特許第6977906号(P6977906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6977906
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】エレベータの操作ボタン装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/20 20060101AFI20211125BHJP
   B66B 1/46 20060101ALI20211125BHJP
   H01H 13/00 20060101ALI20211125BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20211125BHJP
   H01H 89/00 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   H01H13/20 A
   B66B1/46 A
   H01H13/00 A
   H01H35/00 V
   H01H89/00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2021-109002(P2021-109002)
(22)【出願日】2021年6月30日
【審査請求日】2021年6月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【弁理士】
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋平
(72)【発明者】
【氏名】端 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】阿部 航也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 捺未
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6841372(JP,B1)
【文献】 特開2010−218807(JP,A)
【文献】 実開平2−113241(JP,U)
【文献】 中国実用新案第212425032(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00−13/88
B66B 1/00− 1/52
H01H 9/00− 9/28
H01H 35/00
H01H 36/00
H01H 89/00−89/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご操作盤または乗場操作盤に設けられる操作ボタン装置であって、
操作面を有し、当該操作面の押下により操作される押しボタンと、
作動子を有し、当該作動子が前記押下方向に変位することによりオン・オフが切り換わる機械式スイッチと、
前記押しボタンの前記操作面とは反対の裏側に配され、前記操作面の前方において一定の距離範囲に亘る検知領域を有し、当該操作面の前方に存する指その他の物体を検知する非接触センサと、
前記押しボタンと前記作動子の間に設けられ、当該押しボタンと当該作動子の間隔を調整する間隔調整アダプタと、
を有し、
前記押しボタンの前記押下操作が、前記間隔調整アダプタを介して、前記作動子に伝わって、当該作動子が前記変位し、
前記間隔調整アダプタによって調整された前記間隔分、前記非接触センサから前記操作面までの距離が調整された構成とされていることを特徴とする操作ボタン装置。
【請求項2】
前記非接触センサは、光電センサであって、検出光の出射位置を起点に、第1の距離から第2の距離に亘る間が前記検知領域であって、前記第1の距離までは前記物体が検知されない非検知領域であり、前記操作面は、前記非検知領域に存する構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の操作ボタン装置。
【請求項3】
前記機械式スイッチと前記非接触センサが同一の回路基板に実装されていることを特徴とする請求項1または2に記載の操作ボタン装置。
【請求項4】
前記間隔調整アダプタは、前記押しボタンと前記作動子の両方に対し、着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の操作ボタン装置。
【請求項5】
前記押しボタン、前記間隔調整アダプタ、前記作動子、および前記非接触センサは、前記押下方向に直列配置されており、
