【文献】
竹中幹人他,コントラスト変調小角中性子散乱法による膨潤ゴムの構造解析,日本ゴム協会誌,81 巻 (2008) 8 号,2008年,p. 334-338,DOI https://doi.org/10.2324/gomu.81.334
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
異なる膨潤度に膨潤させたナノコンポジット中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定し、前記膨潤度と前記厚みとの関係により、非膨潤状態におけるナノコンポジットの耐久性能を評価する方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、異なる膨潤度に膨潤させたナノコンポジット中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定し、前記膨潤度と前記厚みとの関係により、非膨潤状態におけるナノコンポジットの耐久性能を評価する。
【0011】
ナノコンポジットをポリマーの良溶媒で膨潤させると、フィラー界面に吸着したポリマーは溶媒に膨潤しにくい一方でフィラーに吸着していないポリマーは溶媒に膨潤しやすいために、両者の間で膨潤度の差が生じる。この膨潤度の差を利用して、膨潤したナノコンポジット中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを定量化することが可能である。
【0012】
本発明者が、鋭意検討した結果、ナノコンポジットの膨潤度とフィラー界面吸着ポリマーの厚みとの関係から、非膨潤状態におけるナノコンポジットの耐久性能を評価できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
特に、本発明者は、ナノコンポジットの膨潤度とフィラー界面吸着ポリマーの厚みとが概ね反比例の関係にあり、その比例定数が大きいほど耐久性能に優れることを発見し、膨潤度Qと前記厚みδ
Qとの関係を下記式で近似して算出した比例定数Kに基づいて、非膨潤状態におけるナノコンポジットの耐久性能を評価できることを見出した。
δ
Q=K/Q
【0014】
本発明において、フィラー界面吸着ポリマーとは、溶媒膨潤したナノコンポジットの体積からフィラーの体積を差し引いて得られるポリマーの膨潤度よりも高い膨潤度をもつポリマーを意味する。
【0015】
本発明では、まず、異なる膨潤度に膨潤させたナノコンポジット中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定する。
【0016】
ナノコンポジットとは、フィラーを1〜100nm程度のオーダーで粒子化したものを、ポリマーに分散させた複合材料のことを意味する。このようなナノコンポジットとしては、例えば、加硫前のゴム、架橋ゴム、熱可塑性エラストマー系ナノコンポジット、熱可塑性ポリマー系ナノコンポジット、熱硬化性ポリマー系ナノコンポジット等が挙げられる。なかでも、架橋ゴムに対して本発明の方法を好適に適用できる。
【0017】
架橋ゴムとしては、ゴム成分にフィラーを配合し、硫黄等の加硫剤により架橋した架橋ゴムであれば、特に限定されず、ゴム工業分野で汎用されている他の配合剤(シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル、ワックス、架橋剤、加硫促進剤等)が含まれていてもよい。このような架橋ゴムは、公知の混練方法などを用いて製造できる。
【0018】
ゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
フィラーとしては、シリカ、カーボンブラック;mM
2・xSiO
y・zH
2O(式中、M
2はアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、チタン及びジルコニウムよりなる群より選択された少なくとも1種の金属、又は該金属の酸化物、水酸化物、水和物若しくは炭酸塩を示し、mは1〜5、xは0〜10、yは2〜5、zは0〜10の範囲の数値を示す。);などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シリカ、カーボンブラックに対して本発明の方法を好適に適用できる。
【0020】
上記mM
2・xSiO
y・zH
2Oで表される充填剤(フィラー)の具体例としては、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)、アルミナ(Al
