(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の露光工程における前記第1の感光層での前記所定の領域の端部と、前記第2の露光工程において前記第1の感光層が遮光される領域の端部との間隔が、前記第1の露光工程と前記第2の露光工程との間での位置合わせのずれ量よりも大きい、請求項5または6に記載の構造体の製造方法。
基板の一方の表面に形成されたエネルギー発生素子と、前記基板の前記一方の表面に設けられた吐出口形成部材とを有し、前記吐出口形成部材に少なくとも吐出口と流路とが形成されている液体吐出ヘッドの製造方法であって、
請求項3または4に記載の構造体の製造方法を実施して前記現像工程を経た前記第1の感光層を前記基板と前記吐出口形成部材との間の密着性を向上させる密着層とし、
前記開口は、前記基板を貫通して前記流路に液体を供給する液体供給路として形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
基板の一方の表面に形成されたエネルギー発生素子と、前記基板の前記一方の表面に設けられた吐出口形成部材とを有し、前記吐出口形成部材に少なくとも吐出口と流路とが形成されている液体吐出ヘッドの製造方法であって、
請求項12に記載の構造体の製造方法を実施して前記現像工程を経た前記第1の感光層を前記基板と前記吐出口形成部材との間の密着性を向上させる密着層とし、前記現像工程を経た前記第2の感光層を前記吐出口形成部材の一部とし、
前記開口は、前記基板を貫通して前記流路に液体を供給する液体供給路として形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する各実施形態には技術的に好ましい様々な限定が付されている。しかしながら、本発明の技術的思想に沿うものであれば、本発明は、本明細書における実施形態や製造例、その他の具体的方法に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一の機能を有する構成に対して図面において同一の参照符号を付与しており、重複する部分についての説明は省略することがある。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態での構造体の製造方法を説明する図であって、
図1(a)は構造体10の平面図である。
図1(b)〜
図1(h)は、
図1(a)のA−A線での断面図であって、本実施形態での製造過程を順を追って示している。特に
図1(h)は、最終的に形成される構造体10の断面を示している。
図1(i)〜図(l)は、後述する支持体14上に異物18が存在する場合の製造過程を順を追って示している。本実施形態では、開口12が形成された基板11の一方の表面の上に、感光性樹脂からなるパターンを形成して構造体10としている。構造体10では、
図1(a)及び
図1(h)に示すように、基板11において開口12が設けられている位置において開口12を囲みかつこの開口12よりも大きい開口20が形成されるように、感光性樹脂がパターニングされている。開口20においては、基板11の表面が露出している。開口12は、例えば、基板11を貫通する貫通孔として形成される。
【0011】
図1(b)は、基板11の断面を示している。基板11は、例えば、単結晶シリコンやガラス、セラミックなどによって構成することができる。開口12の平面形状は、例えば円形や四角形であってよい。図示したものでは開口12の平面形状は略正方形である。開口12における側壁と基板11の表面とがなす角は垂直であってもよく、また開口12はテーパー形状の断面形状を有していてもよい。基板11の両方の表面や開口12の側壁には不図示の保護膜が形成されていてもよい。なお、本発明は、基板11に形成される開口12の形状などによって限定されるものではない。
【0012】
図1(c)に示すように、基板11とは別個に、第1の支持体である支持体14上に形成されたドライフィルム13を用意する。ドライフィルム13は、支持体14の一方の表面に支持され感光性を有する第1の感光層であり、通常、感光性樹脂によって構成される。一例としてドライフィルム13は、例えばネガ型の感光性樹脂からなる。ネガ型の感光性樹脂であるドライフィルム13は、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ウレタン樹脂などを含むネガ型の感光性樹脂組成物からなるものが望ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型やクレゾールノボラック型、脂環式のエポキシ樹脂などを用いることができ、アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレートなどを用いることができる。ウレタン樹脂としては各種のポリウレタンが挙げられる。ネガ型の感光性樹脂に用いる溶媒として、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジグライム、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、及びキシレン等からなるグループから選択された1つ以上の溶媒を使用することができる。この溶媒には、必要に応じて添加剤等を適宜添加してもよい。ネガ型の感光性樹脂を溶媒に溶かして支持体14に塗布し、溶媒を除去することによってドライフィルム13が支持体14上に形成される。ネガ型の感光性樹脂組成物として、例えば、市販されている日本化薬社製「SU−8シリーズ」、「KMPR(登録商標)−1000」、東京応化工業製「TMMR(登録商標) S2000」、「TMMF(登録商標) S2000」なども用いることができる。なお、後述するようにポジ型の感光性樹脂を用いることも可能である。ポジ型の感光性樹脂としては、例えば、市販されている東京応化工業製「PMER(登録商標)」等の感光性樹脂組成物を用いることができる。支持体14上のドライフィルム13は、例えば、スピンコート法やスリットコート法やスプレーコート法などによって形成されてもよく、ベーク処理がされていてもよい。スピンコート法では、塗布液を滴下した支持体14を載置した台を高速回転させることで遠心力を用いて塗布液の薄膜を形成する。スリットコート法では、支持体14における薄膜を形成すべき部分に、直接、薄膜を形成する。スプレーコート法では、支持体14に霧状にした塗布液を吹き付けることで塗布液の薄膜を形成する。
【0013】
支持体14としては、例えばフィルムやガラス基板、シリコン基板などからなるものが用いられるが、ドライフィルム13を基板11に転写した後の支持体14の剥離しやすさを考慮すると、フィルムを用いることが好ましい。ここで支持体14上にドライフィルム13を形成するのは、本実施形態においてドライフィルム13の厚さは例えば、数μm以下であり、開口12が形成されている基板11の表面に対して単独ではドライフィルム13を積層することが困難であるためである。その一方で支持体14が積層したままではドライフィルム13の現像を行うことが難しいため、現像工程までに支持体14を除去する必要がある。また、支持体14を介してドライフィルム13に対する露光を行う観点から、支持体14としては、乱反射しにくく透過率が高い光学フィルムであり、さらに熱膨張係数が10
-4cm/cm℃程度以下であるものを用いることが好ましい。このような特性を満足するものであれば、支持体14として、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)などの一般的なフィルムを用いることができる。より好ましくは、支持体14として、シクロオレフィン重合体、シクロオレフィン共重合体から形成されたフィルムが用いられる。シクロオレフィン重合体フィルム、シクロオレフィン共重合体フィルムとして、例えば、ゼオノアフィルム(登録商標)ZF14、ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16(日本ゼオン製)、F1−フィルム(グンゼ製)、G3−フィルム(デクセリアルズ製)、アペル(登録商標)(三井化学製)等を用いることができる。支持体14の厚みは、例えば、30〜150μmの範囲が好ましく、50〜100μmの範囲がより好ましい。剥離を容易にするため、表面に離型処理が施された支持体14を用いてもよい。後述する第1及び第2の露光工程において用いる露光波長が紫外域の波長であるとすれば、支持体14は、248〜436nmの波長領域において70%以上の光透過率を有することが好ましい。
【0014】
なお、支持体14を介した露光において縮小光学系を用いる場合、支持体14の厚さと屈折率によってフォーカス位置がシフトするのでフォーカス位置の補償を行う必要がある。ここでフォーカス(焦点)位置の移動方向に関して、支持体14から基板11の方向にフォーカスを動かすことを負(マイナス)で表現することとする。例えば100μm厚のPET(屈折率1.6)を支持体14に用いるときは、支持体14の表面をフォーカス0μmとして、フォーカス位置を基板11の側に−65μm程度シフトさせればよい。同様に50μm厚のシクロオレフィンポリマー(屈折率1.53)を支持体14に用いるときは、フォーカス位置を基板11の側に−33μm程度シフトさせればよい。
【0015】
次に、
