【文献】
Bioprocess and Biosystems Engineering, 2016, Vol.39, No.12, pp.1879-1885
【文献】
J. Natural Medicines, 2008, Vol.62, No.4, pp.456-460
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベATCC15700、ビフィドバクテリウム・ブレーベBCCM LMG23729、ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460からなる群より選択される一種又は二種以上である、請求項1又は2に記載のアグリコン産生促進剤。
請求項1に記載のアグリコン産生促進剤とポリフェノール配糖体とを含有するアグリコン産生用飲食品組成物であって、前記配糖体には少なくともレスベラトロール配糖体が含まれる、アグリコン産生用飲食品組成物。
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベがビフィドバクテリウム・ブレーベATCC15700、ビフィドバクテリウム・ブレーベBCCM LMG23729、ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460からなる群より選択される一種又は二種以上である、請求項5又
は6に記載のアグリコン産生用飲食品組成物。
前記ビフィドバクテリウム・ブレーベが、ビフィドバクテリウム・ブレーベATCC15700、ビフィドバクテリウム・ブレーベBCCM LMG23729、ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460からなる群より選択される一種又は二種以上である、請求項8又は9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0019】
<アグリコン産生促進剤>
本発明に係るアグリコン産生促進剤は、配糖体からアグリコンを産生するのを促進するために用いられるものであって、ビフィドバクテリウム属細菌を有効成分として含む。一般に、配糖体が加水分解されることによってアグリコンが産生するが、本発明に係るビフィドバクテリウム属細菌が産生するβ−グルコシダーゼの作用により、配糖体の糖鎖結合部位が切断され、アグリコンの産生が促進される。本発明に係るアグリコン産生促進剤により産生が促進されるアグリコンはポリフェノールアグリコンであって、ポリフェノールアグリコンには少なくともレスベラトロールが含まれ、好ましくはイソフラボンアグリコンがさらに含まれる。また、本発明に係るアグリコン産生促進剤の作用対象となる配糖体はポリフェノール配糖体であって、ポリフェノール配糖体には少なくともレスベラトロール配糖体が含まれ、好ましくはイソフラボン配糖体がさらに含まれる。また、本発明に係るアグリコン産生促進剤の作用対象となる配糖体は、通常は、ルチン及び/又はヘスペリジンを含まない。
【0020】
本発明の別の側面は、配糖体からアグリコンを産生するのを促進するために用いられるアグリコン産生促進剤の製造における、ビフィドバクテリウム属細菌の使用であって、前記アグリコンには少なくともレスベラトロールが含まれる、使用である。
また別の側面は、配糖体からのアグリコン産生促進における、ビフィドバクテリウム属細菌の使用であって、前記アグリコンには少なくともレスベラトロールが含まれる、使用である。
また別の側面は、ビフィドバクテリウム属細菌を配糖体の存在下で培養することを含む、配糖体からアグリコンを産生するのを促進する方法であって、前記アグリコンには少なくともレスベラトロールが含まれる、方法である。
これらの態様における、配糖体、アグリコン、及びビフィドバクテリウム属細菌は、本発明のアグリコン産生促進剤における説明に準じる。
【0021】
本発明に係るアグリコン産生促進剤は、配糖体の分解促進剤とも言い換えることができる。すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌を有効成分として含むことを特徴とし、該細菌が産生するβ−グルコシダーゼの作用により、配糖体の糖鎖結合部位を切断することができるため、配糖体をアグリコンに分解するのを促進するために用いることができる。
本発明の別の側面は、配糖体の分解促進剤の製造におけるビフィドバクテリウム属細菌の使用であって、前記配糖体には少なくともレスベラトロール配糖体が含まれる使用である。
また別の側面は、配糖体の分解促進における、ビフィドバクテリウム属細菌の使用であって、前記配糖体には少なくともレスベラトロール配糖体が含まれる、使用である。
これらの態様における、配糖体、アグリコン、及びビフィドバクテリウム属細菌は、本発明のアグリコン産生促進剤における説明に準じる。
【0022】
「配糖体」とは、糖のヘミアセタール性ヒドロキシ基が、非糖化合物(アグリコン)で置換された化合物の総称であり、非糖化合物の種類により、種々の配糖体が存在する。本発明における配糖体は、通常、ポリフェノール配糖体を指すものとする。本発明においては、非糖化合物としてレスベラトロールを含む配糖体を「レスベラトロール配糖体」という。また、イソフラボン骨格を有する化合物を非糖化合物として含む配糖体を「イソフラボン配糖体」という。
また、「アグリコン」とは、配糖体から糖鎖が切断されて生成する非糖化合物をいう。本発明において、単に「レスベラトロール」という場合、特に断りのない限り、当該レスベラトロールはアグリコンであることを示す。また、イソフラボン骨格を有するアグリコンは、「イソフラボンアグリコン」という。
【0023】
(1)ビフィドバクテリウム属細菌
本発明に用いることができるビフィドバクテリウム属細菌は、本発明の効果を損なわない限り、公知のビフィドバクテリウム属細菌を自由に選択して用いることができる。例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・サーモフィルム等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、本発明においては、ビフィドバクテリウム・ブレーベを用いることが好ましい。ビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、公知のビフィドバクテリウム・ブレーベに属する細菌を自由に選択して用いることができる。本発明に係るビフィドバクテリウム・ブレーベとしては、ビフィドバクテリウム・ブレーベATCC15700、ビフィドバクテリウム・ブレーベBCCM LMG23729、ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175を好適に用いることができる。また、本発明には、新規ビフィドバクテリウム属細菌である、ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460を使用することもできる。
