(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977056
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/01 20060101AFI20211125BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20211125BHJP
H02M 1/42 20070101ALI20211125BHJP
H02J 3/36 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
H02J3/01
H02M7/48 E
H02M7/48 R
H02M1/42
!H02J3/36
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-551808(P2019-551808)
(86)(22)【出願日】2017年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2017040277
(87)【国際公開番号】WO2019092812
(87)【国際公開日】20190516
【審査請求日】2019年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 喜仁
(72)【発明者】
【氏名】直井 伸也
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−092832(JP,A)
【文献】
特開平11−032435(JP,A)
【文献】
特開平09−224332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/01
H02M 7/48
H02M 1/42
H02J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流系統に接続される自励式変換器の制御装置であって、
前記交流系統との連携点の高調波を抽出して逆位相の信号を生成することで所定周波数帯の高調波を抑制可能な交流フィルタであって、前記自励式変換器が機能を代替する交流フィルタのRLC成分に基づく伝達関数を実現するように、前記交流系統の三相ごとの電圧に基づいて三相ごとの電流目標値を算出するフィルタ演算部と、
前記フィルタ演算部により算出された前記三相ごとの電流目標値を、第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値に変換する座標変換部と、
前記自励式変換器が前記交流系統に融通する有効電力である要求パワーに基づいて算出される第2d軸電流目標値と、前記座標変換部により変換された第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値とに基づいて、前記自励式変換器を制御する変換器制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記自励式変換器が機能を代替する交流フィルタが故障した場合に成立する所定の条件を満たす場合に、予め設定された無効電力を前記自励式変換器に出力させる電圧補償制御部を更に備える、
請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記フィルタ演算部により算出された前記三相ごとの電流目標値のいずれか、または前記三相ごとの前記電流目標値の統計値のいずれか、或いは、前記三相ごとの電流目標値の全て、または前記三相ごとの前記電流目標値の統計値の全てが閾値以上であり、且つ、前記三相ごとの系統電圧のうちいずれか、または前記三相ごとの系統電圧の統計値、或いは前記三相ごとの系統電圧の全て、または前記三相ごとの系統電圧の統計値の全てが第1基準値以上低下したことである、
請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記フィルタ演算部により算出された前記三相ごとの電流目標値のいずれか、または前記三相ごとの前記電流目標値の統計値のいずれか、或いは、前記三相ごとの電流目標値の全て、または前記三相ごとの前記電流目標値の統計値の全てが第2基準値以上低下し、その後に系統電圧が回復したことである、
請求項2または3記載の制御装置。
【請求項5】
交流系統に接続される自励式変換器の制御装置であって、
電力系統に接続された機器のインピーダンスモデルを用いて作成された電力系統の解析モデルに対して、前記電力系統の所定次数の高調波を注入することで取得される前記電力系統の次数ごとの伝達関数を実現するように、前記交流系統の三相ごとの電圧に基づいて三相ごとの電流目標値を算出する演算部と、
