特許第6977049号(P6977049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977049
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】超疎水性表面の選択的端面形成
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/40 20060101AFI20211125BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20211125BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20211125BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20211125BHJP
   A61B 17/02 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
   A61L27/40
   A61L27/50
   A61L27/16
   A61L27/18
   !A61B17/02
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-544815(P2019-544815)
(86)(22)【出願日】2018年2月17日
(65)【公表番号】特表2020-508743(P2020-508743A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】US2018018550
(87)【国際公開番号】WO2018152445
(87)【国際公開日】20180823
【審査請求日】2019年10月21日
(31)【優先権主張番号】62/460,568
(32)【優先日】2017年2月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513326370
【氏名又は名称】ビーブイダブリュ ホールディング エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルボッカー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ブルーシェール,ルーカス
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−538291(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/014936(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超疎水性を有する基材を含む階層的超疎水性表面であって、
超疎水性が階層構造から生み出され、
前記階層構造が、前記基材上に配置された第一の幾何学的形体(features)のアレイ、及び前記第一の幾何学的形体上に配置された第二の幾何学的形体のアレイ、及び前記第二の幾何学的形体上に配置された端面(terminal level)を備え、
前記端面は、機能性コーティングを備え、
前記第一の幾何学的形体はヘミウィッキング状態を生成するように構成されており、前記第二の幾何学的形体は疎水性状態を生成するように構成されており、端面は親水性コーティングを含み、
前記第一の幾何学的形体のアレイが、100〜1000ミクロンの振幅を有する二次元正弦曲線であり、
前記第一の幾何学的形体のアレイが、親水性であり、
前記第一の幾何学的形体のピッチが、10〜1000ミクロンの範囲内であり、
前記第二の幾何学的形体のアレイが、端部が広がっているピラーである、
階層的超疎水性表面。
【請求項2】
二の幾何学的形体が、ナノメーターからマイクロメーターのオーダーのピラーを備える、請求項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項3】
第一及び/又は第二の幾何学的形体の前記アレイが、規則的である、請求項1又は2に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項4】
第一及び/又は第二の幾何学的形体の前記アレイが、不規則である、請求項1からのいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項5】
前記機能性コーティングが、平滑な組織を誘引する、請求項1からのいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項6】
前記端面の機能性コーティングが、ファンデルワールス相互作用、共有結合相互作用、イオン性相互作用、水素結合、又はこれらの組み合わせを介して、前記端面と結合している、又は前記端面に対して接着性である、請求項1からのいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項7】
前記第一の幾何学的形体が、1ミクロン〜100ミクロンの範囲内の幅又は直径を有し、前記第二の幾何学的形体が、100nm〜10ミクロンの範囲内の幅を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項8】
前記第一及び第二の幾何学的形体が、1〜10の範囲内のアスペクト比を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項9】
記第二の幾何学的形体のピッチが、10nm〜100ミクロンの範囲内である、請求項1からのいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項10】
前記表面が、同じ寸法を有する階層構造を有しない表面の表面積の少なくとも100倍の表面積を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項11】
前記基材が、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項12】
前記端面が、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の階層的超疎水性表面を作製する方法であって:
基材上に配置された第一の幾何学的形体のアレイ、及び前記第一の幾何学的形体上に配置されて階層構造を形成する第二の幾何学的形体を提供すること、
溶液化学反応、化学蒸着、プラズマ堆積、原子層堆積、物理蒸着、又はこれらの組み合わせより選択される方法によって端面を形成すること、
を含む、方法。
【請求項14】
前記端面が、前記第二の幾何学的形体の少なくとも一部分を、前記第二の幾何学的形体の前記部分上に配置されるべき材料又は前記第二の幾何学的形体上に配置されるべき材料の前駆体を含む非湿潤水性流体と接触させることによって形成される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が参照により本明細書に援用される2017年2月18日出願の米国仮特許出願第62/460,568号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、階層的超疎水性表面を提供し、この表面が湿潤表面と接触した場合、準安定カッシー−ウェンゼル(Cassie−Wenzel)湿潤状態が形成される。本発明の表面は、医療用インプラントとして用いられた場合、構造的劣化及び組織局在性の低下に対する耐性を有する。
【背景技術】
【0003】
