(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析装置の制御方法の概要は以下の通りである。
【0009】
[項目1]
回転運動によって、液体の移送を行う試料分析用基板であって、
回転軸を有する基板と、
前記基板内に位置し、希釈液を保持する第1保持チャンバと、
前記基板内に位置する測定チャンバと、
少なくとも1つの試薬と、
前記基板内に位置し、前記少なくとも1つの試薬が配置された試薬チャンバであって、前記測定チャンバに接続された試薬チャンバと、
前記基板内に位置し、前記第1保持チャンバ―と前記測定チャンバまたは試薬チャンバとを接続する第1希釈液経路と、
を備えた試料分析用基板。
【0010】
[項目2]
前記試薬チャンバは毛細管領域を含み、前記試薬は前記毛細管領域に配置されている、項目1に記載の試料分析用基板。
【0011】
[項目3]
前記基板内に位置し、希釈液を保持する第2保持チャンバと、
前記基板内に位置し、検体を保持する検体チャンバと、
前記基板内に位置する混合チャンバと、
前記基板内に位置し、前記検体チャンバと前記混合チャンバとを接続する検体経路と、
前記基板内に位置し、前記第2保持チャンバと前記混合チャンバとを接続する第2希釈液経路と、
前記基板内に位置し、前記混合チャンバと前記測定チャンバとを接続する混合液経路と、
をさらに備えた項目1または2に記載の試料分析用基板。
【0012】
[項目4]
前記基板内に位置し、検体を保持する検体チャンバと、
前記基板内に位置し、前記検体チャンバと前記測定チャンバとを接続する検体経路と、をさらに備えた項目1または2に記載の試料分析用基板。
【0013】
[項目5]
前記測定チャンバおよび前記試薬チャンバは空気穴を有しておらず、
前記第1希釈液経路は、入口および出口を有し、前出口が前記測定チャンバに接続された毛細管流路であって、前記出口は前記入口よりも前記回転軸に対して外周側に位置し、かつ、前記入口よりも内周側に屈曲したサイホン形状を備えた毛細管流路を含み、
前記混合液経路は、入口および出口を有し、前出口が前記測定チャンバに接続された毛細管流路と、前記毛細管流路の入口に接続されており、空気穴を有するチャンバとを含む、項目1から4のいずれかに記載の試料分析用基板。
【0014】
[項目6]
前記第1希釈液経路の毛細管流路の出口は、前記試薬チャンバと接続されている、項目1から5のいずれかに記載の試料分析用基板。
【0015】
[項目7]
前記試薬を複数含み、前記試薬チャンバの毛細管領域において前記複数の試薬は周方向に配置されている、項目2に記載の試料分析用基板。
【0016】
[項目8]
前記測定チャンバは前記試薬チャンバの前記毛細管領域のうち前記複数の試薬が配置されている領域よりも外周側に位置する部分を含む、項目7に記載の試料分析用基板。
【0017】
[項目9]
項目2に記載の試料分析用基板と、
前記試料分析用基板を載置可能なターンテーブルを有し、重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で前記回転軸を傾斜させた状態で、前記試料分析用基板を前記回転軸周りに回転させるモータ、
前記モータの回転軸の角度を検出する回転角度検出回路、前記分析用基板の基準となる原点を検出する原点検出器、
前記回転角度検出回路の検出結果に基づき、前記モータの回転および停止時の角度を制御するドライバー駆動回路、および
演算器、メモリおよびメモリに記憶され、前記演算器に実行可能なように構成されたプログラムを含み、前記プログラムに基づき、前記モータ、前記回転角度検出回路、前記原点検出器および前記ドライバー駆動回路の動作を制御する制御回路
を有する試料分析装置と、
を備えた試料分析システムであって、
前記プログラムは、
前記第1保持チャンバに前記希釈液が保持された試料分析用基板が前記試料分析装置のターンテーブルに載置された場合において、
(a) 前記試料分析用基板を回転させることによって、前記第1保持チャンバに保持された前記希釈液を、前記第1希釈液経路を介して前記測定チャンバへ移送させ、
(b) 前記試料分析用基板の回転を停止することによって、前記測定チャンバの前記希釈液を前記試薬チャンバの毛細管領域へ移動させ、前記複数の試薬を前記希釈液に溶解させ、試薬溶液を調製し、
(c) 前記試料分析用基板を回転させることによって、前記試薬チャンバの前記試薬溶液を前記測定チャンバへ移動させる、
工程を含む試料分析システム。
【0018】
[項目10]
前記プログラムは、前記工程(b)と工程(c)との間に前記試料分析用基板を揺動させる工程をさらに含む項目9に記載の試料分析システム。
【0019】
[項目11]
前記プログラムは、前記工程(b)と工程(c)とを複数回繰り返す、項目9に記載の試料分析システム。
【0020】
[項目12]
項目2に記載の試料分析用基板を載置可能なターンテーブルを有し、重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で前記回転軸を傾斜させた状態で、前記試料分析用基板を前記回転軸周りに回転させるモータ、
前記モータの回転軸の角度を検出する回転角度検出回路、前記分析用基板の基準となる原点を検出する原点検出器、
前記回転角度検出回路の検出結果に基づき、前記モータの回転および停止時の角度を制御するドライバー駆動回路、および
演算器、メモリおよびメモリに記憶され、前記演算器に実行可能なように構成されたプログラムを含み、前記プログラムに基づき、前記モータ、前記回転角度検出回路、前記原点検出器および前記ドライバー駆動回路の動作を制御する制御回路を備え、
前記プログラムは、
前記第1保持チャンバに前記希釈液が保持された試料分析用基板がターンテーブルに載置された場合において、
(a) 前記試料分析用基板を回転させることによって、前記第1保持チャンバに保持された前記希釈液を、前記第1希釈液経路を介して前記測定チャンバへ移送させ、
(b) 前記試料分析用基板の回転を停止することによって、前記測定チャンバの前記希釈液を前記試薬チャンバの毛細管領域へ移動させ、前記複数の試薬を前記希釈液に溶解させ、試薬溶液を調製し、
(c) 前記試料分析用基板を回転させることによって、前記試薬チャンバの前記試薬溶液を前記測定チャンバへ移動させる、
工程を含む試料分析装置。
【0021】
[項目13]
前記プログラムは、前記工程(b)と工程(c)との間に前記試料分析用基板を揺動させる工程をさらに含む項目12に記載の試料分析装置。
【0022】
[項目14]
前記プログラムは、前記工程(b)と工程(c)とを複数回繰り返す、項目12に記載の試料分析装置。
【0023】
[項目15]
項目2に記載の試料分析用基板を載置可能なターンテーブルを有し、重力方向に対して0°より大きく90°以下の角度で前記回転軸を傾斜させた状態で、前記試料分析用基板を前記回転軸周りに回転させるモータ、
前記モータの回転軸の角度を検出する回転角度検出回路、前記分析用基板の基準となる原点を検出する原点検出器、
前記回転角度検出回路の検出結果に基づき、前記モータの回転および停止時の角度を制御するドライバー駆動回路、および
演算器、メモリおよびメモリに記憶され、前記演算器に実行可能なように構成されたプログラムを含み、前記プログラムに基づき、前記モータ、前記回転角度検出回路、前記原点検出器および前記ドライバー駆動回路の動作を制御する制御回路を備えた試料分析装置の制御方法であって、