前記演算部により算出された前記三相ごとの電流目標値を、第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値に変換する座標変換部と、
要求パワーに基づく第2d軸電流目標値と、前記座標変換部により変換された第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値とに基づいて、前記自励式変換器を制御する変換器制御部と、
を備える制御装置。
【請求項6】
交流系統に接続される自励式変換器の制御装置が、
前記交流系統との連携点の高調波を抽出して逆位相の信号を生成することで所定周波数帯の高調波を抑制可能な交流フィルタであって、前記自励式変換器が機能を代替する交流フィルタのRLC成分に基づく伝達関数を実現するように、前記交流系統の三相ごとの電圧に基づいて三相ごとの電流目標値を算出し、
前記算出された前記三相ごとの電流目標値を、第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値に変換し、
前記自励式変換器が前記交流系統に融通する有効電力である要求パワーに基づいて算出される第2d軸電流目標値と、前記変換された第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値とに基づいて、前記自励式変換器を制御する、
制御方法。
【請求項7】
交流系統に接続される自励式変換器の制御装置が、
電力系統に接続された機器のインピーダンスモデルを用いて作成された電力系統の解析モデルに対して、前記電力系統の所定次数の高調波を注入することで取得される前記電力系統の次数ごとの伝達関数を実現するように、前記交流系統の三相ごとの電圧に基づいて三相ごとの電流目標値を算出し、
前記算出された前記三相ごとの電流目標値を、第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値に変換し、
前記自励式変換器が前記交流系統に融通する有効電力である要求パワーに基づいて算出される第2d軸電流目標値と、前記変換された第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値とに基づいて、前記自励式変換器を制御する、
制御方法。
【請求項8】
交流系統に接続される自励式変換器の制御装置であるコンピュータに、
前記交流系統との連携点の高調波を抽出して逆位相の信号を生成することで所定周波数帯の高調波を抑制可能な交流フィルタであって、前記自励式変換器が機能を代替する交流フィルタのRLC成分に基づく伝達関数を実現するように、前記交流系統の三相ごとの電圧に基づいて三相ごとの電流目標値を算出させ、
前記算出させた前記三相ごとの電流目標値を、第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値に変換させ、
前記自励式変換器が前記交流系統に融通する有効電力である要求パワーに基づいて算出される第2d軸電流目標値と、前記変換された第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値とに基づいて、前記自励式変換器を制御させる、
プログラム。
【請求項9】
交流系統に接続される自励式変換器の制御装置であるコンピュータに、
電力系統に接続された機器のインピーダンスモデルを用いて作成された電力系統の解析モデルに対して、前記電力系統の所定次数の高調波を注入することで取得される前記電力系統の次数ごとの伝達関数を実現するように、前記交流系統の三相ごとの電圧に基づいて三相ごとの電流目標値を算出させ、
前記算出させた前記三相ごとの電流目標値を、第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値に変換させ、
前記自励式変換器が前記交流系統に融通する有効電力である要求パワーに基づいて算出される第2d軸電流目標値と、前記変換された第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値とに基づいて、前記自励式変換器を制御させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
直流送電の導入が進められている。直流送電は、迅速な潮流制御が可能であり、長距離送電やケーブル送電に適しているなどの利点がある。直流送電において、直流リンクの両端には、直流から交流に、または交流から直流に電力を変換する電力変換装置が設けられる。
【0003】
従来、直流送電に利用される電力変換装置には、スイッチング素子にサイリスタを適用した他励式変換器が多く用いられていた。近年では、制御性に優れること、設備の小型化が可能なことから自励式変換器の導入が進められている。
【0004】
自励式変換器では、交流系統からの交流電力を直流電力に変換する際に、交流系統から任意の交流電力を流すような交流電圧を出力する。この交流電圧は任意に出力可能である。
