【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり本発明を限定するものではない。
【0047】
製剤A
CPX−351製剤及び単純な調製
CPX−351(シタラビン:ダウノルビシンの注射用リポソーム)は、50mLのバイアル中に、無菌的で発熱物質を含まない紫色の凍結乾燥製品として供給されている。1単位を1.0mgのシタラビン+0.44mgのダウノルビシン(ベースとして)とすると、各バイアルは100単位を含有する。これらの物質は19mLの注射用水で再構成し、室温で10分間穏やかに回旋させた。再構成した生成物の作業用アリコートは、−20℃で12カ月を超えない期間、凍結保存した。
【0048】
患者の検体採取及び調製法;末梢血(PB)又は骨髄(BM)検体を、AML、ALL、MPN、又はCLLと診断された患者から治療前に入手した。全ての検体は、オレゴンヘルスアンドサイエンス大学の学内審査委員会によって承認されたプロトコルに基づき、インフォームドコンセントを得て入手した。血液又は骨髄検体を、フィコール勾配、次いで塩化アンモニウムカリウム(ACK)緩衝液を用いた赤血球溶解により分離した。
【0049】
(実施例1)患者の白血病細胞に対するCPX−351のex vivo細胞毒性の決定
薬物感受性試験を、標準の既知の方法によって実施した。簡潔には、患者骨髄検体からの単核細胞を、10
−4Mの2−メルカプトエタノール(Sigma)を添加したR10(10%FBS(Atlanta Biologicals、ジョージア州Lawrenceville)、L−グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)、及びFungizone(登録商標)(Invitrogen)を添加したRPMI−1640培地)中で培養した。リンパ系白血病サンプルからの細胞を、10
−4Mの2−メルカプトエタノール(Sigma)及びインスリン−トランスフェリン−亜セレン酸ナトリウム(Invitrogen)を添加したR20(20%FBS(Atlanta Biologicals、ジョージア州Lawrenceville)、L−グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)、及びFungizone(登録商標)(Invitrogen)を添加したRPMI−1640培地)中で培養した。
【0050】
細胞を96ウェルプレート(50,000細胞/ウェル)中で培養し、段階的な濃度のCPX−351に3日間曝露し、この時点でテトラゾリウムベースのMTSアッセイ(96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay、Promega)を使用して、各ウェル中の生細胞の相対数を評価した。薬物全く存在しないウェルに播種した細胞の細胞生存率の値を生存率100%として、CPX−351用量応答曲線の各点を、この薬物なしの条件の細胞生存率の値に対して正規化した。三次多項式曲線適合を使用して、各検体のIC
50値を得た。
【0051】
AMLは現在CPX−351が標的とする適応症であることから、異なる臨床的特徴を示すAML患者のコホートに関する複数の臨床研究において有効性を示す有望な証拠が得られている。53人のAML患者から得た末梢血又は骨髄検体からのAML芽球を段階的な濃度のCPX−351(10:2μM;1:0.2μM;0.1:0.02μM;0.01:0.002μM)と共に、又は薬物なしで3日間培養し、生細胞の相対数をテトラゾリウムベースのMTSアッセイで評価した。薬物の非存在下で培養した細胞のMTS値を100%として、各用量点のMTS値を、未処置の細胞のMTS値に対して正規化した。三次多項式曲線適合を使用して、各検体のIC
