(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
試験片に対して試験力を付与して材料試験を行う材料試験機においては、試験片の形状や材質に応じた材料試験が実行される。例えば、試験片に対して引張試験力を与える引張試験では、材料の力学的特性を知るために、材料の応力とひずみの関係を知ることが重要となる。なお、試験片の形状から求められる断面積と試験片に与えられる引張試験力とから応力が計算され、試験片の標点間距離と試験片に生じた変位からひずみが計算される。このため、材料試験機では、試験準備として、試験片サイズ、標点間距離等の情報を設定し、応力やひずみなどの一般的な材料特性値を測定データから算出する計算式を、試験片情報に対応させて記憶部に記憶させている。
【0003】
特許文献1では、規格等で定められた計算式だけでなく、任意の計算式を定義可能な材料試験機が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
材料試験では、材料試験特有のパラメータを使用して、実行する試験の最大試験力、最大変位量を計算し、それらの値を予め制御装置に入力しておく。例えば、引張試験の場合、試験片の断面積S
0に目標応力を乗算することで、最大試験力を計算することができる。なお、断面積S
0は、引張試験において応力に影響するパラメータであり、試験片の形状から計算することができる。
【0006】
従来は、ユーザが試験片の寸法を予め制御装置に入力することで、試験中の応力計算等に必要な試験片の断面積S
0を自動計算させ、応力や応力−ひずみ曲線をリアルタイムで表示装置に表示するために制御装置に記憶させている。断面積S
0等のパラメータの値は、試験中のリアルタイム計算に利用される以外は、表示装置を利用したグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して、ユーザが他の計算に利用できる状況にはなかった。このため、ユーザは、試験実行前の最大試験力等を入力するに際しては、別途電卓を利用して最大試験力等の計算を行っていた。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、数値の入力をより容易に行うことが可能な材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、表示装置および入力装置を含むグラフィカルユーザインターフェースを備えた材料試験機であって、
材料試験の種類ごとに、当該種類の材料試験における設定値を算出するために用いるパラメータ値を、試験片の形状に関する情報に基づいて算出する計算式が保存された記憶部と、
使用者による前記材料試験の種類の選択及び前記試験片の形状に関する情報の入力を受けて、前記記憶部から該材料試験の種類に対応する計算式を読み出して前記パラメータ値を算出
して前記記憶部に保存する演算部と、
前記使用者により選択された材料試験の種類に応じた前記設定値の表示欄が設けられた第1の入力インターフェースを前記表示装置に表示し、
該第1の入力インターフェースから前
記設定値を入力する指示が受け付けられたときに、入力欄と、
該入力欄に入力する数値の入力操作を受ける数字キーと、四則演算子に対応する演算キーと、
前記記憶部に保存されたパラメータ値を入力するパラメータボタンと、前記入力欄の数値を前記第1の入力インターフェースにおける前
記表示欄に反映する確定ボタンと、が配置された第2の入力インターフェースを前記表示装置に表示
する表示制御部と
を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の材料試験機において、
前記試験
片の形状に関する情報は、試験片の
断面形状と
大きさを含
み、
前記パラメータ値は、前記試験片の断面積、断面係数、及び断面二次モーメントを含む。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の材料試験機において、前記第1の入力インターフェースは、試験結果をグラフ表示するときの設定を行う設定画面であり、前記表示制御部は、前記第2の入力インターフェースを、前記第1の入力インターフェースにおいてグラフの表示範囲を変更するための入力があったときに前記表示装置に表示
する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1から請求項3に記載の発明によれば、測定データから材料特性値を算出するための計算式を記憶部に記憶させていることから、試験情報から選択された計算式に含まれるパラメータを自動計算することができる。また、表示制御部は、数値表示欄が設けられた第1の入力インターフェースと、入力欄と、入力欄に入力する数値の入力操作を受ける数字キーと、四則演算子に対応する演算キーと、記憶部に記憶させておいた測定データから材料特性値を算出するための計算式のうち試験情報から選択された計算式に含まれるパラメータに対応付けたパラメータボタンと、入力欄の数値を前記第1の入力インターフェースにおける数値表示欄に反映する確定ボタンと、が配置された第2の入力インターフェースを表示装置に表示し、記憶部に、演算部が計算式に含まれるパラメータを試験情報に基づいて演算した結果を、パラメータボタンに対応付けて記憶させておき、第1の入力インターフェースから数値表示欄に数値を入力する指示が受け付けられたときにパラメータボタンを配置した第2の入力インターフェースが表示装置に表示されることから、ユーザは、パラメータボタンをタッチするだけで、各試験における特有パラメータを記憶部から呼び出すことができ、第2の入力インターフェースの入力欄にワンタッチでこの特有パラメータを入力することが可能となる。