特許第6977046号(P6977046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6977046架橋非強化水和セルロース膜、その作製方法、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977046
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】架橋非強化水和セルロース膜、その作製方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/14 20060101AFI20211125BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20211125BHJP
   B01D 63/14 20060101ALI20211125BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20211125BHJP
   B01D 61/18 20060101ALI20211125BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20211125BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B01D71/14
   B01D69/02
   B01D63/14
   C02F1/44 D
   B01D61/18
   C08L63/00 A
   C08L1/02
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-541413(P2019-541413)
(86)(22)【出願日】2017年12月1日
(65)【公表番号】特表2020-506044(P2020-506044A)
(43)【公表日】2020年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2017081179
(87)【国際公開番号】WO2018141437
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年10月24日
(31)【優先権主張番号】102017000919.8
(32)【優先日】2017年2月2日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511034561
【氏名又は名称】ザルトリウス ステディム ビオテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル クラウス サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェ アネッテ
(72)【発明者】
【氏名】ニーニョ−アメスキタ ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ビジャイン ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ヘール ハンス−ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】メルツナー ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ベーテ フランツィスカ
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−536114(JP,A)
【文献】 特表平10−500897(JP,A)
【文献】 特開2012−206115(JP,A)
【文献】 特開2008−43948(JP,A)
【文献】 特表2009−503160(JP,A)
【文献】 特開2004−314072(JP,A)
【文献】 特表2010−518202(JP,A)
【文献】 特開平3−68431(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0093059(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
C08B 1/00 − 37/18
C08J 9/00 − 9/42
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BuDGE)、及び少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEG−DGE)及び/又はポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PPG−DGE)を架橋剤として使用して架橋された、不織布で強化されていない架橋非強化水和セルロース膜であって、架橋度が0.04〜0.10、水溶液中の膜面積における寸法変化が25%以下、並びに相対空気湿度40%〜50%及び温度23℃〜25℃で、DIN EN ISO 527−1及びDIN EN ISO 527−3による破断伸びが少なくとも20%である、水和セルロース膜。
【請求項2】
精密濾過膜又は限外濾過膜である、請求項1に記載の架橋非強化水和セルロース膜。
【請求項3】
滅菌濾過を可能にする、請求項1又は2に記載の架橋非強化水和セルロース膜。
【請求項4】
BuDGE及びPEG−DGEが、前記架橋剤として使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の架橋非強化水和セルロース膜。
【請求項5】
プリーツ状である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の架橋非強化水和セルロース膜。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の架橋非強化水和セルロース膜を作製する方法であって、
