【実施例】
【0012】
以下、本発明の一実施例に係る車両の制御装置について図面を用いて説明する。
図1から
図3は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を説明する図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両1は、エンジン2、トランスミッション4および駆動輪6を含んで構成されている。
【0014】
エンジン2は、例えば4サイクルのガソリンエンジンから構成されており、車両を走行させる動力を発生する。エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
【0015】
トランスミッション4は、平行軸歯車式の変速機構を有しており、変速機構におけるギヤ段を切り替えることで、エンジン2が発生した動力を変速する。トランスミッション4は、クラッチ7を備えており、クラッチ7は、エンジン2から駆動輪6に伝達される駆動力を断接する。トランスミッション4には、クラッチ7の開閉およびギヤ段の切り替えを操作する図示しないアクチュエータが設けられている。アクチュエータは、ECU20からの駆動信号指令により駆動される。
【0016】
また、トランスミッション4はリングギヤ5を備えており、このリングギヤ5は、図示しないピニオンギヤおよびサイドギヤ等とともにディファレンシャル装置を構成している。ディファレンシャル装置のサイドギヤには左右のドライブシャフト5aを介して駆動輪6が連結されている。トランスミッション4で変速された動力は、リングギヤ5に入力された後、左右の駆動輪6に伝達される。
【0017】
また、車両1は、モータ3、減速機8、バッテリ11、インバータ12およびECU(Electronic Control Unit)20を含んで構成されている。
【0018】
モータ3は、電動機および発電機として機能する回転電機であり、インバータ12を介してバッテリ11に接続されている。モータ3は、ECU20がインバータ12を制御することで、力行トルクまたは発電トルク(回生トルク)を発生する。
【0019】
モータ3は、減速機8を介してリングギヤ5に連結されており、バッテリ11から供給される電力により力行することで車両1の走行をアシストする。また、モータ3は、リングギヤ5から伝達された動力により駆動されることで発電する。モータ3が発電した電力はバッテリ11に充電される。
【0020】
バッテリ11には、このバッテリ11の端子間電圧とバッテリ11に入出力される電流とバッテリ11の温度とを検出するバッテリマネジメントモジュール13が設けられている。バッテリ11の充電状態(SOC:State Of Charge)は、バッテリマネジメントモジュール13の検出信号に基づいてECU20により検出される。
【0021】
このように、本実施形態における車両1は、駆動力源としてエンジン2およびモータ3を備えており、モータ3のモータトルクとエンジン2のエンジントルクとの少なくとも一方により走行可能なハイブリッド車両として構成されている。なお、モータ3は、リングギヤ5に限らず、クラッチ7から駆動輪6までの動力伝達経路上に連結されていればよい。
【0022】
車両1は、アクセル開度検出部16およびエンジン回転速度検出部17を備えている。アクセル開度検出部16は、例えば、図示しないアクセルペダルに設けられており、アクセルペダルの操作量をアクセル開度として検出する。エンジン回転速度検出部17は、エンジン2に設けられており、エンジン2のクランクシャフトの回転数をエンジン回転速度として検出する。
【0023】
ECU20は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートと、ネットワークモジュールとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0024】
ECU20のROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU20として機能させるためのプログラムが記憶されている。ECU20において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、ECU20として機能する。本実施例では、ECU20は、エンジン2の動作、モータ3の動作およびトランスミッション4の動作を制御する。
