(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977028
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】車両区画微気候システム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20211125BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20211125BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 C
A47C7/74 A
A47C27/00 F
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-513422(P2019-513422)
(86)(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公表番号】特表2019-526493(P2019-526493A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】US2017050677
(87)【国際公開番号】WO2018049159
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/385,781
(32)【優先日】2016年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511014862
【氏名又は名称】ジェンサーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Gentherm Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォラス,スコット リチャード
(72)【発明者】
【氏名】クロサティ,ロレンツォ マービン
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0179212(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0250956(US,A1)
【文献】
特開2007−176238(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0165033(US,A1)
【文献】
特開2013−086521(JP,A)
【文献】
特開2015−155227(JP,A)
【文献】
特開2016−052377(JP,A)
【文献】
特開2016−11071(JP,A)
【文献】
特開2017−178276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−90
A47C 7/74
B60H 1/00−34
B64D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗員エアカーテンシステムであって、
シートクッションとシートバックとを有するシートであって、前記シートバックが乗員の肩より上に配置されるように構成された領域を有する、シートと、
前記シートバックに支持されて前記領域に配置される複数の第1エアベントと、
を包含し、前記複数の第1エアベントからの各気流の少なくとも一部が、着席乗員の頭および首を回避し、かつ前記着席乗員の前で合流するように前記複数の第1エアベントが配置され、
前記シートクッションは、前記着席乗員の脚の近傍に別の気流を配向し、かつ前記着席乗員の脚を回避して前記着席乗員の脚より上で連続して合流させるように構成された複数の第2エアベントを各々が含む側面を含むシステム。
【請求項2】
前記シートバックがヘッドレストを含み、前記ヘッドレストがシートバック支持体に関して調節可能であり、前記第1エアベントが前記シートバックに設置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1エアベントがハウジングとベントとを含み、前記ベントが、前記ハウジングに対して可動であって、前記着席乗員の頭および首の近傍且つ前記頭および首を回避して前記ベントからの気流を位置決めする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1エアベントにより配向されるエアのデッドゾーンが前記着席乗員の耳と位置合わせされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
99.12[l/min]+/−10%、4500+/−10%のレイノルズ数、8m/s+/−10%の速度のうち少なくとも二つを有する気流を提供するように前記第1エアベントが構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2エアベントが、99.12[l/min]+/−10%、4000+/−10%のレイノルズ数、7m/s+/−10%の速度のうち少なくとも二つを有する気流を提供するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記シートが、前記第1および第2エアベントの少なくとも一方へ調整エアを提供するように構成された熱電モジュールと繋がっており、
