【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、特許請求の範囲において特徴が示される本発明の実施の形態により解決される。
【0012】
特に、本発明によれば、末端エポキシ基間に異なるスペーサー基を有するジエポキシド化合物から選択される少なくとも2つの異なる架橋剤を使用して架橋された架橋非強化水和セルロース膜であって、架橋度が0.04〜0.10、水溶液中の膜面積における寸法変化が25%以下、並びに相対空気湿度40%〜50%及び温度23℃〜25℃で、DIN EN ISO 527−1及びDIN EN ISO 527−3による破断伸びが少なくとも20%である、水和セルロース膜が提供される。
【0013】
本発明によれば、架橋非強化水和セルロース膜は、
水和セルロース膜を準備する工程と、
該水和セルロース膜を、クロスリンカー溶液に含浸し、続いて温度を上げることによって架橋させる工程と、
架橋膜を水溶液中ですすぐ工程、及び例えばグリセロール含有溶液等の可塑剤溶液に含浸させる工程と、
該膜を、温度20℃〜150℃で乾燥する工程と、
を含む方法によって得ることが可能であり、該架橋は、末端エポキシ基間に異なるスペーサー基を有するジエポキシド化合物から選択される少なくとも2つの異なる架橋剤を含有するアルカリ水溶液中で実行され、該架橋は、温度75℃〜150℃で0.1分〜60分間実行される。
【0014】
驚くべきことに、アルカリ水溶液を使用して、また架橋剤として少なくとも2つの異なるジエポキシド化合物を使用しながら、温度75℃〜150℃で0.1分〜60分間、水和セルロース膜を架橋させることにより、膨潤及び収縮挙動の改善を示す、即ち、水による膨潤及び乾燥時の膜面積における寸法変化がより小さい水和セルロース膜が生じることを見出した。さらに、2つの異なる架橋剤と、熱架橋プロセス、即ち75℃〜150℃の高温で0.1分〜60分間の架橋プロセスの適用とを組み合わせることで、驚くべきことに従来技術において既知の水和セルロース膜と比較して、より高い機械的安定性を示すと同時に乾燥状態と湿潤状態との間の寸法変化が低減された水和セルロース膜が生じる。可塑剤含有量が少なくても、高い機械的可撓性又は高い破断伸びを得ることができ、また蒸気を用いなくても、プリーツ加工が可能になることから、機械的安定性の改善は、特に優れたプリーツ加工特性で表される。さらに、本発明による水和セルロース膜は、優れた巻きの品質を示す。
【0015】
本発明によれば、架橋させる工程は、架橋剤としての少なくとも2つの異なるジエポキシド化合物(以下、架橋剤A及び架橋剤Bとも称される)を使用する。本発明によれば、架橋溶液は、末端エポキシ基間のスペーサー基が異なる架橋剤としての2つの異なるジエポキシド化合物を含有するアルカリ水溶液である。「スペーサー基」は、本発明によれば、末端エポキシ基間の単位を意味すると理解される。
【0016】
架橋剤Aとして下記式:
【化1】
(式中、Xは、分岐状若しくは非分岐状C
1〜10アルキル基、分岐状若しくは非分岐状C
3〜10シクロアルキル基、又は置換若しくは非置換C
6〜20アリール基である)のグリシジルエーテルを使用することは、特に好ましい。
【0017】
架橋剤Bとして使用されるのが好ましいものは、下記式:
【化2】
(式中、nは、0〜50、好ましくは1〜20、特に好ましくは3〜10であり、Rは、水素又は分岐状若しくは非分岐状C
1〜10アルキル基である)のグリシジルエーテルである。
【0018】
言及され得る上述のジエポキシドの非限定的な例は、例えばジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EDGE)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BuDGE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル又はポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテルである。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態によれば、少なくとも1つのアルカンジオールジグリシジルエーテル、特に好ましくはBuDGE又はEDGE、及び少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEG−DGE)及び/又はポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PPG−DGE)が、それぞれ架橋剤A及び架橋剤Bとして使用される。本発明によれば、適切なポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル及びポリ(プロピレングリコール)グリシジルエーテルとして、n