図1(d)に示すように、基板11の一方の表面にドライフィルム13が接するように、基板11に対して支持体14を介してドライフィルム13を貼り合わせて基板11とドライフィルム13とを接合する。ドライフィルム13は、例えばラミネート法によって、支持体14を介して例えば温度と圧力を加えられながら基板11に転写され積層される。ラミネート法の実施では、基板11とドライフィルム13との間の気泡が入らないように気泡の排出性を考慮して、例えばロール方式の転写を真空下で行うことが好ましい。基板11とドライフィルム13との密着性を向上させるために、基板11の表面に対して例えばシラン材処理を予め行ってもよい。
【0016】
次に、
図1(e)に示すように、支持体14を介してドライフィルム13を露光する第1の露光工程を実施する。露光に用いる光15の種類は、ドライフィルム13を感光でき、かつ支持体14を透過するものであれば特に限定されるものではないが、紫外線が好ましく用いられる。ドライフィルム13は、後工程である現像工程によって開口12や開口12の周りで基板11が露出する領域(すなわち開口20に相当する領域)である第1の領域と、現像工程において基板11の上に残置される領域である第2の領域とに区分される。第1の露光工程では、基板11への密着性の向上のためにドライフィルム13を硬化できる露光量で光15を照射する行う必要があるが、ドライフィルム13の第1の領域は、最終的には現像工程において除去される部分である。そのため、第1の露光工程は、ドライフィルム13の解像限界最低露光量E
th未満で行うことが好ましい。解像限界最低露光量とは、ネガ型の感光性樹脂に関し、その感光性樹脂の解像限界において、露光後に感光性樹脂の残膜が形成されるための最低露光量のことである。以下の説明において、解像限界最低露光量のことを単に最低露光量ともいう。
図1(e)に示すよう、第1の露光工程は、フォトマスクによる遮光領域を設定しない全面露光であってもよい。このときの露光量がドライフィルム13を硬化できる露光量であって最低露光量E
th未満であれば、次工程で支持体14を除去する際に、基板11からのドライフィルム13の剥離を防ぎつつ、現像工程において第1の領域を除去することが可能になる。
【0017】
次に、
図1(f)に示すように、ドライフィルム13から支持体14を剥離させることにより、支持体14を基板11から除去する。第1の露光工程によってドライフィルム13が硬化し、その膜強度と基板11への密着性とが向上しているから、支持体14を除去する際に基板11からドライフィルム13が剥離することを防止できる。ここでは、支持体14の除去後にドライフィルム13が開口12上にテンティングしていることがより好ましい。しかしながら第1の領域は、後の現像工程で除去される領域であるため、開口12の位置のドライフィルム13が支持体14の側に残っていてもよい。なお、支持体14の除去前に、例えばホットプレートなどを用いてドライフィルム13に対する加熱処理を行ってもよい。
【0018】
次に、
図1(g)に示すように、第2の露光工程を実施する。第2の露光工程では、ドライフィルム13における第1の領域をフォトマスク16の遮光部17で遮光して光15を照射することによりパターン露光を行う。第1の露光工程においてフォトマスクを使用する場合には、第1の露光工程での遮光部の端部と第2の露光工程での遮光部16との端部の距離は、これらの露光工程の間での位置合わせずれ量よりも大きくしておく必要がある。具体的には、第1の露光工程での遮光部の端部と第2の露光工程での遮光部16との端部の距離は、例えば1μm以上であれば望ましく、0.5μm以上であれば好ましい。第2の露光工程での露光量は、遮光部17によって遮光されない第2の領域が現像工程を経ても残置するように、ドライフィルム13の最低露光量以上の露光量があることが好ましい。
【0019】
次に現像工程を実施し、ドライフィルム13における第1の領域を除去する。これによって、
図1(h)に示すように、基板11上にドライフィルム13の第2の領域を有する構造体10が形成される。現像液としては、例えば、PGMEA、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、キシレンなどを用いることができる。なお、ドライフィルム13が化学増幅型の感光性樹脂組成物からなる場合には、ドライフィルム13の現像前に、ホットプレートなどを用いてドライフィルム13に対する加熱処理を行ってもよい。また、現像工程後に加熱処理を行って、ドライフィルム13を硬化させてもよい。
【0020】
次に、第1の露光工程において支持体14上に異物18が存在する場合における構造体10の形成について、
図1(i)〜
図1(l)を用いて説明する。異物18としては、例えば、支持体14自体に含まれるものや、支持体14に付着したものや、工程パーティクル(微粒子)などが挙げられる。異物18の材質としては、例えば、金属やシリコン、無機材料、樹脂、繊維ごみなどが挙げられる。
図1(i)に示すように、露光に用いる光15を透過しない異物18が支持体14上に存在すると、支持体14を介してドライフィルム13を露光する際に、未露光部19が形成される可能性がある。このため、従来の構造体の製造方法においては、この未露光部19が現像後のパターン不良の原因となる可能性があった。具体的には、ネガ型のドライフィルム13を用いる場合には、異物18で遮光された未露光部19が現像で除去されて、凹み(穴)状のパターン不良原因となる。ドライフィルム13がポジ型の場合には、異物18で遮光された未露光部19が、現像残渣となるパターン不良原因になる。
【0021】
本実施形態においても支持体14の表面に異物18が存在した場合、支持体14を取り除いた段階において、
図1(j)に示すように、第1の露光工程を実施した後のドライフィルム13の第2の領域に、異物18に起因する未露光部19が存在する。その後、
図1(k)に示すように、第2の露光工程を実施する。このとき、第2の領域を現像工程で残せるような露光量、すなわちドライフィルム13の最低露光量以上の露光量とすることにより、第2の領域に存在していた未露光部19が解消する。そして現像工程を実施すれば、第1の領域が除去され、
図1(l)に示すように、基板11上にドライフィルム13の第2の領域を有する構造体10が形成される。この構造体10では、異物18に起因するパターン不良が抑制されている。
【0022】
本実施形態によれば、第1の支持体である支持体14を介してドライフィルム13を露光する第1の露光工程と、支持体14を取り除く工程と、支持体14なしでドライフィルム13を露光する第2の露光工程とを実施する。第1の露光工程を行うことによって、基板11に対するドライフィルム13の密着性が増して支持体14を剥離しても基板11側にドライフィルム13が残るようになる。そして、支持体14を介さずに第2の露光工程においてパターン露光を行うので、本実施形態によると、支持体14上に異物18が存在したとしても、異物18に起因するパターン形成不良を抑制することが可能になる。
【0023】
[第2の実施形態]
第1の実施形態に示す製造方法では、第1の露光工程において第1の支持体である支持体14を介して第1の感光層であるドライフィルム13の全面を露光している。しかしながら本発明では、第1の露光工程においてフォトマスク26を使用し、ドライフィルム13における第1の領域とその周辺とを含む所定の領域を遮光することも可能である。第2の実施形態では、第1の露光工程においてフォトマスクを使用し、ドライフィルム13での第1の領域とその周辺の領域とを遮光しながらドライフィルム13に対する露光を行い、第1の実施形態において形成したものと同じ構造体10を形成する。
図2は、第2の実施形態での製造過程を示す図である。
図2(a)は、基板11に形成しようとする構造体10の平面図であり、この図では、第1の露光工程でのフォトマスク26における遮光部27の位置を破線で示している。
図2(b)〜
図2(h)は、
図2(a)のA−A線での断面図であり、それぞれ第1の実施形態での
図1(b)〜
図1(h)に対応して本実施形態での製造過程を順を追って示している。
【0024】
図2(b)は、基板11の断面を示し、
図2(c)は、基板11と別個に用意される、支持体14上に形成されたドライフィルム13を示している。基板11、ドライフィルム13及び支持体14として、第1の実施形態で説明したものと同様のものが使用される。そして
図2(d)に示すように、基板11の一方の表面にドライフィルム13が接するように、基板11に対して支持体14を介してドライフィルム13を貼り合わせて接合する。この接合も、第1の実施形態と同様に行われる。続いて、
図2(e)に示すように、支持体14を介してドライフィルム13を露光する第1の露光工程を実施する。第1の露光工程自体も第1の実施形態と同様に行われるが、この第2の実施形態では、光源と支持体14との間のフォトマスク26を配置し、光源からの露光用の光15が、フォトマスク26に形成された遮光部27によって遮られるようにする。基板11には4個の開口12が設けられており、開口12ごとにその開口12とその周辺を含む領域がドライフィルム13における第1の領域とされている。遮光部27は、第1の領域ごとに、第1の領域よりもやや大きめにフォトマスク26に形成されており、第1の領域とその周辺とを含む所定の領域に光15が照射されないようしている。本実施形態でも、第1の露光工程での露光量は、ドライフィルム13の露光された領域を硬化できる露光量であって、ドライフィルム13の解像限界最低露光量E
th未満とされる。
【0025】
続いて、
図2(f)に示すように、ドライフィルム13から支持体14を剥離することによって、基板11から支持体14を除去する。第1の露光工程において露光された部分、すなわち第2の領域のかなりの部分が硬化しているので、支持体14を除去するときに基板11からドライフィルム13が剥離することを防止しつつ、現像工程において第1の領域を除去することが可能になる。その後、
