(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977070
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド製造用合金
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20211125BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20211125BHJP
A63B 53/04 20150101ALI20211125BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/60
A63B53/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-5652(P2020-5652)
(22)【出願日】2020年1月17日
(65)【公開番号】特開2021-46605(P2021-46605A)
(43)【公開日】2021年3月25日
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】108133209
(32)【優先日】2019年9月16日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501106263
【氏名又は名称】明安國際企業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周峰永
(72)【発明者】
【氏名】林▲ペイ▼瑤
(72)【発明者】
【氏名】蕭徳福
(72)【発明者】
【氏名】蘇明福
(72)【発明者】
【氏名】陳敏宗
【審査官】
橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−089832(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第1831179(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0173374(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0173373(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−C22C 38/60
A63B 53/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.16wt%〜0.25wt%の炭素、1wt%以下のシリコン、0.2wt%以下のイオウ、0.2wt%以下のリン、1wt%以下のマンガン、2.5wt%〜3.4wt%のニッケル、14wt%〜15wt%のクロム、1wt%〜2wt%のモリブデン、及び、残部とする鉄のみからなるマルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とするゴルフクラブヘッド製造用合金。
【請求項2】
請求項1に記載の合金を使用して製造されたことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金に関し、特にゴルフクラブヘッド製造用合金に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフは、ゴルフクラブを操ってゴルフクラブのヘッドでボールを打つスポーツなので、ゴルフクラブヘッドの材料の機械的性質は、打球の結果及び手応えに大きな影響を与える。
【0003】
特許文献1には、0.08wt%〜0.15wt%の炭素、0.5wt%〜1.5wt%のシリコン、0.4wt%〜1.2wt%のマンガン、0.55wt%以下の銅、3.5wt%〜6.0wt%のニッケル、13.5wt%〜17.0wt%のクロム、1.5wt%〜2.6wt%のモリブデン、及び、残部とする鉄を含むゴルフクラブヘッド製造用合金が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】台湾特許出願公開第200630141号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の合金の機械的性質について、引張強度は1495.8Mpa〜1511.66Mpaにあり、降伏強度は1212.36Mpa〜1247.53Mpaにあるので、強度が更に向上する必要がある。
【0006】
上記問題点に鑑みて、本発明は、より高強度のゴルフクラブヘッド製造用合金の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は、0.16wt%〜0.25wt%の炭素、1wt%以下のシリコン、0.2wt%以下のイオウ、0.2wt%以下のリン、1wt%以下のマンガン、2.5wt%〜3.4wt%のニッケル、14wt%〜15wt%のクロム、1wt%〜2wt%のモリブデン、及び、残部とする鉄、を含むことを特徴とするゴルフクラブヘッド用合金を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記の合金を使用して製造されたことを特徴とするゴルフクラブヘッドを提供する。
【発明の効果】
【0009】
鉄鋼系合金において、炭素の含有量は、機械的性質に対する影響が一番大きいものである。炭素の含有量が増えると、合金の硬度及び機械的強度が向上するが、展延性、溶接性、靱性が低下する。また、炭素の含有量が増えると、オーステナイト化する際に、ベースに固溶する炭素の量が増えて、良好な硬化性を提供でき、ベースが焼き入れされる時に、マルテンサイトに変態形成できてより硬化になり、また、焼き戻しされる時に、合金炭化物の析出は、合金を二回硬化する効果がある。しかし、炭素の含有量が高すぎると、炭素がクロムと結合して炭化クロムが生成し結晶境界(crystal boundary)で析出するようになるので、ベースまたはその一部においてクロムの量が減り、合金の耐食性が低下する。従って、本発明においては、合金内の炭素の含有量を0.16wt%〜0.25wt%に制御する。
