(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0011】
実施の形態1.
<MRI装置の構成>
図1は、MRI装置の外観を示す斜視模式図である。
図1に示すように、MRI装置は、静磁場発生部50と、寝台30とを含む。静磁場発生部50は、後述するMRI用の超電導膜ネットである超電導コイル装置を含む。静磁場発生部50は、ボア40内に静磁場を発生する。
【0012】
<超電導コイル装置の構成>
図2は、本発明の実施の形態1に係る超電導コイル装置の斜視断面模式図である。
図3は、
図2に示した超電導コイル装置の第1冷媒容器部を示す断面模式図である。
図4は、
図2に示した超電導コイル装置の配管構成図である。
【0013】
図2〜
図4に示す超電導コイル装置100は、巻枠部材1と、第1超電導コイル2aおよび第2超電導コイル2bを含む複数の超電導コイルと、シールドコイル9と、第1冷媒容器部25aと、第2冷媒容器部25bと、真空槽4とを主に備える。巻枠部材1は、外周表面1a(
図3参照)を有する円筒状の部材である。
【0014】
複数の超電導コイルは、互いに間隔を隔てて巻枠部材1に巻きつけられている。具体的には、複数の超電導コイルのうちの1つである第1超電導コイル2aは、巻枠部材1の外周表面1a(
図3参照)上に配置され、巻枠部材1を周方向に囲む。第1超電導コイル2aの巻回の中心軸は、実質的に巻枠部材1の中心軸と重なっている。複数の超電導コイルのうちの1つである第2超電導コイル2bは、巻枠部材1の外周表面上に、巻枠部材1の延在方向である第1方向において第1超電導コイル2aから離れて配置される。第2超電導コイル2bは、巻枠部材1を周方向に囲む。
【0015】
複数の超電導コイルは、いずれも冷媒容器の内部に配置されている。
図3に示すように、第1冷媒容器部25aは、外周表面1a上において、第1超電導コイル2aを覆い、第1超電導コイル2aを冷却するための冷媒7を保持する。第2冷媒容器部25bは、第1冷媒容器部25aと別体であり、第2超電導コイル2bを覆う。第2冷媒容器部25bは、第1冷媒容器部25aから間隔を隔てて配置されている。第2冷媒容器部25bは、第2超電導コイル2bを冷却するための冷媒7を保持する。
【0016】
また、巻枠部材1の表面から離れた位置に2つのシールドコイル9が配置されている。シールドコイル9も巻枠部材1の周囲を囲むように配置されている。シールドコイル9の内径は第1超電導コイル2aおよび第2超電導コイル2bの外径より大きい。2つのシールドコイル9は、巻枠部材1の延在方向における両端部に配置されている。巻枠部材1、複数の超電導コイルおよびシールドコイル9を内部に保持するように真空槽4が配置されている。真空槽4の内部は断熱のため減圧され真空となっている。
【0017】
複数の超電導コイルを冷却する冷媒を保持する冷媒容器は基本的に同じ構造である。以下、第1超電導コイル2aを覆うように配置された第1冷媒容器部25aを例としてその構造を説明する。
【0018】
図3に示すように、上記超電導コイル装置100において、第1冷媒容器部25aは、第1部分と第2部分とを含む。第1部分は、第1超電導コイル2aの外周側に第1超電導コイル2aと間隔を隔てて位置する蓋部材3である。第2部分は、第1方向において第1超電導コイル2aを挟むように巻枠部材1の外周表面1aから突出し、第1超電導コイル2aに沿って延在する一対の壁部8a、8bである。一対の壁部8a、8bにより挟まれた領域は、第1超電導コイル2aを配置するための溝となっている。蓋部材3は、一対の壁部8a、8bの上端部を繋ぐように配置されている。一対の壁部8a、8bと蓋部材3とは気密に接合されている。たとえば、一対の壁部8a、8bと蓋部材3とは溶接により接合されてもよく、ロウ材を用いて接合されてもよい。蓋部材3と一対の壁部8a、8bとにより囲まれた空間には第1超電導コイル2aと冷媒7とが配置される。異なる観点から言えば、蓋部材3と一対の壁部8a、8bとにより囲まれた空間にはれ冷媒7としての液体ヘリウムが充填されている。第1超電導コイル2aはヘリウムなどの冷媒7により冷却される。つまり、蓋部材3と一対の壁部8a、8bと巻枠部材1の一部とによりヘリウム槽が構成される。
【0019】
