(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るパネル収納容器1について詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
[パネル収納容器の全体構成]
図1は、本発明に係る第1実施形態のパネル収納容器1の分解斜視図である。
図2は、容器本体20の正面図である。
図3は、容器本体20の下面図である。なお、
図1において、X軸に沿って延在するX方向を左右方向とし、Y軸に沿って延在するY方向を前後方向とし、Z軸に沿って延在するZ方向を上下方向とする。
【0013】
図1から
図3に示すように、本実施形態のパネル収納容器1は、複数枚(例えば、6枚、12枚・・・25枚)の矩形形状のパネルPを収納する容器本体20と、容器本体20の正面に形成される開口部21を開閉自在に覆う蓋体40と、を備える。
【0014】
パネル収納容器1は、電子部品を製造する製造装置(製造工程)に使用されるものであり、例えば、パネルPを移送する際に使用される。本実施形態では、パネル収納容器1に収納されるパネルPとしては、サイズが300mm×300mmである小型のものを用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、サイズが600mm×600mmである大型のものなどを用いてもよい。
【0015】
容器本体20は、正面に開口部21を有するフロントオープンボックスタイプの容器であり、パネルPの左右端部を支持するパネル支持部30と、パネルPの左右中央部を支持する中央サポート部60を有している。具体的には、左右の側壁22a,22bの内面に、パネル支持部30が対設され、背面壁28の内面に、中央サポート部60が設けられている。パネル支持部30及び中央サポート部60の詳細は後述する。なお、本実施形態の容器本体20は、直方体形状に組み立てられた枠体に、その上面、下面、左側面、右側面及び背面を気密的に覆う壁部材を組付けて構成されるが、容器本体20の構造は、これに限定されない。
【0016】
また、パネル収納容器1の内部の清浄性や低湿度を保つようにガス置換を行うために、容器本体20の底板23には、容器本体20内に不活性ガスを給気し、又は、容器本体20内のエアを排気する給排気部50が複数設けられてもよい。本実施形態では、給排気部50は、例えば、開口部21側の2か所が排気部となり、背面(奥側)の2か所が給気部となるが、給気部及び排気部の数量や位置は、図示したものに限らない。あるいは、給排気部50は、蓋体40の側に設けられてもよい。
【0017】
また、底板23の底面には、搬送機械又は加工装置の位置決め手段に支持される装置位置決め部24が少なくとも3か所に設けられる。
【0018】
容器本体20の天板25の上面には、製造工場の天井搬送機構に保持される搬送用のロボティックフランジ26(第1被搬送用部品)が設けられ、容器本体20の左右の側壁22a,22bの外面には、搬送機械に保持される搬送用のリフトフランジ27(第2被搬送用部品)が前後方向に沿って突出形成されている。さらに、容器本体20の天板25の上面の左右端部には、作業員がパネル収納容器1を搬送できるようにハンドル29(第3被搬送用部品)が4か所に設けられている。
【0019】
一方、蓋体40は、シールガスケット(図示せず)を介して容器本体20の開口部21を気密状態で閉止するもので、蓋本体41と、容器本体20の開口部21を閉止する蓋体40を施錠又は解錠する施錠機構42(ロック手段)と、蓋本体41の容器内面側に取り外し可能に装着された一対のリテーナ44(
図13参照)と、を有している。施錠機構42は、鍵穴43に挿入される鍵(図示せず)の操作に応じて施錠位置と解錠位置とに変位するラッチ(図示せず)を備え、ラッチが容器本体20側の係合部(図示せず)に係合されたり、係合解除されたりすることで、蓋体40の施錠及び解錠が行われる。リテーナ44の先端には、後述するフロント位置決め部45(
図13参照)が形成されている。
【0020】
容器本体20や蓋体40は、金属材料や樹脂材料で成形される複数の部品の組み合わせで構成される。樹脂部品の成形材料に含まれる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体といった熱可塑性樹脂やこれらのアロイなどがあげられる。
【0021】
これらの樹脂には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマーなどからなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系などの各種帯電防止剤が必要に応じて添加される。また、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が添加されたり、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維なども選択的に添加されたりする。