ビフィドバクテリウム属細菌は、一種のみを用いてもよいし、任意の二種以上を用いてもよい。
【0025】
ATCC番号が付与された細菌は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所:12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, United States of America)から入手することができる。
BCCM LMG23729は、ベルギーの保存機関であるBelgian Coordinated Collections of Microorganisms(BCCM)(住所:ベルギー、B-1000 ブリュッセル シアンス通り(ウェーテンスカップ通り)8)から入手することができる。
FERM BP−11175は、平成21年8月25日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現 独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされ、受託番号FERM BP−11175が付与されている。
DSM10140は、ドイツの保存機関であるthe Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)(住所:Mascheroder Weg 1b, D-38124 Braunschweig, Germany)から入手することができる。
JCM5820は、日本の保存機関である国立研究開発法人 理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(Japan Collection of Microorganisms(JCM))(住所:〒305-0074 茨城県つくば市高野台3-1-1)から入手することができる。
【0026】
本発明のビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460は、ヒト乳児腸管を分離源として単離された、新規ビフィドバクテリウム属細菌である。本細菌の遺伝学的性質を調べるため、16SrRNA遺伝子塩基配列を常法により同定した。さらに、各ビフィドバクテリウム属細菌の16SrRNA遺伝子塩基配列について、米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のデータベースにて、BLAST解析により前記塩基配列の相同性検索を行った。
その結果、ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460は、ビフィドバクテリウム・ブレーベの基準株であるビフィドバクテリウム・ブレーベDSM20213と前記塩基配列において99%の相同性があり、ビフィドバクテリウム・ブレーベに属するビフィドバクテリウム属細菌であることが確認された。
NITE BP−02460は、平成29年4月24日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされ、受託番号NITE BP−02460が付与されている。
【0027】
本発明に係るアグリコン産生促進剤中のビフィドバクテリウム属細菌の含有量は特に限定されず、使用頻度や使用量、摂取者の食事の内容や量、摂取者の年齢等に応じて、自由に設定することができる。例えば、アグリコン産生促進剤中のビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、1×10
6〜1×10
12CFU/g又は1×10
6〜1×10
12CFU/mLとすることが好ましく、1×10
7〜1×10
11CFU/g又は1×10
7〜1×10
11CFU/mLとすることがより好ましく、1×10
8〜1×10
10CFU/g又は1×10
8〜1×10
10CFU/mLとすることがさらに好ましい。なお、前記単位CFUは、colony forming unitsの略であり、コロニー形成単位である。
【0028】
本発明に係るアグリコン産生促進剤は、食品や薬剤中に長年使用され、かつ、動物の腸内にも存在するビフィドバクテリウム属細菌を有効成分として用いるため、生体への安全性が高いことが期待される。そのため、副作用や依存性が生じにくいと考えられ、長期間、連続的に摂取することが可能である。
また、ビフィドバクテリウム属細菌は、動物の腸内に所謂、善玉菌として存在するため、本発明に係るアグリコン産生促進剤は、腸内細菌叢のバランス調整作用をも期待することができる。
【0029】
(2)レスベラトロール及びレスベラトロール配糖体
レスベラトロールは、下記化学式(1)で表される構造を有するアグリコンである。また、本発明に係るレスベラトロール配糖体は、非糖化合物としてレスベラトロールを含む配糖体であれば特に制限されない。例えば、本発明に係るレスベラトロール配糖体として、下記化学式(2)で表されるトランス−ポリダチン(トランス−ピセイド)や、レスベラトロール二量体に糖鎖が結合したグネモノシドが例示できる。
【0032】
(3)イソフラボン及びイソフラボン配糖体
一般に、下記化学式(3)で表される構造を基本骨格とするフラボノイド化合物は、イソフラボン類と呼ばれる。イソフラボン類は、イソフラボンアグリコン及びイソフラボン配糖体を包含する。
本発明においては、前記基本骨格を有するアグリコンを、特にイソフラボンアグリコンという。本発明のイソフラボンアグリコンとしては、ダイゼイン、アセチルダイゼイン、マロニルダイゼイン、ゲニステイン、アセチルゲニステイン、マロニルゲニステイン、グリシテイン、アセチルグリシテイン、マロニルグリシテインが例示できる。
また、本発明において、前記基本骨格に糖が結合している化合物を、イソフラボン配糖体という。イソフラボン配糖体としては、イソフラボンアグリコンに糖鎖が結合しているものであれば特に制限されないが、下記化学式(4)で表されるダイジンや、アセチルダイジン、マロニルダイジン、ゲニスチン、アセチルゲニスチン、マロニルゲニスチン、グリシチン、アセチルグリシチン、マロニルグリシチンが例示できる。
