特許第6977041号(P6977041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6977041-多結晶シリコンを調製するための方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977041
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】多結晶シリコンを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/03 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   C01B33/03
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-531720(P2019-531720)
(86)(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公表番号】特表2020-502027(P2020-502027A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2016080900
(87)【国際公開番号】WO2018108258
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルライン,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】ベックエッサー,ディルク
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102815702(CN,A)
【文献】 特表2014−505649(JP,A)
【文献】 特表2011−513182(JP,A)
【文献】 特開平11−020895(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/103939(WO,A1)
【文献】 特表2016−530184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置によって加熱される流動床中での流動化ガスによるシリコンシード粒子の流動化を含む流動床反応器中で多結晶シリコン粒状物を製造するための方法であって、熱分解による水素及びシラン及び/又はハロシランを含有する反応ガスの添加によって、元素状シリコンが前記シリコンシード粒子上に析出して多結晶シリコン粒状物を形成し、オフガスの処理のための再循環ガス系において、オフガスが前記流動床反応器から連続的に放出され、このオフガスから回収される水素が再循環ガスとして前記流動床反応器に送り返され、前記再循環ガス系の窒素含有量が1000ppmv未満であり、0.01〜1000ppmvの窒素閾値を超過したときに、流動床及び/又は反応器壁の温度を上昇させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
窒素含有量が、500ppmv未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコンの析出が、1000℃〜1300℃の析出温度で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
処理中に、再循環ガスの窒素含有量が、ガスクロマトグラフによって決定されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
再循環ガスが、90%未満の外部水素と混合されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ハロシランが、クロロシランであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
処理の開始前に、水素での加圧とそれに続く減圧が流動床反応器の内部で行われ、加圧中の最大圧力が3.1〜15barの範囲であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
加圧及び減圧の持続時間がそれぞれ1〜60分であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