水和セルロース膜を準備する工程と、続いて、
該水和セルロース膜を、クロスリンカー溶液に含浸し、続いて温度を上げることによって架橋させる工程であって、該架橋は、BuDGE、及び少なくとも1つのPEG−DGE及び/又はPPG−DGEを含有するアルカリ水溶液中で実行され、該架橋は、温度75℃〜150℃で0.1分〜60分間実行される、工程と、
続いて、水溶液中ですすぐことによって、過剰な反応物及び可溶性反応生成物を除去する工程、続いて可塑剤溶液に含浸させる工程と、
続いて、該膜を乾燥する工程であって、該乾燥は、温度20℃〜150℃で実行される、工程と、
を含む、方法。
【請求項7】
前記水和セルロース膜は、水性媒質中でのセルロースエステル膜のけん化によって得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記けん化は、水酸化ナトリウム含有溶液、水酸化カリウム含有溶液及び/又は水酸化リチウム含有溶液中で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記架橋は、温度80℃〜140℃で0.5分〜40分間実行される、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記架橋非強化水和セルロース膜をプリーツ加工する工程を更に含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
水性媒質の濾過のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の架橋非強化水和セルロース膜又は請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法によって作製される架橋非強化水和セルロース膜の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋非強化水和セルロース膜、その作製方法、及び水性媒質の濾過のための本発明による膜の使用に関する。特に、本発明は、収縮及び膨潤挙動の低減、また従来技術の水和セルロース膜と比較して高い機械的安定性を特徴とし、滅菌濾過用の膜フィルターデバイスに適しているプリーツ加工可能な水和セルロース膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、濾過膜用の基礎材料として、様々な材料が記載されており、これらには、水和セルロース膜が含まれる。水和セルロース膜は、界面活性剤の使用なしでのその水濡れ性で表される親水性、低いタンパク質吸着、高い耐熱性、及びほとんどの有機溶媒に対する耐性等の好適な特性の特有の組合せを有する。しかしながら、水和セルロース膜には、例えば、強アルカリ溶液、強酸及びセルラーゼに対する耐性の欠如、またいわゆる「偽発熱物質(pseudopyrogens:シュードパイロジェン)」の放出等の水系の濾過における幾つかの不利な点もある。
【0003】
この状況において、特許文献1は、アルカリ化合物、酸及びセルラーゼに耐性であり、かつ偽発熱物質を発しない架橋水和セルロース膜を開示している。該膜は、再生水和セルロース膜、即ち、けん化酢酸セルロース膜を、水溶解度が少なくとも0.2mol/Lである水溶性ジエポキシドを使用して架橋させることによって得ることが可能であり、唯一の水溶性ジエポキシドとして5−エチル−1,3−ジグリシジル−5−メチルヒダントインが挙げられている。架橋は、アルカリ金属水酸化物水溶液中で行われる。この状況において、特許文献1は、水溶性ジエポキシドが架橋剤として使用される場合、0.4超の高い架橋度でさえも、架橋水和セルロース膜の親水性にはいかなる障害も伴わないと言明している。
【0004】
水和セルロース濾過膜を、セルロースエステル膜から作製する場合、けん化プロセスは、膜の多孔質構造が可能な限り変化しないように実行されることが好ましい。特許文献2及び特許文献3は、セルロースエステル膜の同時けん化及び架橋で構成され、濾過及び吸着膜にも適しているとされる、架橋水和セルロース膜を作製する方法について記載している。その発明中に記載されるその発明の目標の1つは、膜の構造及び透過性に影響を及ぼさない条件下でのセルロースエステルのけん化及び架橋である。
【0005】
同様に、特許文献4は、ジグリシジルエーテルに由来する二官能性エポキシドを使用して、アルカリ性媒質中で架橋させることによって、酢酸セルロース膜から得ることが可能な架橋水和セルロース膜を開示している。例示的な実施形態の開示内容に基づいて、けん化及び架橋は、特許文献2及び特許文献3に類似して、「ワンポット」法で実施される。得られた膜は、水溶液中での体積の膨潤が40%〜250%であることを特徴とする。
【0006】
特許文献5は、極性非プロトン性溶媒に耐性である水和セルロースで構成される親水性架橋ナノ濾過膜を開示している。いずれの場合でも、ジグリシジルエーテルに由来するジエポキシド化合物を添加することによって、特に、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BuDGE)又はエチレングリコールジグリシジルエーテル(EDGE)のいずれかを、EDGEのエチレンオキシド反復単位の分子量又は数のいかなる更なる指定もせずに使用して、架橋が行われる。
【0007】
特許文献6は、水和セルロース膜と、特定のアルカンジオールジグリシジルエーテルとの、例えば水酸化ナトリウム水溶液中でBuDGEを用いた反応による架橋水和セルロース膜の作製を開示している。
【0008】