【0010】
合金へのニッケルの添加は、合金の耐食性及び抗酸化性を向上することができ、且つ、合金のFCCオーステナイト相を安定させることができる。しかし、冷却後の合金の強度は低下する。
【0011】
本発明は、合金内の炭素の含有量を増やすと共に、ニッケルの含有量を減らし、上記構成により、本発明のゴルフクラブヘッド製造用合金は、より高い引張強度及び降伏強度を有するので、高強度のゴルフクラブヘッドを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴルフクラブヘッド製造用合金は、0.16wt%〜0.25wt%の炭素、1wt%以下のシリコン、0.2wt%以下のイオウ、0.2wt%以下のリン、1wt%以下のマンガン、2.5wt%〜3.4wt%のニッケル、14wt%〜15wt%のクロム、1wt%〜2wt%のモリブデン、及び、残部とする鉄、を含むものである。
【0013】
該合金を溶融してから、注入及び成形工程により一般の鋳造でゴルフクラブヘッドを製造することができる。また、本発明の合金により製造されたゴルフクラブヘッドは、マルテンサイト系のステンレス鋼である。
【0014】
本発明の合金における炭素は、炭化物の析出作用がある以外、オーステナイト安定化元素である。炭素の含有量が増えることに伴って、オーステナイトが焼き入れまたは焼き戻しされる時の安定性が大幅に向上する。
【0015】
シリコンは、フェライト安定化元素であり、広く使用されている効果的な脱酸剤である。合金にシリコンを添加すると、合金の強度、硬度及び弾性限界が向上し、更に液体金属の流動性が上がり、鋳造しやすくなる。一方、シリコンがスラグ(slag)になると、溶接性と切削加工性とが低下する。従って、本発明では、合金に1wt%以下のシリコンを添加することにより、鋳造工程がより順調に行うことができるようにする。
【0016】
イオウは、合金の耐摩耗性を上げることができる。リンは、合金を製造する時の安定性を上げることができる。
【0017】
マンガンは、オーステナイト安定化元素であり、脱酸(MnOを形成する)及びイオウによる合金の高温脆性を軽減する(MnSを形成する)効果がある。また、マンガンの添加は、合金の強度、硬度、靱性を上げる効果があるが、マンガンが多すぎると、溶接性を損なうので、本発明は、合金へのマンガンの添加を1wt%以下に制御する。
【0018】
ニッケルの添加は、合金の耐食性及び抗酸化性を上げることができ、且つ、合金のFCCオーステナイト相を安定させることができる。しかし、冷却固化後の合金の強度が低下するので、本発明は、合金へのニッケルの添加を2.5wt%〜3.4wt%に制御する。
【0019】
クロムの含有量が少なすぎると、マルテンサイト相が生じて合金が脆くなる一方、クロムの含有量が多すぎると、フェライト相の比が40%を超えて、伸び率が足りなくなるので、本発明は、合金へのクロムの添加を14wt%〜15wt%に制御する。
【0020】
モリブデンの添加は、合金の高温強度、クリープ強度及び高温硬度が増えるので、製造されたゴルフクラブヘッドの耐摩耗性及び強度が向上する。
【0021】
また、シリコン、イオウ 、リンまたはマンガンの添加量は0wt%であってもよい。
【0022】
表1は、本発明の実施例の合金の組成成分と特許文献1に記載されている合金の組成成分の範囲とを示す表であり、表2は、本発明の実施例の合金と上記特許文献1に記載されている合金の例との機械的性質を比較する表である。
【0023】
引張強度、降伏強度、伸び率は、一般的に、万能試験機(universal testing machine)を用いて測定してから、公知の方程式で算出したものである。
【0026】
上記表2に示されるように、本発明の実施例の合金の引張強度及び降伏強度は、特許文献1に記載されている合金の例の引張強度及び降伏強度より高い。
【0027】
更に、実施例1、2を以下の比較例1〜3と比較して、本発明に係る合金において炭素及びニッケルの含有量を制御することによる効果を実証する。
【0028】
表3は、本発明の実施例の合金と比較例1〜3の合金との組成成分を示す表であり、表4は、本発明の実施例の合金と比較例1〜3の合金との機械的性質を比較する表である。
【0031】
上記表3及び表4に示されるように、比較例1は、ニッケルの含有量が本発明の範囲を超えるので、降伏強度が実施例1及び実施例2よりやや大きいけれども、引張強度においては実施例1及び実施例2より遥かに小さい。
【0032】
比較例2は、ニッケルの含有量が本発明の範囲より少ないので、降伏強度及び引張強度が実施例1及び実施例2より遥かに小さい。
【0033】
比較例3は、ニッケルの含有量及び炭素の含有量が本発明の範囲より少ないので、降伏強度及び引張強度が実施例1及び実施例2より遥かに小さい。
【0034】
また、比較例1〜3の伸び率も実施例1及び実施例2の伸び率より遥かに小さいので、本発明による炭素及びニッケルの制御が、展延性の向上にも効果があることが示される。
【0035】
上記の構成によれば、本発明は、合金内の炭素の含有量を上記の範囲内に増やすと共に、ニッケルの含有量を上記の範囲内に減らすことにより、本発明のゴルフクラブヘッド製造用合金は、従来より高い引張強度及び降伏強度を有して、従来より高強度のゴルフクラブヘッドを製造できる。
【0036】
上記においては、説明のため、本発明の全体的な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のゴルフクラブヘッド製造用合金は、ゴルフクラブヘッド製造に適用できる。