前記非接触センサは、前記押下方向、前記操作面に向かって検出光を投光する光電センサであり、前記押しボタン、前記間隔調整アダプタ、前記作動子の各々は、前記検出光の進路に該当する部分が中空に、または透光部材で構成されていることを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載の操作ボタン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの操作ボタン装置に関し、特に、押しボタンに触れて操作する機械式スイッチに加え、非接触で操作できる非接触センサを備えた操作ボタン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、かご操作盤に設けられた行先階ボタン装置、戸開閉ボタン装置や乗場操作盤に設けられた呼びボタン装置など、不特定多数の乗客が操作する操作ボタン装置が数多く用いられている。
【0003】
近年の公衆衛生に対する意識の高まりから、非接触でも操作できる操作ボタン装置のニーズが拡大している。そのような、操作ボタン装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の操作ボタン装置(以下、「従来の操作ボタン装置」という)は、押しボタン13と、押しボタン13の作動に伴って操作されるスイッチ本体17と、押しボタン13の裏面に対向する位置に設けられ、押しボタン13から離間した所定位置(検知領域)Pに利用者の指先が到達したことを検知する非接触式の検知手段18とを有する構成とされている(特許文献1の段落[0041]、図5)。
【0005】
また、検知領域P(押しボタン13の表面からの距離範囲)は、L1以上L2以下とし(引用文献1の図5)、L1は2cm≦L1≦3cm、L2は4cm≦L2≦10cmが好ましいとされている(引用文献1の段落[0036]、[0037])。
【0006】
なお、スイッチ本体17の一例としてタクタイルスイッチが、検知手段18の一例として赤外線式光電センサが挙げられている(特許文献1の段落[0031]、[0033])。
【0007】
上記構成を有する従来の操作ボタン装置によれば、押しボタン13を押下して操作する接触式としても、押しボタン13の操作面前方の前記検知領域に指をかざす(指を進入させる)などによって操作する非接触式としても用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6841372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、操作ボタン装置の用途やエレベータの設置場所などに応じて、検知領域Pの前記操作面からの開始位置(すなわち、距離L1)の変更調整の要請がある。
【0010】
この場合、従来の操作ボタン装置では、前記光電センサの感度調整をし直したり(特許文献1の段落[0034])、あるいは、場合によっては、仕様の異なる別の光電センサに取り換えたり、といった手間を要することとなる。
【0011】
そこで、本発明は、非接触センサの調整や取り換えを要することなく、非接触センサの検知領域の押しボタンの操作面からの開始位置が調整された操作ボタン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係る操作ボタン装置は、エレベータのかご操作盤または乗場操作盤に設けられる操作ボタン装置であって、操作面を有し、当該操作面の押下により操作される押しボタンと、作動子を有し、当該作動子が前記押下方向に変位することによりオン・オフが切り換わる機械式スイッチと、前記押しボタンの前記操作面とは反対の裏側に配され、前記操作面の前方において一定の距離範囲に亘る検知領域を有し、当該操作面の前方に存する指その他の物体を検知する非接触センサと、前記押しボタンと前記作動子の間に設けられ、当該押しボタンと当該作動子の間隔を調整する間隔調整アダプタと、を有し、前記押しボタンの前記押下操作が、前記間隔調整アダプタを介して、前記作動子に伝わって、当該作動子が前記変位し、前記間隔調整アダプタによって調整された前記間隔分、前記非接触センサから前記操作面までの距離が調整された構成とされていることを特徴とする。
【0013】
また、前記非接触センサは、光電センサであって、検出光の出射位置を起点に、第1の距離から第2の距離に亘る間が前記検知領域であって、前記第1の距離までは前記物体が検知されない非検知領域であり、前記操作面は、前記非検知領域に存する構成とされていることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記機械式スイッチと前記非接触センサが同一の回路基板に実装されていることを特徴とする。