2O
3、Al
2O
3・3H
2O(水和物))、クレー(Al
2O
3・2SiO
2)、カオリン(Al
2O
3・2SiO
2・2H
2O)、パイロフィライト(Al
2O
3・4SiO
2・H
2O)、ベントナイト(Al
2O
3・4SiO
2・2H
2O)、ケイ酸アルミニウム(Al
2SiO
5、Al
4(SiO
2)
3・5H
2Oなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al
2O
3・CaO・2SiO
2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、酸化カルシウム(CaO)、ケイ酸カルシウム(Ca
2SiO
4)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO
4)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、酸化マグネシウム(MgO)、タルク(MgO・4SiO
2・H
2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO
2・9H
2O)、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al
2O
3)、チタン白(TiO
2)、チタン黒(Ti
nO
2n−1)等が挙げられる。
【0021】
本発明では、異なる膨潤度に膨潤させたナノコンポジットを作製し、測定材料として用いる。すなわち、耐久性能を評価したい1のナノコンポジットについて、2種類以上(好ましくは3以上)の膨潤度に膨潤させたナノコンポジットを作製し、測定材料として用いる。異なる膨潤度に膨潤させたナノコンポジットを測定材料として用いることで、ナノコンポジットの耐久性能を評価することが可能となる。
【0022】
膨潤度とは、((膨潤溶媒の体積+ナノコンポジットの体積)/ナノコンポジットの体積)−1で定義され、膨潤溶媒の体積とは、ナノコンポジットが蓄えた溶媒の体積のことをいう。
異なる膨潤度に膨潤させたナノコンポジットとしては、例えば、体積が100mm
3のナノコンポジットを用いる場合、該ナノコンポジットに過剰量のトルエンを添加し、完全に膨潤させたナノコンポジットを作製し、完全膨潤度が3であるとすると、100mm
3及び200mm
3のトルエンを添加した膨潤度が1及び2の膨潤させたナノコンポジットを用いたり、100mm
3及び300mm
3のトルエンを添加した膨潤度が1及び3の膨潤させたナノコンポジットを用いたりすることができる。
【0023】
異なる膨潤度に膨潤させたナノコンポジットのうち、最も小さい膨潤度に膨潤させたナノコンポジットの膨潤度aと、最も大きい膨潤度に膨潤させたナノコンポジットの膨潤度bとの差(b−a)は、好ましくは0.1以上、より好ましく0.3以上、更に好ましくは1以上、特に好ましくは2以上である。また、差(b−a)の上限は特に限定されないが、5以下、4以下であってもよい。上記範囲内であると、耐久性能をより精度良く評価できる。
【0024】
ナノコンポジットを膨潤させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、トルエン、シクロヘキサン、キシレン、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いる方法が好適に使用できる。膨潤させる条件としては、ナノコンポジットが均一に膨潤できる条件であれば特に限定されないが、密閉容器内にナノコンポジットと任意量の溶媒を共存させ、ナノコンポジット全体を均一に膨潤させることが好ましい。ナノコンポジットを均一に膨潤するとは、膨潤に用いる溶媒等がナノコンポジット中に万遍なく行き渡っており、偏って溶媒がナノコンポジット中に存在し、反った状態のナノコンポジット等にならない状態のことをいう。
【0025】
一般的に、溶媒等を用いてナノコンポジットを膨潤させる際、ナノコンポジットに反りが生じる。このような反りが生じている状態では、ナノコンポジット中に溶媒等が万遍なく行き渡っておらず、ナノコンポジットと溶媒を好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上、更に好ましくは24時間以上共存させることにより、ナノコンポジット中に溶媒等が万遍なく行き渡り、前記反りも解消し、ナノコンポジット全体を均一に膨潤させたナノコンポジットが調製できる。
【0026】