【0005】
一方、他励式変換器では、交流から直流へ電力を変換する際に、電圧歪みの原因となる高調波電流が発生したり、他励式変換器が無効電力を消費することで系統電圧が低下したりする場合がある。このため、一般的な他励式変換器を用いる際には、高調波電流を吸収し且つ無効電力を補償するための交流フィルタが、交流系統に接続される。交流フィルタが故障した場合、交流系統の電圧歪みと、交流系統の電圧低下が発生する可能性がある。他励式変換器が停止した場合、交流フィルタが無効電力を供給することにより交流系統に過電圧が発生する可能性がある。
【0006】
これらに関連し、交流系統の電圧に対して、基本周波数の成分を直流成分に変換するdq座標変換を適用した値に、ハイパスフィルタを適用することで、電圧歪みの成分を抽出し、電圧歪みの成分に係数を乗算した値を電流制御器の指令値とする第1の技術が知られている。第1の技術では、自励式変換器は、電圧歪みを抑制する高調波電流を流すように動作し、系統の電圧歪を抑制することができる。
【0007】
二台の変換器を備え、一方の電圧歪みを打消すように位相を調整して電圧を出力することで、電圧歪みを互いに打消して電圧歪みの発生を抑制する第2の技術が知られている。
【0008】
第1の技術では、全ての周波数帯の電圧歪みを対象として処理を行っているため、特定の周波数、或いは特定の次数の高調波を効果的に抑制することができない場合がある。第2の技術では、同一の電圧歪みを生じさせる電力変換装置が隣接している必要があり、適用場面が限定的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−204684号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】佐野健一郎、“自励変換器による他励変換器の高調波不安定現象の抑制手法”、平成28年電気学会電力・エネルギー部門大会,260,(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、自励式変換器を用いて所定周波数帯の高調波を効果的に抑制することができる制御装置、および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の制御装置は、交流系統に接続される自励式変換器の制御装置である。制御装置は、フィルタ演算部と、座標変換部と、変換器制御部と、を持つ。フィルタ演算部は、所定周波数帯の高調波を抑制可能な交流フィルタのRLC成分に基づく伝達関数を実現するように、前記交流系統の三相ごとの電圧に基づいて三相ごとの電流目標値を算出する。座標変換部は、前記フィルタ演算部により算出された前記三相ごとの電流目標値を、第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値に変換する。変換器制御部は、要求パワーに基づく第2d軸電流目標値と、前記座標変換部により変換された第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値とに基づいて、前記自励式変換器を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置100の第1の適用場面を示す図。
【
図2】第1の実施形態に係る電力変換装置100の第2の適用場面を示す図。
【
図3】第1実施形態に係る電力変換装置100の構成図。
【
図4】フィルタ演算部142により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図5】電圧補償制御部150の事故時無効電力出力制御部154により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図6】第2の実施形態に係る制御装置120Aを含む電力変換装置100Aの構成図。
【
図7】各実施形態の制御装置120または120Aのハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態の制御装置、制御方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。図面において、三相それぞれの電力線を区別して示さず、単線で表現している。また、三相のそれぞれを符号a、b、およびcで表現する。
【0015】
(第1の実施形態)
[適用場面]
まず、
図1および
図2を参照し、制御装置を含む電力変換装置の適用場面について説明する。なお、
図1および
図2において、各電力変換装置の直流側について図示を省略している。
