特許第6977960号(P6977960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6977960
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】把持装置用冶具および把持装置用器具
(51)【国際特許分類】
   B25B 1/24 20060101AFI20211125BHJP
   B23Q 3/10 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B25B1/24 Z
   B23Q3/10
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-166920(P2016-166920)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2017-109297(P2017-109297A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2019年6月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-245663(P2015-245663)
(32)【優先日】2015年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502267800
【氏名又は名称】株式会社かいわ
(74)【代理人】
【識別番号】100137800
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(74)【代理人】
【識別番号】100148079
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山添 重幸
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 独国実用新案第202015102993(DE,U1)
【文献】 米国特許第05992837(US,A)
【文献】 特開昭61−025777(JP,A)
【文献】 実公平06−021668(JP,Y2)
【文献】 特開平08−001527(JP,A)
【文献】 米国特許第08132309(US,B1)
【文献】 米国特許第04476757(US,A)
【文献】 独国実用新案第202010010687(DE,U1)
【文献】 特開平08−155841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 1/24
B23Q 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物と前記被加工物を把持する把持装置との間に配置される弾性変形可能な把持装置用冶具であって、
前記把持装置側に配置される梁本体と、前記梁本体に設けられ前記被加工物と接触する突出部とを備え、
前記梁本体は、両持梁構造であり、前記突出部が設けられた側と反対側の両端に、前記突出部と逆方向に屈曲した端部を有し、前記端部の前記把持装置側の面が支持面であり、
前記梁本体は、前記突出部が設けられた側に向けて凸になるように湾曲しており、前記被加工物と前記把持装置との間で、前記支持面が前記把持装置から前記被加工物側に向かう方向の力を受けた際に弾性変形することを特徴とする把持装置用冶具。
【請求項2】
前記突出部は弾性変形可能であることを特徴とする請求項1記載の把持装置用冶具。
【請求項3】
前記突出部は、前記梁本体に連結された一対の脚部を有することを特徴とする請求項2記載の把持装置用冶具。
【請求項4】
前記突出部は、基端から端面に向かって厚さ方向に傾斜していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の把持装置用冶具。
【請求項5】
前記一対の脚部は互いに支え合うように一体となり、前記一対の脚部が一体となった先端に、前記梁本体から離れる方向に延出した延出部を有することを特徴とする請求項3記載の把持装置用具。
【請求項6】
前記延出部は、前記梁本体から離れる方向で厚さ方向に傾斜していることを特徴とする請求項5記載の把持装置用具。
【請求項7】
前記突出部の基端から前記延出部の先端にわたって、厚さ方向に傾斜したスリットが設けられていることを特徴とする請求項5記載の把持装置用具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の把持装置用具と、前記把持装置用具が装着される移動口金とを備え、前記移動口金は、前記端部が係止する係止凸部と、移動用ガイドとを有することを特徴とする把持装置用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置用冶具および把持装置用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フライス盤、ボール盤、立削盤、平削盤、放電加工、ワイヤー放電加工などの工作機械で被加工物を加工する際には、工作機械のテーブルに被加工物を固定するために、把持装置が一般に用いられている。把持装置としては、マシンバイスのようなバイスが知られている。例えば、直方体形状の被加工物の上面を切削加工する場合には、被加工物の側面を把持装置で挟持して被加工物を工作機械のテーブルに固定する。被加工物をテーブルに固定した状態で、適切な刃具を用いて被加工物の上面に切削加工を施す。
【0003】
被加工物を精度よく加工するためには、被加工物を把持装置の基準面に密着させて、把持装置に対する被加工物の位置が加工中にずれないようにする必要がある。
【0004】
例えば、被切削加工物の浮き上がりやずれを防止して、切削加工の精度の向上を図ったマシンバイスが開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−126770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