なお、異なる膨潤度に膨潤させる方法として、ナノコンポジットをSP値の異なる溶媒で膨潤させると完全膨潤度が異なることを利用し、SP値の異なる数種類の溶媒を過剰量添加して完全に膨潤させる方法を用いてもよい。一種類の溶媒を使用する方法だと、狙いの膨潤度となるように溶媒を一定量添加し、密閉状態で静置する必要があるが、数種類の溶媒を過剰量添加して完全に膨潤させる方法だと、その必要がなく、試料セルの密閉性が悪くても膨潤度を変えることができる。
【0027】
膨潤させたナノコンポジット中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みの測定は、例えば、コントラスト変調小角中性子散乱法(CV−SANS法)により行うことできる。その一例を具体的に説明する。
【0028】
先ず、CV−SANS法により、膨潤させたナノコンポジットに含まれる各成分の部分散乱関数を得る。次いで、得られた部分散乱関数に対して、フィラーとポリマーの界面領域モデルを示す式を用いてカーブフィッティングを行い、フィラー界面吸着ポリマーの厚みを求める。
【0029】
CV−SANS法により、ナノコンポジットに含まれる各成分の部分散乱関数を得る方法は、特開2013−30286号公報に記載された方法と同様である。その詳細について説明する。
【0030】
CV−SANS法とは、コントラスト変調(CV)を行った複数の試料の小角中性子散乱(SANS)から、試料に含まれる複数物質の構造解析等を行う技術である。ここで、コントラスト変調とは、溶媒の重水素化濃度や材料の重水素化濃度を変化させることによって散乱長密度を変化させ、含まれる複数の物質(ポリマー、フィラー等)の各散乱長密度との差である散乱長密度差(コントラスト)を変化させることをいう。
【0031】
例えば、溶媒として、重水素化トルエンとトルエンとを様々な重水素化トルエン/トルエン比率で混合した溶媒を使用して、複数の試料を作製してCV−SANS法を実施でき、例えば、重水素化トルエンの質量比率が0%、50%、75%、100%の4種類の溶媒を用いた各試料を測定すればよい。なお、以下において、膨潤溶媒中の重水素化トルエン比率(質量比率)が0%の試料を「d0」、50%の試料を「d50」、75%の試料を「d75」、100%の試料を「d100」とも称する。
【0032】
図2、3はそれぞれ、前記4種類の試料(d0、d50、d75、d100)のそれぞれの散乱強度曲線の一例を示している。
【0033】
なお、CV−SANS法により各試料の散乱強度曲線を得る際、中性子線の中性子束強度、測定方法、測定機器等は、特開2014−102210号公報等に記載されているものを好適に採用できる。
【0034】
得られた試料の散乱強度曲線I(q)は、試料に含まれる各成分の部分散乱関数の和として表すことができる。通常、膨潤させたナノコンポジットの試料は、フィラー、ポリマー、膨潤溶媒以外の成分分率が非常に少ないため、フィラー、ポリマー、膨潤溶媒の3成分系とみなすことができ、散乱強度曲線I(q)は、下記式(1)で表すことができる。
【数1】
(式中、a
P、a
F、a
Sはそれぞれ、ポリマー、フィラー、膨潤溶媒の散乱長密度を表す。S
PP(q)はポリマーの部分散乱関数、S
PF(q)はポリマーとフィラーとの相互作用に伴う部分散乱関数、S
FF(q)はフィラーの部分散乱関数を表す。qは下記式(2)で表わされる領域を表す。)
【数2】
(式中、θは散乱角、λは中性子線の波長を表す。)
【0035】
前記4種類の試料(d0、d50、d75、d100)の各散乱強度I
n(q)(n=1〜4)と、各成分の散乱長密度から、下記式(3)により、部分散乱関数S
PP(q)、S
PF(q)、S
FF(q)を算出できる。式(3)は、前記4種類の試料についての式(1)を行列で表したものであり、その特異値分解によって、各部分散乱関数を決定できる。
【数3】
(式中、Δa
Pはポリマーと膨潤溶媒の散乱長密度の差、Δa
Fはフィラーと膨潤溶媒の散乱長密度の差を表す。)
【0036】
次いで、得られた部分散乱関数に対して、フィラーとポリマーの界面領域モデルを示す式を用いてカーブフィッティングを行い、フィラー界面吸着ポリマーの厚みを求める方法の一例を具体的に説明する。
【0037】
例えば、フィラーの凝集構造(領域α)にポリマーの体積分率φ
lの吸着層(領域β)が存在し、その周りを体積分率φ
mのマトリックス(領域γ)が存在するモデル(
図1参照)を考える。また領域αと領域βを合わせた全体の構造として、滑らかな界面を持った慣性半径R
g,lの構造をモデルとして考え、この構造の散乱関数S
α+β(q)を考える。得られた部分散乱関数S
PP(q)、S
PF(q)、S