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置100の第1の適用場面を示す図である。図示するように、自励式変換器を備える電力変換装置100は、他励式変換器を備える電力変換装置10と並列に、交流系統1の母線2に接続される。他励式変換器とは、電流をオンオフする際に交流系統の交流電圧を必要とする変換器である。母線2には、更に、一以上の交流フィルタ20−1、20−2、…、20−nが接続される(nは任意の自然数)。いずれの交流フィルタであるか区別しない場合、単に交流フィルタ20と称する。この状態で運用が開始された後、例えば、交流フィルタ20−2が故障した場合、電力変換装置100は、交流フィルタ20−2に対応する周波数帯のアクティブフィルタを作動させる。また、電力変換装置100は、交流フィルタ20−2に対応する電圧補償制御を行ってもよい。電力変換装置100の機能は、交流フィルタ20の故障時だけでなく、点検などで交流フィルタ20を一時停止させる場合にも適用できる。
【0016】
図2は、第1の実施形態に係る電力変換装置100の第2の適用場面を示す図である。接続関係は
図1に示すものと同様である。この場面では、運用が開始される前に、例えば、交流フィルタ20−2および20−nが廃止されることが決定されている。この場合、電力変換装置100は、交流フィルタ20−2および20−nに対応する周波数帯のアクティブフィルタを作動させた状態で運用を開始する。運用開始後にいずれかの交流フィルタ20が故障した場合、第1の使用場面と同様、電力変換装置100は、故障した交流フィルタ20に対応する周波数帯のアクティブフィルタを作動させてよい。
【0017】
[構成]
図3は、第1実施形態に係る電力変換装置100の構成図である。電力変換装置100は、自励式変換器110と、自励式変換器110を制御する制御装置120とを備える。
【0018】
自励式変換器110は、直流と交流を相互に変換する。自励式変換器110の交流側は母線2に接続され、直流側は図示しない直流系統に接続される。自励式変換器110は、自己消弧型素子を用いた変換器である。自励式変換器110は、電流遮断能力を持ち、交流系統側の交流電圧に拘わらず運転可能である。自己消弧型素子として、例えば、電圧駆動自己消弧型素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やIEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)などが用いられる。自励式変換器110は、制御装置120から入力される三相ごとの電圧指令値Vcov_a、Vcov_b、およびVcov_cに基づいてスイッチング動作を行い、直流と交流を相互に変換する。
【0019】
制御装置120には、例えば、母線2に取り付けられた電圧検出器30により検出された三相ごとの系統電圧Va、Vb、およびVcが入力される。
【0020】
制御装置120は、例えば、目標値算出部130と、フィルタ部140と、電圧補償制御部150と、変換器制御部160とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0021】
目標値算出部130は、上位装置(不図示)から入力される要求パワーに基づいて、d軸電流目標値Idrefを算出する。d軸とは、有効電力を表す仮想的な座標軸である。また、後述するq軸とは、無効電力を表す仮想的な座標軸である。d軸電流目標値Idrefは、第2d軸電流目標値の一例である。
【0022】
フィルタ部140は、例えば、フィルタ演算部142と、座標変換部144と、HPF(ハイパスフィルタ)部146dおよび146qとを備える。
【0023】
フィルタ演算部142は、電圧検出器30から入力される三相ごとの系統電圧Va、Vb、およびVcに基づいて、所定周波数帯の高調波を抑制可能な交流フィルタのRLC成分に基づく伝達関数を実現するように、三相ごとの電流目標値を算出する。所定周波数帯の高調波とは、
図1または
図2で説明したように、故障した交流フィルタ20、または廃止される交流フィルタ20が抑制していた周波数帯の高調波である。フィルタ演算部142は、自励式変換器110が、これらの交流フィルタ20の機能を代替するための、三相ごとの電流目標値を算出する。以下、自励式変換器110が機能を代替する交流フィルタ20を仮想フィルタと称する。
【0024】
ここでは、三相のうち一つの相に着目して説明する。交流フィルタ20は、抵抗RとインダクタンスLとコンデンサCとを直列接続した電気回路(以下、RLC直列回路と称する)、或いは複数のRLC直列回路を並列に接続した電気回路であることが多い。そこで、仮想フィルタがRLC直列回路である(或いはこれに近似される回路である)と仮定すると、仮想フィルタの電気回路方程式は、抵抗RとインダクタンスLとコンデンサCのそれぞれの大きさ(RLC成分)を用いて、式(1)で表される。
【0026】
式(1)を、ラプラス演算子sを用いてラプラス変換すると、式(2)で示すように、RLC直列回路と同様の特定をもつ伝達関数Fil(s)が得られる。すなわち、Fil(s)=(R+Ls+1/Cs)である。
