【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、荷物を載せるパレットに組み込む輸送用コンテナであって、該パレットの外縁を取り囲む角筒状の本体と、該本体の上部開口を塞ぐフタと、からなり、前記本体は、前記パレットのツメ穴を有する面に配置する一対の側板と、該側板の側端面同士を結ぶ背面板と、該背面板に対向し且つ左右に分割された開閉板と、を有し、前記フタは、水平に展開する天板を有し、前記側板の下部には、前記ツメ穴を露出させるためのツメ窓を設け、また前記開閉板には、その開放を防ぐ閉止具を取り付け、前記背面板の中央部には、上下方向を軸とする中ヒンジを設けると共に、該背面板の両端部には、上下方向を軸とする角ヒンジを設け、前記開閉板の付け根には、上下方向を軸とする角ヒンジを設け、前記中ヒンジおよび前記角ヒンジを屈曲させることで、前記背面板および前記開閉板を内側に引き寄せ、これらを一対の前記側板の間に挟み込むことで前記本体の折り畳みが
可能であり、前記フタには、前記天板の外縁から伸びて前記本体に嵌まり込む垂下板を設けてあり、且つ該天板裏面の外縁近傍には棒状に突出する規制片を設けてあり、該規制片と該垂下板との隙間には、前記本体の上端部が入り込み、前記ツメ窓には、その外縁を額縁状に取り囲む保護具を取り付けてあり、該保護具は、該ツメ窓によって形成された前記側板の切断面を覆い隠していることを特徴とする輸送用コンテナである。
【0010】
本発明による輸送用コンテナは、汎用のパレットと組み合わせて使用するもので、パレットの外縁を取り囲む角筒状の本体と、この本体の上部開口を塞ぐフタで構成される。したがって本体の形状は、パレット上面の寸法に応じて決まり、パレット外縁と本体との隙間は、必要最小限とする。なお本体とパレットは、ボルトなどで物理的に一体化する訳ではなく、単に本体の内側にパレットが収容されるに過ぎない。
【0011】
本体は、パレットを取り囲むため必然的に四枚の板で構成されるが、そのうち対向する二枚を側板と称するものとする。そして、二枚の側板の側端面同士を結ぶ板を背面板と称し、さらに背面板に対向する板を開閉板と称するものとする。側板は、フォークリフトのツメを差し入れる向きに配置することを想定しており、側板の下部には、パレットのツメ穴を露出させるため、ツメ窓を設ける。
【0012】
ツメ窓の形状は自在で、全周が閉じたもののほか、側板の下端面を部分的に切り欠いたものでも構わない。またツメ窓は、フォークリフトのツメに対応し、左右二箇所に分割配置することもあれば、横長形状とすることで一箇所に集約することもできる。いずれの場合も、側板内部への異物の侵入対策として、ツメ窓の外縁を保護する
ものとする。なお実際にフォークリフトのツメを差し入れ、パレットを持ち上げると、ツメがツメ窓の上縁にも接触するため、本体も一体で持ち上げられる。
【0013】
開閉板は、二枚の側板の側端面同士を結ぶように配置するが、単純な板ではなく左右に分割してあり、その付け根(側板の近傍)を軸として回動可能な観音開き構造とする。開閉板により、本体は環状ではなく、切断面を有することになる。そのため、本体をパレットに組み込む際は、左右の開閉板の間を大きく開き、パレットを本体の内側に収容することができる。しかもこの作業の際、本体を持ち上げる必要はなく、床の上を滑らせればよい。なお開閉板は、左右で均等に分割されるとは限らず、作業性などを考慮し、左右で大きさを変えることもある。
【0014】
閉止具は、左右に並ぶ二枚の開閉板を閉じる(開閉板がパレットに接触した状態)ために用いる。閉止具は、二枚の開閉板の境界付近に配置し、面ファスナーやベルトやヒモや金具など、諸事情を考慮して、最適なものを選択すればよい。なお本体の大きさによっては、複数の閉止具を上下に並べて配置することもある。