加圧が、10〜7000m/hVの反応器容積(V)あたりの水素体積流量で行われることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコン粒状物及び流動床反応器中でのその製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンの粒状物(略してポリシリコン粒状物)は、シーメンス法によって製造されるポリシリコンの代替物である。シーメンス法では、円筒状シリコンロッドとしてポリシリコンが製造され、この円筒状シリコンロッドは、さらなる処理の前に、いわゆるチップポリ(chip poly)を得るために、時間を要し、コストがかかる粉砕を一般的には必要とし、クリーニングを必要とし得る一方で、ポリシリコン粒状物は、乾燥バルク固体の特性を有し、例えばエレクトロニクス産業用の単結晶製造のために、原料として直接使用され得る。
【0003】
ポリシリコン粒状物は典型的には流動床反応器中で製造される。これは流動床中のガス流によるシリコン粒子の流動化により起こり、前記流動床は加熱装置を介して高温に加熱される。シリコン含有反応ガスを添加すると、シリコン粒子の高温面上で熱分解反応が起こる。これによって、元素状シリコンがシリコン粒子上に析出するようになり、個々の粒子の直径が連続的に大きくなる。直径が大きくなった粒子を規則的に除去し、シード粒子として比較的小さいシリコン粒子を添加することにより、この処理を連続的に行うことが可能になる。使用し得るシリコン含有反応ガスとしては、シリコン−ハロゲン化合物(例えば、クロロシラン若しくはブロモシラン、モノシラン(SiH)又はこれらのガスと水素との混合物が挙げられる。このような析出処理及びそのための対応装置は、例えばUS2008/0299291A1から知られている。
【0004】
元素状シリコンの析出は、未変換反応ガス及びガス状副産物、特にハロシランから構成されるオフガスを形成する。このオフガスの処理、特に未使用水素の回収は、費用の理由からますます注目を集めている。
【0005】
シリコン析出中に形成されるオフガスの処理は、例えばEP2551239A1から原則的には知られている。対応する再循環処理は、さらに、O’Mara,B.Herring,L.Hunt:Handbook of Semiconductor Silicon Technology;ISBN0−8155−1237−6のp58の図7及び8から認識される。
【0006】
オフガスは典型的には多段階式凝縮装置に供給され、そこで蒸留塔を用いて凝縮物が低沸点留分と高沸点留分とに分別される。低沸点留分は析出物に送り返される。高沸点留分は一般に四塩化ケイ素(STC)を大きな割合で含有しており、これは変換装置(変換器)中でトリクロロシラン(TCS)に変換され得る。
【0007】
凝縮後に残留するオフガスのガス状留分は吸着物に供給される。ここで水素はガス流の他の成分から分離され、再循環ガスとして析出処理に送り返される。さらに、再循環ガスは、例えば水蒸気改質器を用いて製造される(製造されるか又は外部から供給される)新鮮な水素と混合してもよい。追加的に、又は代替的に、反応ガスの成分を添加し得る。
【0008】
再循環ガス系に窒素を導入しない操作は、一般的に技術的な理由で、例えば窒素含有デッドスペース及び実際の反応スペースと前記反応スペースを取り囲む反応器のジャケット状加熱スペースとの間の回避できない漏洩のために不可能である。安全上の理由(爆発性ガス反応の回避)のために、装置を各始動の前後に窒素でパージすることが必要であるという事実はまた、再循環ガス系へ窒素が導入されることをもたらす。これは、窒素の残余物が、例えば測定機器へのスタブ導管(stub conduit)などのいわゆるデッドスペースに通常は残留しており、前記残余物が始動時に再循環ガス系に移行するからである。
【0009】
ポリシリコンは、るつぼ引き上げ(チョクラルスキー(CZ法))によるか又はゾーン溶融法(フローティングゾーン(FZ)法)による単結晶シリコンの製造のための出発材料として使用される。この単結晶シリコンはウエハーに分割され、非常に多数の機械的、化学的及び化学機械的処理段階の後に、半導体産業で使用される。ポリシリコンは、太陽電池の製造で使用される単結晶又は多結晶シリコンの引き上げ法又は鋳造法による製造のためにさらに必要とされる。
【0010】
単結晶シリコンの製造における実質的な問題は、得られるシリコン結晶の結晶構造における転位欠陥(一次元すなわち線形性の欠陥)及び積層欠陥(二次元すなわち面の欠陥)である。原則として、ある一定数の結晶欠陥を超えないシリコン結晶のみが太陽光発電及びエレクトロニクス産業での使用に適切なので、両現象は収率を低下させる。典型的には、シリコンウエハーにおける積層欠陥数は、1平方センチメートルあたり300個未満であるべきである。原則として、単結晶シリコンロッドの転位欠陥は、ロッド長1メートルあたり1個未満であるべきであり、及び/又は無転位ロッド長は70%を超えるべきである。