【数2】
【0027】
更に、仮想フィルタが複数のRLC直列回路を並列に接続した回路であると仮定すると、仮想フィルタ全体の伝達関数Fil
all(s)は式(3)で表される。式中、Fil
1(s)、Fil
2(s)、…Fil
n(s)は、仮想フィルタにおいて並列に接続されるRLC直流回路のそれぞれの伝達関数を表す。nは任意の自然数であり、n=1であってもよい。
【0029】
フィルタ演算部142は、仮想フィルタの伝達関数Fil
all(s)の逆数を時間領域に適用することで、交流電圧V(t)から仮想フィルタを流れる高調波電流i(t)を算出する。これを三相それぞれについて行うことで、フィルタ演算部142は、三相ごとの系統電圧Va、Vb、およびVcに基づいて、三相ごとの電流目標値Iaf、Ibf、およびIcfを算出する。
【0030】
座標変換部144は、フィルタ演算部142により算出された三相ごとの電流目標値Iaf、Ibf、およびIcfを、d軸電流目標値Idf#およびq軸電流目標値Iqf#に変換する。座標変換部144の変換手法に特段の制約はなく、座標変換部144は、例えば公知の手法により上記の変換を行う。d軸電流目標値Idf#は、第1d軸電流目標値の一例であり、q軸電流目標値Iqf#は、第1q軸電流目標値の一例である。この過程で、交流系統における基本周波数成分は、直流成分に変換される。
【0031】
HPF部146dは、d軸電流目標値Idf#から、直流成分を含む低周波成分を除去する。HPF部146qは、q軸電流目標値Iqf#から、直流成分を含む低周波成分を除去する。これらの結果、交流系統における基本周波数成分が除去される。HPF部146dは、d軸電流目標値Idref#を出力し、HPF部146qは、q軸電流目標値Iqref#を出力する。これらの電流目標値は、自励式変換器110の電流目標値のうち、仮想フィルタの機能を実現するための成分である。
【0032】
電圧補償制御部150は、例えば、定電圧制御部152と、事故時無効電力出力制御部154と、定無効電力制御部156とを備える。
【0033】
定電圧制御部152は、電圧検出器30により検出された三相ごとの系統電圧Va、Vb、およびVcに基づいて、交流系統の電圧を一定に維持するための無効電力目標値Qv_refを算出する。
【0034】
事故時無効電力出力制御部154は、以下のような所定の条件を満たす場合に、定電圧制御部152よりも速やかに無効電力を所望の値に近づけるための無効電力目標値Qcon_refを出力する。
【0035】
(1)事故時無効電力出力制御部154は、フィルタ演算部142により出力される三相ごとの電流目標値Iaf、Ibf、およびIcfのうちいずれか、平均値または実効値その他の統計値、或いは全てが閾値以上であり、且つ、系統電圧Va、Vb、およびVcのうちいずれか、平均値または実効値その他の統計値、或いは全てが第1基準値以上低下した場合に、無効電力目標値Qcon_refを出力する。実効値とは、それぞれの二乗和の平方を求めた値である。第1基準値は、例えば、交流フィルタ20に故障が生じた場合に生じる電圧低下を基準として設定される。従って、これらの条件を満たすのは、例えば、交流フィルタ20に故障が生じた場合である。上記の制御の結果、系統電圧を所望の値まで上昇させ、交流フィルタ20の故障による影響を低減することができる。
【0036】
(2)事故時無効電力出力制御部154は、系統電圧Va、Vb、およびVcのうちいずれか、平均値または実効値その他の統計値、或いは全てが第2基準値以上低下し、その後に系統電圧が回復した場合にも、無効電力目標値Qcon_refを出力する。第2基準値は、他励式変換器が停止してしまう電圧低下を基準として設定される。例えば、第1基準値<第2基準値である。「回復した」とは、例えば、系統電圧の低下前の状態まで到達した、或いは所定時間後に到達することが予想されることをいう。上記の制御の結果、停止した他励式変換器が消費していた無効電力を自励式変換器110により消費することができるため、系統電圧を所望の値まで低下させ、他励式変換器の停止による影響を低減することができる。
【0037】
定電圧制御部152により出力される無効電力目標値Qv_refと、事故時無効電力出力制御部154により出力される無効電力目標値Qcon_refとが加算された無効電力目標値Qrefは、定無効電力制御部156に入力される。定無効電力制御部156は、母線2における無効電力を無効電力目標値Qrefに近づけるためのq軸電流目標値Iqrefを算出し、出力する。なお、定電圧制御部152や定無効電力制御部156は、例えば、PID制御などのフィードバック制御を行う。
【0038】
