(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のプロジェクトについてその進捗状況をいくつかに区分したフェーズで示すとともに、プロジェクトごとに現在進行中のフェーズと、フェーズの状態とを示すプロジェクト進行管理表を作成するプロジェクト進行管理表作成システムであって、
各プロジェクトについて、フェーズ決定要素に基づいて前記区分したフェーズの中から現在進行中のフェーズを決定するフェーズ決定手段と、
各プロジェクトについて、フェーズの状態をフェーズ状態決定要素に基づいて決定する状態決定手段と、を有し、
前記各プロジェクトについて、前記区分したフェーズの中から現在進行中のフェーズの決定は、フェーズの決定に必要な条件となるフェーズ決定要素と、その重み付けから演算した結果に基づいて行い、
前記フェーズ決定手段によって決定された現在進行中のフェーズの上に、前記状態決定手段によって決定された当該現在進行中のフェーズの状態を、そのリスク状態を意味する文字で表示するプロジェクト進行管理表作成システム。
複数のプロジェクトについてその進捗状況をいくつかに区分したフェーズが、当該複数のプロジェクトでそれぞれ同じであり、当該複数のプロジェクトをそれぞれ同じ大きさで示したプロジェクト進行管理表を作成する請求項1〜請求項3何れか1項記載のプロジェクト進行管理表作成システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記公報に記載した技術は、プロジェクトの管理者と、実際の工事等を行う施工者と、プロジェクトを発注した施主の三者にまたがるプロジェクト進捗状況を管理するものであって、同時進行する複数のプロジェクトに対して社内管理を行うものではなかった。
【0006】
そこで本発明は、管理すべき複数のプロジェクトが同時進行する場合に、これらのプロジェクトの状況を一覧表として可視化し、共有化して、社内のだれでも各プロジェクトの進捗状況と、そのプロジェクトの現在のリスク状態をわかるようにして、各プロジェクト業務の品質及び生産性向上と、各プロジェクト業務に係るリスクの低減などを図ることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のプロジェクト進行管理表作成システムは以下のとおり構成される。即ち、本発明は、複数のプロジェクトについてその進捗状況をいくつかに区分したフェーズで示すとともに、プロジェクトごとに現在進行中のフェーズと、フェーズの状態とを示すプロジェクト進行管理表を作成するプロジェクト進行管理表作成システムであって、各プロジェクトについて、フェーズ決定要素に基づいて前記区分したフェーズの中から現在進行中のフェーズを決定するフェーズ決定手段と、各プロジェクトについて、フェーズの状態をフェーズ状態決定要素に基づいて決定する状態決定手段と、を有するプロジェクト進行管理表作成システムである。
【0008】
プロジェクト進行管理表作成システムは、複数のプロジェクトについてその進捗状況をいくつかに区分したフェーズで示すとともに当該フェーズにおけるプロジェクトのリスク状態を示すプロジェクト進行管理表を作成するため、得られたプロジェクト進行管理表は、同時進行し、管理すべき複数のプロジェクトの進捗状況とそのリスク状態を一覧表として可視化して示すことができ、全てのプロジェクト実行者を初めとする当該管理表を閲覧できる人々にその内容を共有化でき、それらの誰に対しても各プロジェクトの進捗状況とそのリスク状態を容易に知らせることができる。
【0009】
そして、プロジェクト進行管理表作成システムは、各プロジェクトについて、フェーズ決定要素に基づいて区分したフェーズの中から現在進行中のフェーズを決定するフェーズ決定手段を有するため、各プロジェクトにおける現在進行中のフェーズの決定が自動化され、個人の主観を排して、客観的な決定を行うことができる。また、プロジェクト進行管理表作成システムは、各プロジェクトについて、フェーズの状態をフェーズ状態決定要素に基づいて決定する状態決定手段を有するため、各プロジェクトにおけるフェーズの状態の決定も自動化され、個人の主観を排して、フェーズの状態の客観的な決定を行うことができる。
【0010】