【0011】
このような結晶欠陥の出現に有利に働く要因は、例えば出発材料として使用されるポリシリコン中の過度に高いハロゲン含有量である。ハロゲン含有量が過剰であると、一般に、対応する引き上げ又は鋳造法においていわゆるスパッタリング効果が生じる。
【0012】
EP2653446A2から、出発材料として使用されるポリシリコン粒状物の窒素含有量も結晶成長に悪影響を及ぼすことがさらに知られている。したがって、派生製品の品質を著しく損なわないようにするために、10〜2000ppba(10億分率原子数)の範囲の窒素含有量が提案される。これまで、例えば再循環ガスからのポリシリコンの析出中に存在する窒素は、結晶格子中に不活性な状態で取り込まれ(溶解させられ)、得られるポリシリコン粒状物の品質にはnドーピングに関してのみ影響があると推測されていた。
【0013】
しかし、驚くべきことに、ポリシリコン製造において、析出温度の上昇とともにポリシリコンの製品の品質が低下することが分かったが、この相関の原因は説明されないままである。少なくとも、反応ガス中の異なる窒素濃度で析出したポリシリコンのSIMS(二次イオン質量分析)分析からは、窒素の不活性取り込みの上昇が明らかにならなかった。
【0014】
結果として、析出温度は一般に、ポリシリコン製造において約1080℃の臨界値を超えて上昇しない。1000℃を下回る温度が普通である。しかし、析出温度を上昇させると、反応速度がより高くなり、結果として反応器出力が向上するので、経済的理由から、析出温度を上昇させることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0299291号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2551239号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2653446号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】O’Mara,B.Herring,L.Hunt:Handbook of Semiconductor Silicon Technology;ISBN0−8155−1237−6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、さらに処理しても、派生製品にわずかな転位及び積層欠陥しか生じないポリシリコン粒状物を提供することである。ポリシリコン粒状物はさらに、特に経済的な処理により製造可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、請求項1に記載の特性を有する処理により、及び請求項12に記載の特性を有する多結晶シリコン粒状物により、達成される。
【0019】
ポリシリコンの製造におけるオフガスの処理/水素の回収のための連続(再循環)工程及び対応する再循環ガス系はそれ自体公知である。ここでは例えばEP2551239A1を参照し得る。
【0020】
驚くべきことに、1050℃〜1150℃の析出温度でさえ、窒素、特に再循環ガス中に含有される窒素によって、ポリシリコン粒状物の表面上にSiが形成されることが分かった。Siの形成速度は、析出温度の上昇につれて指数関数的に上昇する。さらに、ポリシリコン粒状物中の少量の<10ppbaのSiでさえも、単結晶又は多結晶シリコンなどの派生製品の品質に悪影響を及ぼすことが認識されている。
【0021】
ポリシリコン粒状物の内部及び表面上のSi微結晶は、融点が高いため、引き上げ又は鋳造法などの下流工程において溶融せず、したがって派生製品中に転位及び積層欠陥を生じさせると考えられる。しかし、根本的な機序はまだ決定的には説明されていない。
【0022】
好ましい実施形態において、再循環ガス中の窒素含有量は500ppmv(体積百万分率)未満、好ましくは100ppmv未満、特に好ましくは10ppmv未満、特に0.5ppmv未満である。
【0023】
再循環ガス中の窒素含有量がより低いと、先行技術から知られている反応器において慣用されているものよりも高い析出温度、特に1100℃を上回る温度で流動床反応器を操作することが特に有利に可能となる。析出温度が上昇すると、その結果、反応速度が上昇し、したがって反応器の出力が上昇する。したがって、製品の品質を損なうことなく処理の経済性が向上する。