前記第1保持チャンバに前記希釈液が保持された試料分析用基板がターンテーブルに載置された場合において、
(a) 前記試料分析用基板を回転させることによって、前記第1保持チャンバに保持された前記希釈液を、前記第1希釈液経路を介して前記測定チャンバへ移送させ、
(b) 前記試料分析用基板の回転を停止することによって、前記測定チャンバの前記希釈液を前記試薬チャンバの毛細管領域へ移動させ、前記複数の試薬を前記希釈液に溶解させ、試薬溶液を調製し、
(c) 前記試料分析用基板を回転させることによって、前記試薬チャンバの前記試薬溶液を前記測定チャンバへ移動させる、
工程を含む試料分析装置の制御方法。
【0024】
[項目16]
前記工程(b)と工程(c)との間に前記試料分析用基板を揺動させる工程をさらに含む項目15に記載の試料分析装置の制御方法。
【0025】
[項目17]
前記プログラムは、前記工程(b)と工程(c)とを複数回繰り返す、項目15に記載の試料分析装置の制御方法。
【0026】
以下、図面を参照しながら本実施形態の試料分析用基板、試料分析装置、試料分析システムおよび試料分析装置の制御方法を詳細に説明する。
図1Aは、試料分析システム501の全体の構成を示すブロック図であり、
図1Bは、試料分析装置200の外観の一例を示す斜視図である。また、
図1Cは、試料分析装置200のドアを開けた状態を示す斜視図である。試料分析システム501は試料分析装置200および試料分析用基板1を含む。
【0027】
試料分析装置200は、開閉可能なドア251を有する筐体250を備える。筐体250は、試料分析用基板1を回転可能に収納する収納室250cを有し、収納室250c内に、ターンテーブル202を有するモータ201が配置されている。ドア251を開けた状態で収納室250c内のターンテーブル202に試料分析用基板1を着脱可能である。ドア251を閉じることにより、ドア251は収納室250cに外部から光が入射しないように、収納室250cを遮光する。また、ドア251に設けられたクランパ253とターンテーブル202との間に試料分析用基板1が挟み込まれる。筐体250には、試料分析装置200を起動/停止する電源スイッチ252と、表示装置208が設けられている。表示装置208はタッチパネルであり入力装置209を兼ねていてもよい。
【0028】
試料分析装置200は、モータ201と、制御回路205と、駆動回路206と、光学測定ユニット207とを備える。
【0029】
モータ201は、重力方向Gに対して0°より大きく90°以下の角度θで傾いた回転軸Aを有し、ターンテーブル202に載置された試料分析用基板1を回転軸A周りに回転させる。回転軸Aが傾いていることにより、試料分析用基板1における液体の移送に、回転による遠心力に加え、重力による移動を利用することができる。回転軸Aの重力方向Gに対する傾斜角度は、5°以上であることが好ましく、10°以上45°以下であることがより好ましく、20°以上30°以下であることがさらに好ましい。モータ201は例えば、直流モータ、ブラシレスモータ、超音波モータ等であってよい。
【0030】
駆動回路206はモータ201を回転させる。具体的には、制御回路205からの指令に基づき、試料分析用基板1を時計方向または反時計方向に回転させる。あるいは、所定の停止位置で回転軸Aを中心に所定の振幅範囲、周期で左右に往復運動をさせて試料分析用基板1を揺動させる。
【0031】
回転角度検出回路204は、モータ201の回転軸Aの回転角度を検出する。例えば、回転角度検出回路204は回転軸Aに取り付けられたロータリーエンコーダであってもよい。モータ201がブラシレスモータである場合には、回転角度検出回路204は、ブラシレスモータに備えられているホール素子およびホール素子の出力信号を受け取り、回転軸Aの回転角度を出力する検出回路を備えていてもよい。検出回路は後述する制御回路205が兼ねていてもよい。ターンテーブル202に対して、試料分析用基板1の取り付け角度が定まっている場合、回転軸Aの回転角度は、試料分析用基板1の回転角度と一致する。
【0032】
ターンテーブル202に対して任意の角度で、試料分析用基板1が取り付けられるように構成されていてもよい。この場合、ターンテーブル202に取り付けられた試料分析用基板1の基準となる部分の回転角度を検出する。以下、試料分析用基板1の基準となる部分を原点と呼ぶ。このために試料分析装置200は、原点検出器203を備えていてもよい。例えば、
図1Dに示すように、原点検出器203は、光源203a、受光素子203bおよび原点検出回路203cを含み、光源203aと受光素子203bとの間に試料分析用基板1が位置するように配置される。例えば、光源203aは発光ダイオードであり、受光素子203bはフォトダイオードである。後述するように試料分析用基板1は遮光性を有する保護キャップ2を有する。保護キャップ2は例えば、光源203aから出射する光の少なくとも一部を遮光する遮光性を有する。試料分析用基板1において、保護キャップ2の領域は透過率が小さく(例えば10%以下)、保護キャップ2以外の領域では透過率が大きい(例えば60%以上)。
【0033】
試料分析用基板1がモータ201によって回転すると、受光素子203bは、入射する光の光量に応じた検出信号を原点検出回路203cへ出力する。回転方向に応じて、保護キャップ2のエッジ2hおよびエッジ2jにおいて検出信号は増大または低下する。原点検出回路203cは、例えば、矢印で示すように、試料分析用基板1が時計回りに回転している場合において、検出光量の低下を検出し、原点信号として出力する。
【0034】
本明細書では、保護キャップ2のエッジ2hの位置を、試料分析用基板1の原点位置(試料分析用基板1の基準となる角度位置)として取り扱う。ただし、保護キャップ2のエッジ2jの位置から任意に定められる特定の角度の位置を原点として定めてもよい。また、保護キャップ2が扇形であり、その中心角が、試料分析に必要な角度の検出精度よりも小さい場合には、保護キャップ2自体を原点位置として定めてもよい。
【0035】
原点位置は、試料分析装置200が試料分析用基板1の回転角度の情報を取得するために利用される。原点検出器203は、他の構成を備えていてもよい。例えば、試料分析用基板1に原点検出用の磁石を備え、原点検出器203はこの磁石の磁気を検出する磁気検出素子であってもよい。また、後述する磁性粒子を捕捉するための磁石を原点検出に用いてもよい。
【0036】
光学測定ユニット207は、試料分析用基板1に保持された検体に応じたシグナルを検出する。シグナルは、後述するように、試薬と反応した検体が発する蛍光等の発光、あるいは、透過光の吸光度等である。例えば、光学測定ユニット207は、光源207aと、光検出器207bと検出回路207cを含み、光源207aから出射する光によって、試薬と反応した検体が発する蛍光を、光検出器207bが検出する。光検出器207bの出力は、検出回路207cに入力される。
【0037】
制御回路205は、たとえば試料分析装置200に設けられたCPUを含む。制御回路205は、入力装置209からの操作者の指令に基づき、試料分析装置200の各部を動作させて検体の分析を行う。具体的には、制御回路205は、RAM(Random Access Memory;図示せず)に読み込まれたコンピュータプログラムを実行することにより、当該コンピュータプログラムの手順にしたがって他の回路に命令を送る。その命令を受けた各回路は、本明細書において説明されるように動作して、各回路の機能を実現する。制御回路205からの命令は原点検出器203、回転角度検出回路204、駆動回路206、光学測定ユニット207等に送られる。コンピュータプログラムの手順は、添付の図面におけるフローチャートによって示されている。
