特許第6977033号(P6977033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6977033トリアリールオルガノボレートの製造方法
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  • 特許6977033-トリアリールオルガノボレートの製造方法 図000036
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977033
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】トリアリールオルガノボレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20211125BHJP
   C07C 211/63 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 217/08 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 219/14 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 219/08 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 271/24 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 271/20 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 271/12 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 271/26 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 381/12 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 25/18 20060101ALI20211125BHJP
   C07F 9/54 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 211/64 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 229/06 20060101ALI20211125BHJP
   C07D 233/58 20060101ALI20211125BHJP
   C07D 401/10 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   C07F5/02 A
   C07C211/63CSP
   C07C217/08
   C07C219/14
   C07C219/08
   C07C271/24
   C07C271/20
   C07C271/12
   C07C271/26
   C07C381/12
   C07C25/18
   C07F9/54
   C07C211/64
   C07C229/06
   C07D233/58
   C07D401/10
【請求項の数】10
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2019-523725(P2019-523725)
(86)(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公表番号】特表2020-512274(P2020-512274A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(86)【国際出願番号】EP2017078412
(87)【国際公開番号】WO2018087062
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2020年11月4日
(31)【優先権主張番号】16197993.5
(32)【優先日】2016年11月9日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】17192517.5
(32)【優先日】2017年9月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ロール,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バーナス,ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】ホーネル,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーダー,フリードリッヒ−カール
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−188685(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/091427(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0102225(KR,A)
【文献】 特開2002−226486(JP,A)
【文献】 KABATC, J. et al.,The application of halomethyl 1,3,5-triazine as a photoinitiator or co-initiator for acrylate monomer polymerization,Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry,2011年,Vol.219,pp.16-25,DOI:10.1016/j.jphotochem.2011.01.011
【文献】 ALLONAS, X. et al.,Borate salts as coinitiators in photoinitiating systems of laser imaging,Journal of Photopolymer Science and Technology,2011年,Vol.24, No.5,pp.531-534
【文献】 鳥羽 泰正,オニウムボレートを用いた光重合開始剤系の構築,高分子論文集,2002年,Vol.59, No.8,pp.449-459
【文献】 FUJITA, K. et al.,Synthesis and structural characterization of a new class of organoborato ligands containing imidazolyl functional groups [MeB(ImN-Me)2(X)]-,J. Chem. Soc., Dalton Trans.,2000年,pp.1255-1260,DOI:10.1039/b000467g
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【数1】
のトリアリールオルガノボレートを調製する方法であって、
1当量の式B−R(OR)(OR)(I)の有機ボロン酸エステルを最初に、1/n当量の塩Kn+ nX(II)および3当量の金属Mと一緒に溶媒または溶媒混合物S中に装入し、3当量のハロ芳香族R−Y(III)を加え、任意選択的に第二の有機溶媒Sを添加し、前記化合物:
【数2】
を有機相に分離する方法
(Rは、ヒドロキシル−および/またはアルコキシ−および/またはアシルオキシ−および/またはハロゲン−置換されていてもよいC−〜C22−アルキル、C−〜C22−アルケニル、C−〜C22−アルキニル、C−〜C−シクロアルキルまたはC−〜C13−アラルキル基であり、ならびに
およびRは独立して、分枝していてもよいC−〜C22−アルキル基またはアルキル置換されていてもよいC−〜C−シクロアルキル基であるか、またはRおよびRは一緒になって2〜8員の炭素架橋を形成し、当該炭素架橋は、アルキルによって置換されていてもよいか、および/または酸素原子が差し挟まれていてもよく、
は、ハロゲン、C−〜C−アルキル、トリフルオロメチル、C−〜C−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェニルおよび/またはフェノキシから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいC−〜C10−アリール基であり、
Kは、原子価nで任意の置換を有する、窒素、リン、酸素、硫黄および/またはヨウ素に基づく有機カチオンであり、
Mは、アルカリ金属、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムから選択される任意の金属であり、ならびに
Xは、ハロゲン化物またはアルコキシドまたはアルキルスルフィドであり、ならびに
Yは、ヨウ素または臭素または塩素であり、ならびに
nは、1、2または3であり、ならびに
Sは、非プロトン性有機溶媒または非プロトン性有機溶媒の混合物である)。
【請求項2】
請求項1に記載の式:
【数3】
の化合物を調製する方法であって、
以下の工程:
i)最初に、1当量の有機ボロン酸エステルB−R(OR)(OR)(I)を1/n当量の塩Kn+ nX(II)および3当量の金属Mと一緒に溶媒または溶媒混合物S中に装入する工程、
ii)3当量のハロ芳香族R−Y(III)を添加する工程、その結果として、
iii)その場で生成された有機金属試薬が前記最初に装入した物質(I)および(II)と反応して
【数4】
を生じる工程
を含む方法。
【請求項3】