把持装置で被加工物を挟持する際、被加工物と把持装置との間にずれが生じることがある。把持装置に接する被加工物の表面の状態によっては、被加工物を確実に固定することが困難となる。被加工物を固定できた場合でも、加工の途中で被加工物と把持装置との間に歪みが生じてしまい、加工精度の低下を引き起こすおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、被加工物を把持装置に確実に固定できる把持装置用冶具および把持装置用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る把持装置用冶具は、被加工物と前記被加工物を把持する把持装置との間に配置される弾性変形可能な把持装置用冶具であって、梁本体と、前記梁本体に設けられた突出部とを備え、前記梁本体は、両持梁構造であるとともに前記突出部に向けて湾曲していることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る把持装置用器具は、前記把持装置用治具と、前記把持装置用治具が装着される移動口金とを備え、前記把持装置用治具は、前記梁本体が、前記突出部とは逆方向に屈曲した端部を両端に有し、前記移動口金は、前記把持装置用治具の梁本体の屈曲した端部が係止する係止凸部と、移動用ガイドとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、把持装置用冶具は、梁本体と、梁本体に設けられた突出部とを有している。把持装置用冶具は、梁本体および突出部のいずれかが弾性変形可能であり、また、梁本体と突出部との両方を弾性変形可能とすることもできる。梁本体および突出部の少なくとも一方が弾性変形可能であるので、把持装置用冶具は弾性変形可能である。これによって、把持装置用冶具は、被加工物と把持装置との間のずれを吸収して、被加工物を把持装置に確実に固定することができる。
【0011】
把持装置用器具は、移動用ガイドを有する移動口金を備えている。こうした移動口金に把持装置用治具が装着されるので、本発明の把持装置用器具は、把持装置上を真っ直ぐに移動し、被加工物を確実に押して固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る把持装置用冶具を説明する図であり、図1Aは斜視図、図1Bは正面図、図1Cは側面図である。
図2】第1実施形態に係る把持装置用冶具における力の状態を説明する図である。
図3】第1実施形態に係る把持装置用冶具の変形例を示す斜視図である。
図4】第2実施形態に係る把持装置用冶具を説明する斜視図であり、図4Aは基本構造の把持装置用冶具、図4Bは変形例(1)の把持装置用冶具、図4Cは変形例(2)の把持装置用冶具を示す。
図5】第3実施形態に係る把持装置用冶具を説明する図であり、図5Aは斜視図、図5Bは正面図である。
図6】第3実施形態に係る把持装置用冶具の変形例を示す斜視図である。
図7】第4実施形態に係る把持装置用冶具を説明する図であり、図7Aは正面図、図7Bは側面図である。
図8】第4実施形態に係る把持装置用冶具の変形例(1)を説明する図であり、図8Aは正面図、図8Bは側面図である。
図9】第4実施形態に係る把持装置用冶具の変形例(2)を説明する図であり、図9Aは正面図、図9Bは側面図である。
図10】第4実施形態に係る把持装置用冶具の変形例(3)を説明する図であり、図10Aは正面図、図10Bは側面図である。
図11】第4実施形態に係る把持装置用冶具を用いたアダプターを示す図であり、図11Aは側面図、図11Bは平面図である。
図12】第4実施形態に係る把持装置用冶具を一体化した把持装置の一例を説明する図であり、図12Aは平面図、図12Bは側面図である。
図13】第4実施形態に係る把持装置用冶具を一体化した把持装置の変形例(1)の平面図である。
図14】第4実施形態に係る把持装置用冶具を一体化した把持装置の変形例(2)を説明する図であり、図14Aは平面図、図14Bは側面図である。
図15】第4実施形態に係る把持装置用冶具を一体化した把持装置の変形例(3)の平面図である。
図16】第4実施形態に係る把持装置用冶具を一体化した把持装置の変形例(4)の例の平面図である。
図17】第4実施形態に係る把持装置用冶具を応用した把持装置の一例を説明する図であり、図17Aは平面図、図17Bは側面図である。
図18】第5実施形態に係る把持装置用冶具を説明する図であり、図18Aは正面図、図18Bは側面図である。
図19】第5実施形態に係る把持装置用冶具の変形例(1)を説明する図であり、図19Aは正面図、図19Bは側面図である。
図20】第5実施形態に係る把持装置用冶具の変形例(2)を説明する図であり、図20Aは正面図、図20Bは側面図である。
図21】第5実施形態に係る把持装置用冶具を用いて被加工物を固定する際の一例を説明する図である。
図22】第5実施形態に係る把持装置用冶具を用いて被加工物を固定する際の変形例を7説明する図である。
図23】第6実施形態に係る把持装置用治具を説明する図であり、図23Aは正面図、図23Bは側面図である。
図24】第6実施形態に係る把持装置用治具の変形例(1)を示す側面図である。
図25】第6実施形態に係る把持装置用治具の変形例(2)を示す側面図である。
図26】第6実施形態に係る把持装置用治具を装着可能な移動口金の正面図である。
図27】第6実施形態に係る把持装置用治具を用いて被加工物を固定する状態を説明する斜視図であり、図27Aは被加工物に接する前、図27Bは被加工物に接した状態の斜視図である。
図28図27Bに示した状態の側面図である。
図29図26に示した移動口金に装着可能な他の把持装置用治具を説明する図であり、図29Aは正面図、図29Bは側面図である。
図30】移動口金の変形例(1)を示す斜視図である。