【0035】
<医薬組成物>
本発明の好ましい形態では、ビフィドバクテリウム属細菌は、安全性が高く、かつ腸内細菌叢にも好ましい影響を与えるため、本発明のアグリコン産生促進剤は、医薬組成物として用いることができる。本発明によれば、ビフィドバクテリウム属細菌は、レスベラトロール配糖体及びイソフラボン配糖体を分解することにより、生体内への吸収性が高いレスベラトロールやイソフラボンアグリコンの産生を促進することができる。
【0036】
また、本発明に係る医薬組成物は、食品中に長年使用されているビフィドバクテリウム属細菌を有効成分とするため、種々の疾患を罹患した患者に対しても安心して投与できる。また、ビフィドバクテリウム属細菌は、動物の腸内にも存在するため、長期間、連続的に投与しても副作用が生じにくいことが期待される。
【0037】
本発明に係るアグリコン産生促進剤を医薬組成物として利用する場合、該医薬組成物は、経口投与及び非経口投与のいずれでもよいが、経口投与が好ましい。非経口投与としては、例えば、直腸投与等が挙げられる。
【0038】
また、製剤化に際しては、本発明に係るアグリコン産生促進剤の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、本発明に係るアグリコン産生促進剤を含有しているものであれば、公知の又は将来的に見出されるレスベラトロール及び/又はイソフラボンが有効に作用する疾患に対する予防及び/又は治療の効果を有する成分を、本発明に係るビフィドバクテリウム属細菌と併用することもできる。
【0039】
さらに、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、非経口投与の場合、座剤、軟膏剤等に製剤化することができる。
【0040】
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
【0041】
なお、製剤担体を配合する場合、ビフィドバクテリウム属細菌の含有量は特に限定されず、剤形に合わせて一日あたりの摂取量又は投与量に基づいて適宜選択することができる。なお、ビフィドバクテリウム属細菌の体重1kgあたりの一日の摂取量又は投与量は、1×10
6〜1×10
12CFU/kg/日が好ましく、1×10
7〜1×10
11CFU/kg/日がより好ましく、1×10
8〜1×10
10CFU/kg/日がさらに好ましい。
【0042】
また、前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0043】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0044】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0045】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0046】
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0047】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0048】
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0049】
本発明に係るアグリコン産生促進剤は、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体を分解してアグリコンの産生を促進するために有用である。したがって、本発明に係るアグリコン産生促進剤は、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体と同時に摂取するか、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体を摂取する前後に摂取することで、該配糖体をアグリコンに変換して体内への吸収性を高め、レスベラトロール及び/又はイソフラボンが有する薬理作用を高めることができる。そのため、本発明のアグリコン産生促進剤は、レスベラトロールやイソフラボン等のアグリコンが有効に作用する疾患に対する予防及び/又は治療のための医薬組成物とすることが可能である。
なお、本発明に係るアグリコン産生促進剤を、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体を摂取する前後に摂取する場合、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体の摂取前12時間〜摂取後5時間の範囲内で摂取することが好ましく、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体の摂取前4時間〜摂取後3時間の範囲内で摂取することがより好ましく、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体の摂取前後1時間の範囲内で摂取することがさらに好ましい。
【0050】
レスベラトロールは、骨粗鬆症(J.Feng et al., Acta Biochim. Biophys. Sin., 46(12), pp.1024-33, 2014、H. Zhao et al., British Journal of Nutrition, Volume 111, Issue 5, pp. 836-846, 2014)、記憶衰退(H.Zhao et al., Brain Res., Vol.1467, pp.67-80, 2012)、虚血性脳血管障害(S.I.Jeong et al., Neurobiol Aging., Vol.44, pp.74-84, 2016)若しくは更年期における脳機能障害(H.M.Evans et al., Nutrients, 8(3), 150, 2016)などの女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化(S. B. Vasamsettiet al., Free Radic. Biol. Med., Vol.96, pp.392-405, 2016)、脂質代謝異常(Tanko Y. et al., Niger. J. Physiol. Sci., 31(1), pp.71-75, 2016)、心血管疾患(Chekalina NI et al., Wiad. Lek., 69(3 pt 2), pp.475-479, 2016)、又は皮膚癌、乳癌、前立腺癌、胃癌若しくは肺癌等の癌(A. Bishayee et al., Cancer Prev. Res., 2(5), pp.409-18, 2009)の予防及び/又は治療に用いることができる。