組織接着性インプラントで、インプラントの配置にカッシー−ウェンゼル(Cassie−Wenzel)状態を用いるものが知られている。そのようなインプラントは、少なくとも2つの幾何学的表面パターンが上に配置された基材を備える。階層的表面は、サイズによって分類することができる幾何学的形体(features)を有する表面であり、これらの形体は積層されている。
【0004】
親水性表面は、純水の液滴の接触角を90度未満とするものである。超疎水性表面は、水の接触角が140度超である表面のことである。親水性の概念は、動力学的な解釈も有する。ウォッシュバーン(Washburn)モデルによると、親水性は、毛管の充填速度に関連する。例えば、内径5nmのガラス毛管における約2mm/分の充填速度は、80度の接触角に相当する。
【0005】
親水性はまた、表面エネルギーとも関連している。一般的に、高い表面エネルギーは、親水性表面に相当し、低い表面エネルギーは、疎水性表面に相当する。表面エネルギーは、表面の化学と幾何学とが複雑に組み合わされたものである。
【0006】
一般的には、4つの湿潤状態:1)ウェンゼル(Wenzel)、2)カッシー(Cassie)又はカッシー−バクスター(Cassie−Baxter)、3)ウェンゼル−カッシー(Wenzel−Cassie)、及び4)ヘミウィッキング(hemi-wicking)、が認識されている。階層的表面は、これらの湿潤状態のいずれかの組み合わせを備え得る。第一の面(level)A及び端面(terminal level)Bを有する基材を含む表面、並
びに基材の領域Cを覆う水の液滴を考えてみる。領域Cにある基材のすべてが水と接触している必要はない。ウェンゼル(Wenzel)状態は、純水が面A及びBの両方の表面全体と接触しており、したがって、領域Cの基材の表面全体を覆っている湿潤状態である。Cassie状態は、水が面Bのみと接触している湿潤状態である。そして、ウェンゼル−カッシー(Wenzel−Cassie)状態は、水が1つの面と接触しており、及び領域Cの別の面とは部分的にしか接触していない湿潤状態である。ヘミウィッキング状態は、水が領域Cの外側の領域と接触している上記3つの湿潤状態のうちのいずれかである。
【0007】
ウェンゼル(Wenzel)湿潤状態は、湿潤表面との相互作用が、最初の基材への誘引、続いて水の飽和、及び誘引の消滅によって発生する状態である。Cassie湿潤状態は、湿潤表面との相互作用が、それを反発することによって発生する状態である。ウェンゼル−カッシー(Wenzel−Cassie)湿潤状態では、湿潤表面の誘引及び反発の両方が発生し、したがって、圧縮エネルギーの印加を行わないと飽和させることができない。したがって、ヘミウィッキングであるウェンゼル−カッシー(Wenzel−C
assie)状態が、生組織と接触する表面において特に有用となる。
【0008】
これらの湿潤状態はすべて、水の双極子性と基材の双極子性との複雑な相互作用、及び水の表面張力と基材表面の幾何学形状との間の相互作用の結果である。ヒトの体内で見出される環境などの完全な液体環境中では、水の表面張力は、基材の親水性領域上に局在化された水と基材の親油性領域上に局在化された脂質との相互作用の結果であり得る。したがって、上記で識別された4つの湿潤状態は、従来、気体−水−固体系において定義されるものであるが、類似の湿潤状態は、脂質−水−固体系でも得られる。ほとんどの場合、階層的表面上の疎水性領域は、生体内に配置された場合、親油性領域に相当する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
医療用インプラント及び他の接触適応(contact indications)において特に有用であ
る超疎水性階層的接触表面が求められている。そのような表面は、適切な組織接着を提供することになる。さらに、変形又は付着汚染を起こしやすい幾何学的形体を含有しないように改善された機械的特徴を有する超疎水性階層的表面も求められている。本開示は、これらの要求に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、第一の材料を含む基材上に配置された第一の幾何学的形体のアレイ、及び第一の形体上に配置されて階層構造を形成する第二の幾何学的形体のアレイ、及び第二の形体上に配置された端面を備えた階層的超疎水性表面全般に関し、端面は、第二の材料を含み、第二の材料は、第一の材料と異なっている。
【0011】
驚くべきことに、端面が平滑な親水性物質で置き換えられた階層的超疎水性表面が、従来の湿潤モデルと矛盾して、ウェンゼル−カッシー(Wenzel−Classie)挙動を呈することが見出された。実際、幾何学的に誘導された親水性の化学的親水性での置き換え、及び幾何学的に誘導された疎水性の化学的疎水性での置き換えが、階層的表面のいずれの面で適用されてもよい。例えば、平滑な親水性物質で一部の領域がコーティングされた平滑な疎水性階層的表面は、ウェンゼル−カッシー(Wenzel−Classie)状態におけるピン止め部位として作用することができる。
【0012】
一般的に、本発明の階層的表面は、化学的表面エネルギーと幾何学的表面エネルギーとの組み合わせの結果である表面エネルギーの局所的な変動に起因する新規な湿潤状態を提供する。新規な湿潤状態を提供することに加えて、上記の予想外の観察結果を考慮すると、機械的な変形又は付着汚染を起こしやすい可能性のある端面の幾何学的形体を、端部平滑物質で置き換えることは有益であり得る。例えば、幾何学的形体によって形成された端部パターン面が置き換えられてよい。理論に束縛されるものではないが、本開示の湿潤状態を作り出すのは、一部の領域での表面エネルギーの相違、及びそれらの相対的サイズであることは理解される。したがって、いくつかの場合では、親水性物質で端面形成された疎水性面Aは、疎水性物質で端面形成された親水性面Aと同様に挙動する。
【0013】
1又は複数の実施形態では、第一の幾何学的形体、第二の幾何学的形体、又は端面のうちの少なくとも1つは、階層構造と生組織との間の固定を向上させるために、修飾される。1又は複数の実施形態では、機能性コーティングが、階層構造の少なくとも一部分上に配置される。
【0014】
1又は複数の実施形態では、階層構造は、同じ寸法の平坦固体基材の比表面積の少なくとも約100倍の比表面積を特徴とする。
【0015】
1又は複数の実施形態では、階層構造の固体基材は、密に詰まっている、又は多孔質である。
【0016】
1又は複数の実施形態では、基材は、無機又は有機である。1又は複数の実施形態では、基材は、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0017】
1又は複数の実施形態では、幾何学的表面は、ピラー、二次元正弦曲線、三角柱、溝(flutes)、又はこれらの組み合わせを備える。1又は複数の実施形態では、ピラーは、ある面での直径が約1〜約10ミクロンの範囲内、別の面での直径が10〜30ミクロンの範囲内、及びアスペクト比が約1〜約10の範囲内である円柱構造である。
【0018】
1又は複数の実施形態では、端面は、親水性固体を備える。1又は複数の実施形態では、端面は、疎水性固体を備える。
【0019】
1又は複数の実施形態では、階層的表面は、医療用デバイス若しくはインプラントの上に配置される、又は医療用デバイス若しくはインプラントの一部として形成される。表面は、有利には、デバイス又はインプラントを、生体内で組織に固定する。
【0020】
1又は複数の実施形態では、端面は、(a)溶液化学反応、(b)化学蒸着、(c)プラズマ堆積、(d)原子層堆積、(e)物理蒸着、又はこれらの組み合わせの群より選択される方法によって官能化される。
【0021】
超疎水性階層的表面は、流体を用いて、幾何学的形体近辺での溶液をベースとする化学反応に掛けられてよい。ある特定の実施形態では、コーティング化学反応は、析出反応を含むが、他のプロセスも可能であり、分子吸着、コロイド堆積、重合、及び触媒反応などである。