【0015】
さらに、また、前記間隔調整アダプタは、前記押しボタンと前記作動子の両方に対し、着脱自在に設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、前記押しボタン、前記間隔調整アダプタ、前記作動子、および前記非接触センサは、前記押下方向に直列配置されており、前記非接触センサは、前記押下方向、前記操作面に向かって検出光を投光する光電センサであり、前記押しボタン、前記間隔調整アダプタ、前記作動子の各々は、前記検出光の進路に該当する部分が中空に、または透光部材で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成を有する操作ボタン装置によれば、上記押しボタンと上記作動子の間に、当該押しボタンと当該作動子の間隔を調整する間隔調整アダプタを設けただけで、当該間隔分、上記非接触センサから前記操作面までの距離が調整された、ひいては、前記非接触センサの上記検知領域の前記操作面からの開始位置が調整された操作ボタン装置が構成される。
【0018】
すなわち、上記非接触センサの調整や取り換えを要することなく、当該非接触センサの上記検知領域の前記操作面からの開始位置が調整された操作ボタン装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る操作ボタン装置を備えたエレベータの概略構成を示す図である。
図2】上記エレベータの乗りかご室内におけるかご扉、およびその周辺の構成を示す斜視図である。
図3】(a)は、上記かご室内に設けられたかご操作盤の概略構成を示す正面図であり、(b)は、上記エレベータの乗場に設置された乗場操作盤の概略構成を示す正面図である。
図4】(a)は、実施形態に係る操作ボタン装置の正面図であり、(b)は前記操作ボタン装置の操作ボタン装置としての基本構成を有する標準操作ボタン装置の正面図である。
図5図4(a)におけるA・A線断面図である。
図6】実施形態に係る操作ボタン装置の一部分解斜視図である。
図7】(a)は、間隔調整アダプタの正面図、(b)は同平面図、(c)は同右側面図、(d)は(a)におけるC・C線断面図をそれぞれ示している。(e)は、前記間隔調整アダプタの斜視図である。
図8】(a)は、実施形態に係る操作ボタン装置の回路構成の概略を示す回路図であり、(b)は、上記標準操作ボタン装置の回路構成の概略を示す回路図である。
図9】(a)は変形例に係る間隔調整アダプタの連結前の状態を示す図であり、(b)は、変形例に係る間隔調整アダプタの連結状態を示す図である。
図10図4(b)におけるB・B線断面図である。
図11】上記標準操作ボタン装置の一部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る操作ボタン装置を実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る操作ボタン装置(図1では不図示)を備えたエレベータ10の概略構成を示す図である。
【0021】
エレベータ10は、例えば、昇降路12の上方に機械室14を備えたトラクション式エレベータであって、機械室14に設置された巻上機16の駆動シーブ18に掛けられた主ロープ20の一端部に乗りかご22が連結され、他端部に釣合おもり24が連結された構成を有している。
【0022】
巻上機16は、不図示の電動機を有しており、当該電動機からの回転動力が、不図示の動力伝達機構を介し、駆動シーブ18に伝達されて、駆動シーブ18が回転駆動されると、駆動シーブ18に掛けられた主ロープ20に連結されている乗りかご22と釣合おもり24が、それぞれに設けられた不図示のガイドレールに案内されて、昇降路12内を互いに反対向きに昇降する。
【0023】
乗りかご22内の袖壁40(図2)には、かご操作盤26が設置されている。かご操作盤26は、利用者が行先階(目的階)を選択するための複数個の行先階ボタン装置46、戸開ボタン装置48、および戸閉ボタン装置50(図3(a))等を有している。
【0024】
乗りかご22の各停止階床の乗場Ha,Hb,Hcには、乗りかご22に設けられたかご扉装置28のかご扉36、38(図2)の開閉に連動して開閉される乗場扉を含む乗場扉装置30a,30b,30cが設置されている。
【0025】
乗場扉装置30a、30b,30cの乗場扉(不図示)近傍の壁面には、乗場操作盤32a、32b、32cが設置されている。