【0038】
なお、コンピュータプログラムが読み込まれたRAM、換言すると、コンピュータプログラムを格納するRAMは、揮発性であってもよいし、不揮発性であってもよい。揮発性RAMは、電力を供給しなければ記憶している情報を保持できないRAMである。たとえば、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)は、典型的な揮発性RAMである。不揮発性RAMは、電力を供給しなくても情報を保持できるRAMである。たとえば、磁気抵抗RAM(MRAM)、抵抗変化型メモリ(ReRAM)、強誘電体メモリ(FeRAM)は、不揮発性RAMの例である。本実施の形態においては、不揮発性RAMが採用されることが好ましい。
【0039】
揮発性RAMおよび不揮発性RAMはいずれも、一時的でない(non-transitory)、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例である。また、ハードディスクのような磁気記録媒体や、光ディスクのような光学的記録媒体も一時的でない、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例である。すなわち本開示にかかるコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムを電波信号として伝搬させる、大気などの媒体(一時的な媒体)以外の、一時的でない種々のコンピュータ読み取り可能な媒体に記録され得る。
【0040】
本明細書では、制御回路205は回転角度検出回路204および原点検出器203の原点検出回路203cと別個の構成要素として説明している。しかしながら、これらは共通のハードウェアによって実現されていてもよい。たとえば、試料分析装置200に設けられたCPU(コンピュータ)が、制御回路205として機能するコンピュータプログラム、回転角度検出回路204として機能するコンピュータプログラムおよび原点検出器203の原点検出回路203cとして機能するコンピュータプログラムを直列的、または並列的に実行してもよい。これにより、そのCPUを見かけ上、異なる構成要素として動作させることができる。
【0041】
(試料分析用基板1)
試料分析用基板の構造を詳細に説明する。試料分析用基板は、回転運動によって、試料分析用基板1に導入された液体の移送を行う。
図2Aは、試料分析用基板1の分解斜視図を示す。試料分析用基板1は、本実施形態では、ベース基板3と、カバー基板4と、保護キャップ2と希釈液容器5とを備える。ベース基板3とカバー基板4とにより基板本体を構成し、基板本体と保護キャップ2とは全体として1つの基板を構成する。
【0042】
ベース基板3は、第1面3aおよび第2面3bを有し、第1面3aにマイクロチャネル構造3cが形成されている。マイクロチャネル構造3cは、微小な流体を保持する複数のチャンバと、複数のチャンバ間で流体移動させる複数の流路とを含む。マイクロチャネル構造3cの具体的な構造は以下において説明する。ベース基板3の第1面3aには、希釈液容器5を保持するための収納部11をさらに備える。収納部11内には、突起である開封リブ14が設けられている。ベース基板3は、切り欠き部3nを有する円盤形状を有しており、切り欠き部3nに突出した注入口13をさらに備える。注入口13は、検体を含む試料液をマイクロチャネル構造3cに導入する開口である。
【0043】
カバー基板4は、ベース基板3の第1面3aがカバー基板4の第2面4bと対向し、当接するように、ベース基板3に接合されている。これにより、ベース基板3のマイクロチャネル構造3cの第1面3aの開口が閉じられ、区画された複数のチャンバおよび複数の流路がベース基板3、カバー基板4および保護キャップ2によって構成される基板内に形成される。
【0044】
カバー基板4の第1面4aには、ターンテーブル202に挿入される回転支持部15が設けられている。回転支持部15には、先端が外周に向かって延びる凸部15cが形成されている。凸部15cの先端は軸Aに平行な円柱形状の曲面を有している。凸部15cは、ターンテーブル202に回転支持部15が挿入された場合に、ターンテーブル202に対して試料分析用基板1が空転するのを抑制する回り止め用係合として機能する。
【0045】
図2Bおよび
図2Cは、保護キャップ2を閉じた状態および開いた状態の、試料分析用基板1の斜視図である。保護キャップ2は、ベース基板3の切り欠き部3nを覆う扇形形状を有し、扇形形状の一端側に孔2a、2bを有している。カバー基板4の第1面4aおよびベース基板3の第2面3bにはそれぞれ切り欠き3nの近傍に凸部7a、7bを有し、凸部7a、7bが保護キャップ2の孔2a、2bに挿入され、保護キャップ2は、基板本体に対して回動可能に支持される。
【0046】
図2Cに示すように、保護キャップ2が、開いた状態では、注入口13が露出しており、試料液を注入口13から導入が可能である。
図2Bに示すように、保護キャップ2が閉じた状態では、注入口13は、保護キャップ2に覆われる。これにより、注入口13から試料液が導入され、試料分析用基板1を回転させた場合において、回転による遠心力によって、試料液が注入口13から飛散するのを抑制する。
【0047】
保護キャップ2は、また、測定前に希釈液容器5を所定の位置に保持し、測定時に、希釈液容器5を開封する機能を備える。保護キャップ2および希釈液容器5の構造を詳述しながらこれらの機能を説明する。
【0048】
図3Aから
図3Eは希釈液容器5の平面図、
図3AのA−A断面図、側面図、背面図および正面図である。また
図4Aから
図4Dは、保護キャップ2の平面図、側面図、
図4AのB−B断面図および背面図である。
【0049】
希釈液容器5は、第1面5aおよび第2面5bと、第1面5aおよび第2面5bの間に位置し、基板本体の収納部11の空間に対応した曲面5cおよび側面5dと、収納空間5eとを有する。収納空間5eは側面5dに開口5daを有する。収納空間5eには希釈液8が保持されており、側面5dには、開口5daを覆うように、シール部材9が接合されている。シール部材は、例えば樹脂、アルミ箔、あるいはこれらの複合部材などからなる。側面5dは第2面5b側に傾斜している。曲面5cには、当接面10cおよび凸部10eを有するラッチ部10が接続されている。第1面5aには凹部5aaが設けられている。
【0050】
保護キャップ2は、切り欠き12cおよび当接面12dを有し、第2面2eの内側に設けられた突起部12を有する。また第1面2cの扇形の内周に側面2dを有する。
【0051】
図5Aから
図5Cは、試料分析用基板1の使用前の状態、試料液を導入する状態および保護キャップを閉塞した状態を示す断面図である。
図5Aに示すように、使用前の状態では、保護キャップ2が閉塞されており、保護キャップ2の突起部12の切り欠き12cに希釈液容器5のラッチ部10の凸部10eが係合している。このため、希釈液容器5は矢印J方向に移動しないように保護キャップ2によって固定されている。試料分析用基板1はこの状態で利用者に提供される。希釈液容器5は、収納部11内において、この状態で、開封リブ14がシール部材9と離間している初期位置に配置されている。