前記熱電モジュールが、前記第1および第2エアベントと実質的に異なる供給源からエアを吸引する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の第1エアベントからの各気流の少なくとも一部は、前記着席乗員の前で、互いに合流する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の第1エアベントの少なくともいずれかは、前記シートバックの上方部分に設けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の第1エアベントの少なくともいずれかは、前記シートバックに対して回転可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の第1エアベントの少なくともいずれかは、前記気流の第1及び第2流路を供給し、
前記デッドゾーンは、前記第1及び第2流路の間に形成される、請求項4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月9日に出願されて参照により本書に援用される米国仮出願第62/385,781号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、自動車内など車両内部環境の温度制御に関する。より具体的に記すと、本開示は、車両微気候システムと、乗員の個人快適性を高めるために同システムを制御する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
暖房・換気・冷房(HVAC)システムは、車両内の温度を制御して乗員快適性を高めるのに自動車産業で広く使用されている。車両はますます、暖房冷房シートや暖房ステアリングホイールなどの付加的な補助熱調整装置を取り入れて乗員に個別化微気候を提供している。これらの補助熱調整装置は、乗員快適性をさらに向上させることが意図されている。
【0004】
車両内部が非常に暑いか非常に寒い場合には、HVACシステムが熱的に快適な平衡状態に達するのに長くかかり、望ましくない。付加的に、乗員快適性を提供するのに微気候装置が使用されうるが、これらの微気候装置は車両内部の非快適性の作用を克服することが可能ではない。各乗員の周りの微気候をさらに改良することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、車両乗員エアカーテンシステムは、シートクッションとシートバックとを有するシートを含む。シートバックは、乗員の肩より上に配置されるように構成された領域を有する。エアベントはシートバックに支持されてこの領域に配置される。エアベントは、着席乗員の頭および首の近傍に気流を配向するように構成されている。
【0006】
上記のいずれかのさらなる実施形態で、シートバックはヘッドレストを含む。ヘッドレストはシートバック支持体に対して調節可能である。
【0007】
上記のいずれかのさらなる実施形態で、エアベントは、着席乗員の頭および首を回避して配向されるように構成される。
【0008】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、エアベントはハウジングとベントとを含む。ベントはハウジングに対して可動であって、着席乗員の頭および首の近傍且つ頭および首を回避してベントからの気流を位置決めする。
【0009】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、エアベントにより配向されるエアのデッドゾーンは着席乗員の耳と位置合わせされる。
【0010】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、エアベントは、3.5cfm+/−10%、4500+/−10%のレイノルズ数、8m/s+/−10%の速度のうち少なくとも二つを有する気流を提供するように構成される。
【0011】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、エアベントは第1エアベントである。シートクッションは、着席乗員の脚の近傍に別の気流を配向するように構成された第2エアベントを各々が含む側面を含む。
【0012】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、第2エアベントは、3.5cfm+/−10%、4000+/−10%のレイノルズ数、7m/s+/−10%の速度のうち少なくとも二つを有する気流を提供するように構成される。
【0013】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、シートは、第1および第2エアベントの少なくとも一つに調整エアを提供するように構成されて、実質的には第1および第2エアベントと異なる供給源からエアを吸引する熱電モジュールへのエア入口を包含する熱電モジュールとの通信状態にある。
