【文献】
大坂勤、和泉徹,BNPガイドによるβ遮断薬療法 ,医学のあゆみ,2006年09月30日,Vol.218,No.14
【文献】
和泉徹,重症心不全の集学的治療,日本内科学会雑誌,日本,2010年10月10日,Vol.99,No.10,Page.170-182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者が、ACC/AHA分類にしたがって、病期BまたはCと分類される心不全を有し、そして/または患者が、NYHA分類のクラスIIまたはIII記載の心不全を有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
心不全療法の強化にふさわしい患者を同定するため、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験するリスクを予測するため、あるいはBNP型ペプチドガイド心不全療法を最適化するための、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者の試料における、i)sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、IL−6(インターロイキン6)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの使用、ならびに/あるいはii)sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、IL−6(インターロイキン6)、オステオポンチン、CRP(C反応性タンパク質)、シスタチンC、プレアルブミン、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、およびsST2(可溶性ST2)からなる群より選択されるマーカー群より選択されるマーカーに関する少なくとも1つの検出剤の使用。
心不全療法の強化にふさわしい患者を同定するため、あるいは患者が心臓代償不全、入院または死を経験するリスクを予測するための、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者の試料における、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、IL−6(インターロイキン6)、オステオポンチン、CRP(C反応性タンパク質)、シスタチンC、プレアルブミン、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、およびsST2(可溶性ST2)からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーと組み合わせたBNP型ペプチドの使用、ならびに/あるいはsFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、IL−6(インターロイキン6)、オステオポンチン、CRP(C反応性タンパク質)、シスタチンC、プレアルブミン、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、およびsST2(可溶性ST2)からなる群より選択されるマーカー群より選択されるマーカーに関する少なくとも1つの検出剤と組み合わせたBNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤の使用。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「患者」は、本明細書において、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物には、限定されるわけではないが、家畜動物(例えばウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えばヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル(monkey))、ウサギ、および齧歯類(例えばマウスおよびラット)が含まれる。特定の態様において、患者はヒト患者である。用語「被験体」および「患者」は、本明細書において、交換可能に用いられる。
【0018】
句「患者を選択する」または「患者を同定する」は、本明細書において、心不全療法の強化から利益を受ける可能性がより高いか、または利益を受ける可能性がより低いとして、患者を同定するかまたは選択するための、患者試料中、本発明の関連において言及されるような少なくとも1つのマーカーのレベルに関連して生成される情報またはデータの使用を指す。好ましくは、前記強化にふさわしい被験体は、前記強化を必要とする一方、前記強化にふさわしくない被験体は、前記強化を必要としない。
【0019】
心不全療法の強化にふさわしい被験体は、該強化から利益を得るであろうが、前記強化にふさわしくない被験体は、前記強化から利益を受けない可能性があり、例えば副作用を経験するか、または該強化によって損害を与えられる可能性もある。特に、強化が、特に試料が得られた後、18ヶ月または3年のウィンドウ期間内に、前記被験体の死亡リスクを減少させ、そして/または前記被験体の入院のリスク、および/または心臓代償不全のリスクを減少させる場合、被験体は、該強化から利益を得る。好ましくは、前述のリスク(単数または複数)は、5%、より好ましくは10%、さらにより好ましくは15%、そして最も好ましくは20%減少する。好ましくは、本明細書に言及される入院および死亡率は、心不全によるものとする。
【0020】
対照的に、心不全療法の強化にふさわしくない被験体は、強化により利益を得ないであろう(特に、有意に利益を得ないであろう)。特に、強化が、特に試料が得られた後、18ヶ月または3年のウィンドウ期間内に、前記被験体の死亡リスクを減少させず(特に、有意に減少させず)、そして/または前記被験体の入院のリスク、および/または心臓代償不全のリスクを減少させない(特に、有意に減少させない)場合、被験体は、該強化から利益を得ない。この場合、療法が強化されなければ、不要なヘルスケアコストが回避されうる。さらに、該強化から生じる可能性がある副作用が回避されうる。
【0021】
したがって、心不全療法の強化にふさわしい被験体を同定することによって、前記被験体が心不全療法の強化から利益を受けるかどうかを評価することも可能である。したがって、本発明はまた、本明細書の別の箇所に示す工程に基づき、心不全療法の強化から利益を得るであろう被験体を同定する方法にも関する。
【0022】
使用するかまたは生成する情報またはデータは、書面、口頭または電子など任意の型であることも可能である。いくつかの態様において、生成される情報またはデータの使用には、通信、提示、報告、保存、送達、移動、供給、伝達、分配、またはその組み合わせが含まれる。いくつかの態様において、通信、提示、報告、保存、送達、移動、供給、伝達、分配、またはその組み合わせは、計算デバイス、アナライザー装置またはその組み合わせによって実行される。いくつかのさらなる態様において、通信、提示、報告、保存、送達、移動、供給、伝達、分配、またはその組み合わせは、実験または医学専門職によって実行される。いくつかの態様において、情報またはデータには、参照レベル(単数または複数)に対する、少なくとも1つのマーカーのレベル(単数または複数)の比較が含まれる。
【0023】
本明細書の以下により詳細に記載されるように、心不全治療の強化にふさわしい被験体はまた、短い間隔で監視されるものとし、一方、心不全治療の強化にふさわしくない(すなわち心不全治療の強化を必要としない)被験体は、長い間隔で監視されるものとする。したがって、心不全治療が強化されるべきであるかどうかの決定に加えて、被験体を短い間隔または長い間隔で監視すべきかを評価することも可能である。
【0024】
当業者に理解されるであろうように、本発明の方法によって行われる評価は、診断しようとする被験体の100%に関して正しいことは、通常、意図されない。しかし、該用語は、評価が、被験体に統計的に有意な部分(例えばコホート研究におけるコホート)に関して正しいことを必要とする。部分が統計的に有意であるかどうかは、多様な周知の統計評価ツール、例えば信頼区間の決定、p値決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定等を用いて、当業者によってさらなる面倒を伴わずに決定可能である。詳細は、DowdyおよびWearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見られる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。
【0025】
本発明の関連において、被験体は、心不全(HF)、特に慢性心不全を患うことが想定される。さらに、被験体は、安定化された急性心不全を患うことも可能である。
用語「心不全」は、本明細書において、拡張不全、または特に当業者に知られるような心不全の明白な徴候を伴う、心臓の収縮不全に関する。好ましくは、本明細書に言及する心不全は、慢性心不全(好ましくは収縮不全によって引き起こされるもの)である。本発明記載の心不全には、明白なおよび/または進行した心不全が含まれる。明白な心不全において、患者は、当業者に知られるような心不全の症状を示す。
【0026】
HFは、重症度の多様な度合いに分類可能である。
NYHA(ニューヨーク心臓協会)分類によれば、心不全患者は、NYHAクラスI、II、IIIおよびIVに属すると分類される。心不全を有する患者は、心膜、心筋、冠循環または心臓弁に対して構造的および機能的変化をすでに経験してきている。患者は、健康を完全に回復可能ではなく、そして療法的治療の必要がある。NYHAクラスIの患者は、心臓血管疾患の明らかな症状を持たないが、機能的障害の客観的な証拠をすでに有する。NYHAクラスIIの患者は、身体的活動のわずかな限界を有する。NYHAクラスIIIの患者は、身体的活動の顕著な限界を示す。NYHAクラスIVの患者は、不快を伴わずには、いかなる身体的活動も実行不能である。患者は、休止時に心不全の症状を示す。
【0027】
この機能的分類は、米国心臓病学会および米国心臓協会による、より最近の分類によって補足される(J. Am. Coll. Cardiol. 2001;38;2101−2113, 2005年改訂を参照されたい。J. Am. Coll. Cardiol. 2005;46;e1−e82を参照されたい)。4つの病期、A、B、CおよびDが定義される。病期AおよびBはHFではないが、「真の」HFを発展させる前の患者の早期同定を補助すると見なされる。病期AおよびBの患者は、HFを発展させるリスク要因を持つ患者と定義するのが最適である。例えば、左室(LV)機能障害、肥大、または幾何学的心室変形をいまだ示さない、冠動脈疾患、高血圧、または糖尿病を有する患者は、病期Aと見なされるであろうし、一方、無症候性であるが、LV肥大および/またはLV機能障害を示す患者は、病期Bと指定されるであろう。次いで、病期Cは、根底にある構造的心臓疾患に関連したHFの現在のまたは過去の症状を伴う患者(HF患者の大部分)を示し、そして病期Dは、真性の難治性HFの患者を指定する。
【0028】
本明細書において、用語「心不全」は、特に、上述のACC/AHA分類の病期BおよびCを指す。これらの病期において、被験体は、心不全の典型的な症状を示す。したがって、患者は、好ましくは、ACC/AHA分類にしたがって、病期BまたはCと分類される心不全を有する。やはり好ましくは、患者は、NYHA分類のクラスIIまたはIIIにしたがう心不全を有する。
【0029】
好ましくは、心不全は、収縮機能障害による。したがって、特に、患者は収縮心不全を患うと想定される。好ましくは、患者は、50%未満、より好ましくは45%未満、そして最も好ましくは40%未満の左心室駆出率(LVEF)を有する。
【0030】
本発明の方法にしたがって試験しようとする患者は、BNP型ペプチドガイド療法、すなわちBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けるものとする。用語「BNP型ペプチドガイド療法」および「BNP型ペプチドガイド心不全療法」は、当該技術分野に周知である。したがって、試験しようとする患者は、BNP型ペプチドによってガイドされる心不全療法(より正確には、試料を得た時点で)を受けるものとする。したがって、前記患者に関し、心不全療法に関して、少なくとも1つの決定が、過去に(そしてしたがって試験しようとする試料を得る前に)、前記患者におけるBNP型ペプチドのレベルに基づいて、特に、前記患者におけるBNP型ペプチドの血液、血清または血漿レベルに基づいて、行われていてもよいことが想定される。したがって、患者のBNP型ペプチドのレベルは心不全治療に対する過去の決定に関して考慮されてきている。さらに、心不全療法に関する本発明の決定は、BNP型ペプチドのレベルの考慮を伴う最初の決定であると想定される。したがって、BNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者は、BNP型ペプチドガイド心不全療法が開始されている(特に試験しようとする試料を得た直後)患者であることも可能である。にも関わらず、前記患者は、以前、BNP型ペプチドによってはガイドされなかった、心不全療法を受けていることも可能である。
【0031】
好ましいBNP型ペプチドは、本明細書において、別の箇所に開示される。BNP型ペプチドガイド療法は、好ましくは、BNP(脳ナトリウム利尿ペプチド)ガイド療法、または特に、NT−プロBNP(N末端プロ脳ナトリウム利尿ペプチド)ガイド療法であってもよい(これらのマーカーの説明に関しては、別の箇所を参照されたい)。
【0032】
BNP型ペプチドガイド療法において、心不全治療を管理するために、BNP型ペプチドのレベルを用いる。レベルに基づいて、心不全治療に関する決定を行う。原則として、BNP型ペプチドのレベルが増加した患者は、このマーカーのレベルが減少した患者よりも、より強化された療法を受ける。BNP型ペプチドガイド療法は、当該技術分野に周知であり、そして例えば、Sanders−van Wijkら Eur J Heart
Fail (2013) 15 (8): 910−918によって記載される。さらに、BNP型ペプチドガイド療法は、Januzziによって概説される。Archives of Cardiovascular disease (2012), 105, 40〜50を参照されたい。どちらの参考文献も、その全開示内容に関して、本明細書に援用される。
【0033】
好ましい態様において、患者は、前記BNP型ペプチドが心不全療法の強化を示す参照レベルよりも低い、BNP型ペプチドのレベル(特に、血液、血清または血漿レベル)を示す。したがって、患者は、単独で(すなわち前述の方法の工程(a)に示すような少なくとも1つのさらなるマーカーと組み合わせずに)採用された場合、心不全療法の強化にふさわしくない患者を示すであろう、BNP型ペプチドのレベルを有する患者であるものとする。本発明の関連において適用されるべき心不全療法の強化の指標である前記BNP型ペプチドに関して好ましい参照レベルは、実施例に記載するものである。好ましい参照レベルは、BNPに関して、約80〜400pg/ml、または特に、約80〜200pg/ml、あるいは、NT−プロBNPに関して、約450〜2200pg/ml、または特に、約800pg/ml〜1200pg/mlである。さらに好ましい参照レベルは、BNPに関して、約100pg/mlまたは400pg/ml、そしてNT−プロBNPに関して、約1000pg/ml、または1200pg/mlである。したがって、本発明にしたがった患者は、1000pg/mlまたは1200pg/ml未満のNT−プロBNPレベル、特にNT−プロBNPの血液、血清または血漿レベルを示すことも可能である。
【0034】
さらに、心不全療法の強化の指標である前記BNP型ペプチドに関する参照レベル未満であるBNP型のレベルを示す患者は、約80〜約400pg/mlの範囲内、特に約80〜約200pg/mlの範囲内のBNPのレベル(特に血液、血清または血漿レベル)を有する。また、心不全療法の強化の指標である前記BNP型ペプチドに関する参照レベル未満であるBNP型のレベルを示す患者は、約450〜2200pg/mlの範囲内、特に約800〜1200pg/mlの範囲内のNT−プロBNPのレベル(特に血液、血清または血漿レベル)を有する。
【0035】
好ましくは、用語「約」は、本明細書において、特定の量に対して、+および−20%の範囲、より好ましくは+および−10%の範囲、さらにより好ましくは+および−5%の範囲、そして最も好ましくは+および−2%の範囲を含み、例えば「約100」の量の表示は80〜120の範囲内の量を含むと意味される。また、用語「約」は、正確な量を指す。好ましくは、レベルは、実施例に記載するように測定される。
【0036】
用語「心不全療法」(本明細書において、また、「心不全治療」とも称される)は、本明細書において、好ましくは、心不全を治療することを可能にする任意の治療を指す。好ましくは、該用語は、ライフスタイル変化、食事療法措置、身体に対する介入、ならびに適切な薬剤の投与、心不全を患う患者の治療のためのデバイスおよび/または臓器移植の
使用を含む。
【0037】
ライフスタイル変化には、禁煙、アルコール消費の減少、身体的活動の増加、体重減少、ナトリウム(塩)制限、体重管理および健康な食生活(毎日の魚油など)が含まれる。
適用される好ましいデバイスは、ペースメーカーおよび再同期デバイス、除細動器、動脈内バルーンポンプ、および左心室補助デバイスである。
【0038】
好ましい態様において、心不全療法は、薬剤心不全療法である。したがって、心不全療法は、好ましくは、1またはそれより多い薬剤の投与を含む。用語「投与」は、本明細書において、最も広い意味で用いられ、そしてとりわけ、経口、腸内、局所投与および「非経口投与」を含む。「非経口投与」および「非経口的に投与する」は、本明細書において、通常、注射による、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、そしてこれには、限定なしに、静脈内、筋内、動脈内、クモ膜下腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、胸骨内(intrasternal)注射および注入が含まれる。1つの態様において、薬剤は経口投与される。
【0039】
心不全治療に適した薬剤は、当該技術分野に周知である。例えば、Heart Disease, 2008, 第8版, Braunwald監修, Elsevier Sounders、第24章、または急性および慢性心不全の診断および治療のためのESC指針(European Heart Journal (2008) 29, 2388−2442)を参照されたい。好ましくは、心不全治療には、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)、アンギオテンシンII受容体遮断剤(しばしばまた、アンギオテンシンII受容体アンタゴニストとも称される)、ベータ・アドレナリン遮断剤(本明細書において、ベータ遮断剤とも称される)、利尿剤、アルドステロン・アンタゴニスト、アドレナリン作動剤、陽性変力剤、カルシウム・アンタゴニスト、ヒドララジン、硝酸塩、およびアスピリンからなる群より選択される少なくとも1つの薬剤の投与が含まれる。薬剤が、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断剤、ベータ遮断剤および/またはアルドステロン遮断剤であることが特に好ましい。
【0040】
好ましいACE阻害剤には、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、およびトランドラプリルが含まれる。特に好ましい阻害剤は、エナラプリルである。
【0041】
好ましいベータ遮断剤には、セブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ブプラノロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、メチプラノロール、メトプロロール、ナドロール、ネビボロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール、ソタロール、タニロロール、およびチモロールが含まれる。特に好ましいベータ遮断剤は、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、またはメトプロールである。
【0042】
好ましいアンギオテンシンII受容体アンタゴニストは、ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、およびエプロサルタンである。特に好ましいアンタゴニストはロサルタンまたはバルサルタンである。
【0043】
好ましい利尿剤は、ループ利尿剤、チアジドおよびチアジド様利尿剤、K保持性利尿剤、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト、およびバソプレッシン・アンタゴニストである。
【0044】
好ましいアルドステロン・アンタゴニストは、エプレロン、スピロノラクトン、カンレノン、メクスレノン、プロレノン;ならびにスタチン、特にアトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチンである。特に好ましいアンタゴニストはスピロノラクトンである。
【0045】
好ましい陽性変力剤はジゴキシンおよびジギトキシンである。
好ましいカルシウム・アンタゴニストは、ジヒドロピリジン、ベラパミル、およびジルチアゼムである。
【0046】
好ましいアドレナリン作動剤は、ドブタミン、ドーパミン、エピネフリン、イソプロテネロール、ノルエピネフリン、およびフェニルエフリンである。
強化しようとするまたはしない心不全療法は、本明細書において、上に示すような任意の治療であることも可能である。しかし、好ましい態様において、心不全療法は、上に示すような少なくとも1つの薬剤の投与を含む。さらにより好ましい態様において、心不全療法は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断剤、ベータ遮断剤、利尿剤、およびアルドステロン・アンタゴニストからなる群より選択される、少なくとも1つの薬剤の投与を含む。最も好ましくは、強化しようとする心不全治療は、ベータ遮断剤およびACE阻害剤の組み合わせ投与を含む。