複数の超電導コイルに関して、上記第1超電導コイル2a以外の超電導コイルも、上記の蓋部材3と一対の壁部8a、8bと巻枠部材1の一部とにより構成されるヘリウム槽の内部に冷媒とともに配置される。また、シールドコイル9も超電導線材からなる超電導コイルであり、当該シールドコイル9を個別に囲むように形成されたヘリウム槽の内部に冷媒とともに配置される。
【0020】
図4に示すように、本実施形態に係る超電導コイル装置100では、各超電導コイルおよびシールドコイルを個別に囲むヘリウム槽は、それぞれ配管10を介してヘリウム冷凍機12に接続されている。たとえば、配管10は各ヘリウム槽の蓋部材3に形成された開口部に接続されている。上述した超電導コイルおよびシールドコイルを個別に囲むヘリウム槽は、すべて配管10を介して繋がっている。各ヘリウム槽において、配管10との接続部は鉛直方向における上側、より好ましくは鉛直方向において最上部に位置することが好ましい。この場合、第1超電導コイル2aおよび第2超電導コイル2bを含む複数の超電導コイルおよびシールドコイル9の全体を冷媒7に浸漬した状態とすることができる。この結果、複数の超電導コイルおよびシールドコイル9を冷媒7により覆われた状態にできる。上記のような構成において、ヘリウム冷凍機12は、複数の超電導コイルおよびシールドコイル9より鉛直方向における上側に設置することが好ましい。なお、ヘリウム槽の鉛直方向における最上部に上記接続部を配置しない場合、当該接続部より上側に冷媒7としてのヘリウムが存在しない状態が発生し得る。この場合、超電導コイルがクエンチする可能性がある。
【0021】
また、複数の超電導コイルおよびシールドコイル9のそれぞれを個別に収容するヘリウム槽は、鉛直方向の下側部分においても配管11を介して互いに接続されている。このような構成とすることにより、各ヘリウム槽へヘリウム冷凍機12より不均等に冷媒7としてのヘリウム(液体ヘリウム)が流れた場合であっても、各ヘリウム槽をつなぐ配管11を通して、各ヘリウム槽間で冷媒7を流通させることにより、各ヘリウム槽での冷媒7の液面高さを同じにすることができる。この結果、第1超電導コイル2aおよび第2超電導コイル2bを含む複数の超電導コイルと、シールドコイル9とを均等に冷却できる。
【0022】
上記超電導コイル装置100は、安全弁26をさらに備える。安全弁26は、第1冷媒容器部25aと配管10を介して接続される。なお、安全弁26は、配管10を介してすべてのヘリウム槽と接続されている。安全弁26は、第1冷媒容器部25aを含むすべてのヘリウム槽の内部圧力が基準値を超えた場合に、第1冷媒容器部25aを含むヘリウム槽の内部から超電導コイル装置100の外部へ冷媒7を放出するように構成されている。安全弁26の構成としては、従来周知の任意の構成を採用できる。
【0023】
<超電導コイルの製造方法>
次に超電導コイル装置100の製造方法について説明する。
【0024】
最初に巻枠部材1に、超電導コイルとなるべき超電導線材を巻きつける。巻枠部材1が真空槽の外壁の一部も兼ねる場合、吸着ガスの放出の観点から巻枠部材1の材料としてステンレス鋼もしくはアルミニウム合金を用いることが望ましい。また、超電導線材を巻枠部材1の外周表面1a上に整列して巻線するため、各超電導コイルを配置する場所に巻枠部材1の溝を構成する一対の壁部8a、8bを形成しておくことが好ましい。一対の壁部8a、8bを形成する方法としては、溶接により壁部となるべき部材を巻枠部材1の外周表面1aに接合する、あるいは一対の壁部8a、8bを巻枠部材1の鋳造時に同時に巻枠部材1と一体として形成する、といった方法が考えられる。ここで、ヘリウム槽は内部にヘリウムを保持する必要があるため、一対の壁部8a、8bと巻枠部材1の外周表面1aとの境界部などから冷媒がリークしないよう、十分な注意が必要である。なお、上述した超電導コイルと同様に、シールドコイル9となるべき超電導線材も巻枠部材1の外周を巻回するように配置される。
【0025】
次に複数の超電導コイルとシールドコイル9とに樹脂を含浸させて当該樹脂を固化する。この時、複数の超電導コイルおよびシールドコイル9について一個ずつ樹脂を含浸させてもよいし、全てのコイルについてまとめて樹脂を含浸させてもよい。
【0026】