したがって、本発明に係る医薬組成物は、骨粗鬆症、記憶衰退、虚血性脳血管障害、若しくは脳機能障害などの女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化、脂質代謝異常、心血管疾患、又は皮膚癌、乳癌、前立腺癌、胃癌若しくは肺癌などの癌等の予防及び/又は治療に用いることができる。
【0051】
一方、イソフラボンは、骨粗鬆症(Y. Tousen et al., British Journal of Nutrition, Volume 116, Issue 2, pp.247-257, 2016)などの女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化(V. B. Gencel et al., Mini Rev. Med. Chem., Vol.12(2), pp.149-174, 2012)、又は乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌若しくはメラノーマなどの癌(石見佳子・池上幸江、日本栄養・食糧学会誌、Vol.51、No.5、pp.294-298、1998)等の予防や治療に有効であることが知られている。
したがって、本発明に係る医薬組成物は、骨粗鬆症などの女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化、又は乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌若しくはメラノーマなどの癌等の予防及び/又は治療に用いることができる。
さらに、本発明に係る医薬組成物は、レスベラトロール及びイソフラボンがいずれも有効に作用する、女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化、乳癌、前立腺癌、肺癌等の予防及び/又は治療に用いることがより好ましい。
【0052】
本発明の別の側面は、アグリコンが有効に作用する疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物の製造における、ビフィドバクテリウム属細菌の使用である。
また別の側面は、アグリコンが有効に作用する疾患の予防及び/又は治療における、ビフィドバクテリウム属細菌の使用である。
また別の側面は、ビフィドバクテリウム属細菌を動物に投与することを含む、アグリコンが有効に作用する疾患を予防及び/又は治療する方法である。ここで、動物は好ましくはヒトである。
これらの態様における、アグリコン及びそれに係る配糖体、ビフィドバクテリウム属細菌、並びに疾患は、本発明のアグリコン産生促進剤及び医薬組成物における説明に準じる。
【0053】
<飲食品組成物>
また、本発明のアグリコン産生促進剤は、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体とともに飲食品の形態に加工することで、アグリコン産生用飲食品組成物とすることが可能である。通常、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体は、これらを含有する飲食品原料の形態で前記加工に供される。すなわち、本発明に係る飲食品組成物は、本発明に係るビフィドバクテリウム属細菌と、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体を含有する飲食品原料とを組み合わせることにより製造することができる。あるいは、本発明に係るビフィドバクテリウム属細菌と、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体とを、公知の飲食品に添加することによって製造してもよいし、飲食品の原料中に混合して新たな飲食品組成物を製造することもできる。
かかる飲食品組成物は、経口摂取することにより、通常は体内(腸内)で増殖したビフィドバクテリウム属細菌がレスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体を分解するため、アグリコンを効率的に産生することができる。
【0054】
また、本発明のアグリコン産生促進剤自体を飲食品組成物の形態としてもよい。すなわち、ビフィドバクテリウム属細菌を有効成分として飲食品に配合したものをそのままアグリコン産生促進用飲食品組成物とすることもできる。
【0055】
本発明における飲食品組成物は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、小麦粉製品、即席食品、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料、これら以外の市販品等が挙げられる。
【0056】
また、本発明で定義される飲食品組成物は、イソフラボン又はレスベラトロールが有効な疾患の予防及び/又は治療の用途等の保健用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
【0057】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0058】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0059】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一年内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
【0060】
なお、飲食品組成物を製造する際におけるビフィドバクテリウム属細菌並びにレスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体の含有量は特に限定されず、一日あたりの摂取量に基づいて適宜選択することができる。なお、ビフィドバクテリウム属細菌の体重1kgあたりの一日の摂取量は、1×10
6〜1×10
12CFU/kg/日が好ましく、1×10
7〜1×10
11CFU/kg/日がより好ましく、1×10
8〜1×10
