(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記増幅工程は、標識要素を備える少なくとも1種のプライマーを含むプライマーセットを用いて、前記標識要素を有する前記一本鎖核酸を備える増幅産物を取得する工程である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
前記識別プローブの存在下で前記核酸増幅反応を実施して、その後増幅反応液を冷却することにより前記ハイブリダイズ産物を取得する、又は、前記核酸増幅反応後の増幅反応液に添加した前記識別プローブの存在下で前記増幅反応液を冷却することにより前記ハイブリダイズ産物を取得するように構成されている、請求項13に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の開示は、標的核酸の検出方法及びそのためのキット等に関する。本明細書に開示の標的核酸の検出方法(以下、単に本検出方法ともいう。)の概要を
図1に例示する。
【0011】
図1に示すように、本検出方法は、標的核酸を増幅工程において増幅して増幅産物を得る。識別プローブは、この増幅産物中の標的配列に特異的にハイブリダイズする第1の識別配列と、標的核酸に関連付けられる捕捉プローブに特異的にハイブリダイズし、前記一本鎖核酸にハイブリダイズしない第2の識別配列とを有している。
【0012】
増幅産物と識別プローブとを接触させ、標的配列を含む一本鎖核酸と識別プローブとのハイブリダイズ産物を取得する。このハイブリダイズ産物は、第2の識別配列を含む一本鎖領域を有する部分二本鎖となっている。
【0013】
本検出方法におけるハイブリダイズ産物、すなわち、第1の識別配列と標的配列とのハイブリダイズを達成させて得られるハイブリダイズ産物は、そのまま、確実に捕捉プローブによって捕捉させるための捕捉要素である第2の識別配列を有することができる。このため、本検出方法によれば、核酸増幅反応の増幅産物を用いて高い検出感度及び精度を発揮できる。さらに、本検出方法によれば、確実にかつ容易に標的核酸を検出できる。
【0014】
また、標的配列を含む一本鎖核酸が標識要素を備える場合には、得られるハイブリダイズ産物は、そのまま捕捉要素と標識要素とを備えることになるため、一層容易に標的核酸を検出できる。
【0015】
本検出方法によれば、一塩基多型などの一塩基の相違を含む標的配列も、識別プローブにより識別可能であり、ハイブリダイズ産物として取得することができ、その後の検出工程に供することができる。
【0016】
ハイブリダイズ産物は、例えば、核酸増幅反応による増幅産物を加熱して一旦融解し、識別プローブの存在下で冷却することで、識別プローブと増幅産物中の標的核酸とをハイブリダイズさせることで得ることができる。
【0017】
増幅工程におけるいわゆる核酸増幅反応の熱変性−アニール−伸長反応のサイクル後に、熱変性させ、さらに冷却するサブステップにおいて、本発明者らは、意外にも、標的核酸の増幅産物のうち一本鎖核酸と識別プローブとが十分に特異的にハイブリダイズし得て、後段の検出工程で検出可能な程度にハイブリダイズ産物が得られることを見出した。本発明者らによれば、このようなハイブリダイズ産物を得るためには、例えば、核酸増幅反応に用いるプライマーとその相補鎖との融解温度よりも、識別プローブとその相補鎖との融解温度を低く設定することができる。
【0018】
こうして得られる、標的核酸と識別プローブとの特異的ハイブリダイズ産物は、例えば、固相担体に固定された捕捉プローブ等で捕捉されることで、固相担体上で検出されるようになる。こうしたハイブリダイズ産物は、捕捉プローブを固相担体を用いてクロマトグラフィーによって分離し捕捉するのに都合がよい。
【0019】
識別プローブによる標的配列の識別能は十分に高いため、SNPなどの一塩基の相違でも、十分に識別し、また、ホモ又はヘテロなどの変異の割合等に応じて定量的に標的配列にハイブリダイズし、検出することができる。
【0020】
本明細書において、「標的核酸」とは、検出しようとする標的配列を含む核酸を意味している。標的核酸の由来は、特に限定しないで、各種生物材料(個体またはその組織、器官等の個体の一部のほか、排せつ物、体液等)ほか、人工的な核酸を含む人工材料が挙げられる。
【0021】
本検出方法には、標的核酸を含む可能性のある生物材料又は人工材料自体又は必要に応じてこうした各種材料から核酸以外の構成成分の一部又は全部が除去されて核酸抽出試料を、試料として供給することができる。
【0022】
「標的配列」は、2以上の塩基で表され、1又は2以上の塩基からなる欠失、挿入及び置換又はその組合せからなる変異、多型、属、種若しくは株の配列上の特徴を含んでいる「標的配列」は、典型的には、一塩基多型などの各種多型、変異、微生物の同定のための配列を含むことができる。
【0023】
以下、本明細書に開示される検出方法及びキット等について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ここで
図1は、本検出方法の一例の概要を示す図である。
【0024】
(標的核酸の検出方法)
本検出方法は、標的核酸を増幅するための核酸増幅反応を実施して増幅産物を取得する増幅工程と、前記標的核酸を検出する工程と、を備えることができる。
【0025】
(増幅工程)
増幅工程は、標的核酸を含む可能性のある試料に対して標的核酸を増幅可能に設計したプライマーセットを用いて核酸増幅反応を実施して増幅産物を取得する工程である。プライマーセットを、例えば、
図1に示すように、標的配列を含む可能性のある標的核酸を増幅できるように設計することができる。本検出方法においては、標的配列の有無にかかわらず、標的配列を含む可能性のある領域を増幅産物として取得すれば足りる。
【0026】