プロジェクト進行管理表作成システムは、現在進行中のフェーズの決定を行った後、その現在進行中のフェーズの状態の決定を行うものとすることができる。現在進行中のフェーズの決定を行った後、その現在進行中のフェーズの状態の決定を行うこととしたため、フェーズごとの状態の決定を慎重に行うことができる。また、後者のフェーズの状態の決定の際には、既に現在進行中のフェーズが決定しているため、他のフェーズに対する設問に応える必要がなく、また現在進行中のフェーズ以外のフェーズの状態を決定しない場合も含まれるため、現在進行中のフェーズ以外のフェーズの状態を決定するためになされる設問自体を減らすことができる。
【0011】
プロジェクト進行管理表作成システムは、現在進行中のフェーズの決定と、その現在進行中のフェーズの状態の決定とを同時に行うことができる。現在進行中のフェーズの決定と、その現在進行中のフェーズの状態の決定を同時に行うこととしたため、現在進行中のフェーズを決定しただけでその現在進行中のフェーズの状態を決定しなかったり、いくつかのフェーズの状態を決定しただけで現在進行中のフェーズがどれかを決定しなかったり等のプロジェクト実行者によるフェーズ更新漏れ等の操作ミスを抑制して、管理情報の精度向上が期待できる。
【0012】
プロジェクト進行管理表作成システムは、フェーズ決定手段又は状態決定手段の少なくとも一方が、機械学習手段であるものとすることができる。フェーズ決定手段又は状態決定手段の少なくとも一方が、機械学習手段であるとしたため、過去に種々のプロジェクトで行った経験、及びそのデータを利用して合理的な結果を導くことができる。また、日々、積み重ねられる新規プロジェクトとそれに対する進捗状況及び状態に対する結果をさらに利用して、より適合性の高い結果を導くようにすることができる。
【0013】
プロジェクト進行管理表作成システムは、前記フェーズ決定手段によって決定された現在進行中の前記フェーズの状態を、リスク状態を意味する文字で表示するものとすることができる。前記フェーズ決定手段によって決定された現在進行中の前記フェーズの状態を、リスク状態を意味する文字で表示するため、得られたプロジェクト進行管理表を見た者は、複数あるフェーズのうち、文字が表示されているフェーズが現在進行中のフェーズであると一目で把握することができる。
【0014】
プロジェクト進行管理表作成システムは、状態決定手段によって決定されたフェーズの状態を、リスク状態を意味する色で表示するものとすることができる。状態決定手段によって決定されたフェーズの状態を、リスク状態を意味する色で表示するため、得られたプロジェクト進行管理表を見た者は、一目で各プロジェクトのフェーズごとにおけるリスク状態を把握することができる。
【0015】
あるいはまた本発明は、前記何れかのプロジェクト進行管理表作成システムによって作成されたプロジェクト進行管理表を提供する。前記何れかのプロジェクト進行管理表作成システムによって作成されたプロジェクト進行管理表であるため、表示内容が客観的で合理的なプロジェクト進行管理表が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプロジェクト進行管理表作成システムによれば、種々の同時並行で行われるプロジェクトの状況をリアルタイムで可視化し、共有化したプロジェクト進行管理表を作成でき、また、各プロジェクトの進捗状況とフェーズのリスクに対して客観的な理解が得られる。
また、本発明のプロジェクト進行管理表によれば、種々の同時並行で行われるプロジェクトの状況を一覧表として可視化でき、一目でその状態を把握できる。さらに、各プロジェクトの進捗状況及びその状態を共有化でき、加えて各プロジェクト業務の品質及び生産性向上と、各プロジェクト業務に係るリスクの低減などを図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のプロジェクト進行管理表作成システム(以下単に「管理表作成システム」ともいう)についてさらに詳しく説明する。このプロジェクト進行管理表作成システムは、ビルや学校、病院、研究所、工場等の建物の新築工事や改修・建替え工事、または設備機器の更新工事など種々のプロジェクトの進捗状況を一目で把握できるプロジェクト進行管理表を作成するシステムである。なお、いくつかの実施形態において重複する事項は重複説明を省略する。