【0015】
背面板は、開閉板と対向し、二枚の側板の側端面同士を結ぶ。背面板は、開閉板とは異なり、分割されることのない一枚だが、その中央部に中ヒンジを設け、さらに両端部に角ヒンジを設け、折り畳み可能な構造とする。なお中ヒンジと角ヒンジのいずれも、垂直軸周りに屈曲可能とする。また角ヒンジは、背面板が本体の内側に向けて回動することを許容し、対する中ヒンジは、背面板が本体の内側に入り込むことを許容する。このように中ヒンジと角ヒンジを設けることで、背面板は、二枚の側板の間で「Σ」状に折り畳むことができる。
【0016】
中ヒンジは前記のように、背面板の中央部を上下に貫くが、この「中央部」とは、背面板を誤差なく二分する位置に限定される訳ではなく、左右いずれかに若干の偏りがあっても構わない。また角ヒンジは、背面板の両端部に設けるが、この「両端部」とは、背面板の左右両側端のほか、そこから若干量だけ中央に寄った位置も含むものとする。ただし、本体を折り畳んだ際の無駄な空間を無くすには、中ヒンジを背面板の真の中央に配置し、角ヒンジを背面板の側端に配置することが好ましい。
【0017】
二枚の開閉板の付け根には、それぞれ角ヒンジを設ける。この角ヒンジは、垂直軸周りに屈曲可能で、さらに内側と外側の両方に向けての回動を許容する。したがって、二枚の側板の間で背面板を「Σ」状に折り畳む際、開閉板を本体の内側に回動させると、二枚の側板の間には、背面板のほか、開閉板も収容され、背面板や開閉板が側板と密着し、本体を小さく折り畳むことができる。
【0018】
フタは、本体をパレットに組み込んだ状態において、本体の上部開口を塞ぐもので、この上部開口全体を覆い隠す天板を中心に構成される。ただし天板だけでは、本体に対し、自在に変位する恐れがあり、本来の機能を発揮できない。そこで実際には、変位を規制する手段も必要になる。
【0019】
フタの天板の外縁には、下方に伸び、本体に嵌まり込む垂下板を設ける。この垂下板は、途切れることのない角筒状で、本体の上部に嵌り込む。さらにフタを強化するため、垂下板の角部にL字状の補強金具を取り付けてもよい。なお本体にフタを載せ、垂下板が開閉板の外側上部を覆い隠した場合、開閉板を開くことができなくなる。ただしフタの組み込み前であれば、開閉板を自在に開くことができ、パレットに本体を組み込んだ後も、荷物の出し入れは可能である。併せて、天板裏面の外縁近傍には規制片を設けてあり、規制片と垂下板との隙間に本体の上端部が入り込む。
【0020】
本発明では、中ヒンジや角ヒンジで本体を折り畳むことで、本体は、分割箇所のない一体構造となる。そのため部品の紛失といった事態を招くことがない。また、中ヒンジや角ヒンジの存在により、本体の折り畳み方法は、一目瞭然に理解でき、取り扱いに迷うこともない。しかも本体は、二枚の開閉板の間が開いており、パレットに本体を組み込む作業が容易で、労力や時間の面でも有利である。
【0021】
請求項2記載の発明は、
本体の高さを限定するもので、本体の高さは、対向する二枚の垂下板の間隔よりも小さくし、折り畳まれた本体は、垂下板の内側に収容可能であることを特徴とする。本発明による輸送用コンテナを出荷先から返却する際は、前記のように本体を折り畳むが、その後の利便性を考慮すると、本体とフタは、一体的に取り扱うことが望ましい。そこでこの発明では、本体をフタの内側に収容できるようにしている。
【0022】
折り畳まれた本体を垂下板の内側に収容するため、本体の高さは、対向する垂下板の間隔よりも小さくする。なおパレットが正方形ではなく長方形であれば、本体やフタも上から見て長方形になる。この場合、垂下板は、間隔の狭い組と広い組が生じることになるが、本体の高さは、間隔の狭い組に基づいて決める。
