特許第6976948号(P6976948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976948
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】面取りされた排液孔をもつカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   A61M25/00 502
   A61M25/00 534
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-531321(P2018-531321)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公表番号】特表2018-537233(P2018-537233A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2016082059
(87)【国際公開番号】WO2017108879
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年10月25日
(31)【優先権主張番号】15201646.5
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513279799
【氏名又は名称】デントスプリー・アイエイチ・エービー
【氏名又は名称原語表記】DENTSPLY IH AB
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】カールソン、クリスティアン
【審査官】 伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】 特公平02−021380(JP,B2)
【文献】 米国特許第04554849(US,A)
【文献】 特表2003−505252(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0253104(US,A1)
【文献】 特表2010−530266(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0046633(US,A1)
【文献】 特表2014−523351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルの横壁を突き抜ける孔を形成するための方法であって、前記方法は、
各々が内腔を有する一対の管状打抜き部材の間に前記カテーテルのセクションを設けることと、
前記カテーテルの前記横壁を突き抜けるように打ち抜き、それにより前記横壁から一対の対向して位置する孔片を切り離すために、前記一対の管状打抜き部材のうちの少なくとも1つの管状打抜き部材をもう一方に向かって駆動することと、
前記管状打抜き部材の前記内腔のうちの1つを介して、前記切り離された孔片を前記カテーテルから押し出し去るために、突出し部を作動することと、
前記一対の管状打抜き部材を引き抜くことと、
の工程を備え、
前記突出し部を作動する工程は、
突出し工具を、1つの管状打抜き部材の長手方向に前記内腔を少なくとも部分的に通して駆動し、その後、もう一方の管状打抜き部材の前記内腔を少なくとも部分的に通して駆動することと、
前記突出し工具を引き抜くことと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記突出し部を作動する工程は、
前記一対の管状打抜き部材の前記内腔を通るように圧縮された空気を吹き込むことを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カテーテルは、尿道カテーテルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
カテーテルの横壁を突き抜ける孔を形成するための機器であって、前記機器は、
一対の管状打抜き部材と、ここにおいて、各管状打抜き部材は、切れ刃及び内腔を有し、前記一対の管状打抜き部材のうちの少なくとも1つの管状打抜き部材は、前記カテーテルの前記横壁を突き抜けるように打ち抜き、それにより前記横壁から一対の対向して位置する孔片を切り離すために、もう一方に向かって可動であり、
前記管状打抜き部材の前記内腔を介して、前記カテーテルから前記切り離された孔片を押し出し去るように構成された突出し部と、
を備え、
前記突出し部は、各対の管状打抜き部材のうちの1つの管状打抜き部材の前記内腔を少なくとも部分的に通り、その後、前記対の管状打抜き部材のうちのもう一方の管状打抜き部材の前記内腔を少なくとも部分的に通るように可動であるよう配設された突出し工具である、機器。
【請求項5】
少なくとも1つの追加の対の管状打抜き部材と、ここにおいて、各対の管状打抜き部材は、前記カテーテルの長手方向軸に沿った異なる位置で前記横壁を突き抜けるように打ち抜くよう配設されるものであり、
各一対の管状打抜き部材に1つの突出し部と、
を更に備える、請求項4に記載の機器。
【請求項6】
前記突出し工具は、シリンダ型の形状を有し、前面を有する前端部を備え、前記前面は実質的に平面である、請求項4又は5に記載の機器。
【請求項7】
前記突出し部は、空気圧縮機のノズルであり、前記ノズルは、各対の管状打抜き部材の前記内腔を通って前記管状打抜き部材のうちの1つからもう一方中に圧縮された空気を吹き込むように配設される、請求項4又は5に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、尿道カテーテルのようなカテーテルに関し、より具体的には、面取りされた(beveled)排液孔を有するカテーテルに関する。本発明はまた、カテーテルにそのような孔を形成するための方法及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、多くの様々な医療のために使用される医療機器であり、概して、孔の空いた先端部又は末端部であって、別の形では挿入端部又は挿入可能端部とも称される孔の開いた先端部又は末端部をもつ細い(中空)チューブである。異なる製造プロセス及び材料選択によって、カテーテルは、医療分野における、例えば心臓血管、胃腸、神経血管、及び泌尿器に関する用途等のための、広範な範囲の機能に役立つように合わせられることができる。
【0003】
尿道カテーテルは、膀胱から排尿させるために、又はそれ程頻度は多くないが膀胱中への流体の投与のために一般に使用されている。患者は、例えば尿失禁、尿閉、前立腺又は生殖器の手術、又は、例えば多発性硬化症、脊髄損傷、認知症等のような他の病状といった、様々な理由で尿道カテーテルを使用するように推奨され得る。
【0004】
概して、尿路カテーテル法、即ち、尿道中に尿道カテーテルを挿入することによって人間の膀胱を空にする手順は、以下の通り要約されることができる。まず、カテーテルの挿入の際、カテーテルの先端部及びカテーテルシャフトのあるセクションが人間の膀胱に到達し、尿が先端部(挿入端部)の、又はその近くの排出開口部又は排液孔のセットを介して、カテーテルシャフト/本体の管腔を通り、漏斗状のカテーテル出口(即ち、いわゆるコネクタ)中に流れ始める。尿はその後、カテーテルから出て、トイレ又は採尿のための採尿バック(urinary bag)中に流れる。