演算キーも第2の入力インターフェースに配置しているので、ユーザが別途、電卓を使用して材料特性値を計算する必要がなく、簡単な数値入力により材料特性値を材料試験機の演算機能を利用して求めることが可能となる。そして、計算により得られた材料特性値は、第2の入力インターフェースに配置した確定ボタンにより、第1の入力インターフェースにおける数値表示欄に反映することができ、ユーザは当該数値表示欄の数値の変更を容易に行うことが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、パラメータボタンに対応つけて記憶させた各試験における特有パラメータを利用して、表示装置への試験結果のグラフ表示の範囲設定が可能であることから、ユーザは、試験設定によって予想される材料特性値の最大値、最小値の計算をパラメータボタンの利用により容易に行うことができ、グラフ表示を容易に最適化することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る材料試験機の正面概要図である。
図2は、この発明に係る材料試験機の主要な制御系を説明するブロック図である。
【0015】
この材料試験機は、クロスヘッド12と、基台11と、この基台11の左右に立設されたカバー13とにより囲まれた材料試験機本体の試験空間に、試験片を配置して材料試験としての3点曲げ試験を実行するものである。試験片は、基台11に配設された一対の支持部材21によって支持されることにより、試験空間に配置される。
【0016】
クロスヘッド12の両端部には、基台11の左右に立設されたカバー13内に配置される一対のねじ棹と螺合する図示しないナット部が配設されている。そして、一対のねじ棹が基台11内に配設されたモータ19(図
2参照)の駆動により同期して回転することで、クロスヘッド12が上下方向に移動する。クロスヘッド12には、圧子22が配設されている。クロスヘッド12を下降させて、支持部材21に支持された試験片を圧子22で押圧することにより、試験片に試験力が負荷される。
【0017】
試験片に負荷される試験力は、クロスヘッド12に配設された力検出器としてのロードセル14により検出される。ロードセル14からの信号は、制御装置17に入力される。制御装置17は、ロードセル14からの信号に基づいて、クロスヘッド12を昇降させるためのモータ19の駆動制御信号を作成する。これにより、モータ19の回転が制御されクロスヘッド12が負荷軸に沿って移動し、曲げ試験等の各種材料試験が実行される。
【0018】
制御装置17は、表示部16と、試験の開始や停止、クロスヘッド12の昇降操作などを行うときに使用する操作部15とに接続されている。そして、制御装置17は、演算装置を含むコンピュータやシーケンサーおよびこれらの周辺回路によって構成されている。制御装置17内のコンピュータやシーケンサーおよびこれらの周辺回路は、一対のねじ棹を同期して回転させるモータ19の駆動を制御することにより試験機本体の負荷機構を制御する負荷制御部32、後述する表示部16への画面表示を制御する表示制御部31、表示部16に表示される画面上の機能ボタンに登録するパラメータ値や試験機本体の動作プログラムを記憶させる記憶部33、の各機能を実現するように配置される。表示部16は、タッチパネルを備えた液晶表示装置であり、入力装置および表示装置として機能する。
【0019】
図3は、記憶部33に記憶させる試験片形状と計算式を対応付ける表である。
図4は、試験片形状と
図3の表中の計算式における変数を説明する図である。
図5は、パラメータの画面ボタンへの登録を説明するフローチャートである。
【0020】
記憶部33は、この材料試験機で実行可能な試験内容、引張試験、圧縮試験、曲げ試験等の試験種別、および、規格で定められた試験片の形状などの試験片情報を記憶している。この材料試験機では、試験特有のパラメータの計算式と、それらを利用して算出される材料特性値の計算式を、試験種別および試験片情報と対応付けて、記憶部33に記憶させている。例えば、3点曲げ試験用として、
図3の表に示すように、断面二次モーメントI、断面係数Z、曲げモーメントM、応力σ、ひずみεの計算式を、試験片の形状(平板、丸棒)に対応付けて予め記憶させている。
【0021】
ユーザが、試験種類に3点曲げ試験を選択(ステップS11)し、試験片形状の選択(ステップS12)で平板形状を選択したときには、変数入力(ステップS13)では、ユーザは、幅W、厚みT(
図4(a)参照)、および、支点間距離L(
図4(c)参照)の値を入力する(ステップS13)。そうすると、
図3に示す計算式に従って、3点曲げ試験特有のパラメータである断面二次モーメントIおよび断面係数Zが自動計算される(ステップS14)。また、試験片の形状として、丸棒形状を選択したときには、ユーザが直径D(
図4(b)参照)、および、支点間距離L(
図4(c)参照)の値を入力することにより、
図3に示す計算式に従って、断面二次モーメントIおよび断面係数Zが自動計算される。計算された断面二次モーメントI、断面係数Zは、それぞれ割り当てられた特定のパラメータボタン57(後述する