図2(g)に示すように第2の露光工程を実行し、さらに、
図2(h)に示すように現像工程を実行する。第2の露光工程と現像工程とは第1の実施形態の場合と同様に行われる。本実施形態によると、支持体14上に異物が存在したとしても、第2の露光工程によって、第1の実施形態の場合と同様に異物に起因するパターン形成不良を抑制することが可能になる。
【0026】
図3は、第2の実施形態の変形例での構造体10の製造方法を説明するための図であって、基板11に形成される構造体10を示している。
図2に示したものとの違いは、第1の露光工程で用いるフォトマスク26に形成される遮光部27の形状である。
図2に示したものでは、基板11の開口12ごとに対応して合計4個の遮光部27が設けられているが、この変形例では、基板11での複数の開口12を連結するような形状で、フォトマスク26に単一の遮光部27が設けられている。言い換えれば、ドライフィルム13に設定される複数の第1の領域を含む単一の所定の領域が遮光されるようにしている。この場合も、第1の露光工程での第1の領域への露光量がドライフィルム13を硬化できる露光量であって解像限界最低露光量E
th未満であれば、支持体14を除去する際に、基板11からドライフィルム13が剥離することを防止できる。またこの変形例では、第1の露光工程は、複数の第1の領域を含む大まかなパターンや寸法での露光で済むので、第1の露光工程におけるプロセス自由度を高めることができる。
【0027】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態として、第1の実施形態による構造体の製造方法を液体吐出ヘッドの製造に適用した例を説明する。液体吐出ヘッドは、記録液(例えばインク)などの液体を記録媒体に吐出するインクジェット記録装置などの液体吐出装置に用いられ、印加される信号に応じてその吐出口から実際に液体を吐出する部材である。液体吐出ヘッドの製造方法を説明する前に、液体吐出ヘッドの構造について説明する。
図4は、液体吐出ヘッド40の構成を示す一部破断斜視図である。
【0028】
液体吐出ヘッド40は、基板41と吐出口形成部材42とを有する。基板41は、例えば単結晶シリコンなどによって構成されている。単結晶シリコンの一例として、結晶面の面指数が(100)であるシリコンウエハが挙げられる。基板41の一方の表面には、液体を吐出するために用いられるエネルギーを発生する複数のエネルギー発生素子43が、所定の間隔で形成されている。エネルギー発生素子43としては、電気熱変換素子や圧電素子などが用いられる。エネルギー発生素子43が電気熱変換素子である場合、エネルギー発生素子43がその近傍の液体を加熱し、液体に対して状態変化、例えば液相から気相への状態変化を起こさせることによって吐出エネルギーが発生する。エネルギー発生素子43の上には、保護のために保護膜(不図示)が形成されていてもよい。基板41の一方の表面にはエネルギー発生素子43と電気配線(不図示)で接続された電極44が形成されており、電極44を介して基板41の外部から供給された電力によってエネルギー発生素子43が駆動される。さらに基板41には、その両方の表面の間を貫通するように、吐出されるべき液体の供給に用いられる液体供給路45が形成されている。基板41において液体が接触する面には、液体に耐性のある保護膜(不図示)が形成されていてもよい。
【0029】
吐出口形成部材42は、例えば、樹脂等の材料からなり、基板41におけるエネルギー発生素子43の形成領域において、基板41との間に少なくとも流路47を形成するように、基板41の一方の表面に設けられている。図示した例では、流路47のほかに圧力室48も設けられる。基板41と吐出口形成部材42との間には、これらの密着性を向上させる密着層(
図4では不図示)が形成されていてもよい。また吐出口形成部材42では、基板41のエネルギー発生素子43ごとに、そのエネルギー発生素子43に対向するように吐出口46が貫通孔として形成されている。圧力室48は、その底面にエネルギー発生素子43が配置し、上面に吐出口46が配置するようにエネルギー発生素子43ごとに形成された空間であり、流路47を介して液体供給路45に連通している。液体供給路45を介して供給された液体は、流路47を介して圧力室48に供給され、エネルギー発生素子43が駆動されることによって発生するエネルギーによって、吐出口46から吐出される。圧力室48を設けない構成では、流路47の底面にエネルギー発生素子43が設けられる。本実施形態において吐出口形成部材42は、流路47や圧力室48の側壁部分を形成する第1の層42Aと、吐出口46が形成されている板状の第2の層42Bとが積層された構成となっている。
【0030】
図5(a)〜
図5(l)は、
図4のB−B線での断面図であって、
図4に示す液体吐出ヘッド40の製造過程を順を追って示している。上述し、また
図5(a)に示すように、基板41には液体供給路45が形成され、基板41の一方の表面にはエネルギー発生素子43が予め形成されている。液体供給路45の形成方法としては、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングや、レーザーアブレーション、さらにはサンドブラストによる加工が挙げられる。基板41が単結晶シリコンからなる場合には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液や水酸化カリウム(KOH)水溶液などを用いるウェットエッチングを用いて液体供給路45を形成することができる。液体供給路45の平面形状は、例えば丸や四角形状などである。
図4に示した例では、液体供給路45は細長い長方形の平面形状を有する。液体供給路45においてその側壁と基板41の一方の表面とがなす角度は垂直であってよく、また、液体供給路45がテーパー形状の断面形状を有していてもよい。基板41の各表面や液体供給路45の側壁には、保護膜(不図示)が形成されていてもよい。なお、本発明は、液体供給路45の形成方法や形状などによって限定されるものではない。
【0031】
図5(b)に示すように、基板41とは別個に、第1の支持体である支持体55上に形成されたドライフィルム54を用意する。第1の感光層であるドライフィルム54は、液体吐出ヘッド40において基板41と吐出口形成部材42との間の密着性を向上させるための密着層となるものである。ドライフィルム54は、例えばネガ型の感光性樹脂であり、一例として、第1の実施形態において
図1(c)を用いて説明した材料によって構成することができる。ドライフィルム54の厚さは、例えば、0.5〜3μmの範囲である。支持体55としては、例えばフィルムやガラス基板、シリコン基板などからなるものが用いられるが、ドライフィルム54を基板41に転写した後の支持体55の剥離しやすさを考慮すると、フィルムを用いることが好ましい。支持体55には、一例として、第1の実施形態において
図1(c)を用いて説明した材料を用いることができる。
【0032】
次に、
図5(c)に示すように、基板41の一方の表面にドライフィルム54が接するように、基板41に対して支持体55を介してドライフィルム54を貼り合わせて接合する。ドライフィルム54は、支持体55を介して例えば温度と圧力が加えられながら、ラミネート法によって基板41上に転写され積層される。ラミネート法の実施では、基板41とドライフィルム54の間の気泡が入らないように気泡の排出性を考慮して、例えばロール方式の転写を真空下で行うことが好ましい。基板41とドライフィルム54の密着性を向上させるために、基板41の一方の表面に対してシラン材処理を予め行ってもよい。
【0033】
次に、
図5(d)に示すように、支持体55を介してドライフィルム54を露光する第1の露光工程を実施する。露光に用いる光56の種類は、ドライフィルム54を感光でき、かつ支持体55を透過するものであれば特に限定されるものではないが、紫外線が好ましく用いられる。ドライフィルム54は、
図5(g)に示す現像工程によって液体供給路45や液体供給路45の周りで基板41が露出する領域である第1の領域と、この現像工程において基板41上に残される領域である第2の領域とに区分される。第1の露光工程では、基板41への密着性の向上のためにドライフィルム54を硬化できる露光量で露光する必要があるが、ドライフィルム54の第1の領域は、最終的には現像によって除去する部分である。そのため、全面露光によって第1の露光工程を行う場合には、露光量は、ドライフィルム54の解像限界最低露光量E
th未満であることが好ましい。第1の露光工程は全面露光で行ってもよく、上述の第2の実施形態のように、第1の領域を含む所定の領域をフォトマスクによって遮光する露光で行ってもよい。さらに、第1の露光工程は、第2の実施形態の変形例のように、複数の第1の領域を含む所定の領域を単一の遮光部を有するフォトマスクで遮光する露光で行ってもよい。
【0034】
次に、
図5(e)に示すように、ドライフィルム54から支持体55を剥離させることにより、支持体55を基板41から取り除く。第1の露光工程によってドライフィルム54が硬化して基板41との密着性が向上しているために、支持体55を除去する際にドライフィルム54が基板41から剥離することが抑制される。支持体55の除去後にドライフィルム54が液体供給路45上にテンティングしていることがより好ましい。しかしながら第1の領域は、後の現像工程で除去される領域であるため、液体供給路45の位置のドライフィルム54が支持体55の側に残っても良い。なお、支持体55の除去前に、例えばホットプレートなどを用いてドライフィルム54に対する加熱処理を行ってもよい。