窒素に基づく原子価nの前記有機カチオンKが、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオンおよびイミダゾリウムイオンであり、これらが、エーテル、エステル、アミドおよび/またはカルバメートなどのさらなる官能基を1または複数の側鎖中に有していてもよく、オリゴマーまたはポリマーまたは架橋形態であってもよいことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
リンに基づく原子価nの前記有機カチオンKが、任意の置換を有するテトラアルキルホスホニウム、トリアルキルアリールホスホニウム、ジアルキルジアリールホスホニウム、アルキルトリアリールホスホニウムまたはテトラアリールホスホニウム塩であり、これらが、カルボニル、アミド、および/またはカルバメートなどのさらなる官能基を1または複数の側鎖中に有していてもよく、オリゴマーまたはポリマーまたは架橋形態であってもよいことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
酸素に基づく原子価nの前記有機カチオンKが、ベンゾピリリウム、フラビリウム、ナフトキサンテニウムのような縮合形態を含む、任意の置換を有するピリリウムであるか、または記載の置換パターンを有するポリマーカチオンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
硫黄に基づく原子価nの前記有機カチオンKが、同一または異なる置換されていてもよいC−〜C12−アルキル、C−〜C10−アリール、C−〜C12−アリールアルキルまたはC−〜C−シクロアルキル基を有し、および/またはオリゴマーまたはポリマーの繰り返し連結単位を形成して、1≦n≦3のスルホニウム塩、およびチオピリリウムを生じる硫黄のオニウム化合物であるか、または記載の置換パターンを有するポリマーカチオンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
ヨウ素に基づく原子価nの前記有機カチオンKが、同一または異なる置換されていてもよいC−〜C12−アルキル、C−〜C10−アリール、C−〜C12−アリールアルキルまたはC−〜C−シクロアルキル基を有し、および/またはオリゴマーまたはポリマーの繰り返し連結単位を形成して、1≦n≦3のヨードニウム塩を生じるヨウ素のオニウム化合物であるか、または記載の置換パターンを有するさらなるポリマーカチオンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
が、ヒドロキシル−および/またはアルコキシ−および/またはアシルオキシ−および/またはハロゲン−置換されていてもよいC−〜C18−アルキル、C−〜C18−アルケニル、C−〜C18−アルキニル、C−〜C−シクロアルキルまたはC−〜C13−アラルキル基であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
およびRが独立して、分枝していてもよいC−〜C18−アルキル基であるか、またはRおよびRが一緒になって、4〜7員の置換されていてもよい炭素環を形成することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
が、ハロゲン、C−〜C−アルキル、トリフルオロメチル、C−〜C−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェニルおよびフェノキシから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいC−〜C10−アリール基であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、n−価カチオン1/n Kの存在下で有機ボロン酸エステルから出発するトリアリールオルガノボレートの調製方法、および、これらの物質のフォトポリマー配合物の共開始剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
トリアリールオルガノボレートは、適切な増感剤、例えばカチオン性、アニオン性または非荷電色素と一緒に、化学線を介して適切なモノマーのフリーラジカル光重合を引き起こすタイプ(II)の光開始剤を形成することができる。その調製は広く記載されており、選択されたテトラアルキルアンモニウムトリアリール(アルキル)ボレートが市販されている。
【0003】
独国特許第19850139号には、アルキルまたはシクロアルキルボロネートから出発するテトラアルキルアンモニウムトリアリール(アルキル)ボレートの合成、およびそれらと3当量の有機金属試薬、特にグリニャール試薬との反応が記載されている。第一段階では、アルキルまたはシクロアルキルボロネートを調製し、単離して、次いでこのアルキルまたはシクロアルキルボロネートを、別に調製した有機金属試薬、一般にグリニャール試薬と反応させる。第三段階では、このようにして形成されたトリアリール(アルキル)ボレートをテトラアルキルアンモニウム化合物の添加により塩の形で沈殿させ、例えば結晶化により精製する。したがって、テトラアルキルアンモニウムトリアリール(アルキル)ボレートの調製には全部で3つの合成段階がある。典型的に使用されるエーテル系溶媒中の有機金属試薬、特にグリニャール試薬の溶解度は限られているので、この方法において、特に有機金属試薬段階において、すべての成分を溶液中で均一に保つために非常に希薄な溶液で作業することが必要である。典型的に使用されるエーテルであるテトラヒドロフランまたはジエチルエーテル中のグリニャール試薬の溶解度は、典型的には1〜2モル/リットルである。しかしながら、化学量論的には3当量のグリニャール試薬が必要とされるので、生成物の目標濃度はこの値の3分の1であり、これはグリニャール試薬の溶解度が目標濃度を規定することを意味する。最適化された空時収量は工業的応用にとって重要な目的である。しかしながら、これは独国特許第19850139号に記載された方法によっては限られた程度でしか達成することができない。
【0004】
日本国特開2002−226486号には、アルキルまたはシクロアルキルボロネートから出発するアンモニウムおよびホスホニウムトリアリール(アルキル)ボレートの合成、およびそれらと3当量の有機金属試薬、特にグリニャール試薬とのin situ法(Barbier)による反応が記載されており、前記有機金属試薬は求電子アルキルまたはシクロアルキルボロネートの存在下で生成される。このようにして、より高い空時収量を達成することが可能であり、したがって有機金属段階の発熱をより良好に制御することができる。さらに、いくつかの反応性有機金属試薬は貯蔵安定性が限られており、そうしなければ加水分解または酸化されるため、水または大気中の酸素から多大な費用および不便で保護しなければならず、これにより、全体的な収量が減ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第19850139号
【特許文献2】日本国特開2002−226486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法はいずれも、さらなる反応工程において選択されたカチオンの添加をさらに必要とする。選択されたカチオンがトリアリールオルガノボレートの調製中に既に存在する場合には、さらなる反応工程が省かれ、手順および後処理が一層効率的になり得るので、工業的規模で経済的に実行可能な製造に有利である。さらに、別の方法では使用される溶媒中に生じる金属−アリールアンモニウム塩は、溶解度が限られており、大量の沈殿物による反応エンタルピーの制御を妨げるので、試薬の濃度をさらに高めることになり得る。
【0007】
したがって、本発明が取り組む問題は、改良された空時収量がより良好な経済的実行可能性をもたらす、トリアリールオルガノボレートの製造方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、式
【数1】
【0009】
のトリアリールオルガノボレートを調製する方法であって、1当量の式B−R(OR)(OR)(I)の有機ボロン酸エステルを最初に、1/n当量の塩Kn+ nX(II)および3当量の金属Mと一緒に溶媒または溶媒混合物S中に装入し、3当量のハロ芳香族R−Y(III)を加え、任意選択的に第二の有機溶媒水Sを添加し、化合物
【数2】
【0010】
を有機相に分離する方法によって、本発明により達成される
(Rは、ヒドロキシル−および/またはアルコキシ−および/またはアシルオキシ−および/またはハロゲン−置換されていてもよいC−〜C22−アルキル、C−〜C22−アルケニル、C−〜C22−アルキニル、C−〜C−シクロアルキルまたはC−〜C15−アラルキル基であり、
およびRは独立して、分枝していてもよいC−〜C22−アルキル基またはアルキル置換されていてもよいC−〜C−シクロアルキル基であるか、またはRおよびRは一緒になって、アルキルによって置換されていてもよいか、および/または酸素原子が差し挟まれていてもよい2〜8員の炭素架橋を形成し、
は、ハロゲン、C−〜C−アルキル、トリフルオロメチル、C−〜C−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェニルおよび/またはフェノキシから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいC−〜C14−アリール基であり、
Kは、原子価nで任意の置換を有する、窒素、リン、酸素、硫黄および/またはヨウ素に基づく有機カチオンであり、
Mはアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムから選択される任意の金属であり、
Xはハロゲン化物またはアルコキシドまたはアルキルスルフィドであり、
Yはヨウ素または臭素または塩素であり、
nは1、2または3であり、ならびに