【0047】
本発明の方法にしたがって、治療しようとする患者の心不全治療を強化すべきかどうかが評価されるものとする。好ましくは、心不全治療の強化は、以下の少なくとも1つを含む:
・先に投与した単数または複数の薬剤の投薬量の増加、
・さらなるまたは別の薬剤(単数または複数)の投与、特に先に投与した薬剤(単数または複数)のものとは異なる様式を有するさらなる薬剤(単数または複数)の投与、
・デバイス療法、特にペースメーカーデバイスの使用、心臓再同期療法(CRT)、移植可能除細動デバイス(ICD)または左心室補助デバイス(LVAD)、ライフスタイル変化、ならびに
・その組み合わせ。
【0048】
好ましくは、強化は、先に投与した薬剤(単数または複数)の投薬量の増加、特に利尿剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断剤、アルドステロン・アンタゴニスト、およびベータ遮断剤からなる群より選択される薬剤の投薬量の増加を含む。投薬量をどのように増加させるかは、当該技術分野に周知であり、そして例えば、指針から得ることも可能である。好ましくは、これらの薬剤の投薬量は、推奨される最大療法用量、または許容される最大用量のどちらか先に到達する用量まで、増加させることも可能である。やはり好ましくは、投薬量を少なくとも30%または少なくとも50%増加させることも可能である。
【0049】
やはり好ましくは、強化は、さらなる薬剤(単数または複数)の投与、特に先に投与した薬剤と異なる作用機構を有するさらなる薬剤(単数または複数)の投与、またはさらなるデバイスの適用(すなわち本発明の方法を実行する前に投与していなかった/用いていなかった薬剤/デバイス)を含む。好ましいさらなる薬剤には、ヒドララジン、硝酸塩、変力剤、およびアドレナリン作動剤が含まれる。好ましいデバイスには、ペースメーカーデバイス、心臓再同期療法(CRT)、および移植可能除細動デバイス(ICD)が含まれる。
【0050】
また、心不全治療の強化は、短い間隔での患者の監視をさらに含むことも可能である。したがって、本発明の方法を実行することによって、特に心不全療法に関して、より緊密な監視(そしてしたがってより緊密な観察)が必要な患者を同定することも可能である。
「より緊密な監視」では、好ましくは、本発明の方法の工程a)に言及する試料の後の短い間隔後、患者から得られる少なくとも1つのさらなる試料において、本発明の方法と関連する、本明細書に言及するようなマーカーのレベルを測定することを意味する。好ましい短い間隔を、本明細書において以下に言及する。
【0051】
心不全治療の強化を必要としない患者は、好ましくは、治療措置を変化させることなく、心不全治療を続けることも可能である。したがって、投与される薬剤(単数または複数)の投薬量を適応させ、そして/または薬剤を変更する必要はない。
【0052】
用語「試料」は、体液試料、分離された細胞の試料、あるいは組織または臓器由来の試料を指す。体液試料は周知の技術によって得られることも可能であり、そしてこれには、血液、血漿、血清、尿、リンパ液、痰、腹水、気管支洗浄液、または任意の他の体性分泌物あるいはこれらの派生物の試料が含まれる。組織または臓器試料は、例えば生検によって、任意の組織または臓器から得られうる。分離された細胞は、分離技術、例えば遠心分離または細胞ソーティングによって、体液または組織または臓器から得られうる。例えば、細胞、組織または臓器試料は、バイオマーカーを発現するかまたは産生する細胞、組織または臓器から得られうる。試料は、凍結、新鮮、固定(例えばホルマリン固定)、遠心分離、および/または包埋(例えばパラフィン包埋)等であってもよい。細胞試料は、もちろん、試料中のマーカーの量を評価する前に、多様な周知の収集後調製および保存技術(例えば核酸および/またはタンパク質抽出、固定、保存、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離等)に供されてもよい。同様に、生検もまた、収集後調製および保存技術、例えば固定に供されてもよい。
【0053】
1つの態様において、試料は、血液、血清、または特に血漿試料である。
試料は、好ましさが増加する順に、心不全療法、特にBNP型ペプチドガイド療法開始後、少なくとも1ヶ月、少なくとも6ヶ月、または少なくとも12ヶ月で、患者から得られうる。好ましくは、前記療法は、薬剤心不全療法である。
【0054】
本明細書において、バイオマーカーのレベルを、患者由来の同じ試料または異なる試料(すなわち2または3の異なる試料)において決定することも可能である。
本明細書において、用語、マーカーのレベルを「測定する」は、バイオマーカーの定量化、例えば、本明細書の別の箇所に記載する検出の適切な方法を使用して、試料中のバイオマーカーのレベルを決定することを指す。1つの態様において、それぞれのマーカーに特異的に結合する検出剤と試料を接触させ、それによって剤および前記マーカーの間の複合体を形成し、形成された複合体のレベルを検出し、そしてそれによって前記マーカーのレベルを測定することによって、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを測定する。バイオマーカーが尿酸である場合、前記バイオマーカーのレベルは、前記バイオマーカーの変換を可能にする、例えば尿酸の酸化を可能にする検出剤、特に酵素または化合物と試料を接触させることによって測定可能である。酵素は、尿酸の5−ヒドロキシイソ尿酸への酸化を触媒する、ウリカーゼ(EC 1.7.3.3)であってもよい。また、酵素はペルオキシダーゼであってもよい。化合物は、リンタングステン酸であってもよい。マーカーが尿素である場合、検出剤はウレアーゼであってもよい。マーカーがグルコースである場合、検出剤はヘキソキナーゼであってもよい。マーカーがクレアチニンである場合、検出剤はピクリン酸(クレアチニンと複合体を形成する)であってもよい。ピクリン酸およびクレアチニンの複合体のレベルを測定してもよい。
【0055】
用語「増殖分化因子−15」または「GDF−15」は、トランスフォーミング増殖因子(TGF)サイトカイン・スーパーファミリーのメンバーであるポリペプチドに関する。用語、ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質は、本明細書を通じて、交換可能に用いられる。GDF−15は、元来、マクロファージ阻害性サイトカイン1としてクローニングされ、そして後にまた、胎盤トランスフォーミング増殖因子−15、胎盤骨形態形成タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬剤活性化遺伝子1、および前立腺由来因子としても同定された(Bootcov 前引用箇所; Hromas, 1997 Biochim Biophys Acta 1354:40−44; Lawton 1997, Gene 203: 17−26; Yokoyama−Kobayashi 1997, J Biochem (Tokyo), 122:622−626; Paralkar 1998, J Biol Chem 273: 13760−13767)。他のTGF関連サイトカイン同様、GDF−15は、不活性前駆体タンパク質として合成され、ジスルフィド連結ホモ二量体化を経る。N末端プロペプチドのタンパク質分解的切断に際して、GDF−15は、〜28kDa二量体タンパク質として分泌される(Bauskin 2000, Embo J 19:2212−2220)。GDF−15のアミノ酸配列は、WO99/06445、WO00/70051、WO2005/113585、Bottner 1999, Gene 237: 105−111、Bootcov 前引用箇所、Tan 前引用箇所、Baek 2001, Mol Pharmacol 59: 901−908、Hromas 前引用箇所、Paralkar 前引用箇所、Morrish 1996, Placenta 17:431−441またはYokoyama−Kobayashi 前引用箇所に開示される。GDF−15は、本明細書において、また、前述の特定のGDF−15ポリペプチドの変異体も含む。こうした変異体は、少なくとも、特定のGDF−15ポリペプチドと同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を有する。特に、これらは、本明細書に言及される同じ特異的アッセイによって、例えば前記GDF−15ポリペプチドを特異的に認識するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を用いたELISAアッセイによって、検出可能である場合、同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を共有する。好ましいアッセイは、付随する実施例に記載される。さらに、本発明にしたがって言及されるような変異体は、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失および/または付加のために異なるアミノ酸配列を有するものとし、ここで変異体のアミノ酸配列はなお、好ましくは、特定のGDF−15ポリペプチドのアミノ酸配列と、好ましくはヒトGDF−15のアミノ酸配列と、より好ましくは特定のGDF−15、例えばヒトGDF−15の全長に渡って、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であると理解されるものとする。2つのアミノ酸配列間の同一性の度合いは、上述のように決定可能である。上に言及するような変異体は、アレル変異体、あるいは任意の他の種特異的相同体、パラログまたはオルソログであることも可能である。さらに、本明細書に言及するような変異体には、上述のような本質的な免疫学的および生物学的特性を有する限り、特定のGDF−15ポリペプチドまたは変異体の前述のタイプの断片が含まれる。こうした断片は、例えば、GDF−15ポリペプチドの分解産物であることも可能である。さらに含まれるのは、リン酸化またはミリスチル化などの翻訳後修飾のために異なる変異体である。
【0056】
インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)系は、細胞増殖および分化において、重要な役割を果たす。該タンパク質は、2つのリガンド、IGF−IおよびIGF−II、2つの受容体1型および2型IGF受容体、そして1995年現在で、6つのIGF結合タンパク質(IGFBP)、IGFBP−1〜−6(Jones, J.I.ら,
Endocr. Rev. 16(1995)3−34)を含む。近年、IGFBPファミリーは、IGFBPと有意な構造的類似性を有する、IGFBP関連タンパク質(IGFBP−rP)も含むように拡大されてきている(Hwa, V.ら, Endocr. Rev 20(1999)761−787)。したがって、IGFBPスーパーファミリーには、IGFに対して高いアフィニティを有する6つの慣用的なIGFBP、ならびにIGFBPの保存されたアミノ末端ドメインを共有するだけでなく、IGFおよびインスリンに対するある程度の度合いのアフィニティも示す、少なくとも10のIGFBP−rPが含まれる。IGFBP−rPは、多様な細胞機能、例えば細胞増殖、細胞接着および遊走、ならびに細胞外マトリックスの合成を制御する、システインリッチタンパク質群である。さらに、これらのタンパク質は、組織増殖および分化、再生、血管新生、創傷修復、炎症、線維症、および腫瘍発生のような生物学的プロセスに関与する可能性もある(Hwa, V.ら, Endocr. Rev 20(1999)761−787)。
【0057】
IGF結合タンパク質7(=IGFBP7)は、内皮細胞、血管平滑筋細胞、線維芽細胞、および上皮細胞によって分泌されることが知られる30kDaのモジュール糖タンパク質である(Ono, Y.ら, Biochem Biophys Res Comm
202(1994)1490−1496)。文献において、この分子はまた、FSTL2;IBP7;IGF結合タンパク質関連タンパク質I;IGFBP 7;IGFBP 7v;IGFBP rP1;IGFBP7;IGFBPRP1;インスリン様増殖因子結合タンパク質7;インスリン様増殖因子結合タンパク質7前駆体;MAC25;MAC25タンパク質;PGI2刺激因子;およびPSFまたはプロスタサイクリン刺激因子とも称されてきている。ノーザンブロット研究によって、心臓、脳、胎盤、肝臓、骨格筋、および膵臓を含む、ヒト組織におけるこの遺伝子の広い発現が明らかになった(Oh, Y.ら, J. Biol. Chem. 271(1996)30322−30325)。
【0058】
IGFBP7は、対応する腫瘍細胞に比較して、正常な軟髄膜および乳腺上皮細胞において示差的に発現される遺伝子として最初に同定され、そして髄膜腫関連cDNA(MAC25)と命名された(Burger, A.M.ら, Oncogene 16(1998)2459−2467)。発現されるタンパク質は、腫瘍由来接着因子(後に、アンギオモジュリンと改名された)(Sprenger, C.C.ら, Cancer Res 59(1999)2370−2375)として、そしてプロスタサイクリン刺激因子(Akaogi, K.ら, Proc Natl Acad Sci USA 93(1996)8384−8389)として、独立に精製された。さらに、該分子は、乳癌において下方制御される遺伝子、T1A12としても報告されてきている(StCroix, B.ら, Science 289(2000)1197−1202)。
【0059】
心臓疾患、腎臓疾患、炎症性疾患(Scios Inc.に対するUS 6,709,855)および血管移植疾患(US 2006/0,003,338)を含む多様な疾患を患う患者において、IGFBP7 mRNAの示差的発現が測定された。
【0060】
IGFBP7のホルモン結合特性に関して、多くの異なるアッセイが記載され、そして用いられてきている。競合的アフィニティ架橋アッセイを通じて、低アフィニティIGF結合が分析された。組換えヒトmac25タンパク質は、IGF−Iおよび−IIに特異的に結合する(Oh, Y.ら, J. Biol. Chem. 271 (1996) 20322−20325; Kim, H.S.ら, Proc. Natl. Acad. Sci USA 94 (1997) 12981−12986.)。IGFBP活性はまた、ウェスタン・リガンド・ブロッティングにおいて、タンパク質が放射標識IGFに結合する能力を測定することによっても検出可能である。
【0061】
好ましくは、用語「IGFBP7」は、ヒトIGFBP7を指す。該タンパク質の配列は、当該技術分野において周知であり、そして例えばGenBank(NP_001240764.1)を通じてアクセス可能である。IGFBP7は、本明細書において、好ましくは、特定のIGFBP7ポリペプチドの変異体もまた含む。用語「変異体」の説明に関しては、上記を参照されたい。
【0062】
循環IGFBP7の免疫学的測定が最近行われた。低レベルのこの分析物は、ランダム
なヒト血清において検出されており、そして血清レベルの増加は、インスリン耐性と関連することが示されてきている(Lopez−Bermejo, A.ら, J. Clinical Endocrinology and Metabolism 88(2003)3401−3408, Lopez−Bermejo, A.ら, Diabetes 55(2006)2333−2339)。
【0063】
マーカー、エンドスタチンは当該技術分野に周知である。エンドスタチンは、元来、XVIII型コラーゲンの20kDAタンパク質分解断片として、ネズミ血管内皮腫から単離された(O’Reilly, M.S.ら, Cell 88(1997)277−285)。コラーゲンは、超分子凝集物を形成する特徴的な三重らせんコンホメーションを持つ細胞外マトリックスタンパク質ファミリーを代表し、該分子は組織構造完全性を維持する際に主要な役割を果たす。過剰なコラーゲン沈着は、周囲組織の正常機能を破壊する線維症を導く。コラーゲンXVIIIは、主に基底膜における、中央三重らせんドメインに多数の中断を持ち、そしてC末端にユニークな非三重らせんドメインを持つ、コラーゲンのマルチプレキシン・ファミリーのメンバーである。コラーゲンXVIIIのヒト型アルファ1鎖の短いアイソフォームの配列(SwissProt: P39060)は、例えばWO2010/124821に開示され、該文献は、その全開示内容に関して本明細書に援用される。
【0064】
エンドスタチンは、多様なタンパク質分解酵素の作用によって、コラーゲンXVIIIのアルファ1鎖から放出される(詳細に関しては、Ortega, N.およびWerb, Z., Journal of Cell Science 115(2002)4201−4214を参照されたい−本論文の全開示は、本明細書に援用される)。エンドスタチンは、本明細書において、WO2010/124821に開示されるように、コラーゲンXVIIIのアミノ酸1337位からアミノ酸1519位に渡るコラーゲンXVIII断片によって代表される。コラーゲンXVIIIのアルファ鎖のC末端のヒンジ領域は、いくつかのプロテアーゼ感受性部位を含有し、そして好中球エラスターゼ、カテプシンおよびマトリックス・メタロプロテイナーゼを含む多くの酵素が、この領域でコラーゲン鎖を切断することによって、エンドスタチンを生成することが知られる。これらのプロテアーゼは、もっぱらエンドスタチンを放出するわけではなく、エンドスタチン配列を含有する他のより大きい断片もまた放出する可能性もある。当業者には明らかであろうように、こうしたより大きい断片もまた、エンドスタチンに関するイムノアッセイによって測定されるであろう。
【0065】
オステオポンチン(OPN)は、また、骨シアロタンパク質I(BSP−1またはBNSP)、初期Tリンパ球活性化(ETA−1)、分泌リンタンパク質1(SPP1)、2arおよびリケッチア耐性(Ric)としても知られ、非常に負に荷電した、細胞外マトリックスタンパク質であり、広範囲な二次構造を欠くポリペプチドである。該ポリペプチドは、約300アミノ酸(マウスでは297;ヒトでは314)で構成され、そして33kDa新生タンパク質として発現され;機能的に重要な切断部位もある。OPNは、約44kDaまで、見かけ上の分子量を増加させる翻訳後修飾を経ることも可能である。オステオポンチンの配列は当該技術分野に周知である(ヒト・オステオポンチン: UniProt P10451、GenBank NP 000573.1)。オステオポンチンは、正常血漿、尿、ミルクおよび胆汁に見られる(US 6,414,219; US 5,695,761; Denhardt, D.T.およびGuo, X., FASEB J. 7 (1993) 1475−1482; Oldberg, A.ら, PNAS 83 (1986) 8819−8823; Oldberg, A.ら, J. Biol. Chem. 263 (1988) 19433−19436; Giachelli, CM.ら, Trends Cardiovasc. Med. 5 (1995) 88−95)。ヒトOPNタンパク質およびcDNAが単離され、そして配列決定されてきている(Kiefer M. Cら, Nucl. Acids Res. 17 (1989) 3306)。OPNは、細胞接着、走化性、マクロファージ指向性インターロイキン−10において機能する。OPNは、いくつかのインテグリン受容体と相互作用することが知られる。OPN発現増加が、いくつかのヒト癌において報告されてきており、そしてその同族(cognate)受容体(av−b3、av−b5、およびav−blインテグリンならびにCD44)が同定されてきている。Irby, R.B.ら, Clin. Exp. Metastasis 21 (2004)
515−523によるin vitro研究によって、内因性OPN発現(安定トランスフェクションを通じる)ならびに外因性OPN(培地に添加)の両方が、in vitroでヒト結腸癌細胞の運動性および侵襲能を増進することが示されている。
【0066】
エンドスタチンは、血管新生および血管成長の強力な阻害剤である。エンドスタチンおよびサイトカインネットワークの間の関係は決定されていないが、エンドスタチンが広範囲の遺伝子の発現を改変可能であることが知られる(Abdollahi, A.ら, Mol Cell 13 (2004) 649−663)。
【0067】
エンドスタチンは、本明細書において、好ましくは、特異的エンドスタチンポリペプチドの変異体もまた含む。用語「変異体」の説明に関しては、上記を参照されたい。
ミメカンは、ロイシンリッチ・リピートを含む小分子プロテオグリカンであり、そして前駆体は298アミノ酸を含む。ミメカンの他の名称は、OGN、オステオグリシン、OG、OIF、SLRR3Aである。
【0068】
ミメカンは、構造的に関連したコアタンパク質を含む、分泌小分子ロイシンリッチ・プロテオグリカン(SLRP)ファミリーのメンバーである。すべてのSLRPに共有される共通の特徴は、コアタンパク質のC末端半分にあるタンデムなロイシンリッチ・リピート(LRR)単位である。しかし、N末端領域においては、各クラスのSLRPは、LRR N−ドメインと称される、保存されたスペーシングを伴う、システインクラスターを含有するユニークなドメインを有する。クラスIII SLRPは、6つのカルボキシルLRRを含有し、そしてミメカン、エピフィカンおよびオプティシンを含む。
【0069】
クラスIおよびIIのメンバー、例えばデコリン、ビグリカン、ルメカン、およびフィブロモジュリンに関するマウスノックアウトによる機能研究によって、異常なコラーゲン原線維形成に寄与しうる、広い範囲の欠陥が示され、これらのSLRPがコラーゲン・マトリックスを確立し、そして維持する際に重要な役割を果たすことが示唆されている(Ameye, L.およびYoung, M.F., Glycobiology 12(2002)107R−116R)。クラスIIIミメカンの不全もまた、コラーゲン原線維異常を引き起こした(Tasheva, E.S.ら, Mol. Vis. 8(2002)407−415)。
【0070】
ミメカンは、細胞外マトリックスの多機能構成要素である。ミメカンは多様な他のタンパク質(IGF2、IKBKG、IFNB1、INSR、CHUK、IKBKB、NFKBIA、IL15、Cd3、レチノイン酸、APP、TNF、リポ多糖、c−abl癌遺伝子1、受容体チロシンキナーゼ、v−src肉腫ウイルス癌遺伝子)に結合する。これらの多様な結合活性は、多くの組織において、ミメカンが多様な機能を発揮する能力の主な原因となりうる。