本検出方法においては、1又は2以上の標的核酸を対象とすることができる。本検出方法は、標的核酸の検出を核酸増幅反応に関与しない識別プローブで行うため、複数の標的核酸を検出対象としても高い正確性と精度を確保することができる。2以上の標的核酸を検出対象とするときには、各標的核酸の増幅及び検出のために、複数のプライマーセット、識別プローブ及び捕捉プローブを用いる。
【0027】
プライマーセットを構成するプライマー対は、以下の特徴を備えることができる。まず、プライマーセットによって増幅産物として取得する標的核酸の塩基長は特に限定しないで80〜300bpとすることができるが、例えば、100塩基以上250塩基以下とすることができる。この範囲であると、増幅産物の一本鎖核酸である一本鎖DNA鎖と識別プローブとのハイブリダイズ産物を得られやすいからである。特に限定するものではないが、より好ましくは150塩基以上220塩基以下である。
【0028】
プライマーセットを構成する各プライマーの長さも特に限定しないで、15〜50ヌクレオチド等とすることができる。より典型的には20〜30ヌクレオチドであり、例えば、17ヌクレオチドから25ヌクレオチド程度することができる。
【0029】
プライマーセットの各プライマーの融解温度(Tm、℃)も、特に限定しないが、例えば、45℃以上65℃以下とすることができる。後述する識別プローブとの融解温度差を考慮すると、好ましくは50℃以上60℃以下である。
【0030】
プライマーセットの各プライマーのいずれか一方には、標識要素を備えることが好ましい。こうしたプライマーセットによる増幅産物は、標識要素を備えることとなる。こうすることで、ハイブリダイズ産物は、検出のための操作を簡略化でき、検出工程における検出に都合がよい。
【0031】
ハイブリダイズ産物に標識要素を付与する観点からは、識別プローブとハイブリダイズすることとなる一本鎖核酸が標識要素を備えるようにプライマーを設計することが好ましい。すなわち、識別プローブがアンチセンス鎖にハイブリダイズする場合には、アンチセンス鎖が標識要素を備えるように構成し、識別プローブがセンス鎖とハイブリダイズするとき場合には、センス鎖が標識要素を備えるように構成する。
【0032】
ここで標識要素とは、例えば、標識物質及び標識物質結合物質が挙げられる。本明細書において「標識物質」とは、検出しようとする物質あるいは分子を他と識別することを可能とする物質である。標識物質は、特に限定しないが、典型的には、蛍光、放射能、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等)、燐光、化学発光、着色などを利用した標識物質が挙げられる。
【0033】
標識物質は、目視(肉眼)で検出可能な発光又は発色を提示する発光物質又は発色物質若しくは着色物質であることが好ましい。すなわち、直接それ自体が、他の成分を必要としないで肉眼で視認可能なシグナルを生成することができる物質であることが好ましい。特に、クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーションにおいて、より好適である。検出工程で迅速かつ簡易に行うことができる。こうした物質としては、典型的には、各種の顔料や染料などの各種の着色剤が挙げられる。また、これに準ずる、金、銀などの貴金属ほか、銅などの各種金属又は合金、あるいは当該金属を含む有機化合物(錯体化合物であってもよい)が挙げられる。また、着色剤に準ずる、マイカ等の無機化合物が挙げられる。
【0034】
この種の標識物質としては、典型的には、各種染料、各種顔料、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウム化合物、オレフィン、エノールエーテル、エナミン、アリールビニルエーテル、ジオキセン、アリールイミダゾール、ルシゲニン、ルシフェリン及びエクリオンを包含する化学発光物質が挙げられる。また、こうした標識物質でラベルされているラテックス粒子などの粒子も挙げられる。さらに、金コロイド若しくはゾル又は銀コロイド若しくはゾルを包含するコロイド若しくはゾル等が挙げられる。さらにまた、金属粒子、無機粒子等が挙げられる。
【0035】
標識物質は上記のように、その一部に粒子を備えていてもよい。標識物質の一部を構成するラテックス粒子などの粒子の平均粒子径は、特に限定しないが、例えば、0.1nm以上20μm以下であり、固相担体の孔径等によって適宜選択することができる。
【0036】
好ましい粒子は、水溶液に懸濁でき、そして水不溶性ポリマー材料からなる粒子である。例えばポリエチレン、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アクリロニトリルポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリビニルアセテート−アクリレート、ポリビニルピロリドン又は塩化ビニル−アクリレートが挙げられる。それらの表面上に活性基、例えばカルボキシル、アミノ又はアルデヒド基を有するラテックス粒子も挙げられる。
【0037】
標識物質結合物質は、タンパク質−タンパク質相互作用、低分子化合物−タンパク質相互作用、核酸−核酸相互作用等を利用して、最終的に標識物質を結合できる物質が挙げられる。例えば、抗原抗体反応における抗体や、アビジン(ストレプトアビジン)−ビオチンシステムにおけるビオチン、抗ジゴキシゲニン(DIG)−ジゴキシゲニン(DIG)システムにおけるジゴキシゲニン、抗FITC−FITCシステムにおけるFITC等に代表されるハプテン類及び互いにハイブリダイズ可能であるオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。この場合、最終的に検出のために用いられる標識物質は、標識物質結合物質と相互作用する他方の分子又は物質(例えば、抗原、すなわち、ストレプトアビジン、抗FITC、オリゴヌクレオチドなど)を、標識物質結合物質との結合のための部位として備えるように構成される。
【0038】