【0014】
別の例示的実施形態において、車両乗員エアカーテンシステムは、シートクッションとシートバックとを有するシートを含む。シートクッションは、乗員を継続して回避するように、着席乗員の脚の近傍に気流を配向し且つ乗員の脚より上で合流させるエアベントを各々が含む側面を含む。
【0015】
別の例示的実施形態では、シートから車両乗員の周囲にエアカーテンを発生させる方法。この方法は、拡散された周囲環境からの入口からのエアを調整するステップを含む。調整エアは第1および第2エアベントに提供される。第1エア境界層は第1エアベントから形成され、乗員の頭の近傍にある。第2エア境界層は第2エアベントから形成され、乗員の脚の近傍にある。
【0016】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、第1境界層形成ステップは、シートバックに設置された第1エアベントから第1エア境界層を供給することを含み、乗員の肩より上の領域を有する。第2境界層形成ステップは、シートクッションの側面に設置された第2エアベントから第2エア境界層を供給することを含む。
【0017】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、第1および第2エア境界層の各々は、3.5cfm+/−10%、4250+/−20%のレイノルズ数、7.5m/s+/−20%の速度のうち少なくとも二つを有する気流を提供する。
【0018】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、第1および第2エア境界層は、さらなる妨害を伴わずに第1および第2ベントから車室へ流入する。
【0019】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、第1エアベントは、ハウジングとベントとを含む。ベントはハウジングに対して可動であって、着席乗員の頭および首の近傍且つ頭および首を回避してベントからの気流を位置決めする。第1エアベントは上方流路と下方流路との間に配置されるデッドゾーンを提供する。デッドゾーンはエアベントを通る流れを妨害する。
【0020】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、ペルチェ効果に基づいて作動可能な熱電装置にエアを通過させることによりエア調整ステップが実施される。
【0021】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、蒸発性液体冷媒を有する熱交換器にエアを通過させることによりエア調整ステップが実施される。
【0022】
別の例示的実施形態において、シートのエアカーテンベントはハウジングを含む。ベントはハウジングに対して可動である。ベントは、幅より実質的に大きい高さを含む。高さおよび幅は、上方および下方流路を提供する出口を提供する。上方および下方流路の間にはデッドゾーンが配置される。デッドゾーンはベントを通る流れを著しく妨害するように構成される。
【0023】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、ベントは、出口の少なくとも15%を閉塞するバッフルを含む。高さは幅の少なくとも3倍である。
【0024】
別の例示的実施形態において、フロントシートは、乗員支持面をともに提供するシートクッションおよびシートバックを含む。乗員支持面は、フロントシート乗員に熱調整を提供するように構成される。シートバックは乗員支持面の反対に熱調整モジュールを有し、フロントシートの後ろのリア乗員に熱調整を提供するように構成される。
【0025】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、シートバックは乗員支持面と反対向きの放射暖房装置を支持する。
【0026】
上記のいずれかのさらなる実施形態において、シートバックは乗員支持面と反対向きのエアベントを含む。
【0027】
添付図面に関連して検討されると、以下の詳細な説明の参照により開示がさらに理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】乗員エアカーテンシステムを備えるシート実施形態例の概略図である。
【
図3A】シートクッション用エアベントを備える導管が描かれている。
【
図4】乗員エアカーテンシステムに設けられた導管の拡大概略図である。
【
図5】乗員エアカーテンエア送出システムの概略図である。
【
図6A】シートのシート座部に組み込まれる乗員エアカーテンシステムの実施形態例である。
【
図6B】シートのシート座部に組み込まれる乗員エアカーテンシステムの実施形態例である。
【
図6C】シートのシート座部に組み込まれる乗員エアカーテンシステムの実施形態例である。
【
図7】乗員の頭および首の領域に乗員エアカーテンを供給するためシートバックに設けられるエアベントを示す。
【
図8】
図7に示されたベントの8‐8線における断面図である。
【
図8A】
図8に示されたエアベントのハウジングの斜視図である。
【
図8B】
図8に示されたエアベントのベントの斜視図である。
【