Sは、非プロトン性有機溶媒または非プロトン性有機溶媒の混合物である)。
【0011】
この方法において、3当量のハロ芳香族R−Y(III)を最初に装入した3当量の金属に添加すると、最初に装入した物質(I)および(II)と反応して、トリアリールオルガノボレート
【数3】
【0012】
をもたらす有機金属試薬がその場で生成する。驚くべきことに、カチオンとしての窒素、リン、酸素、硫黄および/またはヨウ素に基づく原子価nの置換有機カチオンの使用は、それらが化学的に不活性であり、反応が公知の方法よりも高い空時収率で進行し、副反応がより少なく、したがって収率が増加し、より高い純度の標的生成物が非常に容易に達成可能であるため、反応に有益な効果を有することが見出されている。
【0013】

【数4】
【0014】
の所望のトリアリールオルガノボレートが有機相中に残り、得られる金属塩MY(OR)、MY(OR)およびMXYは水相に容易に分離することができるので、水および任意選択的にさらなる溶媒の添加による後処理も有利であることが見出される。
【0015】
式IVの本発明のトリアリールオルガノボレートは、好ましくはトリアリール(アルキル)ボレート、トリアリール(シクロアルキル)ボレート、トリアリール(アルケニル)ボレート、トリアリール(アルキニル)ボレートおよび/またはトリアリール(アラルキル)ボレートであり、さらに好ましくはトリアリール(アルキル)ボレートおよび/またはトリアリール(シクロアルキル)ボレートである。
【0016】
したがって、本発明は同様に式
【数5】
【0017】
の化合物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する、
i)最初に、1当量の有機ボロン酸エステルB−R(OR)(OR)(I)を1/n当量の塩Kn+ nX(II)および3当量の金属Mと一緒に溶媒または溶媒混合物S中に装入する工程、ならびに
ii)3当量のハロ芳香族R−Y(III)を添加する工程、その結果として、
iii)その場で生成された有機金属試薬が最初に装入した物質(I)および(II)と反応して、
【数6】
【0018】
を生じる工程。
【0019】
これに以下の工程が続いてもよい、
iv)水および任意選択的にさらなる溶媒を添加する工程、ならびに
v)式
【数7】
【0020】
の所望のトリアリールオルガノボレートを有機相に分離する工程。
【0021】
この反応は、以下の全体的反応式に従う:
【化1】
【0022】
好ましくは、Rは、ヒドロキシル−および/またはアルコキシ−および/またはアシルオキシ−および/またはハロゲン置換されていてもよいC−〜C18−アルキル、C〜C18−アルケニル、C−〜C18−アルキニル、C−〜C−シクロアルキルまたはC−〜C13−アラルキル基であり、より好ましくは、Rは、ヒドロキシル−および/またはアルコキシ−および/またはアシルオキシ−および/またはハロゲン置換されていてもよいC−〜C16−アルキル、C−〜C16−アルケニル、C−〜C16−アルキニル、シクロヘキシルまたはC−〜C13−アラルキル基である。
【0023】
好ましくは、RおよびRは独立して、分枝していてもよいC−〜C18−アルキル基であるか、またはRおよびRは一緒になって4〜7員の置換されていてもよい炭素環を形成し、より好ましくは、RおよびRは独立して、分枝していてもよいC−〜C12−アルキル基であるか、またはRおよびRは一緒になって4〜6員の置換されていてもよい炭素環を形成する。
【0024】
好ましくは、Rは、ハロゲン、C−〜C−アルキル、トリフルオロメチル、C−〜C−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェニルおよび/またはフェノキシから選択される少なくとも1つの基により置換されていてもよいC−〜C10−アリール基であり、より好ましくは、Rは、ハロゲン、C−〜C−アルキル、トリフルオロメチル、C−〜C−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェニルおよび/またはフェノキシから選択される少なくとも1つの基により置換されていてもよいC−アリール基である。
【0025】
窒素に基づき、任意の置換を有する原子価nの有機カチオンKは、例えば、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、1H−ピラゾリウムイオン、3H−ピラゾリウムイオン、4H−ピラゾリウムイオン、1−ピラゾリニウムイオン、2−ピラゾリニウムイオン、3−ピラゾリニウムイオン、イミダゾリニウムイオン、チアゾリウムイオン、1,2,4−トリアゾリウムイオン、1,2,3−トリアゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、キノリニウムイオンであり、これらは、エーテル、エステル、アミドおよび/またはカルバメートなどのさらなる官能基を1または複数の側鎖中に有していてもよく、オリゴマーまたはポリマーまたは架橋形態であってもよいものを意味すると理解される。窒素に基づく原子価nの好ましい有機カチオンKは、例えばアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオンであり、これらは、エーテル、エステル、アミドおよび/またはカルバメートなどのさらなる官能基を1または複数の側鎖中に有していてもよく、オリゴマーまたはポリマーまたは架橋形態であってもよい。窒素に基づく原子価nの特に好ましい有機カチオンKは、例えばアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンおよびイミダゾリウムイオンであり、これらは、エーテル、エステル、アミドおよび/またはカルバメートなどのさらなる官能基を1または複数の側鎖中に有していてもよく、オリゴマーまたはポリマーまたは架橋形態であってもよい。ポリマーカチオンもまた、上記の置換パターンの意味内に含まれ得る。
【0026】
リンに基づき、任意の置換を有する原子価nの有機カチオンKは、例えば、任意の置換を有する配位数4のリン(IV)化合物、例えばテトラアルキルホスホニウム、トリアルキルアリールホスホニウム、ジアルキルジアリールホスホニウム、アルキルトリアリールホスホニウム、トリアルキレンアリールホスホニウム、ジアルキレンジアリールホスホニウム、アルキレントリアリールホスホニウム、またはテトラアリールホスホニウム塩であり、これらは、エーテル、エステル、カルボニル、アミドおよび/またはカルバメートなどのさらなる官能基を1または複数の側鎖中に有していてもよく、オリゴマーまたはポリマーまたは架橋形態であってもよいものを意味すると理解される。1、2または3個のホスホニウム(IV)原子を含有する5から8員の脂肪族、準芳香族または芳香族環式化合物であって、任意のアルキルまたはアリール置換基で置換されて、四価のリン原子を確立することができるものも同様に包含される。芳香族基はさらに、任意の数のハロゲン原子またはニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、エステルおよび/またはエーテル置換基を有していてもよい。炭素鎖またはモノ−および/またはポリエーテル鎖によって互いに架橋され、次いで単環式または多環式構造を形成するアルキル基およびアリール基も当然のことながら可能である。リンに基づく原子価nの好ましい有機カチオンKは、例えば、任意の置換を有するテトラアルキルホスホニウム、トリアルキルアリールホスホニウム、アルキルトリアリールホスホニウム、ジアルキルジアリールホスホニウムまたはテトラアリールホスホニウム塩であり、これらは、カルボニル、アミド、および/またはカルバメートなどのさらなる官能基を1または複数の側鎖中に有していてもよく、オリゴマーまたはポリマーまたは架橋形態であってもよい。芳香族基はさらに任意の数のハロゲン原子またはエステルおよび/またはエーテル置換基を有していてもよい。炭素鎖またはモノ−および/またはポリエーテル鎖によって互いに架橋され、次いで単環式または多環式構造を形成するアルキル基およびアリール基も当然のことながら可能である。リンに基づく原子価nの特に好ましい有機カチオンKは、例えば、任意の置換を有するテトラアルキルホスホニウム、トリアルキルアリールホスホニウム、ジアルキルジアリールホスホニウム、アルキルトリアリールホスホニウムまたはテトラアリールホスホニウム塩であり、これらは、カルボニル、アミド、および/またはカルバメートなどのさらなる官能基を1または複数の側鎖中に有していてもよく、オリゴマーまたはポリマーまたは架橋形態であってもよい。芳香族基はさらに任意の数のハロゲン原子を有していてもよい。炭素鎖またはモノ−および/またはポリエーテル鎖によって互いに架橋され、次いで単環式または多環式構造を形成するアルキル基およびアリール基も当然のことながら可能である。例えば米国特許第3125555号に特定されているようなポリマーカチオンは、上記の置換パターンの意味の範囲内に含まれ得る。
【0027】
酸素に基づき、任意の置換を有する原子価nの有機カチオンKは、例えば、ベンゾピリリウム、フラビリウムナフトキサンテニウムのような縮合形態を含む、任意の置換を有するピリリウムを意味すると理解される。酸素に基づき、任意の置換を有する原子価nの好ましい有機カチオンKは、例えば、ベンゾピリリウム、フラビリウムのような縮合形態を含む、任意の置換を有するピリリウムである。ポリマーカチオンもまた、上記の置換パターンの意味内に含まれ得る。
【0028】