50値を計算した。完全な患者統計データ及び臨床データはこれらのうち42名について利用可能であり、表1に要約した。AMLリスク群を評価するための完全な細胞遺伝学的データは40人の患者について利用可能であり、欧州白血病ネット(ELN)指針を用いた分類により、3、21、12、及び4人の患者が、それぞれ好適、中間−I、中間−II、及び有害の群に該当していた。
【0052】
好適リスクには、t(8;21)(q22;q22)、inv(16)(p13.1q22)又はt(16;16)(p13.1q22)の正常な核型と変異NPM1、及び正常な核型と変異CEBPαが含まれる。
【0053】
中間−Iリスクには、FLT3−ITDと変異NPM1及び正常な核型、FLT3−ITDと野生型NPM1及び正常な核型、FLT3−ITDが無い野生型NPM1及び正常な核型が含まれる。
【0054】
中間−IIリスクには、t(9;11)(p22;q23)、及び好適又は有害と分類されないあらゆる細胞遺伝学的型が含まれる。
【0055】
有害リスクには、inv(3)(q21q26.2)又はt(3;3)(q21q26.2)、t(6;9)(p23;q34)、t(v;11)(v;q23)、モノソミー5又はdel(5q)、モノソミー7、異常な17p、及び複合核型(3つ以上の異常)が含まれる。
【0056】
検体の大多数はde novoでAMLと新しく診断された患者から入手し(34/42人、81%)、患者の大多数はサンプル採取後に7+3療法レジメンを受けた(32/42人、76%)。研究対象のAML患者のうちの35人を、検体採取後に7+3レジメンで治療された。これらの患者のうちの24人が初期の完全応答を達成した一方で、11人の患者が進行(progressive disease)を示した。完全応答又は進行を示す患者のCPX−351のIC
50値を表す。診察時の基本的な患者統計学的特徴及びWBC数などの臨床的パラメータの割合、並びに、遺伝学的−細胞遺伝学的なリスク層は、AML患者の一般的な集団の代表的なものであった。
【0057】
図1A及び表2のデータが示すとおり、原発性AML白血病芽球は一般にex vivoでCPX−351細胞毒性に対して感受性があった。IC
50値は0.035:0.007μM〜9.77:1.95μMの範囲であった。1つ以外の全てのサンプル(98%)が投与の72時間後のヒト血漿CPX−351濃度の1/10よりも低いIC
50を示し(60:12μMのシタラビン:ダウノルビシン)、これらの患者において、CPX−351治療により臨床応答を潜在的に達成できることを示唆している。
【0058】
図1Bに示すように、ex vivoでのCPX−351処理(低IC
50)に対する強力な抗増殖応答が、典型的には悪い予後と慣用の化学療法への耐性と関連する中間−II又は有害な細胞遺伝子学的異常を有する細胞で観察された。
【0059】
表2中で強調するように、中間−II又は有害の細胞遺伝学的リスク分類の患者から合計17個のサンプルを入手した。
図1Bに示すように、この患者亜群の全体的なex vivoでのCPX−351への応答は、中間−II及び好適リスクの患者のそれと同様であり、4つのリスク群間でCPX−351に対するex vivoでの応答性に有意差はなかった。このex vivoでの応答性は、慣用のリスク層別化とは無関係に多様な亜分類にわたるAML患者において完全応答の誘発が幅広く観察されたCPX−351の臨床活性と良く相関している。
【0060】
慣用の7+3シタラビン:ダウノルビシン治療に対する臨床反応を、その芽球を採取した後に7+3療法レジメンを受けた35人のAML患者におけるCPX−351に対するex vivo応答と比較し、評価した。
図1Cに示すように、これら35人の患者のうち、24人が完全応答(CR)を達成し、11が進行(PD)を示した。これらの患者由来の白血病芽球は、最初に7+3に応答したかどうかにかかわらず、ex vivoでCPX−351細胞毒性に対して同様の感受性を示した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
