特許第6977420号(P6977420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977420
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】防振ゴム用ゴム組成物及び防振ゴム製品
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20211125BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20211125BHJP
   C08K 5/39 20060101ALI20211125BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20211125BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20211125BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20211125BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20211125BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K5/41
   C08K5/39
   C08K5/09
   C08L7/00
   C09K3/00 P
   F16F1/36 B
   F16F1/36 C
   F16F15/08 D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-174841(P2017-174841)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-48959(P2019-48959A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 政徳
【審査官】 三宅 澄也
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00− 13/08
C08L1/00−101/14
F16F15/00−15/36
F16F 1/00− 6/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムを主成分とするゴム成分を含む防振ゴム用ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対して、
(A)1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウムを0.1〜4.0質量部、及び
(B)1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサンを0.05〜0.8質量部
を配合し、且つ、(A)成分と(B)成分の配合割合がB/A(質量比)で0.1〜1.3であることを特徴とする防振ゴム用ゴム組成物。
【請求項2】
更に(C)不飽和脂肪酸及び/又はその金属塩を、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部配合する請求項1記載の防振ゴム用ゴム組成物。
【請求項3】
上記ジエン系ゴムが、天然ゴムである請求項1又は2記載の防振ゴム用ゴム組成物。
【請求項4】
上記ゴム成分100質量部に対する上記(A)成分の配合量が、0.3〜2.0質量部である請求項1〜3のいずれか1項記載の防振ゴム用ゴム組成物。
【請求項5】
上記ゴム成分100質量部に対する上記(B)成分の配合量が、0.2〜0.4質量部である請求項1〜4のいずれか1項記載の防振ゴム用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜にいずれか1項記載の防振ゴム用ゴム組成物からなる防振ゴム部材を構成要素として含む防振ゴム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用防振ゴム製品、鉄道用防振ゴム製品、空気ばね、特に、トーショナルダンパー、エンジンマウント、ストラットマウント、ブッシュ等の自動車用防振ゴム製品に用いられる防振ゴム用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
防振ゴム製品は、自動車等の各種車両において、搭乗者の快適性を向上させるため、振動や騒音の発生源となる部位に配置されるものである。室内への振動や騒音の侵入を低減するために、例えば、トーショナルダンパー、エンジンマウント、ストラットマウント、ブッシュ等の構成部材に防振ゴムを用いることで車両走行・停止時の振動を吸収し、室内への振動及び騒音の侵入や、周辺環境への騒音の拡散を低減している。
【0003】
このような防振ゴムの基本的な特性としては、エンジン等の重量物を支える強度特性や、その振動を吸収し抑制する防振性能が要求され、また、耐疲労性や圧縮永久歪み特性が良好であることが求められる。
【0004】