【0022】
そして、容器本体20は、軽量化を優先すれば、左右の側壁22a,22b、底板23及び天板25の材料がアルミニウムであることが望ましく、なお、強度を優先すれば、左右の側壁22a,22b、底板23及び天板25の材料がステレンスであることが望ましい。
【0023】
図3に示される容器本体20の背面壁28は、全体が容器本体20の内部を目視することができるような透明な樹脂材料で形成されるが、これに限らず、背面壁28の一部(例えば、中央部)が透明な樹脂材料で形成されてもよい。なお、この透明な樹脂材料は、アクリル樹脂、ポリカーボネート又はシクロオレフィンポリマーであることが望ましい。
【0024】
[パネル支持部]
つぎに、パネル支持部30の詳細について、
図4から
図7を参照しつつ説明する。
図4は、パネル支持部30を示す要部平面図である。
図5は、パネル支持部30を示す要部側面図である。
図6は、パネル支持部30を示す要部正面図である。
図7は、パネル支持体31に形成された、(a)長孔形状の取付孔31a、(b)ダルマ形状の取付孔31a、(c)ホームベース形状の取付孔31a、をそれぞれ示す要部平面図である。
図8は、パネルPを支持したパネル支持体31を示す概略正面図である。
【0025】
図4から
図8に示すように、パネル支持部30は、パネルPの左右端部を支持するパネル支持体31と、パネル支持体31の基端側に形成される取付孔31aに挿通される支持軸32と、容器本体20の側壁22a,22bの内面側に立設され、複数の固定部材33を介して支持軸32が固定される固定壁(以後、単に「支柱34」という。)と、を備える。
【0026】
なお、本実施形態のパネル支持部30では、6枚のパネル支持体31と、4本の支持軸32と、12個の固定部材33と、4本の支柱34と、をそれぞれ左右に備えているが、これらの数量は、収納するパネルPの枚数や重量に応じて適宜変更することができる。例えば、2本の支持軸32でパネル支持体31を取り付け固定してもよく、2個の固定部材33で1本の支持軸32を1本の支柱34に取り付け固定してもよい。
【0027】
[パネル支持体]
パネル支持体31は、平面視で前後方向に長い矩形形状を有し、パネルPの左右端部をそれぞれ1枚のパネル支持体31で支持する。パネル支持体31を形成する材料は、帯電防止のために導電性を有する樹脂材料であることが望ましい。本実施形態のパネル支持体31は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンやナイロンなどの摺動性が高い樹脂材料で形成し、それぞれの材料に、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブを含有させ、導電性を付与させた材料であることがより望ましい。
【0028】
また、パネル支持体31の基端側には、上下方向に貫通する取付孔31aが前後方向に所定の間隔をあけて複数形成され、さらに、パネル支持体31のパネルPを支持する面には、パネルPの位置決めをするための位置決め用の段差部31bが形成されるが、取付孔31a及び段差部31bの形状については、後述する。
【0029】
[支柱]
支柱34は、容器本体20の側壁22a,22bの内面側に前後方向に所定の間隔をあけて複数立設される。支柱34には、パネル支持体31の基端部を嵌合支持する嵌合溝34aが前後方向に沿って形成される。嵌合溝34aは、支柱34の内側面において、上下方向に所定の間隔をあけて複数形成されており、前後方向に並ぶ複数の支柱34の同じ高さの嵌合溝34aにパネル支持体31の基端部を嵌合させることで、パネル支持体31が支柱34に仮固定される。なお、支柱34の嵌合溝34aに嵌合するパネル支持体31の基端部には、嵌合溝34aに嵌合する際に押し潰されることで、嵌合ガタを除去するガタ取り用の突起を設けることが好ましい。
【0030】
また、支柱34の内側面には、支持軸32と係合する係合溝34bが上下方向に沿って形成されている。このような係合溝34bによれば、支柱34に支持軸32を固定する際、支柱34に対する支持軸32の前後方向の取付位置を位置決めできるだけでなく、固定後における支持軸32の前後方向のずれを規制することができる。
【0031】
支柱34を形成する材料は、帯電防止のために導電性を有する樹脂材料又は金属材料であることが望ましい。さらに、本実施形態の支柱34は、軽量化を重視するために、アルミニウムで形成されることがより望ましい。なお、支柱34は、側壁22a,22bと別部材で形成されるが、支柱34を側壁22a,22bと一体に形成してもよい。
【0032】
[支持軸]