【0071】
ミメカンは、角膜、骨、皮膚、およびさらなる組織に見出されうる。その発現パターンは、異なる病理学的状態において改変される。ミメカンの生物学的役割に関するデータ量が増加しているにもかかわらず、その機能はなお明らかではない。ミメカンは、発生、組織修復、および転移において必須のプロセスである、コラーゲン原線維形成を制御する際
に関与することが示されてきている(Tashevaら, Mol. Vis. 8(2002)407−415)。ミメカンは、TGF−ベータ−1またはTGF−ベータ−2とともに、骨形成に役割を果たす。
【0072】
ヒト・ミメカン・ポリペプチドは、当該技術分野において周知であり、そして例えばGenBank寄託番号NP_054776.1 GI−7661704を通じて評価可能である(may be assessed)。さらに、配列は、WO2011/012268に開示される。ミメカンは、本明細書において、好ましくは、特定のミメカン・ポリペプチドの変異体も含む。用語「変異体」の説明に関しては、上記を参照されたい。本発明の関連において、ミメカンは、好ましくは、WO2011/012268に記載されるように決定される。
【0073】
用語「可溶性Flt−1」または「sFlt−1」は、本明細書において、VEGF受容体Flt1の可溶性型であるポリペプチドを指す。該ポリペプチドは、ヒト臍帯静脈内皮細胞の馴化培地において同定された。内因性可溶性Flt1(sFlt1)受容体は、クロマトグラフィー的にそして免疫学的に、組換えヒトsFlt1に類似であり、そして匹敵する高アフィニティで[125I]VEGFに結合する。ヒトsFlt1は、in vitroで、KDR/Flk−1の細胞外ドメインと、VEGF安定化複合体を形成することが示されている。好ましくは、sFlt1はヒトsFlt1を指す。より好ましくは、ヒトsFlt1は、Genbank寄託番号P17948、GI:125361において示されるような、Flt−1のアミノ酸配列から推測可能である。マウスsFlt1のアミノ酸配列は、Genbank寄託番号BAA24499.1、GI:2809071に示される。
【0074】
用語「sFlt−1」は、本明細書においてまた、前述の特定のsFlt−1ポリペプチドの変異体も含む。こうした変異体は、特定のsFlt−1ポリペプチドと同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を有する。特に、これらは、本明細書に言及される同じ特異的アッセイによって、例えば前記sFlt−1ポリペプチドを特異的に認識するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を用いたELISAアッセイによって、検出可能である場合、同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を共有する。用語「変異体」のより詳細な説明に関しては、上記を参照されたい。
【0075】
ガレクチン−3(Gal−3)は、ベータ−ガラクトシド結合レクチンファミリーの構造的にユニークなメンバーである。ガレクチン−3の発現は、マクロファージ、好中球およびマスト細胞を含む、上皮および炎症細胞と関連づけられてきている。ガレクチン−3は、筋線維芽細胞増殖、線維化、組織修復、心臓リモデリングおよび炎症を含む、心不全において重要な多様な生物学的プロセスに関連づけられてきている。ガレクチン−3は、およそ30kDaであり、そしてすべてのガレクチン同様、β−ガラクトシドの特異的結合を可能にする、約130アミノ酸の炭水化物認識結合ドメイン(CRD)を含有する。ガレクチン−3は、単一遺伝子LGALS3によってコードされる。該遺伝子は、約130アミノ酸の単一C末端CRDに連結された短いアミノ酸セグメント(全体で110〜130アミノ酸)のタンデムリピートを含む、N末端ドメインを含む。該遺伝子は、核、細胞質、ミトコンドリア、細胞表面、および細胞外空間において発現される。このタンパク質は、以下の生物学的プロセスに関与することが示されてきている:細胞接着、細胞活性化および化学誘因、細胞増殖および分化、細胞周期、ならびにアポトーシス。ガレクチン−3レベルの上昇は、急性代償不全心不全および慢性心不全集団の両方において、より高い死亡のリスクと有意に関連することが見出されてきている(例えば、DeFilippi C, Christenson R, Shah Rら (2009) 急性不安定化心不全におけるリスク評価のためのガレクチン−3に関する新規アッセイの臨床的検証。)。
【0076】
ガレクチン−3のタンパク質配列は、当該技術分野に周知であり、例えばuniprot寄託番号P17931(バージョン5、2008年11月25日)、GenBank寄託番号NP_002297.2 NM_002306.3を参照されたい。
【0077】
ST2は、機械的ストレス条件下で、心臓線維芽細胞および心筋細胞によって産生される、IL−1受容体ファミリーのメンバーである。ST2は、インターロイキン−1受容体ファミリーメンバーであり、そして膜結合アイソフォームおよび可溶性アイソフォーム(sST2)の両方で存在する。本発明の関連において、可溶性ST2の量が決定されるものとする(Dieplingerら(Clinical Biochemistry,
43, 2010: 1169〜1170)。ST2はまた、インターロイキン1受容体様1またはIL1RLIとして知られ、ヒトにおいて、IL1RLI遺伝子によってコードされる。ヒトST2ポリペプチドは、当該技術分野において周知であり、そして例えば、GenBankを通じてアクセス可能である。NP_003847.2 GI:27894328を参照されたい。可溶性ST2(sST2)は、IL−33に結合し、そしてそうでなければST2の細胞膜結合型を通じたIL−33シグナル伝達の心臓保護効果を抑止することによって、デコイ受容体として機能すると考えられる。
【0078】
CRPは、本明細書において、C反応性タンパク質とも称され、75年以上前に、肺炎球菌のC−多糖に結合する血液タンパク質であることが発見された、急性期タンパク質である。CRPは、反応性炎症マーカーとして知られ、そして一次病変部位から生じるケモカインまたはインターロイキンに応答するかまたは反応して、遠位臓器(すなわち肝臓)によって産生される。CRPは、非共有連結し、そして環状五量体として組み立てられる5つの単一サブユニットからなり、分子量はおよそ110〜140kDaである。好ましくは、本明細書で用いるようなCRPは、ヒトCRPに関する。ヒトCRPの配列は周知であり、そして例えば、Wooら(J. Biol. Chem. 1985. 260
(24), 13384−13388)によって開示される。CRPレベルは、通常、正常な個体では低いが、炎症、感染または傷害によって、100〜200倍またはそれより高く上昇しうる(Yeh (2004) Circulation. 2004; 109:II−11−II−14)。CRPは、心臓血管リスクの予測に関する独立の因子であることが知られる。特に、CRPが心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患および心臓突然死に関する予測因子として適切であることが示されてきている。さらに、CRP量の上昇はまた、急性冠動脈症候群(ACS)を有する患者および冠動脈介入を経験している患者において、再発性虚血および死も予測しうる。CRPの測定は、専門家パネルによって(例えば米国心臓協会によって)、冠動脈心疾患のリスクがある患者において、推奨されている(Pearsonら(2003) 炎症および心臓血管疾患のマーカー Circulation, 107: 499−511も参照されたい)。用語CRPはまた、その変異体にも関する。
【0079】
好ましくは、患者試料におけるCRP量は、高感度のCRPアッセイを用いることによって決定される。こうしたアッセイによって決定されるCRPは、しばしば、また、高感度CRP(hsCRP)とも称される。hsCRPアッセイは、例えば、心疾患のリスクを予測するために用いられる。適切なhsCRPアッセイが当該技術分野に知られる。本発明の関連において、特に好ましいhsCRPアッセイは、0.1mg/lの検出限界を持つRoche/Hitachi CRP(Latex)HS試験である。
【0080】
インターロイキン−6(IL−6と略される)は、T細胞およびマクロファージによって分泌されるインターロイキンであり、例えば感染中および外傷後、特に火傷または炎症につながる他の組織損傷後に免疫反応を刺激する。IL−6は、炎症促進性および抗炎症性の両方のサイトカインとして作用する。ヒトにおいて、IL−6はIL6遺伝子によっ
てコードされる。ヒトIL−6の配列は、GenBankを通じて評価可能である(ポリヌクレオチド配列に関しては、NM_000600.3を、そしてアミノ酸配列に関しては、NP_000591.1を参照されたい)。IL−6は、リガンド結合性IL−6Rα鎖(CD 126)、およびシグナル伝達構成要素gpl30(CD 130とも呼ばれる)からなる細胞表面I型サイトカイン受容体複合体を通じてシグナル伝達する。CD
130は、白血病阻害因子(LIF)、毛様体神経栄養因子、オンコスタチンM、IL−11およびカルジオトロフィン−1を含むいくつかのサイトカインの共通のシグナル伝達因子であり、そしてほぼ遍在性に、大部分の組織で発現される。対照的に、CD 126の発現は、特定の組織に限定される。IL−6が受容体と相互作用する際、gp130およびIL−6Rタンパク質が複合体を形成するように誘発し、こうして受容体を活性化する。これらの複合体は、gp 130の細胞内領域を一緒にして、特定の転写因子、ヤヌスキナーゼ(JAK)およびシグナル伝達因子および転写活性化剤を通じたシグナル伝達カスケードを開始する。
【0081】
マーカー、シスタチンCは当該技術分野に周知である。シスタチンCは、CST3遺伝子にコードされ、そして一定の率ですべての有核細胞によって産生され、そしてヒトにおける産生率は、全生涯に渡って驚くほど一定である。循環からの除去は、ほぼ完全に糸球体濾過を介する。このため、シスタチンCの血清濃度は、1〜50歳の範囲の年齢で筋肉量および性別から独立である。したがって、血漿および血清中のシスタチンCは、GFRのより高感度のマーカーとして提唱されてきている。ヒト・シスタチンCのポリペプチド配列は、Genbankを通じて評価可能である(例えば寄託番号NP_000090.1を参照されたい)。該バイオマーカーは粒子増進免疫比濁アッセイによって決定可能である。ヒト・シスタチンCは、抗シスタチンC抗体でコーティングしたラテックス粒子と凝集する。凝集体を比濁的に測定する。
【0082】
マーカー、プレアルブミンは、当業者に周知である。該タンパク質はトリプトファン・リッチタンパク質であり、肝細胞において合成され、そして55000ダルトンのモル量を有する。8.6のpHで、電気泳動バンドは、陽極に向かってより高い速度で拡散しているため、<2.5%の相対量で、アルブミンより前に現れる。その機能は、低分子量レチノール結合タンパク質(21000ダルトン未満のモル量)に結合し、そしてこれを輸送して、糸球体濾過を防止することである。30〜50%の循環プレアルブミンがレチノール結合タンパク質と複合体化されている。さらに、該タンパク質は、チロキシン(T4)に対するアフィニティがチロキシン結合グロブリンより低いにもかかわらず、このホルモンに結合し、そしてこれを輸送する。ヒト・プレアルブミン・ポリペプチドの配列は、Genbankを通じて評価可能である(例えば寄託番号NP 000362.1を参照されたい)。プレアルブミン測定のため、多様な方法が利用可能であり、例えば放射状免疫拡散(RID)、比濁分析および比濁法がある。
【0083】
マーカー「クレアチニン」は当該技術分野に周知である。筋肉代謝において、クレアチニンは、クレアチンおよびリン酸クレアチンから内因性に合成される。正常な腎機能の条件下で、クレアチニンは、糸球体濾過によって排出される。クレアチニン測定は、急性および慢性腎疾患の診断および監視のため、ならびに腎臓透析の監視のために行われる。尿中のクレアチニン濃度は特定の分析物(アルブミン、α−アミラーゼ)の排出に関する参照値として使用可能である。クレアチニンは、Popperら(Popper Hら Biochem Z 1937;291 :354)、SeeligおよびWuest(Seelig HP, Wuest H. Aerztl Labor 1969;15 :34)またはBartels(Barrels Hら Clin Chim Acta 1972;37: 193)によって記載されるように測定可能である。例えば、水酸化ナトリウムおよびピクリン酸を試料に添加して、クレアチニン−ピクリン酸複合体の形成を開始する。アルカリ溶液中で、クレアチニンは、ピクリン酸塩を含む黄橙色の複合体を形成する。色の強度は、クレアチニン濃度に正比例し、そして測光的に測定可能である。
【0084】
尿酸は、被験体生物においてプリン代謝の最終産物である。IUPAC名は、7,9−ジヒドロ−3H−プリン−2,6,8−トリオンである。該化合物はまた、しばしば、尿酸塩、尿酸(lithic acid)、2,6,8−トリオキシプリン、2,6,8−トリヒドロキシプリン、2,6,8−トリオキソプリン、1H−プリン−2,6,8−トリオール(化合物式、C
5H
4N
4O
3、PubChem CID 1175、CAS番号69−93−2)とも称される。
【0085】
尿酸測定は、腎不全、痛風、白血病、乾癬、飢餓または他の消耗性状態を含む多くの腎および代謝障害、ならびに細胞傷害薬剤を投与されている患者の診断および治療において用いられる。尿酸の酸化は、このプリン代謝産物の定量的決定に向かう2つのアプローチの基礎を提供する。1つのアプローチは、アルカリ溶液中のリンタングステン酸の、タングステンブルーへの還元であり、測光的に測定される。PraetoriusおよびPoulsonによって記載される第二のアプローチは、酵素ウリカーゼを利用して、尿酸を酸化する;この方法は、化学的酸化に対する本質的な干渉を排除する(Praetorius E, Poulsen H. 詳細な指示を伴う尿酸の酵素的測定 Scandinav J Clin Lab Investigation 1953;3:273−280)。ウリカーゼは、尿酸消費のUV測定を伴う方法において、または比色アッセイを提供する他の酵素と組み合わせて使用可能である。別の方法は、Townら(Town
MH, Gehm S, Hammer B, Ziegenhorn J. J Clin Chem Clin Biochem 1985;23:591)によって開発された比色法である。試料をまず、アスコルビン酸オキシダーゼおよびクリアリング系を含有する試薬混合物とインキュベーションする。この試験系において、試料中に存在するいかなるアスコルビン酸も予備的反応において排除されることが重要であり;これは、続くPOD指標反応とのいかなるアスコルビン酸干渉も排除する。スターター試薬を添加すると、ウリカーゼによる尿酸の酸化が開始する。
【0086】
本発明の関連において、尿酸は、適切であるような任意の方法によって測定可能である。好ましくは、前述の方法によって該バイオマーカーを測定する。より好ましくは、上述の比色法のわずかな修飾を適用することによって、尿酸を測定する。この反応において、過酸化物は、ペルオキシダーゼ(POD)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)、および4−アミノフェナゾンの存在下で反応して、キノン−ジイミン色素を形成する。形成される赤色の強度は、尿酸濃度に比例し、そしてこれを測光的に決定する。
【0087】
尿素は、タンパク質窒素代謝の主要な最終産物である。尿素は、化学式CO(NH
2)
2を有し、そして肝臓において、尿素サイクルによって、アミノ酸脱アミン化によって産生されるアンモニアから合成される。尿素は、大部分、腎臓によって排出されるが、最小限の量がまた、汗中でも排出され、そして細菌作用によって腸において分解される。血液尿素窒素の測定は、最も広く用いられる、腎機能に関するスクリーニング試験である。尿素は、ヒト血清、血漿および尿における尿素/尿素窒素の定量的決定のため、Roche/Hitachi cobas cシステム上でのin vitro試験によって測定可能である。cobas c 311およびcobas c 501/502を含む異なるアナライザーを用いて、試験を自動的に行ってもよい。アッセイは、ウレアーゼおよびグルタミン酸デヒドロゲナーゼを用いた動力学アッセイである。尿素は、ウレアーゼによって加水分解されて、アンモニウムおよび炭酸塩を形成する。第二の反応において、2−オキソグルタル酸は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)および補酵素NADHの存在下でアンモニウムと反応して、L−グルタミン酸を産生する。この反応において、加
水分解される尿素各モルに関して、2モルのNADHがNAD
+に酸化される。NADH濃度の減少率は、標本中の尿素濃度に正比例し、そしてこれを測光的に測定する。
【0088】
マーカー、グルコースもまた、当該技術分野に周知である。本明細書において、該マーカーは、好ましくはD−グルコースを指す。マーカーのレベルは、周知の方法によって測定可能である。例えば、該マーカーを、酵素ヘキソキナーゼ(HK)およびアデノシン−5’−三リン酸(ATP)の存在下でD−グルコース−6−リン酸にリン酸化して、同時にアデノシン−5’−二リン酸(ATP)を形成してもよい。酵素グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼの存在下で、D−グルコース−6−リン酸は、NADPによってD−グルコン酸リン酸に酸化されて、還元ニコチンアミド−アデニン二ヌクレオチドリン酸(NADPH)を形成する。この反応において形成されるNADPHの量は、D−グルコースの量に対して化学量論的である。NADPHは、光吸収によって測定可能である。
【0089】
マーカー、ナトリウムは当該技術分野に周知である。ナトリウムは、主な細胞外陽イオンであり、そして液体分布および浸透圧を維持するために機能する。ナトリウムレベル減少のいくつかの原因には、長期の嘔吐または下痢、腎臓における再吸収減少および過剰な液体保持が含まれる。ナトリウム増加の一般的な原因には、過剰な液体喪失、塩の高摂取および腎臓再吸収増加が含まれる。溶液中のイオン測定のため、特定の膜材料が電位(起電力、EMF)を発展させるユニークな特性を利用するイオン選択的電極(ISE)を適用することによって、マーカーのレベルを決定することも可能である。電極は、試験溶液および内部充填溶液の両方と接触する選択的膜を有する。内部充填溶液は、固定された濃度の試験イオンを含有する。膜の特定の性質のため、試験イオンは、各側の膜と密接に関連する。膜EMFは、試験溶液および内部充填溶液中の試験イオンの濃度の相違によって決定される。EMFは、溶液中の特定のイオンに関して、Nernst等式にしたがって発展される。
【0090】
マーカー、ヘモグロビン(Hb)は当該技術分野に周知である。ヘモグロビンは、各々ヘム部分を含有する4つのタンパク質サブユニットを含み、そして赤血球中に位置する赤い色素のタンパク質である。その主な機能は、血液中の酸素および二酸化炭素を輸送することである。各Hb分子は、4つの酸素分子に結合することが可能である。Hbは、多様な下位分画および誘導体からなる。用語「ヘモグロビン」は、本明細書において、好ましくは総ヘモグロビンを指す。周知の方法によって、例えばヘキサシアノ鉄酸カリウム(III)によってヘモグロビンをメトヘモグロビンに酸化する(Fe
2+→Fe
3+)ことにより、ヘモグロビンレベルを測定することも可能である。ヘモグロビンレベルは色強度に比例し、そして例えば、567nmの波長および37℃で測定可能である。ヘモグロビンレベルはまた、ヘモグロビンに特異的に結合する抗体と試料を接触させることによっても測定可能である。
【0091】
マーカーHbA1c(糖化ヘモグロビン、グリコヘモグロビン)もまた当該技術分野に周知である。HbA1cは、糖化ヘモグロビンの1つであり、多様な糖がHb分子に付着することによって形成される下位分画である。HbA1cは、グルコースと、正常成人Hb(HbA)のβ鎖のN末端アミノ基の非酵素的反応によって、2工程で形成される。第一の工程は可逆的であり、そして不安定なHbA1cを生じる。第二の反応工程において、これは再編成されて、安定HbA1cを形成する。赤血球において、安定HbA1cに変換されるHbAの相対量は、血中グルコースの平均濃度とともに増加する。安定HbA1cへの変換は、およそ100〜120日の赤血球寿命によって制限される。ヘモグロビンレベルは、周知の方法によって測定可能である。好ましくは、HbA1cのレベルの測定は、HbA(成人ヘモグロビン)のβ鎖N末端で糖化される、すべてのヘモグロビン変異体レベルの測定を含む。1つの態様において、このマーカーに特異的に結合する抗体と試料を接触させることによって、このマーカーのレベルを測定する。この場合、試料中のグリコヘモグロビン(HbA1c)は、抗HbA1c抗体と反応して、可溶性抗原−抗体複合体を形成する。
【0092】
血中血球容積(PCV)または赤血球容積分画(EVF)としてもまた知られるヘマトクリット(HtまたはHCT)は、血中の赤血球の容積率(%)である。本明細書において、用語「ヘマトクリット」は、好ましくは、全血容積中の充填赤血球細胞の割合を指す。ヘマトクリットは、ヘパリン処理した血液を、毛細管(マイクロヘマトクリットチューブとしても知られる)中、10,000RPMで5分間、遠心分離することによって測定可能である。これは、血液を層状に分離する。充填赤血球容積を、血液試料総容積によって割ると、PCVが得られる。試験管を用いるため、層の長さを測定することによってこれを計算することも可能である。現代的な実験室設備を用いると、ヘマトクリットは自動化アナライザーによって計算され、そして直接測定はされない。ヘマトクリットは、赤血球数に平均細胞容積を乗じることによって決定される。PCVには、赤血球間にトラップされた少量の血漿が含まれるため、ヘマトクリットは、わずかにより正確である。割合として概算されるヘマトクリットは、g/dLでのヘモグロビン濃度を三倍し(triple)、そして単位をなくすことによって得られうる。
【0093】
用語「QRS期間」は、当該技術分野に周知である。QRS期間は、医学において標準測定値であり、そして心室の電気的興奮期間の指標である、表面心電図(ECG)状のQRS群の期間を記載する。好ましくは、QRS期間は、ECGデバイスによって測定される。