特許文献1に開示される架橋水和セルロース膜は、Hydrosart(商標)膜としてその出願人によって販売されているが、この膜は、常に不織布で強化され、滅菌濾過には不適切である。今のところ、非強化でプリーツ加工可能なHydrosart(商標)膜は存在しない。0.05〜0.5の上記膜の高い架橋度により、上記膜は、可塑剤の割合が高くても、例えば、10重量%を超えるグリセロールであっても、プリーツ加工にとっては脆性すぎる。上記水和セルロース膜は、反応温度0℃〜50℃及び反応時間48時間〜96時間で、不連続に架橋される。しかしながら、このプロセスを行うことにより、膜の品質に関する不利な点、例えば、いわゆる「スタートオブロール/エンドオブロール効果」、即ち、数パーセントの流速及び厚さの差、又は乏しい巻きの品質(winding quality)等も生じる。その結果として、上記膜では、信頼性の高い滅菌濾過は不可能である。さらに、強化材から濾液へと粒子が流れるのを回避するためには、滅菌濾過における用途に非強化膜が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第95/32793号
【特許文献2】国際公開第2007/017085号
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0179248号
【特許文献4】国際公開第2008/095709号
【特許文献5】国際公開第2008/0245736号
【特許文献6】欧州特許第1 470 854号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、従来技術において既知の水和セルロース膜の上述の不利な点を克服する架橋非強化水和セルロース膜を提供することである。特に、本発明の目的は、コスト効率の良い様式で作製することができ、膜流速及び膜厚に関して高い一貫性を有し、高い機械的安定性、特に低い可塑剤含有量での高い可撓性を有し、蒸気を用いずにプリーツ加工が可能であり、即ち、優れたプリーツ加工性を有し、優れた膨潤−収縮特性を示し、即ち、水性媒質を用いた膨潤及び乾燥時に寸法変化をほとんど示さず、また優れた巻きの品質を示して、プリーツ加工後に滅菌濾過に使用することができる架橋非強化水和セルロース膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、特許請求の範囲において特徴が示される本発明の実施の形態により解決される。
【0012】
特に、本発明によれば、末端エポキシ基間に異なるスペーサー基を有するジエポキシド化合物から選択される少なくとも2つの異なる架橋剤を使用して架橋された架橋非強化水和セルロース膜であって、架橋度が0.04〜0.10、水溶液中の膜面積における寸法変化が25%以下、並びに相対空気湿度40%〜50%及び温度23℃〜25℃で、DIN EN ISO 527−1及びDIN EN ISO 527−3による破断伸びが少なくとも20%である、水和セルロース膜が提供される。
【0013】
本発明によれば、架橋非強化水和セルロース膜は、
水和セルロース膜を準備する工程と、
該水和セルロース膜を、クロスリンカー溶液に含浸し、続いて温度を上げることによって架橋させる工程と、
架橋膜を水溶液中ですすぐ工程、及び例えばグリセロール含有溶液等の可塑剤溶液に含浸させる工程と、
該膜を、温度20℃〜150℃で乾燥する工程と、
を含む方法によって得ることが可能であり、該架橋は、末端エポキシ基間に異なるスペーサー基を有するジエポキシド化合物から選択される少なくとも2つの異なる架橋剤を含有するアルカリ水溶液中で実行され、該架橋は、温度75℃〜150℃で0.1分〜60分間実行される。
【0014】
驚くべきことに、アルカリ水溶液を使用して、また架橋剤として少なくとも2つの異なるジエポキシド化合物を使用しながら、温度75℃〜150℃で0.1分〜60分間、水和セルロース膜を架橋させることにより、膨潤及び収縮挙動の改善を示す、即ち、水による膨潤及び乾燥時の膜面積における寸法変化がより小さい水和セルロース膜が生じることを見出した。さらに、2つの異なる架橋剤と、熱架橋プロセス、即ち75℃〜150℃の高温で0.1分〜60分間の架橋プロセスの適用とを組み合わせることで、驚くべきことに従来技術において既知の水和セルロース膜と比較して、より高い機械的安定性を示すと同時に乾燥状態と湿潤状態との間の寸法変化が低減された水和セルロース膜が生じる。可塑剤含有量が少なくても、高い機械的可撓性又は高い破断伸びを得ることができ、また蒸気を用いなくても、プリーツ加工が可能になることから、機械的安定性の改善は、特に優れたプリーツ加工特性で表される。さらに、本発明による水和セルロース膜は、優れた巻きの品質を示す。
【0015】
本発明によれば、架橋させる工程は、架橋剤としての少なくとも2つの異なるジエポキシド化合物(以下、架橋剤A及び架橋剤Bとも称される)を使用する。本発明によれば、架橋溶液は、末端エポキシ基間のスペーサー基が異なる架橋剤としての2つの異なるジエポキシド化合物を含有するアルカリ水溶液である。「スペーサー基」は、本発明によれば、末端エポキシ基間の単位を意味すると理解される。
【0016】
架橋剤Aとして下記式:
【化1】
(式中、Xは、分岐状若しくは非分岐状C1〜10アルキル基、分岐状若しくは非分岐状C3〜10シクロアルキル基、又は置換若しくは非置換C6〜20アリール基である)のグリシジルエーテルを使用することは、特に好ましい。
【0017】
架橋剤Bとして使用されるのが好ましいものは、下記式:
【化2】
(式中、nは、0〜50、好ましくは1〜20、特に好ましくは3〜10であり、Rは、水素又は分岐状若しくは非分岐状C1〜10アルキル基である)のグリシジルエーテルである。
【0018】