【0005】
例えば、カテーテル法は、尿閉、即ち膀胱が尿を排出できない問題を抱える患者に度々必要とされ、尿閉は、括約筋が締まり過ぎているか、膀胱筋が弛緩し過ぎているかのどちらかで、患者が排尿中に膀胱を完全には空にできない状態にすることに起因し得る。これらのケースで使用される尿道カテーテルの1つのタイプは、数日間、数週間、又は更には数ヶ月間といった長期間にわたって尿道に維持される、留置カテーテル、いわゆるフォーリーカテーテルである。別のタイプの尿道カテーテルは、短期間の使用を意図しており、いわゆる間欠的カテーテルである。間欠的尿道カテーテルは、膀胱から尿を排出させるために一回使用され、その後抜去される。更に間欠的カテーテルは、典型的には、数分間使用され、カテーテル法は、典型的には、例えば3時間から4時間毎といった、所定の時間スケージュールに度々従って使用者自身によって行われる、いわゆる自己カテーテル法である。
【0006】
しかしながら、全てのタイプの尿道カテーテル、それに加えて多くの他のタイプのカテーテルに共通の特徴は、挿入可能前端部、即ち先端部、に排出開口部/排液孔(時にカテーテルアイと称される)が存在することである。ほとんどの排出開口部は、形状が楕円であり、例えば射出成形、打抜き等によるといった、様々な方法で形成され得る。
【0007】
カテーテルを製造するため、特に排出開口部(排出アイ)を形成するための方法の例は、例えばWO2010/149175において射出成形製造の形態で開示されており、ここで排出開口部は、カテーテルチューブの射出成形中に設けられることができる。しかしながら、これらのタイプの製造方法は度々、鋭利で不均等な縁部の原因になり、このことは、縁部をより滑らかにし、丸みを帯びさせるためにコストの多大な後処理工程の必要性を増す。
【0008】
カテーテルにおける排出開口部についての製造方法の別の例は、US2004/0193143において開示されており、ここで開口部(オリフィス)は、例えば従来の打抜き動作によって形成される。しかしながら、この解決策が概してよりコスト効率が高い場合でさえ、依然として先に説明されたものと同じタイプの欠点、即ち、ここでは温度処理の形態の、コストの多大な後処理を必要とする鋭利な外縁部、に陥りやすい。
【0009】
従って、排出開口部を設けることに関連する一般的な問題は、それが比較的コストの多大であること、並びに切断されたパーツがカテーテル中に留まり、機能不全、及び場合によっては健康被害にも繋がるという実質的なリスクも存在することである。更に、費用がかかって非効率的な追加の処理工程なく、滑らかな縁部をもつ排出開口部を設けること、即ち(開口部の周りにバリを形成する)鋭利及び/又は不均等な縁部のない開口部を作ること、は度々非常に困難である。そのような鋭利及び/又は不均等な縁部は、カテーテル法で抑えられる患者に多大な不快感を招き得、また尿道を損傷することもあり得る。
【0010】
最も周知のカテーテル開口部に関する解決策の更なる問題は、カテーテルシャフトが開口部の近傍で非常に弱くなることであり、このことは、使用中のシャフトのもつれに繋がり得る。
【0011】
従って、改善された排出開口部を有するカテーテルと、これらの欠点を軽減する、特に、切断された材料がカテーテル中に留まるリスクを最低限にし、患者の快適さを高め、カテーテル法によって引き起こされる被害及び損傷のリスクを低下させ、及び/又はコストの多大な後処理工程(例えば、視覚制御システム)の必要性を低減して、それによってよりコスト効率の高いカテーテル及び製品を提供する、カテーテルに孔を形成するための方法及び機器とが必要である。
【発明の概要】
【0012】
従って、上記で説明された問題を軽減することが本願発明の全般的な目的である。
【0013】
この目的は、添付の特許請求の範囲で定義されるような、本願発明に従った方法、機器、及びカテーテルによって達成される。
【0014】
本発明の第1の態様に従うと、カテーテルの横壁を突き抜ける孔を形成するための方法が提供されており、前記方法は、
各々が内腔を有する一対の管状打抜き部材の間にカテーテルのあるセクションを設けることと、
カテーテルの前記横壁を突き抜けるように打ち抜き、それにより前記横壁から一対の対向して位置する孔片を切り離すために、前記一対の管状打抜き部材のうちの少なくとも1つの管状打抜き部材をもう一方に向かって駆動することと、
管状打抜き部材の前記内腔のうちの1つを介して、カテーテルから前記切り離された孔片を押し出し去るために、突出し部を作動することと、
前記一対の管状打抜き部材を引き抜くことと、
の工程を備える。
【0015】
これによって、カテーテルに排出開口部又は孔を形成するための簡素でコスト効率の高い方法が、打抜き動作後に余分な材料がカテーテル内部に残されるリスクが大幅に低下させられた状態で、提供される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「管状」という用語は、一般にチューブの形態又は形状を有する物体を指し、ここで本明細書における「チューブ」は、円形断面を有する、例えば細長い中空シリンダのような、管腔がある細長いシャフトを指すが、他の断面形状、例えば楕円、多角形等、の中空シャフトであってもよい。更に管腔は、管状構造又は任意の他の中空構造の中央キャビティとして理解されるべきである。
【0017】
横壁という用語は、カテーテルの側壁、特にカテーテルシャフトの壁として解釈されるべきである。横壁は、カテーテルの内部管腔を囲む、ある特定の厚さの材料を形成する。
【0018】
本願発明は、言及された通り、例えば尿道カテーテルのようなカテーテルの挿入可能先端部分(挿入端部)に排出開口部、いわゆるカテーテルアイを形成するのに特に好適である。方法は、両側からカテーテルを係合する一対の管状打抜き部材を有することによって、カテーテルの横壁に一対の対向して位置する孔を形成する又は打ち抜く工程を伴うと言える。対向して位置する場所は、カテーテルの長手方向中心軸を備える断面を基準としている。管状打抜き部材は、好ましくは、互いに向かって駆動されて横壁/管材を突き抜け、好ましくは、互いの間に短い距離、例えば数マイクロメートルだけ残して、カテーテル管腔内で互いに接触しそうになる。管状打抜き部材は代わりとして、カテーテル管腔内で互いに接触するように駆動されてもよい。切り離された材料は、切り離された材料が管状打抜き部材の内腔を介して、カテーテルから押し出し去られるまで2つの管状打抜き部材のうちの1つ又は両方の内腔内に留まり、このことは、実用的な実装例において、排出開口部の製造後に余分な材料がカテーテル管腔に残される問題を完全に軽減した。
【0019】