図9】乗員の頭および首のエリアでの乗員エアカーテンを図示している。
【
図10】乗員の周囲に配備される乗員エアカーテンを概略的に図示している。
【
図11A】乗員エアカーテンシステムによる乗員の周囲の熱的微気候環境を図示している。
【
図11B】乗員エアカーテンシステムによる乗員の周囲の熱的微気候環境を図示している。
【
図12】リア取り付けのシート乗員微気候装置を概略的に図示している。
【0029】
前出段落、請求項、または以下の説明および図面の実施形態、例、代替例は、その様々な態様またはそれぞれの個別特徴を含めて、単独で、または何らかの組み合わせで解釈されうる。一つの実施形態に関連して説明される特徴は、このような特徴が不適合でなければ、すべての実施形態に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
微気候制御システム10の一例が
図1に概略的に示されているが、示されているものと異なるシステムでもよいことが理解されるべきである。気候制御システムの一例は、2015年10月30日に出願されて参照により全体が本書に援用される「全体的熱快適性の改良のための四肢の標的化血管拡張を伴う車両微気候システムと同システムの制御方法」の名称のPCT/US15/58328に挙げられている。
【0031】
システム10は、HVACシステム14と一つ以上の乗員微気候装置との動作を調和させて車両内の乗員に快適な環境を提供する制御装置12を含む。一つ以上のフットウェル暖房ベントが使用されうる。
【0032】
図1および2を参照すると、微気候装置18の一例はシート20である。シート20は、乗員支持面の暖房および/または冷房を行うシート座部またはクッション21とシートバック22内の装置24,26を含みうる。ヘッドレスト23はシートバック22に一体化されるか、別々に調節可能である。シート20を介して乗員に熱調整を提供するのに一つ以上の熱電モジュールが使用される。例えば、熱電装置46(例えば
図1A参照)またはマイクロプロセッサ冷却ユニットにより実行可能となるマルチノード冷房システム(例えば
図1B参照)が使用されうる。これらの熱電モジュールは、車両のHVACシステム14から独立している。
【0033】
図1Aを参照すると、熱電モジュール46は、暖房と冷房の両方を提供することが可能である。一例において、熱電モジュール46は、主熱交換器70と排気熱交換器72とを有する熱電装置48を含む。熱電装置は、それぞれ主および排気熱交換器70,72との流体連通状態にある入口64と第1および第2出口66,68とが設けられたハウジングに配置される。送風器50は、熱電装置48内でエアを移動させる。熱電装置48は、ペルチェ効果を用いて熱電装置48内での電流の方向に基づき暖房モードと冷房モードで暖房と冷房をそれぞれ提供するように構成されている。暖房要素74は主加熱交換器50に取り付けられて付加的な暖房を提供しうる。
【0034】
図1Bを参照すると、ミニコンプレッサ冷却ユニット146が概略的に示され、電気モータ80により駆動されて冷媒ループ76内で冷媒を循環させるコンプレッサ78を含む。冷媒は、コンプレッサ78へ戻る前にコンデンサ82と膨張バルブ84と蒸発器86とを通過する。送風器は蒸発器86にエアを通過させ、出口166から調整エアを提供する。ミニコンプレッサ冷却ユニットのコンポーネントはサイズが小さく、車両全体に分散されて好都合な形で装備されている。
【0035】
図1および2を参照すると、首空調装置28はヘッドレスト23またはシートバック22に設けられうる。シート20は例えば、伝導性および/または放射性の装置により供給されうる三つの暖房設定を含みうる。ヘッドレスト対流性暖房器も使用されうる。首空調装置28は冷房も提供しうる。
【0036】
車両は、暖房/冷房ステアリングホイール、暖房/冷房内装パネル、暖房/冷房アームレスト、暖房/冷房センターコンソールカバー、または他の暖房/冷房面など、他の微気候装置も採用しうる。
【0037】
熱エネルギー源微気候装置は、セントラルHVAC、補助ヒータ(PTCヒータ)、補助熱電装置、ミニコンプレッサシステム(例えば
図1B)のような補助HVAC装置等を含みうる。各微気候装置は関連の供給源を有するか、別のものと供給源を共有しうる。後者のケースでは、各装置に供給されるエネルギーを変化させるのにバルブが使用されうる。静止ベントまたは可動ベーンを備えるベントにより、振動空気の流れが形成されうる。
【0038】
乗員の熱的状態または皮膚温度を測定するための赤外線センサなどの乗員快適性フィードバック装置22は、システムにフィードバックを提供するのに使用され、乗員の微気候を自動的に調節して乗員快適性を最大化する。
【0039】