【0019】
図1は、プロジェクト進行管理表作成システム10のシステム構成図である。このプロジェクト進行管理表作成システム10は、管理サーバ1aと、各プロジェクトの実行者が用いる実行者端末2(2a、2b、・・)と、を有し、これらがネットワーク3を介してそれぞれ接続されている。
【0020】
管理サーバ1aは、プロジェクト実行者のそれぞれの実行者端末2からの指示を、ネットワーク3を介して受信し、その指示に従った処理を行う。この管理サーバ1aの構成としては、演算装置や制御装置として機能する中央演算処理装置(CPU)や、RAM等の主記憶装置、ハードディスク等の外部記憶装置、モデム等の通信装置、コンピュータプログラムを有している。これらの構成要素により後述する
図3で示す機能ブロックを構成する。
この管理サーバ1aは、実行者端末2以外のネットワークに接続したコンピュータ管理サーバであっても良く、実行者端末2のコンピュータで兼用する管理サーバとすることもできる。さらにクラウドコンピューティングに用いられるクラウド管理サーバであっても良い。
【0021】
実行者端末2は、各プロジェクトのうちの少なくとも一のプロジェクトの実施に関わる者、あるいはまた管理に関わる者が使用するコンピュータであり、一または複数のコンピュータ2a、2b、・・であり得る。この実行者端末2は、社内LAN、インターネット等のネットワークに接続し通信可能な通信装置を備えて構成されており、プログラムを起動しネットワークに接続すると管理サーバ1aに保存されたデータを取得して表示したり、入力装置を通じて入力されたデータを管理サーバ1aへ送信したり、管理サーバ1aからのデータを受信して出力装置を通じてメール等の形式で出力することができる。
この実行者端末2となるコンピュータは、いわゆるパーソナルコンピュータの他、携帯電話端末やタブレット端末などであっても良い。
【0022】
図2には、このプロジェクト進行管理表作成システム10によって作成され、実行者端末2のディスプレイ等の表示手段に表示されるある一のプロジェクト進行管理表(以下「管理表」ともいう)を示す。管理表11は、縦軸に複数のプロジェクト名が示されて、横軸にはプロジェクトの進行状況に応じて区分されたフェーズが示されている。
図2では、縦軸には(1)、(2)、(3)と各プロジェクトを表示しており、より具体的にはこれらは「A病院新築業務」、「B社工場改修業務」、「C学校体育館建替え事業」等のプロジェクト名が記される。横軸には(A)、(B)、〜(E)と各フェーズを表示しており、より具体的にはこれらは「基本設計」、「調達」、「設計マネジメント」、「施工マネジメント」等のフェーズが記される。
【0023】
そして、縦軸と横軸とが交差した欄には、そのプロジェクトのそのフェーズにおけるリスク状態が示される。フェーズのリスク状態とは、そのフェーズにおけるプロジェクト進行上の問題の有無を簡潔に示したものである。例えば、あるフェーズにおいて、何の問題もなく順調に進めることができていれば「安全」といえるが、顧客からの高度な要求があって一部設計変更が必要となるなど、そのフェーズを慎重に進行させなければならないような場合は「注意」、そして、用地の買収が済んでいないなど重大な問題が残っており、そのフェーズの進行が中断してしまう可能性があるような場合には「危険」となる。こうしたリスク状態が直感的にわかるように「危険」の場合には“赤”色が表示され、「注意」の場合には“黄”色が表示され、「安全」の場合には“青”色が表示される。
【0024】
そして、あるプロジェクトが現時点においてどのフェーズにあるかを示すために、現在進行中のフェーズの欄において「危険」、「注意」、「安全」といった文字が表示される。
【0025】
改めて
図2で例示したプロジェクト進行管理表11で各プロジェクトの状態について説明する。まず、
図2で示すプロジェクト(1)について見ると、フェーズ(A)において「注意」の文字が赤枠に囲まれて表示され、その背景が“黄”色(
図2では斜線)に表示されている。これは、プロジェクト(1)については、文字が表示されたフェーズ(A)の段階に現在はあり、そのフェーズのリスク状態が「注意」であることを表している。フェーズ(B)以降に文字が表示されずに、背景が“無”色(