【0022】
1つの実施形態では、固体析出物は、不均質核形成によって、溶液から表面の曝露された幾何学的形体上へと成長する。
【0023】
1つの態様では、材料の局所的形成の方法は、幾何学的形体を備えた超疎水性階層的表面を、形体上に局所的に形成されるべき材料又はその前駆体を含む非湿潤流体と接触させることを含み、超疎水性表面及び流体は、流体が幾何学的形体の上側部分のみを湿潤させ、材料を形体上に形成させるように選択される。1又は複数の実施形態では、端面は、マイクロスケール若しくはナノスケールのピラーを備える、又は端面は、分離された若しくは相互接続された幾何学的形体のランダムなアレイを備えていてもよい。
【0024】
1又は複数の実施形態では、端面は、疎水性コーティング又は親水性コーティングのいずれかを含めるために、化学的に処理される。
【0025】
1又は複数の実施形態では、端面は、コーティング材料と端部表面との結合又は接着性相互作用を提供するために、処理される。例えば、端面は、イオン化放射線を用いて選択的に処理され得る。
【0026】
1又は複数の実施形態では、コーティング材料は、分子、ポリマー、コロイド粒子、又はこれらの混合物を含む。ある実施形態では、材料は、触媒性、磁性、光学活性、圧電性、又は生物活性である。
【0027】
別の態様では、コーティング材料の局所的な形成の方法は、異なる表面特性を有する少
なくとも2つの領域を備えた階層的幾何学的形体を備えた超疎水性階層的表面を提供すること、表面を流体と接触させることであって、前記液体は、幾何学的形体上に局所的に形成されるべき材料又はその前駆体を含み、2つ以上の幾何学的形体の表面特性及び流体は、流体が少なくとも2つの領域の一方、又は他方、又は両方を湿潤させるように選択される、接触させること、並びに材料を、少なくとも2つの領域の一方、又は他方、又は両方に選択的に堆積させること、を含む。
【0028】
1又は複数の実施形態では、方法はさらに、コーティングされた幾何学的形体を第二の流体と接触させることを含み、前記第二の流体は、局所的に堆積されるべき第二の材料又はその前駆体を含み、材料は、第一及び第二の領域の両方の上に堆積される。
【0029】
1又は複数の実施形態では、超疎水性階層的表面は、ピラー、二次元正弦曲線、及び溝を備える、又は表面は、シリコン若しくはポリマーのピラーのアレイを備える、又は表面は、幾何学的形体のランダムなアレイを備える。1又は複数の実施形態では、幾何学的形体は、疎水性層、親水性層、又は組織結合性若しくは組織接着性層を提供するために、化学的に処理される。
【0030】
1又は複数の実施形態では、接着性材料は、触媒性、磁性、圧電性、又は生物活性である。他の実施形態では、接着性材料は、有機若しくは無機の析出物、分子、ポリマー、コロイド粒子、又はこれらの混合物を含む。
【0031】
1又は複数の実施形態では、組織結合性材料は、端面の最上部分に対して接着性である。
【0032】
1又は複数の実施形態では、幾何学的形体は、異なる表面特性を有する少なくとも2つの領域を備え、接着性材料は、前記2つの領域のうちの少なくとも1つに対して接着性である。
【0033】
本開示は、さらに、上述の階層的超疎水性表面を作製する方法を提供し:基材上に配置された第一の幾何学的形体のアレイ、及び第一の形体上に配置されて階層構造を形成する第二の幾何学的形体を提供すること、並びに溶液化学反応、化学蒸着、プラズマ堆積、原子層堆積、物理蒸着、又はこれらの組み合わせより選択される方法によって端面を形成すること、を含む。
【0034】
本開示は、さらに、上述の階層的超疎水性表面を備えた医療用デバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1AB図1Aは、階層的超疎水性表面が、階層的に配置された幾何学的表面形体のアレイを備えていることを示す。図1Bは、端部形体上に第二の材料が堆積された図1Aの表面を示す。
図2図2は、階層的表面の先端部上における核形成析出を模式的に示す。
図3図3は、表面の端面及び他の幾何学的形体にいくつかの機能層が提供されている本開示の階層的超疎水性表面を示す。
図4図4は、本開示の幾何学的表面形体の機能化に有用である析出書き込みプロセス(precipitate writing process)を模式的に示す。
図5AB図5Aは、本開示に従う階層的超疎水性表面の透視図を示す。図5Bは、アレイの上面図である。
図5CD図5Cは、階層的超疎水性表面の拡大透視図であり、図5Dは、さらに拡大した階層的超疎水性表面の透視図である。
図6AB図6A及び6Bは、第一の幾何学的表面が正弦曲線パターンである本開示に従う階層的超疎水性表面の実施形態を示す。
図7AB図7A及び7Bは、第一の幾何学的構造が正弦曲線パターンである階層的超疎水性表面の2つの実施形態の拡大側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の記述は、本開示の原理を例示するものであり、本明細書で示される特定の実施形態に本開示を限定することを意図するものではない。
【0037】
本開示は、ある実施形態において、第一の材料を含む基材上に配置された第一の幾何学的形体のアレイ、及び第一の形体上に配置されて階層構造を形成する第二の幾何学的形体のアレイ、及び第二の形体上に配置された端面を備えた階層的超疎水性表面を提供し、端面は、第二の材料を含み、第二の材料は、第一の材料と異なっている。
【0038】
特定の実施形態では、第二の材料は、第一の材料の親水性と異なる親水性を有する。他の実施形態では、第二の材料は、表面の階層構造によって誘導される親水性と異なる親水性を有する。
【0039】
本開示の幾何学的形体は、いかなる形状を有していてもよい。例えば、形体は、ピラー(円柱形状のピラーなど)、正弦曲線、三角柱、溝、嶺、正方形、長方形、楕円などであってよい。特定の実施形態では、幾何学的形体は、ピラーである。他の実施形態では、形体は、ピラーと正弦曲線との組み合わせである。特定の実施形態では、基材は、正弦曲線形状を備え、第一及び第二の幾何学的形体は、ピラーを備える。端面は、さらに、基材並びに第一及び第二のピラーと異なる材料を有するピラーを備えていてよい。さらなる実施形態では、第二のセットのピラーは、さらに、ピラーの垂直軸線に沿って配置された溝又は嶺を備える。
【0040】
ある特定の実施形態では、幾何学的形体のうちの少なくとも1つは、疎水性又は親水性材料でコーティングされていてよい。
【0041】
ある実施形態では、端面は、平滑な組織誘引性コーティング(tissue attractive coating)などの平滑な機能性コーティングを備える。
【0042】
ある特定の実施形態では、端面上に配置された第二の材料は、ファンデルワールス相互作用、共有結合相互作用、イオン性相互作用、水素結合、又はこれらの組み合わせを介して、端面と結合している、又は端面に対して接着性である。
【0043】
ある特定の実施形態では、端面は、平滑な機能性コーティングを備える。機能性コーティングは、組織誘引性コーティングであってよい。
【0044】
ある実施形態では、第一の幾何学的形体は、約1ミクロン〜約100ミクロン、好ましくは約10ミクロン〜約50ミクロンの範囲内の幅又は直径を有し、第二の幾何学的形体は、約100nm〜約10ミクロン、好ましくは約1ミクロン〜約10ミクロンの範囲内の幅を有する。
【0045】
ある実施形態では、第一及び第二の幾何学的形体は、約1〜約10の範囲内のアスペクト比を有する。
【0046】