こうした標識物質や標識物質結合物質は商業的に入手できるほか、標識物質及び標識物質結合物質の製造及び標識物質等を粒子にラベルする方法も公知であり、当業者であれば適宜公知技術を利用して取得することができる。さらに、こうした標識物質又は標識物質でラベル化された粒子や標識物質結合物質と、DNA等のオリゴヌクレオチドとの結合もアミノ基等の官能基を介して適宜可能であり、それ自体は当該分野において周知である。
【0039】
増幅工程は、標的核酸を含む可能性のある試料に対して、こうしたプライマーセットのほか、DNAポリメラーゼ、各種塩基を備えるヌクレオチド三リン酸(dNTPs)とともに核酸増幅反応を実施する。核酸増幅反応は、概して、以下の(1)〜(4)のステップを備えている。通常、(2)〜(4)を15回〜100回以下程度、典型的には、20回〜50回程度繰り返すことにより、増幅産物を取得できる。増幅工程は、例えば、さらに、後述するハイブリダイズ産物を得るための(5)熱変性ステップ及び(6)の冷却ステップを備えていてもよい。
【0040】
(1)サイクル前の熱変性ステップ
(2)熱変性ステップ
(3)アニーリングステップ
(4)伸長反応ステップ
(5)熱変性ステップ
(6)冷却ステップ
【0041】
上記(1)〜(4)の各ステップは、それぞれ、一般的な条件が周知であり、当業者であれば、適宜公知の条件に基づいて設定することができる。例えば、(1)サイクル前の冷却ステップは、例えば、90℃以上99℃以下程度であり、(2)熱変性ステップも90℃以上99℃以下であり、(3)アニーリングステップは、例えば、プライマーの溶解温度に対して±6℃程度とすることができる。また、(4)伸長反応ステップは、用いるDNAポリメラーゼの温度特性にもよるが、概して72℃とすることができる。
【0042】
例えば、(5)熱変性ステップは、他の熱変性ステップと同様90℃以上99℃以下程度で実施することができる。また、熱変性ステップは、こうした温度で好ましくは10秒以上、より好ましく20秒以上60秒以下程度維持することが好ましい。さらに、例えば、(6)冷却ステップは、識別プローブの融解温度以下に冷却するステップである。冷却ステップの到達温度(冷却温度)としては、例えば、25℃以下であり、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは18℃以下であり、さらに好ましくは15℃以下である。また、冷却温度に到達するまでの時間(冷却時間)としては、例えば、15分以下、好ましくは10分以下、より好ましくは7分以下、さらに好ましくは5分以下、なお好ましくは3分以下、一層好ましくは1分以下程度で冷却するステップである。冷却時間が短いほど、検出に要する時間を短縮化することができる。なお、熱変性時間及び冷却時間がともに極めて短時間でよいため、検査時間の短縮化に有効である。
【0043】
増幅工程における核酸増幅反応は、PCRのほか、LCR(リガーゼ連鎖反応)、SDA、LAMP、RCAおよびRPAなどから適宜選択して用いることができる。
【0044】
核酸増幅反応は、また、増幅産物のうち、標的配列を含む一本鎖核酸を他方の一本鎖核酸よりも多く増幅するように実施することが好ましい。いわゆる非対称PCRなどの非対称核酸増幅反応とすることが好ましい。こうすることで、ハイブリダイズ産物をより効率的及び高濃度で得ることができるようになる。こうした非対称核酸増幅反応は、より多く増幅しようとする一本鎖核酸を増幅するためのプライマーを他方のプライマーよりも多く存在するようにする。例えば、非対称PCRの場合、標的配列を含む一本鎖核酸用プライマー(A)と他方の一本鎖核酸用プライマ−(B)との濃度比を、A:B=2:1〜50:1とすることができる。
【0045】
(標的配列を含む一本鎖核酸と識別プローブとのハイブリダイズ産物)
本検出方法では、標的核酸又はその増幅産物の標的配列に特異的にハイブリダイズ可能な識別プローブと、前記標的配列を含む一本鎖核酸とのハイブリダイズ産物を、検出工程において供する。本検出方法では、こうしたハイブリダイズ産物は、増幅工程内又は増幅工程後において取得することができる。以下、ハイブリダイズ産物及びその取得について説明する。
【0046】
(識別プローブ)
識別プローブは、1又は2以上の標的核酸に対して、それぞれ設計して、1又は2以上を準備することができる。例えば、T/Aの1塩基多型のとき、標的配列としては、T型(例えば、野生型)とA型(変異型)の2種類があり、標的核酸も2種類となる。この場合、識別プローブは、標的配列、すなわち、標的核酸に応じて、野生型標的配列向け及び変異型標的配列向けに、合計2種類準備される。このほか、識別プローブは、異なる変異や多型に対応して複数種類を一つの検出方法に供されてもよい。
【0047】
ここで、識別プローブは、標的配列に特異的にハイブリダイズする第1の識別配列を有することができる。識別プローブが第1の識別配列を有することで、標的配列を有する一本鎖核酸とハイブリダイズすることができる。
【0048】
例えば、標的配列が一塩基多型の場合、1又は2以上の一塩基多型のうち少なくとも1つの一塩基多型を検出するための塩基は、第1の識別配列の塩基長の範囲のいずれの位置にあってもよい。任意の位置に設定しても、精度よく標的配列を検出することができる。すなわち、識別のための塩基は、中央側に存在するようにしてもよいし、3’末端又は5’末端にあってもよいし、末端よりも内側にあってもよい。
【0049】
識別プローブにおける第1の識別配列の長さは特に限定しないが、プライマーセットによる標的核酸の増幅を確保できるように設計される。すなわち、(3)アニーリングステップではプライマーのみが標的核酸にアニールするが、このとき、識別プローブが標的核酸やプライマーにアニールしないことが好ましい。より具体的には、第1の識別配列の長さが長すぎる場合には、(3)アニーリングステップで標的核酸等にアニールする傾向が生じる。
【0050】
