(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976959
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】発電方法
(51)【国際特許分類】
F03G 7/00 20060101AFI20211125BHJP
E21B 43/22 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
F03G7/00 G
E21B43/22
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-545653(P2018-545653)
(86)(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公表番号】特表2019-510160(P2019-510160A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】EP2017054972
(87)【国際公開番号】WO2017149101
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2020年2月15日
(31)【優先権主張番号】62/303,633
(32)【優先日】2016年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1605068.4
(32)【優先日】2016年3月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506400111
【氏名又は名称】アプライド・バイオミメティック・エイ/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100157934
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 隼明
(72)【発明者】
【氏名】ニッセン,スティーン ソンダーガード
【審査官】
家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/164541(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0261040(US,A1)
【文献】
特表2005−513383(JP,A)
【文献】
特開2014−117653(JP,A)
【文献】
特開2014−200708(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/133661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 7/00
C02F 1/44
B01D 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含む発電方法:
−水フィードストリームを塩地層中に注入して、そこに含まれる塩を溶解し、次いで、塩地層からその溶解塩を含有する塩水ストリームを抽出する工程;及び
−水は通過させるが塩は通過させない半透膜を含み、そこで前記半透膜の一方の側に前記塩水ストリームを通過させ、前記膜の他方の側に低い塩分濃度のストリームを通過させる浸透圧発電ユニットにより、前記塩水ストリーム中に存在する潜在的浸透エネルギーを電気に変換させる工程;及び
−前記低い塩分濃度のストリームに由来するアウトプットストリームを前記水フィードストリームとして使用する工程;及び
−前記塩水ストリームに由来するアウトプットストリームの一部または全部を、塩地層への注入のために、前記低い塩分濃度のストリームに由来するアウトプットストリームと合併する工程。
【請求項2】
塩地層が、塩ドーム又は岩塩地層である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水フィードストリームを注入する工程及び塩水ストリームを抽出する工程を用いて、天然ガスの貯蔵のために、塩地層において塩洞窟を生成又は維持する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水フィードストリームを注入する工程及び塩水ストリームを抽出する工程を用いて、産業用、地方自治体用又は家庭用の塩を製造する、請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記浸透圧発電ユニットによって生成された電気の少なくとも一部を使用して、前記水フィードストリームを注入し、前記塩水ストリームを抽出する工程に電力を供給する、請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
