特許第6977035号(P6977035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6977035香味発生セグメント、ならびにこれを備える香味発生物品および香味吸引システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977035
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】香味発生セグメント、ならびにこれを備える香味発生物品および香味吸引システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/20 20200101AFI20211125BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20211125BHJP
【FI】
   A24F40/20
   A24D1/20
【請求項の数】26
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-525713(P2019-525713)
(86)(22)【出願日】2018年6月22日
(86)【国際出願番号】JP2018023886
(87)【国際公開番号】WO2018235956
(87)【国際公開日】20181227
【審査請求日】2020年5月15日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/023072
(32)【優先日】2017年6月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸也
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/079596(WO,A1)
【文献】 特表2015−517817(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0223515(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/156495(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A24F 40/20
A24D 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の香味発生シートを備える香味発生セグメントであって、
前記複数の香味発生シートは、長手方向に延在し、かつ当該長手方向軸を中心として同心状に配置されており、
少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に、当該香味発生シート同士が接触しない非接触部を有する、
香味発生セグメント。
【請求項2】
少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に、当該香味発生シート同士が接触している接触部をさらに有する、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項3】
前記接触部を2つ以上有し、前記非接触部が当該接触部の間に形成されている、請求項2に記載の香味発生セグメント。
【請求項4】
隣接する2つの香味発生シートの層間距離の最大値が、前記隣接する2つの香味発生シートのうちの少なくとも一方の香味発生シート厚みの最大値よりも大きい、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項5】
前記配置の中心である長手方向軸と、最内層の香味発生シートとの間に、当該長手方向に延在する空間を有する、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項6】
前記配置の中心である長手方向軸と最内層の香味発生シートとの間に、当該長手方向に延在する伝熱シートをさらに含み、当該伝熱シートが前記香味発生シートと同心状に配置されている、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項7】
前記複数の香味発生シートのうち少なくとも1枚は、少なくとも一方の面の一部または全部に表面加工が施されている、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項8】
前記表面加工が捲縮加工である、請求項7に記載の香味発生セグメント。
【請求項9】
最外層の香味発生シートの周長さが、最内層の香味発生シートの周長さよりも長い、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項10】
前記香味発生シートは周方向において連続しており、周方向における両端が近接しているか接触している、あるいは一方の端が他方の端を超えて配置されている、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項11】
前記各香味発生シートは、1つの香味発生シートが重なり合うオーバーラップ部を持たない、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項12】
前記各香味発生シートの周方向における両端が離間している、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項13】
周方向において、前記各香味発生シートの離間部が略等しい位置に存在する、請求項12に記載の香味発生セグメント。
【請求項14】
前記香味発生シートの復元力によって形状が維持される、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項15】
最内層の香味発生シートの復元力が、それ以外の香味発生シートの復元力よりも大きい、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項16】
最内層の香味発生シートは表面加工されていない請求項1または15に記載の香味発生セグメント。
【請求項17】
最内層の香味発生シートは、周方向において、一方の端が他方の端または当該他方の端を超える領域と接着されていない、請求項1、15、または16に記載の香味発生セグメント。
【請求項18】
最外層の香味発生シートの外側にラッパーを備える、請求項1に記載の香味発生セグメント。
【請求項19】
請求項1に記載の香味発生セグメントおよびフィルタを備え、当該フィルタ側から吸引可能な香味発生物品。
【請求項20】
請求項1に記載の香味発生セグメントと、当該香味発生セグメントを加熱するヒーターとを備える、香味吸引システム。
【請求項21】
前記香味発生セグメントが、前記配置の中心である長手方向軸と最内層の香味発生シートとの間に、当該長手方向に延在する空間を有し、前記ヒーターの少なくとも一部が当該空間内に位置づけることが可能な形状を具備している、請求項20に記載の香味吸引システム。
【請求項22】
前記ヒーターが、平板状または円筒状ヒーターである、請求項21に記載の香味吸引システム。