【0035】
次に、
図5(f)に示すように、第2の露光工程を実施する。第2の露光工程では、ドライフィルム54の第1の領域をフォトマスク57の遮光部58で遮光して光56を照射することによりパターン露光を行う。第1の露光工程において支持体55上の異物によって遮光された未露光部がある場合には、この未露光部も第2の露光工程によって露光される。第2の露光工程での露光量は、第2の領域を現像工程で残せるような露光量、すなわちドライフィルム54の最低露光量以上の露光量とすることが望ましい。この第2の露光工程によって、第1の実施形態で述べたように、支持体55上の異物に起因するドライフィルム54のパターン不良を抑制することが可能になる。
【0036】
次に、現像工程を実施してドライフィルム54を現像し、ドライフィルム54における第1の領域を除去する。これによって、
図5(g)に示すように、基板41の上にドライフィルム54の第2の領域が形成された状態となる。特に本実施形態では、液体供給路45だけでなく、基板41の一方の表面においてエネルギー発生素子43が形成されている位置からもドライフィルム54が除去される。現像工程自体は、第1の実施形態において
図1(h)を用いて説明したものと同様に行われる。第1の実施形態の場合と同様に、現像前に加熱処理を行ってもよし、現像工程後に加熱処理を行ってもよい。
【0037】
次に、
図5(b)で示したものと同様の方法で第2の感光層であるドライフィルム59を準備し、
図5(h)に示すように、基板41の一方の表面に対してドライフィルム59を積層し接合する。この接合は、
図5(c)を用いて説明したものと同様の方法で行われる。ドライフィルム59は、吐出口形成部材42の一部、特に、第1の部分42A(
図4参照)となるものである。ドライフィルム59の厚さは、例えば5〜25μmの範囲であり、これは、吐出口形成部材42における流路47の高さに相当する。
【0038】
次に
図5(i)に示すように、フォトマスク60を用いるフォトリソグラフィによって、吐出口形成部材42における少なくとも流路47に相当する部分である流路対応部分62をドライフィルム59から除去するための加工を行う。ここでの露光工程は第3の露光工程であり、潜像として流路対応部分62を形成する。本実施形態では、流路対応部分62には圧力室48に相当する部分も含まれる。ドライフィルム59がネガ型の感光性樹脂の場合には、光56が照射された部分がパターンとして残り、光56が照射されていない部分が現像によって除去されることになる。したがってこのときの露光では、フォトマスク60の遮光部61により流路対応部分62には光56が照射されないようにする。ドライフィルム59として用いるネガ型の感光性樹脂が化学増幅型の場合には、フォトマスク60を介した露光後、現像前にポストエクスポージャーベーク(PEB;Post Exposure Bake:露光後・現像前焼)を行う。この段階でドライフィルム59の現像を行ってもよい。あるいは、後述するように潜像を利用して、次に積層して露光する他の膜の現像工程と一括してドライフィルム59の現像を行ってよい。ここで示す例では、後工程で積層される膜と一括してドライフィルム59の現像を行っている。フォトリソグラフィを用い、フォトマスク60と基板41にそれぞれ形成された位置合わせマーク(不図示)によって高精度に位置合わせを行うことで、エネルギー発生素子43を基準として流路47及び圧力室48を所望の位置に精度よく形成することができる。
【0039】
次に、
図5(b)で示したものと同様の方法で第3の感光層であるドライフィルム63を準備し、
図5(j)に示すように、ドライフィルム59の上にドライフィルム63を積層し、さらにドライフィルム63の上に撥水材(不図示)を積層する。ドライフィルム63の積層では、
図5(c)を用いて説明したものと同様の方法を用いることができる。ドライフィルム63は、吐出口形成部材42の一部、特に、第2の部分42B(
図4参照)となるものである。ドライフィルムの厚さは、例えば、3〜7μmの範囲であり、これは吐出口形成部材42に貫通孔として形成される吐出口46の位置における、吐出口形成部材42の厚さに相当する。撥水材の成膜方法は、その材料に応じて選択される。撥水剤が例えば感光性樹脂組成物からなる場合には、例えばスピンコート法やスリットコート法などを用いて撥水剤の膜を形成すればよい。撥水材の膜厚は、例えば0.1μm〜1μmの範囲である。撥水材としては、例えばフッ素系の撥水成分を含むエポキシ樹脂組成物を用いることができるが、他の材料を使用することも可能である。
【0040】
次に、
図5(k)に示すように、フォトマスク64を用いるフォトリソグラフィによって、吐出口形成部材42における吐出口46に相当する部分である吐出口対応部分66をドライフィルム63と撥水材(不図示)から除去するための加工を行う。この加工には、
図5(i)を用いて説明したものと同様の方法を用いることができる。吐出口対応部分66は流路対応部分62に接続している必要がある。ここでの露光工程は第4の露光工程であり、潜像として吐出口対応部分66を形成する。フォトマスク64には、吐出口形成部材42での吐出口46の位置に対応する遮光部65が設けられている。ドライフィルムと撥水材(不図示)がともに化学増幅型のものであるときは、PEBを行うことが好ましい。
【0041】
図5(k)に示す露光の終了後、現像処理を実行し、
図5(l)に示すように、ドライフィルム59の流路対応部分62と、ドライフィルム63及び撥水材(不図示)の吐出口対応部分66を除去する。ドライフィルム59とドライフィルム63と撥水材(不図示)とがいずれもネガ型の感光性樹脂である場合には、第1の実施形態において
図1(h)を用いて説明したものと同様の現像液を用いて、流路対応部分62と吐出口対応部分66を一括除去できる。現像によって未露光部が取り除かれ、ドライフィルム59から流路対応部分62を除去したあとが流路47及び圧力室48となり、ドライフィルム63と撥水材(不図示)から吐出口対応部分66を除去したあとが吐出口46になる。フォトリソグラフィを用い、フォトマスク64と基板41にそれぞれ形成された位置合わせマーク(不図示)によって高精度に位置合わせを行うことで、エネルギー発生素子43を基準として吐出口46を所望の位置に精度よく形成することができる。既にエネルギー発生素子43を基準として流路47及び圧力室48が所望の位置に精度よく形成されているので、本実施形態によれば、エネルギー発生素子43、吐出口46、流路47及び圧力室48の相互間の位置精度を高めることができる。
【0042】
以上の工程を経て、液体供給路45から供給した液体が流路47及び圧力室48を通って吐出口46から吐出される液体吐出ヘッド40の主要部分が完成したことになる。通常、液体吐出ヘッド40の製造では、複数個の基板41に対応するシリコンウエハを使用して、このシリコンウエハの一方の表面に、複数個の液体吐出ヘッド40に対応する吐出口形成部材42を一括して形成する。そのため、上述のように液体吐出ヘッド40の主要部分が完成したら、この主要部分をダイシングによって切断分離して1個の液体吐出ヘッド40にそれぞれ対応する複数のチップを得る。そして、各チップにおいてエネルギー発生素子43を駆動させる電気配線の実装を行った後、液体供給用のチップタンク部材を接合する。その結果、最終的に液体吐出ヘッド40が完成する。
【0043】
本実施形態によれば、支持体55を介してドライフィルム54に露光を行うときに支持体55上に異物が存在したとしても、異物に起因するパターン形成不良の発生を抑制することが可能になる。したがって本実施形態による液体吐出ヘッド40では、基板41と吐出口形成部材42との間に設けられる密着層におけるパターン不良の発生が抑制され、基板41と吐出口形成部材42との密着性における高い信頼性が得られる。商業印刷などの分野において液体吐出ヘッドを使用する場合には、大量の記録媒体に対して記録液を吐出しても安定した記録品質を保つ必要があり、そのためには基板41に対する吐出口形成部材42の密着性を高めることが必要となる。本実施形態によれば、商業印刷などの分野においても高い信頼性で使用することができる液体吐出ヘッド40を得ることができる。
【0044】
[製造例1]
以下、第3の実施形態に基づいて液体吐出ヘッド40を製造した例を説明する。まず、
図5(a)に示すように、発熱抵抗体などのエネルギー発生素子43を複数個配置した単結晶シリコンからなる厚さが625μmの基板41を用意した。基板41には、液体供給路45が予め形成されていた。
図5(b)に示すように、厚さ100μmのPETフィルムを支持体55として使用して、支持体55の表面上に、ネガ型の感光性樹脂組成物であるエポキシ樹脂(N−695を含む)を含むドライフィルム54を準備した。ドライフィルム54の膜厚は1μmとした。そして
図5(c)に示すように、ステージ温度50℃、ローラー温度50℃、ローラー圧力0.2MPa、ローラー速度1mm/sの条件で、真空下でのラミネート法により、基板41とドライフィルム54とを貼り合わせて積層した。ラミネートにはロール式ラミネート装置を用いた。積層による接合の後、
図5(d)に示すように、露光機を使用して波長365nmの光56を、支持体55を介してドライフィルム54の全面に露光することにより、第1の露光工程を実施した。このときの露光量は1500J/m
2であった。この露光量は、ドライフィルム54の最低露光量E
th未満の露光量である。第1の露光工程の実施後、温度50℃で4分間のPEBを行った。