p=1〜30の範囲の数のポリエチレン又はポリプロピレン反復単位n
pを有するものを使用することが可能である。
【0020】
特に好ましい実施の形態において、架橋水溶液は、BuDGEとPEG−DGEとの混合物を含有する。
【0021】
少なくとも2つの異なるジエポキシド化合物の比及び架橋溶液中のそれらの濃度は、いかなる特定の制限も受けない。好ましくは、架橋溶液は、0.01mol/kg(溶液1キログラム当たりのクロスリンカーのモル)〜0.5mol/kgの架橋剤A及び0.01mol/kg〜0.5mol/kgの架橋剤Bを含み、両方の場合において、0.05mol/kg〜0.3mol/kgが特に好ましい。架橋溶液中の異なるジエポキシド化合物の比は、好ましくは10〜90:90〜10、特に好ましくは20〜80:80〜20である。
【0022】
本発明によれば、架橋は、アルカリ水溶液中で行われ、水性媒質中で、或いは水性媒質と有機溶媒との混合物中で行うことができる。好ましくは、架橋は、有機溶媒を含有しない水性媒質中で実行される。
【0023】
さらに、水和セルロースの架橋を速めるために、架橋剤とともに、例えば、強塩基、特に水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)及び/又は水酸化カリウム(KOH)等の架橋触媒を使用することが好ましい。架橋溶液中の架橋触媒の濃度は、いかなる特定の制限も受けず、好ましくは0.02mol/kg(溶液1キログラム当たりの架橋触媒のモル)〜0.2mol/kg、特に好ましくは0.1mol/kg〜0.15mol/kgである。
【0024】
さらに、架橋溶液は更なる添加剤、特に中性塩を含有することが可能である。これに関連して、例えば、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウム等の中性塩を、架橋溶液に添加することにより、架橋反応の反応収率が増加する。
【0025】
上述するように、本発明によれば、架橋は、75℃〜150℃の高温で0.1分〜60分間行われ、80℃〜約140℃の範囲内の温度で架橋期間0.5分〜40分間が好ましい。温度90℃〜130℃で架橋期間1分〜20分間が特に好ましい。加熱工程は、炉、高温表面を使用して、又は熱放射を用いて実行され得る。
【0026】
架橋後、膜を水、水溶液又は例えば0.5重量%〜5重量%の希酢酸等の弱酸性媒質で中性に洗浄して、続いて水で洗浄して、可溶性成分を除去する。その後、得られた膜を、可塑剤溶液に、例えばグリセロール0.5重量%〜30重量%のグリセロール含有溶液に含浸させる。
【0027】
架橋工程後に得られる本発明による水和セルロース膜は、架橋度0.04〜0.10を示す。最大3の値が想定され得る架橋度(DX)の尺度として、下記等式:
DX=N
CL×[n
CLtot/(n
CLtot+n
(1/2)セロビオース)]
(式中、
n
(1/2)セロビオース=m
NetCHM/M
(1/2)セロビオースであり、
n
CLtot=(m
NetCHMx−m
NetCHM)/[[(m
CL1/(m
CL1+m
CL2))×M
CL1]+[(m
CL2/(m
CL1+m
CL2))×M
CL2]]であり、
n
CLtotは、総架橋剤(これ以降、クロスリンカーとも呼ぶ)の物質量(モル単位)であり、
n
(1/2)セロビオースは、使用される水和セルロース膜のセミセロビオース単位に基づく物質量(モル単位)であり、
m
NetCHMは、使用される水和セルロース膜の乾燥質量(g単位)であり、
M
(1/2)セロビオースは、セミセロビオース単位のモル質量(162g/mol)であり、
N
CLは、クロスリンカー1分子当たりの反応基の数に相当し、
m
NetCHMxは、架橋水和セルロース膜の乾燥質量(g単位)であり、
m
NetCHMは、水和セルロース膜(出発膜)の質量(g単位)である)に基づいて記載されるように、架橋剤を用いた反応の結果として、セルロースのアンヒドログルコース単位(以下、セミセロビオース単位と呼ばれる)の平均置換度が、本発明により選択される。クロスリンカーの物質量は、架橋膜m
NetCHMxと出発膜m
NetCHMとの間の乾燥質量の差から、並びにモル質量M
CL1及びM
CL2(g/mol単位)から、並びに反応溶液で使用されるクロスリンカーの質量分率m
CL1及びm
CL2から算出される。本発明による膜の作製に使用されるクロスリンカー分子は、クロスリンカー1分子当たり、2つの反応基、即ち末端エポキシ基を含有し、これはN
CLが2に等しいことを意味する。
【0028】