次に超電導コイルが配置された溝を構成する一対の壁部8a、8bに、蓋部材3を固定する。一対の壁部8a、8bに対する蓋部材3の固定方法としては、たとえば溶接法を用いることができる。第1冷媒容器部25aなどのヘリウム槽は内部に冷媒7としての液体ヘリウムを注入するため、リークが許されない。そのため、巻枠部材1を構成する材料、一対の壁部8a、8bを構成する材料、および蓋部材3の材料は溶接性の観点から同じ材料を用いることが好ましい。ただし、第1超電導コイル2aおよび第2超電導コイル2bを含む複数の超電導コイルの形状とシールドコイル9の形状とは互いに異なるので、それぞれを囲むヘリウム槽を構成するための蓋部材3の形状も互いに異なる。
【0027】
巻枠部材1の溝の高さを規定する一対の壁部8a、8bの高さにより各ヘリウム槽に貯蔵される冷媒7としての液体ヘリウムの量が増減する。当該液体ヘリウムの量が少なければ、超電導コイル装置100における液体ヘリウムの使用量が削減できる。しかし、当該液体ヘリウムの量が少なすぎると複数の超電導コイルとシールドコイル9とを、超電導状態が維持される温度まで冷却することが困難になる。そのため、全ての超電導コイルとシールドコイル9とを冷却するためのヘリウム槽の合計内容積は、30リットル以上であることが望ましい。
【0028】
また、超電導コイルまたはシールドコイルにおいてクエンチが発生した場合、複数の超電導コイルおよびシールドコイル9の温度が急激に上昇し、冷媒7としての液体ヘリウムが気化する。この結果、ヘリウムで満たされたヘリウム槽内部の圧力が急激に上昇する。そのため、ヘリウム槽を構成する蓋部材3や一対の壁部8a、8bに対して急激に圧力がかかり、最悪の場合、蓋部材3または蓋部材3と一対の壁部8a、8bとの接続部である溶接部が破損する。当該破損が発生した部分から、気化したヘリウムが真空槽4の内部の空間5に流入する可能性がある。また、真空槽4の内部の空間5に流入したヘリウムの量が多い場合、真空槽4の内部の空間5における圧力が上昇し、真空槽4も破損する恐れもある。この対策として、上述のように安全弁26を設置するとともに、ヘリウム槽を構成する蓋部材3の板厚をたとえば2.0mm以上にすることが好ましい。
【0029】
次に、
図4に示すようにヘリウム槽を構成する蓋部材3に、ヘリウム冷凍機につながる配管10とヘリウム槽間をつなぐ配管11とを接続する。ヘリウム冷凍機12とヘリウム槽とを繋ぐ配管10の材料と、複数のヘリウム槽間をつなぐ配管11の材質とは、巻枠部材1の材料と同様の観点から、ステンレス鋼を用いることが望ましい。また、蓋部材3と配管10、11との接合方法としては、溶接もしくはろう付けが望ましい。その後、ヘリウム槽を構成するための蓋部材3を取りつけた巻枠部材1と真空槽4とを合体させる。さらに、配管10をヘリウム冷凍機12と接続する。このようにして、超電導コイル装置100を得る。
【0030】
<作用効果>
本実施形態に従った超電導コイル装置100は、巻枠部材1と、第1超電導コイル2aと、第2超電導コイル2bと、第1冷媒容器部25aと、第2冷媒容器部25bとを備える。巻枠部材1は、外周表面1aを有する円筒状の部材である。第1超電導コイル2aは、巻枠部材1の外周表面上に配置され、巻枠部材1を周方向に囲む。第2超電導コイル2bは、巻枠部材1の外周表面上に、巻枠部材1の延在方向である第1方向において第1超電導コイル2aから離れて配置される。第2超電導コイル2bは、巻枠部材1を周方向に囲む。第1冷媒容器部25aは、外周表面1a上において、第1超電導コイル2aを覆い、第1超電導コイル2aを冷却するための冷媒7を保持する。第2冷媒容器部25bは、第1冷媒容器部25aと別体であり、第2超電導コイル2bを覆う。第2冷媒容器部25bは、第2超電導コイル2bを冷却するための冷媒7を保持する。
【0031】
このようにすれば、第1超電導コイル2aおよび第2超電導コイル2bの両方を内部に保するような冷媒容器に保持される冷媒の体積と比べて、第1冷媒容器部25aおよび第2冷媒容器部25bの内部に保持される冷媒7の体積を小さくできる。つまり超電導コイル装置100における冷媒7の使用量を削減できる。また、異なる観点から言えば、上述の構成により、冷媒7としてのヘリウムで満たされた第1冷媒容器部25aおよび第2冷媒容器部25bを含むヘリウム槽の内部空間の体積が小さくなることで、冷媒7の使用量を低減できる。そして、冷媒7としての液体ヘリウムの量を、複数の超電導コイルとシールドコイル9とについて超電導状態を維持することが可能な最低限の量となるように設定できる。この結果、従来の巻枠部材1全体を覆うヘリウム槽の構造と比較し、大幅に冷媒7としての液体ヘリウムの量を削減できる。
