えば、マルトース結合タンパク質又はGSTであってもよい。他の実施形態では、融合タンパク質は、精製又は検出用タグ、例えば、直接又は間接的に検出され得るタンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質、血球凝集素もしくはアルカリホスファターゼ)、DNA結合ドメイン(例えば、GAL4もしくはLexA)、遺伝子活性化ドメイン(例えば、GAL4もしくはVP16)、精製タグ、又は分泌シグナルペプチド(例えば、プレプロチリプシン(preprotyrypsin)シグナル配列)である。他の実施形態では、融合パートナーは、タグ、例えば、c−myc、ポリヒスチジン又はFLAGであり得る。各融合パートナーは、1つ以上のドメイン、例えば、プレプロトリプシンシグナル配列及びFLAGタグを含むものであり得る。
【0203】
本明細書に記載のCD40断片及び融合タンパク質は、適切な宿主細胞を、該ポリペプチド断片又は融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチド分子で適切な発現媒体にて形質転換することによって作製され得る。
【0204】
多種多様な任意の発現系が使用され得る。例示的な発現系としては、原核生物宿主(例えば、大腸菌(E.coli))及び真核生物宿主(例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)、昆虫細胞、例えばSf21細胞、又は哺乳動物細胞、例えばNIH 3T3、HeLa、もしくは好ましくはCOS細胞)が挙げられる。かかる細胞は広範な供給元(例えば、American Type Culture Collection,Manassas,VA)から入手可能である。形質転換又はトランスフェクションの方法及び発現媒体の選択は、選択される宿主系に依存する。形質転換及びトランスフェクションの方法は、例えば、Kucherlapati et al.(CRC Crit.Rev.Biochem.16:349−379,1982)及びDNA Transfer to Cultured Cells(eds.,Ravid and Freshney,Wiley−Liss,1998)に記載されており;発現媒体は、例えば、Vectors:Expression Systems:Essential Techniques(ed.,Jones,Wiley & Sons Ltd.,1998)に示されているものから選択され得る。
【0205】
組換えCD40ポリペプチド断片又は融合タンパク質が発現されたら、これは、例えばアフィニティークロマトグラフィーを用いて単離され得る。一例では、CD40に特異的な抗体(例えば、本明細書に記載の抗体又はその断片)をカラムに結合させ、該ポリペプチド断片又は融合タンパク質を単離するために使用され得る。アフィニティークロマトグラフィーの前に、断片又は融合タンパク質を有する細胞の溶解及び分画が標準的な方法によって行なわれ得る(例えば、Methods in Enzymology,volume 182,eds.,Abelson,Simon,and Deutscher,Elsevier,1990参照)。単離されたら、CD40ポリペプチド断片又は融合タンパク質は、所望により、例えば高速液体クロマトグラフィーによってさらに精製され得る(例えば、Fisher,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,eds.,Work and Burdon,Elsevier,1980;及びScopes,Protein Purification:Principles and Practice,Third Edition,ed.,Cantor,Springer,1994参照)。
【0206】
また、CD40ポリペプチド断片又は融合タンパク質は化学合成によっても作製することができる(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,1984,The Pierce Chemical Co.,Rockford,IL;及びSolid−Phase Synthesis:A Practical Guide,ed.,Kates and Albericio,Marcel Dekker Inc.,2000に記載の方法によって)。
【0207】
本発明の抗体、その抗原結合部分、組成物及び方法は、あらゆる脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、サル、類人猿、ゴリラ、チンパンジー、ウサギ、アヒル、ガチョウ、ニワトリ、両生類、爬虫類及び他の動物において使用され得る。
【0208】
本開示を実施するための具体的な態様の以下の実施例は、実例を示す目的のために示したものにすぎず、なんら本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0209】
[実施例1]
抗CD40マウス抗体の作製及び同定
マウス(系統AJ)を、マルトース結合タンパク質と融合させたアカゲザル(rhesus macaque)(M.mulatta)CD40(アミノ酸配列:EPPTACREKQYLINSQCCSLCQPGQKLVSDCTEFTETECLPCSESEFLDTWNRETRCHQHKYCDPNLGLRVQQKGTSETDTICTCEEGLHCMSESCESCV;配列番号:5)の細胞外ドメインからなる融合タンパク質(CD40−MBP)で免疫処置した。アカゲザル(rhesus macaque)CD40タンパク質のこの領域のアミノ酸配列は、ヒトCD40タンパク質と5つのアミノ酸位置において異なる(ヒトアミノ酸配列:EPPTACREKQYLINSQCCSLCQPGQKLVSDCTEFTETECLPCGESEFLDTWNRETHCHQHKYCDPNLGLRVQQKGTSETD TICTCEEGWHCTSEACESCV;配列番号:6)。CD40−MBPをマウスに複数回、完全フロイントアジュバント及び不完全フロイントアジュバントとともに投与した。免疫処置したマウスの脾細胞をマウス骨髄腫細胞株SP2/0と融合させ、ハイブリッド細胞を標準的なハイブリドーマ技術を用いて選択した。
【0210】
抗体を、グルタミン合成酵素と融合させた同じアカゲザル(rhesus)CD40ドメインからなる第2の融合タンパク質(CD40−GST)に対する反応性で選択した。CD40−GSTに反応性である(ELISAによる)抗体を、アカゲザル(rhesus macaque)血中B細胞、ヒト血中B細胞及びアカゲザル(rhesus macaque)Bリンパ芽球様細胞株上に発現される天然CD40に対する反応性について、フローサイトメトリーによってさらに試験した。最終選択レベルとして、抗体をインビトロアッセイにおいて、CD154発現Jurkat D1.1細胞との共培養後のヒト又はアカゲザル(rhesus macaque)のB細胞活性化を阻害する能力について試験した。抗CD40抗体2C10の安定なサブクローンを限界希釈によって得た。抗体はマウスIgG1−κである。
【0211】
Lowe et al.,A novel monoclonal antibody to CD40 prolongs islet allograft survival,Am.J.Transplant(2012)12(8):2079−87.