また、第1の識別配列の長さは、特異的に標的配列とハイブリダイズするのに好適な長さであることが好ましい。すなわち、(6)冷却ステップで、非特異的に標的配列以外にハイブリダイズしないことが好ましい。より具体的には、第1の識別配列が長すぎると非特異的なハイブリダイズが生じ、第1の識別配列が短すぎるとハイブリダイズ自体が抑制される。
【0051】
第1の識別配列の好適な長さは、標的配列の種類や、(3)アニーリングステップ及び(6)冷却ステップの条件に応じて適宜設定することができる。典型的には、10〜25ヌクレオチドとすることができる。例えば、一例であって限定されるものではないが、第1の識別配列は、13塩基以上15塩基以下程度としてもよい。
【0052】
識別プローブは、その第1の識別配列と標的配列との融解温度が、標的核酸を増幅するためのプライマーセットの各プライマーの融解温度よりも低いことが好ましい。プライマーセットに比較して識別プローブの融解温度を十分低く設計することで、(5)熱変性ステップ後の(6)冷却ステップにおいて、標的配列と識別プローブとのハイブリダイズ産物とを取得することができる。どの程度、プライマーセットの融解温度から低ければよいかは、増幅反応に用いる熱変性温度、アニーリング温度等にもよるが、識別プローブの融解温度は、好ましくはプライマーセットの各プライマーの融解温度の平均温度よりも、10℃以上低いことが好ましく、より好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは16℃以上であり、なお好ましくは17℃以上であり、一層好ましくは18℃以上低いことが好ましい。また、プライマーセットの平均融解温度から20℃程度低くてもよい。
【0053】
また、識別プローブは、その3’末端が、伸張反応が起こらないように公知のブロック剤によりブロックされていてもよい。例えば、3’末端をヒドロキシル基で修飾してもよい。例えば、米国特許第5,516,663号は、プローブを伸長不能にするために用いることができる修飾を記載している。
【0054】
なお、識別プローブは、第1の識別配列に加えて、標的配列に関連付けられる捕捉プローブと特異的にハイブリダイズ可能な第2の識別配列を備えることができる。第2の識別配列を備えることで、捕捉プローブとのハイブリダイズ特異性を十分に確保できて確度の高い検出が可能となる。
【0055】
第2の識別配列は、標的配列を含む一本鎖核酸(すなわち、増幅産物を構成する一方のDNA鎖)とは、特異的にハイブリダイズしない配列とする。こうすることで、
図1に示すように、識別プローブが標的配列を有する一本鎖核酸と第1の識別配列を介してハイブリダイズしたとき、第2の識別配列は、一本鎖核酸とはハイブリダイズしない一本鎖領域の一部を構成することができる。第2の識別配列が一本鎖領域に含まれることで、捕捉プローブとのハイブリダイズを容易かつ確実となる。また、第2の識別配列は、例えば、人工的にクロスハイブリダイゼーションしないように設計された配列などとすることができる。
【0056】
(ハイブリダイズ産物)
ハイブリダイズ産物は、増幅産物を構成する、標的配列を含む一本鎖核酸と識別プローブとのハイブリダイズ産物は、
図1に示すように、第2の識別配列を含む一本鎖領域を有する部分二本鎖核酸となっている。また、ハイブリダイズ産物は、標的配列を含む一本鎖核酸の長さに対して十分に短い識別プローブがハイブリダイズするものであるため、一本鎖核酸が5’末端等において標識要素を備える場合においても、標識要素が標識物質結合物質であるときなど、標識物質を容易に結合させることができる。
【0057】
(増幅工程におけるハイブリダイズ産物の取得)
識別プローブと標的配列とのハイブリダイズ産物は、例えば、増殖工程内の少なくとも(6)冷却ステップにおいて、標的核酸ないしはその増幅産物の標的配列に特異的にハイブリダイズ可能な識別プローブを併存させることにより、取得することができる。本発明者らによれば、増幅産物や残存プライマー等が存在している中でさえも、冷却ステップにおいて識別プローブを併存させることにより、識別プローブと標的配列との特異的ハイブリダイズに基づくハイブリダイズ産物を取得することができる。増幅工程内においてハイブリダイズ産物を取得することで、追加の工程を実施することがなく、効率的である。
【0058】
かかる増幅工程においては、(5)熱変性ステップは、標的配列を含む標的核酸を含む可能性のある増幅産物を含む液体(核酸増幅反応液)を、増幅産物を融解可能に加熱する。具体的には、既に説明した温度に加熱することができる。また、(6)冷却ステップは、前記液体を、標的配列を含む一本鎖核酸と識別プローブとのハイブリダイズ産物が得られるように冷却する。具体的には、既に説明した温度及び時間で冷却することができる。
【0059】
さらに、識別プローブは、(6)冷却ステップの前段階の(5)熱変性ステップ又は段階の(2)〜(4)の増幅サイクルステップの段階においてプライマー等と併存されてもよいし、さらに(1)サイクル前の加熱変性ステップからプライマー等と併存されていてもよい。上記した識別プローブとしての1又は2以上の適性を備えている場合には、冷却ステップのみならず増幅ステップにおいても識別プローブを併存させうるからである。特に、増幅工程の当初から、すなわち、サイクル前の熱変性ステップから識別プローブを併存させることで、増幅工程に供したチューブを一切開封することなく一挙にハイブリダイズ産物を取得できることは好ましい。
【0060】
識別プローブの特異性に基づけば、ハイブリダイズ産物としては、例えば、標的配列(標的核酸)が2種類あって、一方が、T/Aの一塩基置換(SNP)のT型(野生型)配列であり、他方がA型(変異型)配列であるとき、T/Aが1:1のヘテロであっても、同2:0又は0:2のホモであっても、SNPにおいて可能性ある組合せに応じて特異的なハイブリダイズ産物を取得できる。
【0061】
(増幅工程後におけるハイブリダイズ産物の取得)