【0024】
元素状シリコンの析出は、好ましくは、1000℃〜1300℃、好ましくは1080℃〜1250℃、特に好ましくは1100℃〜1200℃の析出温度で行われる。1200℃の析出温度で処理を実行することは、特に好ましいものであり得る。
【0025】
処理中、再循環ガスの窒素含有量は、好ましくは測定機器によって決定される。測定機器は特にガスクロマトグラフである。この目的のために、反応空間及び/又は再循環ガス系から試料を抜き出し、測定機器に供給し得る。測定機器はまた、試料抜き出しの位置に直接提供され得る。
【0026】
試料抜き出しは、好ましくは、オフガスが反応器から排出されるか、又は再循環ガスが反応器に送り返される再循環ガス系上の点で行われる。これら2つの選択肢の組み合わせも想定され得る。このような組み合わせは、反応器の反応空間において、又はオフガス処理の連続工程中に望ましくない窒素導入が生じる傾向があるか否かを測定し得る。代替的に又は追加的に、1つ以上の試料が再循環ガス系の異なる点で、例えば吸着装置の上流又は下流で抜き出されることもまた提供され得る。
【0027】
好ましい実施形態において、0.01〜1000ppmvの窒素閾値を超過したときに、流動床反応器の運転が停止される。これにより、析出したポリシリコンがSiによって汚染されないことを確実にすることが可能になる。
【0028】
窒素閾値を超過したときに、反応器への再循環ガスの供給が中断され、窒素閾値に再び達しなくなるまで、処理が外部水素で専ら操作される場合が好ましい。外部水素は、特に外部供給源から供給される水素を意味すると理解されるべきである。外部供給源は、例えば貯蔵容器又は水蒸気改質用の装置であり得る。高純度水素が考慮される場合、特に3.0以上の品質の水素、特に5.0の品質の水素が好ましい。
【0029】
再循環ガス系は、好ましくは、窒素閾値に達しなくなるまでの時間内に反応器の反応空間から完全に切り離される。再循環ガス系は、好ましくは、窒素閾値に達しなくなるまで外部水素でパージされる。再循環ガス系に測定機器が割り当てられていない場合は、パージ持続時間を特定の持続時間、例えば1時間に指定することもできる。窒素以外のガス、例えばアルゴン又はヘリウムなどの希ガスで再循環ガス系のパージを行うことも可能である。窒素閾値に達しなくなったら、外部水素の添加を再び部分的に停止し、再循環ガスを使用する処理の実行を再開し得る。
【0030】
さらなる実施形態において、0.01〜1000ppmvの窒素閾値を超過すると、窒素閾値に再び達しなくなるまで流動床及び/又は反応器壁の温度を上昇させることが提供される。閾値は、好ましくは、流動床反応器のオフガス中で測定される。
【0031】
流動床及び/又は反応器壁の温度は、反応器に導入される反応ガスの量を減少させることによって上昇させ得る。反応ガスは、一般に、反応器に入るときに、流動床温度よりも低い。これは、反応ガスがある程度の冷却効果を有することを意味する。したがって、反応ガス量の減少の結果、この冷却効果が低下し得る。流動床温度が上昇する。
【0032】
代替的に又は追加的に、温度上昇は、反応器内の流動床を下げる(流動床の高さを下げる)ことによって実現され得る。反応空間は、原則として反応器壁を介して加熱され得る。反応空間内の流動床は一般に反応器壁よりも低温であり、したがって前記壁を冷却し得る。流動床の高さを低くすると、流動床によって冷却される反応器壁の面積が減少し、反応器温度が上昇する。
【0033】
驚くべきことに、流動床及び/又は反応器壁温度を上昇させると、その結果、反応空間への窒素導入が減少することが分かった。根本的な機序はまだ完全には説明されていない。温度上昇の結果、反応器壁が膨張し、したがってシールの領域におけるクランプ力を増大させると考えられる。温度上昇の結果また、反応器壁における微小亀裂が密封され得る。この微小亀裂の密封は、上述の(recited)膨張又は析出したシリコンによる亀裂の内張りのいずれかに起因し得る。
【0034】
再循環ガスは、最大90%、好ましくは最大40%、特に好ましくは最大10%の外部水素と混合され得る。オフガスから回収され得る水素が多いほど、混合しなければならない外部水素の割合は低くなる。
【0035】
好ましい実施形態において、反応ガスの成分であるハロシランはクロロシラン、特にトリクロロシラン(TCS)である。
【0036】
ハロシランの比質量流量(specific mass flow)は好ましくは1600〜12000kg/hの範囲である。
【0037】