言及され得る上述のジエポキシドの非限定的な例は、例えばジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EDGE)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BuDGE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル又はポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテルである。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態によれば、少なくとも1つのアルカンジオールジグリシジルエーテル、特に好ましくはBuDGE又はEDGE、及び少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEG−DGE)及び/又はポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PPG−DGE)が、それぞれ架橋剤A及び架橋剤Bとして使用される。本発明によれば、適切なポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル及びポリ(プロピレングリコール)グリシジルエーテルとして、n=1〜30の範囲の数のポリエチレン又はポリプロピレン反復単位nを有するものを使用することが可能である。
【0020】
特に好ましい実施の形態において、架橋水溶液は、BuDGEとPEG−DGEとの混合物を含有する。
【0021】
少なくとも2つの異なるジエポキシド化合物の比及び架橋溶液中のそれらの濃度は、いかなる特定の制限も受けない。好ましくは、架橋溶液は、0.01mol/kg(溶液1キログラム当たりのクロスリンカーのモル)〜0.5mol/kgの架橋剤A及び0.01mol/kg〜0.5mol/kgの架橋剤Bを含み、両方の場合において、0.05mol/kg〜0.3mol/kgが特に好ましい。架橋溶液中の異なるジエポキシド化合物の比は、好ましくは10〜90:90〜10、特に好ましくは20〜80:80〜20である。
【0022】
本発明によれば、架橋は、アルカリ水溶液中で行われ、水性媒質中で、或いは水性媒質と有機溶媒との混合物中で行うことができる。好ましくは、架橋は、有機溶媒を含有しない水性媒質中で実行される。
【0023】
さらに、水和セルロースの架橋を速めるために、架橋剤とともに、例えば、強塩基、特に水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)及び/又は水酸化カリウム(KOH)等の架橋触媒を使用することが好ましい。架橋溶液中の架橋触媒の濃度は、いかなる特定の制限も受けず、好ましくは0.02mol/kg(溶液1キログラム当たりの架橋触媒のモル)〜0.2mol/kg、特に好ましくは0.1mol/kg〜0.15mol/kgである。
【0024】
さらに、架橋溶液は更なる添加剤、特に中性塩を含有することが可能である。これに関連して、例えば、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウム等の中性塩を、架橋溶液に添加することにより、架橋反応の反応収率が増加する。
【0025】
上述するように、本発明によれば、架橋は、75℃〜150℃の高温で0.1分〜60分間行われ、80℃〜約140℃の範囲内の温度で架橋期間0.5分〜40分間が好ましい。温度90℃〜130℃で架橋期間1分〜20分間が特に好ましい。加熱工程は、炉、高温表面を使用して、又は熱放射を用いて実行され得る。
【0026】
架橋後、膜を水、水溶液又は例えば0.5重量%〜5重量%の希酢酸等の弱酸性媒質で中性に洗浄して、続いて水で洗浄して、可溶性成分を除去する。その後、得られた膜を、可塑剤溶液に、例えばグリセロール0.5重量%〜30重量%のグリセロール含有溶液に含浸させる。
【0027】
架橋工程後に得られる本発明による水和セルロース膜は、架橋度0.04〜0.10を示す。最大3の値が想定され得る架橋度(DX)の尺度として、下記等式:
DX=NCL×[nCLtot/(nCLtot+n(1/2)セロビオース)]
(式中、
(1/2)セロビオース=mNetCHM/M(1/2)セロビオースであり、
CLtot=(mNetCHMx−mNetCHM)/[[(mCL1/(mCL1+mCL2))×MCL1]+[(mCL2/(mCL1+mCL2))×MCL2]]であり、
CLtotは、総架橋剤(これ以降、クロスリンカーとも呼ぶ)の物質量(モル単位)であり、
(1/2)セロビオースは、使用される水和セルロース膜のセミセロビオース単位に基づく物質量(モル単位)であり、
NetCHMは、使用される水和セルロース膜の乾燥質量(g単位)であり、
(1/2)セロビオースは、セミセロビオース単位のモル質量(162g/mol)であり、
CLは、クロスリンカー1分子当たりの反応基の数に相当し、
NetCHMxは、架橋水和セルロース膜の乾燥質量(g単位)であり、
NetCHMは、水和セルロース膜(出発膜)の質量(g単位)である)に基づいて記載されるように、架橋剤を用いた反応の結果として、セルロースのアンヒドログルコース単位(以下、セミセロビオース単位と呼ばれる)の平均置換度が、本発明により選択される。クロスリンカーの物質量は、架橋膜mNetCHMxと出発膜mNetCHMとの間の乾燥質量の差から、並びにモル質量MCL1及びMCL2(g/mol単位)から、並びに反応溶液で使用されるクロスリンカーの質量分率mCL1及びmCL2から算出される。本発明による膜の作製に使用されるクロスリンカー分子は、クロスリンカー1分子当たり、2つの反応基、即ち末端エポキシ基を含有し、これはNCLが2に等しいことを意味する。
【0028】
セミセロビオース単位の3つの水酸基に基づいて、DXの理論上可能な最大値は、3である。好ましくは、架橋度DXは、少なくとも0.045、より好ましくは0.05である。本発明によれば、架橋度DXの上限は、0.10である。より高い架橋度を用いて、膜のより高い機械的及び化学的安定性を達成することが可能であるが、これは、膜材料の硬化、したがって、脆性の増加を招く。かかる脆性膜のプリーツ加工性を保証するためには、不都合なことに、高い可塑剤分率及び/又は強化を必要とする。
