特許第6977076号(P6977076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977076
(24)【登録日】2021年11月12日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】動吸振装置および天井
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/98 20060101AFI20211125BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   E04B1/98 A
   E04B9/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-15424(P2020-15424)
(22)【出願日】2020年1月31日
(65)【公開番号】特開2021-123861(P2021-123861A)
(43)【公開日】2021年8月30日
【審査請求日】2020年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】山田 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】永松 英夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 岳男
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 権也
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2020−133905(JP,A)
【文献】 特開2018−028177(JP,A)
【文献】 特開2018−123669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62−1/99
E04B 9/00−9/36
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列方向に互いに間隔を空けて配列された2本の野縁と、両野縁の下面に固定される天井ボードと、を備えた天井に設置される動吸振装置であって、
質量体と、
前記質量体の下面に設けられた弾性変形可能な弾性体と、
前記天井ボードが前記2本の野縁に固定される前の状態において前記2本の野縁の間で前記弾性体が前記野縁の下方に突出するように、前記質量体を前記2本の野縁に仮保持するとともに前記天井ボードが前記2本の野縁に取り付けられることにより前記弾性体および前記質量体が前記天井ボードに載置された状態で上方に持ち上げられて、前記質量体と前記2本の野縁とが非接触となるように、前記質量体の前記2本の野縁への仮保持を解除可能とされた仮保持手段と、
前記弾性体と前記天井ボードとの間に介在し、前記天井ボードと前記弾性体との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗となる低摩擦手段と
を備える動吸振装置。
【請求項2】
前記弾性体は、前記野縁の延びる方向および/または前記配列方向に間隔をあけて
前記質量体の下面に複数接続され、
複数の前記弾性体のそれぞれと前記天井ボードとの間には、前記低摩擦手段が介在している、
請求項1に記載の動吸振装置。
【請求項3】
前記質量体の下面は、前記野縁の延びる方向および前記配列方向に沿って延びる4辺をもつ矩形形状を有しており、
前記弾性体は、前記質量体の下面の四隅であって前記野縁との間に隙間を許容する位置に分散して配置されている、
請求項2に記載の動吸振装置。
【請求項4】
前記弾性体は、前記野縁の延びる方向に延びる形状をしており、前記2本の野縁の間の中央線を挟み、かつ前記野縁までの距離が前記中央線までの距離よりも近くなるように、前記配列方向に間隔をあけて前記質量体の下面における前記野縁との間に隙間を許容する位置に2本配置されている、
請求項2に記載の動吸振装置。
【請求項5】
前記弾性体は、前記野縁との間に隙間を許容するように前記野縁の延びる方向および前記配列方向に広がって前記質量体の下面の所定の範囲を覆う単一の面を有する形状を有している、
請求項1に記載の動吸振装置。
【請求項6】
前記質量体は、前記2本の野縁の間において前記野縁の側面に対向する対向面を有しており、
前記対向面と前記野縁の側面との距離は、前記弾性体と前記野縁の側面との距離よりも小さくなるように設定されている、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の動吸振装置。
【請求項7】
所定の配列方向に互いに間隔を空けて配列された2本の野縁と、
前記野縁の下面に固定される天井ボードと、
前記天井ボードの上面に載置される請求項1〜6のいずれか1項に記載の動吸振装置とを備えている天井。