図2では空白)であるのは、これらのフェーズのリスク状態は不明であるからである。換言すれば、現時点ではプロジェクト(1)はフェーズ(A)まで進んでいるが「注意」すべき状態にあり、フェーズ(B)以降の状態は不明であることを表している。
【0026】
また、
図2で示すプロジェクト(2)について見ると、フェーズ(A)において文字は表示されずに、“青”色(
図2では反対斜線)が表示されている。フェーズ(B)では「注意」の文字が赤枠で囲まれて表示され、その背景が“黄”色で表示されている。また、フェーズ(C)以降のフェーズには文字が表示されずに、背景が“無”色となっている。これは、プロジェクト(2)については、文字が表示されたフェーズ(B)が現在進行中のフェーズであり、そのフェーズのリスク状態が「注意」であることを表している。フェーズ(A)が青色であるため、すでに終了したフェーズ(A)は問題なく完了し、フェーズ(B)に進んでいることがわかる。フェーズ(C)以降のリスク状態は不明である。
【0027】
さらに、プロジェクト(3)について見ると、フェーズ(A)では文字が表示されずに“青”色(
図2では反対斜線)であり、フェーズ(B)では「安全」の文字が赤字で囲まれて表示され、その背景が“青”色で表示され、そして、フェーズ(C)以降は全て“無”色で表示されている。これは、プロジェクト(3)については、現在進行中のフェーズが、文字が表示されているフェーズ(B)であり、そのフェーズのリスク状態が「安全」であることを表している。フェーズ(A)及び(B)が青色であるため、すでに終了したフェーズ(A)は問題なく完了し、フェーズ(B)も問題なく進んでいることがわかる。一方、フェーズ(C)以降のリスク状態は不明である。
【0028】
さらにまた、
図2で示す一覧表の最後に記されたプロジェクト(n)について見てみると、フェーズ(A)及び(B)は“青”色が表示され、フェーズ(C)で“黄”色、フェーズ(D)では「危険」の文字が赤字で囲まれて表示されるとともにその背景が“赤”色(
図2では横破線)に表示され、さらにフェーズ(E)で“黄”色に表示されている。これは、プロジェクト(n)については文字が表示されているフェーズ(D)の段階に現在はあり、そのフェーズのリスク状態が「危険」であることを表している。フェーズ(A)及び(B)が“青”色であるため、これらのフェーズでは安全に進行したが、フェーズ(C)で“黄”色であるので注意が必要であったのに、そのままフェーズ(D)に進み、現在はそのフェーズ(D)にあり、このフェーズ(D)において“赤”色であるため、大きな問題が生じていることがわかる。また、後のフェーズ(E)では“黄”色で表示されており、注意しなければいけない状態にあることが予測されている。
【0029】
このように管理表11は、複数の様々なプロジェクトが表示され、そのプロジェクトごとに現在進行中のフェーズを文字又は赤枠で明示するだけでなく、現在、過去、場合によっては未来のフェーズのリスク状態を「危険」、「注意」、「安全」に基づく“赤”、“黄”、“青”の色で表示している。そのため、現在進行中のフェーズと、フェーズごとのリスク状態が一目で容易にわかるようになっている。
【0030】
<第1実施形態>:
さて
図3には、第1実施形態であるプロジェクト進行管理表作成システム10を実現する管理サーバ1aの機能構成をブロック図として示した。
図3で示すように、管理サーバ1aには、記憶手段21と、演算手段22と、管理表表示手段23と、フェーズ決定手段25と、状態決定手段26と、通信手段等のその他の手段(図示せず)を有している。
【0031】
次に、管理表11を作成する工程について説明する。