【0029】
本発明によれば、架橋水和セルロース膜はまた、非強化膜として、優れたプリーツ加工性を有する。
【0030】
本発明によれば、水溶液中の水和セルロース膜の膜面積における寸法変化は、25%以下、好ましくは20%以下、特に好ましくは19%以下である。本発明によれば、膜面積における寸法変化(膨潤及び収縮挙動)は、あらかじめ水で完全に湿潤させた非強化架橋水和セルロース膜の寸法である長さ及び幅の測定によって決定される。その後、重量が一定になるまで、140℃で乾燥した後に、寸法を測定する。膜面積における寸法変化(DF)は、下記等式:
DF[%]=((a×b/a×b)−1)×100
(式中、a及びbは、乾燥膜の長さ及び幅であり、a及びbは、水で湿潤した膜の長さ及び幅である)に基づいて決定される。
【0031】
相対空気湿度40%〜50%及び温度23℃〜25℃で、DIN EN ISO 527−1及びDIN EN ISO 527−3による破断伸びが少なくとも20%であることは、本発明による膜の更なる特徴である。好ましくは、破断伸びの下限は、25%であり、26%が特に好ましい。破断伸びは、実施例1に記載するように、DIN EN ISO 527−1及びDIN EN ISO 527−3による方法に基づいて決定される。破断伸びに関する指定値はそれぞれ、膜の引っ張り方向に平行及び垂直な4つの測定値の平均値である。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態によれば、水和セルロース膜は、精密濾過膜又は限外濾過膜である。特に好ましくは、本発明による膜は、0.1μm〜10μmの範囲内の平均流動孔サイズを有する精密濾過膜である。平均流動孔サイズ0.1μm〜0.6μmを有する滅菌濾過膜が特に好ましい。平均流動孔サイズは、実施例1に記載する方法に基づいて決定される。
【0033】
本発明の更に好ましい実施の形態によれば、水和セルロース膜は、プリーツ状であり、非強化プリーツ状膜として存在する。
【0034】
本発明は、本発明による架橋非強化水和セルロース膜を作製する方法を更に提供する。したがって、本発明による架橋水和セルロース膜に関する上記特徴は、本発明による作製方法にも適用する。
【0035】
本発明による架橋非強化水和セルロース膜を作製する方法は、
水和セルロース膜を準備する工程と、続いて、
該水和セルロース膜を、クロスリンカー溶液に含浸し、続いて温度を上げることによって架橋させる工程、該架橋は、末端エポキシ基間に異なるスペーサー基を有するジエポキシド化合物から選択される少なくとも2つの異なる架橋剤を含有するアルカリ水溶液中で実行され、該架橋は、温度75℃〜150℃で0.1分〜60分間実行される、工程と、
続いて、水溶液中ですすぐことによって、過剰な反応物及び可溶性反応生成物を除去する工程、続いて可塑剤溶液、例えばグリセロール溶液に含浸させる工程と、
続いて、該膜を乾燥する工程であって、該乾燥は、温度20℃〜150℃で実行される、工程と、
を含む。
【0036】
連続的な作製プロセスの反応工程が特に好ましい。
【0037】
本発明による水和セルロース膜に使用される出発材料は、例えば、セルロースエステル膜から得ることができる水和セルロース膜であってもよく、in situでエステル基の加水分解(けん化)を引き起こして、水酸基を形成する条件下でのけん化反応において、セルロースエステル膜を少なくとも1つの水溶液と接触させて、水和セルロース膜を形成させる。
【0038】
したがって、本発明の方法の好ましい実施の形態によれば、水和セルロース膜は、水性媒質中でのセルロースエステル膜のけん化によって予め得られる。
【0039】
上記で説明するように、水和セルロース膜は、架橋剤として少なくとも2つの異なるジエポキシド化合物を別々に使用して熱架橋される。したがって、けん化工程及び架橋工程は、同時に実行されず、別々の方法工程で実行される。
【0040】
好ましい実施の形態において、出発膜、即ち、水和セルロース膜は、孔径0.1μm〜10μm、好ましくは0.1μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜0.6μm、及び厚さ50μm〜150μmを有するセルロースエステル膜のけん化によって得ることができ、セルロースエステル膜は、専門家分野において既知の通例の作製方法によって作製された。孔径は、キャピラリーフローポロメトリー試験を実施することによって決定される。更なる詳細は、Porometer社のPorolux 500に関する操作説明書から取得することができるか、又は実施例1に記載されている。
【0041】
セルロースエステル膜は、一酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース及び酢酸酪酸セルロース若しくは他の適切なセルロースエステル又は硝酸セルロース、メチルセルロース若しくはエチルセルロース、また更にそれらの混合物から構築することができ、酢酸セルロース、特に二酢酸セルロースが好ましい。セルロースエステル膜はまた、エステル基の他に、水酸基を幾分含有することができることを、当業者は承知している。
【0042】
けん化前に、セルロースエステル膜を、任意選択で、適切な媒質中で前処理することができる。前処理工程の温度は、10℃〜100℃の範囲内であることが好ましく、約15℃〜約40℃の範囲内の温度が特に好ましい。前処理媒質は、例えば空気等の気体、例えばアルコール等の有機溶媒、又は水性媒質であってもよく、水性媒質が好ましい。
【0043】
前処理の持続期間は、前処理媒質中でセルロースエステル膜の温度調節を保証する最低限の作用持続期間を適用する限り、前処理効果に対して実質的に影響を与えない。前処理は、脱塩水を使用して前処理媒質を膜からすすぎ流すことによって終了させることができる。