浸透圧発電ユニットが、水は通過させるが塩は通過させない半透膜をそれぞれ含む2つ以上の浸透ユニットを含む、請求項1〜5のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
1つの浸透ユニットからのアウトプットストリームが、第2の浸透ユニットのためのインプットストリームとして用いられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塩水ストリームが、少なくとも10重量%の塩分含量を有する、請求項1〜7のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
塩水ストリームが、少なくとも15重量%の塩分含量を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
塩水ストリームが、少なくとも25重量%の塩分含量を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水フィードストリームが、海水、川又は湖から得られる淡水又は汽水、又は産業又は地方自治体の供給源から得られる廃水である、請求項1〜10のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項12】
浸透圧発電ユニットが、可動プラットフォーム上に取り付けられている、請求項1〜11のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項13】
下記を含む発電システム:
塩地層への接続に適した水圧系統であって、前記塩地層への水フィードストリームを供給して、前記塩地層から塩水ストリームを抽出するように配置された水圧系統、及び
水フィードストリームと前記塩水ストリームとの間の塩分濃度の差異を利用する圧力遅延浸透(PRO)を介して、電気を発生させるように配置された浸透圧発電ユニット、
ここで、浸透圧発電ユニットからのアウトプットは、前記水フィードストリームに由来するアウトプットストリーム及び前記塩水ストリームに由来するアウトプットストリームを形成し、発電システムは、前記塩水ストリームに由来するアウトプットストリームの一部または全部を、塩地層への注入のために、前記水フィードストリームに由来するアウトプットストリームと合併するように構成される。
【請求項14】
前記発電システムが、可動プラットフォーム上に搭載されている、請求項13に記載の発電システム。
【請求項15】
前記水圧系統が、低塩分水源に接続するのに適しており、前記水源から低塩分ストリームを抽出し、前記低塩分ストリームを浸透圧発電ユニットに通過させるように配置されている、請求項14に記載の発電システム。
【請求項16】
水フィードストリームが、低塩分ストリームに由来する、請求項15に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を発生させる方法に関する。特に、本発明は、塩地層(salt formations)の溶解採鉱(solution mining)において使用される流体ストリーム(fluid streams)からの電気の生成、及び溶解採鉱プロセス中にエネルギーを採取するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、化石燃料に頼らない、新規で再生可能なエネルギー源に、多くの努力が向けられている。
【0003】
そのような研究領域の1つは、圧力遅延浸透(pressure retarded osmosis)(PRO)として知られるプロセスである。このプロセスでは、より濃縮された溶液から、より濃縮されていない溶液を分離するために半透膜が使用される。この膜は、浸透によって、より低濃度の(低浸透圧)溶液から、より高濃度の(高浸透圧)溶液に、溶媒を通過させ、これにより、密閉空間において増加する容量のために溶媒が拡散する側の膜の圧力が上昇する。この圧力は電気を発生させるために利用できる。少数のPROプラントが世界各地で稼動しているが、これらは、一般に、浸透現象の駆動体(driver)として、塩分濃度の差異を利用する。典型的には、より低濃度溶液のフィードストリームとして川や湖からの淡水を、そしてより高濃度溶液として海水を、使用する。Helfer et al, J. Membrane Sci. 453(2014), 337-358は、PROを説明するレビュー記事である。これらのパイロット規模のプラントでは、達成される電力密度(power densities)が低いため、そのプロセスは経済的でないことが判明している。約5W/m