乗員熱快適性を向上させるため、車両内部が快適な熱平衡状態に達するまで車両内の環境から乗員を熱的に隔離することが望ましい。代替的または付加的に、乗員の全体または一部の周囲に熱的微気候を形成して、乗員空調のためのセントラルHVACへの依存とこれにより消費されるエネルギーとを軽減させることが望ましい。この目的のため、乗員の周りに調整エアの境界層を形成する乗員エアカーテンシステム30がシートに設けられる。調整エアが乗員に達する時にはエアがかなりまたは完全に拡散されて高度の乱流となるので、このエア境界層は、例えば一般的なHVACダッシュボードベントまたはその他から供給されるエアと異なっている。それゆえ、このエアは乗員の周りに独立したエア境界層を形成することが不可能である。エアカーテンCは、乗員のすぐ近傍に形成されて車室内部の残りのエアから乗員を隔離するエアの層、あるいは境界層である。エアカーテンCは、乗員の方へ配向されるセントラルHVACからのエアの流れを攪乱する。エアカーテンCはセントラルHVACからのエアを混合し、こうしてセントラルHVACからのエアの温度および速度を変化させる。境界層として、エアカーテンCは、乗員が空調を受けるための主要な手段として、または乗員の熱感覚の主要エフェクタとして作用しうる。
【0040】
一実施形態において、乗員エアカーテンシステム30は、シートバックとシート座部とにそれぞれ設けられる第1および第2エアベント32,34を含む。一例で、ベント32,34を出るエアの各々は、3.5cfm+/−10%、4250+/−20%のレイノルズ数、7.5m/s+/−20%の速度のうち少なくとも二つを有する気流を有する第1および第2エア境界層をそれぞれ生成する流配向構造を含む。エアの流特徴はカーテンCのエリアに左右され、乗員の方へ配向されるセントラルHVACからのエア流速に基づいて変化しうる(例えば高いセントラルHVAC速度に対してバッファを維持するのには高いエアカーテン流速が望ましい等)。それゆえ、エア流特徴は、2.5〜7.0cfm、3000〜8500のレイノルズ数、5.0〜15.0m/sの速度の範囲でありうる。別の例では、三つの気流特徴すべてが達成される。エア流特徴は、エアカーテンCの平均値またはエアカーテンCの一部分と関連する値に関係する。入口から熱電モジュールへのエアが調整される。入口のエアは、第1および第2エアベント32,34と実質的に異なる拡散周囲エアの供給源から生じる。すなわち、発生したエアカーテンCが乗員の周りを「包囲」しないように、第1および第2エアベント32,34により発生されたエアカーテンCを回避してエアが吸入されるのである。そして調整エアは第1および第2エアベント32,34へ、そしてさらなる妨害を伴わずに車室へ提供される。
【0041】
示されていないが、乗員エアカーテンシステム30は任意で、シートバックの周囲の下部に沿って設置される第3エアベントを有しうる。一例で、第3エアベントはシート乗員の方へ前向きに配向されうる。代替例で、第3エアベントは、別のシートの乗員の方へ後ろ向きに配向される。
【0042】
第1エアベント32は、シートバックおよび/またはヘッドレストの上方部分のベントにより設けられ(
図7〜9)、第2エアベント34はシート座部21の側面に設けられうる(
図3A〜6C)。調節可能であるこれらの第1エアベント32は、乗員の肩より上と頭および首の近傍で横方向外向きにエアのカーテンCを送出するように位置決めされる。すなわち、ベントからのエアカーテンCのわずかな部分が乗員に衝突するが、乗員を囲繞する空間の冷房または暖房が意図されており、頭および首(または他の敏感なエリア)をかすめて、乗員のすぐ近傍の空間にエアの境界層を形成する。第1エアベント32は、1)乗員の顔と首の近傍側にエンベロープを形成し、具体的には調整後または調整前のエアを乗員の首および顔の両側へ配向するとともに、2)首の後ろを標的とするのを避けるように構成される。
【0043】
同様にして、シート座部の周囲に設けられた第2エアベント34の各々は、乗員の脚と下部胴体の周りにエア境界層を供給する。
図3A〜6Cを参照すると、導管38がシート座部のいずれかの側に設けられるか、U形状で配置され、導管38からのエアを再配向するルーバー90を有する調節可能ベント88により設けられる多数の長形スロット40を含む。
図4を参照すると、独立したベントにより設けられるものであれ、導管38自体の壁により設けられるものであれ、スロット40は、幅44より実質的に大きい長さ42を有し、例えば少なくとも4:1である。導管38は一つ以上の箇所で閉塞されて、一つ以上のスロット40からのエアの望ましい分布を保証する。例えば可動ベーンにより振動気流が発生されうる。スロット40の長形の形状は、拡散前に乗員を直近で囲繞する空間を充分に貫通する境界層を形成する扇状のエアを提供する。例えば、第2エアベント34は、3.5cfm+/−10%、4000+/−10%のレイノルズ数、7m/s+/−10%の速度のうち少なくとも二つを有する気流を提供する。やはり、他のエア流特徴が第2エアベント34により提供されてもよい。このようにして、エア境界層は、乗員の下方部分の周囲に、具体的には1)脚の上方部分(つまり膝エリア)に沿って、胴体の両側で胸へ(そして胸に達するように)調節エアを配向するためシートの両側に、また、2)シートの前部で膝の裏へ、そして脚エリアを囲繞してエンベロープを形成するように構成される。このようにして、
図10に示されているように、気流は方向121で第2エアベント34から着席乗員の脚の近傍に配向され、乗員を回避して連続するように乗員の脚より上の点119で合流する。その後、HVACシステムからの気流との相互作用のため、気流は停滞しうる。
【0044】