【請求項8】
前記弾性体が前記天井ボードに対して相対的に水平移動する範囲を規制する規制部をさらに備えている、
請求項7に記載の天井。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動吸振装置およびこれを備えた天井に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅やマンションなどの建物においては、上下階間における床衝撃音の遮音対策として、下層階の天井下地に制振材や動吸振装置などの振動低減手段を組み込む手法が取られることがある。
【0003】
例えば、特許文献1および2記載の動吸振装置は、いずれも2本の野縁の下面に固定される天井ボードの上面に載置されて使用される装置であり、具体的には、質量体と、質量体の下面に設けられた弾性体とを備えている。
【0004】
天井ボードが2本の野縁の下面に固定された状態では、弾性体は、天井ボードの上面に当接しており、質量体および弾性体からなる動吸振装置が天井ボードの上面に自立した状態になる。したがって、天井ボードの振動は、質量体および弾性体によって構成される振動系の共振を利用して減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−028177号公報
【特許文献2】特開2018−123669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の動吸振装置では、天井ボードの上面に弾性体が当接している。天井ボードは、一般的には石膏ボードなどの表面が粗いボードであり、天井ボードと弾性体との間の摩擦抵抗が大きい。そのため、天井ボードの施工時、すなわち、天井ボードを2本の野縁の下面に固定する作業の際に、天井ボードの水平位置の微調整のために天井ボードを水平方向にずらすと、動吸振装置の弾性体も天井ボードに追随して水平方向に動いてしまい、弾性体が変形するおそれがある。
【0007】
弾性体が変形すると、動吸振装置の共振周波数が設計時の共振周波数からずれてしまい、動吸振装置の振動低減効果が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、天井ボード施工時における弾性体の変形を防止し、振動低減性能の低下を防ぐことが可能な動吸振装置およびこれを備えた天井を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の動吸振装置は、所定の配列方向に互いに間隔を空けて配列された2本の野縁と、両野縁の下面に固定される天井ボードと、を備えた天井に設置される動吸振装置であって、質量体と、前記質量体の下面に設けられた弾性変形可能な弾性体と、前記天井ボードが前記2本の野縁に固定される前の状態において前記2本の野縁の間で前記弾性体が前記野縁の下方に突出するように、前記質量体を前記2本の野縁に仮保持するとともに前記天井ボードが前記2本の野縁に取り付けられることにより前記弾性体および前記質量体が前記天井ボードに載置された状態で上方に持ち上げられて、前記質量体と前記2本の野縁とが非接触となるように、前記質量体の前記2本の野縁への仮保持を解除可能とされた仮保持手段と、前記弾性体と前記天井ボードとの間に介在し、前記天井ボードと前記弾性体との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗となる低摩擦手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、低摩擦手段が弾性体と天井ボードとの間に介在しているので、天井ボードを2本の野縁の下面に固定する施工作業において、弾性体が天井ボードの上面に載置した状態で当該天井ボードの水平位置を微調整する際に天井ボードを水平方向に移動させても、弾性体が滑って天井ボードに追随しにくくなる。それによって、弾性体の変形を防止し、動吸振装置の振動低減性能の低下を防ぐことが可能である。
【0011】
上記の動吸振装置において、前記弾性体は、前記野縁の延びる方向および/または前記配列方向に間隔をあけて前記質量体の下面に複数接続され、複数の前記弾性体のそれぞれと前記天井ボードとの間には、前記低摩擦手段が介在しているのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、複数の弾性体が野縁の延びる方向および/または前記野縁の配列方向に間隔をあけて配置されているので、大きな重量の質量体を複数の弾性体によってバランスよく支持することが可能であり、しかも、弾性体同士の接触を避けることが可能である。さらに、複数の弾性体のそれぞれと天井ボードとの間には、低摩擦手段が介在しているので、天井ボードの施工時において複数の弾性体のそれぞれの変形を防止することが可能である。
【0013】