支持軸32は、支柱34の嵌合溝34aで仮固定されたパネル支持体31の取付孔31aに挿通された状態で、複数の固定部材33を介して支柱34に固定されることにより、パネル支持体31を強固に固定する。なお、本実施形態の支持軸32は、円柱状、楕円柱状であるが、角柱状であってもよい。また、固定部材33は、支柱34との間で支持軸32を挟持する状態で、左右一対のネジ33aを介して支柱34に固定されることにより、支持軸32を支柱34に固定するが、固定部材33の固定構造は、これに限定されない。
【0033】
支持軸32を形成する材料は、帯電防止のために導電性を有する樹脂材料又は金属材料であることが望ましい。さらに、本実施形態の支持軸32は、ステレンスやアルミニウムで形成されることがより望ましい。
【0034】
[取付孔の形状]
図7(a)から(c)に示すように、パネル支持体31に形成される取付孔31aは、パネル支持体31の先端側と基端側とを結ぶ方向をX方向とするとき、X方向の長さL1が支持軸32のY方向の長さL2よりも長い形状を有する。例えば、
図7(a)に示す取付孔31aは、X方向に長い長孔形状であり、支持軸32を挿通する際、支持軸32のX方向の位置ずれを許容することにより、組立性を向上させる。また、取付孔31aに支持軸32を挿通した後、支持軸32を取付孔31aのパネル支持体31の基端側の端部に押し当てることにより、支持軸32が取付孔31aの端部に3点で接触し、パネル支持体31のX方向及びY方向の位置が決まる。
【0035】
図7(b)に示す取付孔31aは、パネル支持体31の先端側に、支持軸32の外形よりも大きい部分が形成されている。具体的に説明すると、
図7(b)に示す取付孔31aは、パネル支持体31の先端側のY方向の長さL3が、
図7(a)に示す長孔形状の取付孔31aのY方向の長さL4よりも長いダルマ形状を有する。このような取付孔31aによれば、支持軸32を挿通する際、支持軸32のX方向及びY方向の位置ずれを許容することにより、組立性を向上させる。また、取付孔31aに支持軸32を挿通した後、支持軸32を取付孔31aのパネル支持体31の基端側の端部に押し当てることにより、支持軸32が取付孔31aの端部に3点で接触し、パネル支持体31のX方向及びY方向の位置が決まる。
【0036】
図7(c)に示す取付孔31aは、パネル支持体31の先端側から基端側に向うに従って、支持軸32の外形よりもY方向の幅が狭くなる部分を有する。具体的に説明すると、
図7(c)に示す取付孔31aは、パネル支持体31の基端側が頂点となるように配置された三角形状又はホームベース形状であり、支持軸32を挿通する際、支持軸32のX方向及びY方向の位置ずれを許容することにより、組立性を向上させる。また、取付孔31aに支持軸32を挿通した後、支持軸32を取付孔31aのパネル支持体31の基端側の端部に押し当てることにより、支持軸32が取付孔31aの端部に2点で接触し、パネル支持体31のX方向及びY方向の位置が決まる。なお、取付孔31aの頂部の角度は、60°〜120°が好ましい。
【0037】
[段差形状]
図8に示すように、パネル支持体31は、パネルPを支持可能な段差形状を有する。具体的に説明すると、本実施形態のパネル支持体31は、パネルPを支持可能な面として、支持面Sを有し、支持面Sに段差部31bが形成されている。段差部31bは、パネル支持体31を取り付けた場合は、左右のパネル支持体31で左右端部が支持されるパネルPの左右方向の位置決め寸法がA1となる。
【0038】
本実施形態のパネル位置決め寸法A1は、パネルPを位置決めするためのものであり、パネルPの左右幅(例えば、300mm)に所定のクリアランス(例えば、片側2mmから3mm)を加えて設定される。
【0039】
[中央サポート部]
つぎに、中央サポート部60の詳細について、
図9から
図12を参照しつつ説明する。
図9は、中央サポート部60を示す要部平面図である。
図10は、中央サポート部60を示す要部側面図である。
図11は、
図9のI−I断面図である。
図12は、パネルPを支持した中央サポート部60を示す概略側面図である。なお、
図10及び
図11は、下段の中央サポート部60を取り外した状態で示している。
【0040】
図9から
図12に示すように、中央サポート部60は、1枚のパネルPの中央部下面を左右方向に離れた位置で支持する一対の中央サポート部材61と、背面壁28の内面の左右方向に離れた位置に立設される一対の支柱62と、中央サポート部材61の後端部を支柱62に固定するサポート支持部材63と、を備える。
【0041】
なお、中央サポート部60は、12本の中央サポート部材61と、2本の支柱62と、12個のサポート支持部材63と、を備えるが、これらの数量は、収納するパネルPの枚数や重量に応じて適宜変更することができる。
【0042】
[中央サポート部材]