【0032】
さらに、第1冷媒容器部25aおよび第2冷媒容器部25bのサイズは上述した第1超電導コイル2aおよび第2超電導コイル2bの両方を内部に保するような冷媒容器のサイズより小さいため、たとえば蓋部材3を構成する材料の量を削減でき、当該冷媒容器の製造コストの増大を抑制できる。
【0033】
上記超電導コイル装置100において、第1冷媒容器部25aは、第1部分と第2部分とを含む。第1部分は、第1超電導コイル2aの外周側に第1超電導コイル2aと間隔を隔てて位置する蓋部材3である。第2部分は、第1方向において第1超電導コイル2aを挟むように巻枠部材1の外周表面1aから突出し、第1超電導コイル2aに沿って延在する一対の壁部8a、8bである。蓋部材3は、一対の壁部8a、8bを繋ぐように配置されている。
【0034】
この場合、一対の壁部8a、8bを、第1および第2超電導コイル2bを構成する超電導線材を巻枠部材1に巻きつける際のガイドとして利用し、その後蓋部材3を一対の壁部8a、8bに接続することで、第1冷媒容器部25aおよび第2冷媒容器部25bを構成できる。
【0035】
上記超電導コイル装置100は、安全弁26をさらに備える。安全弁26は、第1冷媒容器部25aと接続される。安全弁26は、第1冷媒容器部25aの内部圧力が基準値を超えた場合に、第1冷媒容器部25aの内部から超電導コイル装置100の外部へ気化した冷媒7を放出するように構成されている。この場合、第1および第2超電導コイル2a、2bにおいてクエンチが発生し、液体ヘリウムなどの冷媒7が気化して第1冷媒容器部25aの内部圧力が上昇しても、当該圧力が上記基準値を大きく超えるといった状態の発生を避けることができる。このため、当該圧力により第1冷媒容器部25aが破損するといった問題の発生を抑制できる。
【0036】
実施の形態2.
<超電導コイル装置の構成および作用効果>
図5は、本発明の実施の形態2に係る超電導コイル装置の配管構成図である。
図5に示した超電導コイル装置は、基本的には
図2〜
図4に示した超電導コイル装置と同様の構成を備えるが、ヘリウム槽とヘリウム冷凍機12とを接続する配管経路の構成、および配管11が配置されていない点が
図2〜
図4に示した超電導コイルと異なっている。すなわち、
図5に示した超電導コイル装置は、バッファタンク13を備え、当該バッファタンク13はヘリウム冷凍機12と接続されている。また、バッファタンク13は第1冷媒容器部25a、第2冷媒容器部25bを含む複数のヘリウム槽に接続されている。
【0037】
ここで、第1冷媒容器部25aなどのヘリウム槽に収容されている超電導コイルやシールドコイル9の超電導状態を維持するために必要な温度(たとえば臨界温度)と実際のコイルの温度との間に余裕がある場合、実施の形態1に示すようにヘリウム槽の上部をヘリウム冷凍機12につなぐ配管10と、ヘリウム槽の下部において各ヘリウム槽間をつなぐ配管11という2系統の配管は必ずしも必要ではない。この場合、上述のように、ヘリウム冷凍機12をバッファタンク13に接続し、さらにバッファタンク13から各ヘリウム槽へ並列に延びる配管10により、バッファタンク13と各ヘリウム槽とを接続する。当該配管10は、各ヘリウム槽の鉛直方向の最上部に接続される。各ヘリウム槽とバッファタンク13とを接続する複数の配管10がバッファタンク13に接続される接続部の位置は、鉛直方向における位置を同じにする、すなわち同じ高さにすることが好ましい。このようにすれば、各ヘリウム槽へバッファタンク13から流入する冷媒7としての液体ヘリウムの流量に差が発生することを抑制できる。この結果、各ヘリウム槽に収容される超電導コイルおよびシールドコイル9を均等に冷却できる。
【0038】