2膜の電力密度(a power density)が、PROが経済的に実行可能になり得る発電レベルであることを示していることが、示唆されている。実験室外では、既存の膜技術を用いてこのレベルの電力密度を河川水/海水混合方式で達成することは一般的に不可能であった。
【0004】
浸透現象を含むプロセスにおいて、地下地層(underground formations)中に見出されるエネルギーを利用するための多くの試みがなされている。WO2013/164541は、より濃縮された溶液が「生産水(production water)」であり、より濃縮されていない溶液が淡水又は海水である、直接浸透(direct osmosis)による発電方法を記述している。生産水は、炭化水素製造中に炭化水素ストリームから分離して得られる水である。また、WO2013/164541は、地下地層から得られる塩水ストリームがより濃縮された溶液として使用できることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2013/164541
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Helfer et al, J. Membrane Sci. 453(2014), 337-358
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
より効率的な浸透圧発電プロセスを提供することが有利であろう。
【0008】
再生可能エネルギー源への転換が望まれる一方で、少なくとも化石燃料はエネルギーミックスの重要な部分のままであるだろうことは明らかである。従って、そのような燃料を貯蔵するための貯蔵施設が求められるままであろう。これは、特に、米国及び他の地域における、シェール層(shale formations)からの天然ガスの最近の発見及び広範な採鉱の観点から、天然ガスを貯蔵するために特にそうである。
【0009】
天然ガス貯蔵の1つの既知の方法は、地下の塩地層中に、例えば地下の塩ドーム(salt dome)又は岩塩地層(rock salt formations)中に、大きな洞窟(caverns)を作り出すことである。これらの洞窟は、溶解採鉱(solution mining)として知られるプロセスによって作成される。典型的には、溶解採鉱は、大量の(淡)水を地下の塩地層中に注入することを含む。塩は、その後、その水によって溶解され、得られた高塩分水又は飽和塩水が地表に戻される。溶解採鉱された空洞は、経時的に徐々に収縮し、空洞を維持するために溶解採鉱プロセスを定期的に繰り返すことができる。溶解採鉱には、天然ガス貯蔵洞窟の作成に加えて、他の用途があることは理解されよう。例えば、溶解採鉱は、下流の用途に使用する水溶性ミネラルを抽出する手段として使用することができる。
【0010】
より効率的な溶解採鉱プロセスを提供することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一つの側面において、本発明は、下記工程を含む発電方法を提供する:
−水フィードストリーム(an aqueous feed stream)を塩地層(a salt formation)中に注入して、そこに含まれる塩を溶解し、次いで、塩地層からその溶解塩を含有する塩水ストリーム(a saline stream)を抽出する工程;及び
−水は通過させるが塩は通過させない半透膜を含み、そこで前記半透膜の一方の側に前記塩水ストリームを通過させ、前記膜の他方の側に低い塩分濃度のストリームを通過させる浸透圧発電ユニット(an osmotic power unit)を通過させることにより、前記塩水ストリーム中に存在する潜在的浸透エネルギーを電気に変換させる工程;及び
−前記低い塩分濃度のストリームに由来するアウトプットストリームを前記水フィードストリームとして使用する工程。
【0012】
他の側面において、本発明は、下記を含む発電システムを提供する:
塩地層への接続に適した
水圧系統(a hydraulic system)であって、前記塩地層への水フィードストリームを供給して、前記塩地層から塩水ストリームを抽出するように配置された
水圧系統、及び
水フィードストリームと前記塩水ストリームとの間の塩分濃度の差異を用いる圧力遅延浸透(PRO)を介して、電気を発生させるように配置された浸透圧発電ユニット。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】塩地層を溶解採鉱することによって生成された塩水が最初に浸透圧発電ユニットを通過する本発明の一実施態様の概略図を示す。
【
図2】複数の浸透ユニットが使用されている
図1の変形例を示す。
【
図3】代替的インプットストリームを用いた
図2の変形例を示す。
【
図4】代替的アウトプットストリームを用いた
図3の変形例を示す。
【
図6】