また、ハイブリダイズ産物は、増幅工程後に取得することもできる。例えば、増幅工程における(1)〜(4)のステップ終了後、検出工程に先立って、識別プローブの併存下で(5)熱変成ステップと(6)冷却ステップを別途実施することでも、取得することができる。この場合、増幅工程の(4)伸長反応ステップ後には、プライマーの融解温度以下までの冷却工程を備えることができる。
【0062】
なお、当業者は、用いる核酸増幅反応の種類等に応じて適宜異なる態様で増幅工程を実施できる。いわゆるPCR法の場合には、上記(4)伸長反応ステップ後に、最後の伸長反応を実施することができる。また、(4)伸長反応ステップ後又は最後の伸長工程後にプライマーセットの融解温度以下への冷却ステップを備えることもできる。
【0063】
また、増幅工程における鋳型DNA、プライマーの量(比率)のほか、識別プローブの量は、必要に応じて適宜設定することができる。なお、プライマーやプローブなどのオリゴヌクレオチドを合成する種々の方法は当業者においては周知であり、同様に、オリゴヌクレオチドに対する標識要素の結合についても当業者において周知である。
【0064】
(検出工程)
検出工程は、標的核酸を検出工程である。かかる検出工程は、取得したハイブリダイズ産物により前記標的核酸を検出する工程として実施することができる。ハイブリダイズ産物は、標的配列を識別し標的配列を含む一本鎖核酸を捕捉している。したがって、かかるハイブリダイズ産物を、ハイブリダイズ産物のまま検出することで標的核酸を検出することが好ましい。
【0065】
ハイブリダイズ産物を検出するには、既に説明したように、識別プローブに付与した第2の識別配列を用いて当該第2の識別配列と特異的にハイブリダイズする捕捉プローブとを接触させてハイブリダイゼーションにより捕捉し検出することが好ましい。
【0066】
典型的には、捕捉プローブを固定化した固相担体に対して、ハイブリダイズ産物を含む核酸増幅反応液を供給してハイブリダイゼーションを実施することができる。
【0067】
ハイブリダイゼーションの形態は特に限定しないで、第2の識別配列と特異的にハイブリダイズ可能な捕捉プローブを固定化した固相担体の捕捉プローブを含むキャビティにハイブリダイズ産物を含む核酸増幅反応液を供給してハイブリダイゼーションを実施してもよい。また、捕捉プローブを固定化した固相担体に対してハイブリダイズ産物を含む核酸増幅反応液を供給してクロマトグラフィーによりハイブリダイゼーションを実施してもよい。特に、クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーションは、ハイブリダイズ産物を含む核酸増幅反応液に固相担体の一部を浸漬するなどの極めて簡易な操作によって、ハイブリダイズ産物の分離・検出を行うことができる点において好ましい。また、その検出時間も、15分から30分以内など、極めて短時間で終了することができる点においても好ましい。なお、ハイブリダイゼーションに用いる固相担体等については後段で詳述する。
【0068】
固相担体上に捕捉プローブによって捕捉されたハイブリダイズ産物を検出することにより、標的核酸を検出できる。ハイブリダイズ産物の検出方法は特に限定しないで、ハイブリダイズ産物に備える標識要素や、その他、ハイブリダイズ産物を物理化学的に検出可能な各種の検出方法を採用できる。
【0069】
例えば、ハイブリダイズ産物が、標識要素を備えるとき、より具体的には、ハイブリダイズ産物が標識要素を備えるプライマー由来の伸長物を備えるときには、当該ハイブリダイズ産物を標識要素に基づいて検出することができる。既述の標識要素を用いた検出は、当該分野において周知である。
【0070】
(ハイブリダイズ産物が標識物質を備える場合)
ハイブリダイズ産物が備える標識要素が、標識物質のときには、ハイブリダイズ産物を捕捉プローブで捕捉すれば、その標識物質のシグナルと捕捉プローブの有する固相担体上の位置情報に基づいて、ハイブリダイズ産物を検出し同定できる。
【0071】
(ハイブリダイズ産物が標識物質結合物質を備える場合)
一方、ハイブリダイズ産物が備える標識要素が、ビオチン、ジゴキシゲニン、FITC等に代表されるハプテン類やオリゴヌクレオチドなどの標識物質結合物質のときには、最終的に検出のために用いられる標識物質は、ハイブリダイズ産物と捕捉プローブとのハイブリダイゼーションに先立って、あるいはハイブリダイゼーションに伴って、あるいはハイブリダイゼーション後において、ハイブリダイズ産物に供給される。
【0072】
例えば、ハイブリダイズ産物と捕捉プローブとのハイブリダイゼーションに先立って、標識物質が供給される場合とは、ハイブリダイズ産物を含む核酸増幅反応液に、例えば、アビジン結合着色ビーズ又は当該ビーズを含むハイブリダイゼーション液(クロマトグラフィーの場合には展開液である。以下同様。)を供給して、ハイブリダイズ産物に標識物質を結合させた後に固相担体に供給して捕捉プローブとのハイブリダイゼーションに供することができる。
【0073】
また、ハイブリダイゼーションに伴って標識物質を供給する場合としては、例えば、クロマトグラフィー用の固相担体の一部であって、展開液の開始直後に通過する部位などに標識物質を保持させておき、当該部位を通過するハイブリダイズ産物に標識物質を結合させて、さらに展開して、捕捉プローブとハイブリダイゼーションさせる態様が挙げられる。
【0074】
また、ハイブリダイゼーション後に標識物質を供給する場合としては、例えば、ハイブリダイズ産物を含む核酸増幅反応液又は当該反応液とハイブリダイゼーション液とを、捕捉プローブが固定化された固相担体に供してハイブリダイゼーション(クロマトグラフィー)を実施し、その後、別個に、標識物質を含むハイブリダイゼーション液を固相担体に供給して、固相担体において捕捉プローブで捕捉されたハイブリダイズ産物に標識物質を結合させる態様が挙げられる。
【0075】