【0052】
利用者が、検体の分析を行う場合、
図5Aおよび
図5Bに示すように、保護キャップ2を開く。これにより、希釈液容器5のラッチ部10が弾性変形し、凸部10eが保護キャップ2の突起部12の切り欠き12cから外れ、ラッチ部10と突起部12との係合が解除される。
【0053】
この状態で、試料分析用基板1の露出した注入口13に利用者が試料液を点着し、
図5Bおよび
図5Cに示すように、保護キャップ2を閉じる。この際、保護キャップ2を閉じることによって、保護キャップ2の突起部12の当接面12dが、希釈液容器5のラッチ部10の当接面10cと当接し、希釈液容器5が基板本体の収納部11内でJ方向に移動する。これにより、希釈液容器5は、収納部11内において、開封位置へ移動する。
【0054】
希釈液容器5が開封位置へ移動することによって、傾斜した側面5dに設けられたシール部材9が開封リブ14の先端から根本にかけて順に当接し、シール部材9が開封リブ14によって開封される。これにより、収納空間5eに保持されていた希釈液が希釈液容器5の外部に排出され得る状態になる。この状態で希釈液の一部は、希釈液容器5から排出されてもよい。
【0055】
図6は試料分析用基板1を
図5Aに示した状態にセットする製造工程を示している。先ず、保護キャップ2を閉じる前に、希釈液容器5の下面に設けた凹部5aaと、カバー基板4に設けた孔4aaとを位置合わせして、この初期位置において孔4aaを通して希釈液容器5の凹部5aaに、固定治具150の突起150aを係合させて、希釈液容器5を初期位置に係止した状態にセットする。そして、保護キャップ2の上面に形成されている切り欠き2f(
図4A参照)から、押圧治具151を差し入れて保護キャップ2の底面を押圧して弾性変形させた状態で保護キャップ2を閉じてから押圧治具151を解除することによって、
図5Aの状態にセットできる。
【0056】
この実施の形態では希釈液容器5の第1面5aに凹部5aaを設ける例を説明したが、希釈液容器5の第2面5bに凹部を設け、この凹部に対応してベース基板3に孔を設けて固定治具150の突起150aを凹部に係合させるように構成してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、保護キャップ2の切り欠き12cが希釈液容器5のラッチ部10に直接に係合して希釈液容器5を初期位置に固定しているが、保護キャップ2の切り欠き12cと希釈液容器5のラッチ部10とを間接的に係合させて希釈液容器5を初期位置に固定してもよい。
【0058】
次に試料分析用基板1のターンテーブル202への固定を説明する。
図7Aは、ターンテーブル202の上面図である。ターンテーブル202は、円柱状の凹部202dと、凹部202d内に配置された中央凸部202cを有する。また、ターンテーブル202は外側面に位置する歯車202fと、凹部202dの側面に設けられた歯車202fを有する。
図7Bは、歯車202fの歯の円周方向の断面を示す。歯車202fの歯はターンテーブルの上面202a側の角にテーパー202tが設けられている。
【0059】
試料分析用基板1をターンテーブル202に載置する場合、試料分析用基板1の回転支持部15をターンテーブル202の凹部202dと中央凸部202cとの間の空間に挿入する。
図7Aにおいて、挿入される回転支持部15をハッチングで示す。
【0060】
試料分析用基板1の回転支持部15内の空間にターンテーブル202の中央凸部202cが挿入される。回転支持部15および保護キャップ2の側面2dは、ターンテーブル202の凹部202dの中央凸部202cと歯車202fとの間の空間に挿入される。このとき、側面2dは、歯車202fの先端の面と当接する。回転支持部15の凸部15cの先端は、歯車202fの歯溝のいずれかに挿入される。側面2dは、歯車202fの先端と当接するため、ターンテーブル202の回転角度位置に関わらずターンテーブル202の凹部202d内へ挿入可能である。一方、凸部15cの先端は、歯車202fの歯と当接する角度では、凹部202d内へ挿入できない。しかし、
図7Bに示すように、歯車202fの歯には上面202a側にテーパー202tが設けられているため、凸部15cの先端と歯のテーパー202tとが当接するとテーパー202tは、凸部15cの先端から円周方向に沿った抗力を受け、ターンテーブル202が少し回転する。これにより、凸部105cの先端が、歯車202fの歯溝に挿入される。これにより、試料分析用基板1の回転支持部15とターンテーブル202の歯車202fが噛み合い、空転しない状態で、試料分析用基板1がターンテーブル202に載置される。
【0061】
凸部15cの先端は歯車202fのどの歯溝にも挿入可能であるため、操作者は試料分析用基板1の取り付け角度を気にすることなく、ターンテーブル202に試料分析用基板1を載置できる。また、側面2dは歯車202fの複数の歯の先端と当接する。このため、回転支持部15は、凸部15cおよび側面2dによって、ターンテーブル202の歯車202fと比較的小さな面積の複数個所で接触することが可能となり、回転支持部15をターンテーブル202が、がたつきなく支持することが可能となる。
【0062】
前述したように、ターンテーブル202の回転軸は重力方向から角度θ傾いている。これにより、試料分析用基板1の回転停止位置に応じて、試料分析用基板1内の溶液にかかる重力の方向を制御できる。
【0063】
例えば
図8Aに示す位置(真上を0°(360°)として表現した場合に180°付近の位置)で試料分析用基板1を停止させた場合は、チャンバ121の外側面122が正面から見て下側に向くため、チャンバ121内の溶液125は外周方向(外側面122)に向かって重力を受ける。
【0064】
また、
図8Bに示す60°付近の位置で試料分析用基板1を停止させた場合は、チャンバ121の左側面123が正面から見て下側に向くため、チャンバ121内の溶液125は左側面123側に向かって重力を受ける。同様に、
図8Cに示す300°付近の位置では、チャンバ121の右側面124が正面から見て下側に向くため、チャンバ121内の溶液125は右側面124に向かって重力を受ける。
【0065】
このように、回転軸Aに傾斜を設け、任意の回転停止位置において、試料分析用基板1を停止させることで、重力を試料分析用基板1内の溶液を所定の方向に移送させるための駆動力の1つとして利用できる。
【0066】
試料分析用基板1内の溶液にかかる重力の大きさは、回転軸Aの角度θを調整することで設定することができ、移送する液量と、試料分析用基板1内の壁面に付着する力との関係に応じて設定することが望ましい。
【0067】
角度θは、10°〜45°の範囲が望ましい。角度θが10°より小さいと溶液にかかる重力が小さすぎて移送に必要な駆動力が得られない可能性があり、角度θが45°より大きくなると回転軸Aへの負荷が増大したり、遠心力で移送させた溶液が自重で勝手に動いて制御が困難になる可能性がある。
【0068】
試料分析用基板1を構成する部品の材料としては、材料コストが安価で量産性に優れる樹脂材料が望ましい。前記分析装置200は、試料分析用基板1を透過した光を測定する光学的測定方法によって試料液の分析を行うため、ベース基板3およびカバー基板4の材料としては、PC,PMMA,AS,MSなどの透光性(透明性)が高い合成樹脂が望ましい。
【0069】