【0045】
次に、
図5(e)に示すように、常温下で支持体55を基板41から除去した。このとき、基板41からドライフィルム54が剥離することはなかった。ドライフィルム54は液体供給路45上においてテンティングしていた。その後、
図5(f)に示すように、フォトマスク57を介して露光機からの波長365nmの光56によりドライフィルム54をパターン露光する第2の露光工程を実施した。第2の露光工程での露光量は4000J/m
2であった。この露光量は、ドライフィルム54の最低露光量E
thを超える露光量である。第2の露光工程の実施後、温度90℃で4分間のPEBを行った。PEBの終了後、
図5(g)に示すように、現像液としてPGMEAを使用する現像工程を実施した。その結果、基板41上にドライフィルム54のパターンからなる密着層が形成された。ドライフィルム54のパターンからなる密着層の形状を評価した結果、支持体55上の異物に由来すると思われるパターン不良は検出されなかった。
【0046】
現像工程の実施後、
図5(h)に示すように、ドライフィルム54のパターンを有する基板41上に、吐出口形成部材42となるドライフィルム59を
図5(b)及び
図5(c)を用いて説明したものと同様の方法で積層して接合した。このドライフィルム59は、第1の支持体である支持体55とは異なる支持体(不図示)によって支持されていた。ドライフィルム59の膜厚は15μmであった。ドライフィルム59の基板41への接合は、ロール式ラミネート装置を使用した真空下でのラミネート処理によって実行し、このときの条件は、ステージ温度50℃、ローラー温度50℃、ローラー圧力0.2MPa、ローラー速度5mm/sであった。その後、
図5(e)を用いて説明したものと同様の手順で、常温下で支持体(不図示)を剥離した。
【0047】
次に、
図5(i)に示すように、露光機からの波長365nmの光56を、フォトマスク60を介してドライフィルム59に照射し、パターン露光を行った。露光量は10000J/m
2の露光量であった。このパターン露光の実施後、温度60℃、4分間のPEBを行うことにより、ドライフィルム59における未露光部である流路対応部分62が吐出口形成部材42における流路47及び圧力室48となるように潜像を形成させた。潜像の形成後、
図5(j)に示すように、ドライフィルム59上に、ドライフィルム63と撥水材(不図示)とを積層した。ドライフィルム63は、ドライフィルム54と同じネガ型のエポキシ樹脂からなり、
図5(b)に示した方法と同様の方法で支持体(不図示)の上に準備されたものである。そしてドライフィルム59の上へのドライフィルム63の積層は、ロール式ラミネート装置を用いる真空下でのラミネート処理によって行い、そのときの条件は、ステージ温度50℃、ローラー温度50℃、ローラー圧力0.2MPa、ローラー速度5mm/sであった。ドライフィルム59の上への積層後、ドライフィルム63を支持していた支持体(不図示)を常温下で剥離した。ドライフィルム63の膜厚は5μmであった。撥水材(不図示)はフッ素系の撥水成分を含むエポキシ樹脂であり、スリットコート法で膜厚0.6μmに成膜した後に50℃、5分のベークを行って撥水材の層をドライフィルム63の表面に形成した。
【0048】
次に、
図5(k)に示すように、露光機からの波長365nmの光56を、フォトマスク64を介してドライフィルム63及び撥水材(不図示)に照射し、パターン露光を行った。露光量は1000J/m
2の露光量であった。このパターン露光の実施後、温度90℃、4分間のPEBを行うことにより、ドライフィルム63及び撥水材における未露光部である吐出口対応部分66が吐出口形成部材42における吐出口46となるように潜像を形成させた。続いて現像液としてPGMEAを使用して潜像の部分を除去する現像を行い、
図5(l)に示すように、ドライフィルム59の流路対応部分62と、ドライフィルム63及び撥水材(不図示)の吐出口対応部分66とを一括除去した。このようにして、吐出口形成部材42の吐出口46、流路47及び圧力室48が形成された。その後、温度200℃で1時間、窒素雰囲気下で熱処理を行って、ネガ型の感光性樹脂からなる吐出口形成部材42を硬化させた。その後、上述したようにしてダイシング、電気配線の実装、及びチップタンク部材の接合を行って、液体吐出ヘッド40を完成させた。
【0049】
[製造例2]
図5(a)〜
図5(l)を用いて説明した製造例1と同様の工程により、液体吐出ヘッド40を製造した。製造例1では、第1の露光工程ののち支持体55を基板41から除去するときに、
図5(e)に示すように液体供給路45上にドライフィルム54がテンティングされた。一方、この製造例2では、液体供給路45上のドライフィルム54は支持体55側に残った(不図示)。なお、液体供給路45に対応する位置のドライフィルム54の第1の領域は、
図5(g)に示す現像工程において除去される領域であるから、支持体55の側に残っていてもよい。現像工程の実施後、ドライフィルム54のパターンからなる密着層の形状を実際に評価した結果、製造例2においても支持体55上の異物由来と思われるパターン不良は検出されなかった。このように製造例2においても、基板41と吐出口形成部材42との間の密着層におけるパターン不良が抑制され、基板41と吐出口形成部材42との密着性において信頼性が高い液体吐出ヘッド40を形成することができた。
【0050】
[第4の実施形態]
上述の第1及び第2の実施形態は、ネガ型の感光性樹脂であるドライフィルムを用いているが、本発明は、ポジ型の感光性樹脂を用いても実施することができる。第4の実施形態では、ポジ型の感光性樹脂であるドライフィルム23を用いて基板11上にパターンを形成し、第1の実施形態の構造体10と同一形状の構造体21を形成する場合を説明する。
図6は、第4の実施形態での構造体の製造方法を説明する図であって、
図6(a)は、基板11上に形成しようとする構造体21の平面図である。この構造体21は、基板11の一方の表面上に設けられるドライフィルムがポジ型のドライフィルム23である点を除いて、
図1(a)に示したものと同一である。
図6(b)〜
図6(h)は、
図6(a)のA−A線での断面図であって、本実施形態での製造過程を順を追って示している。
【0051】
図6(b)は基板11を示しているが、この基板11は
図1(b)に示すものと同一である。
図6(c)に示すように、基板11とは別個に、第1の支持体である支持体14上に形成されたドライフィルム23を用意する。支持体14には第1の実施形態において説明したものを用いることができ、ドライフィルム23にはポジ型の感光性樹脂からなるものが用いられる。支持体14へのドライフィルム23の形成方法は、第1の実施形態の場合と同様である。また、第1の実施形態と同様に、ドライフィルム23は、現像工程により除去される第1の領域と現像工程を経ても残置する第2の領域とに区分される。そして
図6(d)に示すように、基板11の一方の表面にドライフィルム23が接するように、基板11に対して支持体14を介してドライフィルム23を貼り合わせて積層する。この積層による接合も第1の実施形態の場合と同様に行われる。接合後、
図6(e)に示すように、支持体14を介してドライフィルム23の全面に露光する第1の露光工程を実施する。第1の露光工程での露光量は、少なくとも第2の領域が最低露光量未満の露光量で露光されるような露光量である。ここではポジ型のドライフィルム23を用いているので、最低露光量は、その露光量以上であれば現像工程においてドライフィルム23が除去されるという露光量である。
【0052】
第1の露光工程の実施後、
図6(f)に示すように、基板11から支持体14を除去する。この除去工程も第1の実施形態の場合と同様に行われる。このとき、基板11の開口12の位置のドライフィルム23は、開口12上にテンティングしていることが好ましいが、この領域は現像工程により除去される領域であるので、支持体14の側に残っていてもよい。支持体14を除去した後、
図6(g)に示すように第2の露光工程を実施する。第2の露光工程では、フォトマスク28を介してドライフィルム23にパターン露光を行う。第1の実施形態の場合と異なり、フォトマスク28には、ドライフィルム23の第2の領域には光15が当たらないように遮光部29が形成されている。その後、現像工程を実施することで、
図6(h)に示すように、基板11上にドライフィルム23の第2の領域を有する構造体21が形成される。本実施形態によると、支持体14上に異物が存在したとしても、第2の露光工程によって、第1の実施形態の場合と同様に異物に起因するパターン形成不良を抑制することが可能になる。
【0053】
[製造例3]
第4の実施形態に基づいて構造体21を実際に製造した例を説明する。
図6(c)に示すように、支持体14として厚さが100μmのPETフィルムを使用し、ポジ型の感光性樹脂組成物(商品名;PMER、東京応化製)を用いるドライフィルム23を支持体14上に準備した。ドライフィルムの膜厚は1μmであった。
図6(d)に示すドライフィルム23と基板11との接合は、ロール式ラミネート装置を用いる真空下でのラミネート処理によって行った。
図6(e)に示す第1の露光工程では、露光機を使用して波長365nmの光15を、支持体14を介してドライフィルム23の全面に露光した。このときの露光量はドライフィルム23の最低露光量以下であった。第1の露光工程の実施後、PEBを行い、続いて
図6(f)に示すように、常温下で支持体14を基板11から除去した。
【0054】
次に、