図1のプロセスを使用するプロセスユニットを示す。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明方法は、改良された溶解採鉱プロセス及び/又は改良された発電プロセスを提供することができる。
【0015】
本発明方法では、溶解採鉱プロセスにより生成される塩水ストリームから、浸透圧発電プロセスの手段によって潜在的浸透エネルギーを抽出するために、溶解採鉱プロセスのインプットストリームとアウトプットストリームとの間の塩分濃度の差を利用する。水フィードストリーム又はより低い塩分濃度のフィードストリームと呼ばれ得る、溶解採鉱プロセスのインプットストリームは、塩地層に入る前に浸透圧発電ユニットに通される。塩水ストリームである溶解採鉱プロセスからのアウトプットストリームは、塩地層を出た後、浸透圧発電ユニットを通過する。浸透圧発電は、高塩分ストリームと低塩分ストリームとの間の塩分濃度差を利用する。溶解採鉱プロセスのインプットストリームは、低塩分ストリームとして使用されてもよいし、低塩分ストリームに由来してもよい。溶解採鉱プロセスのアウトプットストリームは、高塩分ストリームとして使用されてもよいし、高塩分ストリームの起点を形成してもよい。このようにして、溶解採鉱プロセスのインプットストリームは、浸透圧発電ユニット内に含まれる半透膜の一方の側を流れ、一方、溶解採鉱プロセスのアウトプットストリームは他方の側に流れる。
【0016】
溶解採鉱プロセスのインプットストリームとアウトプットストリームとの間の塩分濃度差を用いることは、いくつかの点で有利であり得る。
【0017】
浸透圧発電ユニットによって生成された電力は、溶解採鉱プロセスを駆動するために、完全に又は部分的に使用することができる。溶解採鉱プロセスが外部電源に依存することを排除又は低減することにより、より離れた場所及び/又はより多くの可動溶解採鉱装置における溶解採鉱が促進され得る。いくつかの状況において、浸透圧発電ユニットは、他の場所で使用され得る余剰エネルギーを生成し得る。
【0018】
溶解採鉱によって生成された塩水ストリームは、例えば海水と比較して、より高い塩濃度をもたらす。浸透圧発電ユニットの高塩分インプットストリームにおける塩濃度の上昇は、圧力遅延浸透(PRO)中のより高い出力密度を可能にし得る。溶解採鉱プロセスのインプットストリームとアウトプットストリームとの間の大きな浸透圧差によりもたらされるより高い出力密度に加えて、溶解採鉱からの塩水ストリームは、浸透膜が汚れるリスクをより低くし、及び/又は海水又は他の先行技術の高塩分源と比較して、必要とされる前処理の量を減じる。それは、塩地層からの塩水ストリームが一般的により広い環境から抽出されるためである。従って、溶解採鉱プロセスと浸透圧発電ユニットとを結合することにより、より効率的な浸透圧発電プロセスがもたらされ得る。
【0019】
溶解採鉱プロセス及び浸透圧発電プロセスの両者は、加圧流体ストリームを必要とする。溶解採鉱プロセスは、塩地層に注入されるより低い塩分濃度のフィードストリームの循環流と、塩地層から抽出されるより高い塩分濃度のアウトプットストリームとを必要とする。浸透圧発電プロセスは、膜の低塩分側と高塩分側との間の圧力差を必要とする。浸透圧発電プロセスを溶解採鉱プロセスと組み合わせることにより、浸透圧発電プロセスのためのフィードストリームを加圧する必要性が低減又は除去される。何故なら、前記ストリームは溶解採鉱プロセスの一部として既に加圧されているからであり、それによって、発電プロセスの効率が増加する。
【0020】
さらに、浸透圧発電プロセスの間に膜を横切って溶媒を移動させると、塩地層から抽出された塩水ストリームが希釈される結果となるであろう。これにより、廃棄ストリームの処分を容易にでき、例えば環境上の考慮事項により、高塩分ストリームが隣接する水域に戻らないようにすることができるであろう。従って、溶解採鉱プロセスと浸透圧発電ユニットとを結合することにより、溶解採鉱廃棄物の処分をより容易にすることができる。
【0021】
最後に、本発明において溶解採鉱プロセスと浸透圧発電プロセスとを組合せる方法は、各プロセスが別々に実施される場合と比較して、消費される淡水の全体量を減少させることができる。
【0022】
本発明方法は、溶解採鉱プロセスを使用することができる。溶解採鉱プロセスへのインプットは、水フィードストリームであろう。水フィードストリームの特性は、塩地層からの塩がそのフィードストリームに溶解するようなものでなければならないことが理解されるであろう。水フィードストリームは、その中に含有されている塩を溶解するために、塩地層に注入されることができる。溶解採鉱プロセスのアウトプットは、塩地層から溶解した塩を含有する塩水ストリームであろう。
【0023】