CPX−351のex vivoにおける感受性はまた、血液悪性腫瘍の様々な亜型にわたって特徴づけられた。ALL(38人)、MPN/MDS(18人)、及びリンパ腫(71人)を含む127人の追加の患者検体を用いた。IC
50により推定されるCPX−351の細胞毒性効力を、各個人の患者サンプルについてex vivoで決定し、
図2A〜2Cに示した。各診断的分類の中で広範囲のIC
50値が観察された(0.03/0.006μM〜10/2μM)。試験した180個全ての患者サンプル(53人のAMLが含まれる)のIC
50の中央値は0.558:0.112μMであり、大多数(153/180個、85%)が2.0:0.4μM未満のIC
50値を示し、これは、白血病患者で観察された72時間血漿薬物濃度として報告された60:12μM(Gordon,M.ら、Proceedings of the AACR(2016年4月)57:アブストラクト#287)よりも30倍低い。観察された、循環薬物濃度に対して低いCPX−351のIC
50の中央値は、広範囲の診断からの白血病細胞の増殖又は生存を潜在的に阻害する、CPX−351の一般に高い効力を示している。
【0064】
(実施例2)遺伝子変異の効果
より高いCPX−351の効力が、FLT3−ITD表現型を有するAML患者の芽球で観察される。FMS様チロシン受容体キナーゼ(FLT3)は正常な造血及び白血病誘発において重要な役割を果たし、ほとんどのAML芽球中で発現している。AML患者の20%〜25%で、FLT3遺伝子はFLT3の膜近傍ドメイン内に内部タンデム複製(FLT3−ITD)を獲得し、患者の予後不良に関連している。FLT3−ITDの状態が既に判明している、実施例1の研究の42人のAML患者のうち、14人の患者がFLT3−ITD変異を保有すると特定され、残りの28人はFLT3−ITD陰性であった。ex vivo細胞毒性の結果は、FLT3−ITDの陽性が、驚くべきことに、CPX−351誘導性の細胞毒性へのより高い感受性に関連していることを示している(
図3A参照)。具体的には、FLT3−ITDを示す白血病芽球は、FLT3−ITD陰性患者の芽球サンプル(IC
50=1.32:0.26μmol)と比較して十分に低いIC
50値(0.29:0.058μmol)を示した。FLT3−ITD陽性と陰性のサンプル間の、CPX−351細胞毒性に対する応答の相違は統計的に有意であった(p=0.047)。また、FLT3−ITD陽性患者は、白血球数(WBC)の平均値が91,000/mm
3であり、診断時の平均の29,000/mm
3に対して有意に(p=0.0002)多いことも注目された。
【0065】
ヌクレオフォスミン(NPM1)及びCCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ(CEBPα)を含む他のよく知られた変異は、それぞれ、13人及び4人の患者で見つかった。しかし、CEBPα陽性例で感受性がより高い傾向があったものの、これら2つのよく知られた変異はいずれも、ex vivoのCPX−351処理への応答に顕著な影響を示さなかった。(
図3B及び3C。)
【0066】
(実施例3)患者の白血病芽球におけるex vivo感受性とCPX−351の取り込みとの相関
前臨床の白血病動物モデルにより、CPX−351を注射した際、これらの動物に移植した骨髄中の白血病細胞は、シタラビン及びダウノルビシンを大部分は相乗的な薬物比を維持するインタクトなリポソーム形態で素早く取り込むことができ、その結果、遊離薬物のカクテル投与と比較して白血病細胞中での薬物蓄積が増加し長期化することが実証された。以下のデータは、遊離薬物と比較して増強されたCPX−351の取り込みを示す。したがって、ex vivoでのCPX−351の取り込み及び細胞毒性は、臨床的なCPX−351の成功の予測に用いることができる。
【0067】
ex vivoでCPX−351への感受性についてスクリーニングした患者検体からの生存凍結細胞を、最大試験濃度のCPX−351(10:2μMのシタラビン:ダウノルビシン)で24時間曝露した。その後、細胞をPBSで3回洗浄し、ダウノルビシン蛍光の取り込みについてBD FACSAriaフローサイトメーターを用いて分析した。