目標値算出部130により出力されるd軸電流目標値Idrefは、HPF部146dにより出力されるd軸電流目標値Idref#と加算されて、最終d軸電流目標値Id*として変換器制御部160に入力される。HPF部146qにより出力されるq軸電流目標値Iqref#は、定無効電力制御部156により出力されるq軸電流目標値Iqrefと加算されて、最終q軸電流目標値Iq*として変換器制御部160に入力される。変換器制御部160は、入力された最終d軸電流目標値Id*および最終q軸電流目標値Iq*に基づいて、自励式変換器110に与える三相ごとの電圧指令値Vcov_a、Vcov_b、およびVcov_cを計算し、自励式変換器110に出力する。
【0039】
[処理フロー等]
再度、フィルタ演算部142の機能について説明する。交流フィルタ20(仮想フィルタ)のRLC成分に関する情報は、予め制御装置120の記憶装置に記憶されている。フィルタ演算部142は、実現する必要がある仮想フィルタkのRLC成分に基づいてFil
k(s)を計算し、Fil
all(s)を求める。
【0040】
図4は、フィルタ演算部142により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、フィルタ演算部142は、仮想フィルタ追加の指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS100)。仮想フィルタ追加の指示は、例えば、制御装置120の図示しない入力部(マウス、キーボード、タッチパネルなど)を介して受け付けられてもよいし、通信によって他装置から受け付けられてもよい。
【0041】
仮想フィルタ追加の指示が受け付けられた場合、フィルタ演算部142は、追加指示に係る仮想フィルタkの伝達関数を取得する(ステップS102)。kは、仮想フィルタを識別するための変数である。フィルタ演算部142は、仮想フィルタのRLC成分を取得して式(2)の計算を行うことで仮想フィルタkの伝達関数を取得してもよいし、伝達関数のパラメータを直接的に取得してもよいし、予め記憶装置に記憶されている仮想フィルタkの伝達関数の情報を読み出してもよい。
【0042】
次に、フィルタ演算部142は、ステップS102で取得した仮想フィルタkの伝達関数を反映させて、仮想フィルタ全体の伝達関数Fil
all(s)を再計算する(ステップS104)。再計算の結果、仮想フィルタ全体の伝達関数Fil
all(s)は、仮想フィルタ1〜kの伝達関数を反映したものとなる(式(3)参照)。フィルタ演算部142は、次回の計算のために変数を1インクリメントする(ステップS106)。
【0043】
そして、フィルタ演算部142は、仮想フィルタ全体の伝達関数Fil
all(s)を用いてフィルタ演算を実行する(ステップS108)。フィルタ演算部142は、係る処理を繰り返し実行する。
【0044】
図5は、電圧補償制御部150の事故時無効電力出力制御部154により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、事故時無効電力出力制御部154は、第1の条件を満たすか否かを判定する(ステップS200)。第1の条件とは、前述したように、フィルタ演算部142により出力される三相ごとの電流目標値Iaf、Ibf、およびIcfのうちいずれか、平均値または実効値その他の統計値、或いは全てが閾値以上であり、且つ、系統電圧Va、Vb、およびVcのうちいずれか、平均値または実効値その他の統計値、或いは全てが第1基準値以上低下したことである。第1の条件を満たすと判定した場合、事故時無効電力出力制御部154は、無効電力目標値Qcon_refを出力する(ステップS204)。
【0045】
また、事故時無効電力出力制御部154は、第2の条件を満たすか否かを判定する(ステップS202)。第2の条件とは、前述したように、系統電圧Va、Vb、およびVcのうちいずれか、平均値または実効値その他の統計値、或いは全てが第2基準値以上低下し、その後に系統電圧が回復したことである。第2の条件を満たすと判定した場合も、事故時無効電力出力制御部154は、無効電力目標値Qcon_refを出力する(ステップS204)。
【0046】
以上説明した第1の実施形態に係る制御装置120、および、制御装置120によって実行される制御方法によれば、所定周波数帯の高調波を抑制可能な交流フィルタのRLC成分に基づく伝達関数を実現するように、前記交流系統の三相ごとの電圧に基づいて三相ごとの電流目標値を算出し、算出された三相ごとの電流目標値を、第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値に変換し、要求パワーに基づく第2d軸電流目標値と、変換された第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値とに基づいて、自励式変換器110を制御することにより、自励式変換器110を用いて所定周波数帯の高調波を効果的に抑制することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る電力変換装置100Aは、一以上の自励式変換器110が電力系統に接続され、他励式変換器を含む電力変換装置10や交流フィルタ20が当該電力系統には接続されていない場面に適用される。