【0026】
乗場扉装置30a、30b,30c、乗場操作盤32a、32b、32cは、いずれも、基本的には、同じ構成であるため、設置階毎に区別する必要のない場合は、アルファベットの添え字を省略して、単に、乗場扉装置30、乗場操作盤32として説明する。乗場操作盤32については後述する。
【0027】
なお、図1において、かご操作盤26、乗場操作盤32の各々は、便宜上、それぞれ、前記袖壁、前記壁面から突出させて描いているが、両者とも当該袖壁、当該壁面とそれぞれ略面一に設けられている。
【0028】
機械室14には、また、かご操作盤26、乗場操作盤32から出力される各種信号を受信等して、前記電動機、かご扉装置28等を統括的に制御し、エレベータ10の円滑な運転を実現する制御装置34が設置されている。
【0029】
図2に、乗りかご22の室内におけるかご扉36、38、およびその周辺の構成を表した斜視図を示す。かご扉36、38の左右両側には、それぞれ、袖壁40、42が設けられている。また、一方の袖壁40には、かご操作盤26が設置されている。
【0030】
図3(a)は、かご操作盤26の概略構成を示す正面図である。かご操作盤26は、化粧板44を有している。化粧板44には、複数の窓が開設されていて、当該窓の各々からその一部が露出するように各種の操作ボタン装置が設けられている。
【0031】
かご操作盤26に設けられている操作ボタン装置は、複数個(本例では、5個)の行先階ボタン装置46、戸開ボタン装置48、戸閉ボタン装置50、および外部連絡ボタン装置52である。
【0032】
行先階ボタン装置46は、サービスをする階の数と同じ個数(本例では、1階から5階の5個)設けられており、利用者によって操作され、指定降車階を受け付ける。
【0033】
戸開ボタン装置48、戸閉ボタン装置60は、これらが操作されると、乗りかご22の停止中に、任意にかご扉36、38が開閉される。
【0034】
外部連絡ボタン装置52は、非常時に外部と連絡する際に操作される操作ボタン装置である。かご操作盤26には、上述した操作ボタン装置以外に、各種の他の装置が設けられているのであるが、当該他の装置は、本願発明の主眼ではないので、その説明については省略する。
【0035】
図3(b)は、乗場操作盤32bの概略構成を示す正面図である。乗場操作盤32bは、化粧板54を有している。化粧板54には、二つの窓が開設されていて、当該窓の各々からその一部が露出するように、上ボタン装置56と下ボタン装置58がそれぞれ設けられている。
【0036】
上ボタン装置56は、乗場階Hbから上方向に行く際に操作される操作ボタン装置であり、下ボタン装置58は、乗場Hb階から下方向に行く際に操作される操作ボタン装置である。なお、サービス階の内の最上階Haに設置された乗場操作盤32aには、下ボタン装置58のみ設けられており、最下階Hcに設置された乗場操作盤32cには、上ボタン装置56のみが設けられている。
【0037】
続いて、操作ボタン装置の構成について説明する。操作ボタン装置は、基本的にいずれも同様の構成である。よって、行先階に1階を指定するための行先階ボタン装置を代表に説明し、これ以外の操作ボタン装置の説明については省略する。
【0038】
先ず、実施形態に係る操作ボタン装置100(図4(a)、図5図6図7図8(a))の説明に先立ち、操作ボタン装置としての基本構成を有する標準操作ボタン装置200の構成について説明する。
【0039】
図4(b)は、標準操作ボタン装置200の正面図である。図10は、図4(b)におけるB・B線断面図である。図11は、標準操作ボタン装置200の一部分解斜視図である。図8(b)は、標準操作ボタン装置200の回路構成の概略を示す回路図である。
【0040】
標準操作ボタン装置200は、第1ケース部材202と第2ケース部材204を有する。第1ケース部材202は、箱形をしておりその底部には、回路基板206が設けられている。回路基板206には、光電センサ208が実装されている。光電センサ208の詳細については後述する。
【0041】
回路基板206には、また、機械式スイッチとしてタクタイルスイッチ210のスイッチ本体212が実装されている。スイッチ本体212は、固定接点214と可動接点216を有し(図10図11では不図示)、図8(b)に示すように、「ON」操作をすると閉じ、「OFF」操作すると開くa接点(メーク接点)形のスイッチである。
【0042】