また、希釈液容器5の材料としては、希釈液容器5の内部に希釈液8を長期間封入しておく必要があるため、PP,PEなどの水分透過率の低い結晶性の合成樹脂が望ましい。保護キャップ2の材料としては、成形性のよい材料であれば特に問題がなく、PP,PE,ABSなどの安価な樹脂が望ましい。
【0070】
ベース基板3とカバー基板4との接合は、前記収容エリアに担持された試薬の反応活性に影響を与えにくい方法が望ましく、接合時に反応性のガスや溶剤が発生しにくい超音波溶着やレーザー溶着などが望ましい。
【0071】
また、ベース基板3とカバー基板4との接合によって形成されるマイクロチャネル構造のうち、流路等毛細管力によって溶液を移送させる部分には、毛細管力を高めるための親水処理がなされていることが望ましい。具体的には、親水性ポリマーや界面活性剤などを用いた親水処理が行われている。ここで、親水性とは水との接触角が90°未満のことをいい、より望ましくは、接触角は40°未満である。
【0072】
次に試料分析用基板1に形成されるマイクロチャネル構造を説明する。本実施形態の試料分析システムでは、試料液に含まれる検体を検出するための試薬を、溶液の状態で検体と反応させる。これにより、検体と試薬との反応の均一性を高め、検体の検出あるいは検体量の測定の精度を高めることができる。このため、
図9Aに示すように、試料分析用基板1の基板は、保持チャンバ(第2保持チャンバ)22、溢流チャンバ24、保持チャンバ(第1保持チャンバ)26、測定チャンバ28、試薬チャンバ29および溢流チャンバ31A〜31Dを備える。また、試料分析用基板1の基板は、収納部11と保持チャンバ22とを接続する流路21、保持チャンバ22と溢流チャンバ24とを接続する流路23、溢流チャンバ24と保持チャンバ26とを接続する流路25、保持チャンバ26と、測定チャンバ28とを接続する流路27を備える。さらに、試料分析用基板1の基板は、保持チャンバ26と溢流チャンバ31Aとを接続する流路32、溢流チャンバ31Aと溢流チャンバ31Bとを接続する流路33、溢流チャンバ31Bと溢流チャンバ31Cとを接続する流路34、溢流チャンバ31Cと溢流チャンバ31Dとを接続する流路35を備える。流路27は保持チャンバ26と測定チャンバ28または試薬チャンバ29とを接続し、希釈液を移送する第1希釈液経路を構成している。流路27の保持チャンバ26との接続口は、測定チャンバ28または試薬チャンバ29との接続口よりも内周側に位置している。また、流路27は、これらの接続口の間において、これら2つの接続口よりも内周側に突出した凸部を有している。つまり、流路27は、試料分析用基板1を回転させた場合に働く遠心力を重力としてみた場合にサイホンを構成している。
【0073】
好ましくは、検体または検体を含む試料液も希釈液で希釈されている。このために、
図9Bに示すように、試料分析用基板1の基板は、チャンバ42、混合チャンバ44、保持チャンバ22とチャンバ42とを接続する流路41、チャンバ42と混合チャンバ44とを接続する流路43を備える。混合チャンバ44において後述する検体を含む試料液が希釈液で混合される。希釈液で希釈された検体は、測定チャンバ28へ移送される。このために、試料分析用基板1は、大気開放チャンバ47と、混合チャンバ44と大気開放チャンバ47とを接続する流路45と大気開放チャンバ47と測定チャンバ28とを接続する流路48と、流路45に接続された大気開放チャンバ46を備える。流路41、チャンバ42および流路43は、保持チャンバ22と、混合チャンバ44とを接続する第2希釈液経路を構成している。また、流路45、大気開放チャンバ47および流路48は、混合チャンバ44と測定チャンバ28とを接続する混合液経路を構成している。
【0074】
図9Cに示すように、試料液から一部の成分を除去するために、試料分析用基板1は、検体チャンバ62A、62Bと、溢流チャンバ67と、検体チャンバ62Bとチャンバ42とを接続する流路64、チャンバ54、流路55と、溢流チャンバ67に接続された流路68、69と、流路68、69に接続された大気開放チャンバ70、71と、流路64に接続された大気開放チャンバ66とを備える。
【0075】
流路64、チャンバ54、流路55、チャンバ42および流路43は、検体チャンバ62Bと、混合チャンバ44とを接続する検体経路を構成している。
【0076】
各流路は、0.5mm〜2mmの幅および50μm〜500μmの深さを有している。このサイズは例えば試料液が血液である場合に、毛細管力の作用する範囲である。
【0077】
各大気開放チャンバには、空気孔85がそれぞれ設けられている。また、保持チャンバ26、溢流チャンバ31A、31B、49A、51Aおよび混合チャンバ44にも空気孔85が設けられている。空気孔85は、図中小さな円で示し、わかりやすさのため、参照符号をつけていない。
【0078】
各流路は、本実施形態では、毛細管力が作用する形状を有しており、試料分析用基板1が回転しない状態で、各流路の入口が液体に接している場合、毛細管力によって各流路の一部または全部が液体で満たされる。各流路は希釈液8、試料液等の液体が流れる方向に従って、流路の2つの開口のうち、上流側の開口を入口と呼び、下流側の開孔を出口と呼ぶ。
【0079】
流路がサイホン形状を有する場合、試料分析用基板1の回転軸Aに対して、入口が出口よりも内周側に位置しており、各流路は、流路の入口が接続されたチャンバで保持される液面よりも内周側で屈曲する屈曲部を含んでいる。
【0080】
以下、図面を参照しながら、試料分析システムによる検体の測定方法を詳細に説明する。本実施形態では、人体の血液中の血漿成分に含まれる例えば、HbA1cなどの成分を検体として検出し、検体の量を測定する例を説明する。
【0081】
(1)試料液の試料分析用基板1への導入
まず、検出すべき検体を含む試料液を試料分析用基板1へ導入する。
図10Aは、試料分析用基板1の注入口13を試料分析用基板1の外側から見た拡大図を示し、
図10Bは保護キャップ2を開いて指先120から試料液18を採取するときの様子を示したものであり、
図10Cは、ターンテーブル202の側から見た注入口近傍の構造を示す斜視図である。
【0082】
注入口13は試料分析用基板1の内部に設定された回転軸Aから外周方向へ突出した形状で、内周方向に伸長するようベース基板3とカバー基板4との間に形成された微小な隙間δの毛細管力の作用する誘導部17を介して、毛細管力により必要量保持できる流路61の入り口に接続されている。このため、保護キャップ2を開いてこの注入口13に試料液(血液)18を直接に付けることによって、注入口13の付近に付着した試料液18が誘導部17の毛細管力によって試料分析用基板1の内部に取り込まれる。
【0083】
誘導部17と流路61と接続部、つまり流路61の入り口にはベース基板3に凹部61aを形成して流路の向きを変更する屈曲部61bが形成されている。屈曲部61bは試料分析用基板1の内周側に突出している。流路61の出口は、検体チャンバ62Aに接続されている。
【0084】
(2)試料分析用基板1の試料分析装置200への装填
試料液を試料分析用基板1へ導入した後、保護キャップ2を閉じる。これにより上述したように、希釈液容器5が収納部11内で移動し、開封リブ14がシール部材9を開封する。これにより、シール部材9の開口から、希釈液が排出され得る状態となる。
【0085】
上述したように、試料分析装置200の電源スイッチ252をONにする。試料分析装置200のドア251を開け、試料分析用基板1の回転支持部15をターンテーブルの凹部202dに挿入し、試料分析用基板1をターンテーブル202に載置する。その後、ドア251を閉じる。