中央サポート部材61は、前後方向に沿う金属製の円柱部材であり、その周囲には、支持するパネルPに接触する円筒状のパネル接触部61tを備える。また、中央サポート部材61の前後方向の後端部は、後述する抜け止めピン62cが挿入されるピン挿入孔を備えるが、図示は省略する。
【0043】
パネル接触部61tは、パネルPの位置決めをスムーズに行うために、摺動性の高い材料で形成されることが望ましく、また、帯電防止のために導電性を有する樹脂材料であることがより望ましい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンやナイロンなどの摺動性が高い樹脂材料で形成し、それぞれの材料に、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブを含有させ、導電性を付与させた材料であることが挙げられる。
【0044】
なお、パネルPの中央部の撓み変形及び中央サポート部材61自身の振動の抑制の両立の観点から、中央サポート部材61は、パネルPの中央部の前後方向における全領域ではなく、パネルPの中央部の前後方向における全領域の3/4以上を支持するとよい。
【0045】
本実施形態では、一対の中央サポート部材61は、連結されることなく、構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、前後方向の前端部が、連結部材などを介して、連結されるように形成されてもよい。この場合、中央サポート部材61の振動をより抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、中央サポート部材61は、一対で構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、1本のみで構成されてもよいし、3本で構成されてもよい。
【0047】
[支柱]
支柱62は、背面壁28の内面に左右方向に所定の間隔をあけて2本立設される。なお、支柱62は、背面壁28と別部材で形成されるが、支柱62を背面壁28と一体に形成してもよい。
【0048】
支柱62には、中央サポート部材61の基端部を嵌合支持する丸穴状の嵌合凹部62aと、サポート支持部材63の一部を嵌合支持する嵌合溝62bと、嵌合された中央サポート部材61及びサポート支持部材63を抜け止めする抜け止めピン62cが挿入されるピン挿入孔62dと、が形成されている。
【0049】
支柱62を形成する材料は、帯電防止のために導電性を有する樹脂材料又は金属材料が選択されるとよい。なお、本実施形態の支柱62は、中央サポート部材61の支持強度を優先し、金属材料で形成される。
【0050】
[サポート支持部材]
サポート支持部材63は、樹脂材料で形成されており、中央サポート部材61の後端部が挿入されるサポート挿入孔63aと、支柱62の嵌合溝62bに嵌合してサポート支持部材63の上下位置を規定する嵌合部63bと、支柱62の左右側面に接触してサポート支持部材63の左右位置を規定する左右一対の接触部63cと、前述した抜け止めピン62cを挿入するためのピン挿入孔63dと、パネルPの後方への移動を規制する移動規制部63eと、を備える。
【0051】
サポート支持部材63の後端部を支柱62に固定する場合は、まず、支柱62の嵌合溝62bにサポート支持部材63の嵌合部63bを嵌入させた後、サポート支持部材63の後端部をサポート支持部材63のサポート挿入孔63aを介して支柱62の嵌合凹部62aに嵌合させる。この状態で、サポート支持部材63のピン挿入孔63dに抜け止めピン62cを挿入すると、抜け止めピン62cが、支柱62のピン挿入孔62d及び中央サポート部材61のピン挿通孔を貫通することにより、中央サポート部材61及びサポート支持部材63が支柱62から抜け止めされる。
【0052】
図12に示すように、中央サポート部材61は、パネルPが容器本体20に収納された状態、すなわち、パネルPの前後方向の後端部が、移動規制部63eに接触するように、中央サポート部材61によって支持された状態で、前後方向の前端部が、パネルPの中央部の前端よりも後方に位置するように、形成されている。つまり、中央サポート部材61は、パネルPの中央部の前後方向における全領域ではなく、パネルPの中央部の前後方向における部分領域を支持することになっている。これにより、パネルPの中央部の前後方向における全領域を支持する中央サポート部材に比べ、中央サポート部材61の振動を抑制することができる。
【0053】
[位置決め部]
つぎに、位置決め部の詳細について、
図13を参照しつつ説明する。
図13は、位置決め部を示す概略平面図である。
【0054】
図13に示すように、本実施形態の位置決め部は、水平面で矩形形状のパネルPの位置決めをするためのものであり、蓋体40に装着された一対のリテーナ44の先端に形成される一対のフロント位置決め部45a,45bからなっている。
【0055】