【0068】
ダウノルビシンの固有の蛍光を細胞内で生物利用可能な薬物の半定量的指標として利用して、フローサイトメトリー分析を上述の12個の患者サンプルについて行った。サンプルは6人のAML及び6人のCLLのものであり、初期ex vivoスクリーニングで広範囲のIC
50値を示した。細胞を段階的な濃度のCPX−351に24時間曝露した後、BD FACSAriaフローサイトメーターでダウノルビシンの取り込みについて分析した。生細胞をFSC対SSCの散布図中で特定し、全蛍光強度を定量した(
図4A、左)。未処理の細胞に対するCPX−351に曝露した細胞の平均蛍光強度の比を使用して薬物取り込みの指数を生成した。ここで、指数1は取り込みなしを示し、1より高い数値はダウノルビシンの取り込みを示す。
【0069】
統計分析:片側p値を用いた独立t検定を用いて、変異型と野生型のFLT3(ITD)、NPM1、及びCEBPα群におけるCPX−351活性を比較した。<0.05のp値を有意であるとみなした。一方向ANOVA分析を用いて、複数の遺伝学的−細胞遺伝学的リスク群間の効果を比較した。統計分析はPrismソフトウェアバージョン5.0aを使用して行った。
【0070】
未処理の細胞と比較して、CPX−351で処理した細胞は細胞内蛍光強度の量が著しく増加していた。CPX−351内にカプセル封入されたダウノルビシンの蛍光は完全に消光されることから、このことは遊離ダウノルビシンが存在することを示している。ダウノルビシンの取り込みにおける処理と未処理の細胞サンプルの相違は、細胞集団の平均蛍光強度(MFI)のシフトとして示されている(
図4A、右)。
図4Bは取り込み及び細胞毒性の比較を示す。12個のサンプルに対するCPX−351のIC
50値を対応するMFI値に対してプロットすると、CPX−351に対する細胞感受性(IC
50)とCPX−351の取り込み効率(MFI)との間に強い相関があることが明らかとなり、その相関係数は0.703であった(
図4C)。
【0071】
白血病骨髄細胞によるCPX−351のインタクトなままの選択的取り込みは以下のように示された。1用量(dose)のCPX−351で処理した、CCRF−CEM(白血病)移植マウスの大腿骨髄細胞を、薬物投与の18時間後に採取した。白血病細胞及び正常な骨髄細胞をヒトCD45特異的磁気ビーズで分離し、CPX−351の取り込みについて分析した。シタラビン及びリポソーム脂質をそれぞれ
3H及び
14Cで標識し、液体シンチレーションで定量した。ダウノルビシンはHPLCで分析した。結果を
図5A〜5Cに示す。1回の試験あたり10本の大腿骨(5匹のマウス)を用い、各バーは、3回の反復試験の平均±標準偏差を表す。
【0072】
図5Cに示すように、10
6細胞あたり約225pmolのリポソームの標識した脂質が白血病細胞に取り込まれたが、正常な骨髄には約110pmol/10
6細胞しか取り込まれなかった。リポソーム内に含有されていた薬物のレベルも、白血病細胞によって良好に取り込まれ、白血病細胞ではシタラビンは24pmol/10
6細胞が、ダウノルビシンは約16pmol/10
6細胞が取り込まれ、いずれの薬物についても正常な骨髄ではより低いレベルであった(シタラビンは約3pmol/10
6細胞、ダウノルビシンは約7pmol/10
6細胞)。リポソームの脂質とそれに内包されていた薬物とのモル比は約10:1であり、この結果は、これらの細胞によって取り込まれる際に薬物がリポソーム内に留まっていたことを示している。
【0073】
(実施例4)CPX−351はFLT3−ITD+AML患者に優れた抗腫瘍効果を示す