【0086】
図11Aは、この状態での試料分析用基板1における試料液18および希釈液8の位置を示す。試料液18は流路61に位置している。希釈液8は希釈液容器5に保持されたままであるが、上述したように、シール部材9に開口が形成されており、希釈液8は排出され得る状態にある。
【0087】
(3)測定の開始、希釈液8の保持チャンバへの移動および試料液の検体チャンバへの移動
操作者が入力装置209から測定の開始を指示することによって、ターンテーブル202が回転し、試料分析用基板1が
図11Bに示すように、例えば、時計方向(C2方向)に回転する。これにより、流路61内の試料液18が遠心力を受け、屈曲部61bの位置で破断し、屈曲部61bよりも出口側に位置する試料液18は検体チャンバ62Aへ移動する。また、屈曲部61bよりも入口側に位置する試料液18は、注入口13から保護キャップ2内に排出される。
【0088】
検体チャンバ62Aへ移動した試料液18は、遠心力によって、検体チャンバ62Aよりも外周側に位置する検体チャンバ62Bへさらに移動する。検体チャンバ62Bにおいて試料液18は、遠心分離によって、血漿成分18aと血球成分18bとに分離される。検体チャンバ62Bの最外周の位置に流路65の入口が接続されているため、この状態で、流路65の一部は血球成分18bで満たされる。流路64の入口は、検体チャンバ62Bの最外周部分よりも内周側に位置しており、血漿成分18aおよび血球成分18bと接する。しかし、血球成分18bよりも血漿成分18aの粘度の方が低いため、血漿成分18aが優先的に流路64に吸い上げられ、流路64の一部は血漿成分18aで満たされる。
【0089】
一方、希釈液容器5内の希釈液8は、シール部材9の開口から収納部11内に排出される。さらに、
図11Bに示すように流路21を介して希釈液8は保持チャンバ22に流入する。保持チャンバ22に流入した希釈液8が所定量を超えると、所定量を超えた希釈液8は、流路23、溢流チャンバ24、流路25を介して、保持チャンバ26に流入する。
【0090】
溢流チャンバ24に接続された流路23の出口よりも、溢流チャンバ24に接続された流路25の入口の方が外周側に位置しているため、溢流チャンバ24に流入した希釈液8は溢流チャンバ24にとどまらず流路25を介して保持チャンバ26へ移動する。
【0091】
このとき
図12に示すように、希釈液容器5の収納空間5eの内壁5fは、側面5dと反対側に位置し、かつ回転軸Aよりも開口5da側にdだけオフセットされた軸mを有する円柱面によって構成されている。このため、試料分析用基板1の回転によって、回転軸Aよりも、内壁5f側に位置する希釈液8には、内壁5fへ向かう方向に遠心力が働くが、内壁5fに押し付けられた希釈液は内壁5fに沿って矢印で示すように、開口5da側に移動する。円柱面の軸mが回転軸Aよりも開口5da側に位置しているため、希釈液8は回転軸Aよりも開口5da側まで移動する。その結果、移動した希釈液8には、開口5da側に移動する遠心力が働き、矢印nで示す方向に移動する。よって、希釈液8は、希釈液容器5の開口5daから効率よく収納部11に放出される。
【0092】
保持チャンバ26に流入した希釈液8が所定量を超えると、所定量を超えた希釈液8は流路32を介して溢流チャンバ31Aに流入する。溢流チャンバ31Aに接続された流路32の出口よりも、溢流チャンバ31Aに接続された流路33の入口の方が外周側に位置しているため、溢流チャンバ31Aに流入した希釈液8は溢流チャンバ31Aにとどまらず流路33を介して溢流チャンバ31Bへ移動する。希釈液8は、さらに流路34を介して溢流チャンバ31Cに流入する。溢流チャンバ31Cは、溢流チャンバ31Cの内周側に設けられた流路35によって溢流チャンバ31Dに接続されている。このため、溢流チャンバ31Cに流入した希釈液8が流路35の入口に達すると、希釈液8は、流路35を介して溢流チャンバ31Dにも流入する。
【0093】
図11Bに示すように希釈液8は、流路41の一部および流路23も満たしている。具体的には、流路41のうち、溢流チャンバ24に接続された流路23の出口位置における回転軸Aからの半径位置(距離)R1と同じ半径位置よりも外周側に位置する部分を希釈液8で満たしている。また、保持チャンバ22に保持される希釈液8の量も、保持チャンバ22の空間のうち、回転軸Aからの半径位置(距離)R1よりも外側の部分で規定される。これら保持チャンバ22、流路41の一部および流路23に保持された希釈液8の合計から、後述する流路41に残存する希釈液8を除いた量の希釈液8が検体の希釈に使用される。半径位置R1によって、保持チャンバ22および流路41に保持される希釈液8の量は定まるため、この段階で検体の希釈に使用される希釈液8が定量される。
【0094】
同様に、希釈液8は流路27の一部および流路32も満たしている。具体的には、流路27のうち、溢流チャンバ31Aに接続された流路32の出口位置における回転軸Aからの半径位置(距離)R2と同じ半径位置よりも外周側に位置する部分を希釈液8で満たしている。同様に、保持チャンバ26に保持される希釈液8の量も、保持チャンバ26の空間のうち、回転軸Aからの半径位置(距離)R2よりも外側の部分で規定される。これら保持チャンバ26、流路27の一部および流路32に保持された希釈液8の合計から、後述する流路27に残存する希釈液8を除いた量の希釈液8が試薬の溶解に使用される。半径位置R2によって、保持チャンバ26および流路27に保持される希釈液8の量は定まるため、この段階で試薬液を調製するために使用される希釈液8が定量される。
【0095】
(4)試料液の計量
次に、ターンテーブル202の回転を停止させる。前述したように、流路64の入口は、血漿成分18aおよび血球成分18bと接する。しかし、血球成分18bよりも血漿成分18aの粘度の方が低いため、
図13Aに示すように、毛細管力によって、血漿成分18aが優先的に流路64に吸い上げられ、流路64は血漿成分18aで満たされる。血漿成分18aが流路64に吸い上げられた後、血球成分18bも吸い上げられ得る。
【0096】
流路64は、内周側に屈折した屈曲部64aと、屈曲部64aの最も内周側に位置する部分よりも入口側および出口側にそれぞれ位置する部分64Aおよび64Bを含む。流路64には、血漿成分18aが先に吸い上げられるため、血球成分18bは入口側の部分64Aの一部を満たす程度である。つまり、流路64が血球成分18bを吸い込んだ場合でも、血漿成分18aと血球成分18bとは分離された状態を維持する。後述するように、流路64の部分64Bが検体の測定に用いられるため、血球成分18bが検体に混入し測定に影響を与えることが抑制される。流路64の部分64Bが血漿成分18aで満たされることによって、測定に用いる血漿成分18aの定量が行われる。
【0097】
検体チャンバ62Bに保持されている血球成分18bは、毛細管力によって流路65に吸い上げられ、流路65を満たす。
【0098】
保持チャンバ22に保持された希釈液8は、毛細管力によって流路41に吸い上げられ、流路41を満たす。また、保持チャンバ26に保持された希釈液8は、毛細管力によって流路27に吸い上げられ、流路27を満たす。
【0099】
(5)希釈液の測定チャンバおよび混合チャンバへの移動、検体の混合チャンバへの移動