こうした2段階のハイブリダイゼーション、特に、クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーションに有用である。すなわち、ハイブリダイズ産物を含む核酸増幅反応液を固相担体に供給してクロマトグラフィーを実施する第1のクロマトグラフィー工程と、第1のクロマトグラフィー工程後の固相担体に、標識物質を含む標識液を供給してクロマトグラフィーを実施する第2のクロマトグラフィー工程とを実施することができる。こうすることで、簡易な手順で標的核酸を検出できる。
【0076】
例えば、第1のクロマトグラフィー工程は、ハイブリダイズ産物と捕捉プローブとのハイブリダイゼーションのための工程であるが、核酸増幅反応を終了したままのチューブなどの容器に固相担体を挿入して核酸増幅反応液に固相担体の一部を浸漬して実施できる。また、標識物質を含むハイブリダイゼーション液(標識液)が充填された又は充填した別の容器に、第1のクロマトグラフィー工程実施後の固相担体を挿入して標識液にその一部を浸漬して第2のクロマトグラフィー工程を実施して、ハイブリダイズ産物に対して標識物質を結合させることができる。こうすることで、PCRなどの核酸増幅反応後に、簡易かつ速やかにハイブリダイゼーションと検出を行うことができる。
【0077】
検出工程に伴うハイブリダイゼーションは、当業者に周知の条件から適宜選択して実施できる。例えば、クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーションの場合、例えば、5〜40℃程度、好ましくは15〜35℃程度、特に室温程度とすることができる。核酸クロマトグラフィーに要する時間は、核酸クロマトグラフィー担体の形状と基材の種類、展開媒体の組成に応じて、適宜設定することができる。典型的には、2〜50分程度とすることができる。
【0078】
また、ハイブリダイゼーション液は、特に限定されないで、必要に応じて有機溶媒を含む水性媒体やとするほか、核酸増幅反応液をそのまま用いることもできる。ハイブリダイゼーション液は、例えば、pHを一定単位にするための成分を含むことができる。このような成分として、公知の酢酸と酢酸ナトリウムからなる酢酸緩衝液、リン酸とリン酸ナトリウムからなるリン酸緩衝液、クエン酸とクエン酸ナトリウムからなるクエン酸緩衝液、PBSなどの緩衝成分が挙げられる。
【0079】
なお、クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーションにおいて、ハイブリダイズ液を固相担体に展開するに際して、キャピラリー現象により液体の展開が実現できる範囲内において、固相担体を略鉛直に保持しても、略水平状体に保持してもよい。
【0080】
(標的核酸の検出方法)
以上のことから、本明細書は、以下の標的核酸の検出方法も提供する。すなわち、標的配列を含む標的核酸を含む可能性のある試料を含む液体を、前記標的核酸を融解可能に加熱する工程と、前記標的配列に特異的にハイブリダイズ可能な識別プローブの存在下で、前記加熱工程後に前記液体を冷却して、前記標的配列を含む一本鎖核酸と前記識別プローブとのハイブリダイズ産物を取得する工程と、前記ハイブリダイズ産物を検出することにより前記標的核酸を検出する工程と、を備える、標的核酸の検出方法も提供される。この方法によれば、既に、十分な量の標的核酸を含み得る試料を有するときには、簡易かつ確実に標的核酸を検出することができる。この検出方法において、標的核酸、識別プローブ、ハイブリダイズ産物の取得、ハイブリダイズ産物の検出については、既に説明した各種態様を適用することができる。
【0081】
なお、識別プローブは、冷却工程に存在する必要があるが、加熱工程において既に存在させてもよい。
【0082】
以上説明したように、本検出方法によれば、標的核酸を簡易にかつ精度よく検出できる。特に、一塩基多型について、検出工程においてクロマトグラフィーによるハイブリダイゼーションを採用することで、従来に比してきわめて簡単かつ迅速に検出することができる。
【0083】
(キット)
本明細書は、本検出方法によって標的核酸を検出するためのキット(以下、本キットという。)を提供することができる。本キットは、標的核酸中の標的配列を識別可能な1又は2以上の識別プローブを含むことができる。識別プローブは、上記した各種態様を採ることができる。識別プローブは、既述の第1の識別配列のほか、第2の識別配列を備えていることが好ましい。本キットは、識別すべき標的配列(標的核酸)の種類に応じて識別プローブを備えることができる。例えば、SNPを検出するための本キットは、SNPの野生型のほか1又は2以上の変異型に対応する識別プローブを含むことができる。
【0084】
本キットは、核酸増幅反応の増幅産物又はその増幅工程に用いるものであるため、標的核酸を増幅できるプライマーセットをさらに含むことができる。プライマーセットについても、既に説明した各種態様を適宜採ることができる。プライマーセットの一方のプライマーには、標識要素を備えていることが好ましい。本キットは、増幅すべき標的核酸の種類に応じたプライマーセットを含むことができる。例えば、SNPを検出するための本キットは、当該SNP(標的配列)を含むDNA二本鎖を増幅できるように1セットのプライマーセットを含むことができる。
【0085】
本キットは、また、1又は2以上の識別プローブの第2の識別配列と特異的にハイブリダイズ可能な1又は2以上の捕捉プローブを備えることができる。捕捉プローブは、適当な固相担体に固定されていてもよい。固相担体に捕捉プローブを固定化しておくことで、複数の捕捉プローブが固定化された固相担体(例えば、平板状等)における個々の捕捉プローブの位置情報や、個々の捕捉プローブが固定化された固相担体(例えば、ビーズ等)に付与された識別情報(色や大きさ)によって、複数の標的核酸の検出が容易になるからである。
【0086】