図31】移動口金の変形例(2)を示す斜視図である。
図32】移動口金と一体化した把持装置用治具の例(1)を示す斜視図である。
図33】移動口金と一体化した把持装置用治具の例(2)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
把持装置用冶具は、被加工物を工作機械で加工する際、被加工物を工作機械のテーブルに固定する把持装置で用いられる。本実施形態の把持装置用冶具は、被加工物と把持装置との間で被加工物および把持装置に接して、被加工物を把持装置に確実に固定することができる。
【0015】
[第1実施形態]
図1に示す把持装置用冶具10は、把持装置と同様の金属材料により構成されている。一般的に、把持装置には、一般構造用圧延鋼、炭素鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、高炭素クロム軸受け鋼、ステンレス鋼、ねずみ鋳鉄、SCN435,SCN440などのクロムモリブデン鋼、鋼、ニッケル合金等の金属材料が用いられている。把持装置に用いられる金属材料は、熱処理(焼き入れ)やコーティング(黒染め)等の表面処理が施される場合もある。把持装置用冶具10は、このような金属材料によって構成される。把持装置用冶具10は、梁本体12と、梁本体12に形成された突出部14とを備えている。梁本体12は、両持梁構造であって矩形状の断面を有する長細い棒状の部材である。梁本体12は、円形の断面を有する長細い棒状の部材であってもよい。
【0016】
本実施形態の場合、把持装置用冶具10は、梁本体12の両端部において把持装置に支持される。図1Bに示すとおり、梁本体12は、突出部14に向けて湾曲している。把持装置用冶具10は、把持装置に支持される際、梁本体12の両端部の支持面13で把持装置に接触する。これによって、被加工物と把持装置との間で把持装置から力を受けた際、把持装置用冶具10の梁本体12は弾性変形可能である。
【0017】
突出部14は、梁本体12の支持面13とは反対側の面に連結された一対の脚部16から構成されている。一対の脚部16は、逆V字形状を有し、梁本体12と同様の厚さで梁本体12と一体に形成されている。一対の脚部16は、梁本体12の長さ方向において対称となる位置で、それぞれの基端が梁本体12に連結されている。一対の脚部16の先端は、梁本体12の長さ方向の中心に相当する位置で、互いに支え合うように一体となっている。一対の脚部16が一体となった先端は、梁本体12の支持面13に平行な端面15である。突出部14が、このような一対の脚部16により構成されているので、把持装置用冶具10から梁本体12に受けた力を突出部14の端面15に集中させることができる。一対の脚部16は、梁本体12から先端に向けて直線状に延びる形状に限らず、外側(端面15側)に向けて僅かに湾曲した曲線状であってもよい。
【0018】
図示する把持装置用冶具10においては、突出部14の端面15は平面であるが、これに限定されるものではない。把持される被加工物の形状によっては、端面15は、V溝の設けられた平面、あるいは、曲率のついた面(R面)とすることも有効である。
【0019】
把持装置用冶具10は、被加工物と把持装置との間に配置された際、突出部14の端面15で被加工物に接触する。一方、把持装置用冶具10の梁本体12の両端部における支持面13が、把持装置に接触する。把持装置用冶具10は、図2に示すように、梁本体12の両端部の支持面13で矢印B方向の力を把持装置から受ける。
【0020】
把持装置用冶具10は、梁本体12が弾性変形可能であるので、梁本体12の両端部の支持面13に矢印B方向の力を受けた際、被加工物と把持装置との間のずれを吸収しつつ、受けた力を突出部14に伝達することができる。把持装置用冶具10は、突出部14の端面15が接触する被加工物の表面と、梁本体12の両端部の支持面13が接触する杷持装置の表面とが平行でない場合でも、梁本体12が弾性変形することによって、被加工物と把持装置との間のずれを吸収することができる。
【0021】
本実施形態の場合、梁本体12に形成された突出部14が一対の脚部16から構成されているので、梁本体12からの力は突出部14の端面15に集中する。梁本体12からの力は、突出部14の端面15の一点で矢印A方向の力となって、効率的に被加工物に伝達される。したがって、把持装置用冶具10を用いることにより、被加工物を把持装置に確実に固定することができる。
【0022】
<変形例>
図3に示す把持装置用冶具10Aは、一対の脚部16を備えた突出部14が、2つ設けられている。一対の脚部16が一体となった先端には、梁本体12から離れる方向に延出した延出部17が設けられている。この点が異なる以外は、把持装置用冶具10Aは、前述の把持装置用冶具10と同様の構成である。
【0023】
把持装置用冶具10Aは、突出部14における延出部17の端面15Aで被加工物に接する。延出部17の端面15Aは、梁本体12の支持面13と平行である。延出部17が一体となった脚部16の先端から延出していることによって、把持装置から梁本体12に与えられた力が延出部17の端面15Aに集中する。梁本体12からの力は、2つの端面15Aに集中して、より効率的に被加工物に伝達される。
【0024】
先端に延出部17を有する突出部14の数は特に限定されず、適宜選択して梁本体12に形成することができる。図1に示した把持装置用冶具10において、突出部14の先端に延出部17を設けてもよい。
【0025】
上記実施形態においては、把持装置用冶具10は、梁本体12の両端部の支持面13で把持装置に接触し、突出部14の端面15で被加工物に接触するとして説明したが、これとは逆に配置することもできる。把持装置用冶具10は、梁本体12の両端部の支持面13で被加工物に接触し、突出部14の端面15で被加工物に接触するように配置してもよい。
【0026】
[第2実施形態]