【0094】
当該技術分野に一般的に知られる方法を用いて、本明細書で言及するようなバイオマーカーを検出することも可能である。検出法は、一般的に、試料中のバイオマーカーのレベルを定量化する方法(定量法)を含む。当業者には、一般的に、以下の方法のうちどれがバイオマーカーの定性的および/または定量的検出に適しているかが知られる。商業的に入手可能であるELISA、RIA、蛍光に基づくイムノアッセイのような、例えばウェスタンおよびイムノアッセイを用いて、タンパク質に関して試料を慣用的にアッセイしてもよい。さらに適切な方法は、ペプチドまたはポリペプチドに特異的な物理的または化学的特性、例えばその正確な分子量またはNMRスペクトルを測定する工程を含む。前記方法は、例えば、バイオセンサー、イムノアッセイにカップリングした光学デバイス、バイオチップ、分析デバイス、例えば質量分析器、NMRアナライザー、またはクロマトグラフィデバイスを含む。さらに、方法には、マイクロプレートのELISAに基づく方法、完全自動化またはロボットイムノアッセイ(例えばElecsys
TMアナライザー装置上で利用可能)、CBA(例えば、Roche−Hitachi
TMアナライザー上で利用可能な、酵素的コバルト結合アッセイ)、およびラテックス凝集アッセイ(例えば、Roche−Hitachi
TMアナライザー上で利用可能)が含まれる。
【0095】
本明細書に言及するようなバイオマーカータンパク質の検出に関して、こうしたアッセイ形式を用いた広範囲のイムノアッセイ技術が利用可能である。例えば米国特許第4,016,043号、第4,424,279号、および第4,018,653号を参照されたい。これらには、非競合型の片側および両側または「サンドイッチ」アッセイ、ならびに伝統的な競合結合アッセイの両方が含まれる。これらのアッセイにはまた、ターゲットバイオマーカーに対する標識抗体の直接結合も含まれる。
【0096】
サンドイッチアッセイは、最も有用であり、そして一般的に用いられるイムノアッセイの1つである。
電気化学発光現象を測定するための方法が周知である。こうした方法は、特別な金属複合体が、酸化によって、励起状態を達成して、そこから基底状態に減衰して、電気化学発光を放出する能力を利用する。概説に関しては、Richter, M.M., Che
m. Rev. 104 (2004) 3003−3036を参照されたい。
【0097】
バイオマーカーはまた、磁気共鳴分光(NMR分光)、ガスクロマトグラフィ−質量分析(GC−MS)、液体クロマトグラフィ−質量分析(LC−MS)、高および超HPLC、逆相HPLCなどのHPLC、例えば二重UV波長検出を伴うイオン対形成HPLC、レーザー誘導蛍光検出を伴うキャピラリー電気泳動、陰イオン交換クロマトグラフィおよび蛍光検出、薄層クロマトグラフィを含む一般的に知られる方法によっても検出可能である。
【0098】
好ましくは、本明細書に言及するようなバイオマーカーのレベルを測定する工程は、(a)その強度が、ペプチドまたはポリペプチドのレベルの指標となる細胞反応を誘発可能な細胞と、前記ペプチドまたはポリペプチドを、適切な期間、接触させ、(b)該細胞反応を測定する工程を含む。細胞反応を測定するため、試料またはプロセシングされた試料を、好ましくは細胞培養に添加し、そして内部または外部細胞反応を測定する。細胞反応には、レポーター遺伝子の測定可能な発現、あるいは物質、例えばペプチド、ポリペプチド、または小分子の分泌が含まれうる。発現または物質は、ペプチドまたはポリペプチドのレベルに相関する強度シグナルを生じるものとする。
【0099】
やはり好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドのレベルを測定する工程は、試料におけるペプチドまたはポリペプチドから得られうる特異的強度シグナルを測定する工程を含む。上述のように、こうしたシグナルは、マススペクトルにおいて観察されるペプチドまたはポリペプチドに特異的なm/z変数、あるいはペプチドまたはポリペプチドに特異的なNMRスペクトルで観察されるシグナル強度であることも可能である。
【0100】
ペプチドまたはポリペプチドのレベルを測定する工程は、好ましくは、(a)特異的結合剤とペプチドを接触させ、(b)(場合によって)結合していない結合剤を除去し、(c)結合した結合剤、すなわち工程(a)で形成された結合剤複合体のレベルを測定する工程を含むことも可能である。好ましい態様にしたがって、接触し、除去し、そして測定する前記工程は、本明細書に開示する系のアナライザー装置によって実行されてもよい。いくつかの態様にしたがって、前記工程は、前記系の単一のアナライザー装置によって、または互いに機能可能な通信がある1より多いアナライザー装置によって、実行可能である。例えば、特定の態様にしたがって、本明細書に開示する前記系には、接触させ、そして除去する前記工程を実行するための第一のアナライザー装置、および輸送装置(例えばロボットアーム)によって前記の第一のアナライザー装置に機能可能であるように連結されている、測定する前記工程を実行する、第二のアナライザー装置が含まれることも可能である。
【0101】
結合した結合剤、すなわち、結合剤または結合剤/ペプチド複合体は、強度シグナルを生じるであろう。本発明にしたがった結合には、共有および非共有結合の両方が含まれる。本発明にしたがった結合剤は、本明細書記載のペプチドまたはポリペプチドに結合する、任意の化合物、例えばペプチド、ポリペプチド、核酸、または小分子であってもよい。好ましい結合剤には、抗体、核酸、ペプチドまたはポリペプチド、例えば該ペプチドまたはポリペプチドに関する受容体または結合パートナー、および該ペプチドに対する結合ドメインを含むその断片、ならびにアプタマー、例えば核酸またはペプチドアプタマーが含まれる。こうした結合剤を調製する方法は、当該技術分野に周知である。例えば、適切な抗体またはアプタマーの同定および産生はまた、商業的供給者によっても提供される。当業者は、より高いアフィニティまたは特異性を持つ結合剤の誘導体を発展させる方法をよく知っている。例えば、ランダム突然変異を、核酸、ペプチドまたはポリペプチド内に導入することも可能である。次いで、これらの誘導体を、当該技術分野に知られるスクリーニング法、例えばファージディスプレイにしたがって、結合に関して試験することも可能である。本明細書に言及するような抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方、ならびに抗原またはハプテンに結合可能な、その断片、例えばFv、FabおよびF(ab)2断片が含まれる。本発明にはまた、一本鎖抗体およびヒト化ハイブリッド抗体も含まれ、ここで、望ましい抗原特異性を示す非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列を、ヒトアクセプター抗体の配列と組み合わせる。ドナー配列には、通常、少なくともドナーの抗原結合アミノ酸残基が含まれるが、ドナー抗体の他の構造的および/または機能的に適切なアミノ酸残基もまた含まれてもよい。こうしたハイブリッドは、当該技術分野に周知のいくつかの方法によって調製可能である。好ましくは、結合剤または剤は、ペプチドまたはポリペプチドに特異的に結合する。本発明にしたがった特異的結合は、リガンドまたは剤が、分析しようとする試料中に存在する別のペプチド、ポリペプチドまたは物質に実質的に結合(これらと「交差反応」)してはならないことを意味する。好ましくは、特異的に結合するペプチドまたはポリペプチドは、いかなる他の関連するペプチドまたはポリペプチドよりも、少なくとも3倍高い、より好ましくは少なくとも10倍高い、そしてさらにより好ましくは少なくとも50倍高いアフィニティで結合しなければならない。非特異的結合は、例えばウェスタンブロット上のサイズにしたがって、または試料における、比較的より高い存在量によって、それがなお区別可能であり、そして明白に測定可能である場合、許容されうる。結合剤の結合は、当該技術分野に知られる任意の方法によって測定可能である。好ましくは、前記方法は、半定量的または定量的である。ポリペプチドまたはペプチドの決定のためのさらなる適切な技術を以下に記載する。
【0102】
結合剤の結合を直接、例えばNMRまたは表面プラズモン共鳴によって測定することも可能である。好ましい態様にしたがって、結合剤結合の測定は、本明細書に開示する系のアナライザー装置によって実行される。その後、本明細書に開示する系の計算デバイスによって、測定した結合のレベルを計算することも可能である。結合剤がまた、関心対象のペプチドまたはポリペプチドの酵素活性の基質としても働く場合、酵素反応産物を測定してもよい(例えば、切断された基質のレベルを、例えばウェスタンブロット上で測定することによって、プロテアーゼのレベルを測定することも可能である)。あるいは、結合剤は、それ自体、酵素特性を示すことも可能であり、そして「結合剤/ペプチドまたはポリペプチド」複合体、あるいはペプチドまたはポリペプチドによってそれぞれ結合される結合剤を、適切な基質と接触させて、強度シグナルの生成による検出を可能にすることも可能である。酵素反応産物の測定のため、好ましくは基質のレベルは飽和量である。基質はまた、反応の前に検出可能な標識で標識されてもよい。好ましくは、試料を基質と適切な期間接触させる。適切な期間は、検出可能な、好ましくは測定可能なレベルの産物が産生されるために必要な時間を指す。産物のレベルを測定する代わりに、所定の(例えば検出可能な)レベルの産物の出現に必要な時間を測定することも可能である。第三に、結合剤を、共有的にまたは非共有的に、結合剤の検出および測定を可能にする標識にカップリングすることも可能である。標識を、直接または間接的方法によって行ってもよい。直接標識は、標識を結合剤に直接(共有的または非共有的に)カップリングする工程を含む。間接的標識は、第一の結合剤に二次結合剤を(共有的または非共有的に)結合させる工程を含む。二次結合剤は、第一の結合剤に特異的に結合しなければならない。前記の二次結合剤を、適切な標識にカップリングさせてもよいし、そして/または前記の二次結合剤は該二次結合剤に結合する三次結合剤のターゲット(レセプター)であってもよい。二次、三次、またはさらにより高次の結合剤は、しばしば、シグナルを増加させるために用いられる。適切な二次およびより高次の結合剤には、抗体、二次抗体、および周知のストレプトアビジン−ビオチン系(Vector Laboratories, Inc.)が含まれることも可能である。結合剤または支持体はまた、当該技術分野に知られるような1またはそれより多いタグで、「タグ付け」されていてもよい。こうしたタグは次いで、より高次の結合剤のターゲットであることも可能である。適切なタグには、ビオチン、ジゴキシゲニン、His−タグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、myc−タグ、インフルエンザAウイルス赤血球凝集素(HA)、マルトース結合タンパ
ク質等が含まれる。ペプチドまたはポリペプチドの場合、タグは、好ましくはN末端および/またはC末端にある。適切な標識は、適切な検出法によって検出可能な任意の標識である。典型的な標識には、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素的活性標識、放射性標識、磁気標識(例えば常磁性および超常磁性標識を含む「磁気ビーズ」)、および蛍光標識が含まれる。酵素的活性標識には、例えば西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびその誘導体が含まれる。検出に適した基質には、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’−5,5’−テトラメチルベンジジン、NBT−BCIP(Roche Diagnosticsから既製ストック溶液として入手可能な、4−ニトロ・ブルーテトラゾリウムクロリド、および5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェート)、CDP−Star
TM(Amersham Biosciences)、ECF
TM(Amersham Biosciences)が含まれる。適切な酵素−基質の組み合わせは、着色反応産物、蛍光または化学発光を生じることも可能であり、これらは当該技術分野に知られる方法にしたがって(例えば感光フィルムまたは適切なカメラ系を用いて)測定可能である。酵素反応の測定に関しては、上述の基準が同様に適用される。典型的な蛍光標識には、蛍光タンパク質(例えばGFPおよびその誘導体)、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセイン、およびAlexa色素(例えばAlexa568)が含まれる。さらなる蛍光標識は、例えばMolecular Probes(Oregon)から入手可能である。蛍光標識としての量子ドットの使用もまた意図される。放射性標識は、既知のおよび適切な任意の方法、例えば感光フィルムまたはホスホイメージャーによって、検出可能である。
【0103】
ペプチドまたはポリペプチドのレベルはまた、好ましくは、以下のように決定可能である:(a)上に明記するようなペプチドまたはポリペプチドに対する結合剤を含む固体支持体を、ペプチドまたはポリペプチドを含む試料と接触させ、そして(b)支持体に結合しているペプチドまたはポリペプチドのレベルを測定する。好ましくは、結合剤は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、抗体およびアプタマーからなる群より選択され、好ましくは、固定された型で、固体支持体上に存在する。固体支持体を製造するための材料は、当該技術分野に周知であり、そしてとりわけ、これには、商業的に入手可能なカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンチップおよび表面、ニトロセルロースストリップ、膜、シート、デュラサイト(duracyte)、反応トレイのウェルおよび壁、プラスチックチューブ等が含まれる。結合剤または剤を、多くの異なるキャリアーに結合させてもよい。周知のキャリアーの例には、ガラス、ポリスチレン、塩化ポリビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトが含まれる。キャリアーの性質は、本発明の目的のため、可溶性または不溶性のいずれであることも可能である。前記結合剤を固定/不動化するための適切な方法が周知であり、そしてこれには、限定されるわけではないが、イオン性、疎水性、共有相互作用等が含まれる。本発明にしたがったアレイとして、「懸濁アレイ」の使用もまた意図される(Nolan 2002, Trends Biotechnol. 20(1):9−12)。こうした懸濁アレイにおいて、キャリアー、例えばマイクロビーズまたは微小球体が懸濁中に存在する。アレイは、標識されていてもよく、異なる結合剤を所持する、異なるマイクロビーズまたは微小球体からなる。例えば固相化学反応および光感受性保護基に基づいて、こうしたアレイを産生する方法が、一般的に知られる(US 5,744,305)。
【0104】
本発明の方法の1つの態様において、本明細書に言及するようなバイオマーカーのレベルは、実施例セクションに記載されるアッセイを用いることによって測定される。
本発明の方法の別の態様において、工程a)における測定は、アナライザー装置によって、特に本明細書の別の箇所に定義するようなアナライザー装置によって実行可能である
。
【0105】
用語「結合剤」は、それぞれのバイオマーカーの対応物に特異的に結合する結合部分を含む分子を指す。「結合剤」の例は、アプタマー、抗体、抗体断片、ペプチド、ペプチド核酸(PNA)または化学的化合物である。
【0106】
用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、結合対分子が、他の分子に有意に結合しない条件下で、互いに結合を示す、結合反応を指す。用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、バイオマーカーとしてタンパク質またはペプチドを指す場合、結合剤が、少なくとも10−7Mのアフィニティで、対応するバイオマーカーに結合する、結合反応を指す。用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、好ましくは、ターゲット分子に対して少なくとも10−8Mまたはさらにより好ましくは少なくとも10−9Mのアフィニティを指す。用語「特異的」または「特異的に」は、試料中に存在する他の分子が、ターゲット分子に特異的に結合する結合剤に有意には結合しないことを示すよう用いられる。好ましくは、ターゲット分子以外の分子に結合するレベルは、ターゲット分子に対するアフィニティのわずか10%またはそれ未満、より好ましくはわずか5%またはそれ未満の結合アフィニティを生じる。
【0107】
「結合剤」の例は、核酸プローブ、核酸プライマー、DNA分子、RNA分子、アプタマー、抗体、抗体断片、ペプチド、ペプチド核酸(PNA)または化学的化合物である。好ましい結合剤は、測定しようとするバイオマーカーに特異的に結合する抗体である。用語「抗体」は、本明細書において、最も広い意味で用いられ、そして限定されるわけではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および望ましい抗原結合活性を示す限り抗体断片を含む、多様な抗体構造を含む。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体である。より好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。
【0108】
適用可能な別の結合剤は、1つの側面において、試料中の少なくとも1つのマーカーに特異的に結合するアプタマーであることも可能である。用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、結合剤として核酸アプタマーを指す場合、核酸アプタマーが低nM〜pM範囲のアフィニティで、対応するターゲット分子に結合する、結合反応を指す。
【0109】
さらなる側面において、形成された複合体のレベルを測定する前に、結合剤および少なくとも1つのマーカーの間で形成された複合体から、試料を取り除く。したがって、1つの側面において、結合剤を固体支持体上に固定してもよい。さらなる側面において、洗浄溶液を適用することによって、固体支持体上に形成された複合体から試料を除去することも可能である。形成された複合体は、試料中に存在する少なくとも1つのマーカーのレベルに比例するはずである。適用しようとする結合剤の特異性および/または感度は、特異的に結合可能な、試料中に含まれる少なくとも1つのマーカーの割合の度合いを定義することが理解されるであろう。決定をどのように実行しうるかに関するさらなる詳細もまた、本明細書の別の箇所に見出される。形成された複合体のレベルを、試料中に実際に存在するレベルを反映する少なくとも1つのマーカーのレベルに変換するものとする。こうしたレベルは、1つの側面において、本質的に、試料中に存在する量であることも可能であるし、または別の側面において、形成される複合体および元来の試料中に存在する量の間の関連により、その特定の比率である量であることも可能である。
【0110】
用語「レベル」は、本明細書において、バイオマーカーの絶対量、前記バイオマーカーの相対量または濃度、ならびにこれらに相関するかまたはこれらから派生しうる任意の値またはパラメータを含む。こうした値またはパラメータは、直接測定によって前記ペプチドから得られるすべての特異的物理的または化学的特性由来の強度シグナル値、例えばマ
ススペクトルまたはNMRスペクトルの強度値を含む。さらに、本明細書の別の箇所に明記する間接的な測定によって得られるすべての値またはパラメータ、例えばペプチドに反応して生物学的読み取り系から決定される反応レベル、または特異的に結合したリガンドから得られる強度シグナルが含まれる。前述の量またはパラメータに相関する値はまた、すべての標準的な数学演算によっても得られうることが理解されるものとする。
【0111】
用語「比較すること」は、本明細書において、個体または患者由来の試料におけるバイオマーカーのレベルを、本明細書の別の箇所に明記するバイオマーカーの参照レベルと比較することを指す。本明細書において、比較することは、通常、対応するパラメータまたは値の比較を指し、例えば絶対量を絶対参照量に比較する一方、濃度を参照濃度に比較するか、または試料中のバイオマーカーから得られる強度シグナルを参照試料から得られる同じタイプの強度シグナルに比較すると理解されるものとする。比較を、手動で、またはコンピュータ補助比較で実行してもよい。したがって、比較を計算デバイス(例えば本明細書に開示する系の)によって、実行してもよい。個体または患者由来の試料中のバイオマーカーの測定されるまたは検出されるレベルおよび参照レベルの値を、例えば互いに比較してもよいし、そして比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータプログラムによって、前記比較が自動的に実行されてもよい。前記比較を実行するコンピュータプログラムは、適切な出力形式で、望ましい評価を提供するであろう。コンピュータ補助比較に関しては、決定される量の値を、コンピュータプログラムによってデータベース中に記憶されている適切な参照に対応する値に比較することも可能である。コンピュータプログラムは、比較の結果をさらに評価することも可能であり、すなわち適切な出力形式で所望の評価を自動的に提供する。コンピュータ補助比較に関しては、決定される量の値を、コンピュータプログラムによってデータベース中に記憶されている適切な参照に対応する値に比較することも可能である。コンピュータプログラムは、比較の結果をさらに評価することも可能であり、すなわち適切な出力形式で所望の評価を自動的に提供する。
【0112】
特定の態様において、用語「参照レベル」は、それぞれのバイオマーカーに関して、あらかじめ決定された値を指す。この関連において、「レベル」は絶対量、相対量または濃度、ならびにこれらに相関するかまたはこれらに由来しうる任意の値またはパラメータを含む。好ましくは、参照レベルは、患者を心不全療法の強化にふさわしい患者群に、または心不全療法の強化にふさわしくない患者群に割り当てることを可能にするレベルである。したがって、参照レベルは、心不全療法の強化にふさわしい患者および心不全療法の強化にふさわしくない患者の間の区別を可能にするものとする。