ある実施形態では、第一の幾何学的形体は、約10〜約1000ミクロン、約10〜約500ミクロン、約50〜約100ミクロン、又は約100〜約1000ミクロンの範囲内のピッチを有する。第二の幾何学的形体は、約10nm〜約100ミクロン、約1ミク
ロン〜約100ミクロン、約1ミクロン〜約50ミクロン、又は約10ミクロン〜約50ミクロンの範囲内のピッチを有し得る。
【0047】
ある実施形態では、第一の材料は、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン、又はこれらの組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、第二の材料は、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン、又はこれらの組み合わせを含むが、但し、第二の材料は、第一の材料と異なる。
【0048】
超疎水性表面は、その表面の少なくとも一部分が水の接触角を140度超とする表面のことである。階層的表面は、サイズによって分類することができる幾何学的形体を有する表面であり、これらの形体は積層されている。例えば、表面は、100nm〜1ミクロンのサイズを特徴とする1セットの形体、及び5ミクロン〜10ミクロンのサイズを特徴とする別のセットの形体を有してよく、表面上の実質的にすべての形体は、いずれかの群に入れることができ、1ミクロン〜5ミクロン、<100nm、及び>10ミクロンのサイズ範囲である形体はほとんどない。特徴的なサイズ範囲の各々は、面と称される。最も小さい特徴的なサイズに相当する面は、端面と称される。
【0049】
面A及びBから構成され、AのサイズがBのサイズよりも大きい表面では、この表面は、Bの形体がAの形体の上に存在する場合、階層的に配列されているとされる。例としては、1)大きいピラーの平坦な上部に配列された小さいピラー、2)ピラーの側面にある溝若しくは嶺、及び3)二次元正弦曲線に似せた表面上に配列されたピラー、である。
【0050】
親水性は、材料の化学的構造又は材料の表面幾何学形状の結果であり得る。表面幾何学形状が基材の親水性を変化させる場合、変化した親水性は、誘導親水性と称される。化学的に親水性である材料は、表面テクスチャの付与によってより疎水性とすることができ、化学的に疎水性である材料は、表面テクスチャの付与によってより親水性とすることができる。階層的表面の表面領域のほとんどを備えた材料は、基材と称される。
【0051】
超疎水性表面は、表面の一部分が湿潤状態であるか、又は水を誘引し、表面の他の部分が湿潤に抵抗するか、又は水をはじく場合、準安定である。階層的表面パターンは、各面での親水性が異なっている場合、一般的に、準安定性をもたらす。一般的には、親水性である少なくとも1つの面、及び疎水性である少なくとも1つの他の面が存在する。
【0052】
親水性の概念は、動力学的な解釈も有する。ウォッシュバーン(Washburn)モデルによると、親水性は、毛管の充填速度に関連する。例えば、内径5nmのガラス毛管における約2mm/分の充填速度は、80度の接触角に相当する。
【0053】
親水性はまた、表面エネルギーとも関連している。一般的に、高い表面エネルギーは、親水性表面に相当し、低い表面エネルギーは、疎水性に相当する。表面エネルギーは、表面の化学と幾何学とが複雑に組み合わされたものである。
【0054】
一般的には、4つの湿潤状態:1)ウェンゼル(Wenzel)、2)カッシー(Cassie)又はカッシー−バクスター(Cassie−Baxter)、3)ウェンゼル−カッシー(Wenzel−Cassie)、及び4)ヘミウィッキング、が認識されている。階層的表面は、これらの湿潤状態のいずれかの組み合わせを備え得る。第一の面A及び端面Bを有する基材を含む表面、並びに基材の領域Cを覆う水の液滴を考えてみる。領域Cの基材のすべてが水と接触している必要はない。ウェンゼル(Wenzel)状態は、純水が面A及びBの両方の表面全体と接触しており、したがって、領域Cの基材の表面全体を覆っている湿潤状態である。カッシー(Cassie)状態は、水が面Bのみと接触している湿潤状態である。そして、ウェンゼル−カッシー(Wenzel−Cass
ie)状態は、水が1つの面と接触しており、及び領域Cの別の面とは部分的にしか接触していない湿潤状態である。ヘミウィッキング状態は、水が領域Cの外側の領域と接触している上記3つの湿潤状態のうちのいずれかである。
【0055】
ウェンゼル(Wenzel)湿潤状態は、湿潤表面との相互作用が、最初の基材への誘引、続いて水の飽和、及び誘引の消滅によって発生する状態である。カッシー(Cassie)湿潤状態は、湿潤表面との相互作用が、それを反発することによって発生する状態である。ウェンゼル−カッシー(Wenzel−Cassie)湿潤状態では、湿潤表面の誘引及び反発の両方が発生し、したがって、圧縮エネルギーの印加を行わないと飽和させることができない。したがって、ヘミウィッキングであるウェンゼル−カッシー(Wenzel−Cassie)状態が、生組織と接触する表面において特に有用である。ヘミウィッキングであるウェンゼル−カッシー(Wenzel−Cassie)状態は、水を溶出する生組織の存在下であっても、飽和に抵抗する(グリップを維持する)。例えば、本開示の表面は、有用にヘミウィッキングであり、水平に対して90度という大きい角度であっても、溶けつつある角氷に対する接着性を維持することができる。したがって、本開示の表面は、典型的には、3つ以上の面を備え、第一の面は、ヘミウィッキングであり、第二の面は、親水性又は疎水性であり、第三の面は、第二の層よりも親水性又は疎水性である。
【0056】
これらの湿潤状態はすべて、水の双極子性と基材の双極子性との複雑な相互作用、及び水の表面張力と基材表面の幾何学形状との間の相互作用の結果である。ヒトの体内で見出される環境などの完全な液体環境中では、水の表面張力は、基材の親水性領域上に局在化された水と基材の親油性領域上に局在化された脂質との相互作用の結果であり得る。したがって、上記で識別された4つの湿潤状態は、従来、気体−水−固体系において定義されるものであるが、類似の湿潤状態は、脂質−水−固体系でも得られる。ほとんどの場合、階層的表面上の疎水性領域は、生体内に配置された場合、親油性領域に相当する。階層的超疎水性表面と生組織との間のウェンゼル−カッシー(Wenzel−Cassie)状態は、組織結合性疎水性と称される。
【0057】
本発明の表面に用いられる機能性コンポーネントの1つは、疎水性であってよく、気相酸素と会合する、又は別の選択肢として親油性物質と会合する、フッ素含有部分を有していてよい。第二の機能性コンポーネントは、親水性であってよく、移植された場合、容易に水と会合する。移植後、2つの機能性コンポーネントは、インプラント環境由来の疎水性構成要素のドメイン、及びインプラント環境由来の親水性構成要素のドメインを発生させる。構造は、インプラント由来の疎水性構成要素が、ビード(bead)となって又は高い表面張力を有して、インプラント由来の親水性構成要素の領域と隣り合うように選択される。インプラント由来構成要素が表面の幾何学形状を埋める度合いは、カッシー(Cassie)又は湿潤可能カッシー(Cassie)状態が局所的に存在するかどうかを決定する。時間及びインプラント周囲の条件に応じて、水性部分又は脂肪部分のいずれかが、相対的により拡がり得る。したがって、インプラント表面は、疎水性物質に対する接着性と親水性物質に対する反発性とを同時に有することができ、又はその逆も同様であり、この状態は、経時で変化するように設計することができる。
【0058】
以下の定義が、本開示に当てはまる。親水性表面は、純水の液滴の接触角を90度未満とする表面である。表面Aは、別の表面Bと比較して、Aにおける接触角がBにおける接触角よりも小さい場合、より親水性であるとされる。疎水性は、親水性の逆である。水滴が油滴に置き換えられた場合、対応する用語は、親油性及び疎油性である。