従来は、プロジェクトごとにその管理者が、そのプロジェクトにおける現在進行中のフェーズを示す欄に、そのフェーズにおける状態に対応する文字及び色が表示されるような入力を行っていた。例えば、プロジェクト(1)の管理者が、8月1日には「基本設計」であるフェーズ(A)にあり、その内容に注意すべきことがあれば、フェーズ(A)で「注意」を選択することで赤枠で囲われた「注意」の文字と、“黄”色が表示されるように入力操作していた。また、8月15日には「調達」であるフェーズ(B)に移行し、その状態に問題が無ければ、フェーズ(B)で「安全」を選択することで、赤枠で囲われた「安全」の文字と、“青”色が表示されるように入力操作していた。このとき、フェーズが「基本設計」であるフェーズ(A)から「調達」であるフェーズ(B)に移ったことで、フェーズ(A)の欄から赤枠で囲われた「注意」の文字を削除し、“黄”色の色のみが表示されるように併せて入力操作していた。しかしながら、こうした操作によれば、管理者が自ら現在進行中のフェーズの決定を行い、その現在進行中のフェーズの状態を個々に入力していたため、管理者ごとの主観により表示が左右され、また、入力操作が煩雑なこともあって操作ミスによる誤情報の表示も生じていた。
【0032】
一方、本発明によれば、後述のフェーズ決定シート12を準備しておき、プロジェクト実行者がそのプロジェクトの進捗状況に応じて、フェーズ決定シート12に記載された項目を満たす回答を行うと、機械的な処理がなされて自動的に現在進行中のフェーズが決定される。加えて、後述の状態決定シート13を準備しておき、プロジェクト実行者がそのプロジェクトの進捗状況に応じて、状態決定シート13に記載された項目を満たす回答を行うと、機械的な処理がなされて自動的にフェーズの状態が決定される
【0033】
まず本発明の現在進行中のフェーズの決定方法について説明する。
図4には、具体的なフェーズ決定シート12の一例を示す。フェーズ決定シート12とは、あるプロジェクトについてその進捗状況をいくつかフェーズに区分した際に、そのプロジェクトが現時点でどのフェーズ、即ち、プロジェクト全体の進行の中で現在進行中のフェーズがどれであるか、を決定するために、そのフェーズ決定に必要となる条件等のフェーズ決定要素に関連した設問が記されたシートである。
【0034】
図4で示したフェーズ決定シート12は、フェーズ決定要素に関連したいくつかの設問が箇条書きになされ、各プロジェクトの実行者は、そのプロジェクトに対してなされた設問に対し、該当する場合を“○”、どちらともいえない場合に“△”、当てはまらない場合に“×”を選択してチェックするものである。フェーズ決定シート12は記憶手段21内に記憶され、実行者端末2のディスプレイ等の表示手段に表示される。設問に対する回答の入力は、実行者端末2のキーボード等の入力手段を通じて行われても良いし、フェーズ決定シート12をプリントアウトし、そのプリントにプロジェクト実行者が手書きでチェックを入れたものを別途準備した自動読み取り装置等で読み取ることで入力がなされるようにしても良い。
【0035】
フェーズ決定シート12に対する回答もまた記憶手段21に記憶される。演算手段22はフェーズ決定手段25として、予め準備されて記憶手段21に格納されたプログラムに従って、フェーズ決定要素に付された重み付けを考慮し、○△×に与えたスコアを集計してフェーズごとの合計点を算出し、最も高い点数が付与されたフェーズを現在進行中のフェーズと決定する。
【0036】
次に、フェーズにおける状態、限定的には、決定された現在進行中のフェーズにおけるその状態を決定する、状態決定方法について説明する。
フェーズの状態を決定するには、状態(色)決定シート13を準備しておき、プロジェクト実行者がそのプロジェクトの進捗状況に応じて、状態(色)決定シート13に記載された項目を満たす回答を行うと、機械的な処理がなされて自動的にフェーズの状態が決定される。
【0037】
図5には、具体的な状態(色)決定シート13の一例を示す。状態(色)決定シート13は、上述のようにあるプロジェクトにおけるフェーズの状態がどのようなリスクにあるかを、「安全」、「注意」、「危険」の3つのリスクの程度に分けるために、その決定に必要となる条件等の状態決定要素に関連した設問が記されたシートである。状態決定要素としては、例えば、施設の場所、施工難易度、施設の予算・規模、顧客の属性、基本設計の進捗状況、調達の状況、設計の状況、施行の状況、建設市況、その他の状況等が挙げられ、そのうちの施設の予算・規模に関してなら、「調達」フェーズにおいては、調達先の決定の有無の状態、顧客予算との乖離の程度、調達先の財務・管理体制の状況、現状におけるその他の問題点に関連した設問が表示される。
【0038】