一対のフロント位置決め部45a,45bは、パネルPの前端部に接触するためのものであり、パネルPの前端部におけるコーナーPa,Pbに接触するように左右方向に離れた位置に設けられている。なお、本実施形態では、一対のフロント位置決め部45a,45bは、リテーナ44と一体成形されるが、リテーナ44と別体に成形されてもよい。
【0056】
また、一対のフロント位置決め部45a,45bは、パネルPの前端部におけるコーナーPa,Pbに接触する接触面が、平面視で、容器本体20側に突出する傾斜面からなっている。この傾斜面の左右方向に対する角度は、45°から75°までの範囲であることが好ましい。そして、パネルPの位置決め精度を高めるために、パネルPの前端部における一対のコーナーPa,Pbは、一対のフロント位置決め部45a,45bの接触面に対応する傾斜面からなることが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、面取りされることなく、一対のフロント位置決め部45a,45bとの接触が、平面視で、点接触となってもよい。
【0057】
そして、本実施形態では、位置決め部のパネルPのコーナーに接触する接触面は、平面視で、傾斜面で形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、湾曲面で形成されてもよく、この場合、パネルPの位置決め精度を高めるために、パネルPのコーナーは、位置決め部の接触面に対応する湾曲面で形成されることが好ましい。
【0058】
位置決め部を形成する材料は、帯電防止のために導電性を有する樹脂材料であることが望ましい。本実施形態の位置決め部としての一対のフロント位置決め部45a,45bは、パネルPの位置決めをスムーズに行うために、摺動性の高い材料で形成されることがより望ましい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンやナイロンなどの摺動性が高い導電性の樹脂材料で形成し、それぞれの材料に、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブを含有させ、導電性を付与させた材料であることが挙げられる。
【0059】
最後に、位置決め部がパネルPの位置決めをする状態について、
図14を参照しつつ説明する。
図14は、位置決め部がパネルPの位置決めをする状態を示す概略平面図であり、(a)片方のフロント位置決め部45aがパネルPに接触した状態、(b)一対のフロント位置決め部45a,45bがパネルPに接触した状態、(c)一対のフロント位置決め部45a,45b及び移動規制部63eがパネルPに接触した状態である。
【0060】
パネルPは、規定位置よりも左右方向の一方側(例えば、左側)にずれた状態となるように、ロボットによって容器本体20に挿入された場合、蓋体40が開口部21を閉止するように、作業者又はロボットが蓋体40を後方に押し込むと、まず、
図14(a)に示すように、左側のフロント位置決め部45aの傾斜面がパネルPの前端部における左のコーナーPa(傾斜面)に接触しているが、右側のフロント位置決め部45bの傾斜面がパネルPの前端部における右のコーナーPb(傾斜面)に接触していない。
【0061】
その後、蓋体40を後方に押し込むと、パネルPは、左側のフロント位置決め部45aの傾斜面になぞって右側に摺動することにより、右のフロント位置決め部45bの傾斜面がパネルPの前端部における右のコーナーPbに接触した状態となる。この状態では、
図14(b)に示すように、一対のフロント位置決め部45a,45bの傾斜面が、それぞれ、パネルPの前端部における一対のコーナーPa,Pbに接触しているので、パネルPが左右方向において位置決めされている。その際に、パネルPの前端部とリテーナ44との間には、クリアランスが形成されている。
【0062】
さらに、その後、蓋体40を後方に押し込むと、パネルPは、蓋体40と一体となった状態(パネルPは、一対のフロント位置決め部45a,45bによって、左右方向において位置決めされた状態)で、後方へ移動することにより、その後端部が移動規制部63eに接触した状態となる。この状態では、開口部21が完全に蓋体40に閉止されており、
図14(c)に示すように、パネルPは、その前端部におけるコーナーPa,Pbがフロント位置決め部45a,45bの傾斜面に接触するとともに、その後端部が移動規制部63eに接触しているので、左右方向のみならず、前後方向においても位置決めされている。
【0063】