【請求項23】
前記香味発生セグメントの長手方向の端方向から見た断面において、最内層の香味発生シートから前記配置の中心である長手方向軸側にわたって存在する空隙の面積が、最内層の香味発生シートから外周側にわたって存在する非接触部の面積よりも小さい、請求項21に記載の香味吸引システム。
【請求項24】
前記ヒーターがシート状ヒーターであり、前記香味発生シートと同心状に配置されている、請求項20に記載の香味吸引システム。
【請求項25】
前記香味発生セグメントが、長手方向に延在する伝熱シートであって前記香味発生シートと同心状に配置されている伝熱シートを有する、請求項20に記載の香味吸引システム。
【請求項26】
前記伝熱シートと前記ヒーターが隣接している、請求項25に記載の香味吸引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味発生セグメント、ならびにこれを備える香味発生物品および香味吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来たばこの代替として非燃焼型香味吸引システムの開発が進められている。例えば特許文献1には、捲縮加工およびギャザー加工が施されたたばこセグメント、およびこれを備える非燃焼型エアロゾル吸引システムが開示されている。係るたばこセグメントにおいては当該シートが中実に充填されている。また特許文献2には喫煙可能材料等を積層してなるロッドを備える非燃焼型エアロゾル吸引システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014−515274号公報
【特許文献2】国際公開第2016/156510号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非燃焼型香味吸引システムにおいてはより良好な香喫味を得ることが求められているが、特許文献1および2に記載の技術には未だ改善の余地がある。かかる事情を鑑み、本発明は、良好な香喫味を与える香味発生セグメント、これを備える香味発生物品および香味吸引システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは特定の構造を有する香味発生セグメントが前記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]複数の香味発生シートを備える香味発生セグメントであって、
前記複数の香味発生シートは、長手方向に延在し、かつ当該長手方向軸を中心として同心状に配置されており、
少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に、当該香味発生シート同士が接触しない非接触部を有する、香味発生セグメント。
[2]少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に、当該香味発生シート同士が接触している接触部をさらに有する、[1]に記載の香味発生セグメント。
[3]前記接触部を2つ以上有し、前記非接触部が当該接触部の間に形成されている、[2]に記載の香味発生セグメント。
[4]隣接する2つの香味発生シートの層間距離の最大値が、前記隣接する2つの香味発生シートのうちの少なくとも一方の香味発生シート厚みの最大値よりも大きい、[1]〜「3」のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[5]前記配置の中心である長手方向軸と、最内層の香味発生シートとの間に、当該長手方向に延在する空間を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[6]前記配置の中心である長手方向軸と最内層の香味発生シートとの間に、当該長手方向に延在する伝熱シートをさらに含み、当該伝熱シートが前記香味発生シートと同心状に配置されている、[1]〜[5]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[7]前記複数の香味発生シートのうち少なくとも1枚は、少なくとも一方の面の一部または全部に表面加工が施されている、[1]〜[6]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[8]前記表面加工が捲縮加工である、[7]に記載の香味発生セグメント。
[9]最外層の香味発生シートの周長さが、最内層の香味発生シートの周長さよりも長い、[1]〜[8]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[10]前記香味発生シートは周方向において連続しており、周方向における両端が近接しているか接触している、あるいは一方の端が他方の端を超えて配置されている、[1]〜[9]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[11]前記各香味発生シートは、1つの香味発生シートが重なり合うオーバーラップ部を持たない、[1]〜[10]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[12]前記各香味発生シートの周方向における両端が離間している、[1]〜[11]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[13]周方向において、前記各香味発生シートの離間部が略等しい位置に存在する、[12]に記載の香味発生セグメント。
[14]前記香味発生シートの復元力によって形状が維持される、[1]〜[13]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[15]最内層の香味発生シートの復元力が、それ以外の香味発生シートの復元力よりも大きい、[1]〜[14]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[16]最内層の香味発生シートは表面加工されていない[1]〜[15]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[17]最内層の香味発生シートは、周方向において、一方の端が他方の端または当該他方の端を超える領域と接着されていない、[1]〜[11]、[13]〜[16]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[18]最外層の香味発生シートの外側にラッパーを備える、[1]〜[17]のいずれかに記載の香味発生セグメント。
[19]前記[1]〜[18]のいずれかに記載の香味発生セグメントおよびフィルタを備え、当該フィルタ側から吸引可能な香味発生物品。
[20]前記[1]〜[18]のいずれかに記載の香味発生セグメントと、当該香味発生セグメントを加熱するヒーターとを備える、香味吸引システム。
[21]前記香味発生セグメントが、前記配置の中心である長手方向軸と最内層の香味発生シートとの間に、当該長手方向に延在する空間を有し、前記ヒーターの少なくとも一部が当該空間内に位置づけることが可能な形状を具備している、[20]に記載の香味吸引システム。