上記の動吸振装置において、前記質量体の下面は、前記野縁の延びる方向および前記配列方向に沿って延びる4辺をもつ矩形形状を有しており、前記弾性体は、前記質量体の下面の四隅であって前記野縁との間に隙間を許容する位置に分散して配置されているのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、弾性体が質量体の矩形形状の下面の四隅であって野縁との間に隙間を許容する位置、すなわち野縁の近傍の位置に分散して配置されているので、大きな重量の質量体を複数の弾性体によってバランスよく支持することが可能である。また、弾性体は、野縁の近傍の位置に配置されていても、上記のように低摩擦手段によって弾性体の変形が防止されているので、天井ボードの施工時において弾性体が変形して野縁に接触することを回避し、それによって動吸振装置の振動低減性能の大幅な低下を防ぐことが可能である。
【0015】
上記の動吸振装置において、前記弾性体は、前記野縁の延びる方向に延びる形状をしており、前記2本の野縁の間の中央線を挟み、かつ前記野縁までの距離が前記中央線までの距離よりも近くなるように、前記配列方向に間隔をあけて前記質量体の下面における前記野縁との間に隙間を許容する位置に2本配置されているのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、弾性体が野縁の延びる方向に延びる長細い形状をしており、2本の野縁の間の中央線を挟み、かつ野縁までの距離が中央線までの距離よりも近くなるように、野縁の配列方向に間隔をあけて質量体の下面における野縁との間に隙間を許容する位置、すなわち、野縁の近傍の位置に2本配置されているので、大きな重量の質量体を2本の長細い弾性体によってよりバランスよく支持することが可能である。また、2個の長細い弾性体は、野縁の近傍の位置に配置されていても、上記のように低摩擦手段によって弾性体の変形が防止されているので、天井ボードの施工時において弾性体が変形して野縁に接触することを回避し、それによって動吸振装置の振動低減性能の大幅な低下を防ぐことが可能である。
【0017】
上記の動吸振装置において、前記弾性体は、前記野縁との間に隙間を許容するように前記野縁の延びる方向および前記配列方向に広がって前記質量体の下面の所定の範囲を覆う単一の面を有する形状を有しているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、弾性体が前記野縁との間に隙間を許容するように前記野縁の延びる方向および前記配列方向に広がって前記質量体の下面の所定の範囲を覆う単一の面を有する形状を有しているので、大きな重量の質量体を大面積の単一の面を有する1個の弾性体によってよりバランスよく支持することが可能である。また、大面積の単一の面を有する1個の弾性体は、野縁との間に隙間を許容するように野縁の近傍まで広がっていても、上記のように低摩擦手段によって弾性体の変形が防止されているので、天井ボードの施工時において弾性体が変形して野縁に接触することを回避し、それによって動吸振装置の振動低減性能の大幅な低下を防ぐことが可能である。
【0019】
上記の動吸振装置において、前記質量体は、前記2本の野縁の間において前記野縁の側面に対向する対向面を有しており、前記対向面と前記野縁の側面との距離は、前記弾性体と前記野縁の側面との距離よりも小さくなるように設定されているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、前記質量体は、前記2本の野縁の間において前記野縁の側面に対向する対向面を有しており、前記対向面と前記野縁の側面との距離は、前記弾性体と前記野縁の側面との距離よりも小さくなるように設定されているので、天井ボードの施工時において弾性体および質量体が野縁の配列方向に水平移動しても、質量体の対向面が弾性体よりも先に野縁に接触するので、弾性体が野縁に接触することをより確実に回避し、それによって動吸振装置の振動低減性能の大幅な低下を防ぐことが可能である。
【0021】
本発明の天井は、所定の配列方向に互いに間隔を空けて配列された2本の野縁と、前記野縁の下面に固定される天井ボードと、前記天井ボードの上面に載置される上記の動吸振装置とを備えていることを特徴とする。
【0022】
上記天井では、天井ボードを2本の野縁の下面に固定する施工作業において、動吸振装置を天井ボードの上面に載置するだけでよく、動吸振装置を天井ボードにブラケットなどの固定部材を用いて取り付ける作業が必要ない。したがって、天井ボードの施工作業を容易に行うことが可能である。また、低摩擦手段が弾性体と天井ボードとの間に介在しているので、天井ボードの施工の際に、弾性体が天井ボードの上面に載置した状態で当該天井ボードの水平位置を微調整する際に天井ボードを水平方向に移動させても、弾性体が滑って天井ボードに追随しにくくなる。それによって、弾性体の変形を防止し、動吸振装置の振動低減性能の低下を防ぐことが可能である。
【0023】