驚くべきことに、2つの方面から孔を打ち抜くことは余分な/切り離された材料がカテーテル管腔内部に残されるリスクを著しく低下させること、及び打抜き部材内に切り離されたパーツを吐き出すための突出し手段を内在的に設けることはこのリスクを更に緩和することが、本願発明者によって発見された。その結果、余分な/切り離された材料の形態の異物が患者の内部体系に入ることに関連する潜在的な健康被害は低減される。更に方法は、余分な材料についての検査を実行する必要性が最小限にされるため、カテーテル製造/生産に関連するコストを減らす。従って、自動化された視覚制御システム又は手動検査プロセスのような費用のかかる生産工程の必要性は小さくなる。加えて、余分な材料がカテーテル管腔内部に残されることに起因した廃棄カテーテルの数は低減され、このことは、カテーテルの生産を更にコスト効率の高いものにする。
【0020】
更に本願発明者は、2つの対向する方面から孔を(同時に)打ち抜くことにより、より小さい寸法、即ちより小さい直径の孔を形成することも可能になることを実現した。より小さい排液孔は、孔のサイズの縮小によっても、結果としてもつれのリスクも減少することになる点で有利である。更に驚くべきことに、排液孔を形成するこの新しい方法が、どの後形成手順(下記の更なる説明を参照)の必要もなく、非常に滑らかな面取りされた縁部を提供することが発見された。より少ないもつれのリスク、及びより滑らかな縁部により、結果として患者にとって損傷及び不快感のリスクがより少なくなる。更に実験データによると、より小さい孔はカテーテルの排出特性に対して全く負の効果を及ぼさず、代わりに重要なのは「孔エリア」の総量である。従って、(より小さい孔の組み合わされたエリアが、大きい孔のそれ以上であるならば)より多量のより小さい孔の方が、より少量の大きい孔よりも好まれると言える。
【0021】
更に、ユーザフレンドリの点で、より小さい排出開口部には更に実用的な利点がある。カテーテル法中、排出開口部(複数を含む)が膀胱中に移入されるときに高尿流量のリスクが高いことが初期段階に度々あり、特に、従来のより大きいカテーテルアイを有するカテーテルでは、膀胱内部の圧力が非常に高くあり得るので、ユーザ(時に看護師)がバック又は同様のものを取り付ける余裕もなく、尿がカテーテルの排出端部(後端部)から射出する。特にあまり経験のないユーザは、カテーテル法中にこの突然の噴出という困難に出くわすけれども、多くのより小さい孔を有することによって、カテーテル先端部が尿道中に挿入されていると尿流が徐々に増加することになるので、初期尿流量が著しく制御しやすくなる。
【0022】
続いて、本願は、管状打抜き部材の切れ刃の状態に関して耐性がより高い点で堅固である。従って、製造部品(管状打抜き部材)は、あまり維持管理を必要とせず、及び/又はそれ程頻繁には差し替えられる必要はなく、このことが更に、生産コストを低減する。更に管状打抜き部材の切れ刃は、排出開口部がカテーテルセクションの2つの真反対に対向する方面から打ち抜かれない従来の打抜き機器におけるものよりも鈍くあり得るので、結果として生じる排出開口部の縁部もまた、よりソフトになる。より鈍い切れ刃を有する更なるメリットは、材料の層が薄すぎることに起因したひびが直されるリスクが低下されるため、切れ刃がずっと高い度合いで固くされ得る(又は直され得る)ことである。
【0023】
1つの例示的な実施例に従うと、突出し部を作動する工程は、
突出し工具を、少なくとも部分的に1つの管状打抜き部材の長手方向の内腔を通るように駆動し、その後少なくとも部分的にもう一方の管状打抜き部材の内腔を通るように駆動することと、
前記突出し工具を引き抜くことと、
を備える。突出し工具の引き抜きは、意図されている用途又は特定の状況に応じて、管状打抜き部材の引き抜き前、引き抜き中、又は引き抜き後の何れかに実行されることができる。この実施例により、打抜き動作後に管状打抜き部材の内腔に存在している余分の/切り離された材料の抜去を確実にするための簡素なコスト効率の高い機械的手段が可能になる。より詳細には、突出し工具は、管状打抜き部材の管腔において移動する長細いシリンダ型の本体であり得る。従って突出し工具は、管状打抜き部材のうちの1つを通って少なくとも部分的にその中心軸に沿って移動し、その後もう一方の管状部材中に入り、それにより余分な材料(切り離された孔片、打ち抜かれて取られた材料)を、管状打抜き部材の内腔のうちの何れか1つ又はその両方を通って、結果的にカテーテルから打ち抜き去る/押し出し去る。
【0024】
別の例示的な実施例に従うと、突出し部を作動する工程は、
前記一対の管状打抜き部材の内腔を通るように圧縮された空気を吹き込むこと
を備える。このことにより、余分な/切り離された材料を、一対の管状打抜き部材から、及び結果的にカテーテル管腔から抜去する簡素な代わりの方法が可能になる。1つの管状打抜き部材の基部/後端部から、及びその管腔を通ってもう一方の管状打抜き部材に向かって、圧縮された空気を吹き込むことによって、打抜き動作の後にそれらの内腔内部に存在する切り離された材料が効率的に抜去されることができる。更に、あまり可動しないパーツが存在するので、製造プロセスの複雑性は低減され得る。
【0025】
本発明の別の態様に従うと、カテーテルの横壁を突き抜ける孔を形成するための機器が提供されており、ここで機器は、
一対の管状打抜き部材と、ここにおいて、各管状打抜き部材は、切れ刃及び内腔を有し、前記一対の管状打抜き部材のうちの少なくとも1つの管状打抜き部材は、カテーテルの前記横壁を突き抜けるように打ち抜き、それにより前記横壁から一対の対向して位置する孔片を切り離すために、もう一方に向かって可動である、
管状打抜き部材の前記内腔を介して、カテーテルから前記切り離された孔片を押し出し去るように構成された突出し部と、
を備える。
【0026】
本発明のこの態様には、先に説明された本発明の第1の態様におけるものと同様の利点及び好まれる特徴が存在し、その逆もまた同様である。切れ刃は、好ましくは、1,0mmと2,5mmとの間の直径を有するけれども、他の直径も可能である。
【0027】
1つの例示的な実施例では、機器は更に、少なくとも1つの追加の対の管状打抜き部材と、ここにおいて、各対の管状打抜き部材は、前記カテーテルの長手方向軸に沿った異なる位置で前記横壁を突き抜けるように打ち抜くよう配設される、
各一対の管状打抜き部材に1つの突出し部と、
を備える。
【0028】
このことは、2つ、3つ、4つ、又は更に多くの対の排出開口部の同時打抜きを可能にすることによって、機器の効率を更に上げる。打抜き部材はまた、機器内を異なる角度位置で配設されることができ、例えば、カテーテルの長手方向軸の周りを90度離れて交互に配設され得る。孔を形成するための機器はまた、同じカテーテル上で、好ましくは、繰り返しの合間に長さ及び/又は回転位置についてカテーテルの位置を変えた後に、2回、3回、又はより多くの回数のような、1より多い回数、動作させられてもよい。
【0029】
1つの例示的な実施例に従うと、突出し部は、少なくとも部分的に各対の管状打抜き部材のうちの1つの管状打抜き部材の内腔を通り、その後少なくとも部分的に前記対の管状打抜き部材のうちのもう一方の管状打抜き部材の内腔を通るように可動であるよう配設された突出し工具である。
【0030】