また、バッファタンク13から各ヘリウム槽へ並列に配管10を接続しているので、バッファタンク13から各ヘリウム槽を1系列の配管により直列に接続した場合のような不具合の発生を防止できる。すなわち、各ヘリウム槽が直列に接続されると、ヘリウム冷凍機12に近いヘリウム槽では超電導コイルが十分冷却される一方、当該ヘリウム槽で液体ヘリウムの温度が上がり、バッファタンク13から相対的に遠くに位置するヘリウム槽では超電導コイルが十分冷却されない、といった問題が発生する恐れがある。このような問題の発生を避けるため、ヘリウム冷凍機12とヘリウム槽とは配管10により並列に接続されることが好ましい。
【0039】
図5に示した構成によれば、
図2〜
図4に示した超電導コイル装置による効果に加えて、配管11(
図3参照)を削減できるため、超電導コイル装置の部品コストや組立作業コストといった製造コストを低減できる。
【0040】
実施の形態3.
<超電導コイル装置の構成>
図6は、本発明の実施の形態3に係る超電導コイル装置の第1冷媒容器部を示す断面模式図である。
図6に示した超電導コイル装置は、基本的には
図2〜
図4に示した超電導コイル装置と同様の構成を備えるが、ヘリウム槽の構造が
図2〜
図4に示した超電導コイルと異なっている。すなわち、
図6に示した超電導コイル装置では、第1冷媒容器部25aは、第1部分と第2部分とを含む。第1部分と第2部分とは、
図6に示すように一体として構成されている。第1冷媒容器部25aの断面形状は、直線状の底部を有するU字形状またはアーチ形状である。第1部分は、第1超電導コイル2aの外周側に第1超電導コイル2aと間隔を隔てて位置する蓋部分27aである。蓋部分27aは巻枠部材1の外周表面1aの周方向に沿って延びる帯状の形状を有する。第2部分は、第1方向における蓋部分27aの両端28a、28bから外周表面1aに向けて延びる一対の壁部27b、27cである。壁部27b、27cは、外周表面1aに対して交差する方向に延びるとともに、巻枠部材1の外周表面1aの周方向に沿って延びる帯状の形状を有する。当該一対の壁部27b、27cは、巻枠部材1の外周表面1aにおいて第1超電導コイル2aを第1方向において挟む位置に接続されている。一対の壁部27b、27cは、外周表面1aとたとえば溶接により固定されている。
【0041】
ここで、MRI用の超電導コイル装置の場合、実施の形態1で説明した製造方法と異なる製造方法を採用する場合がある。たとえば、巻枠部材1に超電導線材を巻回せずに、予め外部で巻線して第1超電導コイル2aを製作する。その後、巻枠部材1に第1超電導コイル2aを挿入する。この場合、巻枠部材1の外周表面1aには溝を構成する一対の壁部8a、8b(
図3参照)が形成されていない。そのため、実施の形態1のように巻枠部材1の溝を形成する一対の壁部8a、8b(
図3参照)に蓋部材3を溶接で固定することができない。本実施の形態は、このように巻枠部材1に溝が存在しない場合の構成例を示している。
【0042】
図6に示した超電導コイル装置の製造方法は、基本的には
図2〜
図4に示した超電導コイル装置の製造方法と同様であるが、外周表面1aに壁部などが形成されていない筒状の巻枠部材1に、予め形成しておいた超電導コイルを挿入する点、また、当該超電導コイルを覆うように、断面形状がU字形の第1冷媒容器部25aを巻枠部材1に接続する点が異なっている。第1冷媒容器部25aはたとえば溶接により巻枠部材1に固定される。
【0043】
<作用効果>
上記超電導コイル装置100において、第1冷媒容器部25aは、第1部分と第2部分とを含む。第1部分は、第1超電導コイル2aの外周側に第1超電導コイル2aと間隔を隔てて位置する蓋部分27aである。第2部分は、第1方向における蓋部分27aの両端28a、28bから外周表面1aに向けて延びる一対の壁部27b、27cである。当該一対の壁部27b、27cは、巻枠部材1の外周表面1aにおいて第1超電導コイル2aを第1方向において挟む位置に接続されている。
【0044】
この場合、
図2〜
図4に示した超電導コイル装置により得られる効果に加えて、円筒状の巻枠部材1の任意の位置に第1超電導コイル2aを配置し、その後第1冷媒容器部25aを第1超電導コイル2aにかぶせるように配置して巻枠部材1に固定できる。つまり、巻枠部材1において第1超電導コイル2aの配置を任意に設定できる。さらに、巻枠部材1において
図3に示すような壁部8a、8bを形成しないので、巻枠部材1の切削加工もしくは壁部8a、8bの溶接が不要となり、加工費の削減が可能となる。
【0045】
実施の形態4.