抗体のクローニング
モノクローナル抗体の可変領域は、当該技術分野で知られた任意の方法を用いてクローニングすることができる。ハイブリドーマ細胞のための抗体可変領域の配列を得るためのPCRベースの方法は、例えば、Larrick et al.,Nat.Biotechnol.7:934−8,1989及びOrlandi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3833−7,1989に記載されている。このような手法又は同様の手法を使用し、モノクローナル抗体の可変領域はクローニングし、さらなる操作に供され得る。本発明の場合では、2C10抗体の重鎖及び軽鎖の可変配列をクローニングし、配列決定した。2C10ハイブリドーマ由来の免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域であるDNAを、5’RACE PCRを使用し、以下のDNAプライマー:
マウスκリバース:5’−CTA ACA CTC ATT CCT GTT GAA GCT CTTGAC(配列番号:7);
マウスκフォワード:5’−GCT GAT GCT GCA CCA ACT GTA TCC−3’(配列番号:8)
マウスIgG1リバース:5’−GGC AAC GTT GCA GGT CTC GC−3’(配列番号:9)
マウスIgG1フォワード:5’−CTG GAT CTG CTG CCC AAA CTA ACT CC−3’(配列番号:10)
を用いてクローニングした。
【0212】
PCR産物を市販のクローニングベクター内にクローニングし、標準的なシーケンシング手法を用いて配列決定した。得られた配列を
図1に示す。
【0213】
免疫グロブリン可変領域の遺伝子を、抗CD40抗体クローン2C10分泌ハイブリドーマ及び抗ヒトCD40クローン3A8(Kwekkeboom et al.,Immunology 79:439−44,1993)(American Type Culture Collection,ATCC,Vienna,VAから入手)から、cDNAの5’末端の迅速増幅(5’rapid amplification of cDNA ends)−ポリメラーゼ連鎖反応を用いてクローニングした。免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を、アカゲザル(rhesus)IgG1又はアカゲザル(rhesus)IgG4重鎖とアカゲザル(rhesus)κ軽鎖定常領域の配列を含む発現ベクター内にサブクローニングした。
【0214】
組換え重鎖及び軽鎖を発現ベクター内にサブクローニングし、チャイニーズハムスター卵巣細胞を形質導入するために使用されるレトロウイルスベクター内に、GPEx(商標)発現技術(Catalent Pharma Solutions,Middleton,WI)を用いてパッケージングした。形質導入細胞プールを無血清培地中で培養し、分泌された抗体をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。精製されたキメラアカゲザル(rhesus)IgG1(2C10R1,3A8R1)及びIgG4(2C10R4)抗体をリン酸バッファー中でダイアフィルトレーションした;内毒素レベルは1内毒素単位/mg未満であることが確認された。
【0215】
抗体の特性評価
2C10はCD40に結合してCD154の結合を妨げる
2C10がアカゲザル(rhesus)及びヒトの両方のCD40に結合する能力を評価するため、組換え発現させたヒト又はアカゲザル(rhesus)のCD40をELISAプレートに吸着させ、いろいろな濃度の2C10と反応させた。CD40に対する2C10の結合を、ヤギ抗マウスIgG−HRPを用いてELISAで検出した。
図2Bの結果は、2C10がアカゲザル(rhesus)及びヒトのCD40に対して同様の結合親和性を有することを示し、これは、2C10の臨床的翻訳のためには重要なことである。2C10がそのコグネイトリガンドであるCD154の結合をブロックする能力を確認するため、アカゲザル(rhesus)及びヒトのB細胞を漸増濃度の2C10又はアイソタイプ対照とともにインキュベートし、次いでヒスチジンタグ化可溶性CD154(R&D Systems,Minneapolis,MN)とともにインキュベートし、ヒスチジン発現について解析した。2C10はCD154の結合を用量依存的様式でブロックし(
図3)、2C10はT細胞結合CD154とB細胞及び抗原提示細胞上のCD40との相互作用を有効にブロックし得ることが示された。
【0216】
表2 2C10のCD40受容体結合速度論
【表2】
【0217】
2C10はアカゲザル(rhesus monkey)及びヒトの末梢血単核細胞においてB細胞の活性化をブロックする
抗CD40抗体2C10を、B細胞の活性化に影響を及ぼす能力に関してアカゲザル(rhesus monkey)及びヒトの末梢血単核細胞(PBMC)の両方を用いて特性評価した。CD20発現を選択したのは、これがB細胞のインジケータであり、CD23、CD80及びCD86の発現はB細胞の活性化と関連しているためである。2C10をまず、CD20に結合する能力について評価した。アカゲザル(rhesus)又はヒトのPBMCを、蛍光色素コンジュゲート2C10及び抗CD20抗体とともにインキュベートした。フローサイトメトリー解析を使用し、ヒト及びアカゲザル(rhesus)のCD20+ B細胞に対する2C10の結合を確認した(
図2A)。別の一組の実験において、アカゲザル(rhesus monkey)又はヒトのいずれかに由来するPBMCを、不死化Tリンパ球(lymophocyte)細胞株であるCD154
+ Jurkat D1.1細胞の存在下又は非存在下のいずれかで培養した。B細胞の活性化を、PBMCに存在しているCD20+細胞における3種類のマーカー(CD23、CD80及びCD86)の発現を測定することにより調べた。このアッセイの一般的なスキームを
図4に示す。
図4に示すように、ジャーカット細胞の存在下でのPBMCの培養により3種類すべてのマーカー発現の増大がもたらされ、B細胞がCD154