図6(g)に示す第2の露光工程を実施した。第2の露光工程では、フォトマスク28を介して露光機からの波長365nmの光15によりドライフィルム23をパターン露光した。このときの露光量は、ドライフィルム23の最低露光量以上の露光量とした。第2の露光工程の実施後、PEBを実施し、さらに、TMAH水溶液を現像液とする現像工程を実施し、
図6(h)に示すように、基板11上にドライフィルム23のパターンを有する構造体21を形成した。この構造体21の形状を検査した結果、支持体14上の異物に由来すると思われるパターン不良は検出されなかった。
【0055】
[第5の実施形態]
第5の実施形態として、液体吐出ヘッド40の製造方法の別の例を説明する。第3の実施形態では、液体吐出ヘッド40の形成のために2回の現像を行っているが、この第5の実施形態では、1回の現像により液体吐出ヘッド40を製造する。ここで製造しようとする液体吐出ヘッド40は、第3の実施形態において示したものと同様であるが、基板41の一方の表面での開口の方が他方の表面での開口よりも狭くなるように液体供給路45の断面形状がテーパー形状である点で相違する。
図7(a)〜
図7(i)は、
図4のB−B線での断面図であって、本実施形態における液体吐出ヘッド40の製造過程を順を追って示している。
【0056】
まず、
図7(a)に示すように、第1の支持体である支持体31の上に第1の感光層32を形成する。第1の感光層32は、基板41と吐出口形成部材42との間の密着性をよくするために配置される層である。第1の感光層32は、感光性を有する層であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では、ネガ型の感光性樹脂からなるフォトレジストを使用する。第1の感光層32は、軟化点が40〜120℃程度であって、第1の実施形態と同様の材料を用いることができる。また密着性を高めるためにシランカップリング剤が第1の感光層32に内添されていることが望ましい。第1の感光層32は、第1の実施形態と同様の方法で支持体31の表面に形成することができる。第1の感光層32は、0.5〜2μmの厚さで支持体31の表面に形成することが好ましい。この厚さの第1の感光層32を形成するため、第1の感光層32の溶液の粘度は、3〜20cP(センチポアズ)であることが好ましい。第1の感光層32の溶液を形成するために用いられる溶媒として、第1の実施形態で説明した溶媒を使用することができる。
【0057】
後述するように、基板41上の第1の感光層32が支持体31を介して露光(パターニング)されるため、光透過性の高いガラス基板や光学フィルムなどを支持体31に用いることが好ましい。使用できる光学フィルムとしては、オレフィン系フィルム、PETフィルムなどからなるものが挙げられる。また、基板41上に第1の感光層32を精度よく転写するためには、支持体31は、可撓性の小さい材料からなることが好ましく、基板41よりも大きな曲げ剛性を有していることが好ましい。曲げ剛性は部材の厚みに依存するため、基板41の厚みに応じて支持体31の厚みを適宜設定することが好ましい。また、後工程において支持体31を第1の感光層32から剥離しやすくするため、支持体31に離型処理を施していてもよい。支持体31への離型処理としては、例えば離型膜となる薄膜を支持体31上に塗布して形成することができる。離型膜となる薄膜には、例えば、撥水性の高いシリコーン樹脂、あるいはフッ素化合物を含む樹脂などを用いることができる。
【0058】
次に、
図7(b)に示すように、支持体31上に形成した第1の感光層32を上下反転させ、第1の感光層32が基板41の一方の表面に接するように基板41上に載置する。第1の感光層32を基板41の上に載置することにより、液体供給路45は第1の感光層32によって塞がれる。次に、第1の感光層32の軟化点を超える温度条件で第1の感光層32に圧力を加えて変形させることで、第1の感光層32は、基板41に積層され接合される。第1の感光層32を基板41に接合する方法として、ラミネートやプレス法などが挙げられる。なお基板41はシリコン製であり、その厚さ方向に貫通する液体供給路45がシリコンエッチングにより予め形成されているとともに、基板41の一方の表面にはエネルギー発生素子43とその駆動回路(不図示)とが予め形成されている。液体供給路45は、エネルギー発生素子43が既に形成された基板41に液体供給路45の開口パターンを有するマスクレジストを形成し、TMAH水溶液や水酸化カリウム水溶液などによるウェットエッチングを行うことによって形成される。他のエッチング方法として、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などのドライエッチング法が挙げられる。液体供給路45を形成するさらに別の方法として、レーザーアブレーションやサンドブラストなどのブラスト法が挙げられる。エネルギー発生素子43として電気熱変換体を用いる場合、基板41に液体供給路45を形成する際にエネルギー発生素子43が損傷することを防ぐため、除去可能な保護膜を付けてもよい。
【0059】
基板41に第1の感光層32を積層し接合した後、
図7(c)に示すように、第1の露光工程として、第1の感光層32に対し、支持体31とフォトマスク36とを介して矢印方向に光を照射して露光処理を行う。フォトマスク36には、図において白抜きで示される光透過部と、黒塗りで示される遮光部とが形成されている。露光処理の結果、第1の感光層32には、フォトマスク36によって光が遮られた未露光部37と、光が照射された露光部38とが形成される。後述するように、基板41と吐出口形成部材42との密着性を向上させる密着層71は第1の感光層32の露光部38から形成される。
【0060】
次に、
図7(d)に示すように、第1の感光層32から支持体31を剥離する。支持体31を剥離する方法としては、支持体31を曲げながら剥離する方法がある。また支持体31を剥離しやすくするため、第1の感光層32を形成する前に支持体31側に離型膜を塗布してもよい。支持体31を剥離することによって、基板41の上に第1の感光層32が接合された状態となる。
【0061】
続いて
図7(e)に示すように、第1の感光層32の上に第2の感光層39を載置して積層する。ここでは図示していないが、第2の感光層39は、第1の支持体31とは異なる支持体上に形成されており、この支持体上の第2の感光層39は、上下反転して、基板41上に形成されている第1の感光層32の上に載置される。第2の感光層39は、最終的には吐出口形成部材42における少なくとも流路47を構成する部材であり、吐出口形成部材42における第1の層42Aに対応する。また、第2の感光層39は圧力室48をも構成する部材である。第2の感光層39は、感光性を有する層であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では、ネガ型の感光性樹脂からなるフォトレジストを使用する。第2の感光層39は、軟化点が60〜120℃程度であって、
図7(a)での場合と同様に第1の実施形態で説明した材料を用いることが好ましい。第2の感光層39を不図示の支持体上に形成する方法としては、
図7(a)での場合と同様に第1の実施形態で説明した方法等を用いることができる。第2の感光層39は3〜25μmの厚さで形成することが好ましい。第2の感光層39を第1の感光層32に積層する方法として、ラミネート法やプレス法などが挙げられる。積層の際、第2の感光層39の軟化点を超える温度条件で第2の感光層39に圧力を加えることが好ましい。なお本実施形態では、未露光部37と露光部38が第1の感光層32に形成されているものの、第1の感光層32の上面は平坦であるから、第2の感光層39を第1の感光層32の上に安定して載置し積層することができる。
【0062】
第1の感光層32の上に第2の感光層39を接合した後、
図7(f)に示すように、第2の露光工程として、第2の感光層39に対し、フォトマスク76を介して矢印方向に光を照射して露光処理を行う。フォトマスク76は、第1の露光工程で用いたフォトマスク36と同一の遮光部パターンを有していてもよい。第2の感光層39は、第1の感光層32と同一の波長の光で感光するものであることが好ましく、例えば、波長365nmに対して感光性を有する。第2の感光層39の感度は、第1の感光層32の感度と同じかそれよりも低いことが好ましい。一例として、第2の感光層39の最低露光量を1としたときに第1の感光層32の最低露光量が0.5となるように第1の感光層32及び第2の感光層39を構成する材料が決定される。第2の感光層39を形成するときに用いた支持体(不図示)が第2の露光工程を行う前に剥離除去されていないときは、第2の露光工程の実施後、その支持体を剥離して除去する。第2の露光工程では、第2の感光層39にも未露光部37と露光部38が形成される。未露光部37は、吐出口形成部材42における少なくとも流路47に対応する部分として第2の感光層39に形成される潜像に対応する。
【0063】
続いて
図7(g)に示すように、第2の感光層39の上に第3の感光層70を載置して積層する。ここでは図示していないが、第3の感光層70も、第1の支持体である支持体31とは異なる支持体上に形成されており、この支持体上の第3の感光層70は、上下反転して、第2の感光層39の上に載置される。図示していないが、第3の感光層70の上に撥水性を有する膜すなわち撥水膜を形成してもよい。撥水膜は、シリコンまたはフッ素系の撥水成分を含有する膜であることが好ましい。第3の感光層70は、吐出口形成部材42において吐出口46が設けられる板状の部分、すなわち第3の層42Bとなるものである。第3の感光層70は、感光性を有する層であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では、ネガ型の感光性樹脂からなるフォトレジストを使用する。第3の感光層70は、軟化点が40〜60℃程度であって、