10CFU/kg/日がさらに好ましい。また、レスベラトロール配糖体の一日の摂取量又は投与量は、1mg/日〜700mg/日であることが好ましく、5mg/日〜200mg/日であることがより好ましく、10mg/日〜20mg/日であることがさらに好ましい。さらに、イソフラボン配糖体の一日の摂取量又は投与量は、10mg/日〜120mg/日であることが好ましく、15mg/日〜100mg/日であることがより好ましく、20mg/日〜80mg/日であることがさらに好ましい。
【0061】
上述した通り、本発明に係るアグリコン産生促進剤は、安全性が高く、かつ腸内細菌叢のバランスに好ましい影響を与えるため、ヒト若しくは動物用の飲食品組成物として使用することができる。本発明のアグリコン産生促進剤は、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体の分解を促進して、イソフラボン又はレスベラトロールの生体内への吸収性を高めることができる。したがって、本発明のアグリコン産生促進剤は、イソフラボン配糖体又はレスベラトロール配糖体と組合せることにより、イソフラボン又はレスベラトロールを産生させる、アグリコン産生用の飲食品組成物として用いることができる。当該飲食品組成物は、イソフラボン、レスベラトロールが有効に作用する疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
【0062】
前記のとおり、レスベラトロールは、骨粗鬆症、記憶衰退、虚血性脳血管障害若しくは脳機能障害などの女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化、脂質代謝異常、心血管疾患、又は皮膚癌、乳癌、前立腺癌、胃癌若しくは肺癌などの癌等の予防や治療に有効であることが知られている。
したがって、本発明に係る飲食品組成物は、骨粗鬆症、記憶衰退、虚血性脳血管障害若しくは脳機能障害などの女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化、脂質代謝異常、心血管疾患、又は皮膚癌、乳癌、前立腺癌、胃癌若しくは肺癌などの癌等の予防及び/又は治療に用いることができる。
【0063】
本発明の別の側面は、アグリコン産生用飲食品組成物の製造における、ビフィドバクテリウム属細菌及びポリフェノール配糖体の使用であって、前記配糖体には少なくともレスベラトロール配糖体が含まれる、使用である。
この態様における、アグリコン、配糖体、ビフィドバクテリウム属細菌、及び飲食品組成物の用途は、本発明のアグリコン産生促進剤、医薬組成物及び飲食品組成物における説明に準じる。
【0064】
一方、イソフラボンは、前記のとおり、骨粗鬆症などの女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化、又は乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌若しくはメラノーマなどの癌等の予防や治療に有効であることが知られている。
したがって、本発明に係る飲食品組成物は、骨粗鬆症などの女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化、又は乳癌、前立腺癌、肺癌、結腸癌若しくはメラノーマなどの癌等の予防及び/又は治療に用いることができる。
さらに、本発明に係る飲食品組成物は、本発明のアグリコン産生促進剤と、イソフラボン配糖体及びレスベラトロール配糖体とを組み合せて、レスベラトロール及びイソフラボンがいずれも有効に作用する、女性ホルモンの低下に起因する疾患、動脈硬化、乳癌、前立腺癌、肺癌等の予防及び/又は治療に用いることがより好ましい。
【0065】
<飼料>
本発明に係るアグリコン産生促進剤は、飼料に利用することもできる。飼料の調製は、本発明のアグリコン産生促進剤と、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体とを公知の飼料へ添加するか、飼料の原料中に混合して、アグリコン産生効果を有する飼料を調製することができる。
【0066】
前記飼料の原料としては、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦等の穀類;ふすま、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;脱脂粉乳、ホエー、魚粉、骨粉等の動物性飼料類;ビール酵母等の酵母類;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;アミノ酸類;糖類等が挙げられる。また、前記飼料の形態としては、例えば、愛玩動物用飼料(ペットフード等)、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
【0067】
なお、飼料を製造する際におけるビフィドバクテリウム属細菌並びにレスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体の含有量は特に限定されず、一日あたりの摂取量に基づいて適宜選択することができる。なお、ビフィドバクテリウム属細菌の体重1kgあたりの一日の摂取量は、1×10
6〜1×10
12CFU/kg/日が好ましく、1×10
7〜1×10
11CFU/kg/日がより好ましく、1×10
8〜1×10
10CFU/kg/日がさらに好ましい。また、レスベラトロール配糖体の一日の摂取量又は投与量は、1mg/日〜700mg/日であることが好ましく、5mg/日〜200mg/日であることがより好ましく、10mg/日〜20mg/日であることがさらに好ましい。さらに、イソフラボン配糖体の一日の摂取量又は投与量は、10mg/日〜120mg/日であることが好ましく、15mg/日〜100mg/日であることがより好ましく、20mg/日〜80mg/日であることがさらに好ましい。
【0068】
<アグリコンの製造方法>
また、上述したように、本発明は、アグリコンを製造する方法を提供するものである。
該製造方法は、ビフィドバクテリウム属細菌を配糖体の存在下で培養する工程、及び前記培養後の培養物中に産生されたアグリコンを回収する工程を含む。なお、前記配糖体には少なくともレスベラトロール配糖体が含まれる。
前記培養工程において、ビフィドバクテリウム属細菌がβ−グルコシダーゼを産生し、該β−グルコシダーゼの作用により培養物中の配糖体が分解されるので、レスベラトロール及び/又はイソフラボンのアグリコンを製造することができる。
【0069】
また、本発明に係るアグリコンの製造方法は、配糖体の分解方法とも言い換えることができる。
【0070】