+ジャーカット細胞によって活性化されることが示された。
【0218】
抗体がB細胞の活性化をブロックする能力を試験するため、PBMCとジャーカット細胞を3種類の抗体:3A8、5C8及び2C10のうちの1種類の存在下及び非存在下で共培養した。3A8抗体はマウス抗ヒトCD40抗体(ATCC寄託番号HB−12024)であり、5C8は抗CD154抗体(ATCC寄託番号CRL−10915)である。各々を陽性対照として使用した。共培養は、5桁の抗体濃度範囲(0.001μg〜10μg)において実施した。
図5に示されるように、3A8は、アカゲザル(rhesus)PBMCにおいてCD23発現によって測定されるように、B細胞の活性化をブロックしなかったが、2C10と5C8はどちらも、同様の効率で活性化をブロックすることができた。また、対応する変化もCD80及びCD86の発現で観察された。このような結果は、2C10が3A8とは異なるCD40上のエピトープに結合することを示す。また、このような結果は、2C10が、弱い刺激性潜在能を有する部分作動薬として作用することが以前に示されていた3A8とは対照的に(Adams et al.,J.Immunol.174:542−50,2005,Badell et al.,Am.J.Transplant.accepted for publication,2011)、主にCD40拮抗薬として作用することも示す。アカゲザル(rhesus)ではなくヒトのPBMCを用いて同様の実験を行なった場合、この場合でも2C10と5C8はどちらも、CD86の発現によって測定されるように、同様の効率でB細胞の活性化をブロックすることが観察された。この場合、3A8抗体は、アカゲザル(rhesus)PBMCの場合とは異なり、B細胞の活性化をブロックした(
図6)。
【0219】
また、2C10抗体及び3A8抗体を、B細胞を活性化させる能力について、ジャーカット細胞の非存在下でアカゲザル(rhesus monkey)又はヒトPBMCのいずれかを用いて試験した。この場合、PBMCを、2C10又は3A8のいずれかの存在下又は非存在下のいずれかで培養した。次いで、CD23、CD80及びCD86の発現をCD20
+細胞において測定した。
図7に示されるように、アカゲザル(rhesus)細胞におけるCD23発現は3A8抗体の存在下で増大したが、2C10抗体の存在下では増大しなかった。対照的に、3A8も2C10もヒトB細胞を活性化させなかった。3A8抗体と2C10抗体間で観察された活性の違いは、2C10抗体が3A8抗体のものとは異なるエピトープに結合することを示す。
【0220】
2C10はT細胞依存性抗体応答を妨げる
2C10がCD40上の独自のエピトープに結合し、B細胞の活性化を抗CD154抗体と同様に阻害し、アゴニスト特性がないことが確立されたため、本発明者らは、次いで、インビボでの2C10の効果を特性評価した。2C10の組換えマウス−アカゲザル(rhesus)キメラ形態を、アカゲザル(rhesus)のIgG1(2C10R1)又はIgG4(2C10R4)のいずれかの重鎖とアカゲザル(rhesus)κ軽鎖定常領域の配列を用いて作製した。また、3A8のキメラアカゲザル(rhesus)IgG1形態(3A8R1)を対照としての使用のために作製した。
【0221】
アカゲザル(rhesus macaque)をゼロ日目に、4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニルアセチルコンジュゲートスカシガイヘモシアニン(KLH,10mg IM)抗原(Biosearch Technologies,Novato,CA)で1回免疫処置した。免疫処置の前及び1週間目に、3匹の動物のコホートに静脈内用量(50mg/kg)の2C10R1、2C10R4、3A8R1又は生理食塩水を投与した。すべての動物を70日間観察し、フローサイトメトリーを毎週実施した。いずれかの組換え2C10アイソタイプでの処置により、3A8R1(Badell et al.,Am.J.Transplant.10:214,2010)又はChi220(Adams et al.,J.Immunol.174:542−50,2005)のいずれかを投与された動物で生じた以前に報告された有意な長期間の末梢B細胞枯渇と比べて末梢B細胞計数において穏やかな変化がもたらされた(
図8)。
【0222】
KLH−NPに対するT細胞依存性抗体応答をELISAによって試験した。プレートをKLH(0.01mg/ml,Sigma,St.Louis,MO)でコーティングし、Super Block(Thermo Scientific,Woodstock,GA)を用いてブロックした。処置前及び処置後の血漿試料を段階希釈し、1時間プレーティングし、リン酸緩衝生理食塩水/0.05%Tweenで洗浄した。抗KLH抗体を、モノクローナル抗アカゲザル(rhesus)IgG−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(クローン1B3,NHP Reagent Resource,Boston,MA)とともに1時間インキュベートすることにより検出した。次いでプレートをペルオキシダーゼ基質溶液(KPL)とともにインキュベートした。次いで停止液(KPL)を添加し、光学密度を、ELISAプレートリーダーで450nmにおいて読み取った。試料は、同じ2倍希釈において処置後の血漿の光学密度の読み値が処置前の血漿の光学密度を超えた場合、所与の希釈度において陽性とみなした。KLHでの免疫処置後、対照動物では高力価のKLH特異的IgGが発生した(
図9)。また、3A8R1を投与された動物でも抗KLH応答が生じたが、力価は、B細胞の有意な枯渇にもかかわらず、対照よりもおよそ10倍低かった。対照的に、IgG抗KLH抗体の生成は、2C10R1又は2C10R4のいずれかを投与されたすべての動物で、56日目までほぼ完全にブロックされた。
【0223】
2C10は、膵島同種移植のアカゲザル(macaque)モデルにおいて膵島同種移植片の生着を有意に長期化させる