【0059】
図1Aを参照すると、階層的超疎水性表面100が、低接触角を得るために表面の端面に局所的に堆積されるべき材料を含有する流体110と接触され得る。ある特定の実施形
態では、材料の局所的堆積のない表面は、140度以上の水接触角を形成する。階層的超疎水性表面は、少なくとも1つの寸法が、典型的にはミクロン又はナノメートルのオーダーである幾何学的形体を有する。表面構造は、階層的に積層された突起部の規則的な又は不規則なアレイであってよい。
【0060】
いかなる超疎水性表面が用いられてもよく、化学的に疎水性である、又は幾何学的に疎水性であるエレクトロスピニングされたポリマーアレイ、ピラーの規則的なアレイ、適切でランダムな粗い表面、スフィアの層、ラインなどが挙げられる。
【0061】
ある実施形態では、超疎水性表面は、比較的振幅の大きい(100〜1000ミクロン)二次元正弦曲線など、ヘミウィッキングである高い表面粗度をもたらすナノ及びマイクロ表面構造を含み得る。高振幅の表面粗さは、表面の流体飽和を阻止することによって、階層的超疎水性表面の組織固定の性質を大きく高めることができ、それによって、組織結合性超疎水性の現象を引き起こすことができる。
【0062】
幾何学的形体上の形体の間隔、高さ、及び他の寸法は、任意事項である。例えば、構造の寸法は、オングストローム、ナノメートル、又はミクロンのオーダーであってよい。
【0063】
これらの構造は、生体適合性ポリマーから、好ましくは比較的低い曲げ弾性率を有する生体適合性ポリマーから作製されてよく、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、又は有機ポリマーである。例示的な超疎水性表面は、シリコンウエハの表面をエッチングすることによって形成される雌型から得られるポリ乳酸マイクロピラーなどの有機マイクロピラーのアレイを含み得る。本発明の表面に用いられる他の生体適合性疎水性材料としては、PTFEを例とするフッ素化ポリマー及び疎水性シランが挙げられる。
【0064】
本発明の表面は、有利には、表面の組織結合性疎水性を向上させるために処理される。例えば、形体の生体内でのカッシー−ウェンゼル(Cassie−Wenzel)の性質を高めるために、低表面エネルギー材料が幾何学的形体上に堆積され得る。逆に、形体の生体内でのカッシー−ウェンゼル(Cassie−Wenzel)の性質を高めるために、高表面エネルギー材料が幾何学的形体上に堆積され得る。
【0065】
ある特定の実施形態では、マイクロピラーの形状が、所望される組織結合性超疎水性表面を得る際のフレキシビリティを高め得る。階層的超疎水性表面の1つの特定の限定されない実例として、端部が広がっていて上部に親水性媒体が堆積されている疎水性ピラーは、40°〜90°の角度などの比較的低い表面接触角を有する液体の場合であっても、飽和した湿潤を防止することによって、独特に、生体内でカッシー−ウェンゼル(Cassie−Wenzel)状態を維持する。
【0066】
端面の官能化
本開示の階層的超疎水性表面は、いずれかの適切な及び/又は望ましい手段によって端面を官能化することができる表面を含む。例えば、超疎水性表面の先端部に近い所望される領域を、静電相互作用、共有結合相互作用、水素結合相互作用、及び/又はファンデルワールス相互作用を起こすことができる基などのいずれかの所望される基で官能化することができる。
【0067】
1つの実施形態では、端部微細構造を有する表面構造は、微細構造を特定の化学的親水性を有する平滑表面で置き換える表面基との接着によって官能化することができ、すなわち、幾何学的親水性が化学的親水性に置き換えられる。
【0068】
ある特定の実施形態では、階層的超疎水性表面の幾何学的形体は、様々な方法で官能化されて、溶液からの材料の析出、吸着、又は堆積を発生させるための表面を提供することができる。1つの実施形態では、幾何学的形体は、処理されて金の層が堆積されてよく、金の層は次に、疎水性チオール化合物を例とする様々な材料と反応されて、疎水性表面が形成されてよい。例示的なチオール化分子としては、ポリ(スチレン−コ−2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン−SH)、ポリ(メチルメタクリレート−コ−ペンタフルオロオクチルメタクリレート−SH)が挙げられるが、概していかなるフッ素化又はメチル化チオールが用いられてもよい。幾何学的形体の先端部は、さらに、チオール処理表面と所望される表面特性を有する別の化合物を含有する溶液とを接触させることによって選択的に官能化されてもよい。いくつかの例示的な分子としては、カルボン酸末端チオール、スルホン化チオール分子、ヒドロキシル末端チオール、PEG末端チオールなどが挙げられる。
【0069】
理論に束縛されるものではないが、幾何学的親水性である端部構造は、化学的親水性である平滑表面によって局所的に置き換えられ得るものと考えられる。そのようにすることによって、使用時にうまく再生されない可能性がある、又は劣化する可能性がある小スケールの形体が排除され、本発明の表面が機械的により強固となる。
【0070】
別の実施形態では、疎水性層が、幾何学的形体の表面上に堆積されてもよい。例えば、表面基材がシリコーンから作られている場合、表面は、フッ素化シランを用いて官能化されてよい。幾何学的形体の先端部は、さらに、疎水性表面と組織誘引性成分(例:デキストランの酸化物)を含有する溶液とを接触させることによって選択的に官能化されてもよい。表面及び/又は流体の超疎水性を制御することによって、流体は、先端部の所望される領域のみを湿潤し、表面の曝露された先端部を選択的に官能化することができる。例示的な分子としては、カルボン酸末端シラン、スルホン化シラン、ヒドロキシル末端シラン、PEG末端シランが挙げられる。
【0071】
幾何学的形体はまた、ナノ構造化表面の先端部にローラーを緩やかに適用することにより、ミクロ接触の手法を用いて官能化されてもよい。別の手法では、階層的表面は、官能化部分でコーティングされた表面上に、上側を下に向けて配置されてよく、官能化部分は、様々な手段によって端面上に堆積される。例えば、堆積手段としては、重合、蒸発キャスト(evaporative casting)、UV硬化、又は液体状態から固体状態への相転移を誘導
する化学において一般的に知られているいずれかの方法が挙げられ得る。
【0072】
ある実施形態では、超疎水性表面は、長さを例とする幾何学的形体の寸法に沿ったいずれの領域で選択的に官能化されてもよい。例えば、流体の超疎水性表面に対する相互作用を制御することによって、超疎水性表面の端面と接触する第一の流体が導入されてよい。第一の流体は、超疎水性表面の端面と接着して所望される第一の官能基を提供することができる所望される材料を含有していてよい。第一の流体よりも深い面へと超疎水性表面に浸透する第二の流体が、超疎水性表面に導入されてよい。第二の流体は、端面よりも下に、又は端面に隣接する面のより深くに接着して所望される第二の官能基を提供することができる所望される材料を含有していてよい。第二の流体よりもさらに深く超疎水性表面に浸透する第三の流体が、超疎水性表面に導入されてよい。第三の流体は、第二の官能基よりも下に接着して所望される第三の官能基を提供することができる所望される材料を含有していてよい。別の選択肢として、これら3つの流体は、選択的に別々の面に接着してもよい。
【0073】
ある実施形態では、端面は、すべてがおよそ同じ空間寸法である3つの異なる構造を備える。したがって、超疎水性表面は、超疎水性表面の先端部付近に3つの異なる官能基を有する。これらの構造は、ピッチ、幾何学的形状、又はアスペクト比が異なり得る。この