図4Aに示す把持装置用冶具20は、突出部14Aが一対の脚部ではなく1つの凸部から構成されている。この点が異なる以外は、把持装置用冶具20は、第1実施形態の把持装置用冶具10と同様の構成である。把持装置用冶具20は、凸部からなる突出部14Aの端面15Bが被加工物に接する。
【0027】
把持装置用冶具20は、梁本体12が突出部14Aに向けて湾曲していることにより、第1実施形態の場合と同様に弾性変形可能である。把持装置用冶具20は、梁本体12が弾性変形することで、被加工物と把持装置との間のずれを吸収することができる。把持装置から梁本体12に与えられた力は、突出部14Aの端面15Bに集中する。梁本体12からの力は、突出部14Aの端面15Bで効率的に被加工物に伝達される。したがって、把持装置用冶具20は、第1実施形態の把持装置用冶具10の場合と同様の効果を得ることができる。
【0028】
凸部からなる突出部14Aは、図4Bに示す把持装置用冶具20Aのように、梁本体12に2つ形成されていてもよい。図4Cに示す把持装置用冶具20Bのように、突出部14Bを、弾性変形しやすい形状に形成することもできる。突出部14Bは、梁本体12の長手方向に屈曲しているので、突出部14Bにバネ性が付与されて変形しやすくなる。把持装置用冶具20Bは、梁本体12に加えて突出部14Bも弾性変形することによって、被加工物と把持装置との間のずれを吸収する効果がよりいっそう高くなる。
【0029】
[第3実施形態]
図5に示す把持装置用冶具30は、梁本体12Aが湾曲せずに直線状であり、梁本体112Aの両端部に支持突起18が設けられている。この点が異なる以外は、把持装置用冶具30は、第2実施形態の把持装置用冶具20と同様の構成である。把持装置用冶具30は、把持装置に支持される際、支持突起18の支持面18aで把持装置に接触する。
【0030】
把持装置用冶具30は、梁本体12Aの両端部に支持突起18を有することにより、前述の実施形態の場合と同様に、被加工物と把持装置との間で把持装置から力を受けた際、梁本体12Aが弾性変形可能である。把持装置用冶具30は、梁本体12Aが弾性変形することで、被加工物と把持装置との間のずれを吸収することができる。把持装置から梁本体12Aに与えられた力は、梁本体12Aに形成された突出部14Aの端面15Bに集中する。梁本体12からの力は、突出部14Aの端面15Bで効率的に被加工物に伝達される。したがって、把持装置用冶具30は、前述の実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0031】
凸部からなる突出部14Aは、図6に示す把持装置用冶具30Aのように、梁本体12Aに2つ形成されていてもよい。
【0032】
[第4実施形態]
図7に示す把持装置用冶具40は、梁本体12と、梁本体12に形成された突出部14Cとを備えている。第1実施形態の把持装置用冶具10の場合と同様、突出部14Cは、梁本体12に連結された一対の脚部16Aから構成されている。一対の脚部16Aは、梁本体12の長さ方向において対称となる位置で、それぞれの基端が梁本体12に連結されている。一対の脚部16Aの先端は、互いに支え合うように一体となり、一体となった先端に端面15Dを有している。端面15Dは、梁本体12の両端部の支持面13に平行である。
【0033】
図7Bに示すとおり、梁本体12に形成された突出部14Cは、基端側から端面15Dに向かって途中から厚さ方向に傾斜している。この点が異なる以外は、把持装置用冶具40は、第1実施形態の把持装置用冶具10と同様の構成である。把持装置用冶具40は、突出部14Cの端面15Dで被加工物に接する。
【0034】
把持装置用冶具40は、弾性変形可能な梁本体12と、一対の脚部16Aからなる突出部14Cとを備えているので、第1実施形態の把持装置用冶具10の場合と同様の効果が得られる。
【0035】
しかも、把持装置用冶具40は、図7Bに示すように、突出部14Cの基端側から端面15Dに向かって厚さ方向に傾斜している。把持装置用冶具40は、端面15Dおよび支持面13で、それぞれ被加工物および把持装置に接する。把持装置用冶具40が、被加工物と把持装置との間で梁本体12の支持面13に把持装置から力を受けると、矢印C方向の力が突出部14Cに作用する。矢印C方向の力を利用して、被加工物の浮き上がりを防止することができる。具体的には、突出部14Cが先端に向けて下向きに傾斜するように把持装置用冶具40を配置して、突出部14Cの端面15Dを被加工物に接触させて、把持装置用冶具40を被加工物と把持装置との間に配置する。把持装置から把持装置用冶具40に力が与えられた際には、被加工物は下向きに押し付けられることから、被加工物の浮き上がりを防止することができる。
【0036】
<変形例>
図8に示す把持装置用冶具40Aは、一対の脚部16Aの先端に延出部17Aを有する突出部14Dを備えている。突出部14Dは、図8Bに示すように、梁本体12から斜めに突出して形成され、基端から端面15Eに向かって厚さ方向に傾斜している。把持装置用冶具40Aは、突出部14Dのこうした点が異なる以外は、把持装置用冶具40と同様の構成である。把持装置用冶具40Aは、突出部14Dの端面15Eで被加工物に接する。端面15Eは、梁本体12の両端部の支持面13に平行である。
【0037】
把持装置用冶具40Aは、端面15Eおよび支持面13で、それぞれ被加工物および把持装置に接する。把持装置用冶具40Aが把持装置から力を受けると、矢印C方向の力が突出部14Dに作用する。把持装置用冶具40Aは、前述の把持装置用冶具40の場合と同様の効果を得ることができる。しかも、把持装置用冶具40Aは、突出部14Dの先端に延出部17Aが設けられているので、把持装置から梁本体12に与えられた力が延出部17Aの端面15Eに集中する。梁本体12からの力は、端面15Eに集中して、より効率的に被加工物に伝達される。
【0038】