本発明者らはさらに、CD4精製キメラリーシス(rhesis)IgG4抗体である2C10R4を、非ヒト霊長類膵島同種移植モデルにおいて試験した(
図10)。体重が10〜20kgのアカゲザル(rhesus macaque)に、移植の1日前に正中開腹によってドナー膵切除を実施した。動物を致死的に放血させた後、膵臓を単離し、氷上に置いた。膵島の単離は、コラゲナーゼ/中性プロテアーゼ(それぞれ、950Wunsch単位及び63単位;Serva,Heidelberg,Germany)を用いて行なった。消化された膵臓を、4層の不連続Euroficoll勾配(Mediatech,Manassas,VA)及びCobe 2991血球プロセッサ(CaridianBCT,Lakewood,CO)で精製した。最終の膵島調製物試料を計数し、膵島当量(IEQ)として表示した。単離した膵島を一晩培養し、計数し、移植用培地(Mediatech)中に懸濁させた。
【0224】
体重が3〜5kgのアカゲザル(rhesus macaque)を、移植の4週間前に、ストレプトゾトシン(1250mg/m
2 IV;Zanosar,Teva Parenteral Medicines,Irvine,CA)を用いて糖尿病にした。糖尿病は、経静脈ブドウ糖負荷試験(IVGTT)によりボーラスでの500mg/kgのデキストロース及び霊長類C−ペプチドの測定を用いて確認した。グルコースレベルをモニタリングし、C−ペプチドをベースライン時並びにデキストロースの注射後10、30、60及び90に測定した。糖尿病は、検出可能な血清C−ペプチドがない高値の血中グルコースレベルの測定によって確認した。糖尿病のレシピエントに対してMHCミスマッチ膵島の同種移植を実施した。平均15,745(±4,063)のIEQを正中小開腹及び腸間膜静脈のカニューレ挿入によって注入した。
【0225】
血中グルコースレベルを1日2回、耳穿刺;NPH(Novolin;Novo Nordisk,Princeton,NJ)によって測定し、グラルギン(Lantus;Sanofi−Aventis,Bridgewater,NJ)インスリンを投与し、移植前及び移植片拒絶反応後の空腹時血中グルコース(FBG)を300mg/dL未満に維持した。移植後、IVGTTを定期的に実施し、移植片の機能をモニタリングした。移植レシピエントに対してフローサイトメトリー解析を毎週実施し、T細胞(CD3 V450,CD4 PerCP−Cy5.5,CD8 PerCp;BD Bioscience)集団及びB細胞(CD20 PE,BD Bioscience)集団をモニタリングした。膵島生着後、拒絶反応を、2日間連続で130mg/dLより高いFBGと定義した。一次エンドポイントは拒絶反応のない膵島移植片の生着であった。
【0226】
移植レシピエントに2C10R4、バシリキシマブ(Simulect,Novartis,Basel,Switzerland)とシロリムス又はバシリキシマブ及びシロリムス単独のいずれかを投与した。2C10R4(50mg/kg)は術後(POD)0日目と7日目に静脈内投与した。バシリキシマブ(0.3mg/kg)はPOD 0及び3に静脈内投与した。シロリムスは、5〜15ng/mlの谷レベルが得られるようにPOD 120まで毎日筋肉内投与した。バシリキシマブ及びシロリムス単独を投与された3匹の動物はすべて、歴史的対照である(Badell et al.,J.Clin.Invest.120:4520−312,2010)。これらの歴史的対照のうちの2匹(RQz6とRIb7)に対し、膵切除によって糖尿病誘発を実施し、経口シロリムスを投与した。
【0227】
上記のレジメンでの処置により、バシリキシマブ単独導入療法とシロリムス維持療法を受けた対照(
図11B)と比べて膵島移植片の生着の有意な長期化(
図11A)がもたらされた。2C10R4を投与された動物の拒絶反応のない移植片の生着期間の中央値は280日間であるのに対して対照動物では8日間である(p=0.010,表3)。薬物動態データにより、血漿2C10R4レベルはPOD 100までに1μg/ml未満になるであろうことが予測される。シロリムスをPOD120に中止したため、最も長く(304日間)生存したレシピエントには、拒絶反応が起こるまでのおよそ24週間、免疫抑制を行なわなかった。2C10R4で処置した動物では、臨床的に重要な感染性の合併症又は体重減少は発生しなかった。この結果は、2C10のIgG4アイソタイプを投与した動物を反映している。2C10のIgG1アイソタイプ(2C10R1)をバシリキシマブ及びシロリムスと併用して投与したさらに2匹の動物では、220日間及び162日間の同様の長期化した移植片の生着がもたらされた。導入療法薬として使用した2C10でのプラスの結果を考慮すると、次の工程は、維持療法薬として2C10を投与することによる移植片の生着に対する効果を評価することである。
【0229】
CD28/B7経路と併せてのCD40/CD154経路のブロック
CD40/CD154経路のブロックは、他の共刺激ブロック剤と併せると有用であることが証明され得る。CD28/B7共刺激経路をブロックするために設計された高親和性型のCTLA4−Igであるベラタセプトは、腎移植及び膵島移植の非ヒト霊長類モデルにおいて、並びに腎移植のフェーズII及びIII臨床試験において有効性が示されている(Larsen et al.,Transplantation 90:1528−35,2010、Vincenti et al.,Am.J.Transplant.10:535−46,2010、Adams et al.,J.Immunol.174:542−50,2005、Adams et al.,Diabetes 51:265−70,2002、Larsen et al.,Am.J.Transplant.5:443−53,2005、Vincenti et al.,N.Engl.J.Med.358:770−81,2005)。BENEFIT治験では、ベラタセプトで処置した患者において優れた腎機能が示された;しかしながら、このような患者は、発生率がより高く、等級がより重度の、生検により確定診断された急性拒絶反応を有した(Larsen et al.,Transplantation 90:1528−35,2010、Vincenti et al.Am.J.Transplant.10:535−46,2010)。この高率の急性拒絶反応及びCD40とB7のブロック間の相乗効果(Larsen et al.,Nature 381:434−8,1996)に鑑みて、本発明者らは、次に、非ヒト霊長類の腎臓移植における2C10とベラタセプトの併用療法の有効性を試験する。