[22]前記ヒーターが、平板状または円筒状ヒーターである、[21]に記載の香味吸引システム。
[23]前記香味発生セグメントの長手方向の端面方向から見た断面において、最内層の香味発生シートから前記配置の中心である長手方向軸側にわたって存在する空隙の面積が、最内層の香味発生シートから外周側にわたって存在する非接触部の面積よりも小さい、[21]に記載の香味吸引システム。
[24]前記ヒーターがシート状ヒーターであり、前記香味発生シートと同心状に配置されている、[20]〜[23]のいずれかに記載の香味吸引システム。
[25]前記香味発生セグメントが、長手方向に延在する伝熱シートであって前記香味発生シートと同心状に配置されている伝熱シートを有する、[20]〜[24]のいずれかに記載の香味吸引システム。
[26]前記伝熱シートと前記ヒーターが隣接している、[25]に記載の香味吸引システム。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の香味吸引システムの一態様を示す図
図2A】本発明の香味発生セグメントの概要を示す図
図2B】本発明の香味発生セグメントの一部の概要を示す図
図2C】香味発生シートの配置の一態様を示す図
図3】本発明の香味発生物品の概要を示す図
図4】ヒーターの配置を示す図
図5】SOUTとSinの概要を示す図
図6】本発明の香味発生セグメントの製造方法の概要を示す図
図7】香味発生シートの配置の一態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、香味発生セグメントとは香味を発生するための基材である。香味発生物品とは少なくとも香味発生セグメントを含み、香味を発生可能な物品あるいは香味を吸引可能な物品である。香味発生物品は香味発生セグメントを含むが、香味発生セグメント自体が香味発生物品であってもよい。香味吸引システムとは香味発生物品と、ヒータを備えた加熱ユニットとの組合せをいう。
【0008】
1.香味発生セグメント
本発明の香味発生セグメントは同心状に配置された複数の香味発生シートを備える。本発明においてシートとは、略平行な1対の主面、および側面を有する形状をいう。シートは抄紙によって製造されることが好ましい。香味発生セグメントは喫煙可能な香味発生物品を構成する。本発明において香味発生セグメントの長手方向とは、香味発生シートを巻き回す方向と直交する方向である。具体的には、図2Aにおけるh、図6におけるLの方向が長手方向である。また、香味発生物品がロッド状であることが好ましいため、係る香味発生物品における長手方向を香味発生セグメントの長手方向と同一とみなしてもよい。本発明の香味発生セグメントの一態様を図2Aに示す。図2Aにおいて、10は香味発生シート、12は配置の中心となる長手方向軸、14は空間、16は伝熱シート、18は離間部である。本発明の香味発生セグメントの形状は限定されないが、柱状であることが好ましい。本発明の香味発生セグメント1は、以下のように定義されるアスペクト比が1以上である形状を満たす柱状形状を有していることが好ましい。
アスペクト比=h/w
wは柱状体の底面の幅、hは高さであり、h≧wであることが好ましい。しかし、本発明においては、上述した通り、長手方向はhで示された方向であると規定している。したがって、w≧hである場合においてもhで示された方向を便宜上長手方向と呼ぶ。底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅wは当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。例えば、図2Aに示す態様においては、底面が円であるのでその直径を認定できる。当該直径が幅w、これに直交する長さが高さhとなる。香味発生セグメント1の高さhは5〜20mm程度、幅wは4〜9mm程度であることが好ましい。図示されていないが、香味発生セグメント1は最外部にラッパーを備えていてもよい。ラッパーは巻紙であってもよいし、香味発生シート10から構成されていてもよい。
【0009】
香味発生シートとは、香味を発生するシートであり、香味を発生しうる成分をシート基材に担持させてなるシートまたは香味を発生する材料で構成されたシートが挙げられる。複数の香味発生シートが同心状に配置されて香味発生セグメントを構成する。香味を発生しうる成分としては、例えば、たばこ原料に含まれる香喫味成分やメントール等の香料成分等が挙げられる。シート基材としては、例えば、圧縮たばこペレットやたばこ粉末等のたばこ材料等が挙げられる。本発明において、シート基材としてはたばこ材料が好ましい。すなわち香味発生シートとしては、たばこ材料の基材シートに必要に応じて香味を発生しうる成分を担持したたばこシートが好ましい。香味発生シートは、加熱に伴ってエアロゾルを発生してもよい。エアロゾルの発生を促進するためにグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を更に添加してもよい。かかるエアロゾル源の添加量は、香味発生シートの乾燥重量に対して5〜50重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。尚、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等のポリオールは香喫味成分として添加してもよい。エアロゾル源を含む場合または香味成分がエアロゾルを発生する場合、香味発生シートはエアロゾル発生シートでもある。
【0010】
まずは同心状に配置される前の素材としてのエアロゾル発生シートについて説明する。
【0011】
1)調製
香味発生シートがたばこシートである場合、たばこシートは抄造、スラリー、圧延、等の公知の方法で適宜製造できる。具体的に抄造の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)乾燥葉たばこ原料を粗砕し、水で抽出して水抽出物と残渣に分離する。2)水抽出物を減圧乾燥して濃縮する。3)残渣にパルプを加え、リファイナで繊維化した後、抄紙する。4)抄紙したシートに水抽出物の濃縮液を添加して乾燥したばこシートとする。この場合、ニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい(特表2004−510422号公報参照)。スラリー法の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。1)水パルプバインダと、砕いたたばこを混合する。2)当該混合物を薄く延ばして(キャストして)乾燥する。この他、国際公開第2014/104078号に記載されているように、以下の工程を含む方法によって製造された不織布状のたばこシートを用いることもできる。1)粉粒状のたばこ原料と結合剤を混合する。2)当該混合物を不織布によって挟む。3)当該積層物を熱溶着によって一定形状に成形し、不織布状のたばこシートを得る。たばこシートの組成は特に限定されないが、例えば、たばこ原料の含有量はたばこシート全重量に対して50〜95重量%であることが好ましい。また、たばこシートはバインダを含んでもよく、係るバインダとしては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMC−Na(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)等が挙げられる。バインダ量としては、たばこシート全重量に対して2〜20重量%であることが好ましい。たばこシートはさらに他の添加物を含んでもよい。添加物としては、例えばパルプなどのフィラーを挙げることができる。前述のとおり、たばこシートは香味を発生しうる成分を含む。本発明においては複数のたばこシートを用いるが、係るたばこシートはすべて同じ組成あるいは物性であってもよいし、各たばこシートの中の一部または全部が異なる組成あるいは物性であってもよい。香味発生シートがたばこシート以外である場合、例えばたばこ原料以外の植物パルプをシート基材として用いたシートを用いることができる。