タクタイルスイッチ210は、また、前記可動接点210を変位させるための作動子218を有する。作動子218は、全体的に環状をした中空部材からなる。作動子218は、図10に示すように、ばね座218aを有する。
【0043】
ばね座218aと第1ケース部材202の底部の間には、弾性部材として圧縮ばね220が設けられている。圧縮ばね220の一端部は、第1ケース部材202の底部に固定され、他端部は、ばね座218aに固定されている。これにより、作動子218は、圧縮ばね220を介して第1ケース部材202に取り付けられていることになる。なお、圧縮ばね220は、図10に示す状態で自由長の状態である。
【0044】
標準操作ボタン装置200は、また、押しボタン222を有する。押しボタン222は、本体224、表示板226、および透光カバー228を含む。
【0045】
本体224は、全体的に、円形底部224aと底部224aの外周部から立ち上がった円筒部224bとを有するペトリ皿形状をしており、底部224aに窓(中空部)224cが開設されている。
【0046】
透光カバー228は、光電センサ208の後述する検出光を透光する素材でできている。透光カバー228は、窓224aに合致した形状を有しており、窓224aを閉塞するように窓224aに接着剤等で固定されている。
【0047】
表示板226は、合成樹脂製であり、板状をした基体226aと基体226aから突出した凸部からなる表示部226bを有する。表示部226bの正面視の形状は、図4(b)に示すように「1」に形成されている。表示部226bの形状は、標準操作ボタン装置200の用途に応じて変更される。本例は、1階を目的階に指定する標準操作ボタン装置200(行先階ボタン装置)であるので、表示部226bの形状は「1」であるが。2階〜5階を目的階とする行先階ボタン装置の表示部は、それぞれ「2」〜「5」の形状となる。また、戸開ボタン装置48、戸閉ボタン装置50の場合は、図3(a)に示すような形状となり、外部連絡ボタン装置52は、受話器の形状となる(図3(a)。さらに、上ボタン装置56、下ボタン装置58の場合は、三角形になる(図3(b)。
【0048】
表示板226は、窓(中空部)226cを有する。表示板226は、また、対向する一対の爪部226d、226eを有する。表示板226は、本体224の底部224aの底面に接着剤等で固定されている。
【0049】
上述したように、本体224、表示板226、および透光カバー226は、相互に接着剤等で固定されて、一体となっており、これらで、押しボタン222が構成されている。
【0050】
作動子218には、爪部226d、226eの各々と係合する係合部218b、218cが形成されている。押しボタン222は、環状をした作動子218の中空部に爪部226d、226eを進入させ、爪部226d、226eの各々を係合部218b、218cにそれぞれ係合させることにより、作動子218に装着される。装着後の状態が図10に示されている。
【0051】
また、一対の爪部226d、226eを相互に近づくように撓ませて、係合部218b、218cとの係合を解き、押しボタン22を、前記進入と反対向きに後退させることにより、押しボタン222が作動子218から脱着される。すなわち、作動子218に対し押しボタン222は着脱自在に設けられている。
【0052】
第2ケース部材204は、押しボタン222が作動子218に装着された状態で、第1ケース部材202に取り付けられる。第2ケース部材204は、図11に示すように、短い円筒部204aを有している。円筒部204aの内径は、押しボタン222の本体224における円筒部224bの外径よりも僅かに大きく設定されている。第2ケース部材204は、円筒204aがボタン222の円筒部224bに外挿される形で第1ケース部材202に取り付けられる。
【0053】
これまで説明してきた構成において、押しボタン222の本体224の底部224aの外底面や透光カバー228の表面を含む操作面222aを指先等で押下すると、押しボタン222に押されて作動子218が押下の向きに変位し、タクタイルスイッチ210がオンされる。このとき、圧縮ばね220が圧縮される。また、操作面222aから、指先等を離すと、圧縮ばね220の復元力によって、作動子218、ひいては押しボタン222が元の位置まで変位して復帰すると共に、タクタイルスイッチ210がオフされる。
【0054】
この際、第2ケース部材204の円筒部204aが、押しボタン222の円筒部224bのガイド部材として機能し、押しボタン222のスムーズな進退動作が確保される。
【0055】