<超電導コイル装置の構成および作用効果>
図7は、本発明の実施の形態4に係る超電導コイル装置の第1冷媒容器部を示す断面模式図である。
図7に示した超電導コイル装置は、基本的には
図2〜
図4に示した超電導コイル装置と同様の構成を備えるが、ヘリウム槽の構造が
図2〜
図4に示した超電導コイルと異なっている。すなわち、
図7に示した超電導コイル装置では、第1冷媒容器部25aは、第1部分と第2部分とを含む。第1部分は、断面形状がL字状の部材である。第1部分は、蓋部分27aと、第1壁部27bとを有する。蓋部分27aは、第1超電導コイル2aの外周側に第1超電導コイル2aと間隔を隔てて位置する。蓋部分27aは巻枠部材1の外周表面1aの周方向に沿って延びる帯状の形状を有する。蓋部分27aと第1超電導コイル2aとの間の空間は冷媒7としての液体ヘリウムが配置される領域である。第1壁部27bは、蓋部分27aにおいて第1方向の一方端28aから外周表面1aに向けて延びる。壁部27bは、外周表面1aに対して交差する方向に延びるとともに、巻枠部材1の外周表面1aの周方向に沿って延びる帯状の形状を有する。第2部分は、巻枠部材1の外周表面1aにおいて、第1超電導コイル2aの第1方向における一方の端部と隣接する位置から突出する第2壁部8cである。第2壁部8cは、第1超電導コイル2aに沿って延在する。蓋部分27aの第1方向の他方端28bと第2壁部8cとは接続されている。第1壁部27bは、巻枠部材1の外周表面1aにおいて第1超電導コイル2aの第1方向における他方の端部と隣接する位置に接続される。蓋部分27aの他方端28bと第2壁部8cとの接続方法、および第1壁部27bと巻枠部材1との接続方法は任意の方法を採用できるが、たとえば溶接、あるいはロウ付けによりこれらの部材を接続してもよい。
【0046】
この場合、巻枠部材1の外周表面1aにおいて、第1超電導コイル2aに対して1つの第2壁部8cのみが形成されているため、実施の形態3の場合と同様に、予めコイル状に形成された第1超電導コイル2aを巻枠部材1にはめ込み、第2壁部8cに沿うように配置した後、蓋部分27aと第1壁部27bとを有する第1部分を第1超電導コイル2aに被せるように巻枠部材1に固定することができる。
【0047】
実施の形態5.