突出し工具は、シリンダ型の形状を有し、上面を有する前端部を備え得、ここにおいて、前記上面は実質的に平面である。好ましくは、突出し工具は、管状打抜き部材に従った形状を有し、即ち、管状打抜き部材が円形の断面を有する場合、管状打抜き部材の内腔内を効率的に移動するために、突出し工具は、円形の断面を有するはずである。平面の(又は扁平の)上端部はまた、材料が内部の横の面と突出し工具との間で引っかかるリスクが低下されるので、余分な材料の打抜きを最適化する。
【0031】
更に別の例示的な実施例では、各管状打抜き部材は、その長手方向軸に沿って異なる内半径をもつ部分を有し得、例えば、前方部分(切れ刃に最も近い部分)は、後方部分と比較して小さい内半径を有し得る。従って、突出し工具は、好ましくは、管状打抜き部材の最も小さい内半径よりもわずかに小さい半径を有する。わずかに小さい内半径は、本文脈では、基準の半径の約90−99%と解釈されるべきである。
【0032】
また別の例示的な実施例では、突出し部は空気圧縮機のノズルであり、ここにおいて、前記ノズルは、各対の管状打抜き部材の内腔を通るように圧縮された空気を吹き込むよう配設される。従って、機器が複数の対の管状打抜き部材を有する実施例では、各対が、それらの内腔を通るように圧縮された空気を吹き込むよう配設された別個のノズルを有し得る。更に意図されている用途に応じて、ノズルの全てが、同じ空気圧縮機に接続され得るか、又は別個の空気圧縮機に関連し得る。
【0033】
機械的突出し、即ち突出し工具、及び空気圧突出し、即ち空気圧縮のためのノズルを備える突出し部は、組み合わせても使用され得る。
【0034】
本発明の第1及び第2の態様に従った方法及び機器は、尿道カテーテルに孔を形成するのに特に役立つ。しかしながら、それらは、多くの他のタイプの医療機器にも役立つ。従って、本願発明に従った方法及び機器は、尿道カテーテルに限定されない。本願発明が役立つそうした他の医療機器の例は、血管カテーテル及び他のタイプのカテーテル、内視鏡及び喉頭鏡、食物摂取又は排出或いは気管内での使用のためのチューブ、並びに循環補助のための機器である。
【0035】
本願発明のまた別の態様に従うと、排出端部及び挿入端部を備える管状本体を有するカテーテルが提供されており、カテーテルは、
管状本体の横壁上の、前記カテーテルの長手方向軸を備える断面の両側に位置する少なくとも一対の排出開口部を備え、
ここにおいて、各排出開口部は、前記カテーテルの幅方向と長さ方向の両方に延びた縁部を有し、縁部は、管状本体の外面に向かって面取りされており、
各排出開口部の面取りの度合いは、概して長さ方向に延びている縁部のパーツについての方が、概して幅方向に延びている縁部のパーツについてよりも高い。
【0036】
本発明のこの態様には、先に説明された本発明の態様におけるものと同様の利点及び好まれる特徴が存在し、その逆もまた同様である。
【0037】
面取りの度合いは、2つの隣接した面の間の角が切断された程度として理解されるべきであり、本文脈における面は、排液孔の縁部面及び横壁の外面である。代わりの表現では、面取りは、ある面が別の面と成す、それらが直角でないときの角度として解釈されることができ、面取りの度合いは、角度が直角(90度)からずれている程度として解釈されることができる。従って、面取りの度合いが高いほど、2つの面は平行に近づく。更に、孔の縁部が面取されていると言うとき、それは、カテーテルの縁部面と外面との間の角度が90度(又は視点に応じて270度)でないと解釈されるべきである。
【0038】
面取りは、上で説明された打抜き動作中の材料変形の有利で驚くべき結果であり、更に、カテーテルの横壁が(衝撃エリア又は点を基準として)横方向により高い割合で変形することに起因して、面取りの度合いは、長手方向に延びる、結果として生じた開口部の孔縁部のパーツについての方が高い。しかしながらこの専門用語は、添付の図で例示されている実施例を参照して詳細な説明で更に明確にされる。滑らかな、丸みを帯びた、又は面取りされた縁部は、外部の面にあってカテーテルの長手方向に延びている(即ち、カテーテルの長手方向軸に平行な)縁部において特に重要であるが、驚くべきことに長手方向を横切って延びている縁部においてはあまり重要でないことが、本願発明者によって発見された。このタイプの縁部構造、即ち横方向の縁部(概して長手方向に延びている縁部)がわずかにより滑らかであることに関する更なる利点は、それが、挿入中にカテーテルを回転させることをより簡単に、及びより快適にすることである。カテーテルの回転は、尿道における狭窄等を通り抜けるために、特に男性の使用者に、度々必要とされる。
【0039】
カテーテルは、好ましくは、ポリマー材料から作られる尿道カテーテルである。更に、排出開口部は、好ましくは、円形状であるが、任意の好適な形状であってよい。先に説明されたように、円形の排出開口部の使用は、患者の快適さを高めるより滑らかな端部を得る点で有利であると証明されており、いくつかの実用的な実験では、カテーテル管腔の円形エリア以上である総孔エリアをもつ円形の孔は、カテーテル管腔の円形エリアよりも著しく大きい総孔エリアをもつ従来の楕円形のカテーテルアイと同じか、それ以上の尿流量を果たすだろうと示されている。
【0040】
円形の排出開口部の直径は、好ましくは、0,75mmと2,0mmとの間の範囲に、又はより好ましくは、1,0mmと1,5mmとの間の範囲にあり、最も好ましくは、1,1mmと1,4mmとの間の範囲にある。
【0041】
本発明のこれら及び他の態様が、以下に記載される実施例から明らかになり、それらの実施例を参照して明瞭にされるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
実証する目的で、本発明は、下記で添付の図面で例示されているその実施例を参照してより詳細に記述されるだろう。
図1】本願発明の実施例に従ったカテーテルの横壁を突き抜ける孔を形成するための機器の透視図を例示する。
図2a-2d】本願発明の実施例に従ったカテーテルの横壁を突き抜ける孔を形成するための方法のカテーテルの半径方向での断面図を例示する。
図3】本願発明の別の実施例に従った方法工程の、カテーテルの半径方向での、断面図を例示する。
図4】本願発明のまた別の実施例に従った側面視点からのカテーテルの横壁を突き抜ける孔を形成するための方法を例示する。
図5a】本願発明の実施例に従ったカテーテルの側面図を例示する。
図5b図5aで例示されているカテーテルの挿入端部5の拡大側面図を例示する。
図5c図5bで例示されている挿入端部の、カテーテルの長手方向での、断面図を例示する。
図5d図5bで例示されている挿入端部の、カテーテルの半径方向での、断面図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の詳細な記述において、本願発明の好まれる実施例が記述されるだろう。しかしながら、異なる実施例の特徴が実施例の間で交換可能であり、他に何か具体的に示されない限り、異なる方法で組み合わせられてよいと理解されるべきである。以下の記述において、本願発明のより完全な理解を提供するために、たとえ多くの具体的な詳細が述べられていても、本願発明が、これらの具体的な詳細なしに実行され得ることは当業者には明らかだろう。他の例では、本願発明を不明瞭にしないために、周知の構成又は機能は詳細には記述されない。下記で記述される詳細な実施例では、尿道カテーテルに関する。しかしながら、方法及び機器が、他のタイプのカテーテル、ステント等のような、身体通路中に挿入可能な他のタイプの医療機器上で相応に使用可能であることは、当業者によって認められるべきである。