【0113】
当業者が認識するであろうように、参照レベルがあらかじめ決定されており、そして例えば特異性および/または感度に関してルーチンの必要条件を満たすように設定される。これらの必要条件は、例えば取締機関によって多様でありうる。例えば、アッセイ感度または特異性が、それぞれ、特定の制限、例えばそれぞれ80%、90%、95%または98%に設定されなければならない可能性もある。これらの必要条件はまた、陽性または陰性予測値に関しても定義されうる。にもかかわらず、本発明に提供する解説に基づいて、当業者は、こうした必要条件を満たす参照レベルに到達することが常に可能であろう。1つの態様において、参照レベルは、心不全を有し、そして心不全療法の強化にふさわしい患者(または患者群)由来の参照試料(単数または複数)において、または心不全を有し、そして心不全療法の強化にふさわしくない患者(または患者群)由来の参照試料(単数または複数)において決定される。参照レベルは、1つの態様において、患者が属する疾患実体由来の参照試料においてあらかじめ決定されている。特定の態様において、参照レベルは、例えば、調べた疾患実体における値の全体の分布の25%〜75%の間の任意の割合に設定可能である。他の態様において、参照レベルは、例えば、調べている疾患実体由来の参照試料における値の全体の分布から決定されるような、中央値、三分位数または四分位数に設定されることも可能である。1つの態様において、参照レベルは、調べる疾患実体における値の全体の分布から決定されるような中央値に設定される。参照レベルは、年齢、性別または下位集団などの多様な生理学的パラメータ、ならびに本明細書に言及するバイオマーカーの決定に用いる手段に応じて多様でありうる。1つの態様において、参照試料は、本発明の方法に供される個体または患者由来の試料と本質的に同じタイプの細胞、組織、臓器または体液供給源に由来し、例えば本発明にしたがって、個体におけるバイオマーカーのレベルを決定する試料として血液が用いられる場合、参照レベルもまた、血液またはその一部において決定される。
【0114】
特定の態様において、用語「参照レベルより大きい」または「参照レベルより高い」は、参照レベルと比較した際に、本明細書記載の方法によって決定される、参照レベルより高い個体または患者由来の試料中のバイオマーカーのレベル、あるいは5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれより高い全体の増加を指す。特定の態様において、用語、増加は、個体または患者由来の試料におけるバイオマーカーのレベルの増加であって、例えば参照試料からあらかじめ決定した参照レベルに比較した際、少なくとも約1.5、1.75、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、75、80、90、または100倍高い、前記増加を指す。
【0115】
特定の態様において、用語「参照レベルより低い」または「未満」は、本明細書において、参照レベルと比較した際に、本明細書記載の方法によって決定される、参照レベルより低い個体または患者由来の試料中のバイオマーカーのレベル、あるいは5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い全体の減少を指す。特定の態様において、用語、減少は、個体または患者由来の試料におけるバイオマーカーのレベルの減少であって、減少したレベルが例えば参照試料からあらかじめ決定した参照レベルの、最大約0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、または0.01倍、またはそれ未満である、前記減少を指す。
【0116】
クレアチニン、尿素、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される場合、以下が診断アルゴリズムとして当てはまる:
好ましくは、少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)より高い、患者由来の試料中の前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)は、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、そして/または、少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)より低い、患者由来の試料中の前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)は、患者が心不全療法の強化にふさわしくないことを示す。
【0117】
少なくとも1つのマーカーが、ナトリウム、ヘモグロビン、ヘマトクリット、およびIGFBP−7からなる群より選択される場合、以下が診断アルゴリズムとして当てはまる:
好ましくは、少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)より低い、患者由来の試料中の前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)は、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、そして/または、少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)より高い、患者由来の試料中の前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)は、患者が心不全療法の強化にふさわしくないことを示す。
【0118】
以下の表Aは、多様なマーカーに関する参照レベルの好ましい範囲(第三列)、ならびに好ましい特定の参照レベル(第四列)を提供する。当業者は、さらなる面倒を伴わずに、さらなる参照レベルを決定可能である。
【0121】
QRS期間に関しては、参照は、約140〜約180msの範囲であってもよい。1つの態様において、参照は約160msである。
本発明の関連において、単一のマーカーまたはマーカーの組み合わせのレベルを測定することが想定される。したがって、2、3、4またはさらにより多くのマーカーのレベル
を測定することが想定される。好ましい組み合わせは以下の通りである:
例えば、以下のマーカー組み合わせが想定される:
・クレアチニンおよびナトリウム
・ヘモグロビンおよびQRS期間
・尿素およびHbA1c
・ヘマトクリットおよびクレアチニン。
【0122】
本発明にしたがって、特定の心不全療法の強化、特に特定の薬剤で強化された治療にふさわしい患者を同定するため、特定のマーカーのレベルを測定することも可能である。例えば、薬剤での治療が強化されるべきかまたはされないべきか(例えば投与する薬剤の投薬量を増加するべきかまたはしないべきか)を評価するため、マーカーを用いてもよい。例えば、測定されるマーカーがクレアチニンである場合、強化される心不全療法は、好ましくは、ベータ遮断剤での治療である。
【0123】
本明細書の上記に提供する定義を以下において準用する。また、本明細書の上記に記載する方法と連結させて行われる工程は、以下の方法にしたがって実行可能である。
本発明はまた、心不全療法の強化にふさわしい患者を同定するための方法、特にin vitro法であって、
(a)心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者由来の試料において、BNP型ペプチドのレベルを測定し;
(b)患者由来の試料において、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定し、
(c)(a)で測定したBNP型ペプチドのレベルを、参照レベル(単数または複数)に比較し、そして
(d)(b)で測定した少なくとも1つのマーカーのレベル(単数または複数)を、参照レベル(単数または複数)に比較する
工程を含む、前記方法にも関する。
【0124】
工程(c)または(d)を実行することによって、心不全療法の強化にふさわしい患者が同定される。1つの態様において、該方法はさらに、心不全療法の強化にふさわしい患者を同定するかまたは選択する工程(e)を含む。さらに、該方法は、(患者が心不全療法の強化にふさわしいと同定された場合)心不全療法を強化するか、または心不全療法の強化を推奨する工程(f)を含むことも可能である。したがって、本発明はまた、上述のような工程(a)〜(f)を含む、心不全療法を強化する方法も想定する。
【0125】
工程a)に言及するようなマーカーに加えて、またはあるいは、QRS期間を測定するかまたは提供し、そして参照に比較してもよい(本明細書の別の箇所に概略するように)。
【0126】
上述の方法に加えて、方法は、BNP型ペプチドのレベルを測定する工程をさらに含む。
本明細書において、用語「BNP型ペプチド」は、プレ−プロBNP、プロBNP、NT−プロBNP、およびBNPを含む。プレ−プロペプチド(プレ−プロBNPの場合は134アミノ酸)は、短いシグナルペプチドを含み、該シグナルペプチドは、酵素的に切
断されて、プロペプチドを放出する(プロBNPの場合は108アミノ酸)。プロペプチドは、さらに切断されてN末端プロペプチド(NT−プロペプチド、NT−プロBNPの場合は76アミノ酸)および活性ホルモン(BNPの場合は32アミノ酸)となる。好ましくは、本発明にしたがったBNP型ペプチドは、NT−プロBNP、BNP(脳ナトリウム利尿剤ペプチド)、およびその変異体である。BNPは活性ホルモンであり、そしてそれぞれの不活性対応物NT−プロBNPよりも短い半減期を有する。BNPは血液中で代謝され、一方、NT−プロBNPは、損なわれていない(intact)分子として血液中を循環し、そしてこうしたものとして、腎臓で排出される。NT−プロBNPのin
vivo半減期は、20分であるBNPの半減期より120分長い(Smith 2000, J Endocrinol. 167:239−46.)。前解析は、NT−プロBNPでよりロバストであり、中央実験室に試料を容易に輸送することが可能である(Mueller 2004, Clin Chem Lab Med 42:942−4.)。血液試料は、数日間、室温で保存してもよく、あるいは回収損失を伴わずに郵送または搬送することも可能である。対照的に、室温または4℃でBNPを48時間保存すると、少なくとも20%の濃度損失につながる(Mueller、前引用箇所; Wu 2004, Clin Chem 50:867−73.)。したがって、時間経過または関心対象の特性に応じて、ナトリウム利尿ペプチドの活性型または不活性型のいずれかの測定が好適でありうる。本発明にしたがって最も好ましいBNP型ペプチドは、NT−プロBNPまたはその変異体である。上に簡潔に論じるように、ヒトNT−プロBNPは、本発明にしたがって称される際、好ましくは、ヒトNT−プロBNP分子のN末端部分に対応する長さ76アミノ酸を含むポリペプチドである。ヒトBNPおよびNT−プロBNPの構造は、先行技術、例えばWO 02/089657、WO 02/083913またはBonow、前引用箇所にすでに詳細に記載されてきている。好ましくは、ヒトNT−プロBNPは、本明細書において、EP 0 648 228 B1に開示されるような、ヒトNT−プロBNPである。これらの先行技術文献は、文献中に開示されるNT−プロBNPおよびその変異体の特定の配列に関して、本明細書に援用される。本発明にしたがって言及されるNT−プロBNPは、上に論じるヒトNT−プロBNPの前記の特定の配列のアレル変異体および他の変異体をさらに含む。具体的には、アミノ酸レベルで、ヒトNT−プロBNPに、好ましくはヒトNT−プロBNPの全長に渡って、好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一である変異体ポリペプチドが想定される。2つのアミノ酸配列間の同一性の度合いは、当該技術分野に周知のアルゴリズムによって決定可能である。好ましくは、同一性の度合いは、2つの最適に整列される配列を、比較ウィンドウに渡って比較することによって決定されるものとし、ここで、比較ウィンドウ中のアミノ酸配列の断片は、最適整列のため、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較した際、付加または欠失(例えばギャップまたはオーバーハング)を含んでもよい。両方の配列において同一のアミノ酸残基が存在する位の数を決定して、マッチした位の数を得て、比較ウィンドウ中の位の総数で、マッチした位の数を割り、そして結果に100を乗じて、配列同一性パーセントを得ることによって、割合を計算する。比較のための配列の最適な整列を、SmithおよびWaterman Add. APL. Math. 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch J. Mol. Biol. 48:443(1970)の相同性整列アルゴリズムによって、PearsonおよびLipman Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装によって(Wisconsin Genetics Software Package中のGAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group(GCG), 575 Science Dr., Madison, WI)、または視覚的検査によって、実行可能である。2つの配列が、比較のために同定されたならば、好ましくは、GAPおよびBESTFITを使用して、最適整列を決定し、そしてしたがって同一性の度合いを決定する。好ましくは、ギャップ加重の5.00、およびギャップ加重長の0.30のデフォルト値を用いる。上に言及する変異体はアレル変異体または任意の他の種特異的相同体、パラログ、またはオルソログであってもよい。診断手段によって、またはそれぞれの全長ペプチドに対して向けられるリガンドによって、なお認識されるタンパク質分解性分解産物は、実質的に類似であり、そしてやはり想定される。ポリペプチドがNT−プロBNP特性を有する限り、ヒトNT−プロBNPのアミノ酸配列に比較して、アミノ酸欠失、置換、および/または付加を有する変異体ポリペプチドもまた含まれる。本明細書に言及するようなNT−プロBNP特性は、免疫学的および/または生物学的特性である。好ましくは、NT−プロBNP変異体は、ヒトNT−プロBNPのものに匹敵する免疫学的特性(すなわちエピトープ組成)を有する。したがって、変異体は、ナトリウム利尿ペプチドの量の決定のために用いられる前述の手段またはリガンドによって認識可能であるものとする。生物学的および/または免疫学的NT−プロBNP特性は、Karlら(Karl 1999, Scand J Clin Lab Invest 230:177−181)、Yeoら(Yeo 2003, Clinica Chimica Acta 338:107−115)に記載されるアッセイによって検出可能である。また、NT−プロBNPの決定のためのアッセイは、Mueller T.ら, Clinica Chimica Acta 341 (2004) 41−48によって記載される。1つの態様において、NT−プロBNPは、上述の参考文献のいずれか1つに記載されるように実行される。変異体にはまた、グリコシル化ペプチドなどの翻訳後修飾ペプチドも含まれる。さらに、本発明にしたがった変異体はまた、試料収集後に、例えばペプチドへの標識、特に放射性または蛍光標識の共有または非共有付着によって修飾されているペプチドまたはポリペプチドである。
【0127】
用語「参照レベル」は、上記に定義されている通りである。BNP型ペプチドに関する参照レベルは、好ましくは、単独で(すなわち本発明の関連において言及するようなさらなるマーカーと組み合わせずに)取り上げられた場合、心不全療法の強化にふさわしくない患者を示すレベルであるものとする。本発明の関連において適用されるべき心不全療法の強化の指標である前記BNP型ペプチドに関して好ましい参照レベルは、実施例に記載するものである。好ましい参照レベルは、BNPに関して、約80〜400pg/ml、または特に、約80〜200pg/mlの範囲内、そしてNT−プロBNPに関して、約450〜2200pg/ml、または特に、約800pg/ml〜1200pg/mlの範囲内である。さらに好ましい参照レベルは、BNPに関して、約100pg/mlまたは400pg/ml、そしてNT−プロBNPに関して、約1000または1200pg/mlである。
【0128】
マーカー、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチン(OPN)に関する好ましい参照レベルまたは参照レベルの範囲を上記表Aに示す。
【0129】
工程(b)で測定される少なくとも1つのマーカーが、クレアチニン、尿素、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される場合、以下が診断アルゴリズムとして当てはまる:
(a)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、およびBNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、
(b)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、
(c)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、そして/または
(d)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしくないことを示す。
【0130】
あるいは、またはさらに、工程(b)で測定される少なくとも1つのマーカーが、ナトリウム、ヘモグロビン、ヘマトクリット、およびIGFBP−7からなる群より選択される場合、以下が診断アルゴリズムとして当てはまる:
(a)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、
(b)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、
(c)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、そして/または
(d)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしくないことを示す。
【0131】
前述の方法にしたがって試験しようとする患者は、BNP型ペプチドの任意のレベル(特に任意の血液、血清または血漿レベル)を示すことも可能である。
さらに、本発明は、BNP型ペプチドガイド心不全療法を最適化するための方法であって、
(a)心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド療法を受けている患者由来の試料において、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定し、そして
(b)(a)で測定したマーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)を、参照レベル(単数または複数)に比較し、それによってBNP型ペプチドガイド療法を最適化する
工程を含む、前記方法に関する。
【0132】
前述の方法にしたがって、患者は、好ましくは、心不全療法の強化を示す、前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低いBNP型ペプチドのレベル(特に血液、血清または血漿レベル)を示す。
【0133】
本明細書の上記に提供する定義を、本発明の以下の態様に準用する。
心臓代償不全、入院および/または死のリスクを予測するための方法
さらに、本発明は、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者が、心臓代償不全、入院、および/または死(死亡)を経験するリスクを予測するための方法、特にin vitro法であって、
(a)心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者由来の試料において、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定し、そして
(b)(a)で測定したマーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)を、参照レベル(単数または複数)に比較する
工程を含む、前記方法に関する。
【0134】
方法は、(c)特に、参照レベル(単数または複数)より高いまたは低い少なくとも1つのマーカーのレベル(単数または複数)が、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する、増加したリスクを有することを示し、そして、参照レベル(単数または複数)より高いまたは低い少なくとも1つのマーカーのレベル(単数または複数)が、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する、減少したリスクを有することを示す、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験するリスクを予測する(またはその予測を提供する)工程をさらに含むことも可能である。
【0135】
好ましい態様において、患者は、心不全療法の強化の指標となる、前記BNP型ペプチドの参照レベルより低い、BNP型ペプチドのレベル(特に血液、血清または血漿レベル)を示す。
【0136】
以下が診断アルゴリズムとして当てはまる:
少なくとも1つのマーカーが、クレアチニン、尿素、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される場合、以下が診断アルゴリズムとして当てはまる:
好ましくは、少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)より高い、患者由来の試料中の前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)は、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する、増加したリスクを有することを示し、そして/または、少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)より低い、患者由来の試料中の前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)は、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する、減少したリスクを有することを示す。