上記の天井において、前記弾性体が前記天井ボードに対して相対的に水平移動する範囲を規制する規制部をさらに備えているのが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、規制部によって、弾性体が前記天井ボードに対して相対的に水平移動する範囲を規制することが可能であり、天井ボードの施工時における弾性体の変形をより確実に防止することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、天井ボード施工時における弾性体の変形を防止し、振動低減性能の低下を防ぐことが可能な動吸振装置およびこれを備えた天井を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る動吸振装置を備えた天井の上方から見た構造を示す斜視図である。
図2図1の天井を天井ボードから取り外した状態で下方から見た構造を示す斜視図である。
図3図1の動吸振装置が2本の野縁に仮保持された状態を野縁の延びる方向から見た図である。
図4図3の動吸振装置を下方から見た図である。
図5図1の天井における天井ボードを2本の野縁の下面に固定する施工作業を示す断面説明図である。
図6】本発明の比較例として低摩擦手段を有しない従来の動吸振装置を適用した天井において、天井ボードの施工時に弾性体が変形している状態を示す断面説明図である。
図7】本発明の変形例に係る2本の長細い弾性体を備えた動吸振装置を下方から見た図である。
図8】本発明の他の変形例に係る大型の弾性体を1個備えた動吸振装置を下方から見た図である。
図9】本発明のさらに他の変形例に係る弾性体が天井ボードに対して相対的に水平移動する範囲を規制する規制部を備えた動吸振装置を下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0028】
図1〜2に示される天井20は、所定の配列方向D1に互いに間隔を空けて配列された複数本の野縁2と、これらの野縁2を受ける野縁受3と、複数本の床梁4と、野縁2の下面2b(図5参照)に固定される天井ボード5と、天井ボード5の上面に載置される複数の動吸振装置1とを備えている。
【0029】
野縁2は、細長い構造材であり、床梁4の配列方向と直交する配列方向D1に互いに間隔を空けて平行に配列されている。野縁2は、例えば、中空部が設けられた四角柱状の細長い金属製の筒状体などによって構成される。
【0030】
野縁受3は、細長い構造材であり、複数の野縁2のそれぞれの上面に配置されている。野縁受3は、各野縁2に直交し、かつ野縁2に対して格子状に組み付けられている。野縁受3は、例えば、一方に開口したコの字状の細長い金属製の柱状体によって構成される。
【0031】
床梁4は、上層階の床を支えるためのものであり、一方向に延びるスチールなどからなる構造材(例えば、H鋼)である。床梁4は、図1に示すように、野縁2に直交するように互いに間隔を空けて平行に配列されている。
【0032】
複数の動吸振装置1は、野縁2の延びる方向D2に互いに間隔をあけて配置されている。以下、動吸振装置1の具体的構成について説明する。
【0033】
図3〜4に示されるように、動吸振装置1は、質量体6と、質量体6の下面6aに設けられた弾性変形可能な弾性体7と、質量体6を2本の野縁2に仮保持する仮保持手段(本実施形態では、突起部9)と、弾性体7と天井ボード5との間に介在する低摩擦手段(本実施形態では、低摩擦シート8)とを備える。
【0034】
質量体6は、ある程度の重量を有する金属などからなり、例えば、金属や石膏などからなる板状体などが用いられる。本実施形態の質量体6は、2本の野縁2の間に配置された本体部10と、本体部10から配列方向Dの両側に突出する後述の突起部9とを有している。質量体6の本体部10は、野縁の延びる方向D2および配列方向D1に沿って延びる4辺をもつ矩形形状の下面6aと、2本の野縁2の間において野縁2の側面2cに対向する対向面6bとを有している。矩形形状の下面6aは、2本の野縁2の間の幅よりも若干小さい幅を有する。
【0035】
図3に示されるように、対向面6bと野縁2の側面2cとの距離t1は、弾性体7と野縁2の側面2cとの距離t2よりも小さくなるように設定されている。
【0036】
弾性体7は、質量体6や天井ボード5よりも弾性変形可能な性質を有する材料からなり、例えば、ウレタン、発泡ゴム、またはグラスウールなどによって製造される。
【0037】
本実施形態では、図2および図4に示されるように、弾性体7は、野縁2の延びる方向D2および/または配列方向D1に間隔をあけて質量体6の下面6aに複数接続されている。さらに具体的には、図4に示される本実施形態の弾性体7は、質量体6の下面6aの四隅であって野縁2との間に隙間を許容する位置に分散して配置されている。
【0038】