セミセロビオース単位の3つの水酸基に基づいて、DXの理論上可能な最大値は、3である。好ましくは、架橋度DXは、少なくとも0.045、より好ましくは0.05である。本発明によれば、架橋度DXの上限は、0.10である。より高い架橋度を用いて、膜のより高い機械的及び化学的安定性を達成することが可能であるが、これは、膜材料の硬化、したがって、脆性の増加を招く。かかる脆性膜のプリーツ加工性を保証するためには、不都合なことに、高い可塑剤分率及び/又は強化を必要とする。
【0029】
本発明によれば、架橋水和セルロース膜はまた、非強化膜として、優れたプリーツ加工性を有する。
【0030】
本発明によれば、水溶液中の水和セルロース膜の膜面積における寸法変化は、25%以下、好ましくは20%以下、特に好ましくは19%以下である。本発明によれば、膜面積における寸法変化(膨潤及び収縮挙動)は、あらかじめ水で完全に湿潤させた非強化架橋水和セルロース膜の寸法である長さ及び幅の測定によって決定される。その後、重量が一定になるまで、140℃で乾燥した後に、寸法を測定する。膜面積における寸法変化(DF)は、下記等式:
DF[%]=((a
2×b
2/a
1×b
1)−1)×100
(式中、a
1及びb
1は、乾燥膜の長さ及び幅であり、a
2及びb
2は、水で湿潤した膜の長さ及び幅である)に基づいて決定される。
【0031】
相対空気湿度40%〜50%及び温度23℃〜25℃で、DIN EN ISO 527−1及びDIN EN ISO 527−3による破断伸びが少なくとも20%であることは、本発明による膜の更なる特徴である。好ましくは、破断伸びの下限は、25%であり、26%が特に好ましい。破断伸びは、実施例1に記載するように、DIN EN ISO 527−1及びDIN EN ISO 527−3による方法に基づいて決定される。破断伸びに関する指定値はそれぞれ、膜の引っ張り方向に平行及び垂直な4つの測定値の平均値である。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態によれば、水和セルロース膜は、精密濾過膜又は限外濾過膜である。特に好ましくは、本発明による膜は、0.1μm〜10μmの範囲内の平均流動孔サイズを有する精密濾過膜である。平均流動孔サイズ0.1μm〜0.6μmを有する滅菌濾過膜が特に好ましい。平均流動孔サイズは、実施例1に記載する方法に基づいて決定される。
【0033】
本発明の更に好ましい実施の形態によれば、水和セルロース膜は、プリーツ状であり、非強化プリーツ状膜として存在する。
【0034】
本発明は、本発明による架橋非強化水和セルロース膜を作製する方法を更に提供する。したがって、本発明による架橋水和セルロース膜に関する上記特徴は、本発明による作製方法にも適用する。
【0035】
本発明による架橋非強化水和セルロース膜を作製する方法は、
水和セルロース膜を準備する工程と、続いて、
該水和セルロース膜を、クロスリンカー溶液に含浸し、続いて温度を上げることによって架橋させる工程、該架橋は、末端エポキシ基間に異なるスペーサー基を有するジエポキシド化合物から選択される少なくとも2つの異なる架橋剤を含有するアルカリ水溶液中で実行され、該架橋は、温度75℃〜150℃で0.1分〜60分間実行される、工程と、
続いて、水溶液中ですすぐことによって、過剰な反応物及び可溶性反応生成物を除去する工程、続いて可塑剤溶液、例えばグリセロール溶液に含浸させる工程と、
続いて、該膜を乾燥する工程であって、該乾燥は、温度20℃〜150℃で実行される、工程と、
を含む。
【0036】
連続的な作製プロセスの反応工程が特に好ましい。
【0037】
本発明による水和セルロース膜に使用される出発材料は、例えば、セルロースエステル膜から得ることができる水和セルロース膜であってもよく、in situでエステル基の加水分解(けん化)を引き起こして、水酸基を形成する条件下でのけん化反応において、セルロースエステル膜を少なくとも1つの水溶液と接触させて、水和セルロース膜を形成させる。
【0038】
したがって、本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、水和セルロース膜は、水性媒質中でのセルロースエステル膜のけん化によって予め得られる。
【0039】
上記で説明するように、水和セルロース膜は、架橋剤として少なくとも2つの異なるジエポキシド化合物を別々に使用して熱架橋される。したがって、けん化工程及び架橋工程は、同時に実行されず、別々の方法工程で実行される。
【0040】