ところで、硫黄加硫系のゴム組成物において、特に架橋鎖が長い場合は、オーバーキュアになると架橋密度の低下(トルクの低下)が起こり、所謂「加硫戻り」の現象が起きることが知られている。この加硫戻りが大きいとゴム製品のバネ定数が大きく変化し、ゴム硬度の低下等の品質の低下を招くことが多い。加硫戻りを抑制・改善する助剤として、例えば、特開2007−146035号公報(特許文献1)には、防振ゴム用ゴム組成物に1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンと、1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウムと、ジアルキルジチオフォスホネート亜鉛塩とを併用することが提案されている。また、特開2005−320545号公報(特許文献2)には、加硫戻り安定剤として、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンと1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム塩二水化物を例示している。
【0005】
また、特開2010−229245号公報(特許文献3)には、防振ゴム用ゴム組成物の架橋剤として硫黄とともにリボ酸を配合することにより加硫戻り抑制・改善効果をもたらすことが記載されている。また、特開平7−97483号公報(特許文献4)には、天然ゴム等の基材ゴムに対して特定の有機不飽和脂肪酸を配合することにより、加硫戻り改善や疲労性、低動倍率を維持向上できることが記載されている。
【0006】
しかしながら、上記提案の文献では、加硫戻りを抑制・改善し得るものであっても、圧縮永久歪特性、或いは耐疲労性が悪化してしまうなど、防振ゴムとしての要求特性を全て十分に満足できるものではなかった。
【0007】
そのほかの関連する先行技術文献としては、以下の特許文献5及び6に記載された防振ゴム組成物が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−146035号公報
【特許文献2】特開2005−320545号公報
【特許文献3】特開2010−229245号公報
【特許文献4】特開平7−97483号公報
【特許文献5】特開2004−307621号公報
【特許文献6】特開2004−307622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐疲労性、圧縮永久歪特性を悪化させることなく、加硫戻りを改善し、更に低動倍率を維持向上させることができる防振ゴム用ゴム組成物及び防振ゴム製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ジエン系ゴムを主成分とするゴム成分を含む防振ゴム用ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対して、(A)1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウムを0.1〜4.0質量部、及び(B)1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサンを0.05〜0.8質量部配合することにより、圧縮永久歪や耐疲労性を悪化させることなく、加硫戻りを改善でき、そのうえ低動倍率の防振ゴム用ゴム組成物を得ることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
即ち、加硫戻りを改善するために防振ゴム用ゴム組成物に(A)成分のみを配合すると圧縮永久歪が悪化し、また、(B)成分のみを使用して加硫戻りを改善しようとすると、耐疲労性が大きく低下した。本発明は、(A)成分と(B)成分とを併用し、更に、各成分の配合量を特定することで上記目的を達成できたことの知見に基づくものである。
【0012】
従って、本発明は、下記の防振ゴム用ゴム組成物及び防振ゴム製品を提供する。
[1]ジエン系ゴムを主成分とするゴム成分を含む防振ゴム用ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対して、
(A)1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウムを0.1〜4.0質量部、及び
(B)1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサンを0.05〜0.8質量部
を配合し、且つ、(A)成分と(B)成分の配合割合がB/A(質量比)で0.1〜1.3であることを特徴とする防振ゴム用ゴム組成物。
[2]更に(C)不飽和脂肪酸及び/又はその金属塩を、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部配合する[1]記載の防振ゴム用ゴム組成物。
[3]上記ジエン系ゴムが、天然ゴムである[1]又は[2]記載の防振ゴム用ゴム組成物。
[4]上記ゴム成分100質量部に対する上記(A)成分の配合量が、0.3〜2.0質量部である[1]〜[3]のいずれか1項記載の防振ゴム用ゴム組成物。
[5]上記ゴム成分100質量部に対する上記(B)成分の配合量が、0.2〜0.4質量部である[1]〜[4]のいずれか1項記載の防振ゴム用ゴム組成物。