【0230】
[実施例2]
ヒト化抗CD40抗体
本発明者らは、h2C10と称するCD40に対する新規なヒト化Ab(ヒト化2C10抗体)を開発して特性評価し、これをCD40の機能性完全拮抗薬として選択した。結合性エピトープを、B細胞を活性化もしくは枯渇させるか、又は部分作動薬としての機能を果たすかいずれかである競合体分子とは識別される独自の結合特性が付与されるように注意深く設計した。該抗体の初期のマウス霊長類キメラ型は、関連するインビトロ及びインビボ前臨床試験、例えば、非ヒト霊長類での複数の試験(これにより、移植拒絶反応の抑制に対して有望な有効性並びに同種移植片及び異種移植片の両方での生着の長期化、並びに非臨床試験での好都合な安全性プロフィールが実証されている)において調べられている。また、本発明者らは、優れた特徴を示す2C10のヒト化(h2C10)も完成させた。
【0231】
ヒト化抗CD40抗体を作製するため、マウス抗体2C10の可変領域の配列を用いてヒト抗体のデータベースを検索した。VHは、ほとんどが生殖細胞系列由来抗体の配列VH1−46、VH1−69及びVH1−3(配列番号:30)と関連しており、一方、VLは、ほとんどが生殖細胞系列由来抗体の配列VK3−11(配列番号:31)、VK1−39及びVK6−21と関連していることがわかった。ヒトVH1−3とVK3−11を、ヒトレパートリーにおける比較的高い出現頻度及び極めて重要なフレームワーク位置における良好な保存のため、CDRグラフティングのためのアクセプターフレームワークとなるように選択した。両方の可変領域を使用し、マウス2C10抗体由来のCDRをヒトアクセプターフレームワーク内にグラフティングすると3Dモデルが構築された。ヒト対応物と異なる6個のマウスVHフレームワーク残基は、おそらく該CDRと接触しており:M48、A67、L69、A71、K73及びN76であると同定された。モデル設計後、それぞれ0、2及び6個のマウスフレームワーク残基を含む3種類のヒト化VH配列2C10_h1、2C10_h2及び2C10_h3を設計した(
図13a)。同様に、5個のマウスVKフレームワーク残基が、おそらく該CDRと接触しており:Q1、R46、W47、V58及びY71であると同定された。モデル設計後、それぞれ0及び4個のマウスフレームワーク残基を含む2種類のヒト化VL配列2C10_l1及び2C10_l2を設計した(
図13b)。
【0232】
親マウス2C10抗体をCDRグラフティングによってヒト化した。ヒト抗体VH1−3及びVK3−11の生殖細胞系列フレームワークをアクセプターとなるように選択した。3種類のVH配列及び2種類のVL配列を設計し、全部で6種類のヒト化抗体を作製し、ヒトCD40結合について試験した。
【0233】
2C10−重鎖−3(2C10_h3)と2C10−軽鎖−2(2C10_l2)の構築物は、マウス2C10のもの(0.22nM)の2倍以内の0.39nMのCD40結合親和性を有する最良の抗体をもたらすことがわかった(表2)。ヒト化可変領域を使用し、IgG4又は安定化IgG4としての臨床候補ヒト化抗体を構築し、これをSwiMR発現系内にクローニングした。
【0234】
高産生性の安定なCHO細胞株をFACSによって単離し、3回のELISA及び1回のフェッドバッチ培養によってスクリーニングした。フェッドバッチ培養において0.8g/Lより多くのヒト化2C10を産生する7個のクローンを単離した。最良のクローン3C9−I6は、非最適化条件下で約1.2g/Lを産生した。
【0235】
抗体発現ベクターの構築
ヒト化VH配列を遺伝子合成し、ヒトIgG2重鎖の定常領域を含むベクターpFUSE−CHIg−hG2a(Invivogen)内にクローニングし、発現ベクターLB300−302を作製した。ヒト化VK配列を遺伝子合成し、ヒトκ軽鎖の定常領域を含む発現ベクター内にクローニングし、発現ベクターLB303−304を作製した。該重鎖及び軽鎖は、哺乳動物細胞での強力で構成的な発現のためのヒトEF1αプロモーターの下流に存在させた。また、キメラ2C10抗体をマウスのVHとVLを使用することによって同様にして構築し、それぞれ、発現ベクターLB305及びLB306を作製した。抗体発現ベクターを表4にまとめた。
【0237】
表4の各ベクターは、ヒトEF1aプロモーターの制御下の重鎖又は軽鎖発現カセットを含有している。ベクターLB300〜302、LB305はヒトIgG2重鎖の定常領域を含有しているものである。ベクターLB308〜309はヒトIgG4重鎖の定常領域を含有しているものである。ベクターLB303〜304、LB306はヒトκ軽鎖の定常領域を含有しているものである。
【0238】
ヒト化IgG4抗体の作製
潜在的エフェクター機能をさらに最小限に抑えるため、最良の結合活性を有するヒト化抗体(2C10_h3と2C10_l2)をヒトIgG4又は安定化ヒトIgG4(S241P)に変換させた。重鎖可変領域2C10_h3をまず、安定化変異S241Pを導入する前に、ヒトIgG4重鎖の定常領域を含むベクターpFUSE−CHIg−hG4(Invivogen)内にクローニングした(表4)。ヒト化IgG4及びIgG4(S241P)を、一過性トランスフェクション後に293F細胞から精製した。産生収量は、IgG2抗体のものより2倍多い25〜35mg/Lであった。IgG4抗体は少量の半分子を有するようであり、これは安定化IgG4抗体では有意に少なかった。安定化IgG4抗体のDNA配列及びアミノ酸配列を
図21に示す。
【0239】
SwiMR発現ベクターでのヒト化IgG4(S241P)抗体のクローニング