<超電導コイル装置の構成>
図8は、本発明の実施の形態5に係る超電導コイル装置の第1冷媒容器部を示す断面模式図である。
図9は、
図8に示した超電導コイル装置の第1冷媒容器の側面模式図である。
図10は、
図8に示した超電導コイル装置のシール部材を説明するための模式図である。
【0048】
図8〜
図10に示す超電導コイル装置は、基本的には
図2〜
図4に示した超電導コイル装置と同様の構成を備えるが、ヘリウム槽の構造が
図2〜
図4に示した超電導コイルと異なっている。すなわち、
図8〜
図10に示した超電導コイル装置では、一対の壁部8a、8bと蓋部材3との接続部にシール部材16が配置されている点、および蓋部材3の構成が
図2〜
図4に示した超電導コイル装置と異なっている。蓋部材3は、
図9に示すように側面から見た形状がU字状の第1蓋部分3aおよび第2蓋部分3bと、固定部材17とを有する。第1蓋部分3aおよび第2蓋部分3bは、巻枠部材1の周方向に延びるように配置されている。固定部材17はたとえば締結ボルトである。固定部材17は、第1蓋部分3aと第2蓋部分3bとの接続部において第1蓋部分3aと第2蓋部分3bとを固定する。
【0049】
ここで、MRI用の超電導コイルの場合、精度よく画像を撮影するには超電導コイルの位置精度を±1.0mm以下にする必要がある。しかし、巻枠部材1にヘリウム槽を設置するために、たとえば蓋部材3を壁部8a、8bと溶接すると、溶接時の熱歪によって、巻枠部材1が大幅に変形する可能性がある。このような変形の発生を避けるため、本実施の形態では、蓋部材3と巻枠部材1との溶接を行わない構成を採用する。
【0050】
図8に示すように、巻枠部材の外周表面1aから突出するように形成された一対の壁部8a、8bの頂部にOリング溝である溝16aが形成されている。当該溝16aの内部にはシール部材16としてのOリングが配置されている。シール部材16は蓋部材3と壁部8a、8bとに接触し、蓋部材3と壁部8a、8bとの接続部における気密性を高めている。配管構造などの他の構成は、
図2〜
図4に示した超電導コイル装置と同様である。
【0051】
<製造方法>
次に
図8に示した超電導コイル装置の製造方法について説明する。まず、実施の形態1に係る超電導コイル装置の製造方法と同様に、巻枠部材1の一対の壁部8a、8b間に超電導線を巻線して第1超電導コイル2aを構成する。次に第1超電導コイル2aに樹脂を含浸する。その後、シール部材16を壁部8a、8bの溝16aに設置する。尚、巻枠部材1の溝を構成するための壁部8a、8bを形成するため切削加工は必ず必要であるため、当該切削加工時に合わせて溝16aの加工を行うことは可能である。したがって、溝16aを形成することによる加工費の増加は軽微である。
【0052】
次に
図9に示すようにシール部材16の上部に、左側ヘリウム槽の蓋である第1蓋部分3aを設置する。さらに、右側ヘリウム槽の蓋である第2蓋部分3bを、上記第1蓋部分3aとは反対側に設置する。第1蓋部分3aおよび第2蓋部分3bは、それぞれ端部に固定部材17を通すためのボルト穴が形成されたフランジ部を含む。固定部材17としてはたとえば締結ボルトを用いることができる。
【0053】
第1蓋部分3aと第2蓋部分3bとを構成する材料は、巻枠部材1の材料と同じ材質にするか、当該巻枠部材1を構成する材料より線膨張係数が大きいものを選択することが好ましい。
【0054】
ここで、巻枠部材1の材料がアルミニウムであり、第1蓋部分3aおよび第2蓋部分3bの材料がステンレスである場合のように、第1蓋部分3aおよび第2蓋部分3bの材料の線膨張係数が巻枠部材1の材料の線膨張係数より小さい場合を考える。この場合、超電導状態を作るために第1超電導コイル2aを冷却すると同時に、ヘリウム槽を構成する蓋部材3および巻枠部材1も冷却される。この時、材料の線膨張係数の差により、巻枠部材1の収縮量に対して、蓋部材3の収縮量が小さい。したがって、巻枠部材1とヘリウム槽の蓋部材3との間に隙間が発生する。その結果、ヘリウム槽中から液体ヘリウムが真空槽4の内部の空間5に漏れ出す。この結果、第1超電導コイル2aが十分冷却されず、クエンチが発生する恐れがある。そこで、第1蓋部分3aと第2蓋部分3bとを構成する材料として、巻枠部材1の材料と同じ材料、または当該巻枠部材1を構成する材料より線膨張係数が大きい材料ものを選択することで、クエンチの発生を抑制できる。
【0055】
次に、第1蓋部分3aと第2蓋部分3bとの対向するフランジ部を固定するように、当該フランジ部に形成されたボルト穴に締結ボルトである固定部材17を固定する。このようにして、左側ヘリウム槽の蓋である第1蓋部分3aのフランジ部と右側ヘリウム槽の蓋である第2蓋部分3bのフランジ部との間のシール部材16と、巻枠部材1の壁部8a、8b(