なお、回路基板206には、不図示の照明用LED素子が実装されており、タクタイルスイッチ210がオンされると、当該LED素子が発光するようになっている。このLED素子からの光が表示板226の表示部226bを光らすことにより、利用者は、標準ボタン装置200に対する所定の操作が受け付けられたことを認識できる。また、LED素子は、例えば、行先階ボタン装置46の場合は、目的階に乗りかご22が着床すると消灯されるようになっている。
【0056】
標準操作ボタン装置200は、機械式スイッチであるタクタイルスイッチ210に加え、非接触で利用者の操作を受け付ける非接触センサとして光電センサ208を備えている。
【0057】
光電センサ208は、公知の限定反射型光電センサであって、図11に示すように、投光部208aと受光部208bを有している。投光部208aは、赤外線発光する発光素子と当該発光素子からの赤外光を集光して投光ビーム(検出光)を形成するレンズ(いずれも不図示)を含む。受光部208bは、受光素子と所定の受光エリアから進入する光を前記受光素子に集光するレンズ(いずれも不図示)を含む。
【0058】
光電センサ208は、このように、投光ビーム(検出光)と受光エリアを限定した光学系を有し、光電センサ208から一定の距離範囲(投光ビームと受光エリアの重なった範囲)に亘る検知領域にある指その他の物体(検出物体)が検知される構成となっている。すなわち、検出物体が前記検知領域に存する際に、検出物体で反射された検出光(反射光)が受光部208bに入射することによって、検出物体を検知するようになっている。なお、前記検出光と前記反射光は、光電センサ208に対し、窓224c、窓226c、および透光カバー226を通過して出入する。
【0059】
検知領域Dについて図10を参照しながら説明する。なお、図10において、左右方向を水平方向として説明する。光電センサ208としては、検出光の出射位置208cを起点に、水平方向に所定距離La1離れた位置から所定距離La2離れた位置までに亘る領域が検知領域Dである。出射位置208cから距離La1までの領域は、検出物体が検知されない非検知領域(以下、「非検知領域LA1」と称する)である。図10において、二点鎖線で囲まれ、破線の斜線が引かれた領域が検知領域Dである。
【0060】
標準操作ボタン装置200の仕様上、操作面222aを基準に考えると、操作面222aを起点に、所定距離Lb1離れた位置から所定距離Lb2離れた位置までに亘る領域が検知領域Dとなる。操作面222aから所定距離Lb1までの領域は、検出物体が検知されない非検知領域(以下、「非検知領域LB1」と称する。)である。すなわち、操作面222aは、光電センサ208の非検知領域LA1に存することとなる。
【0061】
非検知領域LB1の距離Lb1は、例えば、30mmに設定されている。また、距離Lb2は、例えば、100mmに設定されている。よって、検知領域Dの水平方向の長さは、本例では70mmである。
【0062】
標準操作ボタン装置200において、非検知領域LB1を設定したのは、視覚障がいのある利用者が押しボタン222の位置を手探りで探すような場合に、当該利用者の指などに目当て以外の標準操作ボタン装置200(例えば、行先階ボタン装置52)の光電センサ208が反応して目的階が過誤登録されるのを防止するためである。
【0063】
[発明が解決しようとする課題]でも述べたように、押しボタン222の操作面222aからの検知領域Dの開始位置、すなわち、距離Lb1を変更調整、特に、短縮調整する要請がある。
【0064】
この場合、光電センサ208の前記光学系を調整することで距離La1ひいては、距離Lb1を調整(短縮)することが可能である。しかしながら、それには、前記レンズ(不図示)の光軸の微妙な調整等の熟練を必要とする。
【0065】
そこで、本願発明者は、光電センサ208の調整等を要することなく、簡便に、押しボタン222の操作面222aからの検知領域Dの開始位置(距離Lb1)を調整し得る操作ボタン装置100を開発した。
【0066】
図4(a)は、操作ボタン装置100の正面図である。図5は、図4(a)におけるA・A線断面図である。図6は、操作ボタン装置10の一部分解斜視図である。図7(a)は、間隔調整アダプタ150の正面図、図7(b)は同平面図、図7(c)は同右側面図、図7(d)は、図7(a)におけるC・C線断面図をそれぞれ示している。図7(e)は、間隔調整アダプタ150の斜視図である。なお、間隔調整アダプタ150の左側面図は右側面図と同様に現れ、下面図は平面図と同様に現れるため図示を省略している。図8(a)は、操作ボタン装置100の回路構成の概略を示す回路図である。