このような位置決め部によれば、開口部21が完全に蓋体40に閉止された状態では、パネルPの前端部とリテーナ44との間にクリアランスが形成されるように、一対のフロント位置決め部45a,45b及び移動規制部63eが、それぞれ、パネルPの前端部における一対のコーナーPa,Pb及びパネルPの後端部に接触しているので、前後方向及び左右方向において、パネルPの位置決めをすることができるとともに、パネルPの前端部とリテーナ44との接触を回避し、パネルPの前端部とリテーナ44及び蓋体40との接触によるパネルPの破損を抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、パネルPが規定位置よりも左側にずれた状態の位置決めを説明したが、パネルPが規定位置よりも右側にずれた状態の位置決めについても、対称となるため、その説明を省略する。
【0065】
[実施形態の効果]
以上のように構成された本実施形態のパネル収納容器1によれば、正面に開口部21を有するとともに、複数の矩形形状のパネルPを収納する容器本体20と、容器本体20の開口部21を閉止する蓋体40と、パネルPを支持するパネル支持手段と、を備えるパネル収納容器1であって、蓋体40に設けられたリテーナ44には、パネルPに接触することにより、水平面で、パネルPの位置決めをする位置決め部45a,45bが設けられているので、水平面で矩形形状のパネルPの位置決めをすることができる。
【0066】
[変形例]
つぎに、本発明に係る位置決め部の変形例を説明する。ただし、上記実施形態と相違する構成のみを説明し、本実施形態と共通の構成については、本実施形態と同じ符号を用いることにより、本実施形態の説明を援用する。
【0067】
図15は、変形例1の位置決め部を示す概略平面図である。
本実施形態では、位置決め部としては、蓋本体41の容器内面側にリテーナ44を介して設けられた一対のフロント位置決め部45a,45bを用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図15に示すように、容器本体20の背面壁28(背面側)に設けられた一対のリア位置決め部80a,80bを用いてもよい。
【0068】
変形例1の一対のリア位置決め部80a,80bは、パネルPの後端部におけるコーナーPc,Pdに接触するためのものであり、一対のフロント位置決め部45a,45bと同様に、左右方向に離れた位置に取り外し可能に設けられている。なお、変形例1では、一対のリア位置決め部80a,80bは、背面壁28に設けられるが、パネル支持体31に設けられてもよい。さらに、変形例1では、一対のリア位置決め部80a,80bは、背面壁28と別体に形成されるが、背面壁28と一体に形成されてもよい。
【0069】
また、一対のリア位置決め部80a,80bは、パネルPの後端部におけるコーナーPc,Pdに接触する接触面が、平面視で、開口部21側に対向する傾斜面からなっている。この傾斜面の左右方向に対する角度は、45°以上75°以下であることが好ましい。そして、パネルPの位置決め精度を高めるために、パネルPの後端部における一対のコーナーPc,Pdは、一対のリア位置決め部80a,80bの接触面に対応する傾斜面からなることが好ましい。
【0070】
このようなリア位置決め部80a,80bによれば、本実施形態のフロント位置決め部45a,45bと同様に、前後方向及び左右方向において、パネルPの位置決めをすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、位置決め部としては、蓋本体41の容器内面側にリテーナ44を介して設けられた一対のフロント位置決め部45a,45bを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、上述する一対のフロント位置決め部45a,45b及び上述する一対のリア位置決め部80a,80bの両方を用いてもよく、この場合、前後方向及び左右方向において、パネルPの位置決めをすることができるとともに、位置決め部のみがパネルPに接触しているので、他の部材とパネルPとの接触による破損を確実に抑制することができる。
【0072】
図16は、変形例2の位置決め部を示す概略平面図である。
くわえて、本実施形態では、位置決め部としては、蓋本体41の容器内面側にリテーナ44を介して設けられた一対のフロント位置決め部45a,45bを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、
図16に示すように、蓋本体41の容器内面側にリテーナ44を介して設けられた1つのフロント位置決め部45cを用いてもよい。
【0073】
変形例2のフロント位置決め部45cは、平面視で、容器本体20側に突出するように逆V字型又は逆U字型に設けられていればよく、左右方向の中央位置に設けられることが好ましい。そして、パネルPの前端部における中央位置には、平面視で、逆V字型又は逆U字型のフロント位置決め部45cと係合するためのV字型又はU字型の切り欠きPvが形成されている。
【0074】
このようなフロント位置決め部45c及び切り欠きPvによれば、本実施形態のフロント位置決め部45a,45bと同様に、前後方向及び左右方向において、パネルPの位置決めをすることができる。