【0044】
図1は、本明細書では尿道カテーテルの形態の、カテーテル2の横壁3を突き抜ける孔(排出開口部又はカテーテルアイと称されてもよい)を形成するための機器1を図式的に示す。カテーテル2は、排出端部4及び挿入端部5をもつ管状本体を有し、好ましくは、例えばシリコンゴム(silicone rubber)、ニチロール(nitinol)、ナイロン(nylon)、ポリウレタン(polyurethane)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomers)等(このリストは包括的ではない)のような、ポリマー材料から作られる。排出端部4及び挿入端部5はまた、非挿入可能端部4及び挿入可能端部5とも、それぞれ称されてもよい。
【0045】
機器1は、三対の管状打抜き部材6a−cを含み、各管状打抜き部材6a−cは、切れ刃及び内腔を有する。しかしながら機器1は、意図されている用途に応じて、1つだけの、2つの、又は任意の他の数の対の管状打抜き部材6a−c(下記では打抜き部材と単に称され得る)を有してもよい。
【0046】
各対の打抜き部材6a−cは、カテーテル2の2つの対向する位置で横壁3を突き抜けるように打抜き、それによりカテーテル2の横壁3から2つの対応して位置する孔片を切り離すために、それらのうちの少なくとも1つが、(同じ対の内の)もう一方の打抜き部材6a−cに向かって可動であるといった方法で配設される。この文脈における、対応して位置する、は、カテーテル2の断面を基準としており、断面は、カテーテル2の長手方向に、即ち排出端部4から挿入端部5まで、とられている。いくつかの実施例では、機器1は、打抜き部材6a−cの両方が、同時に又は連続して、同じ対内で互いに向かって可動であるように構成される。打抜き部材6a−cが各それぞれの対において互いから離れるようにも可動であり、即ち打抜き動作後に後退可能である、ことは言うまでもない。より詳細には、各対の打抜き部材6a−cは、2つの打抜き部材の切れ刃がカテーテル2の横壁3を穿通し、好ましくは、打抜き動作中にカテーテル2の内腔内で互いに接触しそうになるように同じ対内の2つの打抜き部材6a−cが移動し得るように、配設される。しかしながらいくつかの実用的な実装例では、切れ刃は、打抜き動作中に互いに完全に接触することもできる。
【0047】
この特定の実施例では、各対の打抜き部材6a−cは、同じ対内の各打抜き部材6a−cの中心長手方向軸の少なくとも一部が実質的に合致するように配設される。従って、打抜き部材6a−cは、共通の中心長手方向軸に沿って可動であるように配設される。
【0048】
更に、機器1は、打抜き動作後に打抜き部材6a−cの内腔を介して、カテーテル2から切り離された材料(孔片)を打ち抜き去る/押し出し去るために、各対の打抜き部材6に1つ、本明細書では突出し工具の形態の突出し部、又は突出し部のセット7a−cを備える。このことは、排出開口部が形成された後に余分な材料がカテーテル2の管腔内に残されるリスクを著しく低下させる。多くの実用的な実装例では、カテーテル内部に余分な材料を残している問題又はリスクが、これによって完全に緩和される。各突出し工具7a−cは、少なくとも部分的に関連する打抜き部材6a−cの両方の内腔に沿って可動である。機器1の打抜き部材6a−c及び対応する突出し工具7a−cの動作に関するより詳細な説明は、図2a−図2dを参照して提供されるだろう。
【0049】
機器1は更に、打抜き動作中カテーテル2を固定/固着するために、本明細書ではクランプの形態の固定装置8を備える。当業者は、クランプが8として図式的に例示されているだけであること、及び打抜き動作中カテーテルを固定/固着するための固定装置をどのように提供するかについていくつかの実行可能な選択肢があることを容易に理解する。更に、機器1は、打抜き動作が実行されたときに同じ対内の各打抜き部材6a−cの切れ刃にある開口部の中心軸が実質的に合致するような管状打抜き部材6a−cの良好な整合を確実にするために、整合構造体9を備える。
【0050】
図2aは、カテーテルの横壁を通る孔(排出開口部)を形成するための方法の工程の断面図を例示する。カテーテル2のあるセクションが、一対の管状打抜き部材6の間に設けられる。断面は、カテーテル2の半径方向で(又は打抜き部材6の長手方向で)とられている。打抜き部材6は全て、切れ刃10及び内腔11を有し、好ましくは、それらの中心長手方向軸101が実質的に合致するように整合される。更に、本明細書では突出し工具7の形態の突出し部があり、それは、2つの打抜き部材6の内腔11を通るように可動であるよう構成される。突出し工具7は、細長いシリンダ型の本体を有し得る。より詳細には、突出し工具7は、好ましくは、後端部(即ち、切れ刃10を有する端部とは反対の端部)から、2つの打抜き部材6のうちの第1の打抜き部材の内腔に入り、第1の打抜き部材6の内腔11を通るように可動であるよう配設される。この特定の例示的な実施例では、突出し工具7は、2つの打抜き部材6のうちの1つの内腔内の位置から開始している。しかしながら、突出し工具7はまた、初期段階で完全に後退させられ、それにより2つの管状打抜き部材6のうちの任意の1つの内腔外部の位置から開始してもよい。例えば、それは、その前端部部分が打抜き部材6のうちの1つの後ろに位置することから開始してもよい。更に、突出し工具7の長手方向中心軸は、好ましくは、動作中、打抜き部材6の中心軸101に整合されている。
【0051】
図2bは、図2aと比べて後に生じた位置の断面図を例示する。管状打抜き部材6は、矢印12によって示されているように、カテーテル2の本体の変形が始まってしまっているように、互いに向かって駆動されている(移動している)。打抜き部材6はまた、ここでは突出し工具7に対して可動であり、従って突出し工具7は、打抜き部材の内腔11から余分な材料を押し出す/突き出すためにそれが作動されるまで、静止位置に留まることができる。
【0052】
更に図2cは、図2bと比較して後に生じた打抜き部材6の位置を例示する。打抜き部材6は、打抜き部材6の切れ刃10がカテーテル2の横壁3を突き抜けるように打ち抜いてしまう/穿通してしまうように、(矢印12によって示されているように)互いに向かって駆動されている。それにより、一対の対向して位置する孔片13が、カテーテル2の横壁3から切り離されてしまうか、又は少なくとも部分的に切り離されてしまう。打抜き部材6は、それらのそれぞれの切れ刃10がカテーテル2の内腔内で互いに接触するように互いに向かって駆動され得る/移動し得るか、又はそれらの間の距離がカテーテル2の横壁の厚さよりも短くなる程少なくとも十分に隔たって駆動され得る/移動し得る。打抜き部材6が、各打抜き動作中に切れ刃10が互いに接触するように繰り返し駆動される場合、余分な材料(留まっている切り離された孔片)が意図されている方法で打抜き部材6の内腔11を通って出て行かず、場合によってはカテーテル2の内腔に入るリスクが更に最小限にされるが、切れ刃10の摩耗が増加する代償を払う。従って、切れ刃10は、打抜き動作中にカテーテル2の横壁3の少なくとも一部、及び好ましくは大幅な部分を突き抜けるように切れ刃が打ち抜かない限り、互いに接触する必要はない。打抜き部材6は、例えば残りの厚さ2−5μmを残すといった、短い距離だけを残してカテーテル2の内腔において互いに衝突しそうになるように、例えば駆動されることができる。