硫黄に基づき、任意の置換を有する原子価nの有機カチオンKは、同一または異なる置換されていてもよいC−〜C22−アルキル、C−〜C14−アリール、C−〜C15−アリールアルキルまたはC−〜C−シクロアルキル基を有し、および/またはオリゴマーまたはポリマーの繰り返し連結単位を形成して、1≦n≦3のスルホニウム塩を生じる、硫黄のオニウム化合物を意味すると理解される。1、または2個のスルホニウム(III)原子を含有する5から8員の脂肪族、準芳香族または芳香族環式化合物であって、任意のアルキルまたはアリール置換基で置換されて、三価の硫黄原子を確立することができるものも同様に包含される。硫黄に基づく原子価nの好ましい有機カチオンKは、同一または異なる置換されていてもよいC−〜C14−アルキル、C−〜C10−アリール、C−〜C12−アリールアルキルまたはC−〜C−シクロアルキル基を有し、および/またはオリゴマーまたはポリマーの繰り返し連結単位を形成して、1≦n≦3のスルホニウム塩、さらにはチオピリリウムを生じる、硫黄のオニウム化合物である。硫黄に基づく原子価nの特に好ましい有機カチオンKは、同一または異なる置換されていてもよいC−〜C12−アルキル、C−〜C10−アリール、C−〜C12−アリールアルキルまたはC−〜C−シクロアルキル基を有し、および/またはオリゴマーまたはポリマーの繰り返し連結単位を形成して、1≦n≦3のスルホニウム塩、さらにはチオピリリウムを生じる、硫黄のオニウム化合物である。ポリマーカチオンもまた、上記の置換パターンの意味内に含まれ得る。
【0029】
ヨウ素に基づき、任意の置換を有する原子価nの有機カチオンKは、同一または異なる置換されていてもよいC−〜C22−アルキル、C−〜C14−アリール、C−〜C15−アリールアルキルまたはC−〜C−シクロアルキル基を有し、および/またはオリゴマーまたはポリマーの繰り返し連結単位を形成して、1≦n≦3のヨードニウム塩を生じる、ヨウ素のオニウム化合物を意味すると理解される。ヨウ素に基づく原子価nの好ましい有機カチオンKは、同一または異なる置換されていてもよいC−〜C14−アルキル、C−〜C10−アリール、C−〜C12−アリールアルキルまたはC−〜C−シクロアルキル基を有し、および/またはオリゴマーまたはポリマーの繰り返し連結単位を形成して、1≦n≦3のヨードニウム塩を生じる、ヨウ素のオニウム化合物である。ヨウ素に基づく原子価nの特に好ましい有機カチオンKは、同一または異なる置換されていてもよいC−〜C12−アルキル、C−〜C10−アリール、C−〜C12−アリールアルキルまたはC−〜C−シクロアルキル基を有し、および/またはオリゴマーまたはポリマーの繰り返し連結単位を形成して、1≦n≦3のヨードニウム塩を生じる、ヨウ素のオニウム化合物である。ポリマーカチオンもまた、上記の置換パターンの意味内に含まれ得る。
【0030】
上記のカチオンの混合物を使用することがさらに可能である。
【0031】
非プロトン性有機溶媒または非プロトン性有機溶媒の混合物Sは、強塩基なしでは脱プロトン化されない溶媒を意味すると理解される(Reichardt,C.,Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry,3rd ed.; Wiley−VCH:Weinheim,(2003))。非プロトン性有機溶媒の例は、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼンおよび脂肪族および/または芳香族置換基を有する芳香族化合物、カルボン酸エステルおよび/またはエーテルである。好ましい非プロトン性有機溶媒は、アルカン、脂肪族および/または芳香族置換基を有する芳香族化合物および/またはエーテルである。使用されるものの例としては、ソルベントナフサ、トルエンもしくはキシレンなどの芳香族炭化水素、またはテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルもしくはジメトキシエタンなどのエーテルが挙げられる。溶媒は極めて実質的に無水であるべきである。好ましい実施形態では、第1の溶媒または溶媒混合物(工程i)は、この方法で使用される第2の溶媒または溶媒混合物(工程iv)とは異なる。好ましい実施形態において、同じ溶媒または溶媒混合物が工程(i)および工程(iv)において使用される。
【0032】
好ましくは、Mはマグネシウム、カルシウムまたはアルミニウムであり、より好ましくはMはマグネシウムである。
【0033】
好ましくは、Xはハロゲン化物またはアルコキシドであり、より好ましくはXはハロゲン化物であり、特に好ましくはXは塩化物または臭化物である。
【0034】
好ましくは、Yは臭素または塩素であり、より好ましくはYは臭素である。
【0035】
好ましくは、nは1または2であり、より好ましくはnは1である。
【0036】
本発明の文脈において、C〜C22−アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、ピナシル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−エイコシル、n−ドコシルである。同じことが、対応するアルキル基、例えばアラルキル/アルキルアリール、アルキルフェニルまたはアルキルカルボニル基にも当てはまる。
【0037】
置換されたアルキル基およびアルケニル基またはアルキニル基中のアルキレン基は、例えば、前述のアルキル基に対応するアルキレン基、アルケニル基またはアルキニル基である。
【0038】
例としては、2−クロロエチル、ベンジル、アリル、2−ブテン−1−イル、プロパルギルである。
【0039】
本発明の文脈において、シクロアルキルは、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチルまたは異性体メンチルである。
【0040】
アリールは、6〜14個の骨格炭素原子を有する炭素環式芳香族基である。同じことが、アラルキル基としても知られるアリールアルキル基の芳香族部分、およびより複雑な基のアリール構成成分、例えばアリールカルボニル基にも当てはまる。
【0041】
−〜C14−アリールの例は、フェニル、o−、p−、m−トリル、o−、p−、m−エチルフェニル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニル、o−、p−、m−フルオロフェニル、o−、p−、m−クロロフェニル、o−、p−、m−メトキシフェニル、o−、p−、m−トリフルオロメチルフェニル、o−、p−、m−トリフルオロメトキシフェニル、o−、m−またはp−ビフェニリル、o−、p−、m−フェノキシフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−メチル−3−フルオロフェニル、4−メチル−3−クロロフェニル、3,4,5−トリフルオロフェニルである。
【0042】
アリールアルキルおよびアラルキルは、それぞれ独立して、上で定義されたような直鎖、環状、分枝または非分枝のアルキル基であり、上で定義されたようなアリール基によって一置換、多置換または過置換されていてもよい。
【0043】
例としては、ベンジル、4−クロロベンジル、フェネチル、2−フェニル−1−プロピル、3−フェニル−1−プロピル、1−フェニル−2−プロピル、ジフェニルメチルである。
【0044】
アルキルで置換されていてもよく、および/または酸素原子が差し挟まれていてもよい2〜8員炭素架橋の例は、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH(CH)−である。
【0045】
アルキルまたはアリールで置換されていてもよく、および/または酸素原子が差し挟まれていてもよい4〜14員の炭素三環式化合物の例は以下の通りである:
【化2】
【0046】
反応は、一般に高圧を用いずに実施される。したがってその場合、実際に使用される圧力は、少なくとも自生圧力である。
【0047】
反応は一般に−20℃〜100℃、好ましくは−10℃〜80℃、より好ましくは0℃〜70℃、特に好ましくは10℃〜65℃の温度で行われる。
【0048】
実際には、総量の最大10%の化合物(III)を添加することによって反応を開始し、次いで化合物(III)を、溶媒S中10%〜90%、好ましくは15%〜75%、より好ましくは20%〜50%溶液として添加し、その間に温度Tが上記の範囲内で変化し、化合物(III)を均一に計量添加することによって反応を発熱制御下に保つことができる。反応の開始のために、ジブロモエタンまたはヨウ素などの当業者に公知の化合物を使用すること、または超音波によって金属表面Mを活性化することが、任意選択的にさらに可能である。
【0049】
例えば撹拌により、反応の全期間にわたって混合物を確実に良好に混合し、適切な溶媒を選択することにより反応の良好な開始を可能にすることが有利である。
【0050】
本発明による方法によって、公知の方法と比較して明らかに良好な収率、例えば少なくとも1.5倍高い収率が得られる。
【0051】
本発明は同様に、本発明による方法により調製可能な、または調製されたトリアリールオルガノボレートを提供する。このようにして得ることができる、または得られるトリアリールオルガノボレートは、好ましくは<10000ppmのテトラアリールボレート
【数8】
【0052】
より好ましくは<5000ppmのテトラアリールボレート
【数9】
【0053】
特に好ましくは<1000ppmのテトラアリールボレート
【数10】
【0054】
を含有する。単位ppmは重量部に基づく。長期保存の場合、テトラアリールボレート
【数11】
【0055】
の存在は、本発明によるトリアリールオルガノボレートを含む未露光フォトポリマーフィルムの書き込み性の限定または未露光フォトポリマーフィルムのホログラフィック特性の喪失をもたらす。
【0056】
本発明はさらに、光開始剤系における、本発明に従って調製されたトリアリールオルガノボレートの使用、ならびに本発明に従って調製されたトリアリールオルガノボレートを含む光重合性成分および光開始剤系を含むフォトポリマー組成物を提供する。さらに、ホログラフィック媒体およびそれから得られるホログラムは、記載のフォトポリマー組成物から得ることができる。