本発明方法は、浸透圧発電工程において、塩地層から得られた塩水ストリームを使用することができる。塩水ストリームは、一般に、発電工程を実施する前に、必要なあらゆる前処理工程の対象となる。例えば、ストリームの正確な性質に応じて、他の従来のプロセスと同様に、固体物質を除去するための濾過が必要な場合がある。
【0024】
塩水ストリームの塩分含量は、飽和までのいかなるものであってもよい。好ましくは、塩分含量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、特に少なくとも25重量%である。溶解採鉱によって生成された塩水ストリームは、塩化ナトリウムが優勢である広範な多種多様の溶解塩を含有し得ること、「塩分含量」は全塩分含量を指すことが理解されるであろう。このようなストリーム中に存在する塩の正確な性質は重要ではない。同様に、(より)高い塩分及び(より)低い塩分という用語は、本明細書では、相当する「塩分含量」を有するストリームを指すために使用される−このようなストリーム中に存在する塩の正確な性質は重要ではない。
【0025】
塩地層は、塩ドーム又は岩塩地層であり得る。塩地層は、地下であってよい。塩地層は、1つ又は複数のボアホール(bore holes)を介してアクセスすることができる。水フィードストリームは、ボアホールを介して塩地層中に注入することができる。塩水ストリームは、ボアホールを介して塩地層から抽出することができる。フィードストリーム及び塩水ストリームは、従来の方法で、塩地層中に注入され、塩地層から抽出され得る。
【0026】
溶解採鉱プロセスは、天然ガスの貯蔵のため、塩地層中に、塩洞窟(a salt cavern)を生成及び/又は維持するために使用され得る。溶解採鉱プロセスは、産業、地方自治体又は家庭の目的及び用途のための塩を抽出するために使用され得る。
【0027】
浸透圧発電プロセスは、浸透によって駆動され、潜在的浸透エネルギーを電気に変換する。浸透圧発電ユニットは、潜在的な浸透エネルギーを電気に変換する装置である。任意の適切な浸透圧発電ユニットを本発明方法で使用することができる。そのようなユニットの重要な特徴は、水の通過は可能だが、溶解した塩の通過は許容しない半透膜の存在である。このような膜は市販されており、任意の適切な膜を使用することができる。さらに、新規なタイプの膜、例えば、水の通過は可能であるが他の物質を通さないタンパク質であるアクアポリンを含む、脂質又は両親媒性ポリマーマトリックスに基づいた膜、を使用することができる。このような膜は、例えば、WO2004/011600、WO2010/091078、US2011/0046074及びWO2013/043118に記載されている。その他の新規なタイプの膜としては、グラフェンをベースとする膜、例えば、Cohen-Tanugi et al, Nano Lett. 2012, 12(7), pp. 3602-3608及びO’Hern et al, Nano Lett. 2014, 14(3), pp. 1234-1241に記載されているものを、包含する。2つ以上の膜が存在してもよく、異なるタイプの膜の組み合わせが用いられてもよい。従って、浸透圧発電ユニットは、それぞれの浸透ユニットが半透膜を含む2つ以上の浸透ユニットを含むことができる。浸透圧発電ユニットは、少なくとも1つの膜と共に、浸透によって生成された圧力又は流れを電気に変換する手段を含むであろう。典型的には、この手段は、発電機に接続されたタービンであろうが、任意の適切な手段を使用することができる。
【0028】
溶解採鉱プロセスによって生成した塩水ストリームと共に、浸透圧発電プロセスは、塩地層から抽出した塩水ストリームより低い塩分濃度を有する水ストリームであるフィードストリームを必要とする。このより低い塩分濃度のストリームは、任意の供給源から得ることができるが、典型的には、海水、例えば川又は湖から得られる淡水又は汽水、又は産業若しくは地方自治体の供給源から得られる廃水である。本発明方法の経済性は、塩地層が、必要なストリームの調達及び廃棄ストリームの処理の両者が何れも容易かつ安価である、海、川又は湖に隣接して設置されている場合に特に有利である。本明細書を通じて、文脈上他の意味を必要としない限り、「より低い塩分濃度」は塩分濃度ゼロを含むと理解されるべきである。
【0029】