図8参照)と蓋部材3を構成する第1蓋部分3aおよび第2蓋部分3bとの間のシール部材16を押しつぶし、シール部材16が配置された接続部における気密性を確保する。これにより、
図8に示すようにヘリウム槽を構成する蓋部材3第1超電導コイル2aとの間に冷媒7としての液体ヘリウムで満たされた空間が生成される。
【0056】
尚、
図10に示すように、上述したシール部材16の構造は、1本でヘリウム槽の蓋部材3の外形に沿った形状にする必要がある。つまり、シール部材16は、2つの溝16a(
図8参照)の内部に配置される2つの環状部分と、当該環状部分を上下でつなぎ、固定部材17で固定される2つのフランジ部により挟まれるU字形状部20とを含む。なお、
図10では+印により締結ボルト固定部21が示されている。
【0057】
もし、Oリングとして、U字形状部20が存在しない通常の円形状のOリングを2本、それぞれ溝16aに配置した場合、固定部材17が配置されたフランジ部ではシール材としてのOリングが存在しないので、当該フランジ部において冷媒7のリークが発生する。この結果、冷媒7としての液体ヘリウムが真空槽4に流出し、超電導コイルの冷却が不十分となり超電導コイルのクエンチが発生する恐れがある。本実施の形態では、
図10に示すようにU字形状部20を含むシール部材16を用いることで、このようなクエンチの発生を抑制できる。
【0058】
ここで、
図10に示すように固定部材17による固定部は、シール部材16のU字形状部20の外側に配置することが好ましい。なお、もし固定部材17による固定部をU字形状部20の内側に配置した場合、固定部材17を通すフランジ部のねじ穴などから冷媒7が真空槽4(
図2参照)中に流出し、超電導コイルがクエンチする恐れがある。本実施の形態では、
図10に示すようにU字形状部20の外側において固定部材17による固定部を配置するので、このようなクエンチの発生を抑制できる。
【0059】
<作用効果>
上記超電導コイル装置100は、シール部材16をさらに備える。シール部材16は、第1部分としての蓋部材3と第2部分としての一対の壁部8a、8bとの接続部に配置される。なお、上記シール部材16は、他の実施の形態に係る超電導コイル装置に適用してもよい。たとえば、
図7に示した超電導コイル装置において、蓋部分27aと第2壁部8cとの接続部にシール部材16を配置してもよい。また、蓋部材27aまたは第2壁部8cにおいて当該シール部材16が接する領域に溝を形成してもよい。また、第1壁部27bと巻枠部材1の外周表面1aとの接続部にシール部材16を配置してもよい。第1壁部27bと外周表面1aとにおいてシール部材16が接する領域に溝を形成してもよい。蓋部分27aと第1壁部27bとからなる第1部分は、本実施の形態の蓋部材3のように巻枠部材1の周方向に沿って分割され複数の部品からなっていてもよい。当該複数の部品の接続部は本実施の形態における蓋部材3における第1蓋部分3aと第2蓋部分3bとの接続部の構造と同様の構成を採用できる。
【0060】
この場合、当該シール部材16を用いることで、蓋部材3と一対の壁部8a、8bとの接続方法として溶接以外の方法を用いることができる。そのため、巻枠部材1とヘリウム槽の蓋部材3との間の溶接がなくなることで、巻枠部材1における溶接に起因する歪の発生を防止できる。したがって、第1超電導コイル2aなどの超電導コイルの位置精度が向上する。この結果、精度よくMRI画像の撮影が可能となり、かつ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、蓋部材3と巻枠部材1との間の接続部における、リークが全く許されない難易度の高い溶接が必要なくなるため、超電導コイル装置の製造の難易度を下げることができる。
【0061】
上記超電導コイル装置100において、蓋部材3は、第1蓋部分3aと、第2蓋部分3bと、固定部材17とを有する。第1蓋部分3aおよび第2蓋部分3bは、巻枠部材1の周方向に延びるように配置されている。固定部材17は、第1蓋部分3aと第2蓋部分3bとの接続部において第1蓋部分3aと第2蓋部分3bとを固定する。
【0062】
この場合、蓋部材3を一対の壁部8a、8bと接続するときの作業を容易に行うことができる。
【0063】
上記超電導コイル装置100において、蓋部材3を構成する材料の線膨張係数は、一対の壁部8a、8bを構成する材料の線膨張係数以上である。この場合、超電導コイル装置を運転するために一対の壁部8a、8bと蓋部材3とが他の機器とともに冷却された際、蓋部材3の収縮量を、一対の壁部8a、8bの収縮量と同等以上にすることができる。このため、一対の壁部8a、8bの収縮量が蓋部材3の収縮量より多くなることで蓋部材3と一対の壁部8a、8bとの間に隙間が空き、冷媒7が漏れるといった問題の発生を防止できる。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。