SwiMR発現は、抗体産生細胞株の容易な開発のために開発され、蛍光標示式細胞分取(FACS)による高産生性細胞の単離を容易にするための切替可能な膜レポーターが使用された。膜アンカー型GFPのIRES媒介性バイシストロニック発現カセットを目的遺伝子(GOI)の下流に配置した。IRES−GFPカセットには、後で染色体から除去するためのLoxP部位をフランキングさせた。GFP発現レベルをGOIの発現レベルの表示に使用した。高産生性細胞をFACSによって単離し、次いでCreリコンビナーゼで処理し、GFPカセットを除去した。安定化IgG4形式のヒト化2C10をSwiMR発現系でクローニングし、ベクターLB312を作製した。重鎖と軽鎖は、ヒトEF1α プロモーターの制御下の2種類の別々の発現カセットでクローニングした。IRES−GFPカセットを重鎖配列の下流に配置し、2つのLoxP部位をフランキングさせた。このプラスミドには、哺乳動物細胞での選択のためのピューロマイシン耐性遺伝子と細菌増殖のためのβ−ラクタマーゼ遺伝子を担持させる。
【0240】
CHO細胞の安定な選択及び高産生性細胞の単離
100mlのCHOS細胞(1×10
6細胞/ml,Invitrogen)を、120ugのLB312(Asc Iの制限消化によって線状化)及び120ulのFreestyle Maxリージェント(regent)(Invitrogen)でトランスフェクトした。細胞を、10〜20ug/mlのピューロマイシンにより2週間選択した。安定なプールのGFP発現プロフィールをフローサイトメトリーによって特性評価した。最高GFPシグナルを有する上位1%の細胞を、100,000個の細胞を含むプール番号1として選別した。2週間培養した後、プール番号1をGFP発現についてフローサイトメトリーによって再度解析した。再度、最高GFPシグナルを有する上位1%の細胞を、100,000個の細胞を含むプール番号2として選別した。2日間培養した後、プール番号2を2uMの組換え膜透過性DNAリコンビナーゼCre(TAT−NLS−Cre,Excellgen)で処理した。GFP発現プロフィールを、1週間の培養後に解析した。約10%の細胞において、染色体からのGFP発現カセットの成功裡の除去を示すGFP発現の完全な喪失が見られた。GFP陰性細胞を、384ウェルプレート内に単独細胞として選別した。2週間後、10×384ウェルプレートから約800個のコロニーが成長した。
【0241】
さらなるヒト化抗体
また、VH1−69及びVL1−39ヒト生殖細胞系列フレームワーク内にクローニングした2種類のCDRグラフト化VH配列と2種類のCDRグラフト化VL配列を用いてヒト化抗体も作製した。本発明者らは、このさらなる実験において、2種類の重鎖(HB1とHB2)及び2種類の軽鎖(KB1とKB2)を作製した。この重鎖配列と軽鎖配列HP+KPを陽性対照として使用する。このような構築物の組合せをHEK293細胞において一過性発現させ、抗体をプロテインAクロマトグラフィーによって精製し、hCD40結合について試験した。
【0242】
図14は、フレームワーク3における2C10HP及び2C10HB1並びに2C10HB2構築物間のアミノ酸の違いを示す。
図15は、ヒト化2C10抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列を示す。この重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は2C10HP、2C10HB1、2C10HB2、2C10KP、2C10KB1及び2C10KB2を含む。したがって、一部の特定の実施形態では、抗CD40抗体は、以下のいずれかの2C10H−Kの組合せ:
1.2C10HP+2C10KP
2.2C10HB1+2C10KB1
3.2C10HB1+2C10KB2
4.2C10HB1+2C10KP
5.2C10HB2+2C10KB2
6.2C10HB2+2C10KB1
7.2C10HB2+2C10KP
8.2C10HP+2C10KB1
9.2C10HP+2C10KB2
を含むものであり得る。
【0243】
精製抗体によるCD40のインビトロ結合
ヒト化抗体及びキメラ抗体を、100又は200mlの293F細胞の一過性トランスフェクション後に精製した。抗体は、プロテインAカラムを用いて、トランスフェクションの4日後に回収した条件培地から精製した。
【0244】
CD40結合速度論の測定
CD40結合速度論を、Forte Bio(contracted to Aragen Bioscience)で測定した。精製CD40をビオチン化し、ストレプトアビジンバイオセンサー上に固定化した。
【0245】
インビボ試験のためのバイオプロダクション
CHO細胞のトランスフェクション及び安定的にトランスフェクトされた細胞の選択後、抗体をプロテインAカラムによって精製した後、バッファー交換し(20mMクエン酸ナトリウム,50mM NaCl,5%マルトース,pH6.0)、0.2μmで濾過した。プール番号1を、CD FortiCHO培地(Invitrogen)中での25L容ウェーブ式バッグ内培養(wave bag culture)のセットアップのために使用した。培養液は、3、5及び7日目に3回、10%CD Efficient Feed C(Invitrogen)とともに供給した。精製抗体の最終収量は合計1.6gであった。抗体をSDS−PAGE及びSEC−HPLC解析によって特性評価し、単量体抗体として99.4%純粋であった。
【0246】
細胞株の開発