手法は、所望に応じて実行されて、超疎水性表面の先端部付近に、いかなる数の所望される官能基が提供されてもよい。異なる材料を直線的に順に堆積することを実現するための別の選択肢としての実施形態として、ナノワイヤのアレイが、まず犠牲材料(例:ポリマー)の層で完全に覆われてもよい。次に、ポリマー層がエッチング除去されて、ポストの先端部が露出されてよく、次に先端部は、上記で述べたようにして官能化される(金の層を用い、それを続いてチオールで官能化するか、又はSi構造の場合は、適切なシラン溶液を用いるかのいずれか)。ポリマー層は、次に、さらに部分的にエッチングされて、ワイヤ上の次のバンドが露出されてよく、それが上記で述べたようにして官能化される。このプロセスは、所望される数の官能化されたバンドを作製するために、繰り返されてよい。最後は、犠牲材料の残された層がエッチングされてよく、ナノワイヤの底部が疎水性とされてよい。適切なポリマーは、フォトレジスト又はポリスチレンなどのエッチングを受けやすい本技術分野において公知のポリマーから選択され得る。
【0074】
端面の置換
別の実施形態では、幾何学的形体は、逐次作製技術を用いて官能化されてもよい。例えば、形体間の空間が犠牲材料で充填されてよく、それは次に、選択的に除去されて、構造の遠位端部が露出されてよい。露出された端部は、例えば、上記で述べた方法及び溶液のいずれかを用いて官能化されてよく、残された犠牲材料は、除去されてよい。超疎水性表面の残りの部分は、疎水性コーティングを適用するために処理されてよい。
【0075】
表面の他の面から端面を分離するために、階層型のモールドをベースとするデウェッティングプロセスが用いられてもよい。第一の工程は、ペルフルオロポリエーテルを例とするUV硬化性疎水性ポリマー樹脂を配置して、ポリウレタンアクリレートを例とする親水性ポリマー樹脂製の下側MHSSと上側フラットシートとの間に閉じ込めることを含む。第二の工程は、疎水性ポリマー樹脂をUV硬化すること、及び続いて上側フラットシートを剥がして、疎水性ポリマー樹脂の残留層のないMHSSの端面を露出されることを含む。この方法の独特の特徴は、両者の間の高い湿潤性の差を活用し、階層的超疎水性表面の階層構造を利用することによって、端面での残留層を排除することができることである。第三の工程は、端部物質を適用すること、親水性シートを戻すこと、圧力を印加すること、及び溶媒拡散又は本技術分野において公知の何らかの他の方法によって適用された物質を硬化させることを含む。この場合、端部物質の残留層が、端面の位置の外側にはまったく残らない。第四の工程は、親水性カバーシートを剥離すること、及び続いてUV硬化された疎水性層を剥離除去することを含み、端部の層(terminal layer)が端部物質でコーティングされた階層的超疎水性表面が残される。UV硬化性樹脂が表面上に滴下されて配置され、親水性シートで覆われると、樹脂は、閉じ込められた空間の内部で自然に拡がり、樹脂の大部分は、圧力の印加により、及び表面とUV硬化性樹脂との間の親和性の差が大きいこと(デウェッティング)に起因して、アセンブリから絞り出される。
【0076】
析出物核形成
析出によって端面を堆積させる有用な実施形態が提供される。ある実施形態では、析出物又は堆積物の成長は、表面構造の先端部に対して接着性を維持するように設計される。ある実施形態では、この方法を用いて、端面上における材料の接着性の堆積及び成長が提供される。この方法を用いて、端面のマイクロピラーアレイ上に、結晶材料、特に、電気双極子モーメント又は磁気双極子モーメントが大きい材料などの有用な材料を組込むことができる。さらに他の材料としては、組織接着を例とする内部成長組織の形成を変化させる又は阻害することができる抗活性酸素種特性を有するスピンゲル材料(spin gel materials)が挙げられる。
【0077】
超疎水性表面100の側面図を示す図1Aを参照すると、マイクロピラー120のアレイが基材130上に垂直に配置されている。基材130は、ある実施形態では、医療用デ
バイス又はインプラントであってよく、抗接着性シートなどである。マイクロピラー122の第二面アレイは、第一のピラー120上に垂直に配置されている。マイクロピラー若しくはナノピラー、又はワイヤであってよい第三セットの構造124は、第二面ピラー122上に配置されている。端面上に堆積されるべき流体110は、堆積されるべき材料若しくはその前駆体の可溶性形態を含む過飽和溶液、又はコロイド粒子の懸濁液であってよい。図1Bに示されるように、流体110からの堆積は、基材の材料と異なる化学組成を有する端面126を提供する。端面126は、粗い不規則表面であってよく、一方他の実施形態では、126は、平滑表面であってもよい。本技術分野において公知である核形成堆積法としては、温度若しくは蒸発に誘導される溶解度の変化、不溶性反応生成物、共通イオンの添加、又は不混和性溶媒の導入、重合、液体への反応性剤の添加、析出を誘導する気体若しくは蒸気試薬への液体の曝露、不溶性生成物への反応などを通しての堆積が挙げられる。
【0078】
水溶液を例とする溶液110は、表面の限定された領域で接触していてよく、そこで、端面の超疎水性が、表面接触を最小限に抑えるようにして、流体と相互作用を起こし得る。したがって、端部ピラー124は、所望される材料の核形成堆積のための部位を提供する。表面の流体との接触点は、核形成部位として、及び/又は堆積プロセスに関与する他の化学プロセスのための部位として作用し得る。例えば、不均質核形成に適する条件の場合、析出は、その露出した先端部でのみ、制御された局所的な方法で発生し得る。超疎水性端面は、析出物の成長に影響を与えるために、化学的にさらに官能化され得る。例えば、超疎水性表面は、その疎水性を高めるために、堆積された材料との、共有結合若しくはイオン性の相互作用を例とする接着性相互作用を高めるために、並びに/又は選択された位置及び/若しくは選択された順番で堆積が発生するように指向するために、処理されてよい。ある実施形態では、非湿潤溶液がウィッキング又は蒸発によって除去されると、所望される局所的析出物が、端面上に残留することができる。
【0079】
図2は、ピラー、角錐、繊維などの幾何学的形体の先端部での核形成析出のための方法の模式図を提供する。図2では、幾何学的形体220は、その上に配置された第二の形体222を備え、それによって、222は、超疎水性表面の端面である。第三の形体224は、形体222上に配置されている。これらの形体は、ある実施形態では、ピラーであってよい。核形成228は、露出した端面240と接触する過飽和溶液210から開始し得る。時間と共に、析出物228の接着性成長が、マイクロピラー224の上及び間に堆積された材料のサイズを増加させ得る。局所的析出堆積物は、成長の間及び機能性溶液の除去後のいずれにおいても、端面のマイクロピラー224上に残される。
【0080】
そのような接着性堆積を実現することができる1つの例示的方法は、堆積された材料との強い会合を提供する官能基による端面構造先端部の化学的官能化による方法である。官能基は、静電力、ファンデルワールス力、水素結合力、及び/又は共有結合力を含む様々な物理的現象によって接着性を向上させ得る。接着性堆積が成された材料を有する官能化されたマイクロピラーは、生組織と相互作用を起こして、カッシー−ウェンゼル(Cassie−Wenzel)飽和を低減し、超疎水性組織結合性の強度及び持続性を高めることができる。
【0081】
図2で形成された構造を利用する多くの異なる用途が想定され得る。例えば、接着性粒子の局所的核形成及び成長を用いて、例えば親水性、疎水性、又は組織接着性である材料228を、マイクロピラー端面224上に堆積させることができる。親水性端面形成の場合、表面が組織との接触状態に置かれると、端面の官能化マイクロピラー228は、ウェンゼル(Wenzel)湿潤状態におけるピン止め中心を作り出し、第一の面220は、カッシー(Cassie)湿潤状態を作り出す。その結果、組織は、階層的超疎水性表面に対するせん断時に固定される。