FF(q)に対して、前記モデルを示す下記式(4)を用いてカーブフィッティングを行い、フィッティングパラメーターを最小2乗法で求める。
【数4】
(式中、F
α(q)は領域αの構造振幅、F
α+β(q)は領域αと領域β全体の構造振幅、式(4)第ニ式の右辺第二項は領域γの架橋網目に由来する散乱、ξは架橋点間距離、R
g,Fはフィラー粒子の慣性半径、R
g,aはフィラーの凝集構造の慣性半径、D
fは凝集構造のマスフラクタル次元を表す。A〜Gはそれぞれフィッティングパラメーターである。)
【0038】
求められたフィッティングパラメーターにおいて、領域αと領域βを合わせた全体の構造の慣性半径R
g,lから領域αの凝集構造の慣性半径R
g,aを差し引いたR
g,l−R
g,aがナノコンポジット中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みに相当する。これにより、膨潤させたナノコンポジット中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みが測定できる。
【0039】
本発明では更に、得られた、異なる膨潤度Qに膨潤させたナノコンポジット中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みδ
Qについて、膨潤度Qと厚みδ
Qとの関係により、好ましくは、膨潤度Qと厚みδ
Qとの関係を下記式で近似して算出した比例定数Kに基づいて、非膨潤状態におけるナノコンポジットの耐久性能を評価する。
δ
Q=K/Q
【0040】
具体的には、例えば、膨潤度Qと厚みδ
Qとの関係を、上記式に対して最小二乗法等により近似し、比例定数Kを算出することにより、非膨潤状態におけるナノコンポジットの耐久性能を評価できる。
【0041】
本発明では、このようにして非膨潤状態におけるナノコンポジットの耐久性能を評価できる。これにより、ナノコンポジットの力学物性との関係を検証することができ、ゴム組成物等のナノコンポジットの開発に大きく寄与できる。
【実施例】
【0042】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0043】
以下、実施例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
(使用試薬)
SBR:日本ゼオン(株)製のNS116R
シリカ:エボニック社製のUltrasil VN3
シランカップリング剤1:エボニック社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:エボニック社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤3:モメンティブ社製のY19084(下記式(I)で表される化合物)
【化1】
ステアリン酸:日本油脂(株)製
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
加硫促進剤2:1,3−ジフェニルグアニジン
【0044】
【表1】
【0045】
1.ナノコンポジットA〜Cの作製
表1の配合内容にしたがい、密閉型バンバリーミキサーで、硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を温度が150℃に達するまで3〜5分間混練りし、ベース練りナノコンポジットを得た。つぎに、ベース練りナノコンポジットと硫黄及び加硫促進剤とをオープンロールで混練りし、得られた混練物を加硫してナノコンポジットA〜Cを得た。
【0046】
2.破壊エネルギー指数の評価
JIS−K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従って、各ナノコンポジットの引張強度と破断伸びを測定した。更に、引張強度×破断伸び/2により破壊エネルギーを算出した。ナノコンポジットAの破壊エネルギーを100とした指数で示し(破壊エネルギー指数)、結果を表3に示した。指数が大きいほど、破壊エネルギーが高く、耐久性能に優れることを示す。
【0047】
3.SANS測定
トルエンと重水素化トルエンの体積分率を変えた4種類のトルエン溶媒(トルエン/重水素化トルエン(vol/vol)=0/100、25/75、50/50、100/0)を準備した。
膨潤度が0.5となるように、各トルエン溶媒を、15mm四方で厚み1mmのナノコンポジットAを入れた各ガラスバイアルに滴下し、一昼夜静置して、膨潤させた試料A11〜A14を得た。同様にして、膨潤度が2となるように膨潤させた試料A21〜A24、膨潤度が4となるように膨潤させた試料A31〜A34を得た。