【0053】
図2dは、一対の管状打抜き部材6の内腔11を介して、カテーテル2から切り離された孔片13を押し出し去るための、突出し工具7の作動を例示する。突出し工具7は、(矢印12によって示されているように)第1の管状打抜き部材6(この特定の図では左側のもの)の内腔11の一部を通り、もう一方の管状打抜き部材6(この特定の図では右側のもの)の内腔11中に移動する/駆動される。切り離された孔片13は、突出し工具によって打抜き部材6の内腔11を通って、内腔11から最後まで打ち抜かれることができるか、又はそれらは、例えば、突出し工具7を基準とした打抜き部材6の反対の端部における吸引のような他の手段によって抜去されてもよい。必然的に、突出し工具7及び管状打抜き部材は、例えば図2aで例示されたもののような開始位置から再び開始するために、図2dで例示されている方法工程の後、引き抜かれ得る/後退され得る。
【0054】
図3は、本発明の別の例示的な実施例に従った突出し部7’、より具体的には、空気圧縮部/空気圧縮機(図示せず)のノズル7’、の作動を例示する。打抜き部材6がカテーテル2の横壁3を突き抜けるように打ち抜いた後、ノズル7’が、好ましくは、打抜き部材6の内腔11に向かけられ、空気圧縮部が作動されるべきである。(矢印16によって示されているように)内腔11中に、及び内腔11を通るように空気を吹き込むことによって、切り離された孔片(余分な材料)は、打抜き部材6の内腔を介して、カテーテル2から空気圧で押し出し去られるだろう。
【0055】
図4は、本発明のまた別の実施例に従ったカテーテル2の横壁を通り抜ける孔17a−bを形成するための方法401−404を例示する。例示は、真横の視点からであり、4つの例となる工程401−404で示されている。工程401は、第1の段取り又は開始位置を例示し、ここでカテーテル2のあるセクションが一対の打抜き部材6の間に設けられている。次に、打抜き部材6の間でのカテーテル2のセクションの変形によって示されているように、打抜き部材6は、互いに向かって駆動されるか、又はそれらのうちの少なくとも1つが、もう一方に向かって駆動される。このことにより、打抜き部材6がカテーテル2の横壁を突き抜けるように打ち抜くことが可能になる。簡潔さのために図4では明示的に例示されていないけれども、突出し工具は、例えば図2dを参照して記述されたように、上で説明された概念に従って各打抜き動作の合間に作動/駆動される。同じ理由で、各打抜き動作の合間の引抜き工程(複数を含む)、即ち打抜き部材6及び突出し工具7の引抜きは示されていない。
【0056】
従って、第1の打ち抜き動作402の後、突出し工具7及び管状打抜き部材6が引き抜かれ、カテーテルは、別の打抜き動作用に位置決めされるために、移動され18a、回転される19a。カテーテル2は、例えば、より大型の機器又は筐体に取り付けられている場合、一対の打抜き部材6が静止位置に留まることを可能にするために、(カテーテル2の長手方向軸を基準とした)長手方向に移動するけれども、カテーテルは、他の対の孔とは空間的に隔てられている別の対の対抗して位置する孔17bを形成するために、移動する。この特定の例示では、カテーテル2は、カテーテル2の挿入端部に向かった方向に移動するけれども、それが、どのように打抜き動作(複数を含む)が行われるか、即ち孔が下流又は上流で打ち抜かれるように意図されているか、に応じて、反対方向に移動し得ることを当業者は容易に理解する。従って、カテーテル2は、好適な距離分、矢印18aによって示されているように移動し、90度分のような好適な角度長分、矢印19aによって示されているように長手方向軸の周りを回転され、打抜き部材6は続いて、再びカテーテル2を突き抜けるように打ち抜くために駆動され、それによりカテーテルの長手方向軸に沿って空間的に隔てられている合計の二対の孔17a−bを形成する。
【0057】
ステップ404は、工程403と類似した方法の第3の打抜き動作、即ち第2の対の孔が形成された後に、突出し工具7が作動及び引き抜かれ、打抜き部材6が引き抜かれ、そしてカテーテルが移動し18b、回転される19b、を例示する。
【0058】
打抜きは、必要とされる排出開口部の対の数に応じて、より少ない、又はより多い回数、繰り返され得る。更に、図1で例示されたような、一度に一対よりも多い排出開口部を打ち抜くことも、図4に従った打抜き工程の繰り返しと組み合わせて使用されることができる。
【0059】
図5aは、本願発明の態様に従ったカテーテル2の側面透視図を示す。カテーテル2は、管状本体、即ち言い換えると、内腔(図示せず)を囲む横壁/基材2を有する。更に、カテーテルは、当該技術分野で知られているようなフレアである排出端部4、及び排出端部4から前方に突き出ている細長いシャフト又はチューブを備える。開口内腔(図示せず)は、カテーテル2の排出端部4から、丸みを帯びた先端部及び排出開口部17a−cのセットを有する挿入端部5まで延びる。排出端部4は、カテーテル2のコネクタとして機能してもよく、採尿バッグ、排出チューブ、又は同様のもののような、他の機器に接続可能である。カテーテルは、三対の排出開口部17a−cを有するけれども、意図されている用途及び特定のニーズに応じて、排出開口部17a−cの対の数が任意の好適な数であってもよいことを当業者は容易に理解する。各対の排出開口部の各排出開口部17a−cは、カテーテルの横壁3上の、カテーテル2の長手方向にとられている断面の両側に位置する。更に、各排出開口部17a−cの縁部の面取りの度合いは、縁部の異なるパーツで変わり、より具体的には、面取りの度合いは、カテーテルの長手方向(長さ方向)に延びる縁部のパーツと、カテーテルの横方向(幅方向)に延びるパーツとの間で異なる。
【0060】
面取りの度合いは、2つの隣接した面の間の角が切断された程度として理解されることができ、本文脈における面は、排液孔17a−cの縁部面21、22及び横壁3の外面23である。代わりの表現では、面取りは、ある面が別の面と成す、それらが直角でないときの角度として解釈されることができ、面取りの度合いは、角度が直角(90度)からずれている程度として解釈されることができる。従って、孔の縁部が面取されていると言うとき、縁部面21、22と外面23との間の角度が、90度(又は視点に応じて270度)でないと意味するように解釈されるべきである。更に、排液孔の面取りされた縁部はまた、排液孔の直径方向に両側の距離は、カテーテルの外側(ユーザに面している面)方が、内側(内腔に面している面)における対応する直径方向に両側の距離よりも長いことも意味する。
【0061】