反応ガスは、好ましくは、特に反応器の底部に配置される1つ以上のノズルを通じて流動床に吹き込まれる。
【0038】
流動床でのシリコン粒子の流動化に関与する流動化ガスは、好ましくは水素である。ヘリウム又はアルゴンなどの窒素以外の不活性ガス又は不活性ガス/水素混合物の使用も想定可能である。
【0039】
処理の開始前−反応器の始動前−に、水素による加圧とそれに続く減圧が反応器の内部で行われる場合が好ましい。加圧中の最大圧力が3.1〜15barの範囲、特に約6.5barであり、減圧中の最小圧力が1.1〜3barの範囲、特に約1.4barである場合が好ましい。この加圧及び減圧は、特に好ましくは、連続して数回、特に連続して3回行われる。
【0040】
この加圧及び減圧には再循環ガス系が含まれ得る。しかし、再循環ガス系が加圧及び減圧の前に反応空間から切り離され、任意選択的に、特に水素による別個のパージプログラムを受ける場合が好ましい。
【0041】
加圧及び減圧の両方が1〜60分間、特に好ましくは10〜30分間の持続時間を有する場合が好ましい。結果的に、この手順を3回実行すると6〜360分を要する。
【0042】
加圧は、好ましくは10〜7000m/hV、好ましくは300〜1500m/hV、特に好ましくは500〜1000m/hV、特には約520m/hVの、反応器容積(V[m])あたりの水素体積流量(標準立方メートル[m]/時[h])で行われる。例えば反応器直径が1.5mであり、反応器高さが10mである流動床反応器の場合、これは9200m/hの水素体積流量に相当する。
【0043】
本発明のさらなる態様は、窒素含有量が2ppba未満の多結晶シリコン粒状物に関する。前記粒状物の窒素含有量は、特に好ましくは1ppba未満、特に0.5ppba未満である。
【0044】
窒素含有量を測定するための好ましい測定方法は、SIMS(二次イオン質量分析)、FTIR(フーリエ変換赤外分光分析)及び/又は酸素/窒素/水素分析器による分析(例えばLECOからのONH836シリーズ)である。
【0045】
走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分光法(EDX)によって、本発明による多結晶シリコン粒状物中でSiは検出可能ではなかった。
【0046】
本発明による多結晶シリコン粒状物は、好ましくは、特に上述の測定方法の検出限界を考慮して、Siフリーである。したがって、本発明による多結晶シリコンは、例えば200回のSIMS分析を実行した後にSiが検出されなかった場合、Siフリーと見なされる。
【0047】
多結晶シリコン粒状物の表面は、好ましくは20000≧Ra≧400nm、好ましくは10000≧Ra≧700nmの表面粗さを有する。表面粗さの測定は、光学的プロフィロメトリーによって実施し得る。
【0048】
中性子放射化分析又はX線蛍光分析によって測定される多結晶シリコン粒状物の塩素含有量は、好ましくは0.01〜30ppma、特に好ましくは0.1〜20ppma、特に0.2〜10ppmaである。
【0049】
本発明のさらなる態様は、単結晶又は多結晶シリコンを製造するための多結晶シリコン粒状物の使用に関する。
【0050】
単結晶シリコンの積層欠陥数は、好ましくは、1平方センチメートルあたり300個未満、好ましくは200個未満、特に好ましくは100個未満、特に10個未満である。
【0051】
単結晶シリコンの転位欠陥数は、好ましくは、ロッド長1mあたり3未満、好ましくは1未満、特に好ましくは0.3未満、特に0.1未満である。
【0052】
本発明によるポリシリコン粒状物をチョクラルスキー法又はフローティングゾーン法による単結晶の製造のために使用する場合が好ましい。
【0053】
るつぼ引き上げ法(チョクラルスキー(CZ)法)によって本発明による多結晶シリコンから製造される単結晶シリコンは、好ましくは70%を超える、好ましくは83%を超える、特に好ましくは87%を超える、特に90%を超える、単結晶の無転位長を有する。
【0054】
インゴット鋳造又はストランド鋳造法、ブリッジマン炉での多結晶インゴット凝固(ブリッジマン−ストックバーガー法)、垂直勾配凍結(vertical gradient freeze)(VGF)法、リボングロース(ribbon growth)法、エッジ−デファインドフィルムフェッドグロース(edge−defined film−fed growth)(EFB)法及びDirect Wafer(TM)法(1366 technologies)による多結晶シリコンの製造のための本発明による多結晶シリコンの使用も好ましい。
【0055】