【0023】
請求項2記載の発明により、出荷先で荷物を積み下ろし、パレットから本体を取り外した後も、本体とフタとの一体性を維持でき、いずれか一方の紛失といった事態を回避できる。なお実際の現場では、上下反転させたフタをパレットの上に載せ、その内側に折り畳んだ本体を収容し、パレットとフタと本体を一括して出荷元に返却する。
【0024】
請求項3記載の発明は、本体の素材とヒンジの形態を限定するもので、本体は、合成樹脂製の板材で構成され、中ヒンジおよび角ヒンジは、本体の内側面に形成した切り欠きであることを特徴とする。本体の素材は、ダンボールや木板など、様々なものを選択可能だが、強度や耐水性や製造コストなどを考慮すると、合成樹脂が最適である。なお重量を抑制しながら強度を確保するため、単純な合成樹脂製の板材ではなく、ダンボールと同様の構造としたもの(一般にプラダンやダンプラなどと称される)を用いる。さらに強度を一段と高めたい場合には、二枚の板の間に、ハニカムやコーンを挟み込んだ物を用いる。またフタについても、本体と同様の素材を用いることが多い。
【0025】
本体の素材として合成樹脂を用いた上、さらに中ヒンジや角ヒンジは、背面板や開閉板の内側面をV字状や円弧状に切り欠き、局地的に薄肉化することで形成する。この切り欠きは、本体の上端面と下端面を垂直方向に結ぶ線状となるが、その断面形状は、本体の強度を維持しながら屈曲を妨げないように調整する。このように、ヒンジを切り欠きとすることで、金具などの部品が不要で、製造コストや美感の面で有利である。なお実際にヒンジを形成する際は、切削ではなく合成樹脂の熱変形を利用する。
【0026】
請求項4記載の発明は、角ヒンジの配置を特定するもので、角ヒンジは、本体の角部を平面視した場合において、その内角および外角を対角とする矩形状の隅柱部から離れて配置してあることを特徴とする。角ヒンジは、背面板の両端と開閉板の付け根に設けるため、これらは必然的に本体の四隅近傍に位置する。ただし本体の角部(四隅)は、強度上極めて重要な役割を担う。そこで請求項4記載の発明のように、角ヒンジは、本体の角部から離して配置すべきである。
【0027】
隅柱部とは、本体の角部を真上から見た場合において、角部の内角と外角を結ぶ線を対角線とする矩形状の領域を意味する。したがって、隅柱部を構成する四辺のうちの二辺は、本体の外側面となる。また残る二辺は、本体の外側面から伸びる垂線で、本体内側の角部を通る。そして角ヒンジは、この隅柱部の中に入り込むことなく配置する。その結果、隅柱部は、何らの切り欠きも存在しない状態となり、本体の耐久性を高めることができる。
【0028】
請求項5記載の発明は、パレットと本体との一体性を維持し、フォークリフトでパレットを持ち上げた際、パレットと本体との相対的な変位を防ぐもので、ツメ窓の周辺には、本体の内側に突出し且つツメ穴の下面に接触する連動具を取り付けてあることを特徴とする。連動具は、本体のツメ窓の周辺に取り付ける部品で、ツメ窓から本体の内側に向けて突出する。さらに、本体の内側にパレットを収容した際、連動具は、パレットのツメ穴の下面に接触するよう、その形状や取り付け位置を調整する。
【0029】
このように、ツメ窓の周辺に連動具を取り付けることで、フォークリフトでパレットを持ち上げた際、連動具を介して本体も同時に持ち上げられ、パレットと本体との一体性を維持でき、本体がパレットに対して傾いてしまい、本体が荷物を押圧するといったトラブルを防ぐ。なお連動具は、一枚の側板に対し、最低でも二箇所に取り付ける。
【0030】