図5bは、図5aにおけるカテーテル2の挿入端部5の拡大側面図を示す。挿入部5は、三対の排出開口部17a−cを設けられている。三対の排出開口部17a−cは、カテーテル2の長手方向軸に沿って位置決めされており、カテーテル2の長手方向軸の周りで90度分交互の隔たりを有する。しかしながら、他の実施例では、排出開口部の対の全てが、カテーテルの横壁に沿って線形に整合され得る、即ち排出開口部17a−cの全てが実質的に平行の中心軸を有し得るだろう。(図の向きを基準として)中央の排出開口部17bは、縁部の面取りの異なる度合いを示す。面取りの度合いは、概して長手方向に延びる縁部のパーツについての方が、概して横方向に延びる縁部のパーツについてよりも高い。
【0062】
図5c−dは更に、異なる断面の視点からの排液孔の面取りを明瞭にする。図5cは、図5bにおける挿入端部の断面図を示し、ここで断面は、カテーテル又は挿入端部の長手方向軸に沿って、二対の排出開口部17a及び17cを通ってとられている。更に、当業者であれば、排出開口部17a−cの面取りを異なる視点から見ることができ、ここで第1の孔の対17a及び第3の孔の対17cが側面視点から示されており、これは、概してカテーテルの幅方向(又は横方向)に延びる孔縁部の面取りの小さい度合いを例示している。特に、図5dと比較して、長手方向に延びている孔縁部のパーツの面取りが例示されている。更に、これらの図(5c及び5d)は更に、面取りされた縁部、及び「面取りの度合い」という用語の概念を例示しており、それは、図5dで例示されている縁部のパーツ、即ち概して長手方向(即ち長さ方向とも称される)に延びるパーツについての方が大きい。従って、面取りの度合いは、カテーテル本体の外面23と排出開口部の縁部面21、22との間の角度のバリエーションとして理解されることができ、ここで面取りの度合いが小さいほど、角度が直角(視点に応じて90度又は270度)により近いことを示す。
【0063】
更に、図5cは、同じ対内の互いを基準とした排出開口部17a−cの配置を示す。第1及び第3の対の排出開口部17a、17cは、カテーテルの長手方向軸を備える断面501の両側に位置決めされた孔を有する。中央の対17bは、第1の断面501に対して垂直であるが、これもまたカテーテルの長手方向軸を備える別の断面の両側に配置されていると言える。好まれる実施例では、各対における2つの排出開口部17a−cは、断面501の両側に配置され、実質的に合致する中央軸AAを有するだろう。しかしながら、孔は、それらが面501の2つの(真反対に)対向する側面から打ち抜かれない限り、図5dでは軸AAを基準としてわずかに軸を外れて打ち抜かれ得る、即ち、図5dでは軸AAの右側又は左側に打ち抜かれ得る。より詳細には、孔は、合致する中央軸を用いて打ち抜かれるけれども、カテーテルの横壁が変形から戻った/跳ね返ったとき、2つの対向する排出開口部の中央軸は、そのような軸を外れた位置に配設されていると、合致しない(non-conciding)と見なされ得る.
カテーテルシャフト及びカテーテルコネクタ/後方端部は、同じ材料であってもよく、又は異なる材料であってもよい。更に、カテーテルシャフト及びコネクタは、集積モノリシック部として形成されてもよく、或いは、溶接、接着、又は同様のものによって互いに接続された、別個のパーツとして形成されてもよい。コネクタが別個のパーツとして形成されるケースでは、排液孔の打抜きは、カテーテルシャフトへのコネクタの取り付け前又は取り付け後に起こり得る。
【0064】
少なくともカテーテルシャフトは、好ましくは、ポリマー材料から作られ、材料は、単一の材料、又は様々な材料の混合物又はブレンドであってよい。材料(複数を含む)は、例えば、熱可塑性エラストマー及び/又は熱可塑性ポリマーであり得る。特に、材料は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリウレタン、ラテックスゴム(latex rubbers)、シリコンゴム(silicon rubbers)、他のゴム、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinylchloride)、他のビニルポリマー、ポリエステル(polyesters)、ポリアクリレート(polyacrylates)、ポリアミド(polyamides)、スチレンブロックコポリマー(SEBS)、又はポリエーテルブロックアミド(PEBA:polyether block amide)、及びこれらの組合せのような、1つ又はいくつかのポリオレフィン(polyolefin)ベースのエラストマー(elastomers)であってもよい。管状シャフトはまた、例えば、WO2011/036162において開示されているタイプの分解性材料から作られてよく、該文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。分解性材料は、例えば、単糖類、二糖類、少糖類、及び/又は多糖類を備える。
【0065】
好ましくは、材料が押出又は射出成形に好適である。管状シャフトの材料は、好ましくは、意図している使用に適した硬度を有する。具体的には、マイクロショアA硬度は、管状シャフトでは、好ましくは75〜95の範囲、より好ましくは75〜90の範囲、及び最も好ましくは78〜85の範囲内にあるべきである。材料は、既知の滅菌方法によって滅菌されることが可能であることが好まれる。特に、材料は、尿道カテーテルの放射線滅菌を可能にするために、それが本質的に分解することなく、少なくとも25kGy、及び好ましくは少なくとも50kGyに耐えることができるように、放射線耐性を有することが好まれる。
【0066】
異なる特性が望まれるケースでは、これは、同じ材料を使用して、例えば、異なる方法で材料を処理することによって、又は、可塑剤、医療用オイル(即ち、医療グレードのオイル)、パラフィン、等のような添加剤による、ポリマーの異なるブレンドを使用することによって材料(服ううを含む)を変更することによって、達成され得る。
【0067】
カテーテルは、好ましくは、湿潤時に低摩擦を示す親水性表面層を設けられ、例えば、親水性表面コーティングでコーティングされ得る。表面コーティングは、好ましくは、少なくともカテーテルの挿入可能部分に施される。表面コーティングは、排液孔の打抜き前に、又は打抜き後にシャフト上に施され得る。コーティングプロセスは、同じ出願人によるEP0799069において説明されている方法で提供されてよく、該文献は参照によってその全体が本明細書に組み込まれている。
【0068】