図9に示す把持装置用冶具40Bは、突出部14Eにおける延出部17Bに、梁本体12の長手方向に沿った貫通穴19が設けられている。この点が異なる以外は、把持装置用冶具40Bは、把持装置用冶具40Aと同様の構成である。把持装置用冶具40Bは、突出部14Eの端面15Fで被加工物に接する。
【0039】
突出部14Eは、延出部17Bに貫通穴19を有していることによって変形しやすい。これによって、把持装置用冶具40Bは、梁本体12に加えて、一対の脚部16Aからなる突出部14Eも弾性変形可能である。把持装置用冶具40Bは、被加工物と把持装置との間のずれを吸収する効果がよりいっそう高くなり、より確実に被加工物を固定することができる。
【0040】
さらに、図10に示す把持装置用冶具40Cのように、突出部14Fにおける貫通穴19Aを、延出部17Cと一対の脚部16Bとにわたって設けてもよい。把持装置用冶具40Cは、突出部14Fに設けられた貫通穴19Aの領域が広いので、よりいっそう変形しやすくなる。把持装置用冶具40Cは、梁本体12に加えて、突出部14Fも弾性変形可能である。しかも、突出部14Fは、前述の把持装置用冶具40Bにおける突出部14Eよりも変形しやすいことから、把持装置用冶具40Cは、被加工物と把持装置との間のずれを吸収する効果がさらに高くなる。
【0041】
<使用例>
第4実施形態に係る把持装置用冶具40Aは、図11に示すアダプター70の爪72の間に被加工物を保持する際、爪72の保持面と被加工物(図示せず)との間に配置することができる。被加工物を保持することができれば、把持装置用冶具40Aは、縦方向または横方向のいずれの方向で用いてもよい。把持装置用冶具40Aは、マグネットなどの適切な固定手段によって、爪72の保持面に取り付けることができる。把持装置用冶具40Aは、固定手段なしで直に被加工物を保持できる場合もある。あるいは、把持装置用冶具40Aは、爪72と一体に作製することも可能である。
【0042】
<把持装置への応用>
第4実施形態に係る把持装置用冶具40は、把持装置に一体化して用いることができる。
【0043】
図12に示す把持装置100は、上面の一端に固定ブロック102を有するフレーム101を備えている。図示する把持装置100においては、固定ブロック102はフレーム101と一体に設けられたものであるが、別体の固定ブロック102が固定手段によりフレーム101上に固定される場合もある。フレーム101上には、固定ブロック102から離間して、移動ブロック103が設けられている。移動ブロック103は、把持装置用冶具40Dを介して被加工物105に接する。被加工物105は、移動ブロック103を締付ネジ104で締め付けることによって、固定ブロック102に押し付けて把持装置100に固定することができる。被加工物105は、締付ネジ104の代わりに油圧等によって移動ブロック103に固定してもよい。
【0044】
移動ブロック103は、図12Aに示すような枠状である。枠状の移動ブロック103は、外周および内周が固定ブロック102側に湾曲した湾曲部を有している。把持装置用冶具40Dは、この湾曲部が梁本体12Cに相当する。梁本体12Cは、枠状の移動ブロック103の一部であるので、弾性変形可能である。
【0045】
図12Bに示すように、把持装置用冶具40Dは、加工物105に接する側が下向きに傾斜している。これによって、図7Bを参照して説明したように被加工物105が下向きに押し付けられるので、把持装置100は被加工物105の浮き上がりを防止することができる。図12Bにおいては、把持装置用冶具40Dは、移動ブロック103よりも薄く形成されているが、移動ブロック103と同程度の厚さを有していてもよい。
【0046】
また、図13に示す変形例(1)の把持装置100Aのように、略矩形状の外形を有する枠状の移動ブロック103Aを用いることもできる。移動ブロック103Aの固定ブロック102側は、外周に直線部分を有し、内周が湾曲している。移動ブロック103Aの固定ブロック102側の部分が、把持装置用冶具40Eの梁本体12Dに相当する。梁本体12Dは、枠状の移動ブロック103Aの一部であるので、弾性変形可能である。把持装置100Aは、移動ブロック103Aの形状が異なる以外は前述の把持装置100と同様であるので、前述と同様に被加工物105の浮き上がりを防止することができる。
【0047】
図14に示す変形例(2)の把持装置100Bのように、角部のとれた略矩形状の外形を有する枠状の移動ブロック103Bを用いることもできる。移動ブロック103Bは、締付ネジ104側が直線状であり、締付ネジ104と接する部分に凸部が設けられている。移動ブロック103Bの固定ブロック102側は、固定ブロック102に向けて湾曲している。把持装置用冶具40Fは、この湾曲部が梁本体12Eに相当する。梁本体12Eは、枠状の移動ブロック103Bの一部であるので、弾性変形可能である。
【0048】
図14Bに示すように、把持装置用冶具40Fは、被加工物105に接する側が下向きに傾斜している。これによって、把持装置100Bは、前述と同様に被加工物105の浮き上がりを防止することができる。
【0049】
把持装置用冶具40Fは、図8に示した把持装置用冶具40Aに設けたような延出部17Aを、被加工物105に接する側の先端に有していてもよい。延出部17Aを有することによって、梁本体12Eからの力をより効果的に被加工物105に伝達することができる。
【0050】
図15に示す変形例(3)の把持装置100Cにおいては、把持装置用冶具40Gは、一対の脚部16Cを備えている。移動ブロック103Cは、締付ネジ104と接する部分に凸部を有する直線状である。把持装置用冶具40Gは、移動ブロック103Cにおけるこの直線状の部分が梁本体12Fに相当する。一対の脚部16Cは、基端側が梁本体12Fの両端に向けて屈曲して延長されて、梁本体12Fに連結されている。把持装置用冶具40Gは、一対の脚部16Cが梁本体12Fの両端に連結されることで枠状の形状を有している。枠状の形状を有していることによって、杷持装置用冶具40Gは弾性変形可能である。