【0057】
対応するフォトポリマー配合物の適切なマトリックスポリマーは、特に架橋状態、より好ましくは三次元架橋状態にあり得る。
【0058】
マトリックスポリマーがポリウレタンであることも有利であり、この場合、ポリウレタンは、特に、少なくとも1種のポリイソシアネート成分a)と、少なくとも1種のイソシアネート反応性成分b)とを反応させることによって得ることができる。
【0059】
ポリイソシアネート成分a)は、好ましくは、少なくとも2個のNCO基を有する少なくとも1種の有機化合物を含む。これらの有機化合物は、特に、モノマー性ジ−およびトリイソシアネート、ポリイソシアネートおよび/またはNCO−官能性プレポリマーであり得る。ポリイソシアネート成分a)はまた、モノマー性ジ−およびトリイソシアネート、ポリイソシアネートおよび/またはNCO官能性プレポリマーの混合物を含有するか、またはそれらからなってよい。
【0060】
使用されるモノマー性ジ−およびトリイソシアネートは、当業者にそれ自体よく知られている化合物のいずれか、またはこれらの混合物であり得る。これらの化合物は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式の構造を有していてもよい。モノマー性ジ−およびトリイソシアネートはまた、モノイソシアネート、すなわち1つのNCO基を有する有機化合物を少量で含んでもよい。
【0061】
適切なプレポリマーは、ウレタンおよび/または尿素基を含み、および上記に特定されたNCO基の修飾を介して形成されるさらなる構造を含んでもよい。この種のプレポリマーは、例えば、上述のモノマー性ジ−およびトリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートa1)とイソシアネート反応性化合物b1)との反応によって得ることができる。
【0062】
使用されるイソシアネート反応性化合物b1)は、アルコールまたはアミノまたはメルカプト化合物、好ましくはアルコールであり得る。これらは特にポリオールであってもよい。最も好ましくは、使用されるイソシアネート反応性化合物b1)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールおよび/またはポリウレタンポリオールであってもよい。
【0063】
アミンをイソシアネート反応性化合物b1)として使用することも同様に可能である。適切なアミンの例は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、二官能性ポリアミン、例えばJeffamines(登録商標)、特に数平均モル質量≦10000g/molを有するアミン末端ポリマーである。前述のアミンの混合物も同様に使用することができる。
【0064】
イソシアネート反応性化合物b1)としてアミノアルコールを使用することも同様に可能である。適切なアミノアルコールの例は、異性体アミノエタノール、異性体アミノプロパノール、異性体アミノブタノールおよび異性体アミノヘキサノール、またはこれらの任意の所望の混合物である。
【0065】
上記のイソシアネート反応性化合物b1)はすべて、所望により互いに混合することができる。
【0066】
イソシアネート反応性化合物b1)が数平均モル質量≧200かつ≦10000g/mol、さらに好ましくは≧500かつ≦8000g/mol、最も好ましくは≧800かつ≦5000g/molを有することが好ましい。ポリオールのOH官能価は、好ましくは1.5〜6.0、より好ましくは1.8〜4.0である。
【0067】
ポリイソシアネート成分a)のプレポリマーは、特に、<1重量%、より好ましくは<0.5重量%、最も好ましくは<0.3重量%の遊離モノマー性ジ−およびトリイソシアネートの残留含量を有してよい。
【0068】
ポリイソシアネート成分a)が、NCO基がコーティング技術から公知のブロッキング剤と完全に、または部分的に反応した有機化合物を、完全にまたは部分的に含んでいてもよい。ブロッキング剤の例は、アルコール、ラクタム、オキシム、マロン酸エステル、ピラゾールおよびアミン、例えばブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、3,5−ジメチルピラゾール、ε−カプロラクタムまたはこれらの混合物である。
【0069】
ポリイソシアネート成分a)が脂肪族結合NCO基を有する化合物を含む場合、脂肪族結合NCO基は、第一級炭素原子に結合する基を意味すると理解されることが特に好ましい。イソシアネート反応性成分b)は、好ましくは、少なくとも1.5個、好ましくは2〜3個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも1種の有機化合物を含む。本発明の文脈において、イソシアネート反応性基は、好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基またはメルカプト基であるとみなされる。
【0070】
イソシアネート反応性成分は、特に、少なくとも1.5個、好ましくは2〜3個のイソシアネート反応性基の数平均を有する化合物を含むことができる。
【0071】
成分b)の適切な多官能性イソシアネート反応性化合物は、例えば、上記の化合物b1)である。
【0072】
さらに好ましい実施形態において、書き込みモノマーc)は、少なくとも1種の単官能性および/または1種の多官能性の書き込みモノマーを含むか、またはこれらからなる。さらに好ましくは、書き込みモノマーは、少なくとも1種の単官能性および/または1種の多官能性の(メタ)アクリレート書き込みモノマーを含むか、またはこれらからなり得る。最も好ましくは、書き込みモノマーは、少なくとも1種の単官能性および/または1種の多官能性のウレタン(メタ)アクリレートを含むか、またはこれらからなり得る。
【0073】
成分d)の光開始剤は、典型的には、書き込みモノマーの重合を引き起こすことができる化学線により活性化可能な化合物である。光開始剤は、単分子(I型)開始剤と二分子(II型)開始剤とに区別することができる。加えて、それらはフリーラジカル、アニオン性、カチオン性または混合型の重合のための、光開始剤としてのそれらの化学的性質によって区別される。
【0074】
フリーラジカル光重合のためのI型光開始剤(I型Norrish)は、単分子結合の切断を介した照射によりフリーラジカルを形成する。I型光開始剤の例は、トリアジン、オキシム、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、ビスイミダゾール、アロイルホスフィンオキシド、スルホニウム塩およびヨードニウム塩である。
【0075】
フリーラジカル重合のためのII型光開始剤(II型Norrish)は、増感剤としての色素と共開始剤とからなり、色素に適合する光の照射で二分子反応を行う。色素は最初に光子を吸収し、励起状態から共開始剤にエネルギーを伝達する。後者は、電子またはプロトン移動または直接的な水素引き抜きを介して重合を誘発するフリーラジカルを放出する。
【0076】
本発明の文脈において、II型光開始剤の使用が好ましい。
【0077】
この種の光開始剤系は原則として欧州特許出願第0223587号に記載されており、好ましくは1または複数の色素と式(IV)の本発明の化合物との混合物からなる。
【0078】
式(IV)の化合物と一緒に、II型光開始剤を形成する適切な色素は、国際公開第2012062655号に記載されているカチオン性色素であり、同様にそこに記載されているアニオンと組み合わされる。
【0079】
本発明によるトリアリールアルキルボレートは、共開始剤として有利に使用される。
【0080】
光開始剤系は、さらなる共開始剤、例えばトリクロロメチル開始剤、アリールオキシド開始剤、ビスイミダゾール開始剤、フェロセン開始剤、アミノアルキル開始剤、オキシム開始剤、チオール開始剤または過酸化物開始剤を含有してもよい。
【0081】
さらに好ましい実施形態において、フォトポリマー配合物は、添加剤としてウレタンをさらに含有し、この場合ウレタンは特に少なくとも1個のフッ素原子で置換されていてもよい。
【0082】
本発明はさらに、特にマトリックスポリマー、書き込みモノマーおよび本発明による方法によって得ることができる、または得られる化合物を含む光開始剤系を含むフォトポリマー配合物を含むフォトポリマーを提供する。
【0083】
ホログラフィック媒体も同様に入手可能になり、特に本発明によるフォトポリマーを含むフィルムの形態で、または本発明によるフォトポリマー配合物を使用することによって入手可能となる。フォトポリマー組成物は、ホログラフィック媒体の製造にも使用可能である。
【0084】
ホログラフィック情報をそのようなホログラフィック媒体に露光することが可能である。
【0085】
本発明によるホログラフィック媒体は、可視および近UV範囲(300〜800nm)全体にわたる光学用途のための対応する露光プロセスによって処理して、ホログラムを得ることができる。視覚的ホログラムは、当業者に公知の方法によって記録することができるすべてのホログラムを含む。これらは、インライン(Gabor)ホログラム、軸外ホログラム、フルアパーチャートランスファー(full−aperture transfer)ホログラム、白色光透過ホログラム(「レインボーホログラム」)、Denisyukホログラム、軸外反射ホログラム、エッジリットホログラムおよびホログラフィックステレオグラムを含む。反射ホログラム、Denisyukホログラム、透過ホログラムが好ましい。
【0086】
本発明によるフォトポリマー配合物を用いて製造することができるホログラムの可能な光学機能は、レンズ、ミラー、偏向ミラー、フィルタ、拡散器レンズ、回折素子、拡散器、光ガイド、導波路、投影レンズおよび/またはマスクなどの光素子の光学機能に対応する。同様に、これらの光学機能の組み合わせを、互いに独立して1つのホログラムに組み合わせることも可能である。これらの光学素子は、ホログラムがどのように露光されたか、およびホログラムの寸法に応じて周波数選択性を示すことが多い。