親水性ポリマーは、ポリビニル化合物、特にポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidones)のようなポリラクタム(polylactames)、特にヘパリン(heparin)、デキストラン(dextran)、キサンタンガム(xanthan gum)、誘導体化多糖類(derivatised polysaccharides)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxy propyl cellulose)、メチルセルロース(methyl cellulose)のような多糖類、ポリウレタン、ポリアクリレート(polyacrylates)、ポリヒドロキシアクリレート(polyhydroxyacrylates)、ポリメタクリレート(polymethacrylates)、ポリアクリルアミド(polyacrylamides)、特にポリエチレンオキシド(polyethylene oxides)のようなポリアルキレンオキシド(polyalkylene oxides)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohols)、ポリアミド(polyamides)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)、前述のポリマーのコポリマー、ビニル化合物(vinyl compounds)とアクリレート(acrylates)又は無水物(anhydrides)のコポリマー、ビニルピロリドン(vinylpyrrolidone)とヒドロキシエチルメチルアクリレート(hydroxy ethylmethyl acrylate)のコポリマー、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)のカチオン性コポリマー(cationic copolymers)及びポリメチルビニルエーテル(polymethylvinyl ether)及びマレイン酸無水物(maleinic acid anyhydride)のコポリマー、ポリラクチド(polyactide)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)及びそれらのコポリマー、のうちの少なくとも1つであってよい。好ましくは、親水性ポリマーはポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)である。
【0069】
カテーテルは、好ましくは、使用前に無菌状態に維持するためにパッケージに配設され、パッケージはまた、親水性表面層の湿潤用の湿潤液を収容してもよい。湿潤液は、湿潤の即使用可能状態にカテーテルを維持するために、保管中、カテーテルと直接接触している状態に維持され得るか、使用直前にカテーテルを収容している区画に放出されるように別個の区画に維持され得るかのどちらかであり得る。
【0070】
発明の具体的な実施例が、ここに記述された。しかしながら、当業者にとって明らかであるように、いくつかの代案が可能である。例えば、楕円形状又は幾分矩形形状を有する等の、打抜き部材及び排液孔の他のタイプの断面形状が使用されてもよく、図1における機器内の打抜き部材の異なる空間配設が可能であり、排出開口部の様々な位置決め及び数が実現可能である、等である。そのような及び他の明らかな改良は、添付の特許請求の範囲により定義されるように、本発明の範囲内であると考えられなければならない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] カテーテルの横壁を突き抜ける孔を形成するための方法であって、前記方法は、
各々が内腔を有する一対の管状打抜き部材の間に前記カテーテルのセクションを設けることと、
前記カテーテルの前記横壁を突き抜けるように打ち抜き、前記横壁から一対の対向して位置する孔片を切り離すために、前記一対の管状打抜き部材のうちの少なくとも1つの管状打抜き部材をもう一方に向かって駆動することと、
前記管状打抜き部材の前記内腔のうちの1つを介して、前記切り離された孔片を前記カテーテルから押し出し去るために、突出し部を作動することと、
前記一対の管状打抜き部材を引き抜くことと、
の工程を備える、方法。
[2] 前記突出し部を作動する工程は、
突出し工具を、少なくとも部分的に1つの管状打抜き部材の長手方向の前記内腔を突き抜けるように打ち込み、その後少なくとも部分的にもう一方の管状打抜き部材の前記内腔を突き抜けるように駆動することと、
前記突出し工具を引き抜くことと、
を備える、[1]に記載の方法。
[3] 前記突出し部を作動する工程は、
前記一対の管状打抜き部材の前記内腔を通るように圧縮された空気を吹き込むことを備える、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記カテーテルは、尿道カテーテルである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] カテーテルの横壁を通り抜ける孔を形成するための機器であって、前記機器は、
一対の管状打抜き部材と、ここにおいて、各管状打抜き部材は、切れ刃及び内腔を有し、前記一対の管状打抜き部材のうちの少なくとも1つの管状打抜き部材は、前記カテーテルの前記横壁を突き抜けるように打ち抜き、それにより前記横壁から一対の対向して位置する孔片を切り離すために、もう一方に向かって可動であり、
前記管状打抜き部材の前記内腔を介して、前記カテーテルから前記切り離された孔片を押し出し去るように構成された突出し部と、
を備える、機器。
[6] 少なくとも1つの追加の対の管状打抜き部材と、ここにおいて、各対の管状打抜き部材は、前記カテーテルの長手方向軸に沿った異なる位置で前記横壁を突き抜けるように打ち抜くよう配設されるものであり、
各一対の管状打抜き部材に1つの突出し部と、
を更に備える、[5]に記載の機器。
[7] 前記突出し部は、少なくとも部分的に各対の管状打抜き部材のうちの1つの管状打抜き部材の前記内腔を通り、その後少なくとも部分的に前記対の管状打抜き部材のうちのもう一方の管状打抜き部材の前記内腔を通るように可動であるよう配設された突出し工具である、[5]又は[6]に記載の機器。
[8] 前記突出し工具は、シリンダ型の形状を有し、上面を有する前端部を備え、前記上面は実質的に平面である、[7]に記載の機器。
[9] 前記突出し部は、空気圧縮機のノズルであり、前記ノズルは、各対の管状打抜き部材の前記内腔を通って前記管状打抜き部材のうちの1つからもう一方中に圧縮された空気を吹き込むように配設される、[5]又は[6]に記載の機器。
[10] 排出端部及び挿入端部を備える管状本体を有するカテーテルであって、前記カテーテルは、
前記管状本体の横壁上の、前記カテーテルの長手方向軸を備える断面の両側に位置する少なくとも一対の排出開口部を備え、
ここにおいて、各排出開口部は、前記カテーテルの幅方向と長さ方向の両方に延びた縁部を有し、前記縁部は、前記管状本体の外面に向かって面取りされており、
各排出開口部の面取りの度合いは、概して前記長さ方向に延びている前記縁部のパーツについての方が、概して前記幅方向に延びている前記縁部のパーツについてよりも高い、 カテーテル。
[11] 前記カテーテルは、尿道カテーテルである、[10]に記載のカテーテル。
[12] 前記カテーテルは、ポリマー材料から作られる、[10]又は[11]に記載のカテーテル。
[13] 前記排出開口部は、実質的に円形状である、[10]〜[12]のうちのいずれか一項に記載のカテーテル。
[14] 前記排出開口部は、1,0mmと1,5mmとの間、及び好ましくは1,1mmと1,4mmとの間の直径を有する、請求項13に記載のカテーテル。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d