【0082】
想定され得る異なる用途の別の限定されない例として、材料の接着性堆積は、構造上の化学官能基の位置及び性質、並びに組織界面の位置と連携して、表面の面上の異なる位置に行われ得る。化学官能基を用いて、組織界面全体にわたる細胞の増殖及び選択を制御することができる。階層的超疎水性表面の面の選択的表面官能化により、接着性であり、表面全体に繁殖することができる細胞の速度及び種類を制御することが可能となる。
【0083】
例えば、ポリウレタンなどの生体適合性ポリマーから形成された階層的超疎水性表面は、1又は複数の官能基で官能化され得る。上記で記載したように、官能基は、階層的超疎水性表面の端面の表面特性を、表面の残りの部分と比較して変化させることができ、例えば、官能化された領域の細胞接着性を向上させることができる。ある実施形態では、様々な面が、2つ以上の官能基を用いて選択的に表面官能化され得る。例えば、第一の面のピラー及び第一の面のピラーの端部に端面のピラーがある階層構造に、端面のピラーを完全に包み込むコーティングが端面で成されてよく、第二の機能性コーティングが、第一の面のピラーの側面を選択的にコーティングする。
【0084】
図3は、複数の面が官能化された幾何学的形体を備えた階層的超疎水性表面300の側面図である。幾何学的形体は、ある実施形態では、ピラーである。表面は、ベース面320を備え、その上に第二の幾何学的形体322が配置されている。第三の形体324は、第二の形体上に配置されて、端面を提供している。端面324の上部領域は、第一の官能基F1を備えている官能化層310を備え、第二の官能基F2を備えている第二の官能化層312が、官能基F2を有する第二の面の形体322の壁部をコーティングし、官能基F3を有する第三の官能化層312が、半湿潤性二次元ベース面320をコーティングしている。この官能化の結果、選択的細胞成長を、階層的超疎水性表面の様々な面で達成することができる。
【0085】
図3に示されるように、材料の複数面での堆積を実現するために、選択的に個々の特定の面上に各々が堆積するいくつかの成分を含有する溶液が提供され得る。別の選択肢として、材料の堆積は、特定の位置に特定の化合物を堆積するように各々が選択される一連の溶液に表面を曝露することによって行われてもよい。後から堆積される材料は、それまでに堆積された材料の上には堆積されない。
【0086】
表面処理され電界書き込みされた(ELECTROWRITTEN)超疎水性接着性繊維
電界書き込み繊維(Electrowritten fiber)400のマトリックスを備えた階層的超疎水性表面の実施形態を、図4に示す。電界書き込み繊維420は、ベース層430上に配置されている。堆積されるべき化合物又はその前駆体の過飽和溶液を例とする機能性溶液の非湿潤液滴410が、シリンジ、ピペット、シリンジポンプ、又は他の送達デバイス440によって供給されてよく、析出書き込みプロセスにおいて、電界書き込みされた表面全体に直線状に移されてよい。その結果、局所的析出物450の堆積物、分子、又はコロイド粒子のパターンが、繊維状マトリックス上に生成され得る。送達デバイス440は、機能性溶液(図示せず)の貯留部と連結状態であってよく、したがって、堆積の進行に従って成長溶液を連続的に補給し得る。先頭の接触エッジ部では、溶液は、表面の端面(例:ナノ繊維420)と接触してよく、核形成が開始し得る。溶液の液滴が表面全体に描かれるに従って、さらなる材料が溶液から堆積されてよく、析出物が成長し得る。材料、構造、及び成長条件が、堆積が接着性となるようなものである場合、堆積された材料は、液滴が基材を横切る動きを継続するに従って、基材上に残留し得る。堆積物は、端面上に残留し得る。その結果、堆積された材料は、表面の端面に局在化され得る。
表面の前処理
前処理は、酸素プラズマ、金コーティング、及び自己組織化単分子層の付着など、幾何学的形体の表面を官能化する異なるプロセスを含む。例えば、非水性液体又は低表面張力
の液体(例:エタノール)が、表面の端面にチオール化分子を導入するための適切な溶媒として用いられ得る。そのようなプロセスは、テクスチャ形体の表面全体に沿ってコーティングするものと考えられるが、構造の超疎水性の性質によって、後に成長溶液(例:水性成長溶液)に曝露された場合には、完全な湿潤が阻止されると考えられる。例えば、チオールに曝露することによって作り出された負に荷電した超疎水性表面は、次に、例えば、正に荷電した粒子と相互作用を起こして、超疎水性表面上に付着された粒子を形成し得る。
【0087】
正電荷を提供し得る表面基の例としては、アミン基が挙げられ、これは、HS(CH11NHCl、HS(CH11NMeBr、若しくはHS(CH11C(NHClが挙げられるがこれらに限定されないアンモニウム塩などのアルカンチオール自己組織化単分子層種を用いることで、又はアミジン表面基と共に合成されたポリスチレン粒子などのアミン基を有するコロイド粒子から実現され得る。
【0088】
負電荷を提供し得る表面基の例としては、HS(C )nCOOH、HS(C )nSH、若しくはHS(C)nPなどのアルカンチオール自己組織化単分子層を用いることで実現され得るカルボン酸(−COOH)、ホスフェート(−PO)、若しくはサルフェート(−SO)、又は広範囲のpHにわたって負に荷電することができる複数のシラノール(Si−OH)基を有するシリカ表面を有することが挙げられる。
【0089】
アミン(−NH)及び−OH基などの相互作用の強い荷電基には、水素結合が関与し得る。
【0090】
共有結合は、カルボン酸(−COOH)とアミン基(−NH)との反応を通して実現され得る。そのような種類の共有結合反応は、タンパク質の結合相互作用に関与している。
【0091】
静電引力も、反対に荷電した粒子の電気泳動的付着のために、導電性超疎水性表面に電位を印加することによって実現され得る。例えば、負に荷電した粒子(塩基性条件下でのSiO粒子、又はサルフェート基を有するポリスチレン粒子など)の、印加電位からの正電荷を有するピラー構造上への付着。
【0092】
上記で記載したように、粒子と超疎水性表面との間の相互作用は、上記で例示した静電相互作用に限定される必要はない。他の適切な相互作用としては、当業者であれば容易に認識されるいずれの表面化学反応も挙げられ得る。
【0093】
図5は、本開示の例示的な階層的超疎水性表面500のいくつかの図を示す。図5Aは、表面500を示す透視図である。基材530は、第一の幾何学的形体520が上に配置されているベース面を形成する。単純化のために、表面のさらなる幾何学的形体は、図5A及び5Bには示されていない。表面500の上面図である図%Bに示されるように、幾何学的形体520は、図示されるように規則的であってよく、又は不規則であってもよい。基材530は、移植用シートなどの医療用デバイス又はインプラントを形成してよく、又はステント、リトラクター、プロテーゼなどの他のいかなる医療用デバイスのための表面を提供してもよい。
図5Cは、表面500の僅かに拡大した透視図であり、形体520の上部に配置されて階層的表面を作り出している第二のセットの幾何学的形体522を示す。形体522は、示されるように規則的に配列されてよく、又は不規則に配置されてもよい。図5Dは、第二の形体522の先端部に配置された端面540を示すさらに拡大された透視図を示す。端面540は、ベース層、並びに形体520及び522を形成する基材材料とは親水性が異なる材料を含む。例えば、540は、基材材料よりも高い親水性であってよく、又は基材