仮保持手段は、天井ボード5が2本の野縁2に固定される前の状態において、弾性体7が野縁2の下方に突出するように質量体6を2本の野縁2に仮保持する機能を有するものであればよい。本実施形態では仮保持手段として、質量体6の本体部10における上端において配列方向Dの両側に突出する突起部9が用いられている。
【0039】
突起部9は、質量体6の本体部10における上端において配列方向D1の両側に突出しているので、図3に示されるように、天井ボード5が2本の野縁2に固定される前の状態では、野縁2の上面2aに当接する。これにより、2本の野縁2の間で弾性体7が野縁2の下方に突出するように質量体6を2本の野縁2に仮保持することが可能である。一方、図5に示されるように、天井ボード5が2本の野縁2に取り付けられることにより、弾性体7および質量体6が天井ボード5に載置されるとともに上方に持ち上げられ、これにより、突起部9による質量体6の仮保持が解除され、野縁2と質量体6とが非接触となる。
図3に示される突起部9は、質量体6と一体形成されているが、質量体6と別部材であってもよい。また、突起部9以外にも、質量体6を野縁2に仮保持可能なものであれば、本発明の仮保持手段として用いられる。
【0040】
低摩擦手段は、弾性体7と天井ボード5との間に介在し、天井ボード5と弾性体7との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗を有するものであればよく、低摩擦手段の設置面は天井ボード5または弾性体7のいずれでもよい。本実施形態では、低摩擦手段として、低摩擦シート8が用いられている。
【0041】
低摩擦シート8は、フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))シートなどからなり、複数の弾性体7のそれぞれの下面7aに接着などによって固定され、それによって、天井ボード5と弾性体7との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗を、低摩擦シート8を固定した弾性体7と天井ボード5との間に与える。
【0042】
上記のように構成された本実施形態の動吸振装置1は、複数の弾性体7のそれぞれと天井ボード5との間に介在する低摩擦シート8を備えている。これにより、図5に示されるように、動吸振装置1を野縁2に仮保持した後に天井ボード5を下方から取り付ける際に、天井ボード5を水平方向(例えば、野縁2の配列方向D1またはそれに直交する野縁2の延びる方向D2)にわずかにずらして微修正しても、弾性体7と天井ボード5との間に介在する低摩擦シート8が弾性体7と天井ボード5との間の摩擦抵抗を低減しているので、弾性体7が滑って天井ボード5に追随しにくくなり、弾性体7の変形を防止することが可能である。さらに、弾性体7がその周囲にある野縁2に接触することも防止することが可能である。
【0043】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の動吸振装置1は、所定の配列方向D1に互いに間隔を空けて配列された2本の野縁2と、両野縁2の下面2bに固定される天井ボード5と、を備えた天井20に設置される。動吸振装置1は、質量体6と、質量体6の下面6aに設けられた弾性変形可能な弾性体7と、天井ボード5が2本の野縁2に固定される前の状態において2本の野縁2の間で弾性体7が野縁2の下方に突出するとともに天井ボード5が2本の野縁2に取り付けられることにより弾性体7が天井ボード5に載置されるように、質量体6を2本の野縁2に仮保持する仮保持手段である突起部9と、弾性体7と天井ボード5との間に介在し、天井ボード5と弾性体7との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗となる低摩擦手段である低摩擦シート8とを備える。
【0044】
この構成によれば、低摩擦シート8が弾性体7と天井ボード5との間に介在しているので、図5に示されるように、天井ボード5を2本の野縁2の下面2bに固定する施工作業において、弾性体7が天井ボード5の上面に載置した状態で当該天井ボード5の水平位置を微調整する際に天井ボード5を水平方向に移動させても、弾性体7が滑って天井ボード5に追随しにくくなる。それによって、弾性体7の変形を防止し、動吸振装置1の振動低減性能の低下を防ぐことが可能である。
【0045】
ここで、比較例として、図6に示されるように、低摩擦手段(低摩擦シート8)を備えていない動吸振装置の場合を考える。この比較例の動吸振装置では、天井ボード5の施工作業において、弾性体7が天井ボード5の上面に直接当接した状態で当該天井ボード5の水平位置を微調整するので、天井ボード5を水平方向に移動させれば、弾性体7と天井ボード5との間で発生する大きな摩擦抵抗によって、弾性体7が天井ボード5に追随して水平方向へ移動し、それによって、弾性体7が変形するという不具合が生じる。
【0046】