【0025】
ECU20は、車両1に対してドライバが要求するトルクであるドライバ要求トルクを算出する。また、このドライバ要求トルクをエンジントルクとモータトルクとにより満たすように、エンジントルクおよびモータトルクを決定する。すなわち、ECUエンジントルクとモータトルクの和がドライバ要求トルクとなるように、エンジントルクおよびモータトルクを決定する。ECU20は、バッテリ11の充電状態を考慮してモータトルクを決定する。
【0026】
ECU20は、SOC検出部28を備えており、SOC検出部28は、バッテリマネジメントモジュール13の検出信号に基づいてバッテリ11の充電状態を検出する。
【0027】
ECU20は、動作制御部27を備えており、動作制御部27は、エンジンの動作点を補正する。ここで、動作点とは、エンジン回転速度とエンジントルクの組み合わせからなる点である。動作点の補正とは、あるエンジン回転速度において、エンジントルクを増加側または減少側に変化せることである。動作制御部27は、熱効率のよい動作点でエンジン2を作動させること、または、モータ3により電力を発電してバッテリ11に充電することを目的として、ドライバ要求トルクより大きなエンジントルクを発生するようにエンジン2の動作点を補正する。すなわち、エンジントルクに補正量だけトルクを上乗せするように動作点を補正し、補正により得たエンジントルクの余剰分を用いてモータ3で発電を行う。このように、エンジン2の動作点がエンジントルクの増加側に補正される場合、バッテリ11はエンジン2の駆動によって充電される。
【0028】
ここで、仮に燃費のよい動作点でエンジン2を動作させることだけを優先して動作点を補正した場合、ドライバ要求トルクに対してエンジントルクを大きくする方向への動作点の補正量が過大になる場合がある。動作点の補正量が過大であると、エンジントルクが大きくなることでエンジン2の静粛性が低下してしまうおそれがある。また、動作点の補正量が過大であると、ドライバが想定するよりもエンジンノイズが大きくなり、ドライバに違和感を与えるおそれがある。また、動作点の補正量が過大であると、車両挙動が不安定になるおそれがある。具体的には、エンジントルクの変化が伴うチップインショック、チップアウトショックまたは変速ショック等が発生し、車両挙動が不安定になってしまう。このように、動作点の補正量が過大であると、エンジン2の静粛性が低下したり、ドライバに違和感を与えたり、車両挙動を不安定にしたりするおそれがある。動作点の補正量が過大であることに起因するこれらの不都合は、ドライバ要求トルクが相対的に大きい場合と比較して、ドライバ要求トルクが相対的に小さい場合に顕著に表れる。
【0029】
そこで、本実施例では、動作制御部27は、車両1に対するドライバの駆動要求の度合いに基づいて、エンジン2の動作点を補正する補正量を制限する。動作制御部27は、車両1に対してドライバが要求するトルクであるドライバ要求トルクとアクセル開度とから決定した上限値を上限として、エンジン2の動作点を補正する補正量を制限する。動作制御部27は、バッテリ11の充電状態に基づいて、エンジン2の動作点を補正する補正量を制限する。
【0030】
次に、
図2に示す制御ロジック図を参照して、本実施例に係るECU20の動作制御部27によって実行される、エンジン動作点の補正動作の流れについて説明する。
【0031】
図2において、ECU20の動作制御部27は、エンジン動作点補正量算出部27Aを備えており、このエンジン動作点補正量算出部27Aにおいて、図示しないマップを参照し、エンジン回転速度と充電状態(図中、SOCと記す)とからエンジン動作点補正量(図中、エンジン動作点補正トルクと記す)を算出する。エンジン動作点補正量は、ドライバ要求トルクに対するエンジントルクの補正量である。すなわち、エンジン動作点補正量は、ドライバ要求トルクに対応する動作点に対する補正量である。なお、エンジン動作点補正量算出部27Aが参照するマップは、トランスミッション4のギヤ段、シフトレバーのレバー位置に応じて異なり、かつ、車両1の走行状態がクルーズ状態であるか否かに応じて異なる。
【0032】
また、動作制御部27は、補正係数算出部27Bを備えている。補正係数算出部27Bは、