【0075】
図17は、変形例3の位置決め部を示す概略平面図である。
なお、変形例2では、位置決め部としては、蓋本体41の容器内面側にリテーナ44を介して設けられた1つのフロント位置決め部45cを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、
図17に示すように、容器本体20の背面壁28(背面側)に設けられた1つのリア位置決め部80cを用いてもよい。
【0076】
変形例3のリア位置決め部80cは、変形例2のフロント位置決め部45cと同様に、平面視で、開口部21側に突出するように逆V字型又は逆U字型に設けられていればよく、左右方向の中央位置に設けられることが好ましい。そして、パネルPの後端部における中央位置には、平面視で、逆V字型又は逆U字型のリア位置決め部80cと係合するためのV字型又はU字型の切り欠きPvが形成されている。
【0077】
このようなリア位置決め部80c及び切り欠きPvによれば、変形例2のフロント位置決め部45cと同様に、前後方向及び左右方向において、パネルPの位置決めをすることができる。
【0078】
さらに、変形例3では、リア位置決め部80cは、容器本体20の背面壁28に直接設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、中央サポート部60のサポート支持部材63に設けられてもよく、この場合、移動規制部63eを備えなくてもよい。
【0079】
(第2実施形態)
第1実施形態では、パネル収納容器1は、パネルPの左右端部を支持するパネル支持部30と、パネルPの中央部を支持する中央サポート部60と、を含むが、第2実施形態では、パネル収納容器1は、パネル支持部30及び中央サポート部60に加えて、サイドサポート部70を含む。
以下、第2実施形態のパネル収納容器1について、
図18及び
図19を参照しつつ説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の点については、説明を省略し、第1実施形態と主に異なる点について説明する。
【0080】
図18は、本発明に係る第2実施形態のパネル支持手段及び位置決め部を示す要部平面図である。
図19は、サイドサポート部を示す要部側面図である。
【0081】
[中央サポート部]
第2実施形態では、中央サポート部60は、1本の中央サポート部材61を備えるのに対し、第1実施形態では、中央サポート部60が一対の中央サポート部材61を備える点で相違するが、他の点においては、第1実施形態の中央サポート部60と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
[パネル支持部]
第2実施形態のパネル支持部30は、パネル支持体31A、支持軸32、固定部材33及び支柱34を備え、第2実施形態の支持軸32、固定部材33及び支柱34が第1実施形態の支持軸32、固定部材33及び支柱34と同様であるため、これらの説明を省略する。
【0083】
一方、第2実施形態のパネル支持体31Aは、第1実施形態のパネル支持体31と異なり、前後方向の寸法に比べて左右方向の寸法が長い短冊形状であり、前後方向に所定の間隔をあけて複数並設されている。また、それぞれのパネル支持体31Aの先端側には、サイドサポート部70が貫通できるように、前後方向に貫通する貫通孔31gが形成されている。
【0084】
[サイドサポート部]
サイドサポート部70は、パネルPの中央部と異なる部位を支持するものであり、
図18に示すように、容器本体20の前後方向に沿いつつ容器本体20の側壁22a,22b付近に設けられる一対のサイドサポート部材71と、一対のサイドサポート部材71に対応して背面壁28の内面の左右方向に離れた位置に立設される一対の支柱73と、サイドサポート部材71の後端部を支柱73に固定する一対のサポート支持部材74と、を備える。なお、サイドサポート部70は、前後方向に沿う一対のサイドサポート部材71の前端部に設けられパネルPの前後方向の位置決めをするストッパ部材を更に備えてもよい。
【0085】
[サイドサポート部材]
サイドサポート部材71は、前後方向に沿うステレンスなどからなる金属製の円柱部材であり、その外周側には、支持するパネルPに接触する円筒状のパネル接触部71tを備える。また、サイドサポート部材71の前後両端部は、後述する抜け止めピン72b及び73cが挿入されるピン挿入孔を備えるが、図示は省略する。なお、サイドサポート部材71は、パネルPの前後方向における全領域を支持することになっているので、中央サポート部材61よりも長くなるように形成されている。
【0086】