この図6の比較例と見比べれば、図5に示される本実施形態では、弾性体7と天井ボード5との間に介在する低摩擦シート8が、弾性体7と天井ボード5との間の摩擦抵抗を低減し、それにより、弾性体7の変形防止ならびに動吸振装置1の振動低減性能の低下防止に寄与していることが理解される。
【0047】
(2)
本実施形態の動吸振装置1では、図4に示されるように、弾性体7は、野縁2の延びる方向D2および/または配列方向D1に間隔をあけて質量体6の下面6aに複数接続されている。複数の弾性体7のそれぞれと天井ボード5との間には、低摩擦シート8が介在している。
【0048】
この構成によれば、複数の弾性体7が野縁2の延びる方向D2および/または野縁2の配列方向D1に間隔をあけて配置されているので、大きな重量の質量体6を複数の弾性体7によってバランスよく支持することが可能であり、しかも、弾性体7同士の接触を避けることが可能である。さらに、複数の弾性体7のそれぞれと天井ボード5との間には、低摩擦シート8が介在しているので、天井ボード5の施工時において複数の弾性体7のそれぞれの変形を防止することが可能である。
【0049】
(3)
本実施形態の動吸振装置1では、図4に示されるように、質量体6の下面6aは、野縁の延びる方向D2および配列方向D1に沿って延びる4辺をもつ矩形形状を有している。また、弾性体7は、質量体6の下面6aの四隅であって野縁2との間に隙間を許容する位置に分散して配置されている。
【0050】
この構成によれば、弾性体7が質量体6の矩形形状の下面6aの四隅であって野縁2との間に隙間を許容する位置、すなわち野縁2の近傍の位置に分散して配置されているので、大きな重量の質量体6を複数の弾性体7によってバランスよく支持することが可能である。また、弾性体7は、野縁2の近傍の位置に配置されていても、上記のように低摩擦シート8によって弾性体7の変形が防止されているので、天井ボード5の施工時において弾性体7が変形して野縁2に接触することを回避し、それによって動吸振装置1の振動低減性能の大幅な低下を防ぐことが可能である。
【0051】
(4)
本実施形態の動吸振装置1では、図3に示されるように、質量体6は、2本の野縁2の間において野縁2の側面2cに対向する対向面6bを有している。対向面6bと野縁2の側面2cとの距離t1は、弾性体7と野縁2の側面2cとの距離t2よりも小さくなるように設定されている。
【0052】
この構成によれば、質量体6は、2本の野縁2の間において野縁2の側面2cに対向する対向面6bを有しており、対向面6bと野縁2の側面2cとの距離は、弾性体7と野縁2の側面2cとの距離よりも小さくなるように設定されているので、天井ボード5の施工時において弾性体7および質量体6が野縁2の配列方向D1に水平移動しても、質量体6の対向面6bが弾性体7よりも先に野縁2に接触するので、弾性体7が野縁2に接触することをより確実に回避し、それによって動吸振装置1の振動低減性能の大幅な低下を防ぐことが可能である。
【0053】
(5)
本実施形態の天井20は、所定の配列方向D1に互いに間隔を空けて配列された2本の野縁2と、野縁2の下面2bに固定される天井ボード5と、天井ボード5の上面に載置される本実施形態の動吸振装置1とを備えている。
【0054】
本実施形態の天井20では、天井ボード5を2本の野縁2の下面2bに固定する施工作業において、動吸振装置1を天井ボード5の上面に載置するだけでよく、動吸振装置1を天井ボード5にブラケットなどの固定部材を用いて取り付ける作業が必要ない。したがって、天井ボード5の施工作業を容易に行うことが可能である。また、低摩擦シート8が弾性体7と天井ボード5との間に介在しているので、天井ボード5の施工の際に、弾性体7が天井ボード5の上面に載置した状態で当該天井ボード5の水平位置を微調整する際に天井ボード5を水平方向に移動させても、弾性体7が滑って天井ボード5に追随しにくくなる。それによって、弾性体7の変形を防止し、動吸振装置1の振動低減性能の低下を防ぐことが可能である。
【0055】
(変形例)
(A)
上記実施形態では、弾性体7と天井ボード5との間に介在し、天井ボード5と弾性体7との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗となる本発明の低摩擦手段の一例として、弾性体7の下面7aに接着された低摩擦シート8が例に挙げて説明されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
したがって、低摩擦シート8などの低摩擦手段は、弾性体7の下面7aに設けられる形態だけでなく、天井ボード5の上面に設けられていてもよい。また、低摩擦部材は、弾性体7及び天井ボード5に固定されることなく、弾性体7と天井ボード5との間に設けられていてもよい。
【0057】