【0044】
任意選択で前処理したセルロースエステル膜は、適切なけん化媒質を使用してけん化されて、水和セルロース膜を形成させる。濡れ性に応じて、セルロースエステル膜は、けん化工程において乾燥又は湿潤状態で使用することができる。
【0045】
セルロースエステル膜は、けん化媒質中でけん化される。7超のpHを有する水性けん化媒質を使用することが、特に好ましい。けん化媒質は、アルカリ化合物、好ましくはアルカリ金属水酸化物を含むことが好ましい。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムの水溶液を使用することが、特に好ましい。本発明の特に好ましい実施の形態によれば、水酸化ナトリウム含有及び/又は水酸化カリウム含有水溶液が使用され、けん化媒質中の水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの濃度は、0.1mol/kg〜5mol/kgの範囲内、特に好ましくは0.1mol/kg〜0.6mol/kgの範囲内である。
【0046】
好ましくは、塩基性けん化媒質(NaOH及び/又はKOH水)は、0.1mol/kg〜5mol/kgの濃度で、例えば炭酸カリウム等の塩を更に含有する。けん化工程で使用する媒質の温度は、約10℃から最大けん化媒質の沸点までであってもよく、15℃〜約50℃の範囲内の温度が好ましい。
【0047】
けん化期間は、けん化媒質の組成及びけん化温度によって決定される。通常、けん化期間は、0.1分〜60分であり、5分〜30分のけん化期間が好ましい。
【0048】
その後、本発明による方法のこの好ましい実施の形態において、得られたけん化酢酸セルロース膜は、上述するように、少なくとも2つの異なる架橋剤を使用して架橋される。本発明によるこの架橋工程の正確な説明に関して、上記の関連特徴を参照されたい。
【0049】
上述するように、得られた架橋水和セルロース膜を、グリセロール0.5重量%〜30重量%のグリセロール含有溶液で更に処理することができる。本発明によれば、好適なことに、可塑剤含有量が少ない非強化プリーツ状水和セルロース膜を作製することが可能である。本発明による膜の機械的安定性の改善により、例えばグリセロールの形態の可塑剤含有量は、特に10重量%未満、より好ましくは8重量%未満である。好ましい実施の形態によれば、本発明による作製方法は、架橋水和セルロース膜のプリーツ加工の工程を更に含む。さらに、本発明による膜の特性に起因して、蒸気を用いずに、プリーツ加工を行うことが可能である。
【0050】
架橋水和セルロースで構成される本発明による膜は、平面状の膜として作製することができ、対応するモジュールに取り付けることができる。上述するように、本発明による水和セルロース膜は、非強化であるにもかかわらず、プリーツ加工に特に適している。
【0051】
本発明による膜の応用領域は、水性媒質の任意の濾過にまで及ぶ。例えば、これは、生物学的起源及び生物工学的起源の水性媒質の濾過に関する事例である。
【0052】
本発明は、より詳細には、下記の非限定的な実施例、得られた膜の特性を概要する図1a〜図3bに表すグラフに基づいて解明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1a及び図1bは、反応時間との関係で架橋膜の架橋度DXを示す図であり、実施例1〜実施例3(C90−20〜E90−20)、比較例1及び比較例2(A90−20及びB90−20)並びに冷法A〜Eの比較例を図1aに表し、実施例1〜実施例4(C90−20〜E90−20及びC80〜30)並びに比較例8、比較例9−1及び比較例9−2を図1bに表す。
図2図2a及び図2bは、架橋度DXとの関係で架橋膜の膜面積における寸法変化(膨潤及び収縮挙動)を示す図であり、実施例1〜実施例3(C90−20〜E90−20)、比較例1及び比較例2(A90−20及びB90−20)並びに冷法A〜Eの比較例を図2aに表し、実施例1〜実施例4(C90−20〜E90−20及びC80−30)並びに比較例8、比較例9−1及び比較例9−2を図2bに表す。さらに、図2a及び図2bは、非架橋(水和)セルロース膜の寸法変化を表す。
図3図3a及び図3bは、架橋度DXとの関係で破断伸びを示す図であり、実施例1〜実施例3(C90−20〜E90−20)、比較例1及び比較例2(A90−20及びB90−20)並びに冷法A〜Eの比較例を図3aに表し、実施例1〜実施例4(C90−20〜E90−20及びC80−30)並びに比較例8、比較例9−1及び比較例9−2を図3bに表す。さらに、図3a及び図3bは、非架橋(水和)セルロース膜の破断伸びを表す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
使用する試薬:
逆浸透水、伝導率2μS/cm未満、パイプで供給
水酸化ナトリウム溶液、水中に1N、[1310−73−2]、Sigma Aldrich社
BuDGE(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル)、[2425−79−8]、工業グレード、Ems Chemie社
PEG−500−DGE(ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル)、[72207−80−8]、Sigma Aldrich社
グリセロール、85%、[56−81−5]、Sigma Aldrich社
水酸化カリウム溶液、水中に50%、[1310−58−3]、Carl-Roth社
炭酸カリウム、99%p.a.、[584−08−7]、Carl-Roth社
【0055】
酢酸セルロース出発膜、Sartorius-Stedim-Biotech R&D社