【0048】
図6は、第2の実施形態に係る制御装置120Aを含む電力変換装置100Aの構成図である。図示するように、制御装置120Aは、第1の実施形態に係る制御装置120から、電圧補償制御部150を省略した構成となっている。第2の実施形態において、HPF部146qが出力した値は、最終q軸電流目標値Iq*として変換器制御部160に入力される。
【0049】
第2の実施形態におけるフィルタ演算部142Aは、自励式変換器110が接続されたグリッドのRLC特性に基づいて、フィルタ演算を行う。フィルタ演算部142Aは、仮想フィルタの伝達関数Fil
grid(s)の逆数を時間領域に適用することで、交流電圧V(t)から仮想フィルタを流れる高調波電流i(t)を算出する。これを三相それぞれについて行うことで、フィルタ演算部142Aは、三相ごとの系統電圧Va、Vb、およびVcに基づいて、三相ごとの電流目標値Iaf、Ibf、およびIcfを算出する。式中、mは高調波の次数である。
【0051】
ここで、仮想フィルタの伝達関数Fil
grid(s)は、以下のように求められる。まず、電力系統1の送電線や変圧器や発電機のインピーダンス情報を入手し、電力系統の瞬時値解析ソフト上に、電力系統の解析モデルを構築する。このモデルの自励式変換器の連系点(グリッド)で、各次数における高調波電流を注入して発生する高調波電圧を算出する。この高調波電流、高調波電圧と系統のインピーダンス特性には式(4)の関係があり、注入した高調波電流と発生した高調波電圧から仮想フィルタの伝達関数Fil
grid(s)を算出することができる。
【0052】
以上説明した第2の実施形態に係る制御装置120A、および、これにおいて実行される制御方法によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0053】
なお、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に電圧補償制御部150を設けてもよい。この場合、電圧補償制御部150の事故時無効電力出力制御部154は、特定の次数の高調波電流が閾値以上となり、且つ系統電圧が低下した場合には、予め設定された無効電力を出力するようにしてもよい。
【0054】
[ハードウェア構成]
図7は、各実施形態の制御装置120または120A(以下、代表して制御装置120と称する)のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、制御装置120は、通信コントローラ120−1、CPU120−2、ワーキングメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)120−3、ブートプログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)120−4、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置120−5、ドライブ装置120−6などが、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ120−1は、他装置との通信を行う。記憶装置120−5には、CPU120−2が実行するプログラム120−5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)などによってRAM120−3に展開されて、CPU120−2によって実行される。これによって、目標値算出部130、フィルタ部140、電圧補償制御部150、および変換器制御部160のうち一部または全部が実現される。
【0055】
上記実施形態は、以下のように表現することができる。
交流系統に接続される自励式変換器の制御装置であって、
プログラムを記憶する記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
所定周波数帯の高調波を抑制可能な交流フィルタのRLC成分に基づく伝達関数を実現するように、前記交流系統の三相ごとの電圧に基づいて三相ごとの電流目標値を算出し、
前記フィルタ演算部により算出された前記三相ごとの電流目標値を、第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値に変換し、
要求パワーに基づく第2d軸電流目標値と、前記変換部により変換された第1d軸電流目標値および第1q軸電流目標値とに基づいて、前記自励式変換器を制御するように構成されている、
制御装置。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。