さらに、本発明の低摩擦手段は、低摩擦シートに限定されるものではなく、天井ボード5と弾性体7との間の摩擦抵抗よりも小さな摩擦抵抗となる手段であればよく、低摩擦手段の設置場所は天井ボード5および弾性体7のいずれでもよい。したがって、本発明の低摩擦手段の他の例として、天井ボード5と弾性体7との互いに対向する面のうちの少なくとも一方の面において滑りやすい被膜(コーティング)を形成したり、または天井ボード5の上面の一部を滑りやすくする平滑化処理したりしたものなどであってもよい。
【0058】
以上のように、本発明の低摩擦手段は、低摩擦手段は、弾性体7と天井ボード5との間の摩擦抵抗を低減することが可能であればよく、高い製造コストをかけずに動吸振装置の性能低下を防ぐことが可能である。
【0059】
なお、本発明の動吸振装置は、天井ボード5の上に載置される形態であればよく、動吸振装置の形状についてはとくに限定されない。
【0060】
(B)
上記実施形態では、図4に示されるように、4個の弾性体7が質量体6の下面6aに分散配置されている例が示されているが、弾性体7の配置ならびに形状はこれに限定されるものではない。
【0061】
図7に示されるように、本発明の動吸振装置の変形例として、弾性体7は、野縁2の延びる方向D2に延びる形状をしており、2本の野縁2の間の中央線CLを挟み、かつ野縁2までの距離d1が中央線CLまでの距離d2よりも近くなるように、配列方向D1に間隔をあけて質量体6の下面6aにおける野縁2との間に隙間を許容する位置に2本配置されていてもよい。
【0062】
この構成によれば、弾性体7が野縁2の延びる方向D2に延びる長細い形状をしており、2本の野縁2の間の中央線CLを挟み、かつ野縁2までの距離d1が中央線CLまでの距離d2よりも近くなるように、野縁2の配列方向D1に間隔をあけて質量体6の下面6aにおける野縁2との間に隙間を許容する位置、すなわち、野縁2の近傍の位置に2本配置されているので、大きな重量の質量体6を2本の長細い弾性体7によってよりバランスよく支持することが可能である。また、2個の長細い弾性体7は、野縁2の近傍の位置に配置されていても、各弾性体7と天井ボード5との間には低摩擦シート8が介在しており、上記のように低摩擦シート8によって弾性体7の変形が防止されているので、天井ボード5の施工時において弾性体7が変形して野縁2に接触することを回避し、それによって動吸振装置1の振動低減性能の大幅な低下を防ぐことが可能である。
【0063】
(C)
図8に示されるように、本発明の動吸振装置の他の変形例として、弾性体7は、野縁2との間に隙間を許容するように野縁2の延びる方向D2および配列方向D1に広がって質量体6の下面6aの所定の範囲を覆う単一の面を有する形状を有していてもよい。
【0064】
この構成によれば、弾性体7が野縁2との間に隙間を許容するように野縁2の延びる方向D2および配列方向D1に広がって質量体6の下面6aの所定の範囲を覆う単一の面を有する形状を有しているので、大きな重量の質量体6を大面積の単一の面を有する1個の弾性体7によってよりバランスよく支持することが可能である。また、大面積の単一の面を有する1個の弾性体7は、野縁2との間に隙間を許容するように野縁2の近傍まで広がっていても、上記のように弾性体7と天井ボード5との間には低摩擦シート8が介在しており、低摩擦シート8によって弾性体7の変形が防止されているので、天井ボード5の施工時において弾性体7が変形して野縁2に接触することを回避し、それによって動吸振装置1の振動低減性能の大幅な低下を防ぐことが可能である。
【0065】
(D)
図9に示されるように、本発明の天井の変形例として、天井20は、弾性体7が天井ボード5に対して相対的に水平移動する範囲を規制する規制部11、12をさらに備えていてもよい。
【0066】
具体的には、規制部11は、天井ボード5の上面において、弾性体7の載置位置の周辺部に設けられている。規制部11は、天井ボード5の上面に接着などによって固定された突起または低摩擦シート8よりも高い摩擦抵抗を生じるゴムなどの部材などによって構成される。
【0067】
また、規制部12は、野縁2における質量体6に対向する側面に設けられている。規制部12は、野縁2の側面に設けられた突起などによって構成され、質量体6と当接することによって、弾性体7が天井ボード5に対して相対的に水平移動する範囲を規制することが可能である。
【0068】
上記の図9の構成によれば、規制部11、12によって、弾性体7が天井ボード5に対して相対的に水平移動する範囲を規制することが可能であり、天井ボード5の施工時における弾性体7の変形をより確実に防止することが可能である。
【0069】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 動吸振装置
2 野縁
2b 下面
2c 側面
5 天井ボード
6 質量体
6a 対向面
7 弾性体
8 低摩擦シート(低摩擦手段)
9 突起部(仮保持手段)
10 本体部
11、12 規制部
20 天井
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9