ターンテーブル202を時計方向(C2方向)に回転させると、流路64が大気開放チャンバ66に接続されていることによって、大気開放チャンバ66に接続されている部分で流路64内の血漿成分18aおよび血球成分18bが破断する。具体的には、部分64Aに位置していた血漿成分18aおよび血球成分18bは、回転による遠心力によって、検体チャンバ62Bへ移動する。
図13Bに示すように、検体チャンバ62Bへ移動した血漿成分18aおよび血球成分18bは、検体チャンバ62Bに位置していた血球成分18bと一緒になり、流路65を経て溢流チャンバ67へ移動する。
【0100】
一方、部分64Bに位置していた血漿成分18aは、チャンバ54、流路55、チャンバ42および流路43を経て混合チャンバ44へ移動する。
【0101】
保持チャンバ22、流路23および流路41に位置している希釈液8は、流路41、チャンバ42および流路43を経て混合チャンバ44へ移動する。これにより、血漿成分18aと希釈液8とが混合チャンバ44で混合され、検体溶液が調製される。
【0102】
このとき、希釈液8の移送が進み、流路23および保持チャンバ22が空になった後、流路41にのみ希釈液8が位置する状態になると、
図14Aに示すように、遠心力により流路41内の希釈液8が流路41内の内壁の外周側に押し付けられることによって、流路41の屈曲部41aのうち保持チャンバ22側に位置する部分において、内周側に空気路56が形成される。空気路56が形成されると、希釈液8はそれ以上移送されなくなる。このため、一部の希釈液8は流路41内に残る。
【0103】
同様に、保持チャンバ26、流路32および流路27に位置している希釈液8は、流路27を経て試薬チャンバ29へ移動する。希釈液8の移動が進み、流路32および保持チャンバ26が空になった後、流路27にのみ希釈液8が位置する状態になると、
図14Bに示すように、遠心力により流路27内の希釈液8が流路27内の内壁の外周側に押し付けられることによって、流路27の屈曲部27aのうち保持チャンバ26側に位置する部分において、内周側に空気路56が形成される。空気路56が形成されると、希釈液8はそれ以上移送されなくなる。このため、一部の希釈液8は流路27内に残る。
【0104】
試薬チャンバ29は毛細管力が働く部分29Aと毛細管力が実質的に働かない部分29Bを含む。部分29Aおよび部分29Bはそれぞれ略円周方向に伸びており、部分29Bは部分29Aよりも内周側に位置している。部分29Bは、毛細管力によって部分29Aに希釈液が保持される際の気泡を排出する空気路として機能する(部分29Aにおける気泡の噛みこみ防止)。
【0105】
部分29Aには、1以上の試薬30が配置されている。試料分析用基板1が2以上の試薬30を含む場合、複数の試薬30は概ね周方向に沿って配置される。
【0106】
測定チャンバ28は、試薬チャンバ29の部分29Aおよび部分29Bに隣接して位置している。部分29Aは、測定チャンバ28と周方向において隣接しており、かつ、部分29Aの一端29Aaは測定チャンバ28の外周側に接している。また、測定チャンバ28は、試薬チャンバ29の部分29Aのうち主要な領域よりも外周側に位置している。
【0107】
流路27の出口は、本実施形態では、試薬チャンバ29の部分29Bに接続されている。このため、流路27から試薬チャンバ29へ希釈液8が移動すると、部分29Bを介して部分29Aの一部に移動し、さらに、測定チャンバ28へ移動する。これにより、希釈液8が毛細管エリアである部分29Aの一部を濡らして測定チャンバ28へ移動する。このため、試薬チャンバ29の部分29Aの濡れ性が高められ、以下の工程で希釈液8を試薬チャンバ29へ移動させる際に、希釈液8が円滑に移動し得る。
【0108】
また、試薬チャンバ29および測定チャンバ28には空気穴が設けられていない。これによって、次の工程における試薬溶液の調整の際、空気穴から試薬溶液が漏れ出るのを抑制できる。測定チャンバ28は流路48を介して大気開放チャンバ47に接続されている。このため、希釈液8を試薬チャンバ29へ移動させる際、試薬チャンバ29および測定チャンバ28が密閉容器とならず、試薬チャンバ29および測定チャンバ28の空気は、流路48を介して大気開放チャンバ47から放出することができる。よって、希釈液8の試薬チャンバ29への円滑な移動が可能となる。
【0109】
(6)試薬溶液、検体溶液の調製
ターンテーブル202の回転を停止し、例えば、試料分析用基板1を
図15Aに示す回転角度で停止させる。さらに、この回転角度から試料分析用基板1の外周上において±1mm程度の移動範囲の揺動を試料分析用基板1に与えるようにターンテーブル202を5〜80Hzの周波数で揺動、つまり、正転および逆転させる。この角度では、特に揺動を行っても、混合チャンバ44内の検体溶液が混合チャンバ44に接続された流路45の入り口に接しない回転角度が選択される。
【0110】
上述の揺動によって、混合チャンバ44内に移送された希釈液8と血漿成分18aとが攪拌され、検体溶液が調製される。
【0111】
また、測定チャンバ28に移送された希釈液8は、毛細管力によって試薬チャンバ29の部分29Aに吸上げられ、試薬30が希釈液8に溶解し、試薬溶液が調製される。前述したように測定チャンバ28および試薬チャンバ29には大気孔が設けられていないため、揺動によって試薬溶液が大気孔から漏れ出ることがない。
【0112】
また、試薬チャンバ29に接続された流路27には希釈液8が残っている。このため、流路27から保持チャンバ26へ試薬溶液が流出することが抑制される。
【0113】
さらに測定チャンバ28は流路48を介して大気開放チャンバ47に接続されており、大気開放チャンバ47はさらに検体溶液を計量する流路45と接続されている。このため、揺動によって、測定チャンバ28から流路48に試薬溶液が満たされると、
図15Cに示すように、試薬チャンバ29および測定チャンバ28に接続された2つの流路27、48に液体が満たされることによって、試薬チャンバ29および測定チャンバ28の気密性が保たれる状態になる。このため、試薬を溶解・攪拌するための揺動の周波数を制限する必要がなく、上述したように、混合チャンバ44内の検体溶液が混合チャンバ44に接続された流路45の入り口に接しない範囲で攪拌のための揺動条件を設定することができる。
【0114】
また、溢流チャンバ67は、周方向に伸びる形状を有しておりその両端において流路68、69を介して大気開放チャンバ70、71と接続されている。流路68、69は、溢流チャンバ67に排出された血漿成分18aおよび血球成分18bを含む排出された試料液と接するように位置している。このため流路68、69の毛細管力によって試料液が吸上げられ、大気開放チャンバ70、71と溢流チャンバ67との連通が遮られる。また、
図14A、14Bを参照して説明した理由から流路65には、排出された試料液が残留する。これによって、溢流チャンバ67内を負圧の状態で密閉することが可能となり、溢流チャンバ67へ移動した試料液18の流出を抑制できる。
【0115】