従って、浸透圧発電工程への初期のインプットは、1つのより高い塩分濃度のストリーム(塩水ストリーム)と1つのより低い塩分濃度のストリームである。膜を通過した後、第1のストリーム(初期のより高い塩分濃度)は塩分濃度が減少し、第2のストリーム(初期のより低い塩分濃度)は塩分濃度が増加するであろう。膜の第1の通過分からのアウトプットストリームは、平衡時において、両者とも、元の塩水ストリームよりも低い塩分濃度を有し、及び元のより低い塩分濃度のストリームよりも高い塩分濃度を有し、それらの2つのストリームは等しい塩分濃度を有するようになるであろうが、実際には達成されそうにない。従って、いずれかのアウトプットストリームは、元の膜の第2の通過分用の第1のストリーム又は第2のストリームのいずれかとして、又は第2の膜の第1のストリーム又は第2のストリームのいずれかとして、再利用することができる。これらの再利用ストリームは、単独で使用されてもよく、又は他のインプットストリームと合流されてもよい。塩地層からの塩水ストリーム中の高濃度の塩は、多段階浸透圧発電の利用を容易にすることができる。各工程は、各通過分の初期インプットストリーム間の塩分濃度の差に依存して、異なる圧力及び/又は流量(flux)の設定を有することができる。このように圧力及び/又は流量の設定を調整することは、特に多数の工程が塩地層からの塩水ストリームに使用される場合に、プロセスの効率を高めることができる。浸透ユニットからの流出ストリームが、初期のより低い塩分濃度のインプットストリームより高い塩分濃度を有する限り、追加の浸透ユニットを稼働することが可能である。最適サイクル数は、ストリームの初期内容物、膜の効率、及び選択された流速に依存するだろう。
【0030】
浸透圧発電ユニットは、2つ以上の浸透ユニットを含むことができ、各浸透ユニットは、水の通過は可能であるが塩の通過は不可能である半透膜を含む。各浸透ユニットからのアウトプットは、膜の第1の(初期のより高い塩分濃度)側からの第1の流出ストリームであり、膜の第2の(初期のより低い塩分濃度)側からの第2の流出ストリームである。これらのストリームは、別々に処理されてもよく、又は少なくとも部分的に合流されてもよい。
【0031】
浸透圧発電ユニットからのアウトプットは、1つ以上のアウトプットストリームであろう。浸透圧発電ユニット内の浸透ユニットの数及び各浸透ユニットからの流出ストリームが処理される方法に応じて、これらのアウトプットストリームの特性は変化し得る。
【0032】
浸透圧発電ユニットからの少なくとも1つのアウトプットストリームは、元ののより低い塩分濃度のストリームに由来するであろう。このストリームは、より高い塩分濃度を有するが、まだ塩地層から塩を溶解することができる。このストリームは、塩地層中に注入される水フィードストリームとして使用される。
【0033】
浸透圧発電ユニットからの1つのアウトプットストリームは廃棄ストリームであってもよい。廃棄ストリームは、元のより低い塩分濃度のストリームに由来するアウトプットストリームよりも高い塩分濃度を有することができる。廃棄ストリームは、必要に応じて、例えば、隣接する海、河川又は湖に排出することによって廃棄することができる。隣接する水域への許容排出濃度に依存して、システム内の浸透ユニットの数は、許容される塩濃度が廃棄ストリーム中で得られるまで変化させることができる。
【0034】
本発明方法の効率は、塩水ストリームの初期の温度及び圧力、並びに該ストリームが含む塩の量及び性質に依存するだろう。方法の効率を決定するもう1つの重要な特徴は、半透膜の性能であり、最適化は、膜を通って得られる水の流量と、膜が塩を排除できる効率との2つの要因の組み合わせに依存するだろう。前記した、複数の浸透ユニットの使用も又、方法の全体的な効率に影響し得る。
【0035】
水フィードストリームを注入する工程、塩水ストリームを抽出する工程及び潜在的浸透圧エネルギーを変換する工程が同時に行われることは、理解されるであろう。
【0036】
本発明は、発電システムを提供することができる。発電システムは、
水圧系統(a hydraulic system)を含むことができる。発電システムは、浸透圧発電ユニットを備えることができる。発電システムは、可動プラットフォーム、例えば道路車両、例えばトラック、重荷重車両(HGV)又は同様の車両、又はそのような車両と共に使用するためのトレーラに搭載することができる。浸透圧発電ユニット及び/又は
水圧系統を含む発電システムを可動プラットフォーム上に取り付けることは、電力供給が制限されている場所での溶解採鉱を容易にすることができる。この方法は、可動プラットフォーム上に搭載された発電システムを、地下の塩地層を有する第1の場所に移動させることを含むことができる。本方法は、第1の場所で本発明方法を実施することを含むことができる。本方法は、可動プラットフォーム上に搭載された発電システムを、地下の塩地層を有する第2の異なる場所に移動させ、第2の場所で本発明方法を実施することを含むことができる。
【0037】
本発明の装置は、溶解採鉱システムを含むことができる。溶解採鉱システムは、溶解採鉱プロセスを実行するための他の従来の手段と共に、1つ以上のポンプ及び制御システムを備えることができる。溶解採鉱システムの少なくとも一部、例えば、1つ以上のポンプ及び/又は制御システムを可動プラットフォームに搭載することができる。