好ましい実施の形態において、出発膜、即ち、水和セルロース膜は、孔径0.1μm〜10μm、好ましくは0.1μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜0.6μm、及び厚さ50μm〜150μmを有するセルロースエステル膜のけん化によって得ることができ、セルロースエステル膜は、専門家分野において既知の通例の作製方法によって作製された。孔径は、キャピラリーフローポロメトリー試験を実施することによって決定される。更なる詳細は、Porometer社のPorolux 500に関する操作説明書から取得することができるか、又は実施例1に記載されている。
【0041】
セルロースエステル膜は、一酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース及び酢酸酪酸セルロース若しくは他の適切なセルロースエステル又は硝酸セルロース、メチルセルロース若しくはエチルセルロース、また更にそれらの混合物から構築することができ、酢酸セルロース、特に二酢酸セルロースが好ましい。セルロースエステル膜はまた、エステル基の他に、水酸基を幾分含有することができることを、当業者は承知している。
【0042】
けん化前に、セルロースエステル膜を、任意選択で、適切な媒質中で前処理することができる。前処理工程の温度は、10℃〜100℃の範囲内であることが好ましく、約15℃〜約40℃の範囲内の温度が特に好ましい。前処理媒質は、例えば空気等の気体、例えばアルコール等の有機溶媒、又は水性媒質であってもよく、水性媒質が好ましい。
【0043】
前処理の持続期間は、前処理媒質中でセルロースエステル膜の温度調節を保証する最低限の作用持続期間を適用する限り、前処理効果に対して実質的に影響を与えない。前処理は、脱塩水を使用して前処理媒質を膜からすすぎ流すことによって終了させることができる。
【0044】
任意選択で前処理したセルロースエステル膜は、適切なけん化媒質を使用してけん化されて、水和セルロース膜を形成させる。濡れ性に応じて、セルロースエステル膜は、けん化工程において乾燥又は湿潤状態で使用することができる。
【0045】
セルロースエステル膜は、けん化媒質中でけん化される。7超のpHを有する水性けん化媒質を使用することが、特に好ましい。けん化媒質は、アルカリ化合物、好ましくはアルカリ金属水酸化物を含むことが好ましい。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムの水溶液を使用することが、特に好ましい。本発明の特に好ましい実施の形態によれば、水酸化ナトリウム含有及び/又は水酸化カリウム含有水溶液が使用され、けん化媒質中の水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの濃度は、0.1mol/kg〜5mol/kgの範囲内、特に好ましくは0.1mol/kg〜0.6mol/kgの範囲内である。
【0046】
好ましくは、塩基性けん化媒質(NaOH及び/又はKOH水)は、0.1mol/kg〜5mol/kgの濃度で、例えば炭酸カリウム等の塩を更に含有する。けん化工程で使用する媒質の温度は、約10℃から最大けん化媒質の沸点までであってもよく、15℃〜約50℃の範囲内の温度が好ましい。
【0047】
けん化期間は、けん化媒質の組成及びけん化温度によって決定される。通常、けん化期間は、0.1分〜60分であり、5分〜30分のけん化期間が好ましい。
【0048】
その後、本発明による方法のこの好ましい実施の形態において、得られたけん化酢酸セルロース膜は、上述するように、少なくとも2つの異なる架橋剤を使用して架橋される。本発明によるこの架橋工程の正確な説明に関して、上記の関連特徴を参照されたい。
【0049】
上述するように、得られた架橋水和セルロース膜を、グリセロール0.5重量%〜30重量%のグリセロール含有溶液で更に処理することができる。本発明によれば、好適なことに、可塑剤含有量が少ない非強化プリーツ状水和セルロース膜を作製することが可能である。本発明による膜の機械的安定性の改善により、例えばグリセロールの形態の可塑剤含有量は、特に10重量%未満、より好ましくは8重量%未満である。好ましい実施の形態によれば、本発明による作製方法は、架橋水和セルロース膜のプリーツ加工の工程を更に含む。さらに、本発明による膜の特性に起因して、蒸気を用いずに、プリーツ加工を行うことが可能である。
【0050】
架橋水和セルロースで構成される本発明による膜は、平面状の膜として作製することができ、対応するモジュールに取り付けることができる。上述するように、本発明による水和セルロース膜は、非強化であるにもかかわらず、プリーツ加工に特に適している。
【0051】
本発明による膜の応用領域は、水性媒質の任意の濾過にまで及ぶ。例えば、これは、生物学的起源及び生物工学的起源の水性媒質の濾過に関する事例である。
【0052】
本発明は、より詳細には、下記の非限定的な実施例、得られた膜の特性を概要する
図1a〜
図3bに表すグラフに基づいて解明される。