【0087】
さらに、ホログラフィック媒体を用いて、ホログラフィック画像またはダイアグラム、例えば個人的な肖像画、機密文書のバイオメトリック表現、または、全般的に、広告、セキュリティラベル、ブランド保護、ブランディング、ラベル、デザイン要素、装飾品、イラスト、コレクション用カード、絵などの画像または画像構造を生成することも可能であり、さらに上記に詳述した製品との組み合わせを含むデジタルデータを表すことができる絵を生成することも可能である。ホログラフィック画像は、3次元画像の印象を有することができ、または照らされる角度および光源(移動する光源を含む)などに応じて、連続画像、ショートフィルムまたは多数の異なるオブジェクトを表すこともできる。このさまざまな可能な設計のために、ホログラム、特に体積ホログラムは、上述の用途のための魅力的な技術的解決策を構成する。
【0088】
ホログラフィック媒体は、インライン、軸外、フルアパーチャートランスファー、白色光透過、Denisyuk、軸外反射、またはエッジリットホログラムの記録のために使用することができ、さらに、光学素子、画像または画像表現の生成のためのホログラフィックステレオグラムの記録のために使用することができる。
【0089】
ホログラムは、本発明によるホログラフィック媒体から得ることができる。
【0090】
以下の実施例は本発明の例示に役立つが、それに限定するものではない。
【0091】
[実施例]
試験方法:
OH価:報告のOH価は、DIN 53240−2に従って決定した。
【0092】
NCO値:報告のNCO値(イソシアネート含有量)は、DIN EN ISO 11909に従って決定した。
【0093】
固形分含有量:報告の固形分は、DIN EN ISO 3251に従って測定した。
【0094】
屈折率変調Δn:ホログラフィック媒体のホログラフィック特性Δnは、国際公開第2015091427号に記載の、反射配置におけるツインビーム干渉によって決定しており、代表的な結果を図1に示す。
【0095】
物質:
使用した溶媒、試薬およびすべてのブロモ芳香族化合物は化学品供給業者から購入した。無水溶媒は、<50ppmの水を含有する。
【0096】
エチルボロン酸ピナコールエステル[82954−89−0]は、TCI Europe N.V.、Zwijndrecht、Belgiumから入手可能である。
【0097】
イソプロピルボロン酸ピナコールエステル[76347−13−2]は、ABCR GmbH&Co.KG、Karlsruhe Germanyから入手可能である。
【0098】
2−イソプロペニルボロン酸ピナコールエステル[126726−62−3]は、ABCR GmbH&Co.KG、Karlsruhe Germanyから入手可能である。
【0099】
1−ドデシルボロン酸ピナコールエステル[177035−82−4]は、ABCR GmbH&Co.KG、Karlsruhe Germanyから入手可能である。
【0100】
3−フェニル−1−プロピルボロン酸ピナコールエステル[329685−40−7]は、ABCR GmbH&Co.KG、Karlsruhe Germanyから入手可能である。
【0101】
ジイソプロピルアリルボロネート[51851−79−7]はABCR GmbH&Co.KG、Karlsruhe Germanyから入手可能である。
【0102】
(1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)シクロヘキサン[30169−75−6]は、ABCR GmbH&Co.KG、Karlsruhe Germanyから入手可能である。
【0103】
ジブロモボラン−ジメチルスルフィド錯体[55671−55−1]は、Aldrich Chemie、Steinheim、Germanyから入手可能である。
【0104】
1−オクタデセン[112−41−4]は、ABCR GmbH&Co.KG、Karlsruhe Germanyから入手可能である。
【0105】
Desmorapid Z ジブチルスズジラウレート[77−58−7]、Covestro AG、Leverkusen、Germanyの製品。
【0106】
Desmodur(登録商標)N 3900 Covestro AG、Leverkusen、DEの製品、ヘキサンジイソシアネートベースのポリイソシアネート、イミノオキサジアジンジオンの割合は少なくとも30%、NCO含有量:23.5%。
【0107】
Fomrez UL 28 ウレタン化触媒、Momentive Performance Chemicals、Wilton、CT、USAの市販製品。
【0108】
2−ヘキシル−1,3,2−ジオキサボリナン[86290−24−6]は、1−ヘキセン、プロパン−1,3−ジオールおよびジブロモボラン−ジメチルスルフィド錯体から、Organometallics 1983年、2(10)、p.1311−16、DOI:10.1021/om50004a008に記載されているように調製した。
【0109】
2−オクタデシル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランは、1−オクタデセン、プロパン−1,3−ジオールおよびジブロモボラン−ジメチルスルフィド錯体からOrganometallics 1983年、2(10)、p.1311−16、DOI:10.1021/om50004a008と同様に調製した。
【0110】
色素1(3,7−ビス(ジエチルアミノ)フェノキサジン−5−イウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート)は、国際公開第2012062655号に記載されているように調製した。
【0111】
ポリオール1は、国際公開第2015091427号のポリオール1に記載されているように調製した。
【0112】
ウレタンアクリレート1(ホスホロチオイルトリス(オキシベンゼン−4,1−ジイルカルバモイルオキシエタン−2,1−ジイル)トリアクリレート、[1072454−85−3])は国際公開第2015091427号に記載されているように調製した。
【0113】
ウレタンアクリレート2(2−({[3−(メチルスルファニル)フェニル]カルバモイル}オキシ)エチルプロパ−2−エノエート、[1207339−61−4])は、国際公開第2015091427号に記載されているように調製した。
【0114】
添加剤1、ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル)−(2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイル)ビスカルバメート[1799437−41−4]は、国際公開第2015091427号に記載されているように調製した。
【0115】
使用した1/n Kn+カチオンの由来:
表1に明記されている1/n Kn+カチオンは、記述した化学品供給業者から購入したか、または記述した出典に従って調製したか、または調製を以下に記載している。
【0116】
【0117】
市販されていないカチオン 1/n Kn+の調製:
N−(2−((2−エチルヘキサノイル)オキシ)エチル)−N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウムブロミド(K−20)
5.00gのN,N−ジメチルエタノールアミンを最初氷浴で冷却した乾燥クロロホルム中に装入し、9.12gの2−エチルヘキサノイルクロリドを注意深く滴加して、混合物を室温で30分間撹拌した。30mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、有機溶液を、それが塩化物を含まなくなるまで飽和炭酸水素ナトリウム溶液で抽出した。その後、有機相を30mlの水で洗浄し、溶液を乾燥させて、溶媒を減圧留去した。10.99gのアミノエステルが得られた。
【0118】
30mlのアセトニトリル中10.99gのアミノエステル溶液に15.58gの1−ブロモヘキサデカンを加えて、混合物を6時間加熱還流した。溶媒を減圧下でほぼ完全に留去し、沈殿した固体を単離し、無色の粘着性樹脂19.33gを得た。
【0119】
N−ベンジル−N,N−ジメチル−2−(2−(パルミトイルオキシ)エトキシ)エタン−1−アミニウムブロミド(K−21)
6.00gのN,N−2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシエタノールを最初氷浴で冷却した乾燥クロロホルム中に装入し、12.38gのヘキサデカノイルクロリドを注意深く滴加して、混合物を室温で30分間撹拌した。30mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、有機溶液を、それが塩化物を含まなくなるまで飽和炭酸水素ナトリウム溶液で抽出した。その後、有機相を30mlの水で洗浄し、溶液を乾燥させて、溶媒を減圧留去した。14.68gのアミノエステルが得られた。
【0120】
30mlのアセトニトリル中14.68gのアミノエステル溶液に6.77gの臭化ベンジルを加え、混合物を6時間加熱還流した。溶媒を減圧下でほぼ完全に留去し、沈殿した固体を単離し、無色の粘着性樹脂8.23gを得た。
【0121】
2−(ベンゾイルオキシ)−N,N−ジメチル−N−(2−(パルミトイルオキシ)エチル)エタン−1−アミニウムブロミド(K−22)