【0012】
2)寸法等
香味発生シートの形状は限定されないがシート主面の形状が四角形であることが好ましい。厚みは限定されないが、高効率の熱交換や香味発生セグメントの強度等を考慮すると、200〜600μmが好ましい。各香味発生シートの厚みは同じであってもよいし異なっていてもよい。同心状に配置された際に周長さに対応する長さを香味発生シート幅Wといい、香味発生セグメント長さに対応する長さを香味発生シート長さLという。Lはすべての香味発生シートにおいて同じであることが好ましい。Wに関しては、同心状に配置された際に最外層を構成する香味発生シートのWが、最内層を構成する香味発生シートのWよりも大きいことが好ましい。この理由は後述する。
【0013】
3)表面加工
複数の香味発生シートのうち少なくとも1枚は、少なくとも一方の面の一部または全部に表面加工が施されていることが好ましい。本発明において表面加工とは、香味発生シートの少なくとも一方の主面、即ち表面または裏面に複数の凹凸を形成する加工をいう。表面加工の方法としては特に限定されず、捲縮加工、エンボス加工、デボス加工、ハーフカット等の公知の加工を用いることができる。本発明において捲縮加工とはシートにしわを設ける加工である。例えば、表面に複数の凸部を有する一対のローラ間に香味発生シートを通すことによって、香味発生シートの表面と裏面の両方にシート搬送方向に直交して延びるしわを設けて捲縮加工を施すことができる。係るローラに設けられた凸部は、シート搬送方向に直交して延びている。ローラに設けられた凸部の頂点間のピッチは0.5〜2.0mmが好ましい。そのため、香味発生シートのピッチは0.5〜2.0mmであることが好ましい。また、香味発生シートのピッチは、ラッパーあるいは巻紙の周長さに対して1.5〜20%であることが好ましい。また、捲縮によってできた凹凸の高さHはシートの平均厚みをTavとするとき、1.05Tav〜1.59Tavであることが好ましい。高さHは、捲縮加工されたシートを水平な面に載置した際にシート底部からシート頂点までの距離として定義される。エンボス加工やデボス加工とは、凸状の加工具をシートに押しつけてシートの片面または両面に凹部を形成する加工であり、ハーフカット加工とは、シートの片面または両面に、シートが切断されない程度の深さ、好ましくはシート厚みの半分以下の深さの切込みを設ける加工である。ハーフカット加工にはナイフやレーザーを用いることができる。後述するとおり、香味発生シートに表面加工を施すことで、同心状に配置した場合に効率よく非接触部、好ましくは後述する隙間を形成できる。ただし、最内層となる香味発生シートは表面加工が施されていないことが好ましい。なお香味発生シートの凸部の頂点間のピッチは同一シート内ですべて同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、各香味発生シートの凸部の頂点間のピッチは、シート毎に異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0014】
次に、同心状に配置された香味発生シートについて説明する。
【0015】
1)同心状に配置された複数の香味発生シート
各香味発生シートは巻上成形等により、香味発生セグメントの長手方向に延在し、同心状に配置されている。本発明において「同心状に配置されている」とは、すべての香味発生シートの中心が略同じ位置にあるように配置されていることをいう。ただし、香味発生シートが断面楕円形に配置されている場合は、長軸と短軸の交点を中心とする。当該中心を通り長手方向に平行な軸を「配置の中心である長手方向軸」または単に「配置の中心軸」という。図2Aに示すとおり、配置の中心軸12は、香味発生セグメント1の断面中央を通る軸すなわち香味発生セグメントの中心軸と同一であることが好ましいが、香味発生セグメント1の中心軸よりずれていてもよい。このように本発明においては、中心が偏心している態様も「同心状に配置されている」という。例えば、香味発生セグメント1の幅が2Rである場合、配置の中心軸12は、香味発生セグメント1の中心軸から0.1R〜0.7R程度外側にずれていてもよい。本発明においては、同心状に配置された香味発生シート10の数は3枚〜12枚であることが好ましい。香味発生シートの数を係る数とすることにより、十分な量の香味成分を発生させることができると共に、後述する隙間として十分なスペースを確保でき、発生した香味のデリバリ効率を高めることができる。また、香味発生セグメントに含まれる複数の香味発生シートは、総重量が130mg〜685mgであることが好ましく、200mg〜350mgであることが好ましい。
【0016】
各香味発生シートは隣接するシート間に非接触部を有するように配置されるので、少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に当該香味発生シート同士が接触しない非接触部を有する。この場合、隣接する香味発生シート同士が周方向にわたって全部が接触していない態様1と、少なくとも1対の隣接する前記香味発生シート間に当該香味発生シート同士が接触している接触部を有する態様2が存在する。本発明において「同心状に配置されている」とは態様2も含む。
【0017】
前述のとおり香味発生シートはグリセリンなどのエアロゾル源を含むが、吸引の終始にわたってエアロゾルのデリバリーが均一になるように各香味発生シートに含まれるエアロゾル源の重量を調整することが好ましい。例えば図7(a)に示すように、香味発生セグメントの中心から外側に向かってA〜Cの位置を特定し、当該位置を含む領域にそれぞれ同じ厚みのシートが存在する場合を考える(図7(b))。この場合、各シートのエアロゾル源の重量が同じであれば、シート厚み当たりのエアロゾル源の重量は同じになる。このためA、B、Cの位置で発生しうるエアロゾル源の量をほぼ同じとすることができる。
【0018】
一方、当該位置を含む領域に異なる厚みのシートが存在する場合(図7(c))、各シートのエアロゾル源の重量が同じであってもシート厚み当たりのエアロゾル源の重量は異なるので、A、B、Cの位置で発生しうるエアロゾル源の量も異なる。この場合、以下の関係を満たすようにシートを設計すれば、A、B、Cの位置で発生しうるエアロゾル源の量をほぼ同じとすることができる。