ビフィドバクテリウム属細菌とレスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体とは、培地に添加して培養されることが好ましい。なお、前記配糖体は、ビフィドバクテリウム属細菌を培養する時間の少なくとも一部において培地中に存在していればよく、培養の開始時点及び/又は培養の途中で配糖体を培地に添加することにより、本発明の方法における培養工程とすることができる。
本発明において使用される培地としては、ビフィドバクテリウム属細菌に属する細菌を培養可能なものであれば制限されることなく用いることができ、公知の培地のなかから適宜選択できる。具体的には、MRS(de Man, Rogosa Sharpe)培地等が挙げられる。
また、当該培地として、乳牛、水牛、羊、山羊、ラクダ、インド牛、ヤク牛、馬、ロバ、トナカイ等の各種乳および乳製品や、ぬか床、野菜類、魚介類、米類等の食品も使用可能である。
【0071】
本発明における培養は、ビフィドバクテリウム属細菌を培養可能な公知の培養条件を採用することができる。例えば、25〜45℃で培養することが可能であるが、30〜42℃で、特に37〜42℃で培養することが好ましい。
【0072】
また、培養条件は、嫌気条件下で行うことが好ましく、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養することも可能である。培養は、ビフィドバクテリウム属細菌のみを培養した後に、レスベラトロール配糖体及び/又はイソフラボン配糖体を添加し、さらに培養する方法で行ってもよい。
【0073】
培養時間は、1〜72時間の間で増殖速度を観察しながら適宜調節可能であるが、16〜48時間、特に16〜24時間が好ましい。
【0074】
本発明の一形態では、上記のようにして製造されるアグリコンと、細菌とを分離し、かつ、アグリコンを含む画分を回収することができる。アグリコンと細菌との分離、及び培養物からのアグリコンを含む画分の回収は、同時に行ってもよく、培養物から細菌を除去した後に、培養物からアグリコンを含む画分を回収してもよい。あるいは、有機溶媒抽出などの公知の抽出法により、培養物から直接アグリコンを抽出して分離してもよい。
【0075】
培養物から細菌を除去する方法としては、例えば、膜によるろ過、遠心分離等が挙げられる。膜は、平膜及び中空糸膜(ホローファイバー)のいずれでもよい。中空糸膜(ホローファイバー)を使用してろ過を行った場合、アグリコンと微生物との分離、及びアグリコンを含む画分の培養物からの回収を、同時に行うことができる。
【0076】
また、細菌を除去した培養物からアグリコンを含む画分を回収する工程としては、公知の方法を採用することができ、例えば、ゲルろ過、逆相HPLC等の各種クロマトグラフィーなどの方法が挙げられる。これらの方法は、目的物であるアグリコンの種類によって、適宜選択することができる。クロマトグラフィーは、低圧であっても高圧(HPLC)であってもよい。
【0077】
アグリコンを含む画分は、アグリコンとしての効果を損なわない限り特に制限されず、培地成分を含んでいてもよく、完全に又は部分的に精製したものであってもよい。アグリコンの精製は、上記のアグリコンを含む画分を回収する方法を適宜組み合わせることによって行うことができる。
アグリコンを含む画分の性状は特に制限されず、液体であってもよく、凍結乾燥等によって得られる粉体であってもよい。
【0078】
本発明により製造されたアグリコンは、アグリコンが有する生理作用に基づいて、医薬、医薬部外品、皮膚外用剤、化粧料、飲食品、食品添加剤及び飼料等の組成物に配合することができる。当該組成物に配合されるアグリコンとは、単離精製したアグリコン、アグリコンを含む画分のいずれであってもよい。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0080】
[試験例1]
ビフィドバクテリウム属細菌が、レスベラトロール配糖体であるトランス−ポリダチンを分解して、レスベラトロールの産生を促進することを確認する試験を行った。
【0081】
(1)培養液の調製
10%脱脂乳培地で凍結保存された以下の12種類のビフィドバクテリウム属細菌の菌液100μLを、それぞれMRS液体培地3mLに添加し、ビフィドバクテリウム属細菌の菌数が1×10
9CFU/mLとなるように、37℃で16時間嫌気培養した。MRS液体培地は、Difco Lactobacilli MRS Broth(BD社製)5.5g、及びL-Cysteine Monohydrochloride, Monohydrate(和光純薬工業社製)50mgを、100mLとなるように純水に溶解させ、HCl水溶液でpH6.5に調整し、121℃で15分間滅菌することによって調製した。
・ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム(Bifidobacterium longum subsp. longum)ATCC15707
・ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)ATCC15697
・ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)ATCC15700
・ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)BCCM LMG23729
・ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)FERM BP−11175
・ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)ATCC29521
・ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)ATCC15703
・ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)ATCC27535
・ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)DSM10140
・ビフィドバクテリウム・シュードロンガム・サブスピーシーズ・グロボーサム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum)JCM5820
・ビフィドバクテリウム・シュードロンガム・サブスピーシーズ・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. pseudolongum)ATCC25526
・ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum)ATCC25525
【0082】
(2)トランス−ポリダチンとビフィドバクテリウム属細菌との混合培養
前記12種のそれぞれの培養液100μLに、トランス−ポリダチン(長良サイエンス株式会社製)を250mM濃度になるようにジメチルスルホキシド(DMSO)(和光純薬工業株式会社製)に溶解した溶液を0.2μLずつ添加して混合液を調製し、37℃で24時間嫌気培養した。
【0083】
(3)レスベラトロールの定量
培養後の培養液を酢酸エチルで抽出した後、抽出液から溶媒を除去して乾燥させて乾燥物を得た。該乾燥物にメタノール25μLを添加して溶解し、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)に溶解液を5μLスポットし、トルエン:アセトン=2:1の展開溶媒で展開させた。展開終了後、UVを照射してレスベラトロールを検出した。検出結果は、画像解析ソフト(ImageJ)にて分析し、コントロール及び標準試料と比較することでレスベラトロールを定量し、配糖体の分解率を算出した。コントロールは、細菌を含まないMRS液体培地100μLと0.2μLの配糖体溶液とを混合して調製した。また、レスベラトロールをメタノールで溶解して2mMに調製したものを標準試料とした。
【0084】
(4)結果
前記12種のビフィドバクテリウム属細菌によるトランス−ポリダチンの分解率は、表1のようになった。いずれのビフィドバクテリウム属細菌も、トランス−ポリダチンを分解して、レスベラトロールを産生したことが確認された。
【0085】
【表1】
【0086】
[試験例2]
以下11種のビフィドバクテリウム属細菌について、イソフラボン配糖体であるダイジンを分解して、イソフラボンアグリコンであるダイゼインの産生を促進することを確認する試験を行った。本試験は、試験例1におけるトランス−ポリダチンに代えてダイジン(東京化成工業社製)を用いたこと、及びアグリコンとしてダイゼインをメタノールで溶解して2mMに調製したものを標準試料として用いたこと以外は、試験例1と同様の手順にて行った。
・ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)ATCC15697
・ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)ATCC15700
・ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)BCCM LMG23729
・ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)FERM BP−11175
・ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)ATCC15703
・ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)ATCC27535
・ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)DSM10140
・ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシーズ・アニマリス(Bifidobacterium animalis subsp. animalis)ATCC25527
・ビフィドバクテリウム・シュードロンガム・サブスピーシーズ・グロボーサム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum)JCM5820
・ビフィドバクテリウム・シュードロンガム・サブスピーシーズ・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. pseudolongum)ATCC25526
・ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum)ATCC25525
【0087】
その結果、前記11種のビフィドバクテリウム属細菌によるダイジンの分解率は、表2のようになった。いずれのビフィドバクテリウム属細菌も、ダイジンを分解して、ダイゼインを産生したことが確認された。
【0088】
【表2】
【0089】
[試験例3]
ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460について、レスベラトロール配糖体であるトランス−ポリダチンを分解してレスベラトロールの産生を促進すること、及びイソフラボン配糖体であるダイジンを分解してイソフラボンアグリコンであるダイゼインの産生を促進することを確認する試験を行った。当該試験例では、混合培養における培養時間以外は、トランス−ポリダチンの分解については試験例1と同様の方法で、ダイジンの分解については試験例2と同様の方法で行った。本試験例におけるトランス−ポリダチン又はダイジンとビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460との混合培養は37℃1時間又は37℃3時間とし、それぞれの培養時間においてレスベラロール又はダイゼインを定量した。
【0090】
その結果、ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460によるトランス−ポリダチン又はダイジンの分解率は、表3のようになった。ビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460は、培養時間が1時間又は3時間のいずれの場合においても、トランス−ポリダチン又はダイジンを分解して、レスベラトロール又はダイゼインを産生したことが確認されたことから、短時間の培養でもアグリコン産生促進効果を有することが確認された。
【0091】
【表3】
【0092】
[比較試験例1]
比較例として、ルチン及びヘスペリジンに対するビフィドバクテリウム属細菌のアグリコン産生促進効果を確認する試験を行った。
【0093】
試験例1におけるトランス−ポリダチンに代えて、ポリフェノール配糖体としてルチン(東京化成化学工業社製)又はヘスペリジン(東京化成化学工業社製)を用いたこと以外は、試験例1と同様の手順にて行った。また、ビフィドバクテリウム属細菌は、試験例1及び試験例2において、ダイジン及びトランス−ポリダチンの分解率が特に高かった以下3種類とした。
・ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)ATCC15700
・ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)BCCM LMG23729
・ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)FERM BP−11175
【0094】
その結果、いずれのビフィドバクテリウム属細菌においても、培養後の培養液からルチン又はヘスペリジンのアグリコンは確認されなかった。すなわち、ルチン及びヘスペリジンに対しては、いずれのビフィドバクテリウム属細菌も分解活性を持たないことが確認された。このことから、イソフラボン配糖体又はレスベラトロール配糖体に対する加水分解能を有するビフィドバクテリウム属細菌が、他のポリフェノール配糖体に対しても一律にアグリコン産生促進作用を示すものではないことが確認された。
【0095】
[試験例4]
試験例1及び2において、ダイジン及びトランス−ポリダチンの分解率が高かったビフィドバクテリウム属細菌について、ダイジン又はトランス−ポリダチンの分解の経時的変化を確認する試験を行った。
【0096】
(1)培養液の調製
ビフィドバクテリウム・ブレーベBCCM LMG23729及びビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175について、試験例1と同様の手順で培養液を調製した。
【0097】
(2)配糖体とビフィドバクテリウム属細菌との混合培養
培養時間を1、3、6又は24時間の4通りに設定した以外は、試験例1と同様の条件で、(1)の培養液とダイジン溶液又はトランス−ポリダチン溶液とを混合して培養を行った。
【0098】
(3)アグリコンの定量
試験例1と同条件にて薄層クロマトグラフィーを行い、ダイゼイン又はレスベラトロールを定量し、配糖体の分解率を算出した。
【0099】
(4)結果
トランス−ポリダチンの経時的な分解率は、表4のようになった。ビフィドバクテリウム・ブレーベBCCM LMG23729及びビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175のいずれにおいても、経時的に分解率が向上し、かつ比較的短時間で配糖体の分解が進行することが分かった。
【0100】
【表4】
【0101】
ダイジンの経時的な分解率は、表5のようになった。ビフィドバクテリウム・ブレーベBCCM LMG23729及びビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175のいずれにおいても、経時的に分解率が向上し、かつ比較的短時間で配糖体の分解が進行することが分かった。
【0102】
【表5】
【0103】
[試験例5]
本発明のビフィドバクテリウム属細菌が、実際に、生体内へのアグリコンの吸収性を高めることを確認するための試験を行った。
6週齢のWistar系雌ラット(日本チャールスリバー株式会社)18匹を用い、大豆原材料を使用しない飼料(F2PLD1)にて1週間馴化飼育をした。その後、これらのラットを、ビフィドバクテリウム属細菌を投与しない対照群、ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175を投与する試験群A、及びビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460を投与する試験群Bの3つの群に6匹ずつ分けて、さらに1週間飼育した。この期間、試験群A及びBのラットには、3.0×10
9CFU/mLの各々のビフィドバクテリウム属細菌を生菌として含む10%脱脂粉乳溶液1mLを1日1回ゾンデにより経口投与した。対照群には、ビフィドバクテリウム属細菌を含まない10%脱脂粉乳溶液1mLを1日1回同様に経口投与した。
投与最終日(7日目)に、各群にそれぞれの脱脂粉乳溶液を投与した後、続けて10mg/mL濃度に調製したダイジン(東京化成工業社製)水溶液を、各ラットへのダイジンの投与量が50mg/kg体重量になるように経口投与した。該投与前及び投与から1時間後に全てのラットから採血を行った。
採血した血液を4℃、10000×gにて4分間遠心分離して血漿サンプルを得た。次に、前記血漿サンプル50μLに、内部標準として20ngのダイゼイン‐d6(Toronto Research社製)を含む標準試料1μLを加え、さらに、生体内への吸収に際してグルクロン抱合又は硫酸抱合を受けて抱合化された血漿サンプル中のダイゼインをアグリコン体として分離するために100単位のβ‐グルクロニダーゼ(SIGMA社製)を含有する酢酸緩衝液(0.2mol/L、pH5.0)50μLを添加して37℃にて15時間静置した。その後、混合液を400μLのメタノールに添加して超音波処理をして均一になるように撹拌し、4℃、5000×gにて5分間遠心分離して、上澄み液を0.45μm濾過ユニットにて濾過した後に回収した。当該上澄み液中のダイゼイン含量をLC/MSにて定量して血中濃度を求めた。対照群に対する試験群のダイジン投与1時間後におけるダイゼインの血中濃度の有意差をt検定にて検証した。
【0104】
その結果、表6のとおりとなった。ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175及びビフィドバクテリウム・ブレーベNITE BP−02460を投与した試験群では、いずれもダイジン投与1時間後の血中ダイゼイン濃度が、対照群に比べると少なくとも1.3倍となり増加したことが確認された。したがって、このことから、配糖体とビフィドバクテリウム属細菌とを一緒に摂取することによって、アグリコンの生体内への吸収性を高めることができることが示唆された。
【0105】
【表6】
【0106】
この結果から、ビフィドバクテリウム属細菌は、配糖体であるダイジン及びトランス−ポリダチンを分解して、アグリコンであるダイゼイン及びレスベラトロールを産生する作用を有することが分かった。とりわけ、ビフィドバクテリウム・ブレーベFERM BP−11175は、僅か3時間で90%以上のダイジンを分解し、50%以上のレスベラトロールを分解したことから、短時間で配糖体を分解する能力を有することが分かった。また、本発明のビフィドバクテリウム属細菌は、配糖体と一緒に摂取することで、アグリコンの生体内への吸収性を高めることが分かった。