単独細胞のコロニーを、3回のELISA及び1回のフェッドバッチ産生によってスクリーニングした。スクリーニングプロセス全体を通して、細胞をCD FortiCHO培地中に維持した。384ウェルプレートのすべてのコロニーを96ウェルプレート内に取り出した。各ウェルからの1.2μlの培養培地を使用し、抗ヒトFc抗体でコーティングしたELISAプレート内で抗体をスクリーニングした。上位240個のクローンを10個の24ウェルプレート内で拡大培養した。5日間培養した後、1.2μlの培養培地を再度、抗体レベルについてスクリーニングし、上位60個のクローンを10×6ウェルプレート内で拡大培養し、振盪インキュベータ内で培養した。5日間培養した後、6ウェルプレートを、細胞を1:10で新たな一組に6ウェルプレート内に継代することにより二連にした。元の一組の6ウェルプレートの培養物を消衰まで増殖させた後、抗体レベルをELISAによって測定した。二連の組の6ウェルプレートの上位24個のクローンを30mlの培養液中で125ml容振盪フラスコ内で拡大培養した。クローンを30ml容フェッドバッチ産生に供した。供給ストラテジーは、3、5、7、9及び11日目に7.5%のEx−Cell Advanced CHO Feed 1(Sigma)であった。上位のクローン3C9−I6は約1.2g/Lの産生力価を示すものであった。
【0247】
霊長類キメラ2C10及びヒト化2C10のインビトロ薬理学
本発明者らは、本発明者らのリード候補の以下の重要なインビトロ薬理学的属性:
・CD154−CD40結合によって誘導されるB細胞活性化の抑制
・B細胞の直接活性化なし
・CD40の高親和性拮抗薬(例えば、K
dは約10
−10M以下、約10
−10M〜約10
−9M、又は本明細書に記載のとおりである)
を特定した。
【0248】
新規な免疫処置アプローチ及び広範なインビトロスクリーニングアプローチにより、本発明者らは、このような基準を満たし、ヒトCD40に対する非枯渇性/非活性化性アンタゴニスト抗体である抗CD40抗体を同定した。
【0249】
インビトロ試験及びインビボ試験により、ヒト化形態は優れた特性を保持していることが確認された。
【0250】
先のセクションに記載のように、2C10 mAbは、ヒト重鎖及び軽鎖のフレームワーク内へのCDRグラフティングによってヒト化した。元の2C10 mAbの特性を維持するため、ヒト化2C10構築物をBiacoreにより、ヒトCD40に対する親和性でスクリーニングした。上位3種類のヒト化2C10抗体はすべて、親2C10 mAbと比べておよそ2倍の親和性のわずかな低下を示した(表5)。最も重要なことには、これらはすべて、親2C10 mAbの並外れて遅い解離速度を維持していた。これらの抗体の中でも、390pMで最も高い親和性を示したクローン2.189.2をリードヒト化mAb(h2C10)として選択した。
【0251】
表5:ヒト化型の2C10のCD40受容体結合速度論
【表5】
【0252】
ヒト化2C10の結合速度論を競合体と比較すると、h2C10の全体的な親和性は依然として、ナノモル範囲の親和性を有する競合体よりもかなり良好である。本発明者らはまた、h2C10の結合親和性を、ヒトCD40と前臨床評価で使用した非ヒト霊長類種のものに由来するCD40間でも比較した。
図16に示されるように、h2C10は、これらの霊長類種のCD40に対して同等の親和性を有する。
【0253】
霊長類キメラ2C10及びヒト化2C10のインビボ特性評価
2C10のインビボ薬力学、薬物動態及び診査的安全性評価をアカゲザル(rhesus monkey)において、2C10の霊長類キメラ構築物及び臨床候補ヒト化h2C10抗体を用いて実施した。インビトロ結合速度論に基づいたヒト化型リード2C10(mAb 2.189.2;h2C10)の選択後、本発明者らは、h2C10をアカゲザル(rhesus monkey)でのPK/PD試験に進め、そのさらなる特性を特性評価した。これらの試験(これは、極めて重要な広範な実験エンドポイントがカバーされている)で得られたデータによりh2C10の優れた特性が明白に確立される。
【0254】
PD、PK及び安全性エンドポイントを調べるアカゲザル(rhesus monkey)での試験を終了した。主要なエンドポイント及び目的を含む試験計画の重要要素を表6(アカゲザル(rhesus monkey)での2C10の薬力学(PD)、薬物動態学的(PK)及び安全性試験)にまとめる。主要転帰及び主要実験エンドポイントに関する関連する比較評価には:
・血中のBリンパ球数及びTリンパ球数に対する効果
・T細胞依存性抗原スカシガイヘモシアニン(KLH)に対する体液性免疫応答に対する効果
・血中B細胞上のCD40受容体占有率(PD)
・薬物動力学(PK)
・抗薬物抗体(ADA)の形成によって評価される免疫原性
・CBC、血清化学検査及び完全検死を含む診査的毒物学的検査
を含めた。
【0255】
表6.アカゲザル(rhesus monkey)での2C10のPD、PK及び安全性試験
【表6】
【0256】
試験結果を以下のセクションにまとめる。h2C10は、B細胞枯渇なしでのCD40受容体活性化の選択的ブロックが治療的有益性をもたらすことが期待される病状の処置のために使用され得る。
【0257】
T細胞媒介性免役に対する効果
h2C10がインビボでT細胞依存性抗体応答(TDAR)をブロックすることをインビボで証明するため、サルを、h2C10の投与後6時間目にKLHで免疫処置した。その後、KLHに対する抗体力価を毎週測定した。
【0258】
10及び25mg/kg用量のh2C10をサルに投与した後、KLH抗原刺激を行なった。IgG及びIgMの両方の抗KLH力価を、処置後28日目まで毎週測定した。
図17は、ヒト化型の2C10で最大試験用量において、ほとんどの場合、10mg/kg用量レベルでKLH抗体応答の完全阻害が得られたことを示す。IgM応答及びIgG応答はどちらも抑制された。
【0259】
B細胞に対する非枯渇性効果
アンタゴニストCD40抗体の開発における目標には標的のCD40+細胞の枯渇を最小限にすることが含まれていたため、本発明者らは、リンパ球亜集団に対する効果、特にB細胞に対する効果を解析した。
【0260】
また、10又は25mg/kgのヒト化形態の2C10(h2C10)でのサルの処置は、CD40標的は、これらの濃度の抗体によって完全に飽和される(以下の受容体占有率のセクション参照)にもかかわらず、B細胞に対して認識可能な枯渇性効果を有しなかった。
【0261】
B細胞上の2C10結合部位の飽和が最終測定日(28日目)まで持続したにもかかわらず、いずれかの用量のh2C10を投与されたすべてのサルで、正常なBリンパ球サブセット及びTリンパ球サブセットが維持された(