本実施例では、FLT−3遺伝子に活性化変異を有するかどうかを決定するようにAML患者をスクリーニングして、第3相臨床試験を行った。活性化変異AML−ITD+を持つことが判明したAML患者には、3用量のCPX−351を、1日目に1回目の投与ステップ、3日目に2回目の投与ステップ、及び5日目に3回目の投与ステップからなる投与サイクルで投与した。CPX−351を用いた治療プロトコルは米国特許第8,092,828号に記載されている。血漿及び/又は骨髄サンプルの分析を含む患者の応答性を測定及びモニタリングし、応答率及び生存率を測定した。NPM1及び/又はCEBPαの変異が陽性であった患者の亜群も含まれていた。初期研究はFLT−3の変異に焦点をあて、NPM−1及びCEBPαの変異を持つ個体も含まれていた。研究に参加した患者を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
FLT−3の変異を有する又は有さない対象に関する応答性を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
図6では、これらの変異の保有者のCPX−351と7+3療法の応答率を比較した。
図6に示すように、FLT−3にITD又はTKD変異のどちらかを有する者は、CPX−351に対して68.2%の応答率を示したが、7+3に対しては25.0%の応答率しか示さなかった。NPM−1変異を有する患者は、CPX−351に対して92.3%の応答率を示したが、7+3に対しては58.3%の応答率しか示さなかった。CEBPαの変異を有する個体では、CPX−351の応答率は33.3%であり、7+3の応答率は20.0%であった。
【0078】
本研究におけるFLT−3変異陽性及びFLT−3の変異陰性の両方の参加者の生存率を表5に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
様々なコホートの生存率を
図7A〜7Cに示す。全ての事例において、生存率は変異の保有者において大きく改善されており、特に、CEBPαに変異を有する対象の25%が、CPX−351で治療した場合に27カ月を超える生存を示した一方で、7+3で治療した患者では、3カ月を超えて生存した者はいなかった。
【0081】
(実施例5)FLT−3変異細胞のCPX−351に対する感受性、及びCPX−351+FLT−3阻害剤の併用治療に対する感受性
本実施例では、細胞生存率、及びフローサイトメトリーによって決定されたダウノルビシン蛍光に基づく細胞内取り込みを、実施例1及び3に記載のとおり測定した。
【0082】
A.AML細胞株(FLT−3−ITDを有するMOLM−13及びMOLM−14、ならびにME−1(変異体を含み、FLT−3が活性化されている)を含む)の、CPX−351に対する感受性及びCPX−351の取り込みを決定した。また、FLT−3変異を持たない、U−937、HL−60、KG−1、及びGDM−1を含む細胞についても比較した。これらの細胞の培養物をCPX−351で処理し、IC
50及びCPX−351の取り込みについてアッセイした。
図8Aは、細胞生存率パーセントをCPX−351のnM濃度に対してプロットすることによって、IC
50に関する結果を示す。
図8Aに見られるように、FLT−3変異細胞は、FLT−3非変異細胞よりも低いIC
50を示す。
図8Bは取り込みの結果を示す。CPX−351のnMによる濃度を、本来有する蛍光を考慮するために正規化した平均蛍光強度(MFI)に対してプロットしている。FLT−3変異を有する細胞は、有しない細胞よりもCPX−351の取り込みがより効率的である。
【0083】
B.FLT−3阻害剤との併用効果を決定するために、キザルチニブ又はミドスタウリン(FLT−3阻害剤)処理と共に又は当該処理なしで、細胞をCPX−35に曝露した。一つのプロトコルでは、ME−1及びMOLM−14細胞を、10nMのキザルチニブによる前処理に0、2、8、16、及び24時間曝露し、その後、100μMのCPX−351を2時間添加した。CPX−351の取り込みを、未処理の対照に対して正規化したフローサイトメトリーによって決定したダウノルビシン蛍光によって測定した。結果を