捕捉プローブが固定化された固相担体(ハイブリダイゼーションデバイス)について説明する。固相担体としては、担体はプラスチックであってもよいし、ガラスであってもよく、材質は特に限定されない。また、特に、クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーションに用いる固相担体としては、例えば、ポリエーテルスルホン、ニトロセルロース、ナイロン、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーを主体としたいわゆる多孔質性の材料が挙げられる。また、ろ紙などのセルロース系材料も好ましく用いることができる。
【0087】
なお、担体の形状は平板状であってもよいが、ビーズ状であってもよく、形状は特に限定されない。固相担体は、好ましくは、担体が固相平板状であり、複数の捕捉プローブが一定の配列で固定されたアレイ(特にマイクロアレイ)である。アレイは、多数個のプローブを固定でき、同時に網羅的に各種の標的核酸を検出するのに都合がよい。また、クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーションを意図した形態では、捕捉プローブが展開方向に沿って固定されるなどされる。かかるハイブリダイゼーションデバイスでは捕捉プローブの固定化位置により、結果物とプローブとの接触順序を制御できる。
【0088】
捕捉プローブは、特に限定されないで、当業者に公知の方法で固相担体に固定することができる。例えば、捕捉プローブと固相担体とを、必要に応じてリンカーを介在させて、共有結合により固定化する手段;捕捉プローブと固相担体との間の静電的相互作用により固定化する手段などが例示される。捕捉プローブと担体との間の静電的相互作用により固定化させ、さらに紫外線などで共有結合を生じさせる手段であってもよい。
【0089】
クロマトグラフィー用のハイブリダイゼーションデバイスは、単一の固相担体で構成されている必要は必ずしもない。全体としてキャピラリー現象により展開媒体を移動可能であれば、複数の固相担体で連結されていてもよい。また、クロマトグラフィー用プローブ固定化体の全体形態は特に問わない。シート状や細い棒状など、キャピラリー現象によるクロマトグラフィー用液の展開拡散が可能な形態であればよい。好ましくは、長尺状体であって、その長手方向に沿う一つの端部がクロマトグラフィーの展開媒体に接触するようになっている。
【0090】
クロマトグラフィー用のハイブリダイゼーションデバイスは、ハイブリダイゼーション液への浸漬により展開を開始する場合、チューブ中のハイブリダイゼーション液との接触を容易にするために、展開開始部分(浸漬部分)を先細り状の形態とすることもできる。展開開始部分であることを示す位置マーカーがデバイスに付されていてもよい。
【0091】
本キットは、必要に応じて他の要素を含めることができる。他の要素は、例えば標的核酸を増幅するための試薬、鋳型核酸のポジティブコントロール試料及びネガティブコントロール試料などが挙げられる。
【実施例1】
【0092】
本実施例では、鋳型(試料)として、pUCにコードされたアンピシリン耐性遺伝子(β−ラクタマーゼ)の多型(野生型T/変異型C)に関して、ホモ(TT、CC)、ヘテロ(TC)のDNA断片(200bp)を準備し、以下に示すプライマーで各DNAを増幅し、以下に示す野生型及び変異型をそれぞれ識別する識別プローブを用いて、ハイブリダイズ産物を取得し、クロマトグラフィーにて分離し検出した。
【0093】
プライマーF:cgaaa aacgt tttcc aatga tgag (24mer) Tm:54.6℃(配列番号1)
プライマーR:Bio-tggtt atggc agcac tgcat (20mer)Tm:57.5℃(配列番号2)
【0094】
野生型プローブ:tag1-tacac tattc tcag Tm:34.6℃(配列番号3)
変異型プローブ:tag2-tacac tactc tcag Tm:37.5℃(配列番号4)
【0095】
なお、プローブの長さについては、予め、プライマーを用いた核酸増幅反応でプライマー/プローブ産物の形成、ターゲットへのアニール、SNPの検出特異性の検討結果に基づいて、14merと決定した。
【0096】
(1)クロマトグラフィー用ストリップの作製
クロマトグラフィー用ストリップは、
図1に示すように、野生型識別プローブを捕捉する野生型捕捉プローブと、変異型識別プローブを捕捉する変異型捕捉プローブとにライン状に固定化した。すなわち、メルクミリポア製Hi-Flow Plus メンブレンシート(60mm x 600mm)に捕捉プローブ溶液を、特開2003−75305号公報に記載されている吐出ユニット(インクジェット法)を用いた日本ガイシ株式会社GENESHOT(登録商標)スポッターを用いて、スポットした。なお、捕捉プローブの3’末端側にpolyT(20))を付加した配列をプローブとして使用し、Spectroline社のUV照射装置(XL−1500UV Crosslinker)を用いて、280nmの成分を含む波長にて300mJ/cm
2程度の紫外線光の照射を行って固定化を実施した。
【0097】
(2)ターゲット遺伝子の増幅
各種のpUC断片を鋳型(試料)として用いた。なお、以下に示す増幅反応液には、野生型と変異型の鋳型DNAが全体で1pg含まれるように、野生型DNA:変異型DNAを、1:0、0.75:0.25、0.5:0.5、0.25:0.75、0:1)の各比率で含まれるようにした。
【0098】
また、Rプライマーの5’末端にビオチンを結合した。野生型及び変異型識別プローブの5’末端側には、(1)で作製したクロマトグラフィー用ストリップの対応する捕捉プローブに相補的な塩基配列からなるタグ(tag1,2:DNA)を付加した。
【0099】
遺伝子増幅酵素はタカラバイオ社のPremix ExTaqを用い、サーマルサイクラーはサーモジェン社のQuick Bathを用いた。
【0100】
増幅反応液は、以下に示す通りとした。
(増幅反応液)
滅菌水 1.0 μL
SYBR Premix ExTaq(Tli RNaseH Plus) 5.0 μL
プライマー混合液(各2.5μM) 1.0 μL