X/a=Y/b=Z/c
a:Aの位置をカバーするシートAの厚み、
X:Aの位置をカバーするシートAに含まれるエアロゾル源の重量
b:Bの位置をカバーするシートBの厚み、
Y:Bの位置をカバーするシートBに含まれるエアロゾル源の重量
c:Cの位置をカバーするシートCの厚み、
Z:Cの位置をカバーするシートCに含まれるエアロゾル源の重量
【0019】
例えば円筒状に配置されたシートの内外周差や内外表面において表面加工に差を設ける等によってもこのような設計が可能となる。後者の場合、例えば内表面にハーフカットを多く設け、該表面にはハーフカットを少なく設けるなどの態様が考えられる。
【0020】
さらに、内側に配置される当該シートと外側に配置される当該シートにおいて、当該シートに含まれる香喫味成分および香料成分の重量を変えることで、吸引時に所望のタイミングで香喫味を変化させることもできる。
【0021】
2)非接触部
態様2において接触部分と接触部分との間に形成された非接触部分を「隙間」という。態様2においては、隣接しているシート同士の間に複数の隙間が長手方向に沿って形成されるので、香味流路を確保して香味デリバリ効率を向上することができ、さらには接触部分を介してヒータからの熱を外側の香味発生シートに伝達できるので伝熱効率を高めることができる。よって本発明においては態様2が好ましい。この場合、一部または全部の隙間は、香味発生セグメントの先端部から後端部にわたって延びていることがより好ましい。
【0022】
態様2において、ある香味発生シートと係る香味発生シートに隣接する香味発生シートの少なくとも一つは、少なくとも一部で接触しているが、香味発生シート同士は、周方向つまり巻き回す方向において、複数個所で接触していることが好ましい。このように隣接する香味発生シート同士を接触させる方法としては特に限定されず、例えば前述の表面加工を少なくとも一つの香味発生シートに施すことや、各香味発生シートの幅を変えること等によって行うことができる。本発明において隣接する香味発生シート同士を接触させる方法としては、少なくとも一つの前述の香味発生シートに表面処理を施すことが好ましい。表面加工された香味発生シートは巻き上げられた際に周方向に凸部を形成する。巻き上げられた複数の香味発生シートのうち、隣接する香味発生シートにおけるこの凸部の位置を周方向において同一の位置に存在させない、すなわち各香味発生シートの周方向における凹凸の位相をずらすことによって、より確実に前記接触部を設けることができる(図2B参照)。図2BにおいてCは接触部、Vは隙間である。位相をずらす方法は限定されないが、例えば香味発生シート毎に表面加工のピッチを変える、各香味発生シートの厚さや幅を変更する、巻上げ成形時に巻上方向に掛ける力を層毎に変える等の方法が挙げられる。前記接触部は接着されている必要はない。香味発生シートが表面処理によって設けられた凸部を複数具備する場合、少なくとも係る凸部のうちの一つが隣接する香味発生シートと接触していればよい。前記隙間を香味発生セグメントの先端部から後端部にわたって延在させるために、捲縮加工されたシートに形成された凸部の長手方向は香味発生セグメントの長手方向と平行または略平行であることが好ましい。凸部の長手方向とは稜線の延びる方向であり、捲縮ローラーによる加工時のシート搬送方向に直交する方向である。
【0023】
隣接する2つの香味発生シートの層間距離の最大値Gmaxは、当該隣接する2つの香味発生シートのうちの少なくとも一方の香味発生シート厚みの最大値Tmaxよりも大きいことが好ましい。このことは以下の方法で確認できる。図2Bに示すように香味発生セグメント1のある断面においてn番目のシートと(n+1)番目のシート間に形成される層間距離nを測定して最大値G(n)maxを決定する。次いでn番目のシートと(n+1)番目のシートの厚みを測定して最大値T(n)maxおよびT(n+1)maxを決定して比較する。この測定を総ての層間について実施する。例えば、シート枚数が4枚である場合、3つの層間について測定を実施する。そして当該断面において以下を満たすことを確認する。
(1)max>T(1)maxまたはG(1)max>T(2)max
(2)max>T(2)maxまたはG(2)max>T(3)max
(3)max>T(3)maxまたはG(3)max>T(4)max
【0024】
この関係が任意の断面で満たされるとき、隣接する2つの香味発生シートの層間距離の最大値Gmaxは、当該隣接する2つの香味発生シートのうちの少なくとも一方の香味発生シート厚みの最大値Tmaxよりも大きいという。香味発生シート10が固定されていないために測定が困難である場合は、次のように測定することが好ましい。まず、香味発生セグメント1を低粘度の硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)に含浸させて非接触部を樹脂で充填した後に当該樹脂を硬化して測定用サンプルを調製する。次いで、当該サンプルを切断しながら前記測定を実施する。
【0025】
香味発生セグメントにおける非接触部の総量の割合(以下「空隙率」ともいう)は、0.10〜0.40であることが好ましく、0.15〜0.36であることがより好ましく、0.25〜0.33であることが特に好ましい。空隙率を好ましい範囲とすることによって、効率的に香味を供給することができる。また、空隙率をより好ましい範囲とすることにより、吸引初期から終期に渡って、香味発生セグメント中のシートに含まれる香喫味成分の効率的な放出を維持することができる。
【0026】
3)構成等
香味発生セグメントは、香味発生シートの復元力によって形状が維持されていることが好ましい。つまり、配置された香味発生シートは復元力によって外側に広がろうとする力を発し、その力を外側に存在する香味発生シートまたはラッパーが受け止めることによって香味発生セグメントの形状が維持されることが好ましい。したがって最内層の香味発生シート10inの復元力が、それ以外の香味発生シートの復元力よりも大きいと形状がより安定するので好ましい(図2A)。復元力はシートの厚みや表面加工の有無によって調整できる。シートが厚いほど、または表面加工がなされていない方が復元力は大きい。従って、最内層の香味発生シート10inとして表面加工されていないシートを用いることが好ましい。具体的に復元力の程度は、垂直に立てた金属棒へシートを巻き付け、巻き付けに資する力を開放した結果得られるシート端面間の距離を測定することで評価できる。このように、複数の香味発生シートを特定の構成とすることによって香味発生セグメントに機能を付与できる。形状等をより安定させる観点から、ラッパーはオーバーラップ部分を有することが好ましい。当該オーバーラップ部分は接着されていることが好ましい。
【0027】
この他に、例えば表面加工香味発生シートおよび非表面加工香味発生シートが交互に存在する構成も好ましい。この場合、香味発生セグメントの形状維持と隙間の確保を両立できる。また、香味発生シートの一方の面のみに表面加工を施し、当該加工面が配置の中心軸側を向く態様も好ましい。この場合、香味発生セグメントの強度を向上できる。係る態様とするために、香味発生シートには表面加工としてハーフカット加工が施されていることが好ましい。