【0051】
把持装置用冶具40Gは、被加工物105側が下向きに傾斜している。これによって、把持装置100Cは、前述と同様に被加工物105の浮き上がりを防止することができる。把持装置100Cにおける把持装置用冶具40Gもまた、図8に示した把持装置用冶具40Aのような延出部17Aを、被加工物105に接する側に有していてもよい。
【0052】
図16に示す変形例(4)の把持装置用冶具100Dにおける把持装置用冶具40Hのように、一対の脚部16Dの被加工物105側を曲線状とすることもできる。移動ブロック103Dは、締付ネジ104に接する部分に凸部を有する直線状である。把持装置用冶具40Hは、移動ブロック103Dにおけるこの直線状の部分が梁本体12Gに相当する。一対の脚部16Dは、基端側が梁本体12Gの両端に向けて屈曲して延長されて、梁本体12Gに連結されている。把持装置用冶具40Hは、一対の脚部16Dが梁本体12Gの両端に連結されることで枠状の形状を有している。これによって、把持装置用冶具40Hは弾性変形可能である。
【0053】
把持装置用冶具40Hは、被加工物105側が下向きに傾斜している。これによって、把持装置100Dは、前述と同様に被加工物105の浮き上がりを防止することができる。把持装置100Dにおける把持装置用冶具40Hもまた、図8に示した把持装置用冶具40Aのような延出部17Aを、被加工物105に接する側に有していてもよい。
【0054】
図17に示す把持装置100Eのように、上述の把持装置100〜100Dの場合とは逆向きで、把持装置用冶具40Jを配置することもできる。把持装置100Eでは、把持装置用冶具40Jは、梁本体12Hに設けられた突出部の先端が、略直方体状の移動ブロック103Eの固定ブロック102側の面に固定されている。被加工物105には、把持装置用冶具40Jの梁本体12Hが接触している。把持装置用冶具40Jは、梁本体12Hに設けられた突出部が弾性変形可能である。
【0055】
図17Bに示すように、把持装置用冶具40Jは、被加工物105側が下向きに傾斜している。これによって、把持装置100Eは、前述と同様に被加工物105の浮き上がりを防止することができる。
【0056】
[第5実施形態]
図18に示す把持装置用冶具50は、梁本体12と、梁本体12に形成された突出部14Gとを備えている。把持装置用冶具50は、突出部14Gの先端に延出部17Dを有する以外は第1実施形態の把持装置用冶具10と同様である。延出部17Dは、一方の脚部16に沿った方向に延出している。本実施形態の場合、一対の脚部16が一体となった部分から一方の脚部16がさらに延長して、延出部17Dの一部を構成している。延出部17Dは、一方の脚部16より広い幅で形成されている。
【0057】
把持装置用冶具50は、延出部17Dの端面15Hで被加工物に接する。前述の実施形態の場合と同様に、把持装置用冶具50は、突出部14Gにおける延出部17Dの端面15Hが、梁本体12の両端部の支持面13と平行である。
【0058】
把持装置用冶具50は、弾性変形可能な梁本体12と、一対の脚部16からなる突出部14Gとを備えているので、第1実施形態の把持装置用冶具10の場合と同様の効果が得られる。
【0059】
把持装置用冶具50は、端面15Hおよび支持面13で、それぞれ被加工物および把持装置に接する。把持装置用冶具50は、支持面13に把持装置から矢印D方向の力を受ける。この矢印D方向の力の一部は、突出部14Gにおける一方の脚部16に沿って矢印E方向に作用し、延出部17Dに伝えられる。矢印E方向の力が作用することによって、延出部17Dの端面15Hでは、被加工物をより確実に把持装置の基準面方向に押し付けて固定することができる。
【0060】
<変形例>
図19に示す把持装置用冶具50Aは、一対の脚部16Aと延出部17Eとを備えた突出部14H全体が、梁本体12から斜めに突出して形成され、厚さ方向に傾斜している。把持装置用冶具50Aは、この点が異なる以外は前述の把持装置用冶具50と同様の構成であるので、把持装置用冶具50と同様の効果が得られる。
【0061】
把持装置用冶具50Aは、突出部14Hにおける端面15Jで被加工物に接する。把持装置用冶具50Aが、梁本体12の支持面13に把持装置から力を受けると、矢印F方向の力が突出部14に作用する。把持装置用冶具50Aは、突出部14H全体が厚さ方向に傾斜していることによって、図7Bを参照して説明したように被加工物の浮き上がりを防止する効果を得ることができる。
【0062】
図20に示す把持装置用冶具50Bのように、突出部14Jにおける延出部17Fに厚さ方向の貫通穴19Bを設けてもよい。把持装置用冶具50Bは、突出部14Jに貫通穴19Bを有することによって、突出部14Jが変形しやすくなる。これによって、把持装置用冶具50Bは、被加工物と把持装置との間のずれを吸収する効果がよりいっそう高くなる。
【0063】
<使用例>
第5実施形態に係る把持装置用冶具50は、図21に示すように直角冶具110Bと被加工物112との間に配置し、締付ネジ114を締め付けることによって被加工物112を直角冶具110Aに固定することができる。把持装置用冶具50は、マグネットなどを介して直角冶具10Aに取り付けることができる。あるいは、把持装置用冶具50は、直角冶具10Aと一体に形成されていてもよい。直角冶具110A,110Bは、図示しない定盤に固定されて、把持装置の一部を構成している。
【0064】
第5実施形態の把持装置用冶具50を直角冶具110A,110Bと組み合わせた場合には、被加工物112が反りや歪みを有している場合でも、被加工物112は変形することなく、反りや歪みがそのままの状態で固定される。これによって、被加工物112の表面を精度よく研磨して、反りや歪みを取り除くことができる。第5実施形態の把持装置用冶具50は、フライス加工、ワイヤー放電加工、放電加工などの際にも、同様の効果を発揮し、被加工物112を精度よく加工することができる。