【0038】
塩地層が地下の塩地層である場合、浸透圧発電ユニットは地上に配置されてもよい。浸透圧発電ユニットは、例えば、可動プラットフォーム上に設置することができる。
【0039】
本発明方法は、浸透圧発電ユニットが電気を生成するので、発電方法として説明され得ることが理解されるであろう。生成される電気の量は、プロセスパラメータに応じて変化することが理解されよう。浸透圧発電ユニットは、溶解採鉱プロセスを稼働するのに十分な電力を供給でき、及び他の場所で使用するために余剰を供給できるか、又は溶解採鉱プロセスを稼働するのに丁度十分な電力を供給できるか、又は溶解採鉱プロセスを実行するために、浸透圧発電ユニットによって供給される電力に加えて、外部電力が必要になることがある。
【0040】
図1に、本発明の一実施態様を概略的に示す。
図1において、塩地層1から抽出された塩水ストリーム2は、1つ以上の前処理工程3に通され、得られたストリーム4は、浸透圧発電ユニット6に送られ、そこで、水は通過させるが塩は通過させない半透膜(図示せず)の一方の側に流れるようにされる。水ストリーム7は、ストリーム2及び4よりも低い塩分濃度であり、例えば、海水、川又は湖からの水、又は廃水であってもよい水源5から、1つ以上の前処理工程8に通され、得られたストリーム9は、浸透圧発電ユニット6に送られ、そこで、前記半透膜の他方の側に流れるようにされる。浸透圧発電ユニット6内では、ストリーム9から半透膜を介してストリーム4中に水が流れて、密閉された空間内の容積の増加により圧力が上昇し、この過剰圧力は、図示しない従来の手段によって、最終的に電気に変換される。この水の流れは、初期のより低い塩分濃度のストリーム9の塩分濃度を増加させ、第2のストリーム4の塩分濃度を減少させるであろう。浸透圧発電ユニット6からのアウトプットは、初期のより低い塩分濃度のストリーム(即ち、半透膜を介して流出した水を減じたストリーム9)に由来する水流出ストリーム10及び前記塩水ストリーム(即ち、半透膜を介して流出した水を加えたストリーム4)に由来する水流出ストリーム11を形成する。水流出ストリーム10は、塩地層1に注入され、そこに含まれる塩を溶解し、続いて塩水ストリーム2として抽出される。水流出ストリーム11は、ストリーム7が抽出された、水源5、例えば海、川又は湖に、処分される。或いは、水流出ストリーム11の一部または全部を、塩地層への注入のために水流出ストリーム10と合併することができる。ある実施形態では、水流出ストリーム11は、産業において使用するために、そこに含まれる塩及び/又は他のミネラルを抽出するためのさらなる処理工程を受けてもよい。
【0041】
図2は、浸透圧発電ユニット5が直列に接続された複数の浸透ユニット6a、6b及び6cを含む、
図1のプロセスの変形の一部を示す。同様の要素は同様の参照番号で示されている。ここでは、
図1の実施態様と異なる
図2の実施態様の要素のみについて説明する。各浸透ユニット6a、6b及び6cは、水の通過は可能であるが、塩の通過は不可能である半透膜(図示せず)を含む。より低い塩分濃度のストリーム9は、3つのストリーム9a、9b、9cに分岐し、各々は浸透ユニット6a、6b、6cの異なる1つに行く。元の高い塩分濃度のストリーム4は、第1のユニット6aの半透膜の一方の側に流れ、一方、元のより低い塩分濃度のストリーム9から得られたより低い塩分濃度のストリーム9aは他方の側に流れる。より低い塩分濃度のストリーム9aに由来する、浸透ユニット6aからのアウトプットストリーム10aは、
図1に関連して説明したように、塩地層中に注入される。元のインプットストリーム4の塩分含量よりも低い塩分含量を有する浸透ユニット6aからのアウトプットストリーム11aは、第2の浸透ユニット6bに供給され、そこで半透膜の一方の側を通過する。ストリーム9から得られる比較的塩分濃度が低い水の第2のインプットストリーム9bは、他の側を流れる。ストリーム11aと9bとの塩分濃度の差は、ストリーム4と9aとの塩分濃度の差よりも小さいが、まだ塩分濃度に差があり、浸透によって電気を生成することができる。
図1に関連して説明したように、より低い塩分濃度のストリーム9bに由来する、浸透ユニット6bからのアウトプットストリーム10bが、塩地層中に注入される。元のインプットストリーム4の塩分含量よりも低く、且つストリーム11aよりも低い塩分含量を有する浸透ユニット6bからのアウトプットストリーム11bは、第3の浸透ユニット6cに供給され、そこで、比較的低い塩分含量の水である更なるインプットストリーム9cからは、半透膜の他方の側を通過する。ストリーム11bと9cとの塩分濃度の差は、ストリーム4と9aとの塩分濃度の差又はストリーム11aと9bとの塩分濃度の差よりも小さいが、まだ塩分濃度に差があり、浸透によって電気を生成することができる。