【0067】
操作ボタン装置100は、間隔調整アダプタ150を有している以外は、基本的に操作ボタン装置200と同様の構成である。よって、操作ボタン装置100の構成要素には百番代の符号を付し、操作ボタン装置200と同様の構成要素には、その下二桁に同じ符号を付して、その説明については省略するか、適宜言及するに止め、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0068】
標準操作ボタン装置200では、押しボタン222の押下操作が、直接、作動子218に伝わって、作動子218が押下方向に変位する構成であったが、操作ボタン装置100では、押しボタン122の押下操作が、間隔調整アダプタ150を介して、作動子118に伝わり、作動子118が押下方向に変位する構成となっている。
【0069】
図7に示すように、間隔調整アダプタ150は、方形をした窓(中空部)152を有する円板状をした円板部154と、円板部154の一方の主面から突出した短い筒状部156とを含む本体部158を有している。
【0070】
筒状部156の2箇所には、作動子218の係合部218b、218c(図10)と同様の形状をした係合部156a、156bが形成されている。
【0071】
また、円板部154の他方の主面に突出させて、表示板226の爪部226d、226e(図10)と同じ形状をした爪部154a、154bが設けられている。なお、本体部158は、所定の高さTを有している。
【0072】
間隔調整アダプタ150は、図5に示すように、押しボタン122と作動子118の間に設けられている。作動子118の係合部118b、118cの各々に間隔調整アダプタ150の爪部154a、154bがそれぞれ係合して、作動子118に間隔調整アダプタ150が取り付けられている。間隔調整アダプタ150は、作動子118に対し、標準操作ボタン装置200における作動子218と押しボタン222の場合と同様、着脱自在に設けられている。
【0073】
間隔調整アダプタ150の係合部156a、156bの各々に押しボタン122の爪部126d、126eがそれぞれ係合して、間隔調整アダプタ150に押しボタン122が取り付けられている。間隔調整アダプタ150は、押しボタン112に対し、標準操作ボタン装置200における作動子218と押しボタン222の場合と同様、着脱自在に設けられている。
【0074】
このように、押しボタン122と作動子118の間に間隔調整アダプタ150を設ける(挿入する)ことにより、押しボタン122と作動子118の間隔が調整される。具体的には、標準操作ボタン装置200の場合、押しボタン222と作動子228の間に隙間は無いところ、間隔調整アダプタ150を設けることにより、操作ボタン装置100では、押しボタン122と作動子118の間隔が、本体部158の高さT分に調整されている。
【0075】
これにより、作動子118から押しボタン122の操作面122aまでの水平方向の距離、ひいては、光電センサ108から操作面122aまでの距離が調整された間隔(高さT)分、短縮されたことになる。
【0076】
操作ボタン装置100において、操作面122aから所定距離Lc1離れた位置から所定距離Lc2離れた位置までに亘る領域が検知領域Dとなる。操作面122aから所定距離Lc1までの領域は、検出物体が検知されない非検知領域(以下、「非検知領域LC1」と称する。)である。
【0077】
操作ボタン装置100の検知領域Dの操作面122aからの距離と標準操作ボタン装置200の検知領域Dの操作面222aからの距離を比較すると以下の通りである。
【0078】
非検知領域LC1の操作面122aからの距離Lc1は、標準操作ボタン装置200
における非検知領域LB1の操作面222aからの距離Lb1よりも、高さT分短縮されている。
【0079】
なお、操作ボタン装置100の第2ケース部材160の円筒部160aの水平方向の長さは、操作面122aが作動子118から離間した分(高さT分)だけ、標準操作ボタン装置200の第2ケース部材204の円筒部204aよりも長くなっている。
【0080】
以上説明したように、実施形態に係る操作ボタン装置100は、押しボタン122と作動子118の間に間隔調整アダプタ150を設けるといった簡便な構成により、光電センサ108の押しボタン122の操作面122aからの開始位置(距離Lc1)を変更することができる。
【0081】