]上記[1]〜[]にいずれか1項記載の防振ゴム用ゴム組成物からなる防振ゴム部材を構成要素として含む防振ゴム製品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防振ゴム用ゴム組成物は、耐疲労性の低下及び圧縮永久歪特性の悪化を抑えつつ、加硫戻りを改善し、低動倍率を十分に達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明の防振ゴム用ゴム組成物のゴム成分は、ジエン系ゴムを主成分とするものである。本発明において上記のジエン系ゴムとは、主鎖に二重結合を含み、原料モノマーとしてジエン系モノマーを使用したゴムである。具体的には、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等の合成ジエン系ゴムが挙げられ、これらの中から1種を単独又は2種以上を混合して用いることができる。上記ジエン系ゴムとしては、耐久性向上の点から天然ゴム(NR)を採用することが好ましい。
【0015】
天然ゴム(NR)としては、特に制限されるものではなく、公知のものを適宜選択使用すればよく、例えば、RSS(Ribbed smoked sheets)、TSR(Technically Specified Rubber)等が挙げられる。
【0016】
上記ジエン系ゴムがゴム成分に占める割合については特に制限されるものではないが、大半を占める割合、具体的には、50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは、70〜100質量%であり、これにより防振ゴムの基本物性を良好に維持することができる。
【0017】
本発明では、上記ゴム成分中に(A)1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウムを所定量配合するものである。具体的には、商品名「デュラリンク HTS−PDR−D−S」(フレキシス社製)等の市販品を使用することができる。
【0018】
1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウムの配合量については、圧縮永久歪み特性及び加硫戻り改善効果の点から、上記ゴム成分100質量部に対し、0.1〜4.0質量部であり、好ましくは0.3〜2.0質量部である。この配合量が4.0質量部を超えると、圧縮永久歪み特性が悪くなるおそれがある。また、上記の配合量が0.1質量部未満であると、加硫戻り改善効果が十分に得られないおそれがある。
【0019】
また、本発明では、上記ゴム成分中に(B)1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサンを所定量配合する。1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサンは、下記の化学式を有し、分子量が693,C364026の化合物である。具体的には、商品名「Vulcuren」(LANXESS(株)社製)等の市販品を使用することができる。
【化1】
【0020】
1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサンの配合量については、耐疲労特性及び加硫戻り改善効果の点から、上記ゴム成分100質量部に対し、0.05〜0.8質量部であり、好ましくは0.2〜0.4質量部である。この配合量が0.8質量部を超えると、耐疲労特性が悪化するおそれがある。また、上記の配合量が0.05質量部未満であると、加硫戻り改善効果が十分に得られないおそれがある。
【0021】
また、上記(A)成分と上記(B)成分の配合割合はB/A(質量比)で0.1〜1.3であることが好適であり、より好ましくは0.13〜1.0である。上記(A)成分と上記(B)成分の配合割合を特定することにより、圧縮永久歪の悪化及び耐疲労特性の低下を抑えつつ、加硫戻りを改善し、低動倍率を達成できる。
【0022】
また、本発明のゴム組成物には、加硫戻りを十分に改善する点から、(C)成分として不飽和脂肪酸及び/又はその金属塩を配合することができる。不飽和脂肪酸は、直鎖状、分岐状のいずれのものであってもよく、炭素数は特に制限されるものではないが、炭素数1〜30であるものが好ましく、例えば、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸や9,11−オクタデカジエン酸等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸金属塩を用いる場合は、亜鉛を金属塩とすることが好適である。不飽和脂肪酸の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。
【0023】
本発明のゴム組成物にはカーボンブラックを配合することができる。カーボンブラックとしては、公知のものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、SRF級、GPF級、FEF級、HAF級、ISAF級、SAF級、FT級、MT級等のカーボンブラックを挙げることができ、本発明においては、FEF級又はFT級を好適に用いることができる。
【0024】
また、これらのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのカーボンブラックの配合量は、低動倍率化及び機械的強度を確保する観点から、上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは15〜65質量部である。
【0025】
本発明のゴム組成物には、硫黄を配合することができる。硫黄の総配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部であり、好ましくは0.3〜3.5質量部、より好ましくは1.0〜3.0質量部である。
【0026】