パネル接触部71tは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンやナイロンなどの摺動性が高い樹脂材料で形成し、それぞれの材料に、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブを含有させ、導電性を付与させた材料であることが望ましい。
【0087】
一対のサイドサポート部材71は、それぞれ側壁22a及び側壁22bに取り付けられた複数のパネル支持体31Aと連結されるように設けられている。
【0088】
詳細には、パネル支持体31Aの先端側には、前後方向に貫通する貫通孔31gが形成され、この貫通孔31gには、嵌合するようにサイドサポート部材71の円柱部材が挿通されている。なお、この場合、サイドサポート部材71の円柱部材の貫通孔31gから露出する部分は、少なくとも、パネル接触部71tによって被覆されている。
【0089】
あるいは、パネル支持体31Aの先端側のパネル支持面には、前後方向に沿う凹溝が設けられ、この凹溝には、上端がパネル支持面から突出する状態又はパネル支持面と同一面とする状態でサイドサポート部材71が装着されてもよい。
【0090】
[支柱]
支柱73は、背面壁28の内面の左右方向に離れた位置に立設される。なお、支柱73は、背面壁28と別部材で形成されるが、支柱73を背面壁28と一体に形成してもよい。
【0091】
支柱73には、サイドサポート部材71の後端部を嵌合支持する丸穴状の嵌合凹部73aと、サポート支持部材74の一部を嵌合支持する嵌合溝73bと、嵌合されたサイドサポート部材71及びサポート支持部材74を抜け止めする抜け止めピン73cが挿入されるピン挿入孔73dと、が形成されている。
【0092】
支柱73を形成する材料は、帯電防止のために導電性を有する樹脂材料又は金属材料が選択されるとよい。なお、本実施形態の支柱73は、サイドサポート部材71の支持強度を優先し、金属材料で形成される。
【0093】
[サポート支持部材]
サポート支持部材74は、樹脂材料で形成されており、サイドサポート部材71の後端部が挿入されるサポート挿入孔74aと、支柱73の嵌合溝73bに嵌合してサポート支持部材74の上下位置を規定する嵌合部74bと、支柱73の左右側面に接触してサポート支持部材74の左右位置を規定する左右一対の接触部74cと、前述した抜け止めピン73cを挿入するためのピン挿入孔74dと、パネルPの後方への移動を規制する移動規制部74fと、を備える。
【0094】
サポート支持部材74の後端部を支柱73に固定する場合は、まず、支柱73の嵌合溝73bにサポート支持部材74の嵌合部74bを嵌入させた後、サポート支持部材74の後端部をサポート支持部材74のサポート挿入孔74aを介して支柱73の嵌合凹部73aに嵌合させる。この状態で、サポート支持部材74のピン挿入孔74dに抜け止めピン73cを挿入すると、抜け止めピン73cが、支柱73のピン挿入孔73d及びサイドサポート部材71のピン挿通孔を貫通することにより、サイドサポート部材71及びサポート支持部材74が支柱73から抜け止めされる。
【0095】
また、サイドサポート部材71は、上述のように、パネル支持体31Aと共にパネルPに接触する場合に、サイドサポート部材71と連結されるパネル支持体31Aは、複数ではなく、1つ設けられてもよい。
【0096】
なお、サイドサポート部材71は、パネルPに接触しないように構成されてもよい。この場合、1つのサイドサポート部材71は、複数のパネル支持体31Aを連結しているため、その後端部がサポート支持部材74を介して支柱73に取り付けられなくてもよい。
【0097】
[位置決め部]
第2実施形態の位置決め部としては、第1実施形態の位置決め部と同様に、蓋本体41の容器内面側にリテーナ44を介して設けられた一対のフロント位置決め部45a,45bを用いているため、その説明を省略する。
【0098】
このように、第2実施形態のパネル収納容器1によれば、第1実施形態と同様に、蓋体40に設けられたリテーナ44には、パネルPに接触することにより、水平面で、パネルPの位置決めをする一対の位置決め部45a,45bが設けられているので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0099】
以上、具体的な実施形態に基づき、本発明のパネル収納容器について説明してきたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲には、本発明の目的が達成される範囲での様々な変形や改良などが含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0100】
例えば、上記実施形態では、パネル収納容器1の内部のエアを不活性ガスに置換するために、上面、下面、左側面、右側面及び背面が壁部材によって気密的に覆われていたが、気密性が求められない場合は、直方体形状に組み立てられた枠体とし、周囲を覆う壁部材を省略してもよい。