図7(a)での場合と同様に第1の実施形態で説明した材料を用いることが好ましい。第3の感光層70を不図示の支持体上に形成する方法として、
図7(a)での場合と同様に第1の実施形態で説明した方法等を用いることができる。第3の感光層70は3〜20μmの厚さで形成することが好ましい。第3の感光層70を第2の感光層39に積層する方法として、ラミネート法やプレス法などが挙げられる。
【0064】
第2の感光層39の上に第3の感光層70を接合した後、
図7(h)に示すように、第3の露光工程として、第3の感光層70に対し、フォトマスク77を介して矢印方向に光を照射して露光処理を行う。フォトマスク77には、吐出口形成部材42において吐出口46が形成される位置に対応して、遮光部が設けられている。第3の感光層70を露光する際に、第1の感光層32と第2の感光層39とが感光しないことが望まれる。そのため、第3の感光層70は、第1の感光層32及び第2の感光層39とは異なる波長に対して感光性を有することが好ましい。あるいは、第3の感光層70を第1の感光層32及び第2の感光層39と同じ波長で露光するときは、その露光波長における第3の感光層70の感度は、第1の感光層32及び第2の感光層39の感度よりも高いことが望まれる。ここで感度が高いとは、最低露光量が小さいことを意味する。一例として、露光波長において第2の感光層39の最低露光量を1としたときに第3の感光層70の最低露光量が0.1となるように、第3の感光層70を構成する材料が決定される。第3の露光工程を実施することにより、第3の感光層70にも未露光部37と露光部38が形成される。未露光部37は、吐出口形成部材42における少なくとも吐出口46に対応する部分として第3の感光層70に形成される潜像に対応する。なお、第3の露光工程を実施する際には、露光を行う前に、第3の感光層70の形成に用いた支持体(不図示)を第3の感光層70から剥離しておくことが好ましい。また、この支持体を剥離した後に、第1の露光工程あるいは第2の露光工程で使用したフォトマスク36,76を使用して追加露光処理を行ってもよい。この理由は、第3の感光層70は最表層であるため、支持体上に異物が存在すると露光する際の阻害要因となりパターン不良の原因となる可能性があるためである。
【0065】
第3の露光工程の後に、感光層32,39,70が接合された基板41を現像液に浸漬する現像工程を行うことで、
図7(i)に示すように、感光層32,39,70における未露光部37が除去される。その結果、第1の感光層32から、吐出口形成部材42と基板41との間の密着層が形成され、第2の感光層39から吐出口形成部材42の第1の層42Aが形成され、第3の感光層70から吐出口形成部材の第2の層42Bが形成される。この現像工程は、第1の感光層32、第2の感光層39及び第3の感光層70を同時に現像するものである。現像液としては、第1の実施形態で説明した材料を使用することができる。また、現像液を用いた現像処理を行ったのち、リンス液を用いて基板41を洗浄する処理を行っても良い。リンス液としては、イソプロピルアルコールや、エタノール、純水などを使用することができる。
【0066】
図7(a)〜
図7(i)に示す各工程を経ることにより、
図4に示すような液体供給路45から供給した液体が流路47及び圧力室48を通って吐出口46から吐出される液体吐出ヘッド40の主要部分が完成する。この主要部分に対し、液体供給路45に液体を供給するための部材(不図示)や、エネルギー発生素子43を駆動させる電気配線(不図示)の実装を行うことにより、最終的に液体吐出ヘッド40が完成する。
【0067】
ここで
図8を用いて、第1の露光工程において支持体31上に異物34が存在する場合の露光について説明する。
図8(a)に示すように、不透明な異物34が支持体31上に存在すると、第1の露光工程においてフォトマスク36を透過した光が異物34によって遮られる。その結果、第1の感光層32において意図しない未露光部37が発生する。その後、現像を行うと、
図8(b)に示すように、パターンに意図しない欠落が生じてしまう。そこで本実施形態では、第1のフォトマスク36を介して第1の感光層32を露光する第1の露光工程を行い、その後、支持体31を取り除く。支持体31を取り除いてから第2の露光工程を実施する前に、第1の感光層32の上に第2の感光層39を積層する。第2の露光工程では、第2のフォトマスク76を用いて第2の感光層39のパターン露光を行うが、第2の感光層39を介して第1の感光層32も露光する。これにより、第1の露光工程において異物34によって発生した未露光部37も露光される。これによって、異物34で遮光されて形成される未露光部の発生が抑制されるため、異物34によるパターンの欠落が抑制される。すなわち、この場合、第2の露光工程は、第1の感光層32の形成に用いた第1の支持体31を介さずに第1の感光層32を露光する工程であるといえる。なお、第1の感光層32の方が第2の感光層39よりも高感度であることから、第2の感光層39を通過した光によって第1の感光層32を十分に露光することができる。
【0068】
[製造例4]
第5の実施形態に基づいて液体吐出ヘッド40を実際に製造した例を説明する。基板41としてはシリコン基板を使用した。基板41に液体供給路45を設ける工程では、TMAHを22%に薄め83℃に温度調節した水溶液(エッチング液)に基板41を20時間浸すことで、基板41に液体供給路45を形成した。支持体31として、厚さ100μmの光学フィルムを使用した。
図7(a)に示すように、支持体31の表面に第1の感光層32をスピンコート法で1μmの厚さで塗布し、温度50℃のオーブン内で乾燥させ、支持体31の上に第1の感光層32を準備した。第1の感光層32として、エポキシ樹脂と光開始剤を溶剤(PGMEA)に溶解させたものを用いた。光開始剤は、第1の露光工程においてフォトリソグラフィを用いてパターン形成する際に光重合を開始させるための薬剤であり、波長365nmの光に感度を有しているものを用いた。
【0069】
次に、液体供給路45が形成された基板41に対し、
図7(b)に示すように、支持体31に保持されている第1の感光層32を、真空ラミネート法を用いて接合した。その際、基板41上に形成される第1の感光層32の厚みの精度を確保するため、第1の感光層32の材料の軟化点に合わせて温度と圧力とを調整した。具体的には、第1の感光層32の厚みが1μmとなるように、温度50℃、圧力0.4MPa、加圧時間60秒の条件で加圧して第1の感光層32を基板41に接合した。その後、
図7(c)に示すように、第1の露光工程を実施した。第1の露光工程では、フォトマスク36を使用し、波長365nmの光を5000J/m
2の露光量で、支持体31を介して第1の感光層32に照射してパターン露光を行った。次に、温度50℃、5分間のPEBを行い、その後に、支持体31を第1の感光層32から剥離した。
【0070】
次に、
図7(e)に示すように、基板41の上に形成された第1の感光層32に対し、第2の感光層39を積層した。第2の感光層39は、厚み100μmの光学フィルムからなる支持体上に、スピンコート法で15μmの厚さに塗布し、50℃のオーブンで乾燥させることによって準備されたものである。第1の感光層32上への第2の感光層39の積層は、第2の感光層39が第1の感光層32に接するように支持体ごと第1の感光層32の上に載置して、真空ラミネート法によって行われた。その際、第1の感光層32を軟化しすぎないように、第1の感光層32の材料の軟化点に合わせて温度と圧力とを調整した。具体的には、温度70℃、圧力0.4MPa、加圧時間60秒の条件で第2の感光層39を第1の感光層32に接合した。次に、
図7(f)に示すように、第2の露光工程では、フォトマスク76を使用し、10000J/m
2の露光量で、波長365nmの光を第2の感光層39に照射し、パターン露光を行った。次に、温度50℃、5分間のPEBを行った。
【0071】
次に、
図7(g)に示すように、第2の感光層39に対し、第3の感光層70を積層した。第3の感光層70は、厚み100μmの光学フィルムからなる支持体上に、スピンコート法で10μmの厚さに塗布し、50℃のオーブンで乾燥させることによって準備されたものである。第2の感光層39上への第3の感光層70の積層は、第3の感光層70が第2の感光層39に接するように支持体ごと第2の感光層39の上に載置して、真空ラミネート法によって行われた。第3の感光層39の接合は、第1の感光層32の接合条件と同じ条件を用いた。次に、
図7(h)に示すように、第3の露光工程では、フォトマスク77を使用し、1000J/m
2の露光量で、波長365nmの光を第3の感光層70に照射し、パターン露光を行った。次に、温度90℃、5分間のPEBを行った。次に、枚葉ディップ現像装置を用いて、現像液としてPGMEAを使用して現像を行った。これにより、第1の感光層32と第2の感光層39と第3の感光層70のそれぞれの未露光部37が除去されて、
図7(i)の断面構造を有する、液体吐出ヘッド40の主要部分を得た。
【0072】
[第6の実施形態]
本発明に基づく構造体の製造方法は、液体吐出ヘッドの製造のみに用いられるものではない。基板の表面に凹部が形成されているときに、この凹部に蓋をするような形状あるいは凹部をまたぐような形状の構造体の製造にも使用することができる。
図9(a)〜