6.00gのN,N−2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシエタノールを最初氷浴で冷却した乾燥クロロホルム中に装入し、12.38gのヘキサデカノイルクロリドを注意深く滴加して、混合物を室温で30分間撹拌した。30mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、有機溶液を、それが塩化物を含まなくなるまで飽和炭酸水素ナトリウム溶液で抽出した。その後、有機相を30mlの水で洗浄し、溶液を乾燥させて、溶媒を減圧留去した。14.68gのアミノエステルが得られた。
【0122】
30mlのアセトニトリル中14.68gのアミノエステル溶液に6.77gの臭化ベンジルを加え、混合物を6時間加熱還流した。溶媒を減圧下でほぼ完全に留去し、沈殿した固体を単離し、無色の粘着性樹脂8.23gを得た。
【0123】
N−(3−((2−エチルヘキシル)オキシ)−3−オキソプロピル)−N,N−ジメチルオクタデカン−1−アミニウムブロミド(K−23)
30mlのアセトニトリル中10.0gのN,N−ジメチル−β−アラニン2−エチルヘキシルエステル([184244−48−2]、米国特許第5565290号に記載されているように調製した)の溶液に15.0gの臭化オクタデシルを加え、混合物を6時間加熱還流した。溶媒を減圧下でほぼ完全に留去し、無色の油状物24.50gを得た。
【0124】
N−(2−((ヘキシルカルバモイル)オキシ)エチル)−N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウムブロミド(K−24)
29.4gのヘキシルイソシアネートと0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、60℃で20.6gのN,N−ジメチルエタノールを滴加し、混合物をこの温度で8時間維持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0125】
50.0gのアミノウレタンを120mlのアセトニトリルに溶解し、70.6gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂115.0gを得た。
【0126】
,N16−ジヘキサデシル−N,N,N16,N16,7,7,10−ヘプタメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジアミニウムジブロミド(K−25)
27.0gのVestanat TMDI(EVONIK Deutschland製)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、60℃で22.9gのN,N−ジメチルエタノールを滴加し、混合物をこの温度で8時間保持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0127】
11.7gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、18.3gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂28.0gを得た。
【0128】
N−(2−((((5−(((2−(ヘキサデシルジメチルアンモニオ)エトキシ)カルボニル)アミノ)−1,3,3−トリメチルシクロヘキシル)メチル)カルバモイル)オキシ)エチル)−N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウムジブロミド(K−26)
27.7gのDesmodur I(COVESTRO Deutschlandの製品)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、60℃で22.2gのN,N−ジメチルエタノールを滴加し、混合物をこの温度で8時間維持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0129】
11.9 gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、18.1 gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂29.3gを得た。
【0130】
N,N’−(((((メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル))ビス(アザンジイル))ビス(カルボニル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウム)ジブロミド(K−27)
29.7gのDesmodur W(COVESTRO Deutschlandの製品)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、60℃で20.2gのN,N−ジメチルエタノールを滴加し、混合物をこの温度で8時間維持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0131】
12.6gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、17.4gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂28.9gを得た。
【0132】
N,N’−(((((4−メチル−1,3−フェニレン)ビス(アザンジイル))ビス(カルボニル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウム)ジブロミド(K−28)
24.7gのDesmodur T80(COVESTRO Deutschlandの製品)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、10℃で25.3gのN,N−ジメチルエタノールを滴加し、添加完了後、混合物を60℃で8時間維持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0133】
11.0gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、19.0gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂27.2gを得た。
【0134】
N,N’−(((((メチレンビス(4,1−フェニレン))ビス(アザンジイル))ビス(カルボニル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(N,N)−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウム)ジブロミド(K−29)
29.2gのDesmodur MDI(COVESTRO Deutschlandの製品)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、10℃で20.8gのN,N−ジメチルエタノールを滴加し、添加完了後、混合物を60℃で8時間維持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0135】
12.4gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、17.6gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂29.2gを得た。
【0136】
N−(2−(2−((ヘキシルカルバモイル)オキシ)エトキシ)エチル)−N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウムブロミド(K−30)
29.4gのヘキシルイソシアネートと0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、60℃で25.6gの2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールを滴加し、混合物をこの温度で8時間維持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0137】
13.8gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、16.2gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、融点220〜225℃の無色の固体25.0gを得た。
【0138】
,N22−ジヘキサデシル−N,N,N22,N22,10,10,13−ヘプタメチル−7,16−ジオキソ−3,6,17,20−テトラオキサ−8,15−ジアザドコサン−1,22−ジアミニウムジブロミド(K−31)
23.0gのVestanat TMDI(EVONIK Deutschlandの製品)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、60℃で27.9gの2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールを滴加し、混合物をこの温度で8時間維持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0139】
13.1gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、16.9gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂27.5gを得た。
【0140】
N−(2−(2−(((3−(10,10−ジメチル−3−オキソ−4,7−ジオキサ−2,10−ジアザヘキサコサン−10−イウム−1−イル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)カルバモイル)オキシ)エトキシ)エチル)−N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウムジブロミド(K−32)