バブルポイント、水を用いて目視で(DIN 58355による)、上流側バンド側、3.6〜3.8バール
DIN 58355による水に関する流速:20ml/(1バールにつき1cm当たりの分)〜25ml/(1バールにつき1cm当たりの分)
厚さ185μm〜195μm(DIN 53105による方法)
【0056】
水和セルロース出発膜、Sartorius-Stedim-Biotech R&D社
バブルポイント、水を用いて目視で(DIN 58355による)、上流側バンド側、4.4〜4.6バール
DIN 58355による水に関する流速:25ml/(1バールにつき1cm当たりの分)〜30ml/(1バールにつき1cm当たりの分)
厚さ95μm〜105μm(DIN 53105による方法)
【実施例】
【0057】
実施例1:(略称:C90−20)
非強化水和セルロース膜の総寸法40cm×22cmの1つのシート(重みで下がった片を含む)を膜ロールから切り出した。正味寸法29.7cm×22cmに印を付けて、後の測定全てに使用した。重みで下がった片は、反応後に除去した。シートの長い辺が常に、出発膜ロールの加工処理方向である。重量決定後に、シートを、プラスチックトレイにおいて、0.1mol/kgのBuDGE、0.1mol/kgのPEG−500−DGE及び0.125mol/kgのNaOHの組成の含浸溶液中に60秒間含浸させた。含浸させたシートを即座に、テフロン(登録商標)フィルムを接着させた加熱可能なステンレス鋼プレート上で、90℃で20分間加熱した。同時に、2つの辺上の縁領域は、重みで適所に保持され、これらの重みで下がった片は、寸法変化の算出には含めなかった。室内条件に起因した蒸発の影響を最低限に抑えるために、半閉鎖フードをプレート上に置いた。その後、シートを水で中性に洗浄して、膜の寸法(長さ及び幅)を測定した。重量が一定になるまで、シートを室温で乾燥させた後、長さ及び幅を再び測定して、重量を決定した。
【0058】
出発膜及び本発明による膜の平衡含水量は、10%であった。これらの含有量を総質量から差し引いた。架橋度は、質量の増加を使用することによって算出された。
【0059】
引張測定に関して、膜を、更なる工程において、グリセロール5重量%の溶液中に3分間含浸させて、室温で乾燥した。出発膜の作製方向に平行及び垂直な1.5cm×10cmの片を切り出した。水分含有量は、引張試験の特性に影響があるため、試料は全て、一緒にPE袋中に少なくとも2週間保管した。
【0060】
引張測定は、相対空気湿度40%〜50%及び温度23℃〜25℃、力変換器200N、開始位置のクランピング長50mm、試料幅15mm及び試験速度5mm/分で、DIN EN ISO 527−1及びDIN EN ISO 527−3に従って行った。
【0061】
平均流動孔サイズは、Porometer社のPorolux 500機器を用いて、表面張力16ダイン(dyne)/cmのPorofil湿潤液、接触角0℃及び形状係数0.715で、速度2000秒/バール及び0.6バールの測定間隔内に400個のデータ点で、キャピラリーフローポロメトリーを使用して決定した。試料サイズは、試料ホルダーSH25に合わせて直径25mmにした。まず、湿潤曲線を記録した直後に乾燥曲線を記録した。バブルポイントに関する判定基準は、「第1の流動」の設定であった。正確な手順及び機器ソフトウェアによって実行される計算は、Porolux 500の操作説明書から取得することができる。
【0062】
滅菌濾過容量は、10個/cm(フィルター面積)超の細菌濃度で、試験微生物ブレバンディモナス・デミニュータ(Brevundimonas diminuta)を使用して、DIN 58355に従った細菌負荷試験によって決定した。プリーツ状の膜及びプリーツ状でない膜の細菌保持は、常に100%であった。このようにして、滅菌濾過容量を実証した。
【0063】
実施例2:(略称:D90−20)
下記組成:0.15mol/kgのBuDGE、0.05mol/kgのPEG−500−DGE及び0.125mol/kgのNaOHを有する含浸溶液を使用して、実施例1と同様に作製した。
【0064】
実施例3:(略称:E90−20)
下記組成:0.05mol/kgのBuDGE、0.15mol/kgのPEG−500−DGE及び0.125mol/kgのNaOHを有する含浸溶液を使用して、実施例1と同様に実行した。
【0065】
比較例1:(略称:A90−20)
下記組成:0.2mol/kgのBuDGE及び0.125mol/kgのNaOHを有する含浸溶液を使用して、実施例1と同様に実行した。
【0066】
比較例2:(略称:B90−20)
下記組成:0.2mol/kgのPEG−500−DGE及び0.125mol/kgのNaOHを有する含浸溶液を使用して、実施例1と同様に実行した。
【0067】
比較例3−24:(略称:C24)
非強化水和セルロース膜の30cm×21cm寸法の1つのシートを膜ロールから切り出した。シートの長い辺が常に、出発膜ロールの加工処理方向である。重量決定後に、シートを、プラスチックトレイにおいて、0.1mol/kgのBuDGE、0.1mol/kgのPEG−500−DGE及び0.125mol/kgのNaOHの組成の含浸溶液中に60秒間含浸させた。含浸させたシートを即座に、適切なフィルムに詰めて、室温で24時間保管し、これが反応時間である。その後、シートを水で中性に洗浄して、膜の寸法(長さ及び幅)を測定した。重量が一定になるまで、シートを室温で乾燥させた後、長さ及び幅を再び測定して、重量を決定した。
【0068】
比較例3−72:(略称:C72)
比較例3−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、72時間であった。
【0069】
比較例3−120:(略称:C120)
比較例3−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、120時間であった。