【0028】
また図2Cに示すように、香味発生シート10は周方向に凹凸を形成するように配置されてもよい。具体的には図2C(1)のように外周側にのみ凸部が形成される態様や、図2C(2)に示すように外周側と配置の中心側の両方に凸部が形成される態様が挙げられる。表面加工時の圧力や、表面加工の加工のピッチ等により、香味発生セグメント1に配置された各香味発生シート10の形状は適宜調整できる。さらには、巻上げ等の成形時の圧力等の条件を制御することにより前記凸部頂点間距離を拡大縮小したり、さらには凹部と凸部間の高低差を拡大縮小することもできる。
【0029】
図2Aに示すとおり、1つの香味発生シートは周方向において連続していることが好ましい。1つの香味発生シートにおいては、シートが重なり合うオーバーラップ部は存在してもよいし存在しなくてもよい。オーバーラップ部とは、一態様において香味発生シートの周方向における一方の端が、他方の端を超えて重なりあった部分である。両端の重なった部分が存在すると、香味発生セグメントの強度を向上できるという利点がある。ただし、最内層の香味発生シートは、周方向における一方の端が他方の端を超える領域と接着されていないことが好ましい。当該接着領域が存在すると最内層の香味発生シートの復元力が低下するからである。
【0030】
一方、オーバーラップ部が存在しないと、空気流路を容易に確保できるという利点がある。オーバーラップ部が存在しない態様においては、香味発生シートの周方向における両端同士が接触している態様、離間している態様がある。両端同士が接触している態様においては、最内層の香味発生シートの両端は接着されていないことが好ましい。両端が接着されていると最内層の香味発生シートの復元力が低下するからである。
【0031】
香味発生セグメント1の製造の製造しやすさの観点からは、香味発生シートの周方向における両端同士が離間している態様、すなわち両端間に離間部を有することが好ましい。離間距離は限定されないが、香味発生シートの両端部の距離にして0mmを超え2mm以下であることが好ましい。このように離間している場合、両端は近接しているともいう。さらに、後者の態様において図2Aに示すように、香味発生シート10の離間部18は、周方向において略同じ位置に存在することが好ましい。離間部が略同じ位置に存在するとは、離間部18が、外周部から配置の中心に向かって貫通していることを意味する。このような構造とすることで本発明の香味発生セグメント1の製造がより容易になる。ただし、ラッパーとして香味発生シート10を使用する場合、当該香味発生シートは両端が重なっていてもよい。
【0032】
前述のとおり最外層の香味発生シートの周長さは、最内層の香味発生シートの周長さよりも長いことが好ましい。後述するとおり、複数の香味発生シートを平らに積層した積層体を巻上成形して香味発生セグメントを形成することできるが、この場合、周長さを前述のようにすると香味発生セグメントの形成が容易となる。
【0033】
香味発生セグメントは配置の中心軸近傍に空間を有していてもよい。具体的には図2Aに示すとおり、配置の中心軸12と、最内層の香味発生シート10inとの間に、当該長手方向に延在する空間14を有していてもよい。かかる空間の断面積は香味発生セグメント1の断面積の15〜46%であることが好ましい。空間14の断面積を好ましい範囲内とすることによって、例えば図4Aに示すような円筒状のヒータをセグメント内部に収容するための空間を確保できる。また、図4Cに記載のように外周から香味発生セグメントを加熱する場合、係る空間14の断面積は極力小さい方が好ましい。具体的には空間14の断面積は隣接する2つの香味発生シートの間に形成される非接触部の断面積の総和以下であることが好ましい。
【0034】
係る香味発生セグメントにおいては、断面における中心側、即ち、同心状に配置された香味発生シートの最内層よりもさらに内側、あるいは断面における中心とは反対側、即ち、同心状に配置された香味発生シートの最外層よりもさらに外側に、熱伝導性部材を設けてもよい。熱伝導性部材としては、シート状の部材(伝熱シート)であることが好ましく、具体的にはアルミニウム等の金属シート等を用いることができる。係る伝熱シートを配置する方法は限定されないが、香味発生シートと同心状に配置されていてもよいし(図2A参照)、香味発生シートの表面または裏面に貼付けられていてもよい。
【0035】
伝熱シートを配置する位置は限定されないが、香味発生システムとしたときにヒータと近接するように配置するとヒータから発生する熱を効率的に各香味発生シートに伝導することができるので好ましい。詳しくは後述するが、図4A、B、B’に示すように香味発生セグメントの中心部にヒータ30が配置される場合は、熱伝導性部材も当該中心部に配置されることが好ましい。また、図4のCに示すように香味発生セグメントの外周にヒータが配置される場合は、係る熱伝導性部材も香味発生セグメントの外周側に配置されることが好ましい。
【0036】
2.香味発生物品
図3に香味発生物品の一態様を示す。図3において、2は香味発生物品、1は香味発生セグメント、20はマウスピース、22はフィルター、24はキャビティ、26は支持部材である。香味発生セグメント1の配置の中心軸と香味発生物品2の長手方向は平行である。上記のとおり、支持部材やキャビティは香味発生物品に任意に設けてよい。マウスピース20は吸口部を備える部材でありフィルター22を含んでいてもよい。マウスピース20の寸法も限定されないが、香味発生セグメント1と同じ幅を有することが好ましく、長さは26〜50mmであることが好ましい。
【0037】
フィルター22はセルロースアセテートフィルター等の当該分野で通常使用される材料で構成されることが好ましい。フィルター22の長さはマウスピース20の全長の12〜60%であることが好ましい。
【0038】
キャビティ24は空間であり、キャビティ24を形成するラッパーの側面にはベンチレーションが設けられていてもよい。キャビティ24は加熱された香味を冷却する、香味と空気を適度に混合して香喫味を調製する等の機能を担う。キャビティ24の長さはマウスピース20の全長の8〜77%であることが好ましい。また、キャビティ24を冷却要素に置換してもよい。冷却要素としては例えばポリ乳酸シート等が挙げられ、複数のポリ乳酸シートに捲縮加工を施したものを冷却要素として用いることができる。
【0039】
支持部材26は、香味発生物品の強度を高めて形状を保持する。支持部材26はセルロースアセテート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の耐熱性プラスチック、シリコン、セラミック等、当該分野で通常使用される材料で構成されることが好ましい。また支持部材としては、例えば、長手方向中心軸に空間を設けたような円筒状の部材を好適に用いることができる。支持部材26の長さはマウスピース20の全長の14〜77%であることが好ましい。
【0040】
3.香味吸引システム