請求項6記載の発明は、パレットを上下に段積みした場合を想定したもので、天板の上面四隅には、載置されたパレットの移動を防ぐため、滑り止め板を貼り付けてあることを特徴とする。本発明でパレットを段積みする際は、フタの上にパレットを載せることになるが、このパレットは、輸送時に大きな水平荷重が作用した際も、フタから移動してはならない。そこで天板の上面四隅には、滑り止め板を貼り付けることが望ましい。当然ながら滑り止め板は、載せられるパレットと接触する必要があり、さらに天板の変形を抑制するため、できるだけフタの外縁に近づける。また滑り止め板の材質や形状などは、目的に応じて自在に選択できる。
【0031】
請求項7記載の発明は、滑り止め板の詳細を規定するもので、滑り止め板の上面には、直線状の溝を連続的に形成してあり、溝の方向は、隣接する二枚の滑り止め板で90度異なることを特徴とする。個々の溝はごく狭く、これが等間隔で連続的に形成してある。そのため、溝と直交する方向の横断面を見た場合、凹凸が規則正しく並ぶ。ただし直線状の溝は、摩擦に方向性を生じてしまう。そこで、滑り止め板の貼り付け方向を限定し、対角線上に位置する二枚を一組とし、一方の組と他方の組で溝の方向を直交させ、方向性を打ち消している。
【発明の効果】
【0032】
請求項1記載の発明のように、パレットに組み込む輸送用コンテナを本体とフタで構成し、本体に中ヒンジや角ヒンジを設け、折り畳み可能な構造とすることで、本体は常に一体化しており、出荷先からの返却時においても、部品の紛失といった事態を招くことがない。また輸送用コンテナの保管スペースを削減することもできる。
【0033】
さらに本体の一面には、観音開き状の開閉板を設けることで、パレットに本体を組み込む際は、本体を床の上に滑らせながら、左右の開閉板の間を大きく開き、その中にパレットを収容することができ、本体を床から持ち上げる必要がない。そのため身体的負担が軽減され、作業を一人でも実施可能で、労力の削減も期待できる。
【0034】
請求項2記載の発明のように
、本体の高さを規制し、折り畳まれた本体を垂下板の内側に収容可能とすることで、荷物を積み下ろし、パレットから本体を取り外した後も、本体とフタとの一体性を維持でき、いずれか一方の紛失といった事態を回避できる。
【0035】
請求項3記載の発明のように、本体の素材として合成樹脂製の板材を用いることで、強度や耐久性や耐水性が向上する。また中ヒンジや角ヒンジは、本体の内側面を切り欠いて形成することで、金具などの付属品が不要で美感も向上する。さらに切り欠きは、目に付きやすく、しかもその屈曲方向も理解しやすく、誰もが無理なく本体の折り畳み方法を認識できる。そのため、あらゆる場所に出荷された後も、問題を生じない。
【0036】
請求項4記載の発明のように、中ヒンジや角ヒンジを隅柱部から離して形成することで、強度上最も重要な本体の角部(四隅)は、何らの空洞や切り欠きも存在しない塊状の柱となる。そのため垂直荷重に対する強度が高まるほか、角部が異物と接触した際も、破損を回避でき、本体の耐久性が一段と向上し、輸送時の過酷な環境にも耐え抜く。
【0037】
請求項5記載の発明のように、ツメ窓の周辺には、ツメ穴の下面に接触する連動具を取り付けることで、パレットと本体との一体性を維持でき、フォークリフトでパレットを持ち上げた際、パレットと本体との相対的な変位を防ぐ。そのため、本体がパレットに対して傾いてしまい、本体が荷物を押圧するといったトラブルを回避できる。
【0038】
請求項6記載の発明のように、フタの上面四隅に滑り止め板を貼り付けることで、パレットを上下に段積みした際も、十分な摩擦を確保でき、パレットを安定して保持できる。また請求項7記載の発明のように、滑り止め板として直線状の溝が形成されたものを用い、しかも溝の方向を二枚ずつ変えることで、あらゆる方向の水平荷重に対し、十分な摩擦を確保できる。なお、溝が形成された滑り止め板は、安価に入手できるほか、摩擦も大きく、利便性に優れる。