状態(色)決定シート13は記憶手段21内に記憶され、実行者端末2のディスプレイ等の表示手段に表示される。設問に対する回答の入力は、実行者端末2のキーボード等の入力手段を通じて行なわれても良いし、状態(色)決定シート13をプリントアウトし、プロジェクト実行者が手書きでチェックを入れたものを別途準備した自動読み取り装置等で読み取ることで入力がなされても良い。状態(色)決定シート13に対する回答は記憶手段21に記憶される。演算手段22は状態決定手段26として、予め準備され、記憶手段21に格納されたプログラムに従って、上記状態決定項目に付された重み付けを考慮し、○△×に与えたスコアを集計して3つの状態ごとの合計点を算出し、最も高い点数が付与された状態を現在のフェーズの状態と決定する。
こうして得られた結果から、管理表表示手段23が、あるプロジェクトにおけるフェーズと、そのフェーズにおける現在の状態を表示した管理表11を作成する。
【0039】
プロジェクト実行者は、各プロジェクトにおける所定の状況が変化した後に、あるいはまた、1週間後、といったように予め決められた所定の期間の経過後に、上記と同様に、フェーズ決定シート12及び状態(色)決定シート13への回答を行うことで、これに基づく上記と同様の工程を経て、新たなフェーズ及び状態が決定され、管理表11に上書きされる。なお、プロジェクト実行者による回答の便宜のため、既に回答した結果は、実行者端末2のディスプレイ上に残されており、回答に変更がなければ再入力を省略させるなど、適宜、入力の便宜を図るようにしている。
【0040】
以上の工程を改めて
図6のフローチャートに従って説明する。
まず、工程s11で、演算手段22がフェーズ決定手段25となり、フェーズの決定をフェーズ決定シート12に対してなされた回答から演算処理して行い、該当プロジェクトにおける現在のフェーズを決定する。次に、工程s12で、演算手段22が状態決定手段26となり、状態(色)決定シート13に対してなされた回答から演算処理してフェーズの状態の決定を行う。そして最後に工程s13で管理表表示手段23は、これらの結果を管理表11に出力して表示する。
【0041】
こうしたプロジェクト進行管理表作成システム10によれば、管理表11の作成を客観的に行うことができ、各プロジェクト業務の品質及び生産性向上と、各プロジェクト業務に係るリスクの低減、業務負担の平準化を図ることができる。また、得られたプロジェクト進行管理表は、各プロジェクトの状況を一覧表として可視化されたものであり、だれでも各プロジェクトの進捗状況と進行の状態を即座に見て取ることができる。
【0042】
<第2実施形態>:
第2実施形態は、第1実施形態で説明したのと同様のプロジェクト管理表11を作成するものであるが、その作成方法が異なる。
より具体的には、フェーズ決定シート12に対して回答された回答群と、その回答群から決定されたフェーズの組み合わせが、過去の膨大なプロジェクトの実行結果から相当量蓄積されているので、それらの過去の実績データを用いて機械学習(AI;人工知能)手段24で学習し予測モデルを作成しておき、次にプロジェクト実行者がフェーズ決定シート12に対して回答した新たな回答群に対して、機械学習手段24を通じてフェーズを決定するものである。
【0043】
図7は第2実施形態のプロジェクト進行管理表作成システム20における管理サーバ1b(
図1)の機能構成を表すブロック図である。
図7で示すように、管理サーバ1bには、記憶手段21と、機械学習手段24と、管理表表示手段23と、フェーズ決定手段25と、状態決定手段26と、通信手段等のその他の手段(図示せず)を有している。
【0044】
機械学習手段24は、ニューラルネットワーク等の機械学習の各種アルゴリズムを用いて、フェーズ決定要素に関連した設問に対する回答結果群と該当するフェーズの組み合わせを教師データとして、フェーズ決定要素に関連した設問に対する未知の回答結果群がどのフェーズに該当するかを決定するための予測モデルを作成する。
例えば、企業内で蓄積してきたデータや、上記第1実施形態で説明した方法で得られた結果が入力され、それぞれに重み付けした演算を行って結果を出力し、その結果から重み付けした演算を行って結果をさらに出力し、といったことを複数回繰り返し、最後に各フェーズの予測確率を出力するが、このときの決定すべきフェーズに対する予測確率が100%に近くなるように学習を行って予測モデルを作成する。