本発明のゴム組成物には、加硫促進剤を配合することができる。加硫促進剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のベンゾチアゾール系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系;その他ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。これらスルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤を1種又は2種以上を併用できるが、本発明においては、加硫促進能力が比較的中〜低程度のグアニジン系及び/又はスルフェンアミド系の加硫促進剤の使用がより好適である。加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.4〜2.0質量部である。
【0027】
本発明においては、亜鉛華(ZnO)を配合することができる。亜鉛華の配合量は、作業性や低動倍率の点から、上記ゴム成分100質量部に対し、1〜20質量部、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは2〜10質量部である。
【0028】
また、本発明では、飽和脂肪酸を配合することもでき、この飽和脂肪酸は直鎖状、分岐状のいずれのものであってもよく、炭素数は特に制限されるものではないが、例えば炭素数1〜30、好ましくは15〜30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸などが挙げられる。この飽和脂肪酸の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部、さらに好ましくは1〜3質量部である。
【0029】
オイルは、公知のものを使用でき、特に制限されないが、具体的には、アロマティック油、ナフテン油、パラフィン油等のプロセスオイルや、やし油等の植物油、アルキルベンゼンオイル等の合成油、ヒマシ油等を使用できる。本発明においては、ナフテン油を好適に用いることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。オイルの配合量は、特に制限されないが、混練作業性の点から、上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。なお、油展されたゴムを上記ゴム成分に用いる場合は、該ゴムに含有されるオイルと、混合時に別途添加されるオイルとの合計量が上記範囲となればよい。
【0030】
老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されないが、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤などを挙げることができる。老化防止剤は1種又は2種以上を併用することができる。老化防止剤の配合量は上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部である。
【0031】
また、上記ゴム成分に対して、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、充填剤を配合することができ、その種類については、特に限定されるものではなく、シリカ、ホワイトカーボン、微粒子ケイ酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク等の充填剤を適宜使用することができる。更に、上記ゴム成分に対して、ゴム工業で通常使用されているワックス類、酸化防止剤、発泡剤、可塑剤、オイル、滑剤、粘着付与剤、石油系樹脂、紫外線吸収剤、分散剤、相溶化剤、均質化剤、加硫遅延剤等の添加剤を必要に応じて適宜配合することもできる。
【0032】
本発明のゴム組成物を得る際、上記各成分の配合方法に特に制限はなく、全ての成分原料を一度に配合して混練しても良いし、2段階あるいは3段階に分けて各成分を配合して混練を行ってもよい。なお、混練に際してはロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の混練機を用いることができる。更に、シート状や帯状等に成形する際には、押出成型機、プレス機等の公知の成型機を用いればよい。
【0033】
また、上記ゴム組成物を硬化させる際の加硫条件としては、特に限定されるものはないが、通常140〜180℃で、5〜120分間の加硫条件を採用することができる。
【0034】
本発明の防振ゴム製品は、防振ゴム用ゴム組成物からなる防振ゴム部材を構成要素として含む。防振ゴム製品は、通常、ゴム材と金属・樹脂等の別部材とを接触させた構成部材であり、未加硫ゴム組成物と上記別部材とを、必要に応じて接着剤を用いて加熱加圧することにより、上記ゴム組成物を加硫すると同時に、この加硫ゴムと上記別部材とを接着・一体化させた防振ゴム製品を得ることができる。防振ゴム製品は、加硫ゴムと金属との間、或いは、加硫ゴムと樹脂との間に、各種接着剤を介在させてよいし、接着剤を用いずに嵌合等により直接一体化させることができる。
【0035】