なお溢流チャンバ67には大気と連通する流路を2つ設けているが、どちらか一方の流路のみを設けても同様の効果を得ることができる。但し、この場合、検体チャンバ62Bから溢流チャンバ67への試料液を排出する際、途中で流路68または流路69が試料液18で満たされ、溢流チャンバ67内が与圧されることによって、さらに試料液を溢流チャンバ67へ移動させることができなくなる可能性がある。この場合検体チャンバ62Bにとどまる試料液18は、以下の工程で流路64を介して混合チャンバ44へ移動する可能性がある。この点で、流路および大気開放チャンバをそれぞれ2つ備える構造は有利である。また、検体チャンバ62Bの外周側に毛細管力が生じる部分を形成してもよい。このような構造によれば、毛細管力によって、排出できなかった試料液18を検体チャンバ62Bで保持することができる。
【0116】
(7)試薬溶液の測定チャンバへの移動
ターンテーブル202を時計方向に回転させると、
図15Bに示すように試薬チャンバ29の部分29Bに保持されていた試薬溶液が遠心力によって測定チャンバ28へ移動する。
【0117】
ターンテーブル202の回転を停止し、試料分析用基板1を
図15Aで示す回転角度位置で停止すると、測定チャンバ28の試薬溶液が再び試薬チャンバ29の部分29Aへ移動する。回転と停止を数回繰り返し行うことで、測定チャンバ28における試薬の調製および混合チャンバ44における検体溶液の調製を、拡散のみによるこれらの調製に比べて短時間でかつ確実に行うことができる。ターンテーブル202を停止させた後、前述した揺動動作をおこなってもよい。
【0118】
(8)検体溶液の計量
ターンテーブル202の回転を停止し、例えば、試料分析用基板1を
図16Aに示す回転角度で停止させる。さらに、この回転角度から試料分析用基板1の外周上において±1mm程度の移動範囲の揺動を試料分析用基板1に与えるようにターンテーブル202を5〜80Hzの周波数で揺動させる。この動作によって、混合チャンバ44内に保持される検体溶液を混合チャンバ44の内周側に入口が接続された流路45と接触させる。検体溶液は毛細管力によって流路45に吸い込まれ、流路45が検体溶液で満たされる。
【0119】
図14Cに流路45を拡大して示す。流路45は、内周側に屈曲した凸部45a、45b、45c、45dと、外周側に屈曲した凸部45e、45f、45gを有する。凸部45a、45b、45c、45dは大気開放チャンバ46と接続されており、凸部45e、45fは溢流チャンバ49Aに接続され、凸部45gは大気開放チャンバ47に接続されている。流路45は、凸部45a、45b、45c、45dの中心を通る半径方向の直線(
図14Cにおいて破線で示す)によって、部分45A〜45Eに分けられる。後述するように、流路45の部分45Dに位置する検体溶液は測定に用いられ、その他の部分の検体溶液は、測定に用いられない。部分45Dは完全に検体溶液で満たされているため、流路45の容積によって検体溶液が計量される。
【0120】
(9)検体溶液の測定チャンバへの移送
図16Aに示すように、ターンテーブル202を時計方向に回転させると、流路45に保持されている検体溶液は、大気開放チャンバ46と接している凸部45a、45b、45c、45dの位置で、大気開放チャンバ46から空気が入り込むことによって、破線で示すように破断する。つまり、検体溶液は、部分45A〜45Eに対応し分割される。
図16Aおよび
図16Bに示すように、部分45Aに位置する検体溶液は、混合チャンバ44へ戻る。部分45Bおよび部分45Cに位置する検体溶液は、溢流チャンバ49Aへ移動し、さらに流路50を介して溢流チャンバ49Bへ移動する。部分45Dに位置する検体溶液は大気開放チャンバ47へ移動し、流路48を介して測定チャンバ28へ移動する。また部分45Eに位置する検体溶液は、溢流チャンバ51Aへ移動し、流路52を介して溢流チャンバ51Bへ移動する。
【0121】
測定チャンバ28へ移動した検体溶液は、測定チャンバ28に保持された試薬溶液と混合する。あらかじめ試薬が希釈液に溶解しているため、試薬溶液中の試薬と検体溶液中の検体とは早い速度で反応し、また、混合された溶液全体で均一に反応が生じる。また、混合された溶液全体においてほぼ同時に検体と試薬とが反応する。これらの点で、測定の再現性、測定の不均一性に起因するばらつきなどが抑制され、大幅な測定精度の向上が可能となる。溢流チャンバ49Bおよび51Bには空気孔は設けられていない。これにより測定に用いられなかった検体溶液が溢流チャンバ49Bおよび51Bから漏れ出ることが抑制される。
【0122】
(10) 検体溶液と試薬溶液との混合
ターンテーブル202の回転を停止させると、測定チャンバ28に移送された試薬溶液および検体溶液の混合液は、毛細管力によって
図17Aに示すように、試薬チャンバ29の部分29Aに吸上げられる。
【0123】
ここで、試料分析用基板1の外周上において±1mm程度の移動範囲の揺動を試料分析用基板1に与えるようにターンテーブル202を5〜80Hzの周波数で揺動させることによって、測定チャンバ28および試薬チャンバ29の部分29Aに保持された混合溶液を攪拌し、希釈溶液中で検体と試薬とがより均一に分散し、これらが反応するのを促進させることができる。前述したように、流路48が混合溶液で満たされると、試薬チャンバ29および測定チャンバ28の気密性が保たれる状態になる。このため、混合のための揺動の周波数を制限する必要がなく、任意の強さで揺動動作を制御可能となる。
【0124】
(11)測定
ターンテーブル202を時計方向に回転させると
図17Bに示すように、試薬チャンバ29の部分29Aに保持されていた混合溶液が遠心力によって測定チャンバ28の外周側に移送され保持される。
【0125】
その後、測定チャンバ28が、光学測定ユニット207の光源207aと、光検出器207bとの間を通過するタイミングで得られた光検出器207bの検出値を制御回路205が受け取り、演算を行うことによって検体の濃度を算出する。制御回路205は、測定チャンバ28に調製した試薬溶液が位置する際の検出値をあらかじめ取得し、この値を基準として用いることによって、測定精度を向上させてもよい。
【0126】
また、本実施形態では、光学ユニットを用いて検体の濃度を測定しているが、試料分析装置は、測定チャンバ28に配置された、試薬溶液および検体溶液の混合溶液に電気的にアクセスして検体の濃度を測定してもよい。
【0127】
(他の形態)
上記実施形態では、検体を含む試料液を希釈液で希釈し、検体溶液を調製しているが、検体を含む試料液を希釈液で希釈せずに、試薬溶液と反応させてもよい。この場合、検体チャンバは混合チャンバを経ずに検体経路によって測定チャンバと接続されていてもよい。この場合でも試薬は希釈液に溶解されているため、前述したように、検体と試薬とを均一に反応させることができ、測定精度を向上させることが可能である。
【0128】
また、上記実施形態では、保持チャンバ26は流路27によって試薬チャンバ29に接続されていたが、流路27は測定チャンバ28に接続されていてもよい。この場合でも、前述したように試薬チャンバ29の部分29Aが測定チャンバ28の外周側壁と近接していることによって、流路27を介して希釈液を測定チャンバ28へ移送させる際に、測定チャンバ28に移送された希釈液が、試薬チャンバ29の部分29Aの一部が希釈液で濡れる。よって、試料分析用基板の回転を停止すれば、円滑に希釈液が試薬チャンバ29の部分29Aに吸い上げられる。
【0129】
また、本実施形態では、検体溶液を計量するための流路45は部分45A〜45Eを含んでいるが、測定に必要な量の検体溶液が計量できれば、流路45の構造はこれに限られない。
【0130】
また、試料分析用基板に形成されるマイクロチャネル構造、つまり、流路およびチャンバの数、形状、配置等は一例であって上記実施形態に限られない。