本発明による多結晶シリコンから製造される多結晶シリコンは材料品質が高い。材料品質改善の原因はまだ詳細には理解されていない。分かっていることは、シリコン中の窒素の溶解度を超過すると、Si析出物が形成されることである。これらは結晶性、針状及び繊維状の結晶の形態で出現する。これらは、個々に又はクラスターの形態で、しばしば炭化ケイ素析出物と同時に出現し得る。結晶析出物は、例えばるつぼ引き上げ中にるつぼ壁に形成される。ポリシリコン中のSi粒子は、るつぼ中の溶融物中でシード粒子として働き、多結晶シリコンインゴットを与えるための凝固時に、Si粒子として多結晶中に取り込まれると考えられる。Siは非導電性であるが、多結晶シリコン中のSi微結晶に沿って再結合活性の上昇が明らかであり、電荷担体の寿命を短くし得るか、又は短絡を引き起こし得る。この結果、多結晶シリコンの材料品質が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明による方法を実施するためのプラントの略図を示す。 図1のプラント20は3個の流動床反応器1を含み、流動床2は各場合において斜線部分により示される。各流動床反応器1は、その反応器ヘッドにおいてオフガス導管3を有し、これによりオフガスが流動床反応器1から排出される。ガス導管13aを介して、流動床反応器1の反応器底部14に流動化ガス、この例では水素が供給され得る。水素は、リザーバ15から抜き出され、純度5.0の外部水素である。
【0057】
ガス導管17を介して、反応器1にそれぞれ反応ガス、この例ではTCS及び水素が供給される。反応ガスは、各場合において、供給導管16から抜き出され、原則として一緒に又は個別に反応器1に供給され得る。
【0058】
オフガス導管3を介して流動床反応器1から排出されたオフガスは、熱交換器11に供給される。典型的には複数の凝縮段階を含む熱交換器11は、高沸点成分(例えば水素及び不純物、例えばホスファン、メタン、窒素及び砒素化合物など)及び低沸点成分(例えばハロシラン)への分別を行う。オフガスの高沸点成分は圧縮機10に供給され、この圧縮機10は、得られた水素が後に反応器1に送り返され得るような程度まで、これらのガス状成分の圧力レベルを上昇させるという役割がある。高沸点成分(依然として不純な水素)は引き続いて吸着器9に入るが、この吸着器9は、リン化合物(例えばホスファン)、メタン、塩化水素及び/又は砒素化合物などの不純物を除去するという役割がある。次いで、吸着器9から、回収された水素がガス導管13を介して再循環ガスとして反応器1に戻る。導管18を介して、再循環ガスにリザーバ15から外部水素が供給され得る。オフガス導管3、熱交換器11、圧縮機10、吸着器9及びガス導管13の配置は、特に水素の回収のための再循環ガス系である。
【0059】
プラント20はさらに、シラン/ハロシラン処理用の装置7を含む。オフガスの低沸点成分はこの装置7に供給される。装置7は、凝縮段階によってオフガスから回収されるシラン/ハロシラン混合物を分離するという役割がある。導管8を介して装置7を出るシラン/ハロシラン混合物は、反応器1に再循環させられ得るか、又はガス及び/又は液体として他の処理のために使用され得るかのいずれかである。
【0060】
試料抜き出し導管5は、オフガス導管3からガスクロマトグラフ12に通じる。吸着器9の下流で再循環ガスの試料を抜き出すさらなる試料抜き出し導管6もまたガスクロマトグラフ12につながる。ガスクロマトグラフ12は、再循環ガス系の様々な点で窒素含有量を測定するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0061】
表1のとおり、本発明の方法によって、再循環ガス中の窒素含有量が1000ppmv未満の様々なポリシリコン粒状物が製造された(実施例1、4〜6、8、10、11)。比較目的で、ポリシリコン粒状物を製造するために同一の反応器をさらに使用したが、ここで、再循環ガス中の窒素含有量は少なくとも1000ppmvであった(実施例2、3、7、9)。
【0062】
実施例1、2、7及び9の場合には、析出温度は1080℃のSiの形成に対して臨界的である温度(T)を下回った。実施例3〜6、8、10及び11の場合、析出温度はTを上回った(表1、カラム2)。
【0063】
実施例1〜11からの全てのポリシリコン粒状物は、EP2976296A2に記載のように流動床反応器中で製造された。
【0064】