本発明の香味吸引システムは、ヒーターを備える。ヒーターは、好ましくは非燃焼式に、より好ましくは電気的に香味発生セグメントを加熱する。ヒーターは電源等を備える加熱ユニットを備えることが好ましい。図1に本発明の香味吸引システムの一態様を示す。図中、1は香味発生セグメント、20はマウスピース、22はフィルター、30はヒーター、32は加熱ユニットである。
【0041】
ヒーター30の形状は限定されないが、ヒーター30の一部が香味発生セグメントにおける前記空間14に配置可能な形状を有していることが好ましい。例えばシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターであってよい。シート状ヒーターとは柔軟なシート形のヒーターであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム(厚み20〜225μm程度)を含むヒーターが挙げられる。平板状ヒーターとは剛直な平板形のヒーター(厚み200〜500μm程度)であり、例えば平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターとは中空または中実の筒形のヒーターであり、例えば、外周面に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターの断面形状は円、楕円、多角、角丸多角等であってよい。
【0042】
ヒーターは任意の配置であってよいが、以下、図4を用いて好ましい態様を説明する。図4は本発明の香味吸引システムの断面図である。図4において30はヒーター、10は香味発生シートである。
【0043】
図4A、Bに示すとおり、ヒーター30は、香味発生セグメントの空間14に配置できる。図4Aは当該空間に中実の筒状ヒーター30が配置された態様を、図4Bは平板上ヒーター30が配置された態様を示す。図示していないが、香味発生セグメントは、香味発生シート10と同心状に配置されている伝熱シートを有することが好ましく、当該伝熱シートはヒーター30と隣接していることがより好ましい。このように、平板状ヒーターおよび筒状ヒーターは香味発生シート10を内側から加熱する場合に好適である。図4B’に示すように平板状ヒーターを用いる場合、最内層の香味発生シート10inあるいはこれとその近傍に存在する香味発生シート10を破るように当該ヒーターを貫入させてもよい。
【0044】
図4A、Bに示すようなヒーター30が空間14に配置されている場合、最内層の香味発生シート10inから配置の中心軸方向側にわたって存在する空隙の断面積は、最内層の香味発生シートから外周側にわたって存在する非接触部の総断面積よりも小さいことが好ましい。図5にヒーター30が空間14に配置されている香味発生セグメント1の断面の一部を示す。図5において前者の断面積はSinで、後者の断面積はSoutで表される。本実施態様においては、SoutがSinより大きいことが好ましい。また、係るSinとSoutとの関係性は、香味発生セグメントの長手方向にわたって維持されていることがより好ましく、香味発生セグメントの長手方向にわたって、SinとSoutとが一定の値であることが特に好ましい。
【0045】
m+1枚の香味発生シートが存在する場合、隣接する2つの香味発生シートの層間はm個存在する。各層間における非接触部の断面積をSmとすると、Sout=S1+・・・+Smが成り立つ。このとき、任意のSmは、Sm>Sinの関係を満たすことがより好ましい。Sm>Sinという関係は、香味発生セグメントの長手方向にわたって維持されていることがさらに好ましく、香味発生セグメントの長手方向にわたって、SmとSinの値とが、それぞれ一定の値であることが特に好ましい。係る好ましい構成により、空気と香味発生シートとの接触効率が高まるので、効率的な熱交換および香味発生を達成できる。SoutおよびSinは、GmaxおよびTmaxと同様に香味吸引システム3の複数の断面を観察することで測定できる。この際、香味発生シート10inおよび香味発生シート10outの離間部には香味発生シートが存在するとして測定する。
【0046】
図4Cに示すとおり、ヒーター30は、最内層の香味発生シート10outの外側に配置できる。香味発生セグメント1がラッパーを備える場合、ヒーター30はラッパーの外側に配置してもよい。また図4Dに示すとおり、ヒーター30は、香味発生シート10の間に配置できる。このように、シート状ヒータは、香味発生シート10を外側からまたは中間から加熱する場合に好適である。シート状ヒータは端部が離間していてもよいし、接触していてもよい。本態様においても、香味発生セグメントは、香味発生シート10と共に同心状に配置されている伝熱シートを有することが好ましく、当該伝熱シートはヒーター30と隣接していることがより好ましい。
【0047】
4.製造方法
本発明の香味吸引システム3の製造方法は限定されないが、香味発生セグメント1、マウスピース20、ヒーター30等の構成要素をそれぞれ準備して、これらを組合せることで製造できる。
【0048】
図6に示すように、香味発生セグメント1は、幅Wの異なる複数の香味発生シート10を準備して、底部から頂部に向かってWが小さくなるように積層した積層体100を調製し、これを巻管6に通して巻き上げ成形することで製造できる。図6Bは巻管6の開口部方向から積層体100を見た図である。ただし、積層体100は巻上げ成形後に隣接する前記香味発生シート間に非接触部が形成されるように調製される。例えば、隣接する香味発生シート10同士の全面を接着せずに積層する、隣接する香味発生シート10同士の一部を接着して積層する、あるいは隣接する香味発生シート10同士の全面あるいは一部を、巻上げ成形後に剥がれるように軽度に接着して積層することで積層体100を調製できる。必要に応じて積層体100の中に伝熱シートを配置してもよいし、積層体100の最底部にラッパーを配置してもよい。さらに積層体100の最頂部にマンドレル等の筒状ダミーを載置して香味発生セグメント1を形成した後に、当該ダミーを除去することで空間14を形成することができる。
【0049】
ヒーター30として平板状ヒーターまたは筒状ヒーターを用いる場合は、空間14に当該ヒーター30を挿入して香味吸引システム3を製造できる。また、最頂部に当該ヒーター30を載置した積層体100を巻管6に通して香味吸引システム3を製造してもよい。
【0050】
ヒーター30としてシート状ヒーターを用いる場合は、香味発生シート10の間または最底部に当該ヒーター30を配置した積層体100を巻管6に通して香味吸引システム3を製造できる。
【0051】
フィルター22を含むマウスピース20は公知の方法で調製してよい。例えば、香味吸引システム3の後端部にフィルター22を配置して、これらをラッパーで巻くことによってフィルター22を備える香味吸引システム3を製造できる。香味吸引システム3の後端部に当接するように支持部材16を配置し、さらに離間してフィルター22を配置すれば、支持部材16およびキャビティ24をさらに備える香味吸引システム3を製造できる。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
以下のようにして香味発生シート10を製造した。
【0053】