図3に示すマップを参照し、アクセル開度と充電状態(図中、SOCと記す)とから補正係数を算出する。この補正係数は、動作点の補正量を決定するための正の値であり、補正係数が大きいほど補正量を制限する上限値が大きくなる。このため、補正係数が大きいほど動作点の補正量が大きくされる。
図3に示すマップにおいて、縦軸が補正係数を表し、横軸がアクセル開度を表している。
【0033】
図3のマップにおいて、SOC(A)、SOC(B)、SOC(C)は充電状態を表しており、SOC(A)<SOC(B)<SOC(C)の関係になっている。このマップにおいて、アクセル開度が等しいとき、充電状態が大きいほど補正係数が小さくなるように設定されている。また、充電状態がSOC(B)およびSOC(C)のときは、アクセル開度が大きくなるにしたがって、各SOCにおける上限値を上限として補正係数が大きくなるように設定されている。よって、アクセル開度が大きくなるにしたがって、補正量を制限する上限値が大きくなる。すなわち、アクセル開度が大きくなるにしたがって、動作点の補正量が各上限値を上限として大きくされる。
【0034】
また、充電状態が最も小さいSOC(A)のときはアクセル開度に関わらず補正係数が上限値で一定となるように設定されている。すなわち、バッテリ11の充電状態が低い場合は、バッテリ11への充電を最優先し、ドライバ要求トルクの大小に関わらない一定の大きな上限値に、動作点の補正量が保たれる。
図3に示すマップは予め実験的に求められており、ECU20のROMに記憶されている。
【0035】
動作制御部27は、ドライバ要求エンジントルク補正部27Cを備えている。補正係数算出部27Bで算出された補正係数により、ドライバ要求エンジントルクを補正する。具体的には、ドライバ要求トルク補正部27Cは、ドライバ要求エンジントルクと補正係数とを乗算した値を出力する。なお、ドライバ要求エンジントルクは、車両1が加速する状況では正の値となり、エンジンブレーキが作用して車両1が減速している状態では負の値となる。
【0036】
動作制御部27は、リミッタ処理部27Dを備えている。リミッタ処理部27Dは、ドライバ要求エンジントルク補正部27Cから入力された値と0とを比較し、何れか大きい方を出力する。したがって、リミッタ処理部27Dから出力される値は0または正の値となる。
【0037】
動作制御部27は、リミッタ処理部27Eを備えている。リミッタ処理部27Eは、エンジン動作点補正量算出部27Aから入力された値と、リミッタ処理部27Dから入力された値とを比較し、何れか小さい方を出力する。このため、エンジン動作点補正量算出部27Aから入力された値が、リミッタ処理部27Dから入力された値より大きい場合、リミッタ処理部27Eは、リミッタ処理部27Dから入力された値を出力する。
【0038】
以上のように、本実施例において、ECU20の動作制御部27は、車両1に対するドライバの駆動要求の度合いに基づいて、エンジン2の動作点を補正する補正量を制限する。
【0039】
これにより、エンジン2の動作点の補正量がドライバの駆動要求の度合いに基づく補正量に制限されるため、エンジン2の動作点が増加方向に過剰に補正されることが防止される。このため、エンジンの静粛性が低下したり、ドライバに違和感を与えたり、車両挙動を不安定にしたりすることを防止できる。
【0040】
また、本実施例において、動作制御部27は、車両1に対してドライバが要求するトルクであるドライバ要求トルクとアクセル開度とから決定した上限値を上限として、補正量を制限する。
【0041】
これにより、補正量が上限値に制限されるため、エンジン2の動作点が増加方向に過剰に補正されることが防止される。このため、エンジンの静粛性が低下したり、ドライバに違和感を与えたり、車両挙動を不安定にしたりすることを防止できる。
【0042】
また、本実施例において、車両1は、エンジン2の駆動によって充電されるバッテリ11を備える。そして、動作制御部27は、バッテリ11の充電状態に基づいて、補正量を制限する。
【0043】
これにより、バッテリ11が過充電とならないように、エンジン2の動作点を補正する補正量を制限できるので、バッテリ11を保護することができる。
【0044】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。