【0070】
比較例4−24:(略称:D24)
下記組成:0.15mol/kgのBuDGE、0.05mol/kgのPEG−500−DGE及び0.125mol/kgのNaOHを有する含浸溶液を使用して、比較例3−24と同様に実行した。
【0071】
比較例4−72:(略称:D72)
比較例4−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、72時間であった。
【0072】
比較例4−120:(略称:D120)
比較例4−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、120時間であった。
【0073】
比較例5−24:(略称:E24)
下記組成:0.05mol/kgのBuDGE、0.15mol/kgのPEG−500−DGE及び0.125mol/kgのNaOHを有する含浸溶液を使用して、比較例3−24と同様に実行した。
【0074】
比較例5−72:(略称:E72)
比較例5−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、72時間であった。
【0075】
比較例5−120:(略称:E120)
比較例5−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、120時間であった。
【0076】
比較例6−24:(略称:A24)
下記組成:0.2mol/kgのBuDGE及び0.125mol/kgのNaOHを有する含浸溶液を使用して、比較例3−24と同様に実行した。
【0077】
比較例6−72:(略称:A72)
比較例6−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、72時間であった。
【0078】
比較例6−120:(略称:A120)
比較例6−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、120時間であった。
【0079】
比較例7−24:(略称:B24)
下記組成:0.2mol/kgのPEG−500−DGE及び0.125mol/kgのNaOHを有する含浸溶液を使用して、比較例3−24と同様に実行した。
【0080】
比較例7−72:(略称:B72)
比較例7−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、72時間であった。
【0081】
比較例7−120:(略称:B120)
比較例7−24と同様に実行したが、室温での反応時間は、120時間であった。
【0082】
比較例8:(略称:C55−30)
実施例1と同様に実行し、反応時間は、55℃で30分であった。
【0083】
実施例4:(略称:C80−30)
実施例1と同様に実行し、反応時間は、80℃で30分であった。
【0084】
比較例9−1:(略称:C GE75−7)
(特許文献4に記載されるように実行した)
非強化酢酸セルロース膜の11cm×17cm寸法の2つのシートを膜ロールから切り出して、重量を決定した。水718.54mL及び硫酸ナトリウム71.85gの組成の含浸溶液を75℃に加熱した後、エポキシド化合物BuDGE及びPEG−500−DGEそれぞれ0.093モルを添加して、溶液を5分間、強攪拌した。膜シートをポリオレフィンメッシュに固定して、含浸溶液の入ったビーカーに入れた。50%NaOH 1.257mLを9回に分けて、それぞれ20分の間隔で添加し、溶液を、反応温度75℃で7時間、攪拌した。pHが中性になるまで膜を水中ですすぐことによって、また室温で乾燥することによって、反応を終了させた。
【0085】
比較例9−2:(略称:C GE85−7)
比較例9−1と同様に実行し、反応温度は、85℃であった。
【0086】
実施例及び比較例の上述の作製パラメーターを表1にまとめる。
【0087】
【表1】
【0088】
結果の考察
図1で明らかなように、最大架橋度は、室温での冷架橋法(湿潤方法)における架橋の場合、BuDGEを用いることで達成することができる。PEG−500−DGEを用いた架橋度は、明らかに低い。クロスリンカーPEG−500−DGEは、湿潤方法においてほとんど反応しないため、混合物によって達成される架橋度は、BuDGEの比率に支配される。
【0089】
対比して、それぞれ2つのクロスリンカーBuDGE又はPEG−500−DGEの一方のみを用いた本発明による熱架橋方法は、ほぼ同じ架橋度、したがって、クロスリンカーの同等の反応性をもたらす。さらに驚くべきことに、クロスリンカーBuDGE及びPEG−500−DGEの両方を含有する混合物は、これをはっきりと上回る。図2a及び図2bに概説するように、より高い架橋度と一致して、膜は、低い膨潤及び収縮挙動を示し、したがって、面積において全体でより低い寸法変化を示す。
【0090】
図3a及び図3bから分かるように、2つのクロスリンカーの混合物を使用して熱架橋した膜の引張試験におけるより大きな破断伸びによって実証される弾性は、驚くべきことに、より高い架橋度にもかかわらず、湿潤方法において、又は一方のみのクロスリンカーを用いた熱方法において作製される膜の架橋度と同じか、又はそれよりも高い。
【0091】
したがって、熱架橋と組み合わせたクロスリンカー混合物の使用は、プリーツ加工可能な膜を作製するのに特に好適であることがわかる。架橋水和セルロース膜の作製は、本発明による方法に従って、特に好適に実行することができる。ワンポット法(比較例9−1及び比較例9−2を参照されたい)での、またより低い反応温度55℃での架橋水和セルロース膜の作製は、所望の架橋度をもたらさず(図1bから明らかであるように)、またプリーツ加工性を得るための所望の寸法安定性をもたらさない(図2b及び図3bから明らかであるように)。
図1
図2
図3