たばこを粉砕して得たたばこ細粉81.4wt%、グリセリン13.1wt%、グアガム3.3wt%、パルプ2.2wt%の混合物に水を添加してスラリーを得た。その後、係るスラリーを流涎してシート状にした後に乾燥して香味発生シート10を得た。このようにして複数の香味発生シート10を製造した。
【0054】
捲縮ローラを用いて香味発生シート10に表面加工を施した。捲縮ローラとしてローラ表面の断面形状が山形または矩形のものを用いた。続いて、当該表面加工を施した複数の香味発生シート10を巻紙の上に積層し、さらに最上部に円筒状ダミーを載置して積層体100を得た。この積層体100を直径が7mmの巻管に通して巻紙および香味発生シートを巻き上げた後、円筒状ダミーを引き抜いて、中央部に長手方向に延在する空間を有する香味発生セグメント1であるたばこセグメントを製造した。表面加工によって設けられたハーフカットはセグメントの長手方向に延びていた。得られたたばこセグメントの長さLは12mmであった。円筒状ダミーの直径は3.2mmであったので、香味発生セグメント断面積における当該空間の断面積の割合は20.9%であった。当該割合は、香味発生セグメントの長手方向にわたって一定であった。
【0055】
長さ45mmのラッパーを準備し、当該ラッパーの長手方向と前記たばこセグメントの長手方向が同一方向になるように、当該ラッパーの上に当該たばこセグメントを載置した。次いで長さ8mmの中空円筒状のアセテートフィルタを準備し、前記ラッパーの上に前記たばこセグメントに隣接して載置した。この際、両者の中心軸が一致するようにした。ラッパーを巻き上げて、長さ12mmのたばこセグメント、長さ8mmの中空円筒状のアセテートフィルタ、および長さ25mmのキャビティの順に各セグメントを備える香味発生物品2を得た。たばこセグメントの物性を以下に示す。各サンプルにおけるシートの組成は同一である。
【0056】
【表1】
【0057】
香味発生物品におけるたばこセグメントを目視で観察し、すべてのサンプルにおいて、図2B図2C(1)に示すように各シートに設けられた山形または矩形の凹凸の少なくとも一つが、当該シートと隣接するシートに接触していることを確認した。係る接触部は複数存在していた。接触部と接触部の間に非接触部(隙間)が形成されていることも確認した。また、前述のとおり定義されるSoutとSinは、Sout>Sinの関係を長手方向にわたって満たしていた。さらに、隣接する2つの香味発生シートの層間距離の最大値は、当該隣接する2つの香味発生シートのうちの少なくとも一方の香味発生シート厚みの最大値よりも大きかった。表1における各シートの幅は、積層された順の各シートの幅を示す。例えばサンプルEでは巻紙上に幅20mmのシートを配置し、その上に順に幅18mm、16mm、・・・9mmのシートを積層したことを意味する。シート厚みとは各シートの厚みであり、例えばサンプルEではシートはいずれも0.203mmの厚さを有することを意味する。
【0058】
たばこセグメントにおける見かけ充填率および見かけ空隙率を算出した。見かけ充填率は、シートの厚さ、幅、積層枚数からシート体積を算出し、ヒータ体積を除いたたばこセグメント全体の容積で除することによって算出した。見かけ空隙率は1.000から見かけ充填率を引くことにより算出した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
[実施例2]
得られた香味発生物品2を加熱するための加熱デバイスとして、長さ12mm、直径3.2mmの中空円筒状ヒータ30と、当該ヒータを加熱するためのバッテリと、ヒータおよびバッテリを制御するための制御回路と、各部材を主要するためのハウジングを備えた加熱ユニット32を準備した。中空円筒状ヒータ30を、実施例1で製造した香味発生物品2の空間に挿入して、香味吸引システム3を得た。香味吸引システム3について、香味発生シート中のニコチン量と、香味吸引システム3から発生させた香味に含まれるニコチン量とを測定し、ニコチン移行率を評価した。
【0061】
(1)香味発生シート中のニコチン量の測定
ドイツ標準化機構DIN 10373に準ずる方法で測定した。香味発生シート(たばこシート)を100mg採取し、11%水酸化ナトリウム水溶液3.75mLとヘキサン5mLを加え、60分間振とう抽出した。抽出後、上澄みであるヘキサン相をガスクロマトグラフ−水素炎イオン化型検出器(GC/FID)に供し、ニコチン重量を定量した。当該値を香味発生シート重量で除して、香味発生シート中のニコチン量(N)とした。
【0062】
(2)香味中のニコチン量の測定
ケンブリッジフィルタを接続した自動喫煙装置(Bolgwaldt社製 RM26)を用いた。当該自動喫煙装置は電気制御された吸引用シリンジを有し、ケンブリッジフィルタとの流体連通が制御できるように、シリンジとケンブリッジフィルタとの間に、バルブコントローラによって流路を変えることのできる電磁弁を備えていた。当該装置のケンブリッジフィルタに各サンプルを接続して、積算パフ動作回数に応じて、ニコチン成分量を測定した。具体的には、バルブコントローラによって電磁弁の開閉動作を行い、吸引中のシリンジとケンブリッジフィルタとを2秒間に亘って接続した後、ケンブリッジフィルタを大気中に28秒間にわたって解放した。このような動作を1回の擬似的なパフ動作として擬似的なパフ動作を1回行った後に、ケンブリッジフィルタを回収して1回のパフの香味を捕集した分析サンプルを得た。吸引用シリンジによる吸引は吸引容量55mL/2secとなるように設定した。一つの香味発生物品に対し、1から11番目の各パフで捕集された香味に含まれるニコチンの量(N1〜N11)を求めた。定量は、各ケンブリッジフィルタを10mLのEtOH溶媒で振とう抽出し、ガスクロマトグラフ−質量分析器(GC/MS)を用いて実施した。
【0063】
(3)ニコチン移行率
N1/Nによって1番目パフにおけるニコチン移行率を算出した。同様に2〜11番目のパフにおけるニコチン移行率を算出した。1から3番目および4から11番目のパフで得られた結果について各々平均値を算出した。結果を以下に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
表3から明らかなとおり、吸引初期の3パフにおいては、見かけ空隙率が高まるにつれてニコチン移行率が高まっている。一方、中期から後期にかけての4〜11パフにおいては、サンプルDが最も高いニコチン移行率を示した。
【0066】
さらに香味吸引システム3について発生した香味を吸引したパネラーは、いずれのサンプルにおいても良好な香喫味を持つと評価した。
【符号の説明】
【0067】
1 香味発生セグメント
10 香味発生シート
12 配置の中心軸
14 空間
16 伝熱シート
18 離間部
100 積層体
C 接触部
V 隙間
G 香味発生シート間距離
T 香味発生シート厚み
L 香味発生シート長さ
W 香味発生シート幅

2 香味発生物品
20 マウスピース
22 フィルター
24 キャビティ
26 支持部材

3 香味吸引システム
30 ヒーター
32 加熱ユニット

6 巻管
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7