再循環ガス中の窒素含有量(表1、カラム3)を各場合においてガスクロマトグラフ(GC)で測定した(プロセスGC:Siemens Maxum edition II;カラム:RestekからのRTX−1融合シリカキャピラリー、カラム長:60m)。試料抜き出しは、反応器ヘッドにおけるオフガス導管上の試料抜き出し導管を介して行った。
【0065】
ポリシリコン粒状物中の窒化ケイ素(Si)の含有量は、EDX分析器を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。この目的のために、得られたシリコン粒状物の複数の試料を200点で分析し、最大値を測定した(表1、カラム4)。0%のSi含有量は、200点の測定全てが1ppbaの検出限界を下回ったことを意味する。1%の含有量は、200回の測定点のうち2点がこの検出限界を上回ったことを意味する。
【0066】
派生製品の製造に関して製造されたポリシリコン粒状物の品質を試験するために、チョクラルスキー法による単結晶の製造も行った。
【0067】
引き上げ中に転位の測定(無転位ロッド長;表1、カラム7)を目視で観察して、引き上げ端での変化により単結晶を得た。
【0068】
無転位ロッド長(引き上げ歩留まり)は、転位欠陥フリーの全体のロッド長の百分率での割合である。総ロッド長を測定する場合、開始コーン及びエンドコーンは無視する。したがって、円筒形ロッドの長さのみが関連する。
【0069】
得られた単結晶中の積層欠陥数(表1、カラム5)は、光学顕微鏡下で計数することによって測定した(試験方法ASTM F 416)。積層欠陥を数えるために、シリコンロッドの試験ウエハーを酸化した。続いて酸化物層をエッチオフし、構造的エッチング剤(structural etchant)で欠陥を目視できるようにした。欠陥の計数は、画像認識ソフトウェアを用いて光学顕微鏡下で行った。
【0070】
単結晶製造で使用されたパラメータは、全てのポリシリコン粒状物出発材料について同一であった。
【0071】
【表1】
【0072】
(1080℃)を130℃下回った製造における実施例1、2及び7からの粒状物の場合、再循環ガス中の窒素含有量に関係なくSiが検出されなかったことは明らかである。Tに30℃及ばず、窒素含有量が1000ppmv(実施例9)である場合でさえ、Siは検出されなかった。
【0073】
しかし、6400ppmvという実施例2などの再循環ガス中の高窒素含有量により、粒状物から製造された単結晶シリコン中に多数の積層欠陥(3000)が生じることは明らかである。実施例2において、950℃の析出温度はSiの形成温度より低いので、多数の積層欠陥は、ほぼ確実に、ポリシリコン粒状物への窒素の不活性取り込みに起因する。
【0074】
実施例3、4、8及び10から、再循環ガス中の窒素の割合がポリシリコン粒状物中のSi含有量にどのように影響するかは明らかである。上述の実施例からの粒状物は全てTより1℃高い、すなわち1081℃の析出温度で製造された。1000ppmvの窒素含有量(実施例3)の結果、Si含有量が1.5%となる。シリコン単結晶の製造のためにこのSi含有粒状物を使用する場合、総ロッド長の66%のみが無転位である。実施例10で示されるように、再循環ガス中の窒素含有量を450ppmvまで半分を超えて減少させると、粒状物のSi含有量を0.5%まで減少させることが可能となり、その結果、派生製品単結晶シリコンの無転位長が82%となる。
【0075】
僅か94ppmvの窒素含有量で製造された実施例8からの粒状物の場合、検出可能なSiはなかった。無転位ロッド長が90%の単結晶シリコンが得られた。析出温度を950℃から1081℃に上昇させると、析出速度が指数関数的に3倍増加し、したがって本処理の経済性が著しく向上する。
【0076】
実施例5、6及び11からの粒状物は、Tを著しく上回る析出温度で製造された。実施例5からの粒状物(T+23℃)は僅か0.4ppmvの窒素含有量で製造された。Siは検出可能ではなかった。派生製品において、89%の無転位長が達成可能であった。実施例6からの粒状物は、1202℃の析出温度及び550ppmvの窒素含有量で製造された。高い析出温度と組み合わせて、この窒素含有量から、Si含有量が2%となった。したがって、派生製品中で達成可能であった無転位長は、僅か55%であった。実施例11の粒状物は同様に1202℃で製造された。しかし、再循環ガス中の窒素含有量は僅か0.4ppmvであった。実施例5のように、Siはもはや検出可能ではなかった。派生製品の無転位長は89%であった。
【0077】
しかし、析出温度と析出速度との間に存在する指数関数的な相関関係は、最大10の倍数による促進を可能にし、したがって製造コスト及び特定の資本コストの両方を著しく軽減する。
図1