図7参照)に対応付けて記憶部33に記憶される(ステップS15)。なお、試験片形状の選択と幅W、厚みTなどの数字の入力に代えて、規格により定められた試験片の番号(例えば、JIS1号試験片)を選択することにより、試験片情報を入力するようにしてもよい。
【0022】
図6および
図7は、表示部16に表示する画面の概要図である。
図6は、応力を経時的に表示するグラフ表示の設定を行うための表示グラフ設定画面の表示例であり、
図7は、
図6に設けられた数値表示欄に数値を入力するための数字キーなどの操作要素が配置された数値入力用画面の表示例である。
【0023】
この材料試験機の表示部16に表示する画面として、試験条件の設定や試験結果の表示設定など、各設定に必要となる操作要素を配置してユーザの入力を受け付ける各種設定画面が用意されている。これらのレイアウトが定義された設定画面は、同一ウィンドウに設定項目ごとにタブを設けて表示内容を切り替える構造や、親ウィンドウにリンクされたモーダルウィンドウの表示などの階層構造を持ち、記憶部33に格納されている。
図6には、表示制御部31の作用により記憶部33から読み出した設定画面の一つである、グラフ表示の設定画面を示している。
図6に示す画面は、この発明の第1の入力インターフェースである。
【0024】
この表示グラフ設定には、グラフ表示領域41が設けられ、グラフの横軸X、縦軸Yの項目設定や各軸の最大値・最小値設定を行う「表示項目」のタブと、グラフ表示領域41の背景や線の色などを設定する「表示色」のタブが、同一ウィンドウに切り替え表示可能に用意されている。「表示項目」では、グラフの横軸X、縦軸Yの項目がプルダウンメニュー形式で選択可能となっている。
図6の表示例では、横軸Xに時間、縦軸Yに応力が選択されている。また、
図6の表示例では、グラフの横軸X、縦軸Yの最小値を表示する数値表示欄42および最大値を表示する数値表示欄43が各軸に対してそれぞれ設けられている。さらに、表示グラフ設定で変更した表示設定を反映する確定ボタン48と、表示グラフ設定画面を閉じるキャンセルボタン49が設けられている。
【0025】
図7に示す数値入力用画面は、ユーザが第1の入力インターフェースの数値表示欄42、43をタッチして、当該数値表示欄42、43のいずれかに数値を入力する指示を与えたときに、表示部16に表示される第2の入力インターフェースである。この実施形態では、
図6の画面をGUI画面の一次ウィンドウ、
図7に示す画面を二次ウィンドウとして定義し、一次ウィンドウでグラフ縦軸Yの最大値を入力する数値表示欄43をユーザがタッチしたときに、二次ウィンドウを一次ウィンドウに重畳させて、あるいは、横方向または縦方向に並べて、表示部16に表示する表示制御が実行される。
【0026】
図7に示す数値入力用画面には、小数点キーと0〜9までの数字キーと入力した数値のプラスマイナスの符号を変更する符号変更キーから成る数値入力キー51、四則演算子に割り当てられた演算キー52、計算結果を求めるイコールキー53、数値入力キー51等を使って入力した値が表示される入力欄54、先に入力された数値や演算を消去して入力欄54を空にするクリアキー55、入力欄54の数値を1文字ずつ消去するためのバックスペースキー56、入力欄54の数値を
図6のグラフ表示の数値表示欄42、43に反映するための確定ボタン58、数値入力用の画面を閉じるためのキャンセルボタン59が設けられる。そして、この数値入力用画面には、記憶部33に記憶されたパラメータに割り当てられるパラメータボタン57が配置される。
【0027】
ユーザによる試験片情報などの入力を受けた自動計算の後に記憶部33に記憶されたパラメータの数値は、試験中に応力σなどの経時変化を示すグラフを表示部16に表示するためのリアルタイム計算に利用される。また、パラメータの数値は、
図7に示す数値入力用の画面内に設けられた各パラメータボタン57に対応付けて記憶部33に記憶される(ステップS15)。
図6に示す表示グラフ設定では、グラフの縦軸Y、横軸Xの表示範囲を変更するときに、ユーザが数値表示欄42、43のいずれか一つを選択して入力指示を与えたときに、
図7に示す数値入力用画面が表示部16に表示される。
【0028】
パラメータボタン57の枠内には、
図7に示すように、パラメータボタン57に登録されたパラメータの記号I、Z等とともにステップS14での計算結果である数値が表示される(ステップS16)。このように、数値入力用画面にパラメータに割り当てられるパラメータボタン57を設け、パラメータボタン57に自動計算したパラメータを登録することで、ユーザは、表示部16の画面上のパラメータボタン57を選択することで、入力欄54にパラメータの数値をワンタッチで入力することができる。
【0029】
なお、上述した実施形態では、曲げ試験を行う場合のパラメータの表示を説明したが、引張試験の場合にも、試験片の断面積S
0、応力σ、ひずみεの計算式を、試験片の形状(平板、丸棒)に対応付けて予め記憶部33に記憶させている。したがって、ユーザが、
図5に示すステップS11で試験種別として引張試験を選択し、ステップS12で試験片形状として、丸棒形状を選択したときには、ステップS13では、試験片の直径、および、標点間距離をユーザが入力することにより、ステップS14で引張試験特有のパラメータである試験片の断面積S
0が自動計算される。そして、断面積S
0がパラメータボタン57に登録される。