【0045】
そして、新たなプロジェクトに対する新たなフェーズの状態の決定には、プロジェクト実行者が状態(色)決定シート13に対して回答した新たな回答群に基づき、この回答結果を機械学習手段24による予測モデルに通すことでどのフェーズの状態に該当する確率が高いかを出力し、該当するフェーズの状態を決定する。
【0046】
以上の工程を改めて
図8のフローチャートに従って説明する。
まず、工程s21で、機械学習手段24は、現在進行中のフェーズ決定のための予測モデルを作成する。また、工程s22で、機械学習手段24は、フェーズの状態の決定のための予測モデルを作成する。そして工程s23で現在進行中のフェーズ決定のための予測モデルに基づいて、フェーズ決定シート12に対してなされた回答から機械学習手段24がフェーズ決定手段25となってフェーズの決定を行う。さらには、工程s24でフェーズの状態の決定のための予測モデルに基づいて、状態(色)決定シート13に対してなされた回答から機械学習手段24が状態決定手段26となってフェーズの状態の決定を行う。そして最後に工程s25で管理表表示手段23は、これらの結果を管理表11に出力して表示する。
【0047】
あるいは
図8で示した工程を変えて
図9で示す工程としても良い。この工程は、まず、工程s31で、機械学習手段24は、現在進行中のフェーズ決定のための予測モデルを作成する。機械学習手段24は、その予測モデルに基づいて工程s32でフェーズ決定シート12に対してなされた回答からフェーズ決定手段25となってフェーズの決定を行う。次に、工程s33で、機械学習手段24は、フェーズの状態の決定のための予測モデルを作成する。そして、その予測モデルに基づいて機械学習手段24は、工程s34で状態(色)決定シート13に対してなされた回答から状態決定手段26となってフェーズの状態の決定を行う。そして最後に工程s35で管理表表示手段23は、これらの結果を管理表11に出力して表示する。
【0048】
こうしたプロジェクト進行管理表作成システム20によれば、管理表11の作成を客観的に行うことができ、各プロジェクト業務の品質及び生産性向上と、各プロジェクト業務に係るリスクの低減、業務負担の平準化を図ることができる。そして、プロジェクト件数が増えて過去のデータを生かしてより適合性の高い結果が得られるように導くことができる。また、得られたプロジェクト進行管理表は、各プロジェクトの状況を一覧表として可視化されたものであり、だれでも各プロジェクトの進捗状況と進行の状態を即座に見て取ることができる。
【0049】
<変形形態>:
上記実施形態では、フェーズ決定シート12と状態(色)決定シート13とを別個に設け、現在進行中のフェーズ決定段階と、状態決定段階とを別に行うこととしたが、これを同時に行うことができる。換言すれば、現在進行中のフェーズの決定と、フェーズ状態の決定とを別の工程とせずに、同じ工程内で行うことができる。
【0050】
例えば、フェーズ決定シート12と状態(色)決定シート13とを分けずに、一つのフェーズ及び状態決定シートともいうべきシート、又は設問を準備することで、これに対するプロジェクト実行者の回答に基づいて、演算手段22又は機械学習手段24は、現在進行中のフェーズ及びその状態を一工程で得ることができる。
【0051】
また、上記第2実施形態では、予測モデルの作製と、その予測モデルを利用した現在進行中のフェーズの決定と、フェーズの状態の決定を行う結果の出力とを分けて説明したが、予測モデルの作製と結果の出力を一体不可分に行うこともできる。
【0052】
第1実施形態で説明した方法と第2実施形態で説明した方法を組み合わせたものとすることができる。例えば、現在進行中のフェーズの決定は第1実施形態で説明した方法とし、現在進行中のフェーズの状態又はそれ以外のフェーズの状態の決定を第2実施形態で説明した方法を実行できるシステム構成としても良い。
【0053】
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態の変更または公知技術の付加や、組合せ等を行い得るものであり、それらの技術もまた本発明の範囲に含まれるものである。