防振ゴム製品としては、例えば、車両用防振ゴム製品、鉄道用防振ゴム製品、空気ばね、エアスリーブ及び自動車用防振ゴム製品等のゴム製品が挙げられる。このうち自動車用防振ゴム製品として、具体的には、トーショナルダンパー、エンジンマウント、トルクロッド、液封マウント、アッパーマウント、ストラットマウント、バンパーストッパー、マフラーハンガー、内外筒ブッシュ、サスペンションブッシュ、ダンパー、カップリング、センターサポート、キャビンマウント、メンバーマウント、トーコレクトブッシュ及びスタビライザーブッシュなどに好適に適用される。
【0036】
防振ゴム製品として適用する場合、防振ゴム製品の好適な硬度(Hd)については、JIS K 6253(タイプA)で、好ましくは30以上、より好ましくは30〜70である。また、防振ゴムの好適な動倍率(Kd/Ks)については、JIS K 6385に準拠した数値では、1.1〜4.0、より好ましくは1.1〜2.0であることが好適である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0038】
〔実施例1〜15、比較例1〜6〕
表1に示す配合組成で混練し、実施例1〜15及び比較例1〜6の各例の防振ゴム用ゴム組成物を加硫硬化させ、各試験用のゴム片を作製した。得られたゴム片について、加硫戻り改善度、圧縮永久歪み、動倍率(Kd/Ks)及び耐伸張疲労性を下記内容により評価した。その結果を表1及び表2に併記する。
【0039】
[加硫戻り改善度]
加硫温度165℃で加硫し、加硫時間15分に到達した際のトルクの低下率を比較した。トルク(F)の最大値(Fmax)を基準とし、加硫開始後15分におけるトルク(F15)の低下率を(Fmax-F15)/Fmaxで算出し、比較例1を100としてインデックス表示した。インデックスの数字が大きい程、加硫戻り改善度が高いことを示す。
【0040】
[圧縮永久歪み]
100℃,72時間の加熱温度条件の下、圧縮永久歪み試験をJIS K 6262に準拠して実施した。比較例1を100としてインデックス表示した。インデックスの数字が低い程、圧縮永久歪みに優れていることを示す。
【0041】
[静バネ定数(Ks)、動バネ定数(Kd)及び動倍率(Kd/Ks)]
JIS K 6385に準拠し、Kdは100Hzで測定した。また、静バネ定数(Ks)及び動倍率(Kd/Ks)の評価では、直径30mm×高さ30mmの円柱状の試料を作製した。比較例1を100としてインデックス表示した。インデックスの数字が低い程、低動倍率(防振特性)に優れていることを示す。
【0042】
[耐伸張疲労性]
ダンベル状に切り出したゴム試験片において、引張方向に0〜200%の繰り返し入力を与えた際の破断に至るまでの回数を測定した。比較例1を100としてインデックス表示した。インデックスの数字が高い程、耐伸張疲労性に優れていることを示す。
【0043】
表1及び表2中のゴム配合についての詳細は下記の通りである。
【0044】
NR
天然ゴム(NR):「RSS#4」
【0045】
FEFカーボン
FEF級のカーボンブラック:旭カーボン製「旭 #65」
【0046】
ステアリン酸
新日本理化社製「ステアリン酸50S」
亜鉛華
商品名「3号亜鉛華」(ハクスイテック社製)
ワックス
商品名「サンタイト S」(精工化学社製)
老化防止剤
大内新興化学工業(株)製 「ノクラック 6C」、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
不飽和脂肪酸亜鉛
LANXESS社製「アクチプラストT」
【0047】
オイル
アロマ系オイル:三共油化工業社製「A/O ミックス」
【0048】
硫黄
商品名「粉末硫黄」(鶴見化学社製)
【0049】
加硫促進剤 CZ
商品名「ノクセラー CZ−G」(大内新興化学工業社製)
【0050】
1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム
商品名「デュラリンク HTS-PDR-D-S」(フレキシス社製)
1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン
商品名「Vulcuren」(LANXESS社製)
1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン
商品名「Perkalink900」(LANXESS社製)
【0051】
【表1】
【0052】
上記表1の結果より、各比較例は実施例1〜8に比べて以下の点に劣ることが分かる。
比較例2は、ゴム組成物に、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンを配合した例であるが、加硫戻り改善度が低く、また、動倍率に劣るものであった。
比較例3は、ゴム組成物に、1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウムを配合しない例であり、加硫戻り改善度が十分ではなかった。
比較例4は、ゴム組成物に、1,6−ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウムを多量に配合した例であり、圧縮永久歪み特性が悪化した。
比較例5は、ゴム組成物に、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサンを配合しない例であり、動倍率の改善が十分ではなく、圧縮永久歪み特性が悪化した。
【0053】
【表2】
【0054】
上記表2の結果より、比較例6は、ゴム組成物に、1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサンを多量に配合した例であり、耐伸張疲労性に劣るものであった。