図9A〜9Dに示す。グラフ中のx軸はCPX−351の取り込みを蛍光の標準単位で示し、y軸は正規化した細胞数を表す。
図9A及び9Bに示すとおり、全ての未処理細胞が取り込みを全く示さなかった一方で、CPX−351で処理した細胞は最終的には2つの細胞集団に分かれ、その一方は他方よりもCPX−351の取り込みが効率的であった。
図9A及び9Bから、前処置時間を延長するにつれて一部の細胞のCPX−351取り込み能力が減少することが明らかである。
図9C及び9Dに示す結果は、24時間までの様々な時点の合成である。
【0084】
C.相乗作用を決定するために、細胞株を384ウェルプレートに播き、カスタマイズした、用量が段階的に増加する濃度のCPX−351及びFLT−3阻害剤に曝露した。CPX−351及びFLT−3阻害剤を、(a)同時に(C+Q又はC+M)、(b)24時間のCPX−351の前処理(C→Q若しくはC→M)、又は(c)24時間のFLT−3阻害剤の前処理(Q→C若しくはM→C)のいずれかで加えた。各薬物の組合せの相乗作用を決定するために、EOBAアルゴリズムを用いた。
【0085】
図10Aは、プロトコルの概要をCPX−351又はFLT−3阻害剤の対応する濃度をnMの数値と共に示す。
図10Bは、用いた2つの薬物の様々な濃度の生存率を測定し、EOBAアルゴリズムを使用して得られる結果を拮抗的、相加的、又は相乗的として示す。
図10Cは、様々な濃度の組合せ及び上述の様々なプロトコルの結果として得られた生存率の結果、ならびにそれにより得られた、EOBAアルゴリズムに基づいた相乗作用の決定を示す。上述のプロトコルについて、KG−1、ME−1、MOLM−13、及びMOLM−14の結果を
図10Cに示す。示すように、CPX−351とキザルチニブ又はミドスタウリンのどちらかとの特定の組合せは、CPX−351の投与がFLT−3阻害剤の投与に先行する場合、又はこれらを同時に投与する場合に、高い相乗作用を示す。
【0086】
D.FLT−3阻害剤及びプロトコルの様々な組合せを2つの細胞株で比較して、相乗作用を他の方法で決定した。段落Cの実験手順を行い、Chou−Talalayアルゴリズムを使用して結果を分析した。
図11Aに示すように、CPX−351とFLT−3阻害剤の様々な組合せを、陰影をつけたボックスによって表すウェル中で試験した。
図11Bは、上述の3つのプロトコル全てについて、Chou−Talalay分析の結果、すなわち組合せ指数(CI)を
図11Aに示すそれぞれの濃度についてプロットする、アイソボログラムの一例を示す。
図11Cは、これらの3つのプロトコル及び
図11Aに示す濃度レベルの、GDM−1細胞及びMOLM−14細胞の結果を示す。各グラフ上の円は、
図11Aに示す各四角の濃度の組合せを表す。図に見られるように、MOLM−14細胞では、キザルチニブ又はミドスタウリンのどちらかと共に又はその前にCPX−351を投与することはにより、相乗作用を示す多数のウェルが得られた一方で、これらの薬物をCPX−351の前に投与すると、より拮抗的な結果を示した。GDM−1細胞の結果には有意差はなかった。
図11Dは、
図11Cに示す各プロトコルについて、その組合せ指数(CI)値に基づいて様々な分類に該当させたデータ点の数を示す一連のグラフである。
【0087】
E.要約すると、FLT−3−ITD又はFLT−3−活性化変異を含有する細胞株は、他の遺伝子異常を有する細胞株と比較して、CPX−351に対してより感受性が高く、増加したCPX−351の取り込みを示した。
【0088】
16時間のキザルチニブを用いた前処理により、全細胞集団の約50%がダウノルビシン蛍光の減少を示し、これは、FLT−3阻害への長期の事前曝露がこの亜集団においてCPX−351の取り込みを減少させ得ることを示している。
【0089】
しかし、CPX−351及びFLT−3阻害剤を同時に提供した場合、又はFLT−3阻害剤の曝露の24時間前に細胞をCPX−351に曝露した場合に、強い相乗作用が観察された。