図9(h)は、本発明の第6の実施形態における構造体の製造過程を順を追って説明する断面図である。
【0073】
最初に、
図9(a)に示すように、第1の支持体である支持体81の上に第1の感光層82を形成する。支持体81としては、第5の実施形態での支持体31と同様のものを使用することができる。第1の感光層82は、感光性を有するフォトレジストであり、ポジ型であってネガ型であってもよいが、ここではポジ型のフォトレジストが用いられるものとする。支持体81上への第1の感光層82の形成方法としては、第5の実施形態で説明したものと同様の方法を使用することができる。
【0074】
次に、
図9(b)に示すように、支持体81上に形成した第1の感光層82を上下反転させ、第1の感光層82が基板84の一方の表面に接するように基板84上に載置する。基板84の一方の表面には、例えば溝状の凹部97が予め形成されている。凹部97は基板84を貫通する貫通孔であってもよい。凹部97は第1の感光層82によって塞がれる。その後、第5の実施形態と同様の方法によって、基板84に第1の感光層82を接合する。
【0075】
次に、
図9(c)に示すように、第1の露光工程を実施する。第1の露光工程では、第1の感光層82に対し、支持体84とフォトマスク86とを介して矢印方向に光を照射して露光処理を行う。その結果、第1の感光層82には、フォトマスク86の遮光部によって光が遮られた未露光部87と、光が照射された露光部88とが形成される。本実施形態では、ポジ型の第1の感光層82を用いて、凹部97に蓋をするか凹部97をまたぐような構造体を形成するため、凹部97の直上の位置と基板84における凹部97を取り囲む位置とに対応して未露光部87が形成されるようにする。露光部88はポジ型の第1の感光層82における第1の領域に該当する。未露光部87は第1の感光層82における第2の領域に該当して凹部97を少なくとも部分的に覆う領域として形成される。なお、第1の感光層82としてネガ型のものを用いる場合には、フォトマスク86における透過部と遮光部との配置を
図9(c)に示したものと逆にする必要がある。その後、次に、
図9(d)に示すように、第1の感光層82から支持体84を剥離し、基板84から支持体84を除去する。第1の感光層82からの支持体84の剥離は、第5の実施形態と同様に行われる。
【0076】
次に、
図9(a)〜
図9(d)に示した工程とは別個に、
図9(e)に示すように、第2の支持体である支持体91の上に、第2の感光層89を形成する。支持体91としては、第5の実施形態での支持体31と同様のものを使用することができる。なお、支持体91を介した露光は行わないので、支持体91は露光光に対して不透明なものであってもよい。第2の感光層89は、感光性を有するものではあれば特に限定されるものではないが、ここでは、第1の感光層82と同種類のポジ型のフォトレジストを使用している。第1の感光層82がポジ型であれば第2の感光層もポジ型であることが好ましく、第1の感光層82がネガ型であれば第2の感光層89もネガ型であることが好ましい。第2の感光層89は、第1の感光層82と同一の波長の光で感光するものであることが好ましく、例えば、波長365nmに対して感光性を有する。第2の感光層89の感度は、第1の感光層82の感度と同じかそれよりも低いことが好ましい。
【0077】
次に、
図9(f)に示すように、支持体91上に形成した第2の感光層89を上下反転させ、第2の感光層89が第1の感光層82に接するように、基板84上に形成されている第1の感光層82の上に第2の感光層89を載置する。このとき、第1の感光層82には、未露光部87と露光部88が形成されているものの第1の感光層82の上面が平坦であるため、第1の感光層82の上に第2の感光層89を安定して載置することができる。そして、第2の感光層89の軟化点を超える温度条件で第2の感光層89に圧力を加えることにより、第1の感光層82に第2の感光層89を積層して接合させる。その際、基板84上に形成されている第1の感光層82が軟化しすぎないように、第1の感光層82の材料の軟化点に合わせて温度と圧力とを調整することが好ましい。なお、後述するように、支持体91は、第2の感光層89を第1の感光層82に接合した後に、第2の感光層89から剥離することが好ましい。
【0078】
次に、
図9(g)に示すように、第2の露光工程を実施する。第2の露光工程では、フォトマスク92を介して矢印方向に光を照射して第2の感光層89の露光を行う。このとき、フォトマスク92を透過した光が、第2の感光層89の下側に位置する第1の感光層82にも達して第1の感光層82も感光するようにする。第2の露光工程においても第1の感光層82を感光させることにより、第1の露光工程の際に支持体81上に存在する異物のために第1の感光層82において未露光部となった部分についての露光が、第2の露光工程において補完されることとなる。その結果、本実施形態によれば、支持体81上の異物に起因する第1の感光層82におけるパターン不良の発生を防ぐことができる。また、第2の感光層89は本実施形態の構造体における最表層であり、第2の感光層89を支持する支持体91上に異物が存在すると、露光する際の阻害要因となりパターン不良を引き起こすおそれがある。そのため、第2の露光工程を開始する前に、第2の感光層89から支持体91を剥離する方が好ましい。また、支持体91を剥離した後に、第2の露光工程を実施する前に、第1の露光工程で用いたフォトマスク86を介する追加露光処理を行ってもよい。第2の露光工程で用いるフォトマスク92として、第1の露光工程で用いたフォトマスク86をそのまま用いてもよい。さらに、第2の露光工程としてフォトマスク92を用いた露光を行ったのちに、第1の露光工程で用いたフォトマスク86を用いて追加露光処理を行ってもよい。
【0079】
次に、
図9(h)に示すように、現像を行う。現像工程では、基板84上の第1の感光層82の露光部88と第2の感光層89の露光部88が現像液に溶解して同時に除去され、基板84の凹部97上に、第1の感光層82と第2の感光層89とがパターニングされた構造体が完成する。なお、現像液による現像工程ののちに、リンス液を用いた基板洗浄処理を行ってもよい。本実施形態においても、第1の露光工程の際に支持体81上の異物などの露光阻害物により第1の感光層82において露光阻害が発生しても、第2の露光工程によりこの露光阻害となった部分を解消できるので、パターン不良の発生を抑制することができる。
【0080】
[製造例5]
次に、第6の実施形態に基づいて構造体を実際に製造した例を説明する。基板84としてシリコン基板を使用した。第1の感光層82として、耐エッチング性を有するシリコン(Si)含有のポジ型フォトレジストを使用し、第5の実施形態と同様の方法で支持体81上に、厚さ1μmの第1の感光層82を形成した。基板84に第1の感光層82を接合するときは、第1の感光層82の厚さが1μmとなるように、温度90℃、圧力0.4MPa、加圧時間60秒の条件で第1の感光層82を真空下のラミネートにより基板84に接合した。次に、第1の露光工程を実施した。第1の露光工程では、フォトマスク86を使用し、5000J/m
2の露光量で、波長365nmの光を、支持体81を介して第1の感光層82に照射して、パターン露光を行った。次に、温度50℃、5分間のPEBを行い、その後、支持体81を第1の感光層82から剥離した。
【0081】
第2の感光層89としては、耐エッチング性を有するポジ型フォトレジストを使用し、第5の実施形態と同様の方法で、支持体91上に厚さ5μmに形成した。次に、基板84上に形成されている第1の感光層82上に、支持体91に保持された第2の感光層89を、真空下でのラミネート法を用いて積層した。その際、基板84上に形成された第1の感光層82が軟化しすぎないように、第1の感光層82の材料の軟化点に合わせて温度と圧力とを調整した。温度70℃、圧力0.4MPa、加圧時間60秒の条件で第2の感光層89を第1の感光層82に接合した。支持体91を剥離したのち、第1の露光工程と同様の条件で第2の露光工程を実施し、次にPEBを行った後に、現像工程を実施した。現像工程において、現像液には、TMAHを約2.3質量%含有するアルカリ性の水溶液を使用した。現像後、リンス液として純水を使用して基板84を洗浄し、構造体を完成させた。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明に基づく構造体の製造方法は、例えば、液体吐出ヘッドの製造に好ましく用いられるものである。このようにして製造された液体吐出ヘッドは、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に搭載可能である。そして、この液体吐出ヘッドを搭載した装置を用いることによって、紙、糸、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックなどの種々の被記録体に記録を行うことができる。特に本発明に基づいて製造された液体吐出ヘッドは、水系インクなどを用いたインクジェット記録ヘッドなどに好適である。さら本発明は、インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッド、例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷などの用途に用いられる液体吐出ヘッドの製造方法にも適用することができる。さらに本発明は、貫通孔が設けられていない基板あるいは貫通孔が設けられている基板に感光性樹脂組成物であるフォトレジストをパターニングすることによって構造体を製造する方法に適用することができる。