識別プローブ溶液(各100nM) 2.0 μL
ゲノムDNA(1 pg/μL)or DNAフリー水 1.0 μL
計 10.0 μL
【0101】
サーマルサイクラーを用いて下記の条件で遺伝子の増幅反応(97℃で2分加熱後、97℃で5秒、60℃で5秒、及び72℃で5秒)を30回繰り返し、97℃で1分後、15℃に約1分で冷却した。これにより、増幅反応液内には、それぞれの鋳型DNAと識別プローブとのハイブリダイズ産物が生成していると考えられた。
【0102】
(3)クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーション及び検出
図2に示すように、この増幅反応液にストリップの下端を浸漬して展開した(第1のクロマトグラフィー)。次いで、1.5mLチューブ内に充填した以下の展開液に増幅反応液で展開済みのテストストリップの下端を接触させて、再度展開した(第2のクロマトグラフィー)(
図2参照)。
(展開液)
展開液 5.0 μL
純水 5.0 μL
ラテックス液 1.0 μL
計 11.0 μL
【0103】
展開液はストリップ上部まで約15分で全て吸い上がり反応は終了した。反応終了後、目視にてストリップ上の検出ラインへの着色を確認した。結果を
図3に示す。
【0104】
図3に示すように、野生型と変異型の比率に応じた色の濃さのラインを検出することができた。したがって、追加の加熱変性及び冷却のサブステップを含む増幅工程により、それぞれのPCRチューブ内には、それぞれの型のDNAの比率に応じ、各増幅断片と対応する識別プローブとのハイブリダイズ産物が形成されたと考えられた。
【0105】
したがって、本検出方法によれば、試料中に含まれる標的配列ないし標的核酸を高い特異性でしかも簡易かつ定量的に検出できることがわかった。
【実施例2】
【0106】
本実施例では、鋳型(試料)にpUC18を用いて、以下に示すプライマーで非対称PCRによりアンピシリン耐性遺伝子(β−ラクタマーゼ)配列を増幅し、以下に示す野生型及び変異型をそれぞれ識別する識別プローブを用いて、ハイブリダイズ産物を取得し、クロマトグラフィーにて分離し検出した。
【0107】
プライマーF:cgaaa aacgt tttcc aatga tgag (24mer) Tm:54.6℃(配列番号1)
プライマーR:Bio-tggtt atggc agcac tgcat (20mer)Tm:57.5℃(配列番号2)
【0108】
野生型プローブ:tag1-tacac tattc tcag Tm:34.6℃(配列番号3)
変異型プローブ:tag2-tacac tactc tcag Tm:37.5℃(配列番号4)
【0109】
(1)クロマトグラフィー用ストリップの作製
クロマトグラフィー用ストリップは、
図1に示すように、野生型識別プローブを捕捉する野生型捕捉プローブと、変異型識別プローブを捕捉する変異型捕捉プローブとにライン状に固定化した。すなわち、メルクミリポア製Hi-Flow Plus メンブレンシート(60mm x 600mm)に捕捉プローブ溶液を、特開2003−75305号公報に記載されている吐出ユニット(インクジェット法)を用いた日本ガイシ株式会社GENESHOT(登録商標)スポッターを用いて、スポットした。なお、捕捉プローブの3’末端側にpolyT(20))を付加した配列をプローブとして使用し、Spectroline社のUV照射装置(XL−1500UV Crosslinker)を用いて、280nmの成分を含む波長にて300mJ/cm
2程度の紫外線光の照射を行って固定化を実施した。
【0110】
また、Rプライマーの5’末端にビオチンを結合した。野生型及び変異型識別プローブの5’末端側には、(1)で作製したクロマトグラフィー用ストリップの対応する捕捉プローブに相補的な塩基配列からなるタグ(tag1,2:DNA)を付加した。
【0111】
遺伝子増幅酵素はタカラバイオ社のSYBR Premix ExTaq(Tli RNaseH Plus)を用い、サーマルサイクラーはサーモジェン社のQuick Bathを用いた。
【0112】
増幅反応液は、以下に示す通りとした。
(増幅反応液)
滅菌水 1.0 μL
SYBR Premix ExTaq(Tli RNaseH Plus) 5.0 μL
Rプライマー(2.5μM) 1.0 μL
Fプライマー(2.5、1.25、0.6、0.25、0.1、0.05μM) 1.0 μL
識別プローブ溶液(各1μM) 1.0 μL
pUC18DNA(1 pg/μL) 1.0 μL
計 10.0 μL
【0113】
サーマルサイクラーを用いて下記の条件で遺伝子の増幅反応(97℃で2分加熱後、97℃で5秒、60℃で5秒、及び72℃で5秒)を40回繰り返し、97℃で1分後、15℃に約1分で冷却した。これにより、増幅反応液内には、それぞれの鋳型DNAと識別プローブとのハイブリダイズ産物が生成していると考えられた。
【0114】
(3)クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーション及び検出
1.5 mLチューブ内に充填した以下の展開液にテストストリップの下端を接触させて、展開した(
図5参照)。
(展開液)
PCR産物 10.0 μL
展開液 10.0 μL
ラテックス液 1.0 μL
計 21.0 μL
【0115】
展開液はストリップ上部まで約15分で全て吸い上がり反応は終了した。反応終了後、目視にてストリップ上の検出ラインへの着色を確認した。結果を
図5に示す。
【0116】
図に示すように、プライマーF濃度の減少に従って野生型検出ラインが強くなることを確認することができた。したがって、プライマーF濃度の減少に伴って1本差の増幅断片の蓄積量が増加し、増幅断片と識別プローブとのハイブリダイズ産物の形成が促進されたと考えられた。
【0117】
したがって、本検出方法と非対称PCRを併用することで、試料中に含まれる標的配列ないし標的核酸を高い感度でしかも簡易に検出できることがわかった。