しかも、間隔調整アダプタ150は、作動子118と押しボタン122の両方に対し、着脱自在に設けられているため、容易に組み立てることができる。よって、高さTの異なる複数の間隔調整アダプタ150を準備しておき、その中から、操作面122aからの検知領域Dの距離Lc1が所望の長さとなるものを選んで、押しボタン122と作動子118に装着するだけで、必要とする操作ボタン装置100を得ることができる。
【0082】
なお、操作ボタン装置100も、標準ボタン操作装置200と同様、光電センサ108に対し、作動子118と押しボタン122が直列配置されていて、作動子118と押しボタン122の間に間隔調整アダプタ150が介装された構成となっている。すなわち、操作ボタン装置100では、押しボタン122、間隔調整アダプタ150、作動子118、および光電センサ108が直列配置されている。
【0083】
そして、押しボタン122、間隔調整アダプタ150、作動子118の各々は、光電センサ108から投光される検出光の進路に該当する部分が、中空に、または透光部材で構成されている。すなわち、押しボタン122は透光カバー128を有し、間隔調整アダプタ150は窓(中空部)152を有し、作動子118は、環状に形成されていて中空部を有する構成とされている。
【0084】
(変形例)
上記実施形態では、単一の間隔調整アダプタ150で、操作面122aからの検知領域Dの距離Lc1を調整したが、これに限らず、図9に示すように、複数個(図示例は2個)の間隔調整アダプタ170、180を連結して用いても構わない。
【0085】
図9(a)は、連結前の間隔調整アダプタ170の側面図と間隔調整アダプタ180の縦断面図であり、図9(b)は、連結状態の間隔調整アダプタ170と間隔調整アダプタ180である。間隔調整アダプタ170、180の各々は、高さTが異なる以外は、間隔調整アダプタ150と同じ構造である。
【0086】
以上、本発明に係る操作ボタン装置を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
【0087】
(1)タクタイルスイッチは、図8(a)に示したa接点形に限らず、「ON」操作をすると開き、「OFF」操作をすると閉じるb接点(ブレーク接点)形を用いても構わない。要は、可動接点の変位によりオン・オフが切り換わるスイッチであればいいのである。また、光電センサも、図8(a)に示したa接点形に限らず、b接点形を用いても構わない。
【0088】
(2)上記実施形態では、機械式スイッチとして、タクタイルスイッチ110を用いたが(図5図8(a))、これに限らず、マイクロスイッチ、リミットスイッチ、ラバースイッチ、リーフスイッチ等、その他の機械式スイッチを用いても構わない。要は、押しボタンの押下操作により作動子が押下方向に変位し、オン・オフが切り換わるスイッチであれば構わないのである。
【0089】
(3)上記実施形態では、非接触センサとして、限定反射型光電センサを用いたが、限定反射型に限らず、拡散反射型光電センサを用いても構わない。また、光電センサに限らず、近接センサ、超音波センサ等、その他の非接触センサを用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る操作ボタン装置は、エレベータのかご操作盤の行先階ボタン装置、戸開ボタン装置、戸閉ボタン装置、外部連絡ボタン装置、乗場操作盤の上ボタン装置、下ボタン装置等として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
100 操作ボタン装置
108 光電センサ
110 タクタイルスイッチ
118 作動子
122 押しボタン
122a 操作面
150 間隔調整アダプタ
【要約】
【課題】非接触センサの調整等を要することなく、非接触センサの検知領域の押しボタン操作面からの開始位置が調整された操作ボタン装置を提供する。
【解決手段】押しボタン122と、機械式スイッチであるタクタイルスイッチ110と、押しボタン122の操作面122aの前方において一定の距離範囲に亘る検知領域Dを有する非接触センサである光電センサ108と、押しボタン122とタクタイルスイッチ110の作動子118の間に設けられ、押しボタン122と作動子118の間隔を調整する間隔調整アダプタ150とを有し、押しボタン122の押下操作が、間隔調整アダプタ150を介して、作動子118に伝わって、作動子118が変位し、タクタイルスイッチのオン・オフが切り換わり、間隔調整アダプタ150によって調整された前記間隔分、光電センサ108から操作面122aまでの距離が調整された構成とした。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11