【0065】
図22に示す変形例のように、直角連結冶具120を用いて、複数の被加工物122を加工する際にも、第5実施形態の把持装置用冶具50は有効に用いられる。把持装置用冶具50は、L字型の固定具126と被加工物122との間に配置し、締付ネジ124を締め付けることで被加工物122を固定することができる。L字型の固定具126は、図示しない定盤に固定されて、把持装置の一部を構成している。
【0066】
第5実施形態の把持装置用冶具50を直角連結冶具120と組み合わせた場合も前述と同様に、被加工物122が反りや歪みを有している場合でも、被加工物122の表面を精度よく研磨して、反りや歪みを取り除くことができる。第5実施形態の把持装置用冶具50は、フライス加工、ワイヤー放電加工、放電加工などの際にも、同様の効果を発揮し、被加工物122を精度よく加工することができる。
【0067】
[第6実施形態]
図23Aに示す把持装置用治具60は、梁本体12と、梁本体12に形成された突出部14Kとを備えている。梁本体12は、突出部14Kに向けて湾曲し、突出部14Kとは逆方向に屈曲した端部12Jを両端に有している。梁本体12は、この屈曲した端部12Jの底面が支持面13となる。把持装置用治具60の梁本体12は、被加工物と把持装置との間で把持装置から力を受けた際に、弾性変形可能である。追って説明するように、把持装置用治具60は、移動口金を介して把持装置から力を受ける。
【0068】
突出部14Kは、第1実施形態の把持装置用治具10の場合と同様、梁本体12の支持面13とは反対側の面に連結された一対の脚部16を有している。一対の脚部16の先端は、梁本体12の長さ方向の中心に相当する位置で、互いに支え合うように一体となっている。一対の脚部16が一体となった先端には、梁本体12から離れる方向に延出した延出部17Gが設けられている。
【0069】
把持装置用治具60は、突出部14Kにおける延出部17Gの端面15Lで被加工物(図示せず)に接する。延出部17Gの端面15Lは、梁本体12の支持面13と平行である。延出部17Gが、一体となった脚部16の先端から延出していることによって、把持装置から移動口金を介して梁本体12に与えられた力が、延出部17Gの端面15Lに集中する。梁本体12からの力は、端面15Lに集中して、より効果的に被加工物に伝達される。
【0070】
図23Bの側面図に示すように、把持装置用治具60は、厚さ方向に傾斜した複数のスリット61Xが、突出部14Kに形成されている。把持装置用治具60は、スリット61Xが突出部14Kの先端に向かって下向きに傾斜するように上下の向きを決め、突出部14Kの端面15Lを被加工物に向けて被加工物と移動口金との間に設置する。把持装置用治具60が移動口金を介して把持装置から力を受けると、スリット61Xに沿って矢印G方向の力が作用して突出部14Kが弾性変形する。把持装置用治具60は、被加工物を確実に押し付けて被加工物の浮き上がりを防止することができる。
【0071】
<変形例>
突出部14Kは、図24に示す変形例(1)の把持装置用治具60Aのように、一方の表面140がスリット61Xに平行に傾斜した斜面で構成されていてもよい。把持装置用治具60Aは、突出部14Kの傾斜した斜面が上向きとなるように、被加工物と移動口金との間に配置する。把持装置用治具60Aが移動口金を介して把持装置から力を受けると、把持装置用治具60の場合と同様に弾性変形する。しかも、突出部14Kの表面140が傾斜した斜面であるので、把持装置用治具60Aは、被加工物に作用する下向きの力が強められる。その結果、被加工物の浮き上がりを防止する効果は、よりいっそう大きくなる。傾斜した斜面は、突出部14Kの他面にも設けることができる。
【0072】
スリット61Xは、一対の脚部16において傾斜していれば、突出部14Kの基端から延出部17Gの端面15Lまでの全域で直線状である必要はない。図25に示す変形例(2)の把持装置用治具60Bのように、延出部17Gにおいては、傾斜を設けずに延出部17Gの表面に平行なスリット61Yとしてもよい。把持装置用治具60Bは、把持装置用治具60Aのように、スリット61Xおよびスリット61Yに平行な表面を突出部14Kの一方の側に有していてもよい。突出部14Kの他面も、同様の構成とすることが可能である。
【0073】
把持装置用治具60,60A,60Bは、突出部14Kの厚さに応じて、スリット61X(61Y)の本数を任意に設定することができる。
【0074】
<使用例>
第6実施形態の把持装置用治具60は、移動用ガイドを有する移動口金と組み合わせて把持装置用器具として用いることができる。この場合、把持装置用治具60は、図26に示すような移動口金160の押圧部162に装着して用いる。移動口金160は、把持装置用治具60を装着して押圧する押圧部162と、押圧部162の中央近傍から両側に広がる2つの固定支持部168とを有する。
【0075】
押圧部162は、把持装置用治具60の梁本体12に相当する長さを有し、両端部の近傍に係止凸部164が設けられている。係止凸部164には、把持装置用治具60の梁本体12の屈曲した端部12Jが外側から係止する。係止凸部164の外側の当接面166は、把持装置用治具60の支持面13に当接する。
【0076】
図27Aに示すように、把持装置200では、把持装置用治具60が移動口金160の押圧部162に取り付けられる。把持装置用治具60は、屈曲した端部12Jが移動口金160の押圧部162の係止凸部164に係止することで、移動口金160に装着される。把持装置200は、上面の一端に固定ブロック202を有するフレーム201を備えている。被加工物205は、固定ブロック202に接して配置される。
【0077】
移動口金160は、移動用ガイド170でフレーム201の上部を挟んで、移動可能にフレーム201に設けられている。移動口金160を固定ブロック202に向けてフレーム201上を移動させるために、締付ネジ204が設けられている。移動口金160が移動用ガイド170を有しているので、締付ネジ204を締め付けることによって、移動口金160フレーム201上を真っ直ぐに移動できる。これによって、把持装置用治具60は、被加工物205を確実に押して固定することができる。