【0137】
少なくとも1つのマーカーが、ナトリウム、ヘモグロビン、ヘマトクリット、およびIGFBP−7からなる群より選択される場合、以下が診断アルゴリズムとして当てはまる
:
好ましくは、少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)より低い、患者由来の試料中の前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)は、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する、増加したリスクを有することを示し、そして/または、少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)より高い、患者由来の試料中の前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)は、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する、減少したリスクを有することを示す。
【0138】
好ましい参照レベルまたは参照レベル範囲は、本明細書の別の箇所に開示される(表Aを参照されたい)。
句「予測を提供する」は、本明細書において、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験するリスクを予測するための、本明細書に言及するような患者試料中の少なくとも1つのバイオマーカーのレベルに関連して生成された情報またはデータの使用に関する。情報またはデータは、書面、口頭または電子など任意の型であることも可能である。いくつかの態様において、生成される情報またはデータの使用には、通信、提示、報告、保存、送達、移動、供給、伝達、分配、またはその組み合わせが含まれる。いくつかの態様において、通信、提示、報告、保存、送達、移動、供給、伝達、分配、またはその組み合わせは、計算デバイス、アナライザー装置またはその組み合わせによって実行される。いくつかのさらなる態様において、通信、提示、報告、保存、送達、移動、供給、伝達、分配、またはその組み合わせは、実験または医学専門職によって実行される。いくつかの態様において、情報またはデータには、参照レベルに対する、少なくとも1つのマーカーのレベルの比較が含まれる。いくつかの態様において、情報またはデータには、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験するリスクを有するかまたは持たないかの指標が含まれる。
【0139】
本発明はまた、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者が心臓代償不全、入院、および/または死(死亡)を経験するリスクを予測するための方法、特にin vitro法であって、
(a)心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者由来の試料において、BNP型ペプチドのレベルを測定し;
(b)患者由来の試料において、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定し、
(c)(a)で測定したBNP型ペプチドのレベルを、参照レベル(単数または複数)に比較し、そして
(d)(b)で測定した少なくとも1つのマーカーのレベル(単数または複数)を、参照レベル(単数または複数)に比較する
工程を含む、前記方法にも関する。
【0140】
方法は、さらに、(f)患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験するリスクを予測する(またはその予測を提供する)工程を含むことも可能である。予測は、好ましくは、比較工程の結果に基づく。
【0141】
前述の方法にしたがって試験しようとする患者は、BNP型ペプチドの任意のレベル(
特に任意の血液、血清または血漿レベル)を示すことも可能である。
工程(b)で測定される少なくとも1つのマーカーが、クレアチニン、尿素、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される場合、以下が診断アルゴリズムとして当てはまる:
(a)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、およびBNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する増加したリスクを有することを示し、
(b)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する増加したリスクを有することを示し、
(c)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する増加したリスクを有することを示し、そして/または
(d)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する減少したリスクを有することを示す。
【0142】
あるいは、またはさらに、工程(b)で測定されるような少なくとも1つのマーカーが、ナトリウム、ヘモグロビン、ヘマトクリット、およびIGFBP−7からなる群より選択される場合、以下が診断アルゴリズムとして当てはまる:
(a)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する増加したリスクを有することを示し、
(b)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する増加したリスクを有することを示し、
(c)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する増加したリスクを有することを示し、そして/または
(d)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験する減少したリスクを有することを示す。
【0143】
好ましい参照レベルまたは参照レベル範囲は、本明細書の別の箇所に開示される(表Aを参照されたい)。
用語「心臓代償不全」は、当該技術分野に周知である。好ましくは、該用語は、心臓が、補助なしで、身体のすべての部分において、適切な細胞灌流を確実にすることができない、慢性心不全の状態を指す。したがって、身体の代償機構は、もはや、ポンプ機能を維持するには十分ではない。
【0144】
用語「死」は、本明細書において、任意の種類の死、特に心臓血管合併症によって引き起こされる死に関する。好ましくは、前記死は心不全によって引き起こされる。
用語「入院」は、当該技術分野において周知である。本明細書において、用語は、心臓血管合併症によって引き起こされる入院に関する。好ましくは、前記入院は、心不全によって引き起こされる。
【0145】
用語「予測する」は、本明細書において、本明細書に言及するような患者が、将来の定義された時間ウィンドウ(予測ウィンドウ)内で、心臓代償不全、入院、および/または死を経験するであろう確率を評価することを指す。予測ウィンドウは、予測された確率にしたがって、患者が心臓代償不全を発展させ、入院し、そして/または死ぬであろう間隔である。予測ウィンドウは、本発明の方法による分析に際して、患者の残りの全寿命であることも可能である。しかし、好ましくは、予測ウィンドウは、本発明の方法を実行した後(より好ましくは、そして正確には、本発明の方法によって分析しようとする試料が得られた後)、1年、2年、3年、4年、5年、10年、15年または20年の間隔である。最も好ましくは、前記の予測ウィンドウは、4または5年の間隔である。当業者に理解されるであろうように、こうした評価は通常、分析しようとする被験体の100%に関して正しいことは意図されない。しかし、該用語は、評価が、分析しようとする患者に統計的に有意な部分に関して正しいことを必要とする。部分が統計的に有意であるかどうかは、多様な周知の統計評価ツール、例えば信頼区間の決定、p値決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定等を用いて、当業者によってさらなる面倒を伴わずに決定可能である。詳細は、DowdyおよびWearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見られる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.0001である。好ましくは、本発明によって想定される確率は、予測が、所定のコホートの患者の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%に関して正しいことを可能にする。
【0146】
表現「心臓代償不全、入院、または死のリスクを予測する」は、本明細書において、本発明の方法によって分析しようとする患者を、リスクが増加した集団の患者群、またはリスクが減少した群のいずれかに割り当てることを意味する。本発明にしたがって言及されるような増加したリスクは、好ましくは、あらかじめ決定される予測ウィンドウ内で、心臓代償不全の発展、入院、または死のリスクが、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド療法を受けている患者集団におけるこうした事象に関する平均リスクに関して、患者に関して有意に増加している(すなわち有意に増加している)ことを意味する。本発明にしたがって言及されるような減少したリスクは、好ましくは、あらかじめ決定される予測ウィンドウ内で、心臓代償不全の発展、入院、または死のリスクが、前記患者集団におけるこうした事象に関する平均リスクに関して、患者に関して有意に減少していることを意味する。特に、リスクの有意な増加または減少は、予後に関して有意であると見なされるサイズのリスクの増加または減少であり、特に、前記増加または減少は、統計的に有意と見なされる。用語「有意」および「統計的に有意」は、当業者に知られる。したがって、リスクの増加または減少が有意であるかまたは統計的に有意であるかは、多様な周知の統計評価ツールを用いて、当業者によって、さらなる面倒を伴わずに決定可能である。
【0147】
好ましくは、3年の予測ウィンドウに関して、増加するリスクは、3.0%〜19.0%の範囲内、より好ましくは12.0%〜17.0%の範囲内、最も好ましくは8.0%〜16.0%の範囲内である。本明細書において、増加した、そしてしたがって増加したリスクは、好ましくは、3.0%を超える、好ましくは12.0%を超える、より好ましくは17%を超える、さらにより好ましくは20%を超える、好ましくは3年の予測ウィンドウに関するリスクに関する。本明細書において、減少したリスクは、好ましくは、8.0%未満、好ましくは6%未満、さらにより好ましくは4%未満、そして最も好ましくは3.0%〜8.0%の範囲内の、3年の予測ウィンドウに関するリスクに関する。
【0148】
本発明はまた、心不全療法の強化にふさわしい患者の同定のため、患者が心臓代償不全、入院、および死を経験するリスクを予測するため、あるいはBNP型ペプチドガイド心不全療法を最適化するための、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者の試料における、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの使用、ならびに/あるいは前記の少なくとも1つのマーカーに関する(すなわちクレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、またはオステオポンチンに関する)少なくとも1つの検出剤の使用にも関する。
【0149】
本発明はまた、心不全療法の強化にふさわしい患者を同定するため、患者が心臓代償不全、入院、およびまたは死を経験するリスクを予測するため、あるいはBNP型ペプチドガイド心不全療法を最適化するための、i)場合によってBNP型ペプチドと組み合わせたQRS期間の使用、および/または場合によってBNP型ペプチドに関する少なくとも1つの検出剤と組み合わせた、ECGデバイス(すなわち心電図を生成可能なデバイス)などのQRS期間を決定するためのデバイスの使用にも関する。本明細書の別の箇所に概略するように、患者は、BNP型ペプチドガイド心不全療法を受けているものとする。
【0150】
本発明はまた、心不全療法の強化にふさわしい患者の同定のため、あるいは心臓代償不全、入院、または死を経験するリスクを予測するための、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者の試料における、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーと組み合わせたBNP型ペプチドの使用、ならびに/あるいはクレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択されるマーカー群より選択されるマーカーに関する少なくとも1つの検出剤と組み合わせた、BNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤の使用にも関する。
【0151】
本発明はさらに、心不全療法の強化にふさわしい患者の同定のため、あるいは患者が心臓代償不全、入院、または死を経験するリスクを予測するための、診断組成物の製造のた
めの、(特に、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者の試料における)クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、IGFBP7、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの使用、ならびに/あるいは前記の1つのマーカーに関する(すなわちクレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、IGFBP7、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、またはオステオポンチンに関する)少なくとも1つの検出剤の使用に関する。
【0152】
本発明はまた、心不全療法の強化にふさわしい患者の同定のため、あるいは患者が心臓代償不全、入院、または死を経験するリスクを予測するための、診断組成物の製造のための、(特に、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者の試料における)クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、IGFBP7、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーと組み合わせたBNP型ペプチドの使用、ならびに/あるいはクレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、IGFBP7、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択されるマーカー群より選択されるマーカーに関する少なくとも1つの検出剤と組み合わせた、BNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤の使用にも関する。
【0153】
マーカーがポリペプチドまたはペプチドである場合、特に、マーカーがHbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンである場合、検出剤は、好ましくは、前記マーカーに特異的に結合する。この場合、検出剤は、好ましくは、モノクローナルまたはポリクローナル抗体である(用語「抗体」の定義に関しては、本明細書の別の箇所を参照されたい)。残りのマーカーに関しては、検出剤は、マーカーと複合体を形成し、それによって、マーカーのレベルの測定を可能にする剤、または本明細書の別の箇所に記載するようなマーカーの変換を可能にする酵素であることも可能である。
【0154】
マーカーがクレアチニンである場合、検出剤は、クレアチニンと複合体を形成するピクリン酸であることも可能である。
マーカーが尿酸である場合、検出剤はウリカーゼまたはペルオキシダーゼであることも可能である。
【0155】
マーカーが尿素である場合、検出剤はウレアーゼであることも可能である。
マーカーがグルコースである場合、検出剤はヘキソキナーゼであることも可能である。
したがって、本発明はまた、好ましくは心不全療法の強化にふさわしい患者を同定するための系であって、
a)クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定するため、患者由来の試料の一部を、in vitroで検出剤(または少なくとも1つのマーカーのレベルを測定する場合、複数の検出剤)と接触させるよう設定された、アナライザー装置、
b)剤(単数または複数)と接触させた患者由来の試料の一部から、シグナルを検出するように設定された、アナライザー装置、
c)プロセッサを有し、そして前記分析装置と機能可能な通信がある、計算デバイス、および
d)プロセッサによって実行可能な複数の命令を含む非一過性機械読み取り可能媒体であって、命令が実行された際、少なくとも1つのマーカーのレベルを計算し、そして参照レベル(または1より多いマーカーを測定する場合、複数の参照レベル)と少なくとも1つのマーカーのレベルを比較して、それによって心不全療法の強化にふさわしい患者を同定する、前記媒体
を含む、前記系に関する。
【0156】
上述のように、患者は、心不全を有するものとし、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けているものとする。
さらに、本発明の方法を実行するために適応したデバイスであって
a)心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者の試料における、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定するための検出剤(単数または複数)を含むアナライザー装置、および
b)測定したレベル(単数または複数)と参照レベル(単数または複数)を比較し、それによって、患者が心不全療法アンタゴニストの強化、利尿剤、およびレニン−アンギオテンシン系阻害剤にふさわしいと同定するためのアナライザー装置であって、参照レベル(単数または複数)を含むデータベース、および比較を実行するコンピュータが実施するアルゴリズムを含む、前記アナライザー装置
を含む、前記デバイスを提供する。
【0157】
好ましい参照レベルおよび診断アルゴリズムを、本明細書の別の箇所に開示する。
本開示の好ましい態様には、ベータ遮断剤、アルドステロン・アンタゴニスト、利尿剤、およびレニン−アンギオテンシン系阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤の投与がふさわしい被験体を同定するための系が含まれる。系の例には、化学的または生物学的反応の結果を検出するか、あるいは化学的または生物学的反応の進行を監視するために用いられる、臨床的化学アナライザー、凝固化学アナライザー、免疫化学アナライザー、尿アナライザー、核酸アナライザーが含まれる。より具体的には、本開示の例示的な系には、Roche Elecsys
TM系およびCobas(登録商標)eイムノアッセイアナライザー、Abbott Architect
TMおよびAxsym
TMアナライザー、Siemens Centaur
TMおよびImmulite
TMアナライザー、ならびにBeckman Coulter UniCel
TMおよびAcess
TMアナライザー等が含まれることも可能である。
【0158】
系の態様には、本開示を実施するために利用される1またはそれより多いアナライザーが含まれてもよい。本明細書開示の系のアナライザー装置は、知られるように、任意の有線通信、Bluetooth(登録商標)、LANS、または無線シグナルを通じて、本明細書に開示する計算デバイスと機能可能な通信がある。さらに、本開示にしたがって、アナライザー装置は、1つまたは両方の検出、例えば診断目的のための試料の定性的および/または定量的評価を実行する、独立型装置、またはより大きい機器内のモジュールを含むことも可能である。例えば、アナライザー装置は、試料および/または試薬のピペッティング、投薬、混合を実行するかまたはこれらを補助することも可能である。アナライザー装置は、試薬を保持してアッセイを実行するための試薬保持装置を含むことも可能である。試薬を、例えば、貯蔵区画またはコンベヤー内の適切な貯蔵所または位置に配置された、個々の試薬または試薬群を含有する容器またはカセットの形で配置してもよい。検出試薬はまた、固体支持体上に固定された型であってもよく、ここに試料を接触させる。さらに、アナライザー装置には、特定の分析のために最適化可能なプロセスおよび/または検出構成要素が含まれてもよい。
【0159】
いくつかの態様にしたがって、アナライザー装置は、試料での分析物、例えばマーカーの光学的検出のために設定されることも可能である。光学検出のために設定された例示的なアナライザー装置は、電磁エネルギーを電気シグナルに変換するために設定されたデバイスを含み、該デバイスは、単一および多要素またはアレイ光学検出装置の両方を含む。本開示にしたがって、光学検出装置は、光学的電磁シグナルを監視し、そして光学経路中に位置する試料における分析物の存在および/または濃度の指標となる、ベースラインシグナルに比較した、電気出口シグナルまたは反応シグナルを提供することが可能である。こうしたデバイスにはまた、例えば、アバランシェフォトダイオードを含む、フォトダイオード、光トランジスタ、光伝導性検出装置、リニアセンサーアレイ、CCD検出装置、CMOSアレイ検出装置を含むCMOS検出装置、光電子増倍管、および光電子増倍管アレイもまた含まれてもよい。特定の態様にしたがって、光学検出装置、例えばフォトダイオードまたは光電子増倍管は、さらなるシグナル調整またはプロセシング電子機器を含有してもよい。例えば、光学検出装置には、少なくとも1つのプリアンプ、電子フィルター、または集積回路が含まれてもよい。適切なプリアンプには、例えば、集積、トランスインピーダンス、および電流増幅(電流ミラー)プリアンプが含まれる。