22.7gのDesmodur I(COVESTRO Deutschlandの製品)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、60℃で27.2gの2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールを滴加し、混合物をこの温度で8時間維持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0141】
13.3gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、16.7gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂29.3gを得た。
【0142】
N,N’−(((((((メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル))ビス(アザンジイル))ビス(カルボニル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウム)ジブロミド(K−33)
24.8gのDesmodur W(COVESTRO Deutschlandの製品)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、60℃で25.2gの2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールを滴加し、混合物をこの温度で8時間維持した。室温に冷却した後、50.0gのアミノウレタンを得た。
【0143】
13.9gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、16.1gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂25.9gを得た。
【0144】
N,N’−(((((((4−メチル−1,3−フェニレン)ビス(アザンジイル))ビス−(カルボニル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウム)ジブロミド(K−34)
9.90gのDesmodur T80(COVESTRO Deutschlandの製品)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、10℃で、15.1gの2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールを滴加し、添加完了後、混合物を60℃に8時間維持した。室温に冷却した後、25.0gのアミノウレタンを得た。
【0145】
12.6gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、17.4gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂23.1gを得た。
【0146】
N,N’−(((((((メチレンビス(4,1−フェニレン))ビス(アザンジイル))ビス(カルボニル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(オキシ)ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(N,N−ジメチルヘキサデカン−1−アミニウム)ジブロミド(K−35)
12.1gのDesmodur MDI(COVESTRO Deutschlandの製品)と0.05gのDesmorapid Zとの混合物に、10℃で12.9gの2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールを滴加し、添加完了後、混合物を60℃で8時間保った。室温に冷却した後、25.0gのアミノウレタンを得た。
【0147】
13.8gのアミノウレタンを50mlのアセトニトリルに溶解し、16.2gの1−ブロモヘキサデカンを滴加して、混合物を12時間加熱還流した。沈殿した固体を単離し、冷エーテルで洗浄し、乾燥させて、無色の粘着性樹脂29.4gを得た。
【0148】
[実施例]
特に断りのない限り、すべてのパーセント数値は重量パーセントに基づく。
【0149】
原子価n=1のカチオンを有するトリアリールオルガノボレートの調製方法a)
10.0mmolの特定のボロン酸エステル(I;R)、30.0mmolのマグネシウム削り屑および10.0mmolの塩(II)を、メカニカルスターラー、温度計、金属冷却器および均圧滴下ロートを備えた乾燥四つ口フラスコ中で、窒素雰囲気下において3.40gの無水トルエンおよび0.73gの無水テトラヒドロフランの混合物中に懸濁させ、30分間激しく撹拌した。適切なハロ芳香族(III、R)を、最初は希釈されていない形で反応の開始シグナルである発熱が生じるまでこの溶液に添加した。残りの全量の30.6ミリモルのハロ芳香族を10.0gの無水トルエンおよび10.0gの無水テトラヒドロフランで希釈し、内部温度が45℃を越えないような速度で滴加した。添加完了後、反応混合物を1時間またはマグネシウムの溶解が完了するまで加熱還流した。得られた懸濁液を50gの氷水上に排出し、得られた固体を単離し、冷水で洗浄して、減圧下で乾燥した。実施例15、18、20および27および46〜52を100mlの酢酸エチルで水相から抽出し、溶媒を減圧下で留去して、得られた油状物を単離した。この方法により調製した実施例1の単離収量は2.87g(理論値の72%)であったが、独国特許第19850139号に従って調製した実施例1は理論値の47%の収率で得られた。
【0150】
実施例1〜76の組成および選択された物理的性質を表2に要約する。
【表2】
【0151】
原子価n=2のカチオンを有するトリアリールオルガノボレートの調製方法b)
10.0mmolの特定のボロン酸エステル(I;R)、30.0mmolのマグネシウム削り屑および5.0mmolの塩(II)を、メカニカルスターラー、温度計、金属冷却器および均圧滴下ロートを備えた乾燥四つ口フラスコ中で、窒素雰囲気下において3.40gの無水トルエンおよび0.73gの無水テトラヒドロフランの混合物中に懸濁させ、30分間激しく撹拌する。適切なハロ芳香族(III、R)を、最初は希釈されていない形で反応の開始シグナルである発熱が生じるまでこの溶液に添加する。残りの全量の30.6ミリモルのハロ芳香族を10.0gの無水トルエンおよび10.0gの無水テトラヒドロフランで希釈し、内部温度が45℃を越えないような速度で滴加する。添加完了後、反応混合物を1時間またはマグネシウムの溶解が完了するまで加熱還流する。得られた懸濁液を50gの氷水上に排出し、得られた固体を単離し、冷水で洗浄して、減圧下で乾燥させる。
【0152】
実施例77〜91の組成および選択された物理的性質を表3に要約する。
【表3】
【0153】
実施例92(原子価n=3のカチオン):
1.70gの2−ヘキシル−1,3,2−ジオキサボリナン(10.0mmol;I;R=n−ヘキシル)、0.73g(30.0mmol)のマグネシウム削り屑および2.25gのN,N,N,N,N,N,N,N,N−ノナメチル−1,3,5−ベンゼントリメタンアミニウムトリヨージド(3.33mmol;K−36;II)を、メカニカルスターラー、温度計、金属冷却器および均圧滴下ロートを有する乾燥四つ口フラスコ中で、窒素雰囲気下において3.40gの無水トルエンおよび0.73gの無水テトラヒドロフランの混合物中に懸濁させ、30分間激しく撹拌した。1−ブロモ−3−クロロ−4−メチルベンゼン(III、R)を、最初は希釈されていない形で反応の開始シグナルである発熱が生じるまでこの溶液に添加した。残りの全量の6.29g(30.6ミリモル)の1−ブロモ−3−クロロ−4−メチルベンゼンを、10.0gの無水トルエンおよび10.0gの無水テトラヒドロフランで希釈し、内部温度が45℃を越えないような速度で滴加した。添加完了後、反応混合物を1時間またはマグネシウムの溶解が完了するまで加熱還流する。得られた懸濁液を50gの氷水上に排出し、得られた固体を単離し、冷水で洗浄して、減圧下で乾燥させる。
【0154】
11B NMR[δ/ppm]−10.6。
【0155】
ホログラフィック特性を決定するための媒体の製造
実施例媒体I
3.38gのポリオール成分1を0.010gの実施例1、2.00gのウレタンアクリレート1、2.00gのウレタンアクリレート2、1.50gの添加剤1、0.10gの式(IV)のトリアリールオルガノボレート1、0.010gの色素1および0.35gのN−エチルピロリドンと、60℃で透明な溶液が得られるまで混合した。続いて、混合物を30℃に冷却し、0.65gのDesmodur(登録商標)N3900を添加し、混合物を再び混合した。最後に、0.01gのFomrez UL 28を添加し、混合物を再び短時間混合した。次いで、得られた流動塊をガラス板に塗布し、その上に第二のガラス板を被せた。この試験片を室温で12時間放置して硬化させた。
【0156】
実施例媒体II〜XX
その手順は、0.10gのトリアリールオルガノボレート1の代わりに0.10gの特定の式(IV)のトリアリールオルガノボレートを使用することを除いて、実施例媒体Iと同じであった。実施例媒体I〜XXのホログラフィック特性を表4に要約する。
【表4】
【0157】
実施例媒体I〜XXについて見出された値は、フォトポリマー配合物に使用された式(IV)の化合物がホログラフィック媒体に使用するのに非常に適していることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0158】
図1図1は、代表的な結果を示す。
図1