【0078】
被加工物205を固定する際には、図27Bに示すように、締付ネジ204を締め付けて移動口金160を矢印H方向に移動させる。移動口金160に取り付けられた把持装置用治具60の端面15Lは、被加工物205に接触する。この状態の側面図を、図28に示す。把持装置用治具60は、突出部14Kの端面15Lが被加工物205に接触している。突出部14Kには、厚さ方向に傾斜したスリット61が設けられている。
【0079】
図23Bを参照して説明したように、把持装置用治具60が移動口金160を介して把持装置200から力を受けると、突出部14Kではスリット61Xに沿って矢印G方向の力が作用する。このような力を受けることによって、突出部14Kが弾性変形する。把持装置用治具60は、被加工物205を固定ブロック202に確実に押し付けて被加工物205の浮き上がりを防止することができる。
【0080】
<その他>
移動口金160は、係止凸部164に係止して、当接面166に当接できる任意の形状の梁本体を備えた把持装置用治具を装着することができる。例えば、図29A,29Bに示す把持装置用治具70が挙げられる。把持装置用治具70は、把持装置用治具60と同様に、梁本体12と梁本体12に形成された突出部14Lとを備えている。梁本体12は、突出部14Lに向けて湾曲し、突出部14Lとは逆方向に屈曲した端部12Jを両端に有している。梁本体12は、この屈曲した端部12Jの底面が支持面13となる。
【0081】
把持装置用治具70は、突出部14Lにおける一対の脚部16の先端同士が、互いに支え合う構造ではなく、離間して直線状の連結部71で連結されている。把持装置用治具70は、突出部14Lの構造が異なる以外は把持装置用治具60と同様の構成であるので、移動口金160に装着することができる。
【0082】
把持装置用治具70は、突出部14Lで一対の脚部16の先端同士を連結している連結部71の端面15Mで、被加工物(図示せず)に接触する。把持装置用治具70は、突出部14Lの端面15Mが梁本体12の長手方向に延びているので、被加工物に接触する面積が把持装置用治具60の端面15Lより大きい。このため、把持装置用治具70は、より大きな被加工物を安定して固定することができる。
【0083】
把持装置用治具70を移動口金160と組み合わせて用いる際には、把持装置用治具70の梁本体12の屈曲した端部12Jが、移動口金160の押圧部162の係止凸部164に、外側から係止して固定される。把持装置用治具70の支持面13には、移動口金160の当接面166が当接する。
【0084】
移動口金は、押圧部と固定支持部とを有し、把持装置用治具に応じた係止凸部および当接面を備えていれば、種々の変更が可能である。例えば、図30に示す変形例(1)の移動口金160Aのように、厚さ方向に貫通穴174,176を形成するとともに、押圧部162Aの把持装置用治具に接する面に、3つの係止凸部164Aを設けてもよい。移動口金160Aは、押圧部162Aの両端に加えて、係止凸部164Aの間の領域にも当接面166Aを有している。なお、押圧部162Aに設けられている凹部172は、把持装置の締付ネジ(図27A,27B,28中の204)の先端を受け入れる。
【0085】
図31に示す変形例(2)の移動口金160Bのように、押圧部162Bの把持装置用治具に接する面には、単一の係止凸部164Bを設けることもできる。係止凸部164Bの両外側が、把持装置用治具の支持面に当接する当接面166Bとなる。貫通穴174A,176Aの形状は、適宜変更することができる。移動口金160A,160Bは、移動口金160と同様に、移動用ガイド(図示せず)で把持装置のフレームに移動可能に設けることができる。
【0086】
移動口金と把持装置用治具とは、図32,33に示すような一体化した構造としてもよい。図32に示す例(1)の移動口金付き把持装置用治具300は、押圧部162Cおよび固定支持部168Cを備えた移動口金160Cと、把持装置用治具10とが一体化されている。移動口金160Cは、把持装置の締付ネジの先端を受け入れる凹部172を有し、厚さ方向の貫通穴178が押圧部162Cに設けられている。把持装置用治具10は、移動口金160Cにおける貫通穴178の外周側の長辺を梁本体12としている。梁本体12には、一対の脚部16からなる突出部14が連結されている。
【0087】
移動口金付き把持装置用治具は、移動口金と把持装置用治具とが一体化された構造であれば、種々の変更が可能である。図33に示す例(2)の移動口金付き把持装置用治具300Aのように、移動口金160Dにおける貫通穴178Aをより小さくするとともに、把持装置用治具10Aにおける一対の脚部16Eの幅をより小さくしてもよい。移動口金160C,160Dもまた、移動口金160と同様に、移動用ガイド(図示せず)で把持装置のフレームに移動可能に設けることができる。
【0088】
図30に示した移動口金160Aは、押圧部162Aの係止凸部164Aが形成されている辺を梁本体として用い、係止凸部164Aの代りに一対の脚部からなる突出部を梁本体に形成して、移動口金付き把持装置用治具を構成することが可能である。図31に示した移動口金160Bも同様に、押圧部162Bの係止凸部164Bが形成されている辺を梁本体として用いて、係止凸部164Bの代りに一対の脚部からなる突出部を梁本体に形成して、移動口金付き把持装置用治具を構成することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 把持装置用冶具
12 梁本体
13 支持面
14 突出部
15 端面
16 一対の脚部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33