図1に関連して説明したように、より低い塩分濃度のストリーム9cに由来する、浸透ユニット6cからのアウトプットストリーム10cが、塩地層中に注入される。
図2のプロセスからのアウトプットストリームは、初期のより低い塩分濃度のストリーム9に由来し、地層中に注入された、水流出ストリーム10a、10b、10c、及び塩水ストリーム4に由来する水ストリーム11cである。
【0042】
図3は、比較的低い塩分濃度の水のインプットストリーム9a、9b及び9cが、別々のインプットストリーム7a、7b及び7cとして供給され、それぞれ1つ以上の前処理工程8a、8b及び8cを受ける、
図2の変形例を示す。
【0043】
図4は、アウトプットストリームが異なる方法で処理される、
図3の変形例を示す。浸透ユニット6aからの流出ストリーム10a及び11aが合流され、合流されたストリームの少なくとも一部が、浸透ユニット6bへのインプットストリーム12として供給される。合流されたストリーム12は、元のインプットストリーム4の塩分含量よりも低い塩分含量を有し、ストリーム12とストリーム9bとの塩分濃度の差は、ストリーム4と9aとの塩分濃度の差よりも小さいが、まだ塩分濃度に差があり、浸透によって電気を生成することができる。同様に、浸透ユニット6bからの流出ストリーム10b及び11bが合流され、合流されたストリームの少なくとも一部が、浸透ユニット6cへのインプットストリーム13として供給される。
【0044】
図2、3及び4は、それぞれが半透膜を含む3つの浸透ユニットからなる浸透圧発電ユニット6を示していると理解されるだろうが、任意の適切な数のユニットを使用することができ、その選択は技術的及び経済的な要因の組合せによって、決定される。一般に、塩水ストリーム1の初期の塩分濃度が高いほど、使用可能な浸透ユニットの数が多くなる。
【0045】
図5は、
図1の浸透圧発電ユニット5の更なる詳細を示す。塩地層から抽出された塩水ストリーム20(例えば、
図1のストリーム2又は4であってもよい)は、水は通過させるが塩は通過させない半透膜22を含む浸透ユニット21に通され、膜22の一方の側に流れる。ストリーム20よりも低い塩分濃度である水ストリーム23は、浸透ユニット21に入って、膜22の他方の側に流れる。矢印24は、膜22を横切る浸透による水輸送の方向を示す。この時点でより高濃度の塩を含む、元のインプットストリーム23に由来するアウトプットストリーム25は、浸透ユニット21を出る。この時点でより低濃度の塩を含む、元のインプットストリーム20からなるアウトプットストリーム26は、発電機28を駆動して発電するタービン27を介して、浸透ユニット21を出る。
【0046】
図6は、塩地層152と共に使用するための可動生産ユニット150の概略図を示す。ボアホール153a及び153bは、地表から塩地層152内に位置する塩洞窟154まで延びている。生産ユニット150の流出ポート(outflow port)156は、ボアホール153aと接続されており、流入ポート(inflow port)157はボアホール153bに接続されている(これらの接続は
図6に破線で示されている)。可動ユニット150は、また、浸透圧発電ユニット158と、ポンプと、及び明確性のためにここでは示されていない溶解採鉱システムの他の要素とを備える。可動ユニット150は、流入ポート162及び流出ポート164をさらに備え、両方とも水源(図示せず)に接続される。可動ユニット150内で、
水圧系統は、以下のように、浸透圧発電ユニット158を様々なポート(ports)に接続する(
図6に破線で示す);流入ポート162は、浸透圧発電ユニットの低塩分インプットに接続され、流出ポート164は、浸透圧発電ユニット158の廃棄アウトプットと接続され、流出ポート156は、低塩分インプットに由来するストリームのための浸透圧発電ユニットアウトプットに接続され、又流入ポート157は浸透圧発電ユニット158の高塩分インプットに接続されている。必要な方向に流体を移動させるために、ポンプ(図示せず)が
水圧系統の様々な箇所に配置されている。
【0047】
使用時には、低塩分ストリームは、ポンプの作用下で、ポート162を介して水源から浸透圧発電ユニット158に引き込まれる。低塩分インプットに由来するストリームは、膜(図示せず)を通り過ぎた後、ポンプダウンボアホール153aによって、ポート156を介して塩洞窟154に注入される。同時に、ほぼ飽和された塩水ストリームは、ポンプの作用下で、ボアホール153bによって、塩洞窟154から引き上げられ、ポート157を介して、プロセスユニットに入る。塩水ストリームは、ポート157から、浸透圧発電ユニットの高塩分インプットにポンプ輸送される。膜(図示せず)を通り過ぎた後、高塩分インプットに由来するストリームは、ポート164を通して排出され、水源に戻される。