【0048】
15mm四方で厚み1mmのナノコンポジットBを各ガラスバイアルに入れ、完全に各トルエン溶媒に浸漬するようにした後、一昼夜静置して、完全に膨潤させた試料B11〜B14を得た。膨潤度は2.6であった。
15mm四方で厚み1mmのナノコンポジットCを各ガラスバイアルに入れ、完全に各トルエン溶媒に浸漬するようにした後、一昼夜静置して、完全に膨潤させた試料C11〜C14を得た。膨潤度は2.5であった。
【0049】
キシレンと重水素化キシレンの体積分率を変えた4種類のキシレン溶媒(キシレン/重水素化キシレン(vol/vol)=0/100、25/75、50/50、100/0)を準備した。
15mm四方で厚み1mmのナノコンポジットBを各ガラスバイアルに入れ、完全に各キシレン溶媒に浸漬するようにした後、一昼夜静置して、完全に膨潤させた試料B21〜B24を得た。膨潤度は3であった。
15mm四方で厚み1mmのナノコンポジットCを各ガラスバイアルに入れ、完全に各キシレン溶媒に浸漬するようにした後、一昼夜静置して、完全に膨潤させた試料C21〜C24を得た。膨潤度は3.8であった。
【0050】
次いで、膨潤させた各試料をサンプルホルダーに取り付け、室温にて試料に中性子線を照射した。低角検出器バンクのデータを用いた。使用した波長は1Åから10Åである。なお、ノイズデータ及び溶媒からのバックグラウンドを差し引き、厚み補正を行った。散乱強度はグラッシーカーボンを用いて絶対強度化をした。以上により、各散乱強度曲線I(q)を得た。
【0051】
(SANS装置)
SANS:J−PARC付属の茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)
(測定条件)
入射中性子波長:0.2〜10Å
MLFビーム:300kW
(検出器)
5He1次元検出器
【0052】
試料A11〜A14の各散乱強度曲線I(q)と、下記表2で示される各成分の散乱長密度から、式(3)により、部分散乱関数S
PP(q)、S
FF(q)、S
PF(q)を算出した。
更に、これらの部分散乱関数に対して、式(4)を用いてカーブフィッティングを行い、膨潤度0.5に膨潤させたナノコンポジットA中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定し、結果を表3に示した。
【0053】
同様にして、試料A21〜A24について、膨潤度2に膨潤させたナノコンポジットA中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定し、試料A31〜A34について、膨潤度4に膨潤させたナノコンポジットA中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定し(試料A21〜A24の各散乱強度曲線I(q)は
図2、試料A31〜A34の各散乱強度曲線I(q)は
図3参照)、結果を表3に示した。
【0054】
同様にして、試料B11〜B14について、膨潤度2.6に膨潤させたナノコンポジットB中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定し、試料B21〜B24について、膨潤度3に膨潤させたナノコンポジットB中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定し、結果を表3に示した。
【0055】
同様にして、試料C11〜C14について、膨潤度2.5に膨潤させたナノコンポジットC中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定し、試料C21〜C24について、膨潤度3.8に膨潤させたナノコンポジットC中のフィラー界面吸着ポリマーの厚みを測定し、結果を表3に示した。
【0056】
【表2】
【0057】
各膨潤度に膨潤させたナノコンポジットAについて、膨潤度Qに対して、フィラー界面吸着ポリマーの厚みδ
Qをプロットし、最小二乗法により下記式で近似し(
図4)、比例定数kを求め、結果を表3に示した。
δ
Q=K/Q
【0058】
各膨潤度に膨潤させたナノコンポジットBや、各膨潤度に膨潤させたナノコンポジットCについても同様にして(
図4)、比例定数kをそれぞれ求め、結果を表3に示した。
【0059】
【表3】
【0060】
表3より、比例定数kが高いほど、破壊エネルギー指数が大きく、耐久性能に優れることが分かった。
【0061】
以上から、本発明の方法により、ナノコンポジットの耐久性能を評価できることが分かった。