材料よりも低い親水性であってもよい。形体520及び522は、ピラーとして示されているが、本発明の表面は、それに限定されず、幾何学的形体が、ピラー、正弦曲線、三角柱、正方形、長方形、楕円、溝、又はこれらの組み合わせを備えていてもよいことは容易に理解される。
【0094】
図6は、表面600が正弦曲線基材層630を備える別の実施形態を示す。Aは、正弦曲線ピーク620が上に配置された例示的な正弦曲線パターンの透視図を示す。単純化のために、図6A及び6Bには、さらなる幾何学的形体及び端部の層は示されていない。
【0095】
図7A及び7Bは、ピーク720を有する基材730を備えた正弦曲線表面の側面図を示す。さらなる幾何学的形体722は、その上に配置され、端面740は、形体722の上に配置されている。端面740は、基材、並びに形体720及び722を形成する基材材料とは親水性が異なる材料を含む。形体722は、ある実施形態では、溝又は嶺745をさらに含んでよい。図7Aでは、図7Aでは、基材730は、平滑底面を備える。図7Bでは、基材730は、上面760及び相補的形状の底面750を有する薄フィルムである。
【実施例】
【0096】
例1:CaCO粒子の核形成
ピラーの上部にピラーがある表面を、非架橋ポリウレタンから、所望される表面構造のシリコン雌型上に溶媒キャストすることによって作製した。端面は、ピラー密度がより高いことに起因して、より大きいピラー構造よりも高い親水性となる。したがって、端面は、選択的にイオン性溶液を誘引する。イオン性CaClの50mM水溶液を、CaCl(Sigma−Aldrich)から、蒸留水で調製した。CaCl溶液を、平坦な親水性表面上に、薄く均一にコーティングする。表面を、端面を下向きにして表面上に配置し、それによって、CaClが選択的に端面に接着する。表面上に留まっているCaClを、チャンバー中に配置し、炭酸アンモニウム粉末((NHCO、Sigma−Aldrich)上を流れる窒素ガスからの二酸化炭素ガス流に曝露した。約30分後、蒸発によって液滴を基材から除去し、基材をチャンバーから取り出した。その結果、CaCO粒子の単分散アレイが、表面の端面を充填している。
【0097】
例2:Fe粒子の核形成
ピラーの上部にピラーがある表面を、非架橋ポリウレタンから、所望される階層的超疎水性表面のシリコーン雌型上に溶媒キャストすることによって作製した。端面は、ピラー密度がより高いことに起因して、より大きいピラー構造よりも高い親水性となる。したがって、端面は、選択的にイオン性溶液を誘引する。イオン性FeClの水溶液を、FeCl(Sigma−Aldrich)から、蒸留水で調製した。FeCl溶液を、平坦な親水性表面上に、薄く均一にコーティングする。階層的表面を、端面を下向きにして表面上に配置し、それによって、FeClが選択的に端面に接着する。作製した階層的表面を、密閉チャンバー中、アンモニア溶液を用いてNH雰囲気に曝露した。アンモニアによって、Feの析出が引き起こされた。約10分後、液滴を除去すると、端面を包み込んでいるFeナノ粒子の堆積物が後に残された。
【0098】
例:端面のポリウレタン置換
型から形成された階層的表面は、第一の面の二次元正弦曲線、第二の面のピラーアレイ、及び端面のピラーアレイを備え、端面のピラーアレイは、端面のピラーの外壁上の外周上に等間隔に配置された溝を含む。表面は、ポリ乳酸を含む。階層的超疎水性表面を、第一の面を下に向けてトレーに配置し、トレーの底部に固定した。次に、トレーを第二面ピラーの上部と一致する面まで満たし、硬化させた。10w/w%のポリウレタンをアセトンに溶解することによってポリウレタンの溶液を調製した。この溶液をシリコーン層上に
注ぎ、シリコーンのフラットシートを上に置いた。アセトンがシリコーン中に拡散し、端面上にポリウレタンを選択的に析出させる。シリコーンの上部層を取り外す。シリコーンの中間層を取り外すと、ポリウレタンで官能化された端面を有するポリ乳酸階層的超疎水性表面が残される。
【0099】
階層的超疎水性表面のせん断試験
ピラーの上部にピラーを備えた階層的超疎水性表面を作製し、牛肉の切り身に接触させて置いた場合のせん断特性について試験した。試験物品は、階層的表面単独、及び端面が官能化された表面であった。試験材料は、ポリウレタン(AP1780)、ポリ乳酸(PLA)、及びシリコーンであった。結果はすべて、lb/cmの単位で示す。各表面を5回試験した。
【0100】
【表1】
【0101】
適用
幾何学的形体の端面を液体層に曝露することによって、広く様々な材料を局所的に堆積させることができる。例えば、適切な液体は、溶液から堆積することができる様々な有機及び無機化合物を含み得る。溶液は、水性、無水、又は親油性であってよい。端面構造は、堆積部位及び/又は成長部位として作用し得る。例えば、端面構造は、堆積のための核形成部位として、材料の核形成及び析出のための不均質触媒として、又は表面上での分子の吸着のための吸着部位として作用し得る。他の実施形態では、流体は、共有結合又は非共有結合による付着を通して端面の湿潤表面上に堆積し得る粒子のコロイド懸濁液を含有し得る。
【0102】
さらに他の実施形態では、溶液処理は、反応して接着性固体相を形成する堆積材料の第二の溶液のための端面を作製するための第一の前駆体溶液を含み得る。反応は、端面の曝露された表面上での堆積をもたらす核形成を含み得る。例えば、溶液は、モノマーを含有してよく、モノマーは、流体中で重合され、幾何学的形体の曝露された端部表面上にポリマーとして堆積される。別の選択肢として、堆積流体は、適切な試薬又は触媒に接触された場合、幾何学的形体の端部表面上の前駆体堆積物と反応する成分を含有し得る。
【0103】
様々な有用な材料を、階層的超疎水性表面の端面上に溶液から成長させて、化学的又は幾何学的機能を有する新しい構造を作り出すことができる。例えば、生物活性化合物又は触媒化合物を、階層的超疎水性表面の端面上に成長させることが可能であり、接着点を例とする触媒ドット又は生物活性ドットのアレイが提供される。堆積された材料は、接着性
であっってよく、そのため、細胞接着、タンパク質吸着、血管新生、静菌、一酸化窒素放出、及び抗酸化を含むさらなるプロセスのための基材として作用し得る。
【0104】
上記の限定されない例示的な用途により、当業者であれば、本開示の階層的超疎水性表面で想定することができる数多くの他の用途が明らかとなる。
【0105】
本明細書で提供される記述は、ある特定の実施形態の個々の態様の単一の実例であることを意図している記載される具体的実施形態による範囲に限定されるべきではない。本明細書で述べる方法、組成物、及びデバイスは、本明細書で述べるいずれかの形体を、単独で、又は本明細書で述べる他のいずれかの形体と組み合わせて備えていてよい。実際、様々な改変は、本明細書で示し、述べるものに加えて、当業者であれば、通常の手順を超えた実験を行うことなく、上記の記述及び添付の図面から明らかとなるであろう。そのような改変及び均等物は、添付の請求項の範囲内に含まれることを意図している。
【0106】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各個々の刊行物、特許、又は特許出願が具体的に及び個別に参照により本明細書に援用されると示されている場合と同じ程度に、その全内容が参照により本明細書に援用される。本明細書における参考文献の引用又は考察は、それらが先行技術であることを認めるものとして解釈されてはならない。
【0107】
したがって、階層的超疎水性表面の本開示の特定の実施形態について述べてきたが、そのような参照は、以下の請求項に示される内容を除いて、本開示の範囲に対する限定として解釈されることを意図するものではない。
図1AB
図2
図3
図4
図5AB
図5CD
図6AB
図7AB