【0160】
さらに、本開示にしたがった1またはそれより多いアナライザー装置は、光放出のための光源を含んでもよい。例えば、アナライザー装置の光源は、試験しようとする試料で、分析物濃度を測定するための、またはエネルギー移動(例えば蛍光共鳴エネルギー移動または酵素触媒を通じて)を可能にするための、少なくとも1つの光放出要素(例えば発光ダイオード、電力放射源、例えば白熱灯、エレクトロルミネセントランプ、ガス放電ランプ、高輝度放電ランプ、レーザー)からなることも可能である。
【0161】
さらに、系のアナライザー装置には、1またはそれより多いインキュベーション装置(例えば、明記する温度または温度範囲で、試料または試薬を維持するため)が含まれてもよい。いくつかの態様において、アナライザー装置には、試料を反復温度周期に供し、そして試料での増幅産物のレベルの変化を監視するため、リアルタイム・サーモサイクラーを含むサーモサイクラーが含まれてもよい。
【0162】
さらに、本明細書に開示する系のアナライザー装置は、反応容器またはキュベット供給装置を含んでもよいし、またはこれらに機能可能であるように連結されてもよい。例示的な供給装置には、試料および/または試薬を反応容器に送達する、液体プロセシング装置、例えばピペッティング装置が含まれる。ピペッティング装置は、再使用可能な洗浄可能な針、例えばスチール針、または使い捨てピペットチップを含んでもよい。アナライザー装置は、1またはそれより多い混合装置、例えば液体を含むキュベットを振盪する振盪装置、またはキュベット中の液体を混合する混合パドル、または試薬容器をさらに含んでもよい。
【0163】
上記から、本開示のいくつかの態様にしたがって、本明細書に開示し、そして記載する方法のいくつかの工程の部分を、計算デバイスによって行うことも可能であることになる。計算デバイスは、例えば、汎用コンピュータまたはポータブル計算デバイスであることも可能である。本明細書開示の方法の1またはそれより多い工程を実行するため、例えばネットワークを通じてまたはデータをトランスファーする他の方法を通じて、多数の計算デバイスを一緒に用いてもよいこともまた理解されるべきである。例示的な計算デバイスには、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、パーソナルデータアシスタント(「PDA」)、例えばBLACKBERRY(登録商標)ブランドデバイス、セルラーデバイス、タブレットコンピュータ、サーバー等が含まれる。一般的に、計算デバイスは、複数の命令(例えばソフトウェアのプログラム)を実行可能なプロセッサを含む。
【0164】
計算デバイスは、メモリへのアクセスを有する。メモリは、コンピュータ読み取り可能媒体であり、そして例えば計算デバイスとともにローカルに位置するか、またはネットワークを通じて計算デバイスにアクセス可能である、単一の記憶デバイスまたは多数の記憶デバイスを含むことも可能である。コンピュータ読み取り可能媒体は、計算デバイスによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体であることも可能であり、そしてこれには、揮発性媒体および不揮発性媒体の両方が含まれる。さらに、コンピュータ読み取り可能媒体は、取り外し可能な媒体および取り外し不能な媒体の一方または両方であることも可能である。例えば、そして限定なしに、コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ記憶媒体を含むことも可能である。例示的なコンピュータ記憶媒体には、限定されるわけではないが、計算デバイスによってアクセス可能な、そして計算デバイスのプロセッサによって実行可能な複数の命令を保存するために使用可能な、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは任意の他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学ディスク記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶または他の磁気記憶デバイス、あるいは任意の他の媒体が含まれる。
【0165】
本開示の態様にしたがって、ソフトウェアには、計算デバイスのプロセッサによって実行された際、本明細書に開示する方法の1またはそれより多い工程を実行可能な命令が含まれてもよい。命令のいくつかは、他の機械の操作を制御するシグナルを生じるように適応していてもよく、そしてしたがって、これらの制御シグナルを通じて作動して、コンピュータ自体から遠く離れて素材を変換することも可能である。これらの説明および表現は、データプロセシングの当業者によって用いられる手段であり、例えばその研究の内容を他の当業者に最も有効に伝達する。
【0166】
複数の命令はまた、一般的には所望の結果を導く工程の自己矛盾しない順序であると想定されるアルゴリズムもまた含んでもよい。これらの工程は、物理量の物理的処理を必要とするものである。必ずしもではないが、通常、これらの量は、記憶し、トランスファーし、変換し、組み合わせ、比較し、そして別の方式で処理することが可能な、電気的または磁気的パルスまたはシグナルの形を取る。時に、原理的には一般の使用のため、これら
のシグナルを、こうしたシグナルが具体化されるかまたは表される物理的項目または明示に関連して、値、文字、ディスプレイデータ、数字等で称することが好適であることがわかる。しかし、これらおよび類似の用語はすべて、適切な物理量と関連付けられるものとし、そして本明細書において、単にこれらの量に適用される好適な標識として用いられることを心に留めるべきである。本開示のいくつかの態様にしたがって、本明細書に開示する1またはそれより多いマーカーの決定したレベル、および適切な参照の間の比較を実行するためのアルゴリズムは、命令を遂行することによって具体化され、そして実行される。結果は、パラメトリック診断生データの出力として、あるいは絶対レベルまたは相対レベルとして提供されてもよい。本明細書に開示する系の多様な態様にしたがって、「診断」は、参照または閾値に対する、計算された「レベル」の前記比較に基づいて、本明細書に開示する系の計算デバイスによって提供可能である。例えば、系の計算デバイスは、特定の診断の指標である単語、記号、または数値の形で、指標を提供することも可能である。
【0167】
計算デバイスはまた、出力デバイスにアクセスを有することも可能である。例示的な出力デバイスには、例えば、ファックス装置、ディスプレイ、プリンタ、およびファイルが含まれる。本開示のいくつかの態様にしたがって、計算デバイスは、本明細書に開示する方法の1またはそれより多い工程を実行することも可能であり、そしてその後、出力デバイスを通じて、方法の結果、徴候、比、または他の要因に関連する出力を提供することも可能である。
【0168】
最後に、本発明は、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定するための検出剤(または少なくとも1つのマーカーのレベルを測定する場合、複数の剤)、参照標準、ならびに前記方法を実行するための使用説明書を含む、本発明の方法を実行するために適応したキットに関する。
【0169】
用語「キット」は、本明細書において、好ましくは別個にまたは単一の容器内に提供されている、前述の構成要素のコレクションを指す。容器はまた、本発明の方法を実行するための使用説明書も含む。これらの使用説明書はマニュアルの形であってもよく、または本発明の方法において言及するような比較を実行することが可能であり、そしてコンピュータまたはデータプロセシングデバイス上で実施された際、適宜、診断を確立することが可能な、コンピュータプログラムコードによって提供されてもよい。コンピュータプログラムコードは、データ記憶媒体またはデバイス、例えば光学記憶媒体(例えばコンパクトディスク)上に、あるいはコンピュータまたはデータプロセシングデバイス上に直接、提供されてもよい。さらに、キットは、本明細書において上に定義するような、参照に関する少なくとも1つの標準、すなわち参照レベルに相当する、本明細書に言及するようなバイオマーカーのあらかじめ定義されたレベルを含む溶液を含むものとする。
【0170】
いくつかの態様において、本明細書開示のキットには、開示する方法を実施するための、少なくとも1つの構成要素または構成要素のパッケージングされた組み合わせが含まれる。「パッケージングされた組み合わせ」によって、キットが、1またはそれより多い構成要素、例えば本明細書に開示するような、プローブ(例えば抗体)、対照、緩衝剤、試薬(例えばコンジュゲートおよび/または基質)、使用説明書の組み合わせ等を含有する単一のパッケージを提供することを意味する。単一容器を含有するキットはまた、「パッケージングされた組み合わせ」の定義内に含まれる。いくつかの態様において、キットには、少なくとも1つのプローブ、例えば抗体(本明細書に開示するようなバイオマーカーのエピトープに対する特異的アフィニティを有する)が含まれる。例えば、キットには、フルオロフォアで標識された抗体、または融合タンパク質のメンバーである抗体が含まれてもよい。キットにおいて、プローブは固定されていてもよく、そして特定のコンホメーションで固定されていてもよい。例えば、固定されたプローブは、キット中に提供されて、ターゲットタンパク質に特異的に結合し、試料におけるターゲットタンパク質を検出し、そして/または試料からターゲットタンパク質を除去することも可能である。
【0171】
いくつかの態様にしたがって、キットには、少なくとも1つの容器中の、固定されていてもよい少なくとも1つのプローブが含まれる。キットにはまた、1またはそれより多い容器中の、場合によって固定されている多数のプローブも含まれてもよい。例えば、多数のプローブが、単一の容器中に、または別個の容器中に存在してもよく、例えば、各容器が単一のプローブを含有してもよい。
【0172】
いくつかの態様において、キットには1またはそれより多い固定されないプローブ、および固定されたプローブを含むまたは含まない1またはそれより多い固体支持体が含まれてもよい。いくつかのこうした態様は、1またはそれより多いプローブを固体支持体に固定するために必要な試薬およびサプライのいくつかまたはすべて、あるいは試料内の特定のタンパク質に、固定されたプローブを結合させるために必要な試薬およびサプライのいくつかまたはすべてを含んでもよい。
【0173】
特定の態様において、単一のプローブ(同じプローブの多数のコピーを含む)を、単一の固体支持体上に固定し、そして単一の容器中に提供してもよい。他の態様において、各々、異なるターゲットタンパク質または単一のターゲットタンパク質の異なる型(例えば特定のエピトープ)に特異的な、2またはそれより多いプローブを、単一の容器中に提供してもよい。いくつかのこうした態様において、固定されたプローブを、多数の異なる容器中に(例えば単回使用型で)提供してもよいし、または多数の固定されたプローブを、多数の異なる容器中に提供してもよい。さらなる態様において、プローブを多数の異なる型の固体支持体上に固定してもよい。固定されたプローブ(単数または複数)および容器(単数または複数)の任意の組み合わせが、本明細書に開示するキットに意図され、そしてその任意の組み合わせを選択して、望ましい使用に適したキットを達成することも可能である。
【0174】
キットの容器は、例えばプローブ(例えば抗体)、対照、緩衝剤、および試薬(例えばコンジュゲートおよび/または基質)を含む、本明細書に開示する1またはそれより多い構成要素をパッケージングおよび/または含有するのに適した任意の容器であってもよい。適切な材料には、限定されるわけではないが、ガラス、プラスチック、ボール紙または他の紙製品、木材、金属、およびその任意の合金が含まれる。いくつかの態様において、容器は、固定されたプローブ(単数または複数)を完全に包み込んでもよいし、あるいは埃、油等による混入、および光への曝露を最小限にするためにプローブを単に覆ってもよい。いくつかのさらなる態様において、キットは単一の容器または多数の容器を含んでもよく、そして多数の容器が存在する場合、各容器は、すべての他の容器と同じであってもよく、他のものと異なってもよく、またはすべてではないがいくつかの他の容器とは異なってもよい。
【0175】
本発明の好ましい態様
以下において、本発明の好ましい態様を提供する。本明細書において上記に、そして請求項に提供する定義および説明を準用する。
【0176】
1. 心不全療法の強化にふさわしい患者を同定するための方法であって
(a)心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者由来の試料において、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定し、そして
(b)(a)で測定したマーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)を、参照レベル(単数または複数)に比較する
工程を含む、前記方法。
【0177】
2. 心不全療法の強化にふさわしいまたはふさわしくない患者を同定する工程(c)をさらに含む、態様1記載の方法。
3. 患者が、心不全療法の強化の指標であるBNP型ペプチドに関して参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルを示す、態様1または2の方法。
【0178】
4. i)少なくとも1つのマーカーが、クレアチニン、尿素、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択され、そして少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)よりも高い、患者由来の試料における前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)が、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、そして/または少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)よりも低い、患者由来の試料における前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)が、患者が心不全療法の強化にふさわしくないことを示し、そして/または
ii)少なくとも1つのマーカーが、ナトリウム、ヘモグロビン、ヘマトクリット、およびIGFBP−7からなる群より選択され、そして少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)よりも低い、患者由来の試料における前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)が、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、そして/または少なくとも1つのマーカーに関する参照レベル(単数または複数)よりも高い、患者由来の試料における前記マーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)が、患者が心不全療法の強化にふさわしくないことを示す
態様1〜4のいずれか一項記載の方法。
【0179】
5. 心不全療法の強化にふさわしい患者患者を同定するための方法であって
(a)心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者由来の試料において、BNP型ペプチドのレベルを測定し;
(b)患者由来の試料において、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定し、
(c)(a)で測定したBNP型ペプチドのレベルを、参照レベル(単数または複数)
に比較し、そして
(d)(b)で測定した少なくとも1つのマーカーのレベル(単数または複数)を、参照レベル(単数または複数)に比較する
工程を含む、前記方法。
【0180】
6. i)少なくとも1つのマーカーが、クレアチニン、尿素、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択され、そして
(a)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、およびBNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、
(b)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、
(c)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、そして/または
(d)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしくないことを示し、そして/または
ii)少なくとも1つのマーカーが、ナトリウム、ヘモグロビン、ヘマトクリット、およびIGFBP−7からなる群より選択され、そして
(a)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、
(b)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも低い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、
(c)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより高い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしいことを示し、そして/または
(d)少なくとも1つのマーカーに関する参照レベルよりも高い、患者由来の試料における前記マーカーのレベル、および前記BNP型ペプチドに関する参照レベルより低い前記BNP型ペプチドのレベルが、患者が心不全療法の強化にふさわしくないことを示す態様5記載の方法。
【0181】
7. BNP型ペプチドガイド心不全療法を最適化するための方法であって
(a)心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド療法を受けている患者由来の試料において、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP7(インスリン増殖因子結合タンパク質7)、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーのレベルを測定し、そして
(b)(a)で測定したマーカー(単数または複数)のレベル(単数または複数)を、参照レベル(単数または複数)に比較し、それによって、BNP型ペプチドガイド療法を最適化する
工程を含む、前記方法。
【0182】
8. 患者がヒトである、態様1〜7のいずれか一項記載の方法。
9. 患者がACC/AHA分類にしたがって病期BまたはCと分類される心不全を有し、そして/または患者がNYHA分類のクラスIIまたはIIIにしたがった心不全を有する、態様1〜8のいずれか一項記載の方法。
【0183】
10. 試料が血液、血清または血漿試料である、態様1〜9のいずれか記載の方法。
11. 心不全療法が医学的心不全療法であり、特に心不全療法が利尿剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断剤、ベータ遮断剤およびアルドステロン・アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1つの薬剤の投与を含む、態様1〜10のいずれか一項記載の方法。
【0184】
12. 心不全療法が、ベータ遮断剤およびACE阻害剤の組み合わせ投与を含む、態様11の方法。
13. 心不全療法の強化が、先に投与した薬剤の投薬量の増加、さらなる薬剤(単数または複数)の投与、特に先に投与した薬剤とは異なる作用様式を有するさらなる薬剤(単数または複数)の投与、デバイス療法、ライフスタイル変化、およびその組み合わせを含む、態様1〜12のいずれか一項記載の方法。
【0185】
14. 心不全療法の強化にふさわしい患者を同定するため、患者が心臓代償不全、入院、および/または死を経験するリスクを予測するため、あるいはBNP型ペプチドガイド心不全療法を最適化するための、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者の試料における、i)クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、IGFBP7、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの使用、ならびに/あるいはii)前記の少なくとも1つのマーカーに関する少なくとも1つの検出剤の使用。
【0186】
15. 心不全療法の強化にふさわしい患者を同定するため、あるいは患者が心臓代償不全、入院または死を経験するリスクを予測するための、心不全を有し、そしてBNP型ペプチドガイド心不全療法を受けている患者の試料における、クレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、IGFBP7、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーと組み合わせたBNP型ペプチドの使用、ならびに/あるいはクレアチニン、尿素、ナトリウム、グルコース、HbA1c(糖化ヘモグロビン)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、IGFBP7、CRP(C反応性タンパク質、特に高感度CRP)、シスタチンC、IL−6(インターロイキン6)、プレアルブミン、sFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ−1)、尿酸、GDF−15(増殖分化因子15)、ガレクチン−3(Gal−3)、エンドスタチン、ミメカン、sST2(可溶性ST2)、およびオステオポンチンからなる群より選択されるマーカー群より選択されるマーカーに関する少なくとも1つの検出剤と組み合わせた、BNP型ペプチドに特異的に結合する検出剤の使用。
【0187】