図5を参照すると、第1および第2エア送出部材32,34は、例えば熱電モジュール46により供給を受けうる。熱電モジュール46は、送風器50からのエアの暖房または冷房を行う熱電装置48を含む。調整エアは二重ダクト52によりベント36および導管38へ分配される。言うまでもなく、例えば
図1Bに示されているミニコンプレッサ冷却ユニット146を使用して、乗員エアカーテンシステム30が図と異なるように構成されうることが理解されるべきである。
【0045】
第2エアベント34の構成例が
図6A〜6Cに示されている。一般的に、シート座部クッション54は、側面に固定されたトリム部材56を含む。
図6Aはトリム56の内部に配置された第2エアベント34を図示しており、
図6Bは第2エアベント34、例えばトリム56の外部に設けられた導管38を示している。
図6Cに示されているように、調整エアが供給されるための第2エアベント34がクッション54から延出している。シート座部は、例えば車両床部60に固定された調節可能なトラック58により移動可能に支持されている。第2エアベント34は、車両床部60に対してシート20とともに移動する。
【0046】
シートバック22に取り付けられて、着席時に乗員の肩より上の領域に配置される第1エアベント32の一例が、
図7に示されている。第1エアベント32は、
図8に示されているように、例では軸線で回転可能なハウジング94を支持するプレナム138を含む。この例で、プレナム138は、調整エアをベント96へ送達してエアカーテンCを発生させる流体空洞を画定する外側構造となる。左および右側の第1エアベント32からの気流は、
図9に示されているように乗員の前の点115で合流する。
図8Aに最も分かりやすく示されているように、ハウジング94は概ね円筒形の形状であり、第1および第2窓部98,100と開口底部102とを含む。ベント96は第1窓部98に配置され、ハウジング94に対してベント96が回転する際のピボット104を含む。入力装置120に応答するアクチュエータ117,118は、乗員の頭または首にエアを直接的に送風しないようにシート20の乗員位置に対してエアベント96の出口106の位置を調節するために乗員に使用されうる。このようにして、ベント96は、異なる身長やサイズで好みの異なる乗員を収容するように容易に位置決めされうる。
【0047】
ベント96は、ベント96の出口106からのエアが排出されないデッドゾーン112により隔離された第1および第2流路114,116を提供するルーバー108,110を有する。ルーバー110は、幅の少なくとも3倍の高さを有する出口106の少なくとも15%を閉塞するバッフルを形成する。バッフルが使用されないか、出口106を少量または大量に、例えば5%〜25%をバッフルが閉塞することが理解されるべきである。デッドゾーン112は乗員の耳と整合されるように設計され(
図9)、一般的に耳は直接的な気流には敏感であるため調整エアを耳へ送風すると不快である。様々な例で、デッドゾーン112は、首の後ろなど、他の敏感な解剖学的構造と整合されうる。
【0048】
乗員エアカーテンシステムと乗員の周りのその境界層とが、
図10〜11Bに概略的に図示されている。開示されるエアカーテンシステム30は、高温および/または低温の車両内部環境に使用されうる。乗員エアカーテンシステム30により提供される境界層は「緑色」で図示され(望ましくない環境は「赤色」で示されている)、高温の内部環境から乗員を遮蔽するエンベロープを形成する。こうしてシート座部およびシートバックの暖房冷房装置は快適な乗員微気候をより良好に維持することができ、一方でHVACシステムは内部車両環境をより快適な熱平衡状態にする。
【0049】
図12を参照すると、微気候装置/システムはリア乗員エリア150のためにシート20の後部に設けられる。システムでは、フロントシート20の乗員支持面と反対のシートバックの下方垂直面に、例えば地図ポケットと一体化された放射ヒータ62が設けられる。ベント64を備える対流ヒータ/クーラが放射ヒータ62より上に配置され、リヤシート乗員の下肢、具体的には後方シート乗員の脚の上部、脚の前部、足へ調整エアを配向するように構成される。ベント64は乗員に面するシートバックの水平面に配置されるが、乗員に面する垂直または側面に設置されてもよい。熱電モジュール66またはHVACは調整エアをベントへ供給しうる。
【0050】
特定のコンポーネント配置が図の実施形態に開示されているが、本書から他の配置が導出されうることも理解されるべきである。特定のステップ順序が図示、説明、請求されているが、他に指摘されていなければステップが何らかの順序で実施されるか分離されるか組み合わされ、それでも本発明から導出されうることが理解されるべきである。
【0051】
多様な例は、図に示された具体的なコンポーネントを有するが、本発明の実施形態はこれらの特定の組み合わせには限定されない。一つの例からのコンポーネントまたは特徴の幾つかを別の例からの特徴またはコンポーネントとの組み合わせで使用することが可能である。
【0052】
実施形態例が開示されているが、当業者であれば、ある種の変形が請求項の範囲内であることを認識するだろう。その理由から、真の範囲および内容を判断するには以下の請求項が検討されるべきである。