図18)。このような結果は、サルにおいて、10mg/kgという低い用量の注射で2C10が、そのB細胞(並びにおそらく単球及び他の抗原提示細胞)上の治療標的であるCD40に、望ましくないB細胞の枯渇を引き起こすことなく持続的に結合し得ることを示す。
【0262】
2C10がB細胞を枯渇させないことが示されたことは、3A8及びChi220のみならず競合体と比べたときの明白な利点を示唆する。
【0263】
薬力学
CD40受容体占有率
霊長類キメラ及びヒト化型の2C10によるCD40標的の結合及び占有率を、CD20+ B細胞上のCD40に対して2C10が利用可能な結合部位をフローサイトメトリーにより、蛍光標識した2C10及び標識した非競合性抗CD40抗体を用いて測定することにより調べた。血液試料を複数の日に、対照サル及び霊長類キメラIgG4又はヒト化2C10のいずれかで処置したサルから採取し、FACSによって解析した。標的結合の度合(受容体占有率%)を直接、平均蛍光強度の記録値から計算した。
【0264】
ヒト化2C10抗体は、10及び25mg/kgの単回用量で静脈内投与した。B細胞上の表面CD40は3日目までに完全に飽和し、いずれかの用量のh2C10が投与されたすべてのサルで、その効果が最終測定日(28日目)まで持続した。ヒト化2C10での処置後28日目にサルから採取した血液のフローサイトメトリー解析の代表的なデータを
図19に示す。
【0265】
このような結果は、10mg/kgという低い用量のh2C10の単回注射で、B細胞上のCD40受容体が少なくとも28日間、完全に飽和し得ることを示す。
【0266】
薬物動力学及び抗薬物抗体応答
CD40受容体占有率に基づいた2C10の薬力学的効果と2C10の薬物動態間の明白な関連性を確立するため、2C10の血漿濃度を、受容体占有率を測定したものと同じ血液試料の血漿において測定した。また、血漿濃度の解析により、2C10の薬物動態プロフィール、最も重要なことには、その血漿中での持続性(半減期によって測定)の特性評価が可能であった。この測定により、有効治療濃度を維持するために必要とされる投薬頻度の手引きがもたらされる。
【0267】
10mg/kg又は25mg/kgのいずれかのヒト化2C10で処置したサルで測定された平均血清濃度を
図20にプロットしている。このデータは、動物が全試験期間、2C10に曝露されたこと、及びヒト化2C10がサルではおよそ15日間(9〜20日間の範囲)の半減期を有することを示す。この半減期は、霊長類における治療用抗体で予測されるものの範囲内であり、臨床試験において比較的低頻度の投薬スケジュール(例えば、2週間に1回以下)にする裏付けとなるはずである。完全なデータセットのさらなるモデル設計により、有効な抗体濃度を持続させるために必要とされる用量及び頻度のロバストな推定が、h2C10の初期の臨床試験において可能になる。
【0268】
ヒト化2C10の別の評価は、h2C10に対する抗体(ADA)の生成の可能性であった。これは、ある種に由来するエピトープの生物製剤を異なる種(例えば、ヒト化mAbを霊長類に)投与し、該薬物の血漿からの急速な排出がもたらされた場合に起こり得る。この試験では、タイムコースプロフィールにおいて、試験中、測定可能な抗2C10力価を示す動物はいなかったため、h2C10に対する抗体が生成される形跡はみられなかった。
【0269】
予備安全性評価
このセクションに記載した実験は、免疫機構及びオフターゲット効果に対するh2C10の有害な帰結の可能性を調べるために実施した。生物学的療法では、このような評価は、ヒトを薬物に曝露する前の安全性を評価するため、及び臨床試験のためのリスク軽減計画を作成するためにとりわけ最も重要である。サルの免疫機能又は病態において予期しない転帰又は望ましくない転帰がなんら存在しないことは、h2C10の全体的安全性評価が良好であると考えられる。また、2C10で処置したサルにおいて、血液検査パラメータ、例えば血小板計数及び血清化学検査パラメータの変化についての常套的な試験を投与後、何日か実施し、キメラ2C10及びヒト化2C10での処置による影響はなかった。25mg/kgの霊長類キメラ2C10で2回処置した2匹の動物を、処置に関連する病態の肉眼的及び鏡検的形跡について評価した;処置に関連する病理学的変化は観察されなかった。また、血栓塞栓性(thromoboemolic)合併症を除外するため、すべての組織を、繊維素沈着について特殊な染色によって検査した。無症候性凝固異常の形跡は検出されなかった。重要なことには、CD40受容体を完全に占有するために必要とされる用量を明らかに超えており、したがって、IND承認(−enabling)フェーズにおいて実施される重要な毒物学試験で試験される用量レベルに近い比較高い用量が本試験において試験された。この予備安全性評価はh2C10の安全性になんら問題がないことを示す。
【0270】
これらの統合的データは、関連する霊長類モデルにおいて、h2C10が、CD40+標的細胞の不要な活性化又は枯渇を引き起こすことなく、及びオフターゲット毒性の形跡なくCD40活性化の特異的阻害が所望される患者の処置が意図されたモノクローナル抗体のための望ましい薬力学的、薬物動態学的及び安全性の属性を有することを示す。
【0271】
本発明の特定の態様を説明し、図示したが、かかる態様は、本発明の実例にすぎず、添付の特許請求の範囲に従って解釈される本発明を限定するものでないとみなされたい。本明細書に挙げた刊行物及び特許出願はすべて、引用によりその全体があらゆる目的のために、あたかも個々の各刊行物又は特許出願が具体的に個々に示されて引用によりあらゆる目的のために組み込まれているかのごとく本明細書に組み込まれる。前述の本発明を、明瞭な理解を目的とした例示及び実施例によってある程度詳細に説明したが、当業者には、本発明の教示に鑑みると、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく一定の変更及び修正がなされ得ることが容易に自明であろう。