上記に言及されるすべての参考文献は、その全開示内容、ならびに上記説明に明らかに言及されるその特定の開示内容に関して、本明細書に援用される。
【実施例】
【0188】
本発明はここで、本発明の範囲を制限するかまたは限定するよう意図されない、以下の実施例によって例示されるであろう。
実施例1:患者
HF(NYHAクラスII〜IV収縮期HF(LVEF≦45%))を患う499人の患者を、NT−プロBNPターゲットまたは通常のケア(Pfisterer M.ら JAMA. 2009;301:383−92)にしたがってガイドした。全体として、NT−プロBNPレベルが、以前は優れたアウトカムのカットオフ値であるとされた<1000pg/mlである患者は、これらのレベルまで減少させることが不可能であったNT−プロBNPレベルを持つ患者よりも有意に優れたアウトカムを有した。しかし、<1000pg/mLの低いNT−プロBNPレベルを持つ患者のいくらかはリスクがあるままであった。さらに、1000pg/mLをわずかに超えるNT−プロBNPレベルを持ついくらかの患者は予期せぬほど高いリスクであった。例えば療法の6ヶ月後に、マーカーおよび臨床パラメータレベルをさらに測定することによって、優れた正確性で、このリスクを同定することも可能であった。さらに、これらのさらなるマーカーおよびパラメータはまた、より高いリスクを持つ群(すなわち6ヶ月後のNT−プロBNPレベルが>1000pg/ml)における潜在的な療法ガイダンスに関するさらなる重要な情報も提供した。
【0189】
BNPおよび/またはNT−プロBNPレベルは、1つまたはいくつかのマーカーおよび/または臨床パラメータとともに、数週ごとから最長6ヶ月ごとの規則的な間隔で測定される。医学的療法の強化が臨床的に必要であり、ならびに/あるいはBNP/NT−プロBNPおよび/またはこれらのさらなるマーカーおよび/またはパラメータの1つによって示される場合、最適/最大の医学療法が達成されるか、それぞれ≦100〜200pg/mLおよび≦1,000pg/mLのBNP/NT−プロBNPターゲットゴールが達成され、そしてターゲットゴール後、または被験体が入院を必要とするまで、これらの被験体は、追跡調査のために受診する。
【0190】
表1は、さらなるマーカーおよび臨床パラメータに関するカットオフ値を示す(ROC最適化カットオフおよびリスク十分位数の変曲点に基づく;どちらの方法も、残ったリスクの同定に関して、類似のカットオフを与える;どちらも利用可能である場合、より低い方のカットオフを適用するものとする):
表1:
【0191】
【表2】
【0192】
表2は、NT−プロBNPにしたがってガイドされた患者におけるバイオマーカーおよび臨床パラメータのワルドスコア、p値およびハザード比(HR、95%信頼区間)を示す。ワルドスコアおよびハザード比は、BNP型ペプチドでガイドされた患者における代償不全、入院、または死の残りのリスクを示す。
【0193】
【表3】
【0194】
100〜200pg/mLおよび>1,000pg/mLのBNP/NT−プロBNP濃度、ならびに上記表中のカットオフより高い(またはヘモグロビン、ヘマトクリット、IGFBP−7、およびナトリウムに関しては低い)マーカー/パラメータレベルを持つすべての患者は、それぞれ、症状状態、知覚される安定性に関わらず、そして「最適な」医学的プログラムの存在に関する注意深い再評価を伴って、薬物療法および/またはデバ
イス療法強化に関して考慮される。さらに、それぞれ、<100〜200pg/mLおよび<1,000pg/mLのBNP/NT−プロBNP濃度、ならびに上に示すようなカットオフ値を超えたマーカー/パラメータレベルを、薬物療法および/またはデバイス療法強化に関して考慮する。こうしたガイドされる組み合わせマーカーガイドHF療法にしたがったHF患者の管理は、標準治療と同じであり、そして診療指針に推奨されるような、すべての薬剤、デバイス、および治療オプションを含む。療法強化は、先に処方された薬剤の用量増加または異なる作用様式の薬剤添加、あるいは診療指針にしたがい、そして最適な臨床診療と一致するデバイス療法、運動、食事療法、またはその組み合わせからなる。薬剤力価決定または薬剤選択のための特定のアルゴリズムは用いない。ループ利尿剤は、NT−プロBNP濃度を低下させることが可能であるが、慢性HFの関連において、こうした剤の死亡率利益がないため、NT−プロBNPが上昇した非鬱血患者に関しては、これらは典型的には、「第一選択」療法とは見なされない。
【0195】
薬物療法調節がターゲット値の達成を生じたら、または被験体症状が安定したら、被験体は、「組み合わせマーカーターゲティング最適薬剤措置」にあると見なされ、そしてしたがって、数週間の追跡調査ループから除かれ、そして次の計画された来院(規則的な監視間隔)で診察される。さらなる来院中のまたは患者密着型(near patient)組み合わせマーカー測定(ポイントオブケアアッセイを用いる)中の組み合わせマーカーのレベルを用いて、HF療法をさらにガイドしてもよく、すなわち類似の来院および上述のようなBNP/NT−プロBNP測定ループで療法強度をさらに増加させるかまたは減少させてもよい。
【0196】
被験体が組み合わせマーカー/パラメータ・ターゲットゴールを満たさず、明らかな療法限界に到達する場合、被験体は数週間の追跡調査ループから除かれ、そして次の計画された来院で診察される。この被験体は、計画された来院時に、組み合わせマーカーのレベル、ならびに薬物療法のさらなる力価決定および治療オプションのさらなる調節の機会に関して再評価される。さらなるマーカーおよびパラメータにしたがったさらなる層別化の本発明はまた、より高いNT−プロBNPターゲット、例えば3000pg/mLを持つ患者にも利益を提供する。特に、すべての患者が≦1,000pg/mLのNT−プロBNPターゲットに到達できるわけではないため、より高いターゲットカットオフを用いることが可能であり、そしてこれらのレベルでは、さらなるマーカーおよび臨床パラメータはなお、さらなるリスク層別化、監視および療法指針利益を提供可能である。
【0197】
先行技術および先のバイオマーカーガイドHFアプローチに比較して、本発明は、BNP/NT−プロBNPターゲット範囲を超えたさらなるマーカーおよびパラメータターゲットレベルを提供する。本発明はまた、BNP/NT−プロBNPガイドHF療法から最適には利益を得ない患者の同定も改善する。
【0198】
さらに、マーカーのレベル、療法修飾、およびアウトカムの関連は、上記の異なるパラメータによって反映される残ったリスクを、利用可能な療法を用いて修飾可能であることを示す。この関連は、多様なマーカー組み合わせを適用して、NT−プロBNPを超えて、心不全療法をガイドすることが可能であることを示す。これらの療法関連の1つの例を以下に示す:
ベータ遮断剤をガイドするNT−プロBNPおよびクレアチニンの組み合わせ:6ヶ月でのNT−プロBNPおよび高クレアチニン濃度でガイドされる患者は、高ベータ遮断剤用量またはベータ遮断剤用量増加で優れたアウトカムを経験した。
【0199】
実施例2:アッセイ
Rocheの電気化学発光ELISAサンドイッチ試験ElecsysプロBNP II STAT(短時間回転(Short Turn Around Time))アッセ
イを用いて、NT−プロBNPを測定した。試験は、プロBNP(1〜108)のN末端部分(1〜76)に位置するエピトープを認識する2つのモノクローナル抗体を使用する。
【0200】
電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA、Roche Diagnostics)によって、IL−6(インターロイキン6)を測定した。Roche DiagnosticsのCobas E601アナライザーを用いて試験を行った。試験は、ビオチン化モノクローナルIL−6特異的抗体との第一のインキュベーション、ならびにルテニウム複合体およびストレプトアビジン・コーティング微小粒子で標識されたモノクローナルIL−6特異的抗体との第二のインキュベーションに基づく。
【0201】
Roche Diagnosticsの粒子増進免疫比濁アッセイ(Tina−quant心臓C反応性タンパク質(ラテックス)高感度)を用いて、高感度(hs)CRPを決定した。この試験において、ラテックス微小粒子とカップリングした抗CRP抗体は、試料中の抗原と反応して、抗原/抗体複合体を形成する。凝集後、複合体を比濁的に測定する。
【0202】
血清および血漿試料中のGDF−15濃度を決定するため、R&D Systemsのポリクローナル、GDF−15アフィニティクロマトグラフィ精製ヤギ抗ヒトGDF−15 IgG抗体(AF957)を用いて、Elecsysプロトタイプ試験を使用した。各実験において、R&D Systemsの組換えヒトGDF−15(957−GD/CF)で、標準曲線を生成した。新規バッチまたは組換えGDF−15タンパク質を用いた結果を、標準血漿試料で試験し、そして10%を超えるいかなる偏差も、このアッセイに関する調節因子を導入することによって修正した。同じ患者由来の血清および血漿試料におけるGDF−15測定は、最終的な希釈因子に関する修正後、実質的に同一の結果を生じた。アッセイの検出限界は200pg/mlであった。
【0203】
ヒト血清または血漿におけるIGFBP7の検出のため、サンドイッチELISAを用いた。抗原の捕捉および検出のため、R&D Systemsの抗IGFBP7ポリクローナル抗体(カタログ番号:AF1334)のアリコットを、それぞれ、ビオチンおよびジゴキシゲニンとコンジュゲート化した。
【0204】
ストレプトアビジン・コーティング96ウェルマイクロタイタープレートを100piビオチン化抗IGFBP7ポリクローナル抗体と、1xPBS溶液中、1pg/mlで60分間インキュベーションした。インキュベーション後、1xPBS+0.02%Tween−20で3回洗浄し、PBS+1%BSA(ウシ血清アルブミン)でブロッキングし、そして次いで再び、1xPBS+0.02%Tween−20で3回洗浄した。次いで、標準抗原としての組換えIGFBP7の連続希釈、あるいは患者または対照個体由来の、それぞれ希釈血清または血漿試料(1:50)とウェルを、1.5時間インキュベーションした。IGFBP7の結合後、プレートを1xPBS+0.02%Tween−20で3回洗浄した。結合したIGFBP7の特異的検出のため、ウェルを100μlのジゴキシゲニン化抗IGFBP7ポリクローナル抗体と、1xPBS+1%BSA中、1μg/mlで、60分間インキュベーションした。その後、プレートを3回洗浄して、未結合抗体を除去した。次の工程で、ウェルを75mU/ml抗ジゴキシゲニン−PODコンジュゲート(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ・マンハイム、カタログ番号1633716)と、1xPBS+1%BSA中、60分間インキュベーションした。続いて、プレートを同じ緩衝液で6回洗浄した。抗原−抗体複合体を検出するため、ウェルを100μl ABTS溶液(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ・マンハイム、カタログ番号11685767)とインキュベーションし、そして15分後、ELISAリーダーを用いて、405および492nmで光学密度(OD)を測定した。
【0205】
BGMガレクチン−3アッセイ(BG Medicine、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いることによって、Gal−3を測定した。マイクロタイタープレートプラットフォーム上で、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、血清またはEDTA血漿中で、ガレクチン−3を定量的に測定する。アッセイは、ガレクチン−3に対する2つのモノクローナル抗体を利用する。1つのラット・モノクローナル抗マウス・ガレクチン−3抗体をマイクロタイタープレート中のウェル表面上にコーティングし、そしてこれを試料中のガレクチン−3分子に結合する捕捉抗体として利用し、一方、他方のマウスモノクローナル抗ヒトガレクチン−3抗体を溶液中に提供して、そしてこれは捕捉抗体に結合したガレクチン−3分子を検出するためのトレーサー抗体として機能する。
【0206】
ヒト血清または血漿におけるミメカンの検出のため、サンドイッチELISAを用いた。抗原の捕捉および検出のため、R&D Systemsの抗ミメカン・ポリクローナル抗体(カタログ番号:AF 2660)のアリコットを、それぞれ、ビオチンおよびジゴキシゲニンにコンジュゲート化する。ストレプトアビジン・コーティング96ウェルマイクロタイタープレートを100μlビオチン化抗ミメカン・ポリクローナル抗体と、1xPBS溶液中、0.2[mu]g/mlで60分間インキュベーションする。インキュベーション後、1xPBS+0.02%Tween−20で3回洗浄し、PBS+2%BSA(ウシ血清アルブミン)で45分間ブロッキングし、そして次いで再び、1xPBS+0.02%Tween−20で3回洗浄する。次いで、100μlの標準抗原としての組換えミメカンの連続希釈、あるいは患者または対照個体由来の、それぞれ希釈血清または血漿試料(1xPBS+1%BSA中、1:5)のいずれかとウェルを、1時間インキュベーションする。ミメカンの結合後、プレートを1xPBS+0.02%Tween−20で3回洗浄する。結合したミメカンの特異的検出のため、ウェルを100μlのジゴキシゲニン化抗ミメカンポリクローナル抗体と、1xPBS+1%BSA中、0.2μg/mlで、45分間インキュベーションする。その後、プレートを3回洗浄して、未結合抗体を除去する。次の工程で、ウェルを75mU/ml抗ジゴキシゲニン−PODコンジュゲート(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ・マンハイム、カタログ番号1633716)と、1xPBS+1%BSA中、30分間インキュベーションする。続いて、プレートを上記と同じ洗浄緩衝液で6回洗浄する。抗原−抗体複合体を検出するため、ウェルを100μl ABTS溶液(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ・マンハイム、カタログ番号11685767)とインキュベーションし、そして15分後、ELISAリーダーを用いて、405および492nmで光学密度(OD)を測定する。
【0207】
ヒト血清または血漿におけるエンドスタチンの測定のため、商業的に入手可能なサンドイッチELISA(Quantikineヒト・エンドスタチン・イムノアッセイ、カタログ番号DNSTO、R&D Systems)を用いた。製造者によって提供される指示にしたがって、測定を実行する。
【0208】
Critical Diagnostics(米国カリフォルニア州サンディエゴ)のPresage
TM ST2アッセイを用いることによって、sST2を決定した。該アッセイは、血清または血漿中のST2の測定のための96ウェルプレート形式での定量的サンドイッチ・モノクローナルELISAである。希釈血漿を抗ST2抗体コーティングプレート中の適切なウェル内に装填し、そして規定の時間に渡ってインキュベーションした。試薬をプレートから洗浄し、そしてさらなる試薬を添加し、そして続いて洗い流す、一連の工程後、比色試薬を添加することによって、分析物を最終的に検出し、そして生じたシグナルを450nmで分光的に測定した。
【0209】
WO2011/012268に記載されるように、バイオマーカー、ミメカンを測定した。
sFlt1に特異的な2つの抗体を使用するELECSYSイムノアッセイを用いて、sFlt1を試験した。ELECSYS 2010ならびにcobra e411およびcobra e601を含む異なるRocheアナライザーを用いて、試験を自動的に行ってもよい。
【0210】
酵素比色法を適用することによって、尿酸を決定した。この酵素反応において、過酸化物は、ペルオキシダーゼ(POD)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)、および4−アミノフェナゾンの存在下で反応して、キノン−ジイミン色素を形成する。形成された赤色の強度は尿酸濃度に比例し、そしてこれを分光的に測定する。
【0211】
Roche/Hitachi cobas c系上で、ヒト血清、血漿および尿における尿素/尿素窒素の定量的測定のためのin vitro試験によって、尿素を測定した。cobas c 311およびcobas c 501/502を含む異なるアナライザーを用いて、自動的に試験を行うことも可能である。アッセイは、ウレアーゼおよびグルタミン酸デヒドロゲナーゼを用いる動力学アッセイである。尿素をウレアーゼによって加水分解して、アンモニウムおよび炭酸塩を形成する。第二の反応において、2−オキソグルタル酸塩は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)および補酵素NADHの存在下でアンモニウムと反応して、L−グルタミン酸を産生する。この反応において、加水分解される尿素の各モルに関して、2モルのNADHがNAD
+に酸化される。NADH濃度の減少速度は、標本中の尿素濃度に正比例し、そしてこれを分光的に測定する。
【0212】
Roche/Hitachi自動アナライザー用に適応させた、速度ブランク化(rateblanked)および代償Jaffe法によって、血漿試料中のクレアチニンを測定した(Foster−Swansonら, 6つの米国実験室におけるBM/Hitachi系上での速度ブランク化クレアチニン/Jaffe法の参照間隔研究 Clin Chem 1994; Abstract No.361もまた参照されたい)。アッセイは、ヒト血清、血漿および尿中のクレアチニンの定量的決定のための速度ブランク化および代償を用いた動力学in vitro試験に基づく。水酸化ナトリウムおよびピクリン酸を試料に添加して、クレアチニン−ピクリン酸複合体の形成を開始した。アルカリ溶液中で、クレアチニンは、ピクリン酸塩と黄橙色の複合体を形成する。クレアチニン濃度に正比例する色強度を分光的に測定した。
【0213】
Roche/R−Biopharmの酵素アッセイを用いて血漿試料中のD−グルコースを測定した(Schmidt, Die enzymatische Bestimmung von Glucose and Fructose nebeneinander, Klinische Wochenzeitschrift, 1961, 39, 1244−1247もまた参照されたい)。マーカーを、酵素ヘキソキナーゼ(HK)およびアデノシン−5’−三リン酸(ATP)の存在下で、D−グルコース−6−リン酸にリン酸化し、アデノシン−5’−二リン酸(ATP)を同時に形成した。酵素グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼの存在下で、D−グルコース−6−リン酸は、NADPによって、D−グルコン酸リン酸に酸化され、還元ニコチンアミド−アデニン二ヌクレオチドリン酸(NADPH)の形成を伴った。この反応において形成されるNADPHの量は、D−グルコースの量に対して化学量論的である。光吸収によってNADPHを測定した。
【0214】
溶液中のイオンの測定のため、特定の膜材料が電位(起電力、EMF)を発展させるユニークな特性を利用するイオン選択的電極(ISE)を適用することによって、血漿標本
を用いたイオン選択的電極により、血漿ナトリウムを測定した(COBAS Integra 400;Roche Diagnostics GmbH、ドイツ・マンハイム、アッセイ:「Gen.2のためのISE間接的Na−K−Cl」)。
【0215】
Reflotron(登録商標)ヘモグロビンアッセイを用いて、ヘモグロビン(Hb)を測定した。試験は、ヘキサシアノ鉄カリウム(III)による、ヘモグロビンのメトヘモグロビンへの酸化(Fe2+からFe3+)に基づく。ヘモグロビンレベルは、色強度に比例し、そしてこれを、567nmの波長および37℃で測定した。
【0216】
Roche/Hitachi cobas c系上のHbA1cの定量的決定を可能にするRoche in vitro試験を用いることによって、HbA1c(糖化ヘモグロビン、グリコヘモグロビン)を測定した(アッセイ:「Tina−quantヘモグロビンA1c Gen.3」、Roche Diagnostics GmbH、ドイツ・マンハイム)。
【0217】
Roche/Hitachi cobas c系(ACN 710、ACN 8710)上のヒト試料中のプレアルブミンの定量的決定を可能にするRoche in vitro試験を用いることによって、プレアルブミンを測定した。アッセイは免疫比濁アッセイである。ヒト・プレアルブミンは特異的抗血清と沈殿物を形成し、これを比濁的に決定する。
【0218】
Roche自動化臨床的化学アナライザー上、ヒト血清および血漿中のシスタチンCの定量的in vitro決定のための免疫比濁アッセイを用いることによって、シスタチンCを測定した(アッセイ: Tina−quantシスタチンC、Roche Diagnostics GmbH、ドイツ・マンハイム)。このアッセイにおいて、ヒト・シスタチンCは、抗シスタチンC抗体でコーティングしたラテックス粒子と凝集する。凝集物を、546nmで比濁的に測定する。
【0219】
結論
NT−プロBNPまたはBNPと他のマーカーおよび臨床的パラメータの組み合わせを、監視目的のため、そしてHF患者(安定化後の慢性または急性HF)における、好ましくはHFが損なわれた収縮期機能のためである患者において、療法を調節し、そして力価決定する、現在の標準ケアに加えた療法に関するガイドとして用いることも可能である。これらのマーカーおよびパラメータは、好ましくは、クレアチニン、eGFR(クレアチニンレベルより計算)、BUN、グルコース、HbA1c、hsCRP、シスタチンC、IL−6、プレアルブミン、sFLt−1、尿酸、GFD−15、sST2、ガレクチン−3、エンドスタチン、ミメカン、IGFBP−7、オステオポンチン、ナトリウム、ヘモグロビン、およびヘマトクリット、ならびに心拍数およびQRS期間である。特に、現在の標準ケアとともに、NT−プロBNPまたはBNPにこれらの測定値を添加すると、NT−プロBNPによってすでにガイドされているが、より強化された療法およびより緊密な観察が必要でありうるHF患者をさらにリスク層別化することが可能である。したがって、本発明は、他のマーカーおよび/または臨床パラメータとナトリウム利尿ペプチドの組み合わせを考慮することによって、NT